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大学生の就職活動を成功させる要因:展望論文

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背景と目的 就職は大学生にとって大きな関心事であ る。高校生が進学先を選ぶ際,将来のキャリ アや就職を「とても意識した」あるいは「や や意識して選んだ」のは全体の54.8%であっ た(株式会社ディスコキャリタスリサーチ, 2018)ことから,多くの学生が入学前から既 に就職に関心を持っていることがわかる。ま た同時に,就職に不安を感じる学生も多い。 独立行政法人日本学生支援機構(2018)の 行った平成28年度学生生活調査における「希 望の就職先や進学先へ行けるか不安だ」との 問 い に,「 大 い に あ る32.1 %」「 少 し あ る 37.2%」と約7割の学生が答えている。就職 活動は大多数の学生にとって未知の経験のた め,関心と不安が入り混じるイベントである と考えられる。 大学生の就職活動を取り巻く環境自体も昨 今は不安定なものであり,特に1990年代後半 から現在まで,「採用スケジュール」「就活 ツール」「選考プロセス」において大きく変 化してきた。採用スケジュールは,1997年に 就職協定が廃止され,より拘束力の弱いガイ ドラインとしての日本経団連倫理憲章への変 更に伴い,広報活動の記載が無くなり,実質 的に早期化に拍車がかかった。そのため,表 面的に定められた採用スケジュールとそれを かいくぐろうとする企業の動きに,学生は対 応せざるを得ない状況になっている。就活 ツールとして,1997年にインターネットを利 用した就職支援サイトが出来,インターネッ ト上でのエントリーが一般化した。ハガキな どで資料請求や応募を行った時代に比べ応募 が容易になった。これに伴い,応募企業数は 1992年 の 平 均 が5.1社( 日 本 労 働 研 究 機 構, 1994)であったのに対し,2017年は15.82社(株 式会社リクルートキャリア, 2018)と増加し ている。企業側は応募した多くの学生から厳 選するために選考プロセスを多層化させてい る。インターネットによるエントリー,説明 会への参加,エントリーシートの提出,適性 テスト,グループディスカッション,集団・ 個人面接と多くのステップを用意している。 しかし,企業の採用基準は学生側からすれば あいまいなままである。そのため,学生は高 い倍率をくぐり抜けなければ内定を獲得でき ない状況にもかかわらず,選考に臨むにあた りどのように対策すべきなのか試行錯誤して いる。 また,大学の大衆化に伴い大学生自体も 1990年代後半から変化している。大学への進 学 率 は,1994年 に30 % を 超 え,2009年 に は 50%を超えて2017年は54.7%(文部科学省, 2017)となり,2人に1人が大学生になる時代 となった。そして,文部科学省の学校基本調 査によると,1992年に高校卒業者のうち大学

Positive effects of students’ job hunting: A literature review

鶴 田 美保子

Mihoko TSURUTA

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進学者が就職者を上回り,1990年代後半以降 には短期大学卒業者も減少していることか ら,1999年以降は新規学卒就職者の中で,大 学卒業者が最大の割合を占めるに至っている。 上記の時代背景のもとで,心理学・社会 学・教育学・経営学を中心に,青年のキャリ ア意識とキャリア行動に対する学術上の関心 が高まり,多くの研究が行われた。 そこで本研究では大学生の就職活動の成果 に影響を与える要因に関する国内論文を概観 し,研究動向を明らかにするとともに,今後 の課題を考察する。 方 法 文献は国内のWEB文献検索エンジンCiNii Articlesを 使 用 し, キ ー ワ ー ド を「 大 学 生 」 と「就職活動」に設定した。その中から就職 活動における成功要因に関する実証的研究文 献を抽出し,「著者」「研究デザイン」「調査 内容(対象性別,活用尺度等,目的,結論)」 について整理した。 結 果 大学生の就職活動を成功させる要因に関す る国内の研究を調査するにあたって,CiNii Articles にて「大学生」と「就職活動」とい うキーワードで検索を実施した結果,1989年 から2017年までの349件が検出された。その うち内定獲得という就職活動の成果に関連す る要因を明らかにする目的で大学生を対象と した実証研究に限定した原著論文は23件(表 1−1・2)であったため,これらを分析の対 象とした。 