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毎月5日・15日・25日発行(ただし1月5日、5月5日、8月15日は休刊)    ISSN 1881-4417

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毎月5日・15日・25日発行(ただし1月5日、5月5日、8月15日は休刊) ISSN 1881-4417

ロシアNIS経済速報

ROTOBO

Connecting Markets 社団法人 ロシアNIS貿易会 2008年(平成20年)7月25日号 No.1436 目 次

変 貌 するロシアの中 古 車 市 場

... 坂口 泉 1 トピックス ... 11 三菱自、マツダがロシアで新型モデルを初公開/11 コマツがロシア工場の起工式/11 ノーリツがロシアに給湯器輸出/11 三井物産がウズベクと合弁設立で合意/11 エトセトラ ... 12 ROTOBOロシアセミナーのご案内/12 『調査月報』2008年8月号のご案内/12 ロシアNIS貿易会関連の行事予定 ... 13 ロシア・NIS諸国通貨の為替レート ... 13

変 貌 するロシアの中 古 車 市 場

はじめに

これまでロシアの中古車市場といえば、もっぱら輸入中古車市場のことを意味すること が多かった。ところが、最近になり、「ロシア市場を起源とする中古車、すなわちロシア市 場で新車として販売された後に転売される車(以下、国内転売中古車と称する)の販売台 数が、外国ブランドの車を中心に、今後急激に伸びる」との声がロシアの自動車市場関係 者の間で高まっている。 本稿では、現時点ではロシアの中古車市場とほぼ同義の存在であると言っても過言では ない輸入中古車市場の状況を紹介した後、国内転売中古車市場の現状と今後の展望、国内 転売中古車市場の拡大(とくに、外国ブランドの国内転売中古車の販売台数の急激な伸び) が新車市場や輸入中古車市場に与える影響等についての考察を試みる。

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1.輸入中古車市場の状況

(1)中古車輸入台数の推移 中古車の輸入台数の数字は出所によってかなり大きく異なる。たとえば、ASMホールデ ィングによれば2005年:31万7,700台、2006年:31万3,400台、2007年:38万5,100台とされて いるが、NAPIによれば2005年:33万6,000台、2006年:27万4,000台、2007年:43万台とな っている。また、Avtostatという調査機関は2006年:約24万台、2007年:約26万台と評価し ている。このように出所によって数字が異なっているのは、中古車の輸入には不透明な点 が多く、公式の統計だけではどうしても捕捉しきれない部分が出てくるためであろう。 Avtostatの数字は、通関統計をはじめとする公式のデータだけをベースに算出されたもので ある可能性が高い。ASMホールディングやNAPIは公式データに独自のデータを加味した上 で数字をはじき出しているものと推測されるが、恐らく、その独自のデータの部分の誤差 が最終的な数字の食い違いにつながっているのであろう。 以下では、これらのうちNAPIの数字をベースに記述を進める。 (2)年齢別・ブランド別輸入状況 年齢別の状況 NAPIによれば、最近、輸入中古車の「若年化」傾向が顕著になっており、 2007年に輸入された中古車の71%が車齢3~7年のものだったとされている(『アフトビジ ネス』誌、2008.5)。中でも車齢6年の車(2001年製造の車)の割合が非常に高く、全体の 24%以上を占めた。また車齢2年以内の車の割合も、2004年:14%、2005年:16%、2006 年:22%と増加傾向にある。一方、2002年に中古車の輸入関税率が改訂され車齢7年を超 える中古車に高い輸入関税率が適用されるようになって以降、7年超の車の割合は減少傾 向にあり、2007年時点で約7%程度にとどまっている。ちなみに、ロシア政府は、車齢7 年超の中古車に適用されている高い関税率を5年超の車にも適用することを現在検討して いるが(『ヴェードモスチ』紙、2008.5.28)、実際に引き上げが実施されれば、輸入中古車 の若年化傾向はさらに加速することになるであろう。 ブランド別の状況 2007年に輸入された中古車を国別に分類すると、日本車のシェアが圧 倒的に大きく、全体の77.8%に達している(日本車のほとんどが右ハンドル車となっている)。 以下、米国車(8.6%)、欧州車(6.8%)と続く。その他、以前は中古車市場ではあまり人 気のなかった韓国車が最近急激にプレゼンスを強化してきており、2005年時点で4.5%であ ったシェアが2007年には6.8%にまで伸びた。 圧倒的なシェアを誇る日本車の中でも最も人気が高いのはトヨタ車で、2007年には前年 比38%増の11万9,896台が輸入された1)。トヨタ車に次いで輸入台数が多かったのは日産車

