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授業の取り組みケーススタディ

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Academic year: 2021

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授業の取り組みケーススタディ

著者

研究紀要委員会

雑誌名

名古屋学芸大学メディア造形学部研究紀要

14

ページ

36-51

発行年

2021-03-31

URL

http://id.nii.ac.jp/1095/00001582/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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1. ケーススタディの整理

 2020年度のメディア造形学部の授業運営は、新型コロナウ イルス感染拡大の対応に明け暮れ、年度が終わった現在もそ れは続いている。前例のない手探りの取り組みのなかで、教 員はそれぞれに正解の見えない試行錯誤を続けた。しかし、 振り返って見れば、そこには多彩な創意工夫があり、ウィズ コロナ時代、ポストコロナ時代のクリエイティブ教育を考え るうえで、数多くの示唆を見つけることができる。以下では、 こうした授業事例を「授業の取り組みケーススタディ」とし てピックアップし、編集部の視点から整理して紹介したい。  ここに取り上げる授業は、新型コロナ対応で特徴的な取り 組みを行った事例として、メディア造形学部三学科から推薦 を受けたケースを元にしている。編集部では、各授業担当者 にアンケート調査を実施し、さらに追加で取材や写真提供の 依頼を行ったうえで、学科の枠を取り払い、観点を絞り、全体 に大きな流れが浮き彫りになるよう整理した。まずは、アン ケート取材にご協力いただいた各先生方に心より感謝を申 し上げたい。

遠隔授業の概要とツール

 2020年春より、全国の大学は対面授業を一時停止し、遠隔 授業、オンライン授業へと大きく舵を切った。とりわけウイ ルスの性質や感染経路が現在ほど分かっておらず、人と人と が接するあらゆる場面に強い不安が広がっていた春期は、全 国でオンライン授業が一般化した。一般に、オンライン授業 は「時間」の共有の観点からオンデマンド型(非同期型)とリ アルタイム型(同期型)とに分けられる。  「オンデマンド型」は、教員が授業を行う時間と、学生が履 修する時間が「同時ではない」授業形態である。具体的には、 あらかじめ作成した資料や、授業の録画ビデオなどをイン ターネット上のさまざまなサービスを使って配信し、学生は 定められた期間内にダウンロードしたり、ストリーミング再 生で視聴したりと、各々の時間で学習する。配信の方法は、 電子メールに教材資料を直接添付して送信する方法から、イ ンターネット上のスペースにアップロードしておいてその リンクを学生に伝える方法もある。動画であればYouTube やGoogleドライブなど、その他の資料であればGoogleドラ イブやDropboxなどがよく使われている。  いっぽう「リアルタイム型」は、教員と学生が時間割に沿っ て「同時に」授業に参加することを指し、授業の「生中継」や 「ライブ配信」と言い換えても良いだろう。ZoomやGoogle Meetなどのオンライン会議システムは、ほとんどタイムラ グなく映像と音声を双方向で伝え合うことができるため、 リアルタイム遠隔授業の中心ツールとして盛んに活用され た。また、従来から多くの学生が親しんでいるLINEには、メ ンバーを定めず文字会話を共有するオープンチャットの機 能があり、特にZoomで通信不具合が起こった時など、緊急の 連絡ルートとして機能した。  学生からのフィードバックを受けるためによく活用され たのがGoogleフォームであろう。レポート課題、出席確認、 アンケート、小テストなどを手軽に作成でき、回答結果は Googleスプレッドシートに集計される。これをダウンロー ドしてExcelで開けば、表計算やグラフ化などさまざまな統 計処理が可能になる。  ところで、教員と学生が持つ大学メールアカウントは、 Googleのユーザーアカウントであり、これによりGoogleが 提供する多彩なWeb上のアプリを容量制限の心配なしに無 償で利用することができる。上にあげたドライブ、フォー ム、スプレッドシート以外にもドキュメント、スライド、カ レンダーなどがあり、本ケーススタディで紹介する授業で も活発に利用されている。また、MeetやYouTubeや後述の Classroomも、同じアカウントで利用できる。ただし注意が 必要なのは、教員用のアカウント([email protected])と学生用ア カウント([email protected])はドメインが異なるため相互に サービスの共有ができない点だ。このため教員は、ICT活 用教育推進室から後者を追加発行してもらいアカウントを 切り替えて共有している。  さて、遠隔授業が進んでいくと、こういったツールやサー ビスを複数並行して使うケースが増えてくる。例えば、 Zoomでリアルタイム遠隔の授業を行いつつ、YouTubeに アップした動画を視聴させ、課題をGoogleドライブに提出さ せ、受講アンケートをGoogleフォームで実施するといった具 合だ。それぞれのリンク先が異なるため、どこか一箇所に情 報を集約しないと混乱が生じる。そこで、履修学生が毎回最 初にアクセスし、ワンストップですべてのリンク先へと移動

特集 │ メディア造形学部の新型コロナ対応

授業の取り組み

ケーススタディ

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036 名古屋学芸大学メディア造形学部研究紀要 2021 VOL.14

NAGOYA UNIVERSITY OF ARTS AND SCIENCES, SCHOOL OF MEDIA AND DESIGN / RESEARCH BULLETIN 2021 VOL.14 Special Report │ School of Media and Design: Our approaches against the Covid-19特集 │ メディア造形学部の新型コロナ対応 037

できる仮想教室があると便利だ。Google ClassroomやICT 活用教育推進室がサポートするMoodleはそれに当たる。こ れらにはアクセス制限がかかっており、履修学生以外の部外 者はログインできない仕組みなので、教育目的で著作物を扱 う際に要件となるクローズドな教室としても機能する。ま た、課題の公開開始・締切を予約で設定したり、履修生個々人 に課題を割り当ててその提出状況や採点を管理するといっ た高度な機能も使うことができる。  以下、授業ケーススタディの紹介に当たっては、文章で紹 介する煩雑さを避けるため、各授業のなかで使用されたおも なツールを次のアイコンを並べて示すことにする。 おもに使用したツールのアイコン Google Classroom(仮想教室) Moodle(仮想教室) Zoom(オンライン会議システム) Google Meet(オンライン会議システム) LINE(オープンチャット、グループチャット等) Googleドライブ(資料配布、動画配信、課題提出用) DropBox(資料配布や課題提出用) Googleフォーム(アンケートやレポート課題用) YouTubeビデオ(動画配信) YouTube Live(動画ライブ中継) 大学メールやポータル通知