抽出した大学生の就職活動を成功させる要 因は,KJ法を用いて,「特性(心的要因・能 力要因)」「行動(大学生活要因・就職活動要 因)」「環境(大学要因・人脈要因・家庭要 因)」に分類することとした(表2)。この分 類ごとに概要を述べる。 特性 〈心的要因〉 心的要因に分類した成功要因は,「就業意 識」「キャリア志向」「プロアクティブパーソ ナリティ」「キャリアパースペクティブ」「特 性的自己効力」「キャリア選択自己効力感」 「自尊感情」である。 永野(2005)によれば,強い就職意識を持 つ大学生は就職活動に成功しやすい。就職意 識を考慮しない場合には,入試難易度で見た 出身大学の違いが就職活動の成否に影響を与 えていたが,就職意識を考慮した場合には出 身大学の違いは影響しなかった。また,就職 を自らの問題として意識するのに適切な時期 は,大学1・2年であることがわかった。少し 前に意識付けを行うことが,就職活動に不可 欠な自己分析や就職情報の収集などに良い作 用を及ぼすのかもしれないと指摘している。 中島・無藤(2007)は,キャリア志向の中で も特に対人志向が,「就職への動機づけ・意 思」を介して,情報収集することや計画を立 てるなどの直接的な求職行動と就職の達成に 寄与することを明らかにした。平尾(2011) は,就業体験が働く意欲・就職活動への意識 を高める効果は大きく,このことが高い内定 率につながっていると示唆した。鶴田(2013) は,プロアクティブパーソナリティが情動知 能の3つの下位因子のうちの一つである対人 対応能力とキャリアパースペクティブを介し て就職活動最終ステージへ効果を及ぼすこと を示した。佐藤(2014)は,特性的自己効力 が高いほど進路先が決定していることを明ら かにした。高階(2014)は,キャリア選択自 己効力感は,単独で様々な情報収集・自己分

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文献 番号 著 者 研究 デザイン 調 査 内 容 対象 性別 活用尺度等 目   的 結   論 1 下村・木村 (1997) 量的研究 男女 下村らのソーシャルサ ポート尺度 , 下村らの 職業レディネス尺度 大学生の就職活動に関するストレスとソーシャルサポート および就職活動に対する満足感, 就職活動の内容について, 性別・就職活動に対する関与別に検討する 男性・女性ともに就職活動に対する関与の高い者ではおおむね就職活動の積極的満 足感とソーシャルサポートの関連が見られた 2 下村・堀(2004) 量・ 質的研究 男女 自作の質問紙 自由記述 大学生の就職活動における就職サイト ・ OB/OG ・友人の 3 つの情報源から入手される情報の機能について検討し , こ れら 3つの情報源が大学生の就職活動結果に与える影響を 検討する OB/OG 情報が重要な要因となっていた 3 永野(2005) 量的研究 男女 自作の質問紙 就職活動に成功する要因を明らかにするために ,「出身大 学」や 「大学での成績」などの客観的な要因に ,大学生自 身の就職意識という要因を加えて分析する 「是が非でも就職を決めたい」という就職についての強い意識を抱いた場合 ,就職 活動に成功しやすいことがわかった 「大学での成績」や「ゼミ活動」 ,さらに「サークルや部活」という大学生活の中心 部分での活動も,就職活動の成功要因であった 4 藤島・三浦・ 清水・髙橋 (2006) 量的研究  女 島井らの日本版主観的 幸福感尺度 キャリア選択における様々な具体的活動の頻度 ,希望業 種・職種の限定状況と就職内定獲得との関連を検討する また ,各ネットワークの活用度とメンタルヘルスの一側面 である主観的幸福感との関連も併せて検討する 学生の主体的な活動は就職内定獲得と関連があった 全般的に希望業種 , 職種とも 2種前後に限定されており ,時が進むにつれてさらに 限定される傾向にあった 進路支援センターに相談に行った学生は内定を獲得しやすかった キャリア選択の活動頻度と主観的幸福感との間には総じて相関関係が認められな かった 5 中島・無藤 (2007) 量的研究  女 安達の就業動機尺度, 中島のコントロール尺 度 就職活動におけるキャリア志向 ,就職活動プロセス ,就職 達成の関係について検討する 挑戦志向と対人志向の両キャリア志向は「就職への動機づけ・意思」を介して求職 行動に寄与していた また,この直接的な求職行動は就職の達成に寄与していた 6 島井・大竹・ 宇津木(2007) 量的研究  女 内山らの情動知能尺度 大学生における情動知能の諸側面と就職活動の実績および 大学教育との関係について検討する 