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で、その数は7万6,819台に達した2)。以下、その他の日本メーカーの中古車の輸入台数は、 ホンダ:3万8,133台、マツダ:3万7,569台、三菱:3万3,962台、スズキ:1万1,842台、 スバル:1万1,786台、レクサス:2,162台、ダイハツ:1,587台、いすゞ:602台、インフィ ニティ:501台となっている。 日本メーカー以外では、現代(2007年の輸入実績は1万7,499台)、フォード(1万4,444 台)、シボレー(1万1,387台)、オペル(8,971台)、起亜(6,580台)、ダッジ(クライスラー のブランド:6,017台)、VW(5,950台)、クライスラー(4,148台)等の中古車の輸入台数が 多くなっている。 (3)輸入中古車市場の今後の展望 輸入中古車の市場規模は、短期的にはまだ伸びる余地はあるが、中長期的に見た場合、 縮小する可能性の方が高いと考えるのが妥当ではなかろうか。筆者がそう考える理由は、 ①既述の通り、製造後5年超の中古車の関税率が今後大幅に引き上げられ、その輸入が困 難になる可能性が存在する、②現在外国新車の販売台数が急増しているが、その結果2~ 3年後に外国ブランドの中古車が牽引する形で国内転売中古車市場が大幅に拡大し、輸入 中古車市場を圧迫する可能性が高い、③ロシアでは中古車の減価率(価値が目減りする度 合い)が非常に低いのだが(この点については、後で詳しく説明する)、今後、国内で転売 される外国ブランドの車の数が急増するにつれ中古車の値崩れ現象が起こり中古車輸入ビ ジネスの利益率が低下する可能性が高い、といったファクターが存在するからである。 その他、その都度失敗に終わっているものの、これまで何度かロシア政府が右ハンドル 車の輸入を禁止する動きを見せてきた関係で、極東やシベリアでは右ハンドル車の将来性 に漠然とした不安を抱くユーザーが最近増えてきているとの情報が一部に存在するが(『エ クスペルト』誌、2007.12.24)、そのことが日本からの中古車の輸入状況に影響を及ぼす可 能性も否定できない。最近、極東やシベリアでは米国や韓国からの中古車の輸入台数が増 加傾向にあるといわれているが、その背景に右ハンドル車に対する漠然とした不安感が潜 んでいる可能性も否定できない。

2.国内転売中古車市場の状況

(1)市場規模 国内転売中古車市場は、輸入中古車市場よりもさらに不透明さが際立っている。個人間 の取引が圧倒的に多い関係で、その実態を把握することは事実上不可能に近いといわれて いる。このため、その市場規模については憶測の数字しか存在せず、当然ながら出所によ り数字が大きく食い違っている。たとえば、投資会社「AG Capital」のアナリストのアギバ

