高圧下での炭化水素燃料の消炎特性に関する研究 研究論文
効果)であると考えられる.
Table 5 Lewis number ( P=0.1MPa , T=300K )
5.結 論 本研究ではメタン,プロパン及びDME を対象に消炎特性に及 ぼす圧力の影響を体系的に調べて以下の結論を得た. (1) 拡散火炎の消炎に関して,N2希釈混合気,CO2希釈混 合気ともDME の耐消炎特性が高くなった.また圧力の 増加に伴い全ての燃料で耐消炎特性が向上した.さらに, N2希釈混合気とCO2希釈混合気を比較すると,同一平衡 温度の場合,CO2希釈混合気はN2希釈混合気より耐消 炎特性が向上することが分かった. (2) 予混合火炎の消炎に関しても,DME の耐消炎特性が高 くなった.また,圧力の増加に伴い全ての燃料で耐消炎 特性が向上するが,拡散火炎ほど圧力の影響は顕著で はなかった. (3) 消炎特性に及ぼす圧力の影響に関して,ダムケラー数を 用いて定量的に考察を行った.その結果,圧力が増加す ると,化学反応速度に対して火炎厚さが相対的に減少 し,化学反応の特性時間が減少する.圧力の増加で流 れ場が変化しないと,相対的にダムケラー数が増加す ることから,耐消炎特性が向上したと考察した. (4) N2希釈混合気とCO2希釈混合気の耐消炎特性の違いに 関してルイス数効果の観点から考察した.N2希釈混合気 とCO2希釈混合気を比較すると,CO2希釈混合気のルイ ス数は小さくなった.このことから同一平衡温度におい てCO2希釈混合気がN2希釈混合気より耐消炎特性が向 上するのは,CO2の温度伝導率が小さいため混合気のル イス数が低下し,伸長による火炎温度低下が小さくなっ たため(ルイス数効果)であると考えられる. 本研究の一部は平成26 年度科学研究費補助金挑戦的萌芽研 究(No. 26630072)により行われた.また,研究の遂行に当たっ ては千葉大学の森吉先生に大変お世話になりました. 参 考 文 献
(1) Tanoue, K., Baba, T., Matsunaga, T.: Experimental study of combustion of ethanol and primary reference fuels in laminar nonuniform flows, Proceedings of the Combustion Institute, Vol.33, p.1029-1035, (2011).
(2) Takita, K. et al.: Extinction Karlovitz number of premixed counterflow flames under various pressures, Combust. Sci. Tech., Vol.178 p.1649-1668, (2006).
(3) Seshadri, K. and Williams, F. A.: Laminar flow between parallel plates with injection of a reactant at high Reynolds number, Int. J. Heat Mass Transfer, Vol.21, p251-253, (1978).
(4) Reaction Design: CHEMKIN-PRO, Reaction Design, Inc., San Diego, (2014).
(5) GRI-Mech 3.0,
http://www.me.berkeley.edu/gri_mech/ (参照 2015.01.10). (6) The San Diego Mechanism
http://web.eng.ucsd.edu/mae/groups/combustion/mechanis m.html. (参照 2015.01.10).
(7) Z.Zhao, M. Chaos, A. and F.L. Dryer, et al.: Thermal decomposition reaction and a comprehensive kinetic model of Dimethyl Ether, Int. J. Chem. Kinetics, Vol.40, p.1-18, (2008).
(8) Williams: Combustion Theory 2nd ed., Perseus Books, (1985). φ [mmα (N22/s] ) Le (N2) α (CO[mm2/s] 2) Le (CO2) CH4 1.4 0.7 22.43 22.35 1.10 0.96 16.06 15.33 0.90 0.81 C3H8 1.4 0.7 20.13 21.14 1.04 1.85 11.41 11.42 0.80 1.03 DME 1.4 0.7 19.25 20.63 1.01 1.79 12.57 13.23 0.77 1.33
ディーゼル酸化触媒への
HC 蓄積に由来した白煙発生メカニズム解析
北村 高明1) 松本 雅至2)Mechanism of White Smoke Generation Caused by HC Accumulation on Diesel Oxidation Catalyst
Takaaki Kitamura Masashi MatsumotoDiesel oxidation catalyst (DOC) stores unburned hydrocarbons at low temperatures, such as during long-term idle operation, and then releases them rapidly at high temperatures during acceleration. The high level of unburned hydrocarbons result in visible white smoke emission at tailpipe. The purpose of this work is to get a better understanding of the phenomenon of white smoke emission originated from HC accumulation on DOC. Firstly, the component and size distribution of the HC white smoke has been analyzed. It was clarified that semi-volatile organic compounds and water are condensed around SOF component (e.g. C17~C24 heavy hydrocarbons in fuel), leading to a submicron-sized particulate emission. Furthermore, the effect of distillation characteristic and molecular structure of the HC accumulated on DOC has been examined. The experimental results show that the amount of adsorbed HC is strongly influenced by the 50% distillation temperature and also that aromatic hydrocarbons tend to increase white smoke emission compared with paraffinic hydrocarbons.