情動知能は就職活動およびその成果と深い関係にある ゼミなどの双方向的な授業における積極性は,情動知能の高さとの関連が深い 7 田中・宇津木 (2010) 量的研究 男女 内山らの情動知能尺度 情動知能の高い学生が満足のいく採用結果を得られるのか を調べる 情動知能得点の高い学生は人気企業から早期に内定を獲得する 8 柴田・安住 (2011) 量・ 質的研究  女 浦上の進路選択に対す る自己効力尺度 ①4年生の進路決定者,未決定者 ,および,3年生の間で進 路選択自己効力を比較する(段階ごとの変化) ②4年生の進路決定者と未決定者の就職活動の実施時期と 内容について検討する ( 目標の明確化と就職活動の成功の 関連性) ①3年生から4年生への進級に伴う進路選択自己効力の変化は,質的ではなく量的で ある ②4年生の進路未決定者が就職活動を開始した時期は進路決定者と同じであるが , 意欲的に取り組み始めた時期が遅い 具体的な進路目標のを明確にすることが重要である 9 平 尾(2011) 量的研究 男女 自作の質問紙 4年生の内定状況ならびにアンケート調査による学生意識 を分析することによっ て,3年 生 の と き のインターンシッ プが自身の就職活動にどのような影響を及ぼしているのか を分析する インターンシップの経験が学生の就業意識の高まりを通じて,就職活動に好影響を 与える 10 種市(2011) 量的研究  女 菊池のソーシャルスキ ル尺度 , 浦上の就職活 動尺度 企業内定取得の有無と ,ソーシャルスキル ,就職活動の積 極性,就職活動開始時期との関連を検討する【研究1】 内定者は未内定者よりもコミュニケーションスキル得点,トラブルシューティング スキル得点が高く,就職活動の計画・実行尺度の得点が高く,就職に関する情報を 探し始めた時期および就職活動を始めた時期が早い 11 石川(2011) 量・ 質的研究 男女 自作の調査票 内定獲得状況 (初めての内定獲得が早期 ,晩期 ,未獲得) と学生生活と就職活動の要因との関連性を検討する 入学形態,大学生活(アルバイト経験,サークル所属の有無,大学生活での取り組 み)と内定獲得との明瞭な関係を見いだすことができなかった 内定獲得早期群は,総じて就職活動が活発であった 12 三好(2012) 量的研究 男女 自作の WEB アンケート 調査 大企業に内定するために ,どのような要因が影響を及ぼし ているのか検証する 就職活動の開始時期と量,内定獲得時期と量,調整型リーダーシップ能力や,キャ リア支援などの大学環境の要因が影響を及ぼしていた 13 田澤・梅崎 (2012) 量的研究 男女 自作の WEB アンケート 調査 大学難易度と学業成績が大学生の就職活動の開始時期 ,活 動量,活動結果に与える影響を検討する 大学の難易度が高いことや,学業成績が良いことは,早くから就職活動を始め,た くさんの企業を受け,結果的に内定に至ると解釈できた 表1−1 大学生の就職活動を成功させる要因に関する研究の概要

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文献 番号 著 者 研究 デザイン 調 査 内 容 対象 性別 活用尺度等 目   的 結   論 14 鶴田(2013) 量的研究  女 西山らのプロアクティ ブパー ソ ナ リ テ ィ 尺度 , 内山らの情動知能尺度, 矢崎らのキ ャ リ アパー スペクティ ブ 尺 度 職場での活躍と強く関連すると考えられてきたプロアク ティブパーソナリティが ,情動知能とキャリアパースペク ティブと関連して ,その前段階である就職活動や ,その成 果としての採用にどのように影響するか探索的に調べる プロアクティブパーソナリティが対人対応能力 (情動知能の 3つの下位因子のうち の一つ)とキャリアパースペクティブを介して就職活動最終ステージへ効果を及ぼ す 15 畔津(2013) 量的研究 男女 自作の質問紙 性別 ,学科 , 留年 ,入試形態 ,卒業時成績評価と卒業進路 の関係について調べる どのような学生 ,どのような活動を行った者が早期に内定 を獲得しているかを明らかにする 内定獲得を規定する要因は,学科,性別,インターンシップへの参加,面接対策講 座への参加である 内定先企業が上場企業であることを規定する要因は,学科,入試形態,卒業時 GP A である 16 佐藤(2014) 量的研究 男女 浦上の進路選択に対す る自己効力尺度 ,成田 らの特性的自己効力感 尺度 ,佐藤の就職活動 における遂行行動の達 成尺度 大学 3年 時の特性的自己効力の方が大学 3年 時点の進路選択 過程に対する自己効力よりも ,大学 4年時点での進路選択 の結果を予測するか,検証する 