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ロフは2007年の市場規模を200万台以上と評価している(『アフトニュース』誌、2008.2.5)。 一方、ロシアの投資会社「ルネッサンス・カピタル」は2007年の市場規模を約80万台と 評価しており、その内訳は純国産車の転売数が69万5,000台、ロシア製の外国車の転売数が 2万台、輸入車の転売数が8万5,200台とされている(『ヴェードモスチ』紙、2008.2.29)。 この他、ルネッサンス・カピタルは市場予測も行っており、今後国内転売中古車の市場 規模は2008年:85万900台(純国産車:69万1,000台、ロシア製外国車:3万6,000台、輸入 車:12万3,900台)、2009年:94万4,100台(69万台、6万3,000台、19万1,100台)、2010年: 108万6,700台(67万2,000台、10万9,000台、30万5,700台)、2015年:249万8,500台(60万2,000 台、70万台、119万6,500台)と、急ピッチで拡大していくとされている。 この予測数字の信憑性はともかく、「国内転売中古車市場が今後急ピッチで拡大する可能 性が高い」という認識は、ロシアの多くの自動車市場アナリストに共通のものであると考 えてよい。 (2)国内転売中古車の販売形態 ロシアの国内転売中古車市場の8~9割は、中古車情報紙(「Из рук в руки」が最も有名)、 インターネット(「Из рук в руки」の電子版(www.irr.ru)も存在する)、知人・友人の紹介、 中古車青空市場(いちば)等を経由して行われる個人間の取引により占められている。 中古車青空市場としてはウラジオストクのグリーンコーナーが有名だが、同様の青空市 場はモスクワにも存在する。最も有名なのはアフトガラント(www.avtogarant.ru)で、同市 場では3,000台以上の中古車が展示されるといわれている(『カンパニヤ』誌、2007.11.12)。 また、モスクワではムィチシンスキー自動車市場(www.autorynok.ru)も有名で、アフトガ ラントに匹敵する規模を有している。その他、カローメンスキーという青空市場も右ハン ドル車の品揃えが豊富なことで有名だったが、モスクワ市当局が青空市場規制の方針を打 ち出したこともあって、2006年春に閉鎖されている。ちなみに、アフトガラントやムィチ シンスキーに関しても、今のままの形では生き残ることが難しいのでは、との見方が優勢 となっている。 既述の通り、青空中古車市場では個人間取引が中心となっている(売り手は、中古車市 場の主催者に場所代を支払い、中古車を展示する)。その関係で、青空市場の主催者が把握 できないような形で(たとえば市場の外で売り手と買い手が話し合って)取引が成立する ケースも少なくなく、中古車市場経由での中古車販売台数を正確に把握することは困難に なっている。ただ、一部の情報によれば、アフトガラントやムィチシンスキー青空市場で は最近、販売台数が減少傾向にあるといわれている(www.autonavigator.ru)。一般的に青空 市場では犯罪に関連した車や隠れた欠陥を有する車(事故車、盗難車、水没車等)が展示 されているケースが多いのだが、購買力の上昇に伴い品質の良さにこだわるユーザーが多

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くなっているモスクワでは、「安かろう、悪かろう」のイメージが付きまとう青空市場が敬 遠され始めているのかもしれない。ちなみに、アフトガラントなどはこの点を明確に認識 しており、中古車購買者を対象とした保険サービスを最近開始している。保険の掛け金は 1万4,000ルーブルから7万1,000ルーブルで、購入した車に欠陥があった場合、最大で20万 ~180万ルーブル分の補償を受けることが可能となっている3)。また、予見できなかった欠 陥が発見されたときは、アフトガラントが全額負担で修理および部品の交換を行うか、車 の交換に応じることになっている。 (3)下取りサービスの発展の可能性 青空市場やインターネットを通し販売される中古車への不信感が大都市部を中心に高ま る中、今後は、ディーラー下取り車の販売台数が急激に増加する可能性が高いとの見方が 最近市場関係者の間で広がりつつある。下取り車は素性がはっきりしており、盗難車はい うまでもなく、事故車や水没車が混入している可能性も極めて低いからだ。ただ、今のと ころ、ロシアでは下取りサービスがあまり普及しておらず、ディーラー下取り車市場の拡 大の可能性は理論上のものにとどまっている。 以下では、ロシアにおける下取りサービスの現状を紹介した後、同サービスの普及を阻 害している主要な要因について説明する。 下取りサービスの現状 現在、ロシアで下取りサービスを利用して新車を購入するユーザ ーの割合は、モスクワなどの大都市で20~25%だといわれている。地方部に行くとこの割 合はさらに減少し、大ウラル地方では約2%程度にすぎないとされている(『エクスペル ト・ウラル』誌、2007.10.29)。ロシア全体の平均値に関しては諸説が存在するが、モスク ワを拠点とする大手ディーラーのインコム・アフトによれば約17%とされている(『ヴェー ドモスチ』紙、2008.2.2)。 欧州、米国、日本などでは既存車を下取りに出し新車を購入するユーザーの割合は新車 市場全体の5割を超えるといわれているので、ロシアでは下取りサービスがまだまだ未発 達だと言ってよいであろう。 下取りサービス未発達の主因 ロシアで下取りサービスが未発達な主な理由としては以下 の2つの要因が考えられる。 第1に、税制の問題である。ロシアでは自動車ディーラーが既存車を下取りして、それ を転売した場合、その差額に対してではなく、転売額全体に付加価値税(18%)が課せら れることになっている。たとえば、ディーラーが既存車を80万円で下取りして100万円で転 売した場合、その差額の20万円に対し付加価値税が課せられるのではなく、100万円に対し