「要素」としての対面、オンデマンド、リアルタイム遠隔

 ケーススタディのアンケート回答をじっくり読み込んで みると、実際の授業は「対面か/遠隔か」「オンデマンドか/ リアルタイムか」といった単純な二者択一で語れないことが すぐに分かる。6月以降に対面授業が再開されるようになる と、対面、リアルタイム遠隔、オンデマンド遠隔は、複雑に融 合していく。例えば、リアルタイム遠隔を中心とする授業で あってもオンデマンドの教材を用いたり、自宅で受講する学 生と対面で受講する学生とが混在したりする。つまり、それ ぞれの授業が大なり小なり複数の方式の混合で実施されて いるのが、メディア造形学部の実態である。したがって、対 面、リアルタイム遠隔、オンデマンド遠隔は、どれか一つだけ に決めるような選択肢ではなく、授業を構成する「要素」だと 考えた方が実態に合っている。 構成要素としての授業方式  もちろん、三要素の配分バランスは、教員ごとに、授業ごと に、さらに一つの授業の中でも週によって、グループ分けに よって様々なバリエーションを持つだろう。 三要素配分のバリエーション例  こうした実態をふまえ、本ケーススタディでは対面、リア ルタイム遠隔、オンデマンド遠隔の三要素を次のアイコンを 並べることによって示そうと思う。一つの授業のなかで複 数の要素が含まれている場合、それらをすべてアイコンで列 記する。 授業方式の要素のアイコン 対面の要素 オンデマンド遠隔の要素 リアルタイム遠隔の要素  そして、本文の全体構成についても、これら「三つの要素」を 各ケーススタディから抽出する形で、順に紹介していきたい。

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2. 対面要素の工夫

 いま述べたとおり、メディア造形学部三学科の授業形態 は、対面/遠隔や、リアルタイム/オンデマンドにはっきり と二分できるものではなく、それらを「要素」として混在させ た複合形態で運用されるケースが多い。まずこのセクショ ンでは、そのうち「対面要素」を5つの授業取り組みのなかか ら抽出して紹介していきたい。

2.1 グループ分け・教室分散で密を防ぐ

 新型コロナウイルス感染防止対策のひとつとして、同じ教 室で対面授業を受ける学生数を制限し、距離を保ち、密を防 ぐことが求められた。文科省の指針では収容定員の半分程 度までが目安とされており、全国の大学でも履修人数に制限 を設けたり、使用教室を大きな部屋に変更したりといった対 策が行われた。  しかし、これには学生の履修機会の確保や学内施設のキャ パシティの面で限界がある。さらに、ずっと着席したままの 講義形態ではなく、学生のアクティブな行動や実作業を求め る演習・実習系科目では、行動内容に応じてさらに踏み込ん だソーシャルディスタンスを確保する必要もある。  これに対し、学部三学科のいくつかの授業では、履修者を グループ分けしてそれぞれ授業方式を変えたり、複数の教室 に人数を分散させるといった工夫が行われた。またその際 に、遠隔授業の技術が重要な方法として併用されている。そ うした事例を紹介する。 01 造形演習(ドローイング) 小笠原 則彰、 岩野 一郎 映像メディア学科専門科目|演習|後期|1年|42名  この授業では、映像メディア学科1年次のファウンデー ション教育として、人体や実空間のオブジェクトを、さまざ まな視点から立体的にスケッチする技法を学ぶ。教室収容 定員66席に対して履修者が42名であったため、二つのグルー プに分け、対面とリアルタイム遠隔を毎週交互に入れ替え た。ただし登校に不安を感じる学生もいたため、対面は強制 せず各自の判断を尊重した。結果、対面で受講する学生は20 名以下となり、十分に密を防ぐことができたという。  ドローイングの技法を伝えるため教員が絵を手描きする 過程を見せる必要があり、書画カメラを活用した。対面学生 には書画カメラで捉えた映像を教室スクリーンに投影し、同 時に、同じ映像をZoomの画面共有※1で遠隔学生のためにラ イブ中継できるようシステムを組んだ。教員も学生も同じ スケッチブックと鉛筆を使い、遠隔学生は自分の描いたもの をPCのカメラに向けて見せたり、スマホで撮影した写真を 送信してアドバイスを受けた。 01:書画カメラによるドローイング指導(対面・遠隔同時) 02 造形演習(グラフィックデザイン) 草野 圭一、 松田 友宏 映像メディア学科専門科目|演習|後期|1年|40名  この授業は、2教室(MB306、MB307)と遠隔の学生自宅 という三つの空間を同時に結んで、リアルタイムに進行する ハイブリッド型で実施した。学生を3グループ(13名/13名 /14名)に分け、2教室と自宅とを順に回し、3週のうち2週 が対面、1週が遠隔というローテーションで運営した。教員 2名はそれぞれの教室に分かれ、松田先生がMB306で対面授 業を進行し、その様子を隣の教室および遠隔学生にZoomで 中継した。いっぽうMB307の草野先生は、対面学生への対応 に加えて、ZoomとClassroomの遠隔対応もあわせて行った。  最も工夫した点は臨機応変に対応することだったという。 一律に同じ内容を教えるだけではなく、学生個々人のアイデ アと表現を重視した個別指導を行うために、教員2名が2教室 を行き来し、瞬間瞬間の状況に対応して授業進行を軌道修正 しながら柔軟に対応した。また三つのグループ分けも、感染 不安から登校を望まない学生がいればそれを尊重したため、 感染状況の拡大に応じて対面:遠隔の比率が大きく変化した が、時々の変化に臨機応変に対応することに注力したという。  グラフィックデザインの基本ソフトであるAdobe Illustrator の操作説明では、対面・遠隔を問わずPC画面の共有で操作方 法を一律に指導できたため、理解度、習熟度において両者の 格差はなかった。いっぽうで遠隔受講者は作業経過が見え ないため、小さなつまずきを早期に発見し、細かく個人指導 することには困難を感じたという。  ※1 Zoomの画面共有: Zoomに用意された基本機能で、PCのデスクトップや特定のウィンドウを全員が同時に見られるように共有できる。

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038 名古屋学芸大学メディア造形学部研究紀要 2021 VOL.14

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02:Zoom で学生の制作物に個別指導している様子 03 テキスタイルテスト 島上 祐樹 ファッション造形学科専門科目|演習|前期|2年|各35名  テキスタイルの構造や物性について演習を通じて理解を 深める授業である。対面授業を原則としつつ、MB102と MB104の2教室に分けてZoomの中継で結んだ。取扱注意の 専用機器を使う時間もあったので、両教室には必ず教員と助 手1名のいずれかがいるようにし、島上先生がZoomのカメラ で他教室の様子を確認しながら、随時交替して2教室を行き 来したという。  15回のうち4回は完全なリアルタイム遠隔としても実施し、 事前に送付した生地や道具を使った個人単位での演習を行っ た。またこの授業をZoomで録画し、Googleドライブを通じ て授業アーカイブ動画として配信することで、学生は通信問 題で聞き取りにくかった箇所の確認や復習に活用できた。