就職活動以前の特性的自己効力と進路選択過程に対する自己効力では,特性的自己 効力の方が1年後の進路決定状況をよく予測するといえる 特性的自己効力が高いほど進路先が決定している 17 長光(2014) 量的研究 男女 自作の質問紙 大学生の 「就職活動」において就業を成功させる効果的な 要因を析出する 中規模から大規模企業への就業に対して, 最も貢献する変数として, 「自己演出『行 動』得点」が析出された 18 高階(2014) 量的研究 男女 浦上の進路選択に対す る自己効力尺度 大学生が就職活動時に自身に対して持つ自信 ,すなわち キャリア選択自己効力感が ,就職活動の結果に影響してい るか,実証する 積極的なエントリーが内定数を増やす 内定数の多さと主観的円滑度が就職活動に対する全般的満足度を高める 19 石川(2015) 量的研究 男女 自作の質問紙 学業成績と内定獲得に関わる要因との関連を明らかにする 内定獲得状況 (早期 ,晩期 ,未獲得)と内定獲得に関わる 要因との関連を明らかにする 学業成績は内定獲得に関わるほとんどの要因と明確な関連が認められなかった 内定獲得の有無に関わる要因は,初入社試験時期が早めであること,メディア利用 の活発さ (特に関連書籍やパンフレット等の活字) ,対人コミュニケーションの活 発さである 早期の内定獲得状況に関わる要因は,エントリーシート提出社数が多いこと,情報 収集開始, 初入社試験受験が早いこと, そして学内の先輩との対人コミュニケーショ ンが活発なことである 20 高階(2015) 量的研究 男女 山本 ら の 自 尊 感情 尺度 , 速水 の 仮 想 的 有 能 感 尺 度, 伊 藤 の 学 生 相 談 機 関イ メ ー ジ 尺 度を 援 用 したキ ャ リ アセ ン タ ー ・ イメー ジ 尺 度 大学生の個人的 ・心理的要因である 「自尊感情」 ・「仮想的 有能感」が所属する大学の就職支援部門 (キャリアセン ター )の利用に与える影響を ,そしてキャリアセンター利 用が就職活動結果に与える影響を実証的に分析する 自尊感情の高さは,キャリアセンター利用とほぼ無相関であるが,仮想的有能感の 程度が高いほど,キャリアセンター利用の確率は高まる キャリアセンター利用が就職活動 (実際的行動)に及ぼす影響については ,「キャ リア・カウンセリング」が「面接試験の受験数」に正の影響を与えていた 「内定企業数」に有意な影響を与えているのは「面接試験の受験数」のみであった 21 斎藤・梅崎・ 田澤(2015) 量的研究 男女 自作の質問紙 親が学生の就職活動に関わることが実際にどのように影響 しうるのかを,量的データを用いて実証分析を行う 相談を軸とするような関わりはポジティブな効果を生みだすが,進捗管理という関 わりではネガティブな効果をもつ傾向にある そして,その関係性が子どもの内定獲得という客観的な成果を左右する 22 石川(2016) 量的研究 男女 畑野の ACA 尺度 学業成績および主体的授業態度と内定確定状況 (早期 ,晩 期,未獲得)との関連を明らかにする 学業成績と内定獲得に関わる要因 (開始時期 ,活動量 ,情 報源, キャリア支援センター利用, 就職活動への自己評価) との関連を明らかにする 内定獲得状況 (早期 ,晩期 , 未獲得)と内定に関わる要因 との関連を明らかにする 学業成績および主体的な学習態度は,内定獲得状況(早期,晩期,未獲得)と関連 が認められなかった 学業成績の良い学生の方が,就職活動量が多く,就職情報を得るためにメディアを 活用し,就職について友人などと話す機会が多い傾向がある 早期に内定獲得する学生は ,学外説明会への参加数 ,エントリーシート提出社数 , 入社試験受験社数,活字メディア,キャリア支援センター利用が多い 23 梅崎・斎藤・ 田澤(2017) 量的研究 男女 自作の質問紙 大学生の就職活動における親のかかわりの効果を分析する 親とのかかわり方が親との関係構築に与える影響や就職活 動結果に与える影響を検討する 親とのかかわり方では,相談関係,干渉関係,信頼関係の3因子構造が確認された 内定獲得という就職活動結果に関しては,信頼関係だけが正の影響を与えている 表1−2 大学生の就職活動を成功させる要因に関する研究の概要