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課せられることになる。すなわち、3万6,000円ではなく18万円を納付する必要がある。こ の税制がネックとなり、ディーラーが下取り車の販売で利益を確保することは事実上不可 能となっており、ロシアにおける下取りサービスは特異な形態をとることを余儀なくされ ている。具体的に言えば、ほとんどのディーラーは既存車をユーザーから実際に買い取る のではなく、既存車の展示用のスペースを提供し、売買契約が成立したら仲介手数料を受 け取るという形をとることを余儀なくされている。そして、ディーラーは受け取った仲介 手数料に対し付加価値税を支払うのである。さらに、このような取引の場合、ディーラー は既存車が売れる前の段階で、新車の代金から一定額を差し引き、既存車の売買取引成立 後に最終的な精算を行うという形をとることが多いようである。このように、ロシアでは 税制上の問題が存在するため、ディーラーが下取りサービスを実施するにあたっては非常 に複雑な取引形態を採用することを余儀なくされているのだが、このことがロシアで下取 りサービスが未発達であることの主因のひとつとなっている。 このため、ロシアの自動車ディーラーの業界団体4)は2年ほど前から、下取り車販売に 対する課税システムの変更を求め積極的なロビー活動を行ってきたが、2008年2月にそれ が結実し、「統一ロシア」の複数の下院議員が、「下取り車の販売の際に、ディーラーは販 売価格に対してではなく、下取り価格と販売価格との差額に対して付加価値税を納付する」 という内容の法(税法典第154条)改正案を連邦下院に提出した(『RBKデイリー』紙、 2008.2.20)。5月後半にタタールスタンのエラブガで実施された自動車産業振興をテーマと する会議の際にプーチン首相もこの法改正案を支持したといわれており5)、この改定案が 採択される可能性は非常に高くなっている(『RBKデイリー』紙、2008.5.28)。 ただ、この改正案にもひとつ問題がある。それは、「下取り車が製造後3年以上経過した 車である場合にのみ、新しい付加価値税課税システムが適用される」と規定されている点 である。これは、製造後3年未満の下取り車には従来の課税システムが適用されることを 意味する6)。現在、中古車市場で車齢3年未満の車の人気が高まっていることを勘案する と、仮に新しい課税システムが導入されても、そのことが下取りサービスの急激な拡大に 直結しないというシナリオも充分に考えられるような気がする。 第2に、ロシアで下取りサービスがなかなか普及しないもうひとつの理由は、中古車の 価格に対する認識が、中古車の売り手と下取りを行うディーラーとの間で大きく異なる点 にある。つまり、売り手が提示する金額とディーラーが提示する下取り価格との間の差が 大きすぎて、取引が成立しないケースが非常に多いのである。これは、売り手が根拠とし ている中古車の価格評価基準と、ディーラーが根拠としている価格評価基準がまったく異 なるために生じる現象だと判断される。 中古車の売り手の方は、中古車青空市場に展示されている中古車の販売希望価格や中古 車情報紙(あるいはインターネット)に示されている販売希望価格を参考に自分の中古車

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の価値を判断することが多い。青空市場や中古車情報誌で示されている価格は、あくまで 売り手が希望する価格であって、実際の取引価格ではないので、当然ながら相場よりも高 めの価格となる。 一方、ディーラーの提示する評価額は、中古車の在庫を抱えるリスクや中古車の販売前 の整備費用などを考慮するので、かなりシビアなものとなっている(表1)。日本では、3 年経過の中古車の場合、人気モデルで状態が非常に良くても、その価値は新車時の6~7 割未満になるといわれているようだが(ガリバーのHP等より)、ロシアのディーラーの評 価基準もそれと類似しているように思われる。様々な情報から判断して、各ディーラーは、 「1年目で新車時と比較して価値が20%以上下落し、2年目と3年目で10%以上ずつ減価 する(つまり3年間で減価率が40%以上に達する)」との認識を持っている可能性が高い。 ちなみに、ディーラーの下取り価格は中古車市場の相場よりも10~20%以上安いという見 方がロシアでは一般的となっているようである(『エクスペルト』誌、2007.7.16等)。 さらに、ロシアでは肝心の中古車の相場価格(中古車の標準的な減価率)に関しても諸 説が存在し、決定版と断言できる数字が存在しない。このことも、下取りサービスの普及 を阻害する要因のひとつだといえよう。ただ、ロシアでは一般に中古車の減価率が欧米や 日本と比較すると非常に小さい(つまり、ロシアでは中古車の価値があまり下がらない) といわれており、2007年11月17日付けの『カンパニヤ』誌によれば、3年落ちの中古車の 減価率(3年経過した時に、新車時と比較してどの程度価値が下がったかを示す数字)は、 平均で15~25%だとされている。 表1 大手新車ディーラーの中古車査定事例 モデル名 新車時の価格、ドル 3年後の価格:走行距 離6万kmの場合、ドル ロルフ・ヒーミキの評価 LADA-2110 トヨタRAV4 2.0AT アウディA6 2.4 フォード・フォーカス2.0AT 8,416 33,600 51,400 17,400 5,500(減価率:35%) 23,500(30%) 33,000(36%) 11,000(37%) Majorの評価 LADA-2110LM/T フォード・フォーカス1.8LM/T トヨタRAV4 2.0 AT アウディA6 3.0 8,000 15,500 34,000 66,000 4,500(44%) 10,000(35%) 23,000(32%) 30,000(54%) (出所)『コメルサント・ジェーニギ』誌、2005.2.12。