KEY WORDS: Heat engine, Post treatment system, Harmful emissions, White smoke, DOC, HC components (A1)
1.ま え が き ディーゼル乗用車を新興国を含むグローバル市場に展開す る際,市場における車の使用実態や燃料成分(1)~(2)と関係して排 気白煙が大きな課題になる場合がある. 課題となる白煙には,①軽負荷かつ低排気温条件で触媒に 吸着した未燃HC 成分が触媒温度の上昇により急激に排出さ れ白煙になる「HC 由来白煙」と,②燃料中の硫黄分が触媒に てSO3に酸化・吸着し,PM 再生等による触媒温度の上昇で触 媒より放出され白煙になる「S 由来白煙」がある. 本研究では,ディーゼル酸化触媒(以降,DOC:Diesel Oxidation Catalyst)へ未燃 HC を溜め込んだ際に発生する HC 由来白煙に関して,白煙発生の現象探究と各要素(エンジン 燃焼,排気後処理,燃料)での対応技術を2016 年度までに開 発することを目的とする. 本報では,実車テールパイプ白煙試験により,HC 由来白煙 の成分分析および粒径分布計測を行い,白煙粒子の形態を明 らかにした.さらに,エンジン試験も実施し,燃料組成によ る影響として,DOC へ供給される HC 種の沸点・分子構造が HC 由来白煙に及ぼす影響について詳細に調べた. 2.実 験 方 法 2.1. 実車テールパイプ白煙試験 シャシダイナモメータを用いた実車テールパイプ白煙試験 を行った.図1 に白煙評価のための実験装置概略図を示す. *2015 年 6 月 9 日受理.2015 年 5 月 22 日自動車技術会春季学 術講演会において発表. 1)・2)(一財)日本自動車研究所(305-0822 つくば市苅間 2530) 供試車両はEURO4 適合のディーゼル乗用車(総排気量 1.4L, 排気後処理はDOC のみ)である.白煙の観察には白煙可視化 ボックスを使用した.当該ボックスの上面にはLED ライトが 設置されており,側面観察窓を介して白煙からの散乱光をビ デオカメラで撮影し,白煙の発生状況を白煙輝度値として観 察することができる. また,白煙動画撮影と同時に,白煙排出時のSOF/ISOF 排出 量(粒子捕集フィルタはPALLFLEX 製 TX40H120-WW),テ ールパイプTHC 濃度(堀場製作所製 MEXA-9400F),白煙粒 径分布(PALAS 製 welas digital 2000)の計測も行った.ここ で,白煙粒径分布に対する揮発性成分や水分影響を確認する 際は,前処理としてサーモデニューダ(DEKATI 製,以下 TD) および水分の選択除去が可能な Nafion ガスドライヤ(Perma Pure 製,以下 PPD)を併用した. TX filter (SOF/ISOF) Video camera Room air White smoke observation box MEXA-9000 series (THC) Chassis dynamometer DOC Welas digital 2000 (size distribution) Thermodenuder DOC
Perma Pure Dryer Diesel passenger car
Fig.1 Schematic of experimental apparatus
DOC への未燃 HC 成分の溜め込みは,25℃・50%RH の環境 条件において DOC 入口の排ガス温度が 200℃以下となる渋
*
201340 20154686
ディーゼル酸化触媒への HC 蓄積に由来した白煙発生メカニズム解析
ディーゼル酸化触媒への HC 蓄積に由来した白煙発生メカニズム解析 滞・低車速モードを所定の時間繰返し走行することで行った. 図2 に HC 溜め込み運転の車速パターン等を示す.最高車速 は30km/h 程度であり,DOC 入口ガス温度は 120~180℃の範 囲となる.本試験では,溜め込み運転時間を0.5 時間~3 時間 の間で変化させて白煙排出濃度を調整した.
Fig.2 HC accumulation mode for vehicle test
白煙の吐出しは,全開加速によりDOC 入口の排ガス温度を 300℃程度まで上昇させ,吸着 HC 成分が DOC から脱離して 白煙が排出され始めたらアイドル運転に切替える方法をとっ た.車両試験の供試燃料は市販JIS2 号軽油とした. 2.2. ベンチ試験による燃料影響調査 直列4 気筒ディーゼルエンジン(総排気量 2.5L,排気後処 理はDOC のみ)を用いて,DOC へ供給される HC 種の沸点 や分子構造がHC 由来白煙に及ぼす影響を調べた.白煙の観 察は車両試験と同様の白煙可視化ボックスを使用した.また, 排出ガス分析計(堀場製作所製MEXA-9100DEGR)を DOC 前後に2 台設置し,カーボンバランス法により求めた燃料流 量の差分からDOC への HC 溜め込み量を算出した. エンジン試験ではDOC 上流に排気管燃料噴射弁を設置し, 各種HC 成分を DOC へ供給できる様にした.表 1 に試薬を除 く供試燃料の主要性状を示す.エンジン筒内への供試燃料の 影響を見る際は,車両試験と同じJIS2 号軽油のほか,蒸留特 性が大きく異なる2 種類の低セタン価軽油(以下,LC1 およ び LC2)を用いた.さらに,排気管燃料噴射を利用する場合 には,筒内噴射燃料はJIS2 号軽油とし,排気管噴射燃料とし て,LC1,LC2,バイオディーゼル(HVO:Hydrogenated Vegetable Oil,RME:Rapeseed Methyl Ester),さらに単成分試薬である
パラフィン2 種類(ヘプタン,トリデカン)およびアロマ 2 種類(トルエン,1-メチルナフタレン)も使用した.図 3 に排 気管噴射に使用した燃料の蒸留特性を示す.単成分試薬に加 えて,HVO や RME も構成成分が少ない(炭素数分布が狭い) ため,蒸留曲線は比較的狭い温度域に分布する.最も軽質な 燃料は100℃前後の沸点を持つヘプタン・トルエンであり,逆 に最も重質な燃料はRME(50%蒸留温度 T50=336℃)である. 0 50 100 150 200 250 300 350 400 0 20 40 60 80 100 D is til lat ion tem p. [° C]
Percentage volume evaporated [vol%]
RME HVO LC1 LC2 C13 1MNAPH TOL C7
Fig.3 Distillation characteristics of test fuels
エンジン試験でのHC 溜め込み運転は,定常運転とし,DOC 入口温度が所定の温度になる様にエンジン負荷を適宜設定し た(Ne=1600rpm,SV=45000h-1程度).一方,白煙吐出しは, 車両試験と同様の方法とし,加速運転によりDOC 入口の排ガ ス温度を300℃程度まで上昇させ,その後,アイドル運転に切 替える運転パターンとした. 3.実 験 結 果 3.1. 実車テールパイプ白煙試験 図4 に,JIS2 号軽油を用いて HC 溜め込み運転時間を 2 時 Table1 Fuel properties except for single component fuel