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析活動を行う単独探索行動を介してエント リー数,そして内定数に影響することを示し た。高階(2015)によれば,自尊感情の程度 が高いほど内定数が多く,内定先の企業規模 が大きく,内定先に満足する傾向がある。 〈能力要因〉 能力要因に分類した成功要因は,「情動知 能(対人対応領域)」「ソーシャルスキル(コ ミュニケーションスキル・トラブルシュー ティングスキル)」「調整型リーダーシップ」 である。 島井ら(2007)は,共感性,愛他心,対人 コントロールから構成される対人対応領域の 情動知能は,内定に大きな役割をもっている 可能性を示唆した。また,内定した会社数の 異なる学生を比較し,内定社数が多くなるほ ど情動知能が高くなる傾向を示した。特に, 対人対応領域については1社増えるごとに平 均値が高くなっている。田中・宇津木(2010) は,情動知能得点の高い学生は人気企業から 早期に内定を獲得する結果を明らかにした。 種市 (2011)は,ソーシャルスキルが高いこ とは,面接やグループディスカッションでの 積極的な自己呈示につながること,また未知 の状況に対しても積極的な活動が可能とな り,早期の内定を得やすいと考察している。 三好(2012)によれば,調整型リーダーシッ プ能力が大企業に内定することに影響してい る。 行動 〈大学生活要因〉 大学生活要因に分類した成功要因は,「学 業・成績」「ゼミ活動」「サークル・部活」「ボ ランティア活動」「留学」「インターンシップ」 である。 永野(2005)の研究では,大学での成績や 特     性 心的要因 就業意識 永野(2005),平尾(2011) キャリア志向 中島・無藤(2007) プロアクティブパーソナリティ 鶴田(2013) キャリアパースペクティブ 鶴田(2013) 特性的自己効力 佐藤(2014) キャリア選択自己効力感 高階(2014) 自尊感情 高階(2015) 能力要因 情動知能(対人対応領域) 島井ら(2007),田中・宇津木(2010), 鶴田(2013) ソーシャルスキル ( コミュニケーションスキル・ トラブルシューティングスキル) 種市(2011) 調整型リーダーシップ 三好(2012) 行     動 大学生活要因 学業・成績 永野(2005),田澤・梅崎(2012),畔津(2013),△三好(2012), △長光(2014),△石川(2016) ゼミ活動 永野(2005),島井ら(2007),鶴田(2013) サークル・部活 永野(2005),△石川(2011) ボランティア活動 島井ら(2007) 留学 島井ら(2007),鶴田(2013) インターンシップ 平尾(2011),畔津(2013) 就職活動要因 就職活動開始時期の早さ 下村・堀(2004),種市(2011), 石川(2011),三好(2012), 田澤・梅崎(2012),長光(2014), △柴田・安住(2011) 就職活動の量・頻度の多さ 藤島ら(2006),種市(2011), 石川(2011),三好(2012), 田澤・梅崎(2012),高階(2014), 石川(2015),石川(2016) 明確な進路目標に向けた行動 藤島ら(2006),柴田・安住(2011) 自己演出行動 長光(2014) 環     境 大学要因 大学難易度 三好(2012),田澤・梅崎(2012), △永野(2005) 入学形態 畔津(2013),△石川(2011) キャリア支援センターの利用 藤島ら(2006),三好(2012), 畔津(2013),石川(2015), 石川(2016),△石川(2011), △高階(2015) 人脈要因 先輩・OB/OGからの情報的 サポート 下村・木村(1997),下村・堀(2004), 石川(2015),石川(2016) 友人からの情報的サポート 下村・木村(1997),下村・堀(2004) 友人からの情緒的サポート 下村・木村(1997) 対人コミュニケーション 石川(2011),石川(2016) 家庭要因 家族からの情緒的サポート 下村・木村(1997),梅崎ら(2017) 親との相談関係 斎藤ら(2015),△梅崎ら(2017) 親との信頼関係 梅崎ら(2017) 表2 大学生の就職活動を成功させる要因の分類 【注釈】△規定する要因とは検証されなかった研究

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ゼミ活動,さらにサークルや部活という大学 生活の中心部分での活動も,就職活動の成功 要因であるとの結果が得られている。島井ら (2007)は,情動知能は内定に大きな役割を もっていることを示唆すると同時に,低学年 では語学や情報教育,高学年ではゼミなどの 双方向的な授業における積極性が,情動知能 の高さと関連が深いことを示している。ボラ ンティア活動,留学・語学研修も情動知能の 中の対人対応領域と有意な相関があることを 明らかにした。平尾(2011)は,インターン シップ参加者は不参加者より高い内定率を示 すことを明らかにし,就業体験が働く意欲・ 就職活動への意識を高める効果が大きいこと を見出した。