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これはどの国でも同じだと思うが、ロシアでも比較的安価で人気の高いモデルほど減価 率が低いといわれている。意外であるが、ロシアの純国産車の減価率も比較的低く、一部 情報によれば、ラーダの10シリーズで20%前後だとされている(『エクスペルト・ウラル』 誌、2007.10.29)7)。これは、恐らく、価格が安い分「回転率」が非常に高いからであろう。 ある情報によれば、外国ブランドの中古車の場合、売れるまでに平均で3~4週間かかる が、純国産の中古車の場合は3~7日で売れるとされている(上掲『エクスペルト・ウラ ル』誌)。一方、高級外車の減価率は全般に高くなっているが、その理由のひとつは価格が 高いので「回転率」が悪いことにあるのではないかと推測される。 表2 大ウラル地方の中古車市場における主要モデル別減価率 モデル名 3年間での 減価率 (%) 2006年時点の 新車価格 (1,000ドル) 新車発注から納 入までにかかる期 間(最大)、(月) フォード・フォーカス ルノー・ロガン 三菱ランサー(Ⅸ) 大宇ネクシア シボレーNIVA 現代アクセント 日産アルメーラ トヨタ・カローラ 起亜スペクトラ 大宇マチス トヨタ・カムリ マツダ3 フォード・フュージョン シボレー・ラセッティ 現代ゲッツ トヨタ・アベンシス マツダ6 現代Tucson ルノー・メガーヌ トヨタRAV4 日産プリメーラ フォード・モンデオ 現代ソナタ 日産X-Trail 10 17 23 29 28 23 10 18 21 24 26 8 7 20 12 16 23 24 22 19 19 12 16 20 11.7~ 9.0~ 14.5~ 8.2~ 12.2~ 11.5~ 15.8~ 17.4~ 13.2~ 6.4~ 29.8~ 17.1~ 13.5~ 13.4~ 10.2~ 23.7~ 22.9~ 26.7~ 15.5~ 32.4~ 21.9~ 21.1~ 18.9~ 26.5~ 6 3 2 1 1 3 3 10 6 1 3 6 4 2 4 2.5 4 2 3 5 - 2 3 2 (出所)『エクスペルト・ウラル』誌、2007.10.29。