JIS2 JIS2 JIS2
JIS2 LC1LC1LC1LC1 LC2LC2LC2LC2 HVOHVOHVOHVO RMERMERMERME Test method Density@15℃ g/cm3 0.8283 0.8500 0.8160 0.7800 0.8834 JIS K2249
Kinematic viscosity@40℃ mm2/s 3.004 3.337 1.535 2.941 4.497 JIS K2283
Cetane number 55.0 44.8 43.2 74.2 52.2 JIS K2280
Sulfur mass ppm 7 7 3 <1 8 JIS K2541-6
IBP ℃ 176.0 186.5 155.5 194.5 168.5 10% ℃ 217.0 220.5 176.0 261.0 334.0 50% ℃ 280.0 287.0 205.0 279.0 336.0 90% ℃ 330.0 339.0 311.0 287.0 346.5 EP ℃ 350.5 362.5 344.0 300.0 349.5 N-Para. mass% 23.3 16.7 23.8 4.8 -Iso-Para. mass% 24.0 24.4 27.8 93.3 -Mono-Naph. mass% 17.6 15.7 9.7 1.8 -Di-Naph. mass% 8.4 9.5 5.2 0.0 ->Tri-Naph. mass% 2.0 3.1 1.5 0.0 -Mono-Arom. mass% 21.0 25.6 28.1 0.0 -Di-Arom. mass% 3.4 4.8 3.8 0.0 ->Tri-Arom. mass% 0.3 0.2 0.1 0.0 -Test fuel Distillation JIS K2254 GCxGC Hydrocarbon component
間ないし 3 時間と変化させた際の白煙吐出し運転における DOC 床温,テールパイプ THC 濃度,白煙輝度値の時系列変 化を示す.ここで,白煙輝度値は白煙排出時と排出前の画像 輝度値を差し引き,白煙排出による輝度の変化のみを数値化 したものである.また,横軸の時間は全開加速からアイドル 運転に切換えた時刻をゼロとしており,マイナス側の時刻で は触媒昇温のための全開加速を行っている. 白煙吐出し運転時には,吸着 HC 成分の酸化発熱による急 激なDOC 床温の上昇が見られ,DOC 入口から出口へ向かっ て高温領域が伝播していく.最高温度は中央部>出口部>>入口 部の順に高くなっており,中央部では最高温度が800℃に達し た.これから,DOC 中央部は DOC 出口部よりも HC 溜め込 み量が多くなっている可能性がある.また,HC 溜め込み運転 を2 時間から 3 時間に増やすことで,酸化除去されずに排出 される未燃HC 量が増加し,白煙の輝度値および可視化期間 が増加する様子が分かる. 図5 に,溜め込み運転時間が SOF・ISOF 排出量および白煙 積算輝度値に及ぼす影響を示す.ここで,溜め込み運転時間 DOC inlet DOC midportion DOC backward DOC forepart solid line: 3hr dashed line: 2hr
Fig.4 Effect of HC accumulation driving duration on DOC temperature, tailpipe THC, and white smoke luminosity
0 100 200 300 400 500 0 30 60 90 120 150 0.5hr 1hr 1.5hr 2hr 3hr A cc um . i m age lu m in os ity [-] S O F, IS O F [m g/te st]
Driving duration for HC accumulation [hr]
ISOF SOF
Image luminosity
Fig.5 Effect of HC accumulation driving duration on SOF/ISOF emissions and white smoke luminosity
が2 時間および 3 時間の条件については,白煙吐出し運転後 に撮影した粒子捕集フィルタの写真も示す. 本試験条件では,可視化白煙はHC 溜め込み運転を 1.5 時間 以上行った場合に観察され,白煙輝度値の高い条件では SOF が多く排出される.また,SOF 排出量の増加に伴って ISOF の排出量も増加傾向を示し,粒子捕集フィルタの色も濃い灰 色となる.このことから,溜め込み運転時間の長い条件では, HC 溜め込み量の増加に起因して白煙吐出し時に DOC 内部で 局所的にリッチ燃焼(O2不足)が生じていると考えられる. 図6 に,白煙排出時にフィルター捕集した SOF の GC 分析 により得られたクロマトグラムを示す.上段は溜め込み運転 時間2 時間および 3 時間での SOF,下段は供試燃料およびエ ンジンオイルの炭化水素パターンである. SOF のクロマトグラムに着目すると,これまでの報告(1)と同 様,主成分は燃料中に含まれる沸点300℃以上の C17~C24 程 度の高沸点成分であり,一部,昇温脱離時に生成されたと考 えられる炭素数C8~C14 の含酸素有機物および含窒素有機物 が検出された.また,保持時間50~60 分の間に見られるピー クは,エンジンオイル起因であると考えられる. 2hr
Fuel / oil
SOF
C9 C10 C11 C12 C13 C14 C15 C17 C18 C20 C22 C21 C16 C19 C8H6O C12H6O3 C14H8O2 C8H5NO2 Oil JIS2 3hr C18 C19 C22 C21 C20 C23 C24Fig.6 Chromatogram of SOF component in white smoke
次に,白煙粒径分布の計測結果について示す.まず,図7 に白煙吐出し時における粒径分布の経時変化を示す.白煙輝 度値が高くなる時期は,粒子径が大きくなり,サブミクロン スケール(大粒径側は1µm 超)の白煙粒子を形成している. 逆に,粒子数が多くても粒子径が小となる時期は,白煙輝度 値が低下する. 図8 に,HC 溜め込み運転時間を変化させた際の白煙平均粒 径分布を示す.また,3 時間溜め込み運転条件において PPD を用いて水分影響を調べた結果(破線)も併記する.溜め込 み時間が長期化するほど粒子数の増加とともに大粒径側へと 粒径分布が推移している.一方,PPD を用いて白煙粒子から
ディーゼル酸化触媒への HC 蓄積に由来した白煙発生メカニズム解析
ディーゼル酸化触媒への HC 蓄積に由来した白煙発生メカニズム解析 滞・低車速モードを所定の時間繰返し走行することで行った. 図2 に HC 溜め込み運転の車速パターン等を示す.最高車速 は30km/h 程度であり,DOC 入口ガス温度は 120~180℃の範 囲となる.本試験では,溜め込み運転時間を0.5 時間~3 時間 の間で変化させて白煙排出濃度を調整した.