田澤・梅崎(2012)は,概して, 成績が良い学生の方が就職活動を早くから始 めており,たくさんの企業を受けて,結果的 に内定に至ると考察した。加えて,成績の良 さは第一志望内定にも影響を与えていること を示した。畔津(2013)によれば,インター ンシップ参加者は,そうでない者と比べ,早 期に内定獲得をする可能性が高い。また, GPAが2.5以上である者はそうでない者と比 べ上場企業内定者が多い。鶴田(2013)は, 情動知能の中で最も就職活動の成果に効果を 及ぼすと考えられる対人対応能力へは,ゼミ 活動と留学がプロアクティブパーソナリティ を介し影響していることを明らかにした。 一方,検証されなかったものとしては,石 川(2011)の研究では,サークル所属の有無 と内定獲得との明瞭な関係を見いだすことが できなかった。三好(2012)は,大企業内定 と授業中の学習行動との間には有意な相関が みられないことを示した。石川(2015)は, 学業成績は内定獲得に関わるほとんどの要因 と明確な関連が認められなかったと指摘して いる。 〈就職活動要因〉 就職活動要因に分類した成功要因は,「就 職活動開始時期の早さ」「就職活動の量・頻 度の多さ」「明確な進路目標に向けた行動」 「自己演出行動」である。 下村・堀(2004)によれば,情報収集が早 いほど3月にエントリーシートを送付する頻 度が高く,また3月に面接した企業数が多かっ た。このことによって4月にOB/OGからの情 報数が多くなり,5月時点で就職活動を終え ることができた。藤島ら(2006)は,就職内 定を獲得するに至る学生は,4年次になると 飛躍的にセミナーへの参加やエントリーシー トの作成などの主体的な活動を増大させ,7 月期までそれを持続し,他方,就職内定を獲 得できなかった学生は,3年次から4年次まで 活動頻度は低いまま横ばいになっていること を示した。主体的活動を増大させた学生は, 成功体験により目標達成行動を促進させ,持 続させる一方で,失敗経験により興味の変容 ならびに目標を修正するなどを行い,その結 果,現実的なキャリア選択が可能となり,就 職内定に至ったのだろうと考察している。柴 田 ・安住(2011)は,進路未決定者はHP検 索や就職課の利用などの情報検索は決定者と 同程度に行っていたが,資料請求や関係者と 連絡を取るなどのような,明確な進路目標に 向けた行動は行っていない者が多いことを明 らかにした。種市(2011)の研究からは,内 定取得者の就職活動の計画・実行の程度が高 く,就職活動開始時期が早いことは,早期の 積極的な活動が内定取得に結びつくことをう かがうことができる。石川(2011)は,内定 獲得早 期群は,総じて就職活動が活発であり, 学外説明会の参加数,入社試験の受験社数, 人事面接の受験社数,エントリーシートを提 出した社数が多いことを明らかにした。長光 (2014)は,自己PRで自分をよく見せる自己

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演出行動の影響は,企業規模が大きいほど顕 著になることを示した。 環境 〈大学要因〉 大学要因に分類した成功要因は,「大学難 易度」「入学形態」「キャリア支援センターの 利用」である。 藤島ら(2006)によれば,ネットワークの 活用として,進路支援センターに相談に行っ た 学 生 は 内 定 を 獲 得 し や す か っ た。 三 好 (2012)は,大企業に内定したとする者と, 偏差値の高い大学との間には正の相関がある ことを明らかにした。また,大学偏差値(学 歴)の促進効果以上に,キャリア支援などの 大 学 環 境 の 影 響 が み ら れ た。 田 澤・ 梅 崎 (2012)は,概して,難関大学の学生の方が 非難関大学の学生に比べて,就職活動を早く から始めて,たくさんの企業を受けており, 企業規模も相対的に大きい傾向があることを 示した。畔津(2013)は,一般入試で入学し た者はそう でない者と比べ上場企業内定者が 多いこと,また,面接対策講座の受講者はそ うでない者と比べ早期に内定獲得をする可能 性が高いこ とを示唆した。石川(2015)は, 時期は遅れても内定を獲得できた学生の特徴 は,就職活動量が多いこと,キャリア支援セ ンターの利用が多いことであることを明らか にした。就職活動が上手くいかなくても,諦 めずに就職活動に取り組み,キャリア支援セ ンターに通い情報やアドバイスを得たりする ことが重要であると考察した。 一方,検証されなかったものとしては,石 川(2011)の研究では,入学形態と内定獲得 との明瞭な関係を見いだすことができなかっ た。高階(2015)は,キャリアセンターを利 用することが就職活動(実際的行動)を促進 する傾向が明確には見られなかったと指摘し ている。 