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大ウラル地方の中古車市場におけるモデル別の減価率を表2で紹介しておくが、ややそ の数字が小さすぎるとの印象が強く8)、あくまで参考程度の扱いにとどめておいていただ ければ幸いである。 大手ディーラーの下取りサービスへの対応 下取り車の販売の際に適用される税制がディー ラーに有利な形で改正される可能性が高いこと、新車の販売台数が急激に伸びていること、 新車販売の利益率が低下していること等のファクターを背景に、最近、下取りサービスの 強化(中古車販売部門の強化)に注意を向けるディーラーの数が増加してきている。その 中でも、最も積極的な姿勢を示しているのはロルフであろう。同社は、2007年春ごろに、 ブルーフィッシュ(www.bluefish.ru)という専門子会社を設立し、中古車の下取り・販売業 務に取り組み始めている。当初は、もっぱらランサーⅩの購入希望者を対象にランサーⅨ だけを下取りし、それを整備した後に販売していたようだが(『カンパニヤ』誌、2007.11.12)、 同社のホームページを見る限りでは最近は対象車種の範囲が広がったようで、販売中の中 古車の中に他の三菱のモデルや、他の外国メーカーのモデルの名も見出すことができる。 中古車の下取りおよび販売に力を注いでいるその他の大手ディーラーとしては、アフト ミール(www.avtomir.ru)、Major(www.major-auto.ru)、インコム・アフト(www.incom-auto.ru) 等の名前を挙げることができる。これらのディーラーのホームページには中古車販売情報 コーナーが存在し、販売中の中古車の主要指標や写真を見ることが可能となっている (Majorの場合は、www.major-used.ruという中古車専門サイトを保有している)。 その他、2008年7月中旬には、ラーダ車のディーラーとして有名なファヴァリト・モー タースが、日本のM&Aコンサルティング社との間にYoshida Corp.という合弁企業を設立し、 中古車のインターネット・オークション・サイトを立ち上げる計画を発表して話題となっ た(『コメルサント』紙、2008.7.16)。

おわりに

外国ブランドの新車の販売台数が急激に伸びているという事実(2007年は前年比65%増 の165万台、2008年上半期は前年同期比47%増の105万台の販売を記録した)や、製造後3 年未満の中古車が対象外という問題はあるものの、下取り車の販売に適用される税制がデ ィーラーに有利な形で変更される可能性が高いことなどを勘案すると、今後、外国ブラン ドの国内転売車の市場が急激に拡大するのはほぼ間違いないように思われる。 現在、ロシア市場では、新車、中古車を問わず外国ブランドの車の品不足感が強く、そ のことがロシアにおける中古車の減価率の低さの主因のひとつになっているものと推測さ れるが、国内市場を発生源とする外国ブランドの中古車が大量に出回るようになれば、恐 らく、中古車の減価率が欧米並みに高くなるであろう。つまり、中古車の価格が今後大幅

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に下落する可能性が存在する。 その結果、安価で比較的状態の好い外国ブランドの中古車が市場に大量に出回るように なる可能性が高いが、そのことは、低価格セグメントを中心に新車市場にも大きな影響を 及ぼすことになるであろう。また、中古車の輸入ビジネスに大きな打撃を与える可能性も 高い。中古車の減価率が高まれば、当然、中古車の輸入ビジネスの利益率は低下すること になるからだ。とくに、国内市場を起源とする中古車が大量に出回っている一部のモデル に関しては、値崩れが極端に大きくなる可能性も否定しきれない。今後は、中古車の輸入 業者も、外国新車市場の動向を注意深く観察し、希少価値のあるモデル(ロシアの外国新 車市場にあまり出回っていないモデル)の中古車を中心に輸入を行うなどの工夫をする必 要性に迫られるかもしれない。

【注】

1)トヨタ車の場合、新車の販売も非常に好調なため、ロシアでの登録台数が急激に増加しており、 2007年時点で160万~170万台に達している(『スマートマネー』誌、2008.6.30)。トヨタ車が最も多 く登録されている地域は極東連邦管区で58万台に達する。以下、シベリア連邦管区:49万台、中央 連邦管区:22万台、ウラル連邦管区:13万台と続く。 2)日産もトヨタ同様に新車の販売も好調なため、登録台数が急激に伸びており2007年時点で約70 万台に達した。ちなみに、日産車の場合も最も登録台数が多い地域は極東連邦管区で、約19万台に 達している。以下、中央連邦管区:16万台、シベリア連邦管区:15万台と続く(『スマートマネー』 誌、2008.6.30)。 3)ただし、アフトガラントは事前に、購入者側の費用負担で当該の中古車の診断を念入りに行う。 そして、その診断で問題なしと認められた場合にのみ保険付保を認める(『カンパニヤ』誌、 2007.11.12)。 4)業界団体の名称は「ロシア自動車ディーラー協会」(ROAD)で、2008年6月時点で、モスクワ のディーラーを中心に約70社が加盟していた。 5)この会議の際、プーチン首相は、①部品メーカーに対する工業アセンブリー措置の適用の再開の 必要性(この場合の工業アセンブリー措置とは、一定の条件を満たした自動車部品工場に部品生産 用の原料・部品の輸入関税上の特典を供与するという措置。この措置の適用は2007年11月で一度打 ち切られていたが、自動車部品部門の育成が必要との認識からプーチン首相は、その措置の再開を 主張し、その旨を記した新しい指令の作成を関係省庁に命じた模様である)、②極東・東シベリア 地方の自動車(完成車)工場への工業アセンブリー措置の適用の必要性(完成車工場に対する工業 アセンブリー措置の適用も2007年11月に締め切られている)、③ロシアで生産することが不可能な 自動車用鋼板の輸入関税をゼロにする措置の適用の必要性等を明言したようである。 6)Genserというモスクワを拠点とする大手ディーラーのイーゴリ・ポノマリョフ会長は、「仮に付 加価値税に関する法律が改正されても、そのことが即座に中古車の販売の拡大につながることはな いだろう。製造後3年未満の中古車には従来どおりの課税方式が採用されるからだ。」という主旨 の発言を行っている(『RBKデイリー』紙、2008.6.17)。 7)この数字は純国産車の人気が高い大ウラル地方でのものなので、純国産車の人気が低いモスクワ などの大都市部では、減価率がもっと大きい可能性が存在する。 8)実際の取引実績ではなく、中古車を売る側の販売希望価格をベースとした減価率の数字である可 能性も否定できない。 (ロシアNIS経済研究所 次長 坂口 泉)