2.2 リアルな体験への欲求

 対面でなければ授業が成立しない理由のひとつとして、大 学施設を利用した「リアルな体験」が教育目標の核心に置か れているケースがあげられる。これをオンラインで代替す ることは非常に難しい。ここからは、感染防止策を徹底した うえで実施された対面授業の事例を二つ紹介する。 04 身体プレゼンテーション演習 伏木 啓、 小池 陽子、 平野 裕加里 映像メディア学科専門科目|演習|後期(2クラス)|1年以上|38名、34名  腹式呼吸、発声、滑舌などの「発話」と、フェルデンクライ ス・メソッドによる「身体表現」の二つの方向から、自分の「身 体」を実践的・体感的に学ぶ授業。ダイナミックに身体を動 かすため、感染防止には細心の注意を払って実施した。第三 多目的室※2の広いスペースを利用し、常に扉は開放しつつ、 サーキュレーターによる換気を行った。また全員マスク着 用、入室時の手指消毒、退出時には使用した机やヨガマット をアルコールティッシュで拭く対策を徹底した。  この授業は後期に開講したが、冬が近づくにつれ感染が拡 大すると予測し、身体表現と発話の実習を11月末までに終え るよう授業進行を組み替えた。幸か不幸かその予測は当た り、12月からは対面授業とZoomによるリアルタイム遠隔授 業を並行する方式に切り替え、最終のグループ課題発表も Zoomで行った。  履修生のほとんどが1年生であり、遠隔授業中心だった前期 の反動からなのか、体を動かすことへの欲求や喜びが大きく、 例年に比べて身体への関心が高まっていると感じたという。 04:第三多目的室での身体表現の実習 05 写真・映像演習 安達 洋次郎 ファッション造形学科専門科目|演習|後期|3年|29名  この授業の目玉は、大学の専門施設でプロレベルのファッ ション写真を撮影する実習にある。履修学生がディレク ションしながら、自身で製作した衣装をモデル役の他学生に 着用してもらい、撮影スタジオの本格的な照明や撮影機材を 使って撮る。密を避けるため撮影スタジオに入る人数を毎 回8名までとした。それ以外の学生は、Zoom中継で実習の 様子を見ながら自身の撮影計画を練ったり、撮影後の写真 を編集する。これを全員分繰り返す。撮影スタジオのプロ フェッショナルな施設でなければ実現できない演習であり、 学生はみな、自分の作った衣装がハイクオリティのファッ ション写真として残ることに、大きな感動と興奮を体感して いたという。  ※2 第三多目的室: 名古屋外国語大学と名古屋学芸大学の共用施設。旧ブルドックの建物を改修しサークル活動等で利用されている。

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05:撮影スタジオでの写真撮影と Zoom による中継

3. オンデマンド要素の工夫

 このセクションでは、多くの授業取り組みのなかから「オ ンデマンド要素」を抽出して紹介していきたい。オンデマン ド要素の授業活用事例は二種類に大別されるだろう。まず、 授業そのものをテキスト資料やビデオ動画で行うケース。 もうひとつは、対面授業やリアルタイム遠隔授業のひとつの 要素としてオンデマンド教材を活用するケースである。

3.1 授業全体のオンデマンド実施

 まずは授業全体をオンデマンドで実施した事例を三つ紹 介する。 06 キャリアデザインⅠ・Ⅱ 草野 圭一、 水嶋 丸美、 佐近田 展康、冨安 由紀子、 金森 久宙      学部共通専門科目|講義|隔週通年|Ⅰ:1年生285名、Ⅱ:3年生243名  学部では、クリエイティブ系キャリア教育の一環として 「キャリアデザインⅠ(1年次)」および「キャリアデザインⅡ (3年次)」を、2016年度より開講している。三学科のほぼ全 員が履修することから、250∼300名近い学生が外大701教室 に集まるマンモス授業である。  コロナ禍による遠隔対応では、これだけの多人数が安定し てオンライン受講できることを最優先し、事前収録した授業 ビデオ録画をオンデマンドで配信する方式にした。6月に対 面授業が再開されても、教室分散やグループ分けによる密の 回避が難しかったために、オンデマンド授業を続けた。出欠 確認については、前期は時間割に記載された授業日の翌日 までに、後期は時間割から外れたため配信日の翌週までに、 Googleフォームから受講レポートを送信することで出席と みなした。  この授業では、キャリア関係の外部専門講師、業界人のゲ スト、活躍する卒業生、CSセンター職員等を多数招いて各 回を進行する性質上、授業ビデオの収録方法はさまざまで あった。具体的には、外部講師持ち込みのPCから表示させ たスライド+カメラ映像+マイク音声を大学PCで一発録画 する方法(ビデオキャプチャーボードとOBSアプリを使用)、 外部講師自身で収録した動画を送ってもらう方法、リアルタ イムの講義やディスカッションを大学やCSセンターのPC でZoom録画する方法等である。こうした動画は、30分程度 の長さを目安に分割して編集したうえでYouTubeに限定公 開でアップし、Moodleからリンクを貼って履修生にアクセ スさせた。通信トラブルに対処するため当初はLINEのオー プンチャットを併用したが、問題を訴える学生はほとんどい なかった。  動画編集で最も気を付けたのは安定した音声の品質であ り、音量・音質のバラツキや背景ノイズが、学生の集中力を大 きく左右することが経験的に分かったという。大学で収録 する場合は反響の少ない静かな部屋で良質なマイクを使っ た録音ができるが、外部講師の方が自宅で収録したビデオに ついてはいくつか問題があった。編集段階で、大きなノイズ をカットしたり、EQをかけたり、特殊なフィルターで背景 雑音を低減させるなど努力をしたものの、やりすぎると逆に 言葉の明瞭度が失われてしまう。そのバランスを取るのに 多くの時間を費やした。  隔週通年の授業をすべてオンデマンドで配信してみて、そ の結果を前年度までの対面授業と比較したのが次のデータ だ。Ⅰ・Ⅱとも、出席率、毎回の受講レポートの平均文字数は いずれも2020年度のオンデマンド授業の方が若干上回って いる。レポートの内容についても、授業の概要を要約したう えで自分の意見を書く学生がほとんどで、振り返りの手応え があったという(統計グラフはキャリアデザインⅡのもの)。

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特集 │ メディア造形学部の新型コロナ対応 Special Report │ School of Media and Design: Our approaches against the Covid-19 041

06a:キャリアデザインⅡの出席率と受講レポート平均文字数の年度比較 (受講レポートはいずれの年度もGoogleフォームで提出させている)  また同授業では、前期・後期の最後に独自アンケートを実 施し、望ましい授業方式について尋ねたところ、オンデマン ドを支持する意見が多数であった(82%)。その理由を自由 記述から拾うと「自分の進路を考えるうえで重要な内容なの で、聞き逃すことがなく、過去の授業も見返して復習できる メリットが大きい」という趣旨の意見が多数見られた。回答 学生(3年生)はコロナ禍以前の1年次にキャリアデザインⅠ を大教室の対面で受講しており、その経験との比較で判断し ているようだ。また「コロナ・ショック」とも呼ばれる厳しい 就職状況のなか、進路について例年以上に大きな不安を抱え る当事者として、授業に向き合う真剣さの度合いが高かった 背景もあるだろう。担当教員は、全回オンデマンドにするこ とで、学習の意欲や実感、あるいは理解度が低下することを 心配していたが、本授業について授業目標はおおむね達成で きたのではないかと考えている。 06b:キャリアデザインⅡ最終アンケートより (2021年1月実施、回答数=214名) 07 心の科学 松尾 美紀(撮影:渡部 眞) 教養科目|講義|前期|1∼4年(管理栄養学部・メディア造形学部)|2クラス計61名  この授業は全対象学部に対面授業で準備されていたが、メ ディア造形学部のみ授業を遠隔に切り替えたため、授業担当 者の松尾先生の許可を得て、渡部学部長が授業内容をビデ オ録画しYouTubeから非公開で配信した。非公開といって も、メディア造形学部履修生のメールアドレスを一人ずつ登 録したので、それらの学生は視聴することができる。出席確 認についてはレポート提出で対応した。  カメラフレームは、教壇と教員、資料画面(教室内モニ ター)を同時に入れるようにし、オンデマンドでも授業を聞 いている状況を再現するようにした。苦労したのは、やはり 音声面で、カメラマイクだけではなく教壇にもマイクを配置 し、音声の品質に配慮したという。これらの仕様が決まって からは学生アルバイトに録画・録音・編集・テロップ入れを委 嘱し、学部長がYouTubeから配信を続けた。 07:「心の科学」配信映像 08 ドローイング1 井村 和寛 デザイン学科専門科目|演習|前期|1年|30名╳3クラス  デザインにおいて必要なドローイングのスキルを演習を 中心に修得する授業。上記二つのオンデマンド授業のよう に講義全体を録画し動画で配信するのではなく、配布テキス トとチュートリアル動画の充実により自宅学習の意欲を高 めるよう配慮した。特にテキストは、未経験者でも親しみや すく理解しやすいよう、イラスト・画像をふんだんに使うこ とで視覚的に魅力のあるものを制作し、PDFで配布した。 実技についてはテロップを付けたチュートリアル動画を YouTubeにアップした。 08:「ドローイング1」のPDFテキスト