Fig.2 HC accumulation mode for vehicle test
白煙の吐出しは,全開加速によりDOC 入口の排ガス温度を 300℃程度まで上昇させ,吸着 HC 成分が DOC から脱離して 白煙が排出され始めたらアイドル運転に切替える方法をとっ た.車両試験の供試燃料は市販JIS2 号軽油とした. 2.2. ベンチ試験による燃料影響調査 直列4 気筒ディーゼルエンジン(総排気量 2.5L,排気後処 理はDOC のみ)を用いて,DOC へ供給される HC 種の沸点 や分子構造が HC 由来白煙に及ぼす影響を調べた.白煙の観 察は車両試験と同様の白煙可視化ボックスを使用した.また, 排出ガス分析計(堀場製作所製MEXA-9100DEGR)を DOC 前後に2 台設置し,カーボンバランス法により求めた燃料流 量の差分からDOC への HC 溜め込み量を算出した. エンジン試験ではDOC 上流に排気管燃料噴射弁を設置し, 各種HC 成分を DOC へ供給できる様にした.表 1 に試薬を除 く供試燃料の主要性状を示す.エンジン筒内への供試燃料の 影響を見る際は,車両試験と同じJIS2 号軽油のほか,蒸留特 性が大きく異なる2 種類の低セタン価軽油(以下,LC1 およ び LC2)を用いた.さらに,排気管燃料噴射を利用する場合 には,筒内噴射燃料はJIS2 号軽油とし,排気管噴射燃料とし て,LC1,LC2,バイオディーゼル(HVO:Hydrogenated Vegetable Oil,RME:Rapeseed Methyl Ester),さらに単成分試薬である
パラフィン2 種類(ヘプタン,トリデカン)およびアロマ 2 種類(トルエン,1-メチルナフタレン)も使用した.図 3 に排 気管噴射に使用した燃料の蒸留特性を示す.単成分試薬に加 えて,HVO や RME も構成成分が少ない(炭素数分布が狭い) ため,蒸留曲線は比較的狭い温度域に分布する.最も軽質な 燃料は100℃前後の沸点を持つヘプタン・トルエンであり,逆 に最も重質な燃料はRME(50%蒸留温度 T50=336℃)である. 0 50 100 150 200 250 300 350 400 0 20 40 60 80 100 D is til lat ion tem p. [° C]
Percentage volume evaporated [vol%]
RME HVO LC1 LC2 C13 1MNAPH TOL C7
Fig.3 Distillation characteristics of test fuels
エンジン試験でのHC 溜め込み運転は,定常運転とし,DOC 入口温度が所定の温度になる様にエンジン負荷を適宜設定し た(Ne=1600rpm,SV=45000h-1程度).一方,白煙吐出しは, 車両試験と同様の方法とし,加速運転によりDOC 入口の排ガ ス温度を300℃程度まで上昇させ,その後,アイドル運転に切 替える運転パターンとした. 3.実 験 結 果 3.1. 実車テールパイプ白煙試験 図4 に,JIS2 号軽油を用いて HC 溜め込み運転時間を 2 時 Table1 Fuel properties except for single component fuel
JIS2 JIS2 JIS2
JIS2 LC1LC1LC1LC1 LC2LC2LC2LC2 HVOHVOHVOHVO RMERMERMERME Test method Density@15℃ g/cm3 0.8283 0.8500 0.8160 0.7800 0.8834 JIS K2249
Kinematic viscosity@40℃ mm2/s 3.004 3.337 1.535 2.941 4.497 JIS K2283
Cetane number 55.0 44.8 43.2 74.2 52.2 JIS K2280
Sulfur mass ppm 7 7 3 <1 8 JIS K2541-6
IBP ℃ 176.0 186.5 155.5 194.5 168.5 10% ℃ 217.0 220.5 176.0 261.0 334.0 50% ℃ 280.0 287.0 205.0 279.0 336.0 90% ℃ 330.0 339.0 311.0 287.0 346.5 EP ℃ 350.5 362.5 344.0 300.0 349.5 N-Para. mass% 23.3 16.7 23.8 4.8 -Iso-Para. mass% 24.0 24.4 27.8 93.3 -Mono-Naph. mass% 17.6 15.7 9.7 1.8 -Di-Naph. mass% 8.4 9.5 5.2 0.0 ->Tri-Naph. mass% 2.0 3.1 1.5 0.0 -Mono-Arom. mass% 21.0 25.6 28.1 0.0 -Di-Arom. mass% 3.4 4.8 3.8 0.0 ->Tri-Arom. mass% 0.3 0.2 0.1 0.0 -Test fuel Distillation JIS K2254 GCxGC Hydrocarbon component
間ないし 3 時間と変化させた際の白煙吐出し運転における DOC 床温,テールパイプ THC 濃度,白煙輝度値の時系列変 化を示す.ここで,白煙輝度値は白煙排出時と排出前の画像 輝度値を差し引き,白煙排出による輝度の変化のみを数値化 したものである.また,横軸の時間は全開加速からアイドル 運転に切換えた時刻をゼロとしており,マイナス側の時刻で は触媒昇温のための全開加速を行っている. 白煙吐出し運転時には,吸着 HC 成分の酸化発熱による急 激なDOC 床温の上昇が見られ,DOC 入口から出口へ向かっ て高温領域が伝播していく.最高温度は中央部>出口部>>入口 部の順に高くなっており,中央部では最高温度が800℃に達し た.これから,DOC 中央部は DOC 出口部よりも HC 溜め込 み量が多くなっている可能性がある.また,HC 溜め込み運転 を2 時間から 3 時間に増やすことで,酸化除去されずに排出 される未燃HC 量が増加し,白煙の輝度値および可視化期間 が増加する様子が分かる. 図5 に,溜め込み運転時間が SOF・ISOF 排出量および白煙 積算輝度値に及ぼす影響を示す.ここで,溜め込み運転時間 DOC inlet DOC midportion DOC backward DOC forepart solid line: 3hr dashed line: 2hr
Fig.4 Effect of HC accumulation driving duration on DOC temperature, tailpipe THC, and white smoke luminosity
0 100 200 300 400 500 0 30 60 90 120 150 0.5hr 1hr 1.5hr 2hr 3hr A cc um . i m age lu m in os ity [-] S O F, IS O F [m g/te st]
Driving duration for HC accumulation [hr]
ISOF SOF
Image luminosity
Fig.5 Effect of HC accumulation driving duration on SOF/ISOF emissions and white smoke luminosity