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トピックス

◇三菱自、マツダがロシアで新型モデルを初公開

三菱自動車工業株式会社およびマツダ株式会社は、2008年8月26日~9月7日に開催さ れる「モスクワ国際オートサロン2008」(Moscow International Automobile Salon 2008)にお いて、新型モデルを世界に先駆けて披露すると発表した。 三菱自動車が公開するのは、2008年秋以降にロシアで発売予定の新型SUV「パジェロス ポーツ」。 同社はセダンとSUVの販売が好調のロシア市場において、2007年度に約10万台 を販売している。2007年に投入したスポーツセダン「ランサー」(日本名「ギャランフォ ルティス」)に加え、今回「パジェロ スポーツ」を投入することで、「パジェロ」「アウ トランダー」と合わせSUVの販売を拡大し、2008年度には14万台の販売を見込んでいる。 マツダは新しいスモールクラスのスポーティなSUV「マツダ風舞(かざまい)」を公開 する。また、2008年2月に北米で「2008年ノース・アメリカン・トラック・オブ・ザ・イ ヤー(2008 North American Truck of the Year)」を受賞した「マツダCX-9」もロシア初公開 として出品。SUVの構成比が大きいロシア市場で現地発売前のアピールを行うという。 ◇コマツがロシア工場の起工式 『日本経済新聞』(2008.7.22)等によると、コマツは7月21日、モスクワの北東約280km に位置するヤロスラヴリ郊外で建設機械の生産工場の起工式を行った。2010年6月から本 格的生産を開始し、2011年の生産能力は、油圧ショベル3,000台、フォークリフト7,000台を 予定している。起工式に出席した野路国夫社長は「ロシアで外国企業が建設機械の組立工 場を設置するのはこれが初めてとなる。コマツは旧ソ連以来、約40年間建設機械を供給し てきた歴史があり、今後もロシアと互恵的な関係を目指す」と述べた。 ◇ノーリツがロシアに給湯器輸出 株式会社ノーリツは7月23日、同月中にロシアへの給湯器輸出を開始すると発表した。 まずは商業用のタンクレスガス給湯器をレストラン向けなどに、現地代理店を通じて販売 する。ノーリツは、ロシアでは老朽化などにより年間200万台程度の温水機器の需要を見込 んでおり、2007年9月にモスクワ事務所を設置、フィールドテストなどを実施してきた。 ◇三井物産がウズベクと合弁設立で合意 三井物産株式会社は7月17日、ウズベキスタン政府の地質鉱物資源国家委員会との間で、 ウズベキスタン国内の黒色頁岩型ウラン資源開発の地質調査活動を行う合弁会社設立を検 討する旨の基本合意書に調印した。同書の締結により、三井物産は地質鉱物資源国家委員 会から18カ月の独占交渉権を付与され、両者による共同探査に向けての実施要領、合弁会 社の設立および探査の履行に関する詳細協議に入る。共同調査の対象として選定された鉱 区は、ナヴォイ市北西約300kmに位置するザパドゥノ・コクパタスカヤ鉱区。同鉱区では 黒色頁岩型ウラン鉱床が見込まれており、探査により商業生産に適したウラン資源が確認