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3.2 ビデオ教材のメリット

 ここからは、対面授業、リアルタイム遠隔授業のなかで、オ ンデマンド教材を有効活用した事例を紹介したい。いずれ のケースでも、操作や作業の工程をクローズアップ映像で簡 潔に解説したチュートリアル動画(教則ビデオ)が活用され ており、一時停止したり、見返したりできるビデオ教材の特 長を活かし、学生個々人のペースで学習ができることに、教 育上の大きなメリットが語られている。 09 ファッション造形演習Ⅰ・Ⅱ 水嶋 丸美 ファッション造形学科専門科目|演習|前期・後期|1年|各70名  被服構成に関する基本的な知識と技術を製作を通して修 得する授業。前期はスカート2着、後期はシャツブラウス、ワ ンピースとパンツを製作した。  MB209教室で対面授業を行い、その様子をMB213教室に Zoomで中継する形で、2教室に学生を分散させて密を防い だ。加えて、授業中継の映像をそのままZoomで録画し、あと で自宅でも復習できるようGoogleドライブを通じてオンデ マンドでも配信した。2教室の中継では、Wi-Fiや撮影用カ メラの接続障害など技術的トラブルもあり、最初の頃は対応 に時間が取られたという。  いっぽう、製作の各工程ごとにチュートリアル動画を作 成し、Googleドライブからオンデマンド配信することで、学 生には手作業のアップを細かく確認することができて好評 だったという。結果として従来より理解度は上がったよう に思われる。  後期Ⅱについては、前期Ⅰの経験をふまえ、授業内容は もっぱらチュートリアル動画を活用したオンデマンド配信 で実施し、対面では学生の質問に丁寧に答える方式で進行す るよう変化していった。自宅で製作を進められる学生につ いては登校を求めず、結果として教室を利用する学生の人数 も調整できた。 09:製作工程ごとのチュートリアル動画 10 デジタル表現演習Ⅲ-Ⅳ 高久 綾 デザイン学科専門科目|演習|前期・後期|2年|40名  この授業では、HTMLとCSSの基礎を習得し、制作実習を 通じてwebページ制作の基本的な技術を学ぶ。毎回の授業 は基本的に次の流れで行われた。①Moodleにアクセス後、 Googleフォームに出席登録 → ②Zoomにアクセスし前半の リアルタイム授業 → ③いったんZoomを退出し、チュート リアル動画をオンデマンドで視聴しながら各自で課題制作 作業 → ④再びZoomにアクセスし後半のリアルタイム授業 → ⑤最後に受講状況確認フォームへ各自回答して終了。  チュートリアル動画については、オンライン授業を始めた 当初に、学生それぞれのPCスペックや通信環境が異なるた め、負荷軽減の目的で導入したという。結果的には、一時停 止しながら自分のペースで理解したり、分かりにくい部分を 繰り返して見たり、後日に復習したりと、学生にとって使い やすい教材となった。録画にはMacのスクリーンショット 画面収録機能を用い、音声で解説しながら、1回につき15∼ 30分程度の動画を制作した。 10:HTML/CSSコーディングを解説するチュートリアル動画 11 ドローイング3 近藤 美和 デザイン学科専門科目|演習|前期|2年|20名  絵画のさまざまな表現方法を学ぶ演習。描き方の技法を 解説するチュートリアル動画は、BGMを付け、声による説 明の代わりにテロップを挿入し、同じプロセスが長い時間続 く箇所は早回しで時間を短縮するなど編集上の細かな工夫 をして、親しみやすく飽きない動画になるよう心がけた。  毎回ひとりずつZoomのブレイクアウトルーム※3で面談 し、個別に制作物へのフィードバックを行った。対面授業の  ※3 ブレイクアウトルーム: Zoomに用意された小部屋の機能。ホスト(教員)は任意の数のブレイクアウトルームを作り、特定の学生をその小部屋に移動さ せることができる。個人指導やグループワークに活用される。

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特集 │ メディア造形学部の新型コロナ対応 Special Report │ School of Media and Design: Our approaches against the Covid-19 043

頃は、学生とのあいだに物理的な距離の差があり、全員に均 等な情報を伝えることが困難だったが、この距離の差が解消 された結果、理解度が向上したという。 11:絵画表現を解説するチュートリアル動画

4. リアルタイム遠隔要素の工夫

 2020年は、ZoomやMeetなど、もともと会議のためのビジ ネスツールだったものが、にわかに「新しい教室」になった一 年であった。リアルタイムに映像と音声を双方向で共有で きるこうしたツールのおかげで、互いに離れていても声で 会話し、表情を確認し、資料を共有し、文字でチャットし、多 人数が一緒にコミュニケーションできるようになった。同 時にこれは、学生、教員ともに、これまでの人生経験で触れた ことがない新しいメディア体験であり、突然に到来したこの 「新しい教室」に、誰しも戸惑い、適応の努力を続けた一年で もあった。  そうした努力のなかで、いままで当たり前で意識すらしな かった「対面」という経験があらためて問い直され、要素に分 解され、その一部がこうしたツールによっても十分に置き換 え可能であることが分かった。要素によっては対面授業よ りも教育効果が高いという発見もあった。いっぽうで、どう しても代替できないもの、対面でしか成立しない要素も浮き 彫りになり、対面の貴重さをあらためて再確認する機会に なった。  このセクションでは、さまざまな授業の取り組みのなかか ら「リアルタイム遠隔要素」を抽出して紹介する。