が2 時間および 3 時間の条件については,白煙吐出し運転後 に撮影した粒子捕集フィルタの写真も示す. 本試験条件では,可視化白煙はHC 溜め込み運転を 1.5 時間 以上行った場合に観察され,白煙輝度値の高い条件では SOF が多く排出される.また,SOF 排出量の増加に伴って ISOF の排出量も増加傾向を示し,粒子捕集フィルタの色も濃い灰 色となる.このことから,溜め込み運転時間の長い条件では, HC 溜め込み量の増加に起因して白煙吐出し時に DOC 内部で 局所的にリッチ燃焼(O2不足)が生じていると考えられる. 図6 に,白煙排出時にフィルター捕集した SOF の GC 分析 により得られたクロマトグラムを示す.上段は溜め込み運転 時間2 時間および 3 時間での SOF,下段は供試燃料およびエ ンジンオイルの炭化水素パターンである. SOF のクロマトグラムに着目すると,これまでの報告(1)と同 様,主成分は燃料中に含まれる沸点300℃以上の C17~C24 程 度の高沸点成分であり,一部,昇温脱離時に生成されたと考 えられる炭素数C8~C14 の含酸素有機物および含窒素有機物 が検出された.また,保持時間50~60 分の間に見られるピー クは,エンジンオイル起因であると考えられる. 2hr
Fuel / oil
SOF
C9 C10 C11 C12 C13 C14 C15 C17 C18 C20 C22 C21 C16 C19 C8H6O C12H6O3 C14H8O2 C8H5NO2 Oil JIS2 3hr C18 C19 C22 C21 C20 C23 C24Fig.6 Chromatogram of SOF component in white smoke
次に,白煙粒径分布の計測結果について示す.まず,図7 に白煙吐出し時における粒径分布の経時変化を示す.白煙輝 度値が高くなる時期は,粒子径が大きくなり,サブミクロン スケール(大粒径側は1µm 超)の白煙粒子を形成している. 逆に,粒子数が多くても粒子径が小となる時期は,白煙輝度 値が低下する. 図8 に,HC 溜め込み運転時間を変化させた際の白煙平均粒 径分布を示す.また,3 時間溜め込み運転条件において PPD を用いて水分影響を調べた結果(破線)も併記する.溜め込 み時間が長期化するほど粒子数の増加とともに大粒径側へと 粒径分布が推移している.一方,PPD を用いて白煙粒子から
ディーゼル酸化触媒への HC 蓄積に由来した白煙発生メカニズム解析
ディーゼル酸化触媒への HC 蓄積に由来した白煙発生メカニズム解析 水分を除去することにより粒子径が明らかに小さくなった. 図9 に,TD を用いて揮発性成分を除去した際の白煙平均粒 径分布を示す.ヒータ加熱温度が 40℃から 100℃,さらに 150℃へと高くなるに従って粒径分布の形状は小粒径側へと 推移し,かつ粒子数が大幅に減少していることがわかる.な 0 20 40 60 80 100
Fig.7 Temporal change in size distribution of white smoke particles
0 10000 20000 30000 40000 50000 0.1 1 10 P ar tic e n um ber [# /c c] Particle diameter [µm] 0.5hr 1hr 1.5hr 2hr 3hr 3hr (w/ PPD)
Fig.8 Effect of HC accumulation driving duration and water on time-averaged size distribution of white smoke particles
0 10000 20000 30000 40000 50000 0.1 1 10 P ar tic e n um be r [# /c c] Particle diameter [µm] 40°C (w/ thermodenuder) 100°C (w/ thermodenuder) 150°C (w/ thermodenuder) 250°C (w/ thermodenuder)
Fig.9 Effect of semi-volatile organic compounds on time-averaged size distribution of white smoke particles
お,ヒータ加熱温度を250℃に設定すると,150℃の条件と比 較してわずかに小粒径側へと粒径分布が推移するに留まった. 以上の結果より,溜め込みHC 白煙は沸点の高い SOF 成分 の周りに半揮発性有機化合物(SVOC)や水分が凝縮し,サブ ミクロンスケールの白煙粒子を形成していると考えられる. 3.2. ベンチ試験による燃料影響調査 図10 に,DOC 入口ガス温度が HC 溜め込み量に及ぼす影響 を示す(筒内噴射燃料はJIS2,排気管噴射なし).DOC への HC 供給量に関わらず,排ガス温度の上昇とともに HC 溜め込 み量は減少傾向を示す.とりわけ,180℃条件では触媒反応が 0 5 10 15 20 100 120 140 160 180 200 H C a ds or be d on D O C [g/ L]
DOC inlet temp. [°C]
HC feed 18g HC feed 38g HC feed 80g JIS2
Fig.10 Effect of DOC inlet temperature on HC adsorption amount
0.E+00 1.E+05 2.E+05 3.E+05 4.E+05 5.E+05 0 20 40 60 80 100 A ccu m . i m ag e lu m in osi ty [ -]
HC feed during accumulation mode [g] DOC inlet temp. = 120°C
LC2 LC1 JIS2 0.E+00 1.E+05 2.E+05 3.E+05 4.E+05 5.E+05 0 20 40 60 80 100 A cc um. i m ag e lu mi no si ty [-]
HC feed during accumulation mode [g] DOC inlet temp. = 150°C
LC2 LC1 JIS2 0.E+00 1.E+05 2.E+05 3.E+05 4.E+05 5.E+05 0 20 40 60 80 100 A cc um . i m ag e lu m in os ity [-]
HC feed during accumulation mode [g] DOC inlet temp. = 180°C
LC1 JIS2 LC2
Fig.11 Effect of supplied fuel on white smoke luminosity
活性化し,HC 溜め込み量が大幅に低下する結果となった. 図11 に,各 DOC 入口温度条件において筒内噴射燃料を変 更した際の溜め込み運転時の HC 供給量と白煙積算輝度値の 関係を示す.DOC 入口ガス温度が 120℃および 150℃の低温 条件では,DOC への HC 供給量の増加に伴い白煙輝度値が増 加傾向を示し,さらに同一のHC 供給量で燃料影響を見ると, JIS2 や LC1 に比べて揮発性の高い LC2 は白煙輝度値が明らか に低い.一方,180℃条件では触媒上での酸化反応により HC 溜め込み量が減少することから(図10 参照),全ての燃料で 白煙排出が減少した. 溜め込みHC 種の沸点・分子構造が HC 由来白煙に及ぼす影 響を明らかにするため,排気管燃料噴射により単成分試薬を 含む各種炭化水素をDOC へ供給した.図 12 に,排気管噴射 燃料の50%蒸留温度 T50 と DOC への HC 溜め込み量との関係 を示す.燃料の分子構造を問わず,HC 溜め込み量は排気管噴 射燃料のT50 で概ね整理可能であり,T50 が高くなるにつれ てHC 溜め込み量が大となる. 図13 に,DOC への HC 溜め込み量と白煙積算輝度値との関 係を示す.HC 溜め込み量と白煙輝度値の関係は燃料種の影響 を強く受け,単純にDOC への HC 総溜め込み量では白煙発生 0 20 40 60 80 100 0 100 200 300 400 H C ads or bed on D O C [g/ L]