〈人脈要因〉 人脈要因に分類した成功要因は,「先輩・ OB/OGからの情報的サポート」「友人からの 情報的サポート」「友人からの情緒的サポー ト」「対人コミュニケーション」である。 下村 ・木村(1997)は,同性や異性からの 情緒的なサポートは男女ともに就職活動に対 する関与の高い者が多く受けていることを明 らかにした。また,先輩からは就職活動の進 め方や企業に関する情報を教えてもらうこ と,同性の友人からは就職活動についての現 在の状況や企業に関する情報を教えてもらう こと,異性の友人からは自分を励ましたり, 優しい言葉をかけてもらうなどの情緒的サ ポートがあることなど,サポートの内容をサ ポート提供者別に示した。下村・堀(2004) は,OB/OGを情報源とした場合には内定先 が第一志望である割合が高くなり,早い時点 で就職活動を終了する割合が高いことを見出 している。OB/OG情報は,主に実際の職場 で働いている人の印象・雰囲気などを中心と した個別の企業に関する情報であることを示 した。印象や雰囲気といった言語化しにくい 情報であるからこそ,大学生にとって貴重な 生の情報と感じられやすく,企業社会に対す るリアリティを早い段階で形成できると考察 している。石川(2011)は,就職活動につい て学内外の友人,学内の先輩といった同質性 の低い相手とも話すというように,就職に関 わる対人コミュニケーションが活発である方 が,より早期に内定を獲得していたことを明 らかにした。石川(2016)は,対人コミュニ ケーションは内定獲得の有無に関わる要因で あり,内定を獲得した学生達は就職について 他者との会話が活発であることを示してい る。

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〈家庭要因〉 家庭要因に分類した成功要因は,「家族か らの情緒的サポート」「親との相談関係」「親 との信頼関係」である。 下村 ・木村(1997)によれば,女性で就職 活動に対する関与の高い者がもっとも家族の 情緒的サポートを受けている。斎藤ら(2015) は,親が後方から見守り,相談役としてのス タンスでいることによって,子どもとの関係 性はよくなり,そして,それが内定獲得につ ながることを明らかにした。梅崎ら(2017) は,親とのかかわり方では,相談関係,干渉 関係,信頼関係の3因子構造を確認した。内 定獲得という就職活動結果に関しては,信頼 関係だけが正の影響を与えていることを示し た。干渉関係が保護者意向への意識をより高 めており,保護者意向への意識は,学生から 見れば不自由さや心理的負担を感じる要因に なると推測している。過度の心配によって親 の干渉が強まることは,子供の就職活動に とって良い結果を生まない可能性があると指 摘している。 考 察 研究動向の特徴 CiNii Articlesを使用し「大学生」と「就職 活動」でキーワード検索を行った結果,1989 年から2017年に至る349件が検出されたが, その中でも内定獲得という就職活動の成果に 関わる要因を明らかにする論文23件は1997年 以 降 に 集 中 し て い る。 こ れ は「 採 用 ス ケ ジュール」「就活ツール」「選考プロセス」が 大きく変化する時期と重なっている。 これらの先行研究23件の中で,10件が「就 職活動開始時期の早さ」や「就職活動の量・ 頻度の多さ」など就職活動自体の行動を,ま た8件が「学業」「ゼミ活動」など大学生活に おける行動を成功要因として示している。以 上より,成果に関わるものとして行動要因を 示している研究結果が多いと言える。 これらの行動要因に個人の特性要因がどの ように影響しているのだろうか。先行研究で 示された心的要因のうち,自分自身の価値や 有能さについての自己評価(プロアクティブ パーソナリティ・特性的自己効力・キャリア 選択自己効力感・自尊感情)と自分自身の将 来の目標や想い(就職意識・キャリア志向・ キャリアパースペクティブ)が行動を促して いると考えられる。加えて,能力要因のうち, 「情動知能(対人対応領域)」「ソーシャルス キル(コミュニケーションスキル)」は情報 収集やグループディスカッション,面接など に役立っていると思われる。 では,これらの個人特性だけで就職活動は うまく進むのだろうか。1990年代後半からの 採用スケジュールと選考プロセスの変化に伴 い,就職活動は学生にとってストレスフルな ものになってきた。そのため個人特性を補い ストレスを軽減するファクターが必要であ る。先行研究においては,先輩からの情報的 サポートや友人からの情報的・情緒的サポー ト,家族からの情緒的サポートが成果に繋 がったことが明らかにされた。周りの人々か らの助言や励ましが学生には大切である。し かし,コミュニケーションが苦手な学生は, 特に,先輩に自ら情報や助言を求めることが 難しいと思われる。そこで,大学にはコミュ ニケーション能力を伸ばすためのプログラム の実施とともに,ピアサポートの仕組み作り が求められる。 また,先行研究では,焦点を当てた要因が 内定獲得に直接影響するかどうかを検討する ものが多かった。複数の要因間の関係や内定 獲得までのプロセスを明らかにしたものは6 件のみであった。