4.1 配信システムを工夫する

 Zoomを使って教員1名が複数の学生に向けて授業を行う 場合、用意するものはPC1台で済む場合がほとんどだろう。 多くのPCにはカメラが内蔵され、マイクがあり、スピーカー もある。これだけで映像と音声の双方向コミュニケーショ ンが可能になる。授業用スライドや参照する資料について は同じPCの中に用意し、それを開いてZoomで画面共有すれ ば、授業に参加している学生全員が同じものを見ることにな る。学生の数が10人でも100人でも変わりはない。  しかし、教員が複数名になったり、同じ部屋で複数のPCを 使うなど条件が変わると、このシンプルな配信方法ではうま くいかなくなる。そうした配信システム上の工夫の事例を まず見ていきたい。 12 デザイン基礎1A 冨安 由紀子、井垣 理史、金 昌郁、谷口 友帆、関 義幸 デザイン学科専門科目|実習|前期|1年|90名(30名╳3クラス同時)  デザイン学科として1年次の根幹となる授業であり、日常 の中で「違和感」を発見し、主体的なデザイン提案を行い、素 材体験と造形訓練を通じてデザインの基礎訓練を行う。  何より、30名╳3クラス合計90名の学生が同時にオン ラインで「実習」を行う初の試みであり、デザインUXラボ (MA402B教室)を発信の拠点としながら、さまざまな工夫を 重ねた。  機材面では、複数の教員と90名の学生が、映像面でも音 声面でもつねに双方向でコミュニケーションできるよう、 Zoomを中心にした次のようなシステムを組んだ。もし教員 が1名であれば、もっとシンプルな構成で済むが、同じ教室内 に複数の教員がいて、それぞれの声を複数のマイクで拾おう とするとこのような工夫が必要になる。  次に、少人数によるグループワークのため、Zoomのブレ イクアウトルームを積極的に活用した。クラウド上のホワ イトボードとしてGoogle Jamboard※4を活用し、リアルタイ ムにグループの対話ができる仕組みを取り入れた。  通信不良などのトラブルや個別の対応については、Zoom と並行してLINEのオープンチャットを開き、時間をおかず に個別対応できるようにした。 デザインUXラボ(MA402B )システム図 有線マイク*2 無線マイク*2 マイク5系統 ミキサー ビデオ信号 音声信号 モニタスピーカー (モノラル、マイク返し) ピンマイク*1 ビデオカメラ (全景、手元など) 大型モニタ RICOH WB D8600 (インタラクティブ W.B.) スライド用 兼 ホストMac (内蔵カメラも使用) ビデオキャプチャー オーディオ I.F. モニタスピーカー (zoomなどMac音声) zoom画面を投影 手元作業やW.B.板書を配信 複数教員の発話を配信 zoomからの音声確認 12a:デザインUXラボの配信システム

 ※4 Google Jamboard: GoogleがWeb上で提供するアプリのひとつ。ホワイトボードや大判用紙に付箋を貼り付ける感覚で、グループでアイデアをブレイ ンストーミングするのに活用される。具体的な使用例については事例21を参照。

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12b:デザインUXラボでの遠隔授業 13 デザイン基礎1B(表現) 尹 成濟 デザイン学科専門科目|実習|前期|1年|30名╳3クラス(1クラスは5回で完結)  この授業では、タイポグラフィデザインの基本となる活字 成立の歴史と生成のメカニズムをアナログ、デジタルの両面 から学び、タイポグラフィデザインの基礎的な組版まで身に つける。  「実物を見られない」という遠隔授業におけるリアリティ の限界のなかで、なるべく教室でリアルに受けている感じを 出すための工夫を行った。具体的には、テキストを共有する PC、学生の理解度や表情を見るためのPC、書画カメラ代わ りのビデオカメラなどをセッティングして進行した。また 板書が必要な際はiPadを利用してスケッチや要点を書いて 説明するなどの工夫をした。 「デザイン基礎1B」遠隔授業の風景

4.2 遠隔と対面で新しい場を創出する

 対面授業が再開されても、密を避ける教室のキャパシティ 問題、市中の感染状況の拡大、登校への不安など、さまざまな 要因で完全な対面授業を続けることは難しい。事実上、多く の対面授業は、大なり小なり遠隔授業を併用するハイブリッ ド型になる。そうした状況で、対面学生と遠隔学生の学びに 格差が生じないよう、多くの工夫が試みられた。 14 映像メディア領域演習 F(デッサン) 原田 章生 映像メディア学科専門科目|演習|後期|3∼4年|21名  デッサン初心者にむけて短期習得を目指す授業。対面と リアルタイム遠隔を同時並行で行い、受講方法は学生に選択 させた。  毎回の授業は基本的に次の流れで行われた。①教員によ る導入 → ②質問を随時受け付けながら各自制作 → ③1コ マ目の終了時に、各自のデッサン進捗状況をモチーフとと もに写真に撮り、それをGoogle Classroom上にアップロード → ④2コマ目に、それらの写真をZoomで画面共有しながら、 その場で教員がiPadアプリ「Procreate」を用いてデッサンに 加筆し改善点を指導(これを対面・遠隔の学生全員が見る) → ⑤授業の終わりに各自再提出 → ⑥次回授業の冒頭に全 員分を画面共有して指導。  最も心がけたのは、対面と遠隔という二つの空間に分かれ た学生たちが、ひとつの場に一緒に「居る」という感覚を持て るようにすることだった。対面学生も遠隔学生も、ともに同 じ方法で進捗を共有し合い、個人指導も全員で共有できたこ とで、ほど良い緊張感と相互の刺激を生み、前年度までの学 生より確実に理解度と完成度が上がっていると実感できた という。 14:学生課題に教員が加筆して指導する様子。この画面をクラス全員で見る。

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15 デジタルフォトワーク基礎 荒深 えりか 映像メディア学科専門科目|演習|後期|1年|20名╳2クラス  Adobe Photoshopの基本操作や写真のレタッチの基礎を 学ぶ授業。対面とリアルタイム遠隔を同時並行で行った。  授業の進行は前年度までと比べて大きな変更はなかった が、Photoshopの操作説明で「教室スクリーンのプロジェク ター画面が見にくい」という以前からあった苦情が解消され た。遠隔学生と同様に対面学生もZoomにログインし、教卓 PCの画面共有を自分のノートPCで見ながら、手元でより細 かい部分まで確認できたためである。空間的な距離の差が なくなった。  また、この様子をZoomのレコーディング機能で録画し、授 業アーカイブ動画としてGoogleドライブにアップしたこと で、復習しやすく、授業についてこられなくなる学生が減っ た。提出された課題の完成度を見ても、授業内容は理解され ており、全体の水準は上がったという。ただし、遠隔の学生 個々人の進捗が見えないため、つまずきを早期に発見できな い不安がつねにあった。 16 ファッション素材論 島上 祐樹 ファッション造形学科専門科目|講義|前期|1年|70名  ファッション素材(繊維、糸)の物性等に関する講義。基本 的にZoomによるリアルタイム遠隔授業だったが、対面授業 再開後は学生の希望に応じて配信教室(523教室)での対面授 業も並行した。その結果、1/3∼1/2程度の学生が対面での 受講を選択した。また、通信障害対策と復習のために、授業 をZoomで録画し、アーカイブ動画をGoogleドライブからオ ンデマンドでも配信した。  感染拡大の不安が広がる中、学生にとっては安心でき、か つ可能な限り臨場感のある講義が受けられたと思う。