50% distillation temp. of fuel injected to DOC [°C] 100g 200g 300g RME HVO LC1 LC2 C13 1MNAPH TOL C7
DOC inlet temp=150°C
Fig.12 Effect of T50 on HC adsorption amount (DOC inlet temperature=150degC, Exhaust-pipe fuel injection)
0.E+00 2.E+05 4.E+05 6.E+05 8.E+05 1.E+06 0 20 40 60 80 A cc um . i m age lu m in os ity [-] HC adsorbed on DOC [g/L] HVO LC2 LC1 RME 1MNAPH C13
Fig.13 Effect of HC adsorption amount on white smoke luminosity
量を整理できないことが分かる.蒸留温度の高いRME を使用 した場合に白煙輝度値が最も高くなることから,DOC へ沈着 した HC 成分の内,高沸点成分の量が白煙発生量と高い相関 を持つ可能性がある.また,トリデカンと1-メチルナフタレ ンは沸点が同等(図3 参照)であるが,白煙は 1-メチルナフ タレンでしか観察されず,パラフィン系HC よりもアロマ系 HC の方が白煙化し易いことが示唆される. そこで,燃料中の高沸点成分を構成する炭化水素の分子 構造とその含有量に着目する.包括的2 次元ガスクロマト グラフィー(GCxGC)により,多成分燃料である JIS2,LC1, LC2 および HVO の詳細成分分析を行い,沸点別に燃料に 含まれる炭化水素の分子構造割合を算出した.なお, GCxGC データから推算した蒸留カーブは計測値の傾向を 良く再現した(図14 参照).図 15 に,各燃料に含まれる 300℃以上の高沸点成分(白煙排出時 SOF の主要成分と同 等の沸点範囲)を分子構造別に整理した結果を示す.JIS2 とLC1 は高沸点成分の分子構造およびその含有割合とも非 常に近い特性を持つことが分かる.これに対し,LC2 は燃 料中に存在する高沸点成分の割合が他の燃料よりも大幅に 少ない.一方,HVO は高沸点成分の含有割合は JIS2 や LC1 100 150 200 250 300 350 400 450 0 20 40 60 80 100 D is til la tio n te m p. [ °C]
Percentage volume evaporated [mass%] Calculation from GCxGC data
LC1 HVO JIS2
LC2
Fig.14 Distillation curves calculated from GCxGC data
19.7 24.3 8.4 39.4 9.7 11.4 4.2 0.4 8.2 8.6 3.1 0 10 20 30 40 50 JIS2 LC1 LC2 HVO H ig h B .P . c omp on en t [m as s% ] B.P.>300°C aromatics naphthenes paraffins
ディーゼル酸化触媒への HC 蓄積に由来した白煙発生メカニズム解析
ディーゼル酸化触媒への HC 蓄積に由来した白煙発生メカニズム解析 水分を除去することにより粒子径が明らかに小さくなった. 図9 に,TD を用いて揮発性成分を除去した際の白煙平均粒 径分布を示す.ヒータ加熱温度が 40℃から 100℃,さらに 150℃へと高くなるに従って粒径分布の形状は小粒径側へと 推移し,かつ粒子数が大幅に減少していることがわかる.な 0 20 40 60 80 100
Fig.7 Temporal change in size distribution of white smoke particles
0 10000 20000 30000 40000 50000 0.1 1 10 P ar tic e n um ber [# /c c] Particle diameter [µm] 0.5hr 1hr 1.5hr 2hr 3hr 3hr (w/ PPD)
Fig.8 Effect of HC accumulation driving duration and water on time-averaged size distribution of white smoke particles
0 10000 20000 30000 40000 50000 0.1 1 10 P ar tic e n um be r [# /c c] Particle diameter [µm] 40°C (w/ thermodenuder) 100°C (w/ thermodenuder) 150°C (w/ thermodenuder) 250°C (w/ thermodenuder)
Fig.9 Effect of semi-volatile organic compounds on time-averaged size distribution of white smoke particles
お,ヒータ加熱温度を250℃に設定すると,150℃の条件と比 較してわずかに小粒径側へと粒径分布が推移するに留まった. 以上の結果より,溜め込みHC 白煙は沸点の高い SOF 成分 の周りに半揮発性有機化合物(SVOC)や水分が凝縮し,サブ ミクロンスケールの白煙粒子を形成していると考えられる. 3.2. ベンチ試験による燃料影響調査 図10 に,DOC 入口ガス温度が HC 溜め込み量に及ぼす影響 を示す(筒内噴射燃料はJIS2,排気管噴射なし).DOC への HC 供給量に関わらず,排ガス温度の上昇とともに HC 溜め込 み量は減少傾向を示す.とりわけ,180℃条件では触媒反応が 0 5 10 15 20 100 120 140 160 180 200 H C a ds or be d on D O C [g/ L]
DOC inlet temp. [°C]
HC feed 18g HC feed 38g HC feed 80g JIS2
Fig.10 Effect of DOC inlet temperature on HC adsorption amount
0.E+00 1.E+05 2.E+05 3.E+05 4.E+05 5.E+05 0 20 40 60 80 100 A ccu m . i m ag e lu m in osi ty [ -]
HC feed during accumulation mode [g] DOC inlet temp. = 120°C
LC2 LC1 JIS2 0.E+00 1.E+05 2.E+05 3.E+05 4.E+05 5.E+05 0 20 40 60 80 100 A cc um. i m ag e lu mi no si ty [-]
HC feed during accumulation mode [g] DOC inlet temp. = 150°C
LC2 LC1 JIS2 0.E+00 1.E+05 2.E+05 3.E+05 4.E+05 5.E+05 0 20 40 60 80 100 A cc um . i m ag e lu m in os ity [-]
HC feed during accumulation mode [g] DOC inlet temp. = 180°C
LC1 JIS2 LC2
Fig.11 Effect of supplied fuel on white smoke luminosity