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規定要因 職務探索行動プロセス 結果変数 個人傾性 準備的行動: キャリア探索行動 実務的行動: 集中的職務探索行動 就職活動結果 自己キャリア 探索行動 内定企業数 中核的自己評価 集中的職務 探索行動 環境キャリア 探索行動 会社満足度 図1 竹内・竹内(2010)の就職活動プロセスの分析モデル 特性 ・心的要因 ・能力要因 行動(準備的) ・大学生活要因 行動(実務的) ・就職活動要因 就職活動成果 ・内定獲得 環境 ・大学要因 ・人脈要因 ・家庭要因 図2 先行研究から導かれる就職活動プロセスの仮説モデル 今後の展望と課題 今後の課題として,より包括的に要因の関 係性を解明する研究が望まれる。 その参考となる研究として,竹内・竹内 (2010)は,就職活動のプロセスを図1のよう にモデル化し分析した。就職活動では,キャ リア探索活動を通じて,自己についての理解 を深めるとともに,具体的な職業や業界に対 する情報を収集し,その結果,職業について の希望や目標を明確にしていく準備的行動を 行う。そして,明確になった目標をもとに, エントリーシートの送付や面接を受けに行く などの集中的職務探索行動を行う。すなわち, 準備的行動が実務的行動を喚起し,それが内 定などの就職活動結果をもたらす。また,こ の職務探索行動プロセスは,中核的自己評価 が規定要因になることを明らかにした。中核 的自己評価は,「個人が自分自身の価値や能 力,有能さに対して抱く基本的評価」(Judge, Bono, Erez & Locke 2005)と定義され,①自 尊心(自己の価値 や重要性の認知)・②神経 症傾向(感情的な安定性)・③統制の所在(人 生の出来事や状況をコントロールできる程度 の認知)・④一般的自己効力感(様々な事柄 に対処するための自己能力に対する一般的な 自信)の4つの特性から構成される。 この中核的自己評価は,先行研究で示され た心的要因と近い概念である。この心的要因 とともに能力要因が,準備的行動である大学 生活要因と実務的行動である就職活動要因に 影響し,加えて環境要因がサポートすること で内定獲得という就職活動の成果につながる と考えられる。このように先行研究から導か れる仮説モデルとして,図2の枠組みを提案 したい。

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引用文献 畔津 憲司 (2013) 北九州市立大学経済学部2012 年度卒業生の卒業後進路及び就職活動実態等に 関する調査報告 北九州市立大学商経論集 49 (1・2), 75-120. 独立行政法人日本学生支援機構 (2018) 平成28年 度学生生活調査結果 藤島 喜嗣・三浦 香苗・清水 裕・髙橋 幸子 (2006)  キャリア選択支援に向けた心理学的研究(I) : 就職内定につながる活動と主観的幸福感 昭和 女子大学生活心理研究所紀要 9, 22-31. 株式会社ディスコキャリタスリサーチ (2018) 大 学進学と就職に関する調査2018年 株式会社リクルートキャリア (2018) 就職白書 2018 平尾 元彦 (2011) インターンシップの就職活動 へ の 影 響 − 山 口 大 学2010年 度4年 生 へ の ア ン ケート調査と内定状況調査に基づく考察− 大 学教育 8, 29-36. 石川 勝博 (2011) 大学生の就職活動に関する調 査研究−常磐大学人間科学部コミュニケーショ ン学科卒業生の事例Ⅱ− 人間科学 常磐大学 人間科学部紀要 29(1), 13-25. 石川 勝博 (2015) 学業成績および内定獲得状況 別の大学生の就職活動の分析 人間科学 常磐 大学人間科学部紀要 32(2), 1-12. 石川 勝博 (2016) 学業成績,主体的な授業態度, 内定獲得状況と大学生の就職活動との関連性  人 間 科 学  常 磐 大 学 人 間 科 学 部 紀 要 33(2), 1-16.

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