4.3 ツールを工夫する

 リアルタイム遠隔授業といえば、すぐにZoomやMeetの ギャラリー画面を思い浮かべるくらい、このツールは瞬く間 に世界中の学校で一般化した。このセクションで紹介して いるすべての授業もこれをベースに、以前から学生ライセン スを提供しているAdobe Creative Cloudや、Office365の各 種ソフト、Googleの各種サービスなどを活用しつつ、リアル タイム遠隔授業を進めている。  しかし、これ以外にもコロナ禍の遠隔対応で発見した新し いツールの活用や、在宅の学びを多様化するツールの試みも 見られる。 17 メディア造形基礎(映像メディア) 伊藤 明倫、 村上 将城 学部共通専門科目|演習|後期|1年|18名  この授業は、デザイン学科とファッション造形学科の学生 に向けて、映像メディア学科の基礎的な学びを伝える学部共 通科目である。  遠隔授業が余儀なくされ、また学科の映像機材の貸し出し も難しかったため、思い切って学生自身のスマホやタブレッ トを使って撮影と編集の技法を指導することにした。写真 や動画の編集アプリだけでなく、コマ撮り編集アプリも体験 することで、メディアとしての映像の特性を理解できるよう に工夫した。  なるべく操作がシンプルなアプリとして、静止画編集には Adobe Lightroom (モバイル版) を、コマ撮りと動画編集に は、iMotionとiMovie(iOS用)、Stop Motion StudioとYouCut (Android用)を採用した。教室PCの高機能な映像系ソフト であれば、その操作に慣れるだけでも他学科の学生にとって はひとつのハードルになっていただろうが、使い慣れた自分 のスマホのおかげで学生の飲み込みは早く、すぐに使うこと ができた。その分、撮影のアングルや編集によって物語ると いう映像の本質を学ぶことに集中できたという。 17:スマホアプリで動画編集をしている様子

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18 アニメーション演習Ⅰ・Ⅱ 沓名 健一 映像メディア学科専門科目|演習|前期・後期|2年|各22名  この授業では、アニメーションを動かす技術をAdobe Animateを使用して学ぶ。  何よりアニメーションの「動き」が学習の中心になるので、 ZoomやMeetの画面共有ではフレームレートが安定せずコ マ落ちしてしまい、本来の動きが伝わらない。また学生個々 人の通信環境によっても差が出てしまうため、これでは授業 が成立しない。  そのため安定した画質のYouTube Liveによるライブ配 信を使って制作方法の解説を行った。あらかじめ録画した ビデオを配信するのではなく、あくまでもライブで教員の解 説とPC画面を生中継する形だ。配信されたものは自動的に YouTubeにアーカイブ動画として残るので、学生にとって は有用な復習教材にもなった。  しかし他方で、このライブ配信はタイムラグが非常に大き く、何十秒も遅れてしまう。これでは学生との双方向のやり とりができないので、各自の作業中はMeetに移動して個々 の質問に答える形をとった。  ひとくちにリアルタイム遠隔といっても、用いるツールの 特性に応じてそれぞれの短所を補完しあう工夫が必要にな る場合があり、この授業はその一例だろう。全回をこのよう な方式のリアルタイム遠隔で行ってみて、ソフトウェアの操 作やハウツーの技術的な部分では、例年以上に理解度、習熟 度が上がり、課題作品のクオリティに反映された。ただ、後 で見返すことができるためか、授業時間内での質問が極端に 減ってしまい、質問しにくい雰囲気ができたり、小さなつま ずきを早期に発見できない危惧が残ったという。 18:YouTube Liveでライブ配信した授業の一部 19 デザイン基礎1B(表現) 黄 ロビン デザイン学科専門科目|実習|前期|1年|30名╳3クラス(1クラスは5回で完結)  プロダクトデザイン作業の基本的な流れを体験する授 業。ステイホームとなり遠隔授業を余儀なくされた前期、そ の生活状況自体をテーマにして、手指で触れずに使える道具 を考案する課題を実施した。  学生は、身の回りでモノに触る場面を調査し、触れずに 済む道具を方眼紙にデザインし、発泡シートで試作する。 Zoomによるリアルタイムのディスカッションと指導を受け ながらこの試作の修正を重ね、最終的にはPCで設計図を作 成し、そのデータをオンラインで提出した。  いっぽう教員は、大学のレーザー加工機を使い、提出され たデータによって実際にアクリル板を切り出して完成させ た。遠隔であっても、自宅でできること、大学の設備でなけ ればできないことをオンラインで結びつけ、現実のものつく りを実現させた事例である。 19:学生の構想案と試作の一例 20 インタラクションデザイン 柴田 知司 デザイン学科専門科目|演習|前期・後期|3年|5∼8名  デザイン学科VCD領域3年次の専門授業であり、その中で も特にインタラクションデザインの分野を学ぶ。  他の授業事例と同様に、時間割に沿ってMoodleに学生が 集まり、Zoomでリアルタイム遠隔の授業を行う方式で進行 するが、あわせてMicrosoft Teamsを活用しているという。  Microsoft Teamsとは、特定のプロジェクトをチームで進 めるための統合型コミュニケーション・ツールで、LINEの ような文字チャット、音声通話、Googleドライブのような ファイルの共有、カレンダー同期、プッシュ通知機能などが、

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ひとつになっている。チーム全員での情報共有だけではな く個人間のやりとりも並行して行え、これまで挙げたような 多数のオンラインサービスに切り替えなくても、一箇所でコ ミュニケーションが完結する。学生も教員も、大学が提供し ているOffice365アカウントにより無償で利用することがで き、データ容量も気にせずに使用することができる。  これを授業に導入することで、Teamsのプロジェクトが、 授業時間中はリアルタイム遠隔の教室となり、授業以外の時 間でもそのまま制作指導やコミュニケーションが続く場と なる。特に、個々人のリサーチや制作過程を学生同士で見え る化し、相互に刺激を与え合う居場所となるよう工夫したと いう。 20:Microsoft Teamsにおける進捗確認画面