活性化し,HC 溜め込み量が大幅に低下する結果となった. 図11 に,各 DOC 入口温度条件において筒内噴射燃料を変 更した際の溜め込み運転時の HC 供給量と白煙積算輝度値の 関係を示す.DOC 入口ガス温度が 120℃および 150℃の低温 条件では,DOC への HC 供給量の増加に伴い白煙輝度値が増 加傾向を示し,さらに同一のHC 供給量で燃料影響を見ると, JIS2 や LC1 に比べて揮発性の高い LC2 は白煙輝度値が明らか に低い.一方,180℃条件では触媒上での酸化反応により HC 溜め込み量が減少することから(図10 参照),全ての燃料で 白煙排出が減少した. 溜め込みHC 種の沸点・分子構造が HC 由来白煙に及ぼす影 響を明らかにするため,排気管燃料噴射により単成分試薬を 含む各種炭化水素をDOC へ供給した.図 12 に,排気管噴射 燃料の50%蒸留温度 T50 と DOC への HC 溜め込み量との関係 を示す.燃料の分子構造を問わず,HC 溜め込み量は排気管噴 射燃料のT50 で概ね整理可能であり,T50 が高くなるにつれ てHC 溜め込み量が大となる. 図13 に,DOC への HC 溜め込み量と白煙積算輝度値との関 係を示す.HC 溜め込み量と白煙輝度値の関係は燃料種の影響 を強く受け,単純にDOC への HC 総溜め込み量では白煙発生 0 20 40 60 80 100 0 100 200 300 400 H C ads or bed on D O C [g/ L]
50% distillation temp. of fuel injected to DOC [°C] 100g 200g 300g RME HVO LC1 LC2 C13 1MNAPH TOL C7
DOC inlet temp=150°C
Fig.12 Effect of T50 on HC adsorption amount (DOC inlet temperature=150degC, Exhaust-pipe fuel injection)
0.E+00 2.E+05 4.E+05 6.E+05 8.E+05 1.E+06 0 20 40 60 80 A cc um . i m age lu m in os ity [-] HC adsorbed on DOC [g/L] HVO LC2 LC1 RME 1MNAPH C13
Fig.13 Effect of HC adsorption amount on white smoke luminosity
量を整理できないことが分かる.蒸留温度の高いRME を使用 した場合に白煙輝度値が最も高くなることから,DOC へ沈着 した HC 成分の内,高沸点成分の量が白煙発生量と高い相関 を持つ可能性がある.また,トリデカンと1-メチルナフタレ ンは沸点が同等(図3 参照)であるが,白煙は 1-メチルナフ タレンでしか観察されず,パラフィン系HC よりもアロマ系 HC の方が白煙化し易いことが示唆される. そこで,燃料中の高沸点成分を構成する炭化水素の分子 構造とその含有量に着目する.包括的2 次元ガスクロマト グラフィー(GCxGC)により,多成分燃料である JIS2,LC1, LC2 および HVO の詳細成分分析を行い,沸点別に燃料に 含まれる炭化水素の分子構造割合を算出した.なお, GCxGC データから推算した蒸留カーブは計測値の傾向を 良く再現した(図14 参照).図 15 に,各燃料に含まれる 300℃以上の高沸点成分(白煙排出時 SOF の主要成分と同 等の沸点範囲)を分子構造別に整理した結果を示す.JIS2 とLC1 は高沸点成分の分子構造およびその含有割合とも非 常に近い特性を持つことが分かる.これに対し,LC2 は燃 料中に存在する高沸点成分の割合が他の燃料よりも大幅に 少ない.一方,HVO は高沸点成分の含有割合は JIS2 や LC1 100 150 200 250 300 350 400 450 0 20 40 60 80 100 D is til la tio n te m p. [ °C]
Percentage volume evaporated [mass%] Calculation from GCxGC data
LC1 HVO JIS2
LC2
Fig.14 Distillation curves calculated from GCxGC data
19.7 24.3 8.4 39.4 9.7 11.4 4.2 0.4 8.2 8.6 3.1 0 10 20 30 40 50 JIS2 LC1 LC2 HVO H ig h B .P . c omp on en t [m as s% ] B.P.>300°C aromatics naphthenes paraffins
ディーゼル酸化触媒への HC 蓄積に由来した白煙発生メカニズム解析
に近い値を示すが,分子構造が大きく異なり,構成成分の 殆どをパラフィン系HC が占めるという特徴を有する. 以上を踏まえ,図16 に DOC における高沸点 HC 溜め込 み量を算定し,改めて白煙積算輝度値を整理した結果を示 す.これより,LC1,LC2,RME といった蒸留特性や分子 構造の異なる燃料においても,DOC へ沈着した HC 成分の 内,300℃以上の沸点を有する高沸点 HC 溜め込み量により 白煙積算輝度値を概ね整理可能であることが分かる.一方, HVO は他の燃料と比較して白煙積算輝度値が低くなって いるが,これは図15 に示した様に高沸点成分の分子構造が 影響していると推察される. 燃料中の高沸点成分に関して,大部分がパラフィンから 構成されるHVO と比較して,ナフテンやアロマも含む LC1 の方が同等の高沸点HC 溜め込み量であっても白煙発生量 が多いことから,DOC 昇温脱離に伴う HC の酸化・クラッ キング特性が分子構造の影響を受けていると考えられる. 図17 に,トリデカンおよび 1-メチルナフタレンを排気管 噴射し,白煙吐出し運転時のSOF を GC/MS 分析した結果 を示す.1-メチルナフタレンを DOC へ溜め込んだ場合には, 0.E+00 2.E+05 4.E+05 6.E+05 8.E+05 1.E+06 0 20 40 60 80 A cc um . i m ag e lu m in osi ty [-]
High B.P. HC adsorbed on DOC [g/L]
RME LC1 LC2 HVO HC component effect HVO LC2 LC1 RME B.P.>300°C
Fig.16 Effect of high B.P. HC adsorption amount on white smoke luminosity
10 20 30 40 50 60 70
Retention time [min]
1MNAPH C13 C10 H9 N N C11 H8 O C12 H10 O C11 H9 NO 2 N O O C22 H14 O C21 H16 C22 H18 C22 H16 O
Fig.17 Effect of fuel molecular structure on SOF component