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された場合、生産されるウランはウズベキスタン国外の電力会社向けを中心に、全て発電 用燃料として輸出される予定である。

エ ト セ ト ラ

◇ROTOBOロシアセミナーのご案内 ロシアNIS貿易会では、6月に当会会員向けに実施した ROTOBOロシアセミナーに引き続き、ロシア市場への進出を検討されている企業の方々、 あるいはすでにロシアビジネスを展開されている企業にあって新たにロシア担当になられ た方々を対象に、来る7月30日、同様のテーマでセミナーを開催いたします。この機会に ロシア市場へのご理解を深めていただければと存じます。なお、このほど、当会の常務理 事として治田彰が新たに就任いたしました。今回のセミナーでは、治田常務理事からもご 挨拶させていただく予定でおります。 当セミナーの参加費は、会員は無料、非会員は2,000円(当日、受付にてお支払いくださ い)です。ただし、会場のキャパシティの関係で、会員企業からの参加は1名様までとさ せていただきます。また、定員60名に達し次第、締め切らせていただきますので、何卒ご 了承ください。参加をご希望の方は、お申し込み用紙にご記入のうえ、ファックスでお送 りください。 詳しくは→ http://www.rotobo.or.jp/activities/20080730semi.pdf ◇『調査月報』2008年8月号のご案内 当会『ロシアNIS調査月報』2008年8月号(2008年7 月20日発行)のご案内を申し上げます。 『ロシアNIS調査月報』2008年8月号 特集◆ロシア国民の健康と美容 ロシア社会と人口問題 ―適応症候群は回復に向かっているか?- 国家優先プロジェクトとロシア医療の動向 健康志向の観点から見たロシアのビール・タバコ市場 ビジネス最前線 ロシアでの営業体制構築と医療機器販売 (島津ヨーロッパ モスクワ事務所 所長 姫野竜一さん) 化粧品カウンセリング販売でロシア女性を魅了 (㈱ポーラ 取締役 海外事業本部長 田代真さん) ミニ・レポート ロシア医薬品市場の成長動向 拡大するロシアの民間歯科市場 ロシアの眼鏡・コンタクトレンズ市場 フィットネスクラブとスポーツ用品市場 ◇ ◇ ◇ 第38回ロシアNIS貿易会定時総会報告 データバンク 2007年のロシア極東の外国投資受け入れ状況 詳しくは→ http://www.rotobo.or.jp/publication/geppou/g200808.htm

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ロシアNIS貿易会関連の行事予定

◇7月30日 13:30~15:30 「ROTOBOロシアセミナー ―ロシア市場参入を目指す日系企業の ために」 (於:如水会館) →http://www.rotobo.or.jp/activities/20080730semi.pdf ◇9月4~6日 第3回日露投資フォーラム (於:サンクトペテルブルグ) →http://www.rotobo.or.jp/activities/forum3/index.htm

ロシア・NIS諸国通貨の為替レート

(2008年7月24日現在) 国・通貨単位 $1= €1= \100= ロシア・ルーブル ウクライナ・グリブナ ベラルーシ・ルーブル モルドバ・レイ カザフスタン・テンゲ キルギス・ソム ウズベキスタン・スム トルクメニスタン・マナト タジキスタン・ソモニ アゼルバイジャン・マナト アルメニア・ドラム グルジア・ラリ 23.20 4.841 2,116 9.769 120.2 35.30 1,314 5,200 3.429 0.807 301.3 1.400 36.94 7.620 3,330 15.37 188.9 55.98 2,086 8,158 5.437 1.274 473.7 2.207 21.77 4.489 1,964 9.064 111.5 33.20 1,231 4,821 3.219 0.752 279.4 1.300 モンゴル・トゥグリク 1,156 1,823 1,074 発行所

社団法人 ロシアNIS貿易会

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* * * * * 年間購読料 eメール配信 18,000円 ハードコピーの郵送 23,000円 購読のお問い合わせ・お申し込みは ロシアNIS経済研究所 Tel(03)3551-6218 quick@rotobo.or.jp(本アドレスは購読のお問い合わせ・お申し込み専用です) * * * * * Copyright©ロシアNIS貿易会 2008 掲載記事の無断転載を禁じます

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