4.4 グループワークへの挑戦

 教員と学生個々人がそれぞれ別々の空間にいながら、どう すればグループワークは可能になるのだろうか?ここでは、 アクティブラーニングで推奨されるグループワークをオン ラインで実施するうえでの工夫と発見、そして難しさについ て三つの事例から考えてみたい。 21 デザインプロデュース1 谷口 友帆、 冨安 由紀子、 加藤 純 デザイン学科専門科目|演習|前期|3年|13名  この授業では、実際の企業(リンナイ株式会社)をパート ナーに、CSV=Creating Shared Value(共通価値の創造)を テーマとして、調査方法やアイデア抽出、プレゼンテーショ ンなどの能力を総合的に身につける。  本来は工場見学に始まり、15回のうち4回ほどリンナイ本 社にてディスカッションや中間プレゼンを行う授業日程だ が、本年度は訪問が一切できなかった。Zoomを活用して、リ ンナイ本社、テレワーク中の社員自宅、学生自宅、大学をつな ぎ、社員への質問とディスカッション、中間チェック、最終プ レゼンに至る全過程をリアルタイム遠隔で行った。  グループ内でのディスカッションにはLINEのグループ トークやGoogle Jamboardを活用した。学生は3年生で、す でにお互い同士の人間関係ができていたため、オンライン であってもグループワークは活発に進んだ。プレゼンテー ションも、訪問先の現場で行うより、オンラインの方がス ムーズに進行できた。  いっぽう、実際の企業と協働するというこの授業の核心部 分についてリアリティを感じることは難しかったという。 学生からは相手がいるという実感が薄かったという意見が あがった。画面の向こうにいるリンナイの人たちとは一度 も直接会ったことがない。会社の空気も肌で感じたことが ない。そういった状況であってもリアリティを感じられる ようなオンライン上の「場」を創出するのは、もう一段階ハイ レベルの課題かも知れない。 21:Google Jamboardを使ったグループワークの様子 22 人間研究 木田 歩 映像メディア学科専門科目|講義|後期|1∼4年|38名  身近な出来事や日常生活のさまざまな行動を、学生各自が リサーチして振り返り、グループワークを通じて課題発見 力、コミュニケーション力、社会と接続する能力を身につけ る授業。  コロナ禍のなかでグループワークの授業を進めていくこ とは、教員にとっても学生にとっても初めての経験である。 そのトライアルの意義を学生に伝えたうえで、内容に応じて 対面、リアルタイム遠隔、オンデマンド配信というすべての 授業方式や、さまざまなツールをミックスしながら授業を進 行した。出席確認についても、Googleフォーム、マイクテス トを兼ねた音声点呼、インタビューなど、いろいろ試して変 化を持たせた。

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 履修生のうち1年生が9割弱を占めており、対面学生と遠隔 学生が一緒に行うグループワークでは、コミュニケーション そのものに多くの困難があったと思われる。しかし、このコ ミュニケーションのズレや戸惑い、タイムラグの経験自体を プレゼンテーションのテーマに発展させるグループがあっ たり、「対面」形式の特性をプレゼンテーションに取り入れよ うとするグループがあったりと、学生は総じて柔軟に思考を していたという。  心配された技術的なトラブルはほとんどなく、グループ ワークでは登校学生のために学科のノートPCを共有モニタ として貸し出したことで、スムーズな進行ができた。 22:登校学生と遠隔学生のグループワークの様子 23 プロジェクトA1・A2/B1・B2 草野 圭一、 冨安 由紀子 学部共通専門科目|演習|前期・後期|3・4年|前期A1+B1=56名、後期A2+B2=22名  三つの学科・二つの学年の学生が混成グループでケースス タディに取り組み、プロジェクト遂行における中心的存在 (ファシリテーター)となりうる力を学ぶ学部共通の科目。 他学科の学生による多様な考え方や情報を元にディスカッ ションを繰り返し、合意形成や実践的な企画立案を経て、プ レゼンテーションに至るまでの流れを体験する。  完全オンラインでのグループワークは全く経験がなく未 知の領域であり、まずオンラインによるグループワークの 場を作ることから出発した。Zoomのブレイクアウトルーム をベースにしつつ、ホワイトボードや大判用紙の代わりに

Googleスライド※5を、資料の共有にはGoogle Classroom内の

ドライブを用いた。空間はZoom、備品はGoogleアプリとい うイメージだ。  対面でのディスカッションであればペンで付箋紙に書い たメモを大判用紙に貼っていくところだが、それがGoogleス ライドにテキスト・ボックスを配置する作業に置き換わっ た。メンバーそれぞれがテキストを書き込むとリアルタイ ムで更新され、同時に共有される。教員もその様子をリア ルタイムで見ることができる。この一連の流れを繰り返し ルーティン化することで、「オンラインによるグループワー クの場」を徐々に形成していった。  今年度ならではのケーススタディとして、そもそもコロナ 禍における「教育が困難な状況」自体を考えることにした。 前期は「みんなの教育を〇〇!」をテーマに、後期は「ポスト コロナ教育を考える」とし、学生のリアルな経験と実感から、 大学教育をどうしたいかを考えた。  さまざまな発見があった。まず、通信状態を含めて不安 を抱えながらの進行だったが、結果的には学生のオンライ ンへの順応力・適応力の高さに驚かされた。また、対面で はコミュニケーションに消極的な学生、会話が苦手な学生 が、オンラインでは水を得た魚のように活発になることも あった。逆に、誰も顔出しせず、発言もなく、画面共有された Googleスライドへの書き込みだけで黙々とワークを進めて いくグループがあったりもした。  通信が途切れたり、黙ってしまったり、オンライン特有の コミュニケーションの難しさは、総じて学生にとって大きな 負荷であった。しかし、その克服方法をグループで考え、解 決することも訓練のひとつになった。ある学生の受講コメ ントを時系列で見ていくと、前期は「大変」「難しい」「緊張」と いった言葉が多く、少しずつ「できた」が増えて気持ちが変化 していくなかで、後期は客観的な視点で自分たちの振り返り ができるように成長している。 23:Googleスライドを使ったプレゼンテーションの様子  ※5 Googleスライド: GoogleがWeb上で提供するアプリのひとつ。PowerPointのようなプレゼンテーションを複数のメンバーで共有しながら作成するこ とができる。

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5. 課題と展望

 以上、コロナ対応で特徴的な取り組みを行ったケーススタ ディとして、合計23科目の授業を紹介してきた。いずれも正 解の見えない試行錯誤のなかで各教員が創意工夫と努力を 重ねた成果であり、実にバラエティに富んだ記録となってい る。最後に全体をまとめる意味で、遠隔授業のメリットと課 題、今後の展望について考えたい。

5.1 メディア造形学部の特殊条件

 その前に、これだけ多様なオンライン授業の取り組みが実 現できたことの背景に、メディア造形学部の特殊条件があっ たことを述べておく必要があるだろう。 演習・実習中心の実践的科目が多い  メディア造形学部は、映像メディア学科、デザイン学科、 ファッション造形学科の三学科によって構成されるクリエ イティブ系の学部であり、講義系科目よりも、演習・実習中心 の実践的科目の方が多い。授業方式の要素の中で、対面要素 とリアルタイム遠隔要素が比率のうえで高くなっているこ とは、これを反映している。

BYODの推進とAdobe Creative Cloud学生ラインスの提供  学部では、以前より「ひとり1台ノートPCを持って登校す る」という意味の「BYOD」を推進してきた。大学でも自宅で も通学中でも、いつでもどこでもシームレスに学習や制作が できるライフスタイルの推奨である。  これを実現するため、学部ではPCの共同購入斡旋や、サ ポートデスク事業、Apple on Campusへの加入などのハー ドウェア購入支援を行うとともに、2016年度より、Adobe Creative Cloudの学生ライセンスをすべての学部生に無償提 供する独自の施策を進めた。在学期間中、学生は授業で使用 するのと同じAdobeの全ソフトウェアを個人のPCにインス トールして使うことができる。  これによって学生のPC所有率は一挙に進み、学科によっ ては2、3年生以上のほとんどが個人のノートPCを持ち、教 室と同じ環境でBYOD生活を実践するようになっていた。  こうした前提条件が、突然の遠隔授業の開始をスムーズに 進行させたことは間違いない。特に、映像メディア学科とデ ザイン学科では、PCを使った制作演習が大きなウェイトを 占めるため、もしBYODの普及やAdobeライセンスの提供が なかったら、どこまでデジタル系の遠隔授業が成立していた か疑わしい。 学部・学科所管PCの機動的な貸し出し  BYODが浸透したとはいえ、特に新1年生ではPCを所有し ていない学生も少なくない。そこで大学からPCを配送して 貸し出すことになるが、学部・学科では、それぞれが所管する PC教室にAdobeなどの専門的なソフトウェアをインストー ルしたマシンを揃えており、それらを機動的に貸し出した。 こうして5月からの遠隔授業開始をスムーズに進めることが できた。