二環アロマに酸素原子や窒素原子が付いた部分酸化生成物 や二環アロマの二量体などが検出されたが,トリデカンを 用いた場合にはトリデカン起因のSOF 成分は見当たらなか った.すなわち,パラフィン系HC よりもアロマ系 HC の ほうがDOC 昇温脱離時に低級 HC へのクラッキングが起こ りにくく,容易に白煙化するものと考えられる. 4.ま と め 実車テールパイプ白煙試験およびエンジンベンチ試験によ り,DOC へ未燃 HC を溜め込んだ際に発生する HC 由来白煙 に関する詳細現象解析を行い,以下の知見を得た. (1) 白煙吐出し運転時には,吸着 HC 成分の酸化発熱による 急激なDOC 床温の上昇が見られ,DOC 入口から出口へ 向かって高温領域が伝播していく.最高温度は中央部> 出口部>>入口部の順に高くなっており,中央部では最高 温度が800℃に達した. (2) 白煙輝度値が高くなる条件では SOF が多く排出される. (3) HC 由来白煙は,高沸点 SOF 成分の周りに SVOC や水分 が凝縮し,サブミクロンスケールの白煙粒子を形成して いると考えられる. (4) 燃料の分子構造を問わず,DOC への HC 溜め込み量は供 試燃料の50%蒸留温度 T50 で概ね整理可能であり,T50 が高くなるにつれてHC 溜め込み量が大となる. (5) DOC へ沈着した HC 成分の内,300℃以上の沸点を有す る高沸点HC 溜め込み量により白煙積算輝度値を概ね整 理可能である. (6) パラフィン系 HC よりもアロマ系 HC の方が昇温脱離時 にクラッキングが起こりにくく,白煙化し易い. 本稿の研究開発は,自動車用内燃機関技術研究組合が経済 産業省「平成26 年度エネルギー使用合理化先進的技術開発費 補助金(クリーンディーゼルエンジン技術の高度化に関する 研究開発)」の助成を受けて実施したものである.関係者各 位に深く感謝の意を表します. 参 考 文 献
(1) Tahara Y. and Akasaka Y. : Effects of Fuel Properties on White Smoke Emission from the Latest Heavy-Duty DI Diesel Engine, SAE Paper 952354 (1995)
(2) Hara H., Itoh Y., Henein N. and Bryzik W. : Effect of Cetane Number with and without Additive on Cold Startability and White Smoke Emissions in a Diesel Engine, SAE Paper 1999-01-1476 (1999)
HCCI 燃焼に及ぼす超過膨張サイクルの影響要因の検討
*王 偉昭1) 吉澤 廣昭2) ゴンザレス ファン3) 荒木 幹也4) 志賀 聖一5)
A Study of the Factors Influencing HCCI Combustion in an Over-Expansion Cycle Engine
Weizhao Wang Hiroaki Yoshizawa Juan C. Gonzalez Palencia Mikiya Araki Seiichi Shiga
This study analyzes the factors influencing the thermal efficiency of HCCI combustion in an over-expansion cycle engine. There are many influencing factors when combining the over-expansion cycle and HCCI combustion since 80 experimental conditions were included when varying compression ratio, expansion ratio, intake air temperature and equivalence ratio. The combustion efficiency is shown to be one of the dominant factors. Since the correlation coefficient between the combustion efficiency and ISFCgwas -0.90. The over-expansion
cycle is also shown to be effective to improve the thermal efficiency. The late-closing of intake valves contributes to extending the operating range of HCCI combustion.
KEY WORDS: Heat engine, Homogeneous charge compression ignition, Combustion analysis, n-Heptane (A1)
1.緒 言 火花点火機関における熱効率の向上法の一つとして,アトキン ソンサイクルやミラーサイクルと呼ばれる超過膨張サイクルがあ る.超過膨張サイクルについての研究は、解析・実用両面から行 われており,熱効率向上の有効な手段として確立され始めてい る.しかし,熱効率向上効果の発生機構や限界についての解析や 実証が十分であるとは言えないと考え,著者らは単気筒機関を用 いた実験的研究を行ってきた.これまでに,幾何学的圧縮比(膨 張比:εe)の異なるピストンと,吸気弁閉じ時期の異なるカムを組 み合わせた実験を行い,超過膨張サイクルにおいて,グロス図示 熱効率ηi.gはεeによって支配的に決定されることを示した.しか し,最もεeの大きい条件では,S/V 比の増大による熱損失の増大 や,ノック発生限界の低下によりηi.gは低下した.そこで,予混 合圧縮自発点火(HCCI)燃焼と組み合わせることでさらなる熱効率 の向上を目指した.以下に,HCCI 燃焼の利点を示す(1). (1) 火炎伝播限界を超えた希薄域で運転可能なため,比熱比の増 大と熱損失の低減ができる. (2) ガソリンエンジンに比べ高圧縮比化が可能なため,高効率で ある. (3) 希薄燃焼であるため, 絞り弁開度増加によりポンプ損失が 低減できる. 2015 年 6 月 24 日受理.2014 年 11 月 28 日内燃機関シンポジウ ムにおいて発表. 1) 株式会社 島津製作所(〒604 -8511 京都市中京区西ノ京桑原 町1 番地) 2)‧3)‧4)‧5) 群馬大学大学院 理工学府(〒376-8515 群馬県桐 生市梅田町1-5-1 (4) 均質かつ希薄であるため,低い NOx排出量での燃焼が可 能. これらのHCCI 燃焼のメリットを活かし,最適な圧縮比におい て超過膨張サイクルを組み合わせることで,最適な自発点火時期 を維持しつつ,さらなる熱効率向上の可能性を明らかにすること が本研究の目的である.本装置で設定できる吸気温度の範囲で HCCI 燃焼を実現するために,n-Heptane を用いた.HCCI 燃焼で は,まず低温酸化反応が起こり,次に高温酸化反応が起こる(2). 低温酸化反応と高温酸化反応はそれぞれ任意に起きている訳では なく,低温酸化反応の発熱量と発生時期が高温酸化反応の発生時 期を決めている(2).なかでも,n-パラフィン系炭化水素は強い低 温酸化反応を示し,炭素数が多いほど低温酸化反応を起こしやす い(3).このため,n-Heptane を燃料とすることで,本実験装置にお いてもHCCI 燃焼が実現できた. 本研究では,HCCI 燃焼の超過膨張サイクル機関への適用効果 を明らかにすることが目的であるが,両者を組み合わせると,影 響要因が非常に多くなり,結果の解釈が困難になった.そこで本 研究では,実験データの点数や条件を大幅に増やし,おもに相関 の観点から,HCCI 燃焼に対する超過膨張サイクルの影響要因に ついて考察を試み、以下のことについて検証を行った. (1) HCCI 燃焼における熱効率に対して支配的な影響要因 (2) HCCI 燃焼における超過膨張サイクルの効果 (3) 吸気弁の遅閉じを利用し,HCCI 燃焼における運転範囲を 拡大する可能性 2. 実 験 装 置