5.2 遠隔授業のメリット

 今回のケーススタディ調査を通じて、多くの報告から共通 して浮かび上がってくる遠隔授業のメリットについて整理 したい。 座席に縛られない学習  以前の演習・実習では、教室の座席によって「遠くて見づら い、聞こえづらい」といった差が出てしまう。しかし、Zoom の画面共有やオンデマンド動画などによって、手元でハッキ リ見る、拡大して詳しく見ることができるようになり、誰に とっても空間が平等になった。これを活かし、ケース14や15 のように対面受講の学生も遠隔学生と同じZoom画面を共有 するといった応用事例も出てきた。また周囲に気を取られ ず集中できるメリットを挙げる先生方も多い。 個々人のペースに合った学習と復習の習慣づけ  ケース06∼11をはじめ、調査したその他多くの授業でも、 授業のアーカイブ録画やチュートリアル動画に対する学生 の評価が非常に高いことが分かる。最大のポイントは、一時 停止したり、何度も見返すことができる動画の特長を活かし て、理解度に応じた個々人のペースで学習ができるというメ リットだ。結果として復習の習慣が自然と身についている ことも見逃せない。ケース09のように、対面授業のなかにオ ンデマンド要素を取り入れ、その教育効果の手応えから徐々 にウェイトを増やしていった事例もある。 制作物のクオリティ向上  上の2点の帰結として、例年よりも課題制作のクオリティ が上がったと指摘する声が多い。特に、デジタル系の演習で は、ソフトウェアに対する理解度や習熟度が向上し、それが 制作物のクオリティ向上に直接つながっている。 情報リテラシー、デジタルスキルの日常的訓練  自分自身で通信トラブルに対処し、さまざまなアプリケー ションやインターネット上のサービスを次々と切り替えな

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がら授業を受け、課題をこなすなかで、学生たちの情報リテ ラシーやデジタルスキルは間違いなく日々トレーニングさ れている。そして、驚くほど高い適応力を見せている。これ は、最適に調整された教室マシンの前に座って、教員の指示 通りに操作するだけの経験ではなかなか得られないものだ ろう。学部がBYODを推奨してきた理由もここにある。コ ロナ禍が加速させた社会の仕組みや産業構造の大きな転換 のなかで、情報リテラシー、デジタルスキルは今後ますます 必須のものになっていく。やむを得ず遠隔学習が余儀なく されたとはいえ、こうして鍛錬された能力が今後活かされて いくのは間違いない。 もうひとつのコミュニケーション・チャンネル  ケース23のように、人前では声が出せないが、オンライン なら積極的に意見や質問が出せるという学生が少なからず いる。不登校気味だった学生が急にアクティブに変わった 事例も複数の先生方から耳にする。Zoomでマイクオンにし て声を出すのは恥ずかしいが、文字チャットなら気楽に発言 できるという学生は非常に多い。  対人コミュニケーションに苦手意識を抱える学生にとっ て、もうひとつのチャンネルが常に開かれていることは救い になるだろう。もちろん、逆にオンライン特有のコミュニ ケーションの難しさや負荷もあり一概には言えないが、複数 のコミュニケーション・チャンネルが同時に開かれている状 態は、教育において望ましいと言えるだろう。

5.3 遠隔授業の課題

 いっぽう、遠隔授業には課題も多い。ケーススタディの回 答のなかから、いくつかを列記してみたい。 学習のつまずきを早期に発見する難しさ  これは、ケース02、15、18をはじめ、多くの先生方が共通 して指摘している課題だ。以前なら、教室内を歩いて回るだ けで学生個々人の進捗状況を把握し、作業が遅れている学生 を発見して個別指導ができた。しかし、遠隔授業ではこれが 非常に難しい。  もちろん、Zoomのブレイクアウトルームに個々の学生を 呼んで進捗を尋ねたり、途中段階の制作物を頻繁に提示させ ることはできるが、ぐるりと教室内を一周しただけで、ひと 目でクラスの全体像を大づかみするようにはいかない。ケー ス18の沓名先生は、授業アーカイブ動画による復習のメリッ トをあげたうえで、後で見返すことができるゆえに授業時間 内での質問が減り、かえって質問しにくい空気になっている のではないかと危惧している。小さなつまずきから手が止 まり意欲を無くしている学生がいるのではないか? そうし た不安を抱えながら授業を行っている先生方は少なくない。 学生同士の相互刺激の難しさ  上と同じ原因によるが、今までは学生たちもまたクラス全 体を見渡すことで、自分の遅れに気づくことができた。また 互いに刺激し合い、クオリティを高めるためにもうひと頑張 りする相乗効果もあった。対面教室という場が、教員∼学生 の関係だけでなく、学生同士の相互作用の場であったこと に、オンライン授業はあらためて気づかせてくれた。  他方で、クラスメイトと比較できない不安が、かえって制 作に打ち込むモチベーションになっているのではないかと いう「デザイン基礎演習」大島淳子先生の指摘もある。ケー ス14や20のように、途中段階の進捗や指導を全員で共有する 試みは大いに参考になるが、それが人数的、技術的に難しい ケースもあるだろう。 コミュニケーションそのものの難しさ  全員がカメラオフにしたZoomの「壁」に向かってひとり話 す苦痛を、教員誰しもが体験したのではないだろうか。結 果、空気をなごませる余談もなく、こわばった授業になって しまう。  発言の必要がない時にカメラオフにすることは通信負荷 を軽減するためには正解であり、じっさい通信状態が不安定 だったり、さまざまな家庭事情からカメラをオンにしづらい 学生もいるだろう。しかし、ログインだけして授業に参加し ていない可能性もあり、それを確認することは難しい。  電話で少しでも会話が途切れたとき「もしもし」「Hello」と 頻繁に口にするのは、相手が聞いているのか、聞こえているの か分からない不安心理による。Zoomなどのリアルタイム遠 隔授業では、まだ「もしもし」に当たるものが確立されていな い。いずれ、技術的にツールが改良されたり、私たちが適応し て新しい作法を身につけるまでは、この課題は続くだろう。  学生同士のグループワークでも同様の問題が発生する。 ケース23のように、そういったコミュニケーションの困難自 体をワークの課題として意識化し、共有する事例は参考にな るかも知れない。 創造性についての懸念  遠隔授業のメリットであげたように、ビデオ教材の活用や 自宅でひとり集中できることで、制作物のクオリティが向上 したという報告は多い。しかし他方で、学生の創造性や独創 性の発展について懸念の声も聞こえる。  「映像メディア領域演習 E」の山本努武先生は、オンライン 教材を充実させればさせるほど、習熟度は向上するが、学生

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