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大学生の学習を支えるための経済的側面に関わる奨学支援の在り方 : 山梨大学(地方・国立大学)大学生の生活・学習実態から考察する 利用統計を見る

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大学生の学習を支えるための

経済的側面に関わる奨学支援の在り方

~山梨大学(地方・国立大学)大学生の生活・学習実態から考察する~

平 田 慎太郎 要  旨  日本の教育に対する国の支援はOECD 加盟国最低ランクに位置し、家計から の支出が多い中、大学生の生活・学習実態は厳しく、卒業後も返還に苦しまれる 人が増えている。本稿では、問題の背景、経緯、最近の動きなどを追い、本学 (地方・国立大学)大学生の生活・学習実態に関する各種調査からの考察を通して、 奨学金や授業料免除等を、学生の実態に合わせて、複合的に組み合わせながら効 果的な奨学支援を模索するべきだと考えた。 キーワード:給付型奨学金、新所得連動返還型奨学金、授業料免除、大学授業料、       単位制度の実質化 1.はじめに  本稿の目的は、大学生の学習を支える基礎になる諸条件のうち、経済的な側面に関わる奨学 支援のあり方を述べることである。それは、近年、経済的な格差が広がり、大学生としての生 活が厳しくなっていることに加え、卒業後の奨学金の返還に苦しんでいる若者が増えているこ とが報じられ、社会問題化していることにあるからである。  今年(2016 年)になって、奨学金に関する問題が活発に議論されるようになった。同年1 月 22 日、安倍総理大臣は施政方針演説で、「本年採用する大学進学予定者から、卒業後の所得 に応じて返還額が変わる新たな奨学金制度がスタートします。希望すれば誰もが、高校にも、 専修学校、大学にも進学できる環境を整えます」と述べた。同月 26 日の代表質問に対する答 弁では「子供たちの未来が家庭の経済事情によって左右されるようなことがあってはなりませ ん。2016 年度予算においては、大学等の無利子奨学金を 1.4 万人増員、授業料減免を 5,000 人増員するとともに、卒業後の所得に応じて返還額が変わる所得連動返還型奨学金制度の導入 に向け、準備を進めています。今後とも、これらの施策により、学生の経済的負担を軽減し、 希望すれば誰もが大学等に進学できる環境を整えてまいります。なお、給付型奨学金について は、財源の確保や対象者の選定など、導入するにはさらに検討が必要と考えております」とも 述べた1)  これを機に、報道においても各紙社説では「奨学金制度『学生ローン』から脱却を(毎日新 聞:2016 年3月 25 日)」、「給付型奨学金 学生への経済支援を広げたい(読売新聞:同年4 月7日)」、「給付型奨学金 若者よ、声を上げよう(東京新聞:同年4月 14 日)」、「奨学金制 度 格差是正へ改善急げ(朝日新聞:同年4月 15 日)」、「給付型奨学金 ばらまき排し勉学支 えよ(産経新聞:同年4月 18 日)」など、大きく取り上げられようになった。  そこでまず、なぜ、奨学金問題がここまで大きくなったのか、その背景を記す。その上で、 本学学生の経済・生活実態を、本学が公表している諸報告書等を基に明らかにする。最後に、 本学(地方・国立大学)の立場から、今後の奨学支援のあり方を提言する。

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2.奨学金問題が注目されるようになった背景  1990 年前半のバブル崩壊後から続く経済停滞が 20 年以上経過し、バブル崩壊の時期に生ま れた子どもたちが大学生や社会人になる中、依然として収入や雇用が不安定な社会が続き、保 護者の経済力が低下している。  実際、厚生労働省「国民生活基礎調査」各年度版によると、等価可処分所得の中央値の2 分の1(貧困線)を下回る所得しか得ていない者の割合である「相対的貧困率」は 2003 年 が 14.9 %、2006 年 が 15.7 %、2009 年 が 16.0 %、2012 年 が 16.1 % と 年 々 増 え て い る。 ま た、同様に求めた「子どもの貧困率」も、2003 年が 13.7%、2006 年が 14.2%、2009 年が 15.7 %、2012 年 が 16.3 % と こ れ も 年 々 増 え て い る。 こ れ を 2014 年OECD 調査(Family database“Child poverty”)2)により国際比較をすると(この調査で日本は 2009 年時点の統計) 加盟 34 か国中、相対的貧困率はワースト6、子どもの貧困率はワースト 10、特に子どもがい る現役世帯のうち大人が1人の世帯の相対的貧困率は最悪という結果である。最新の 2012 年 のデータを用いたならば、もっとランクは悪くなっている可能性もある。  加えて、収入や雇用が不安定なのは若者も同じで、就職難と非正規雇用の増加により、社会 人になっても奨学金を返済できない者が続出している。日本学生支援機構「奨学金の返還者に 関する属性調査」3)によると、同機構から貸与を受けた者のうち、延滞者は 2011 ~ 2014 年度 において約 33 万人で推移しており、2003 年度の 22.2 万人と比較しても約 1.5 倍の人数で高 止まりしている。また、国税庁「民間給与実態統計調査結果」4)において、1年を通じて勤務 した給与所得者の平均給与を見ると、20 ~ 24 歳については 1993 年が 26.1 万円で最高額を記 録したが、2012 年には 22.4 万円まで下がり最新の 2014 年では 23.1 万円になっている。25 ~ 29 歳については、1999 年に 31.1 万円という最高額を記録したが、2009 年には 28.9 万円まで 下がり最新の 2014 年では 29.7 万円になった。いずれもバブル崩壊の影響を受け下がり続けた ものの、リーマンショックを経て近年は名目賃金が回復傾向にある。しかし、厚生労働省の毎 月勤労統計5)では実質賃金が 2011 年度以降 2015 年度まで連続でマイナスとなっていることが 判明している。依然として厳しい状況には変わりなく、特に奨学金を卒業直後に毎年一定額返 済している若者は、以前の若者に比べて負担を重く感じるであろう。  さらに、OECD 加盟国内での高等教育の授業料や奨学金制度はどうなのか。国立国会図書 館「調査と情報」No.869『諸外国における大学の授業料と奨学金』(2015.7.9)6)によると、 授業料水準が高くかつ奨学金水準が低いのは、日本・韓国・チリの3か国だけとある。また 2016 年1月 19 日の参議院予算委員会における斎藤嘉隆参議院議員の質疑で、奨学金制度を設 けていないのは日本とアイスランドだけと判明したが、アイスランドでは大半が国公立大学で 授業料は無料であり、大学の授業料が有償で、国による給付型奨学金制度が無いのは日本だけ ということになる。しかも日本の国立大学の授業料は、新制大学として発足した 1950 年に 3,600 円であったが、1952 年に 6,000 円、1956 年に 9,000 円、1963 年に 12,000 円と増えていった。 その後、1972 年に 36,000 円となり、1970 年以降急激に増額され続け、バブル崩壊後も 1997 年に 469,200 円、1999 年に 478,800 円、2001 年に 496,800 円、2003 年に 520,800 円となり、 2004 年に法人化されて以降も、2005 年に 535,800 円で高止まりを続け、ただの一度も下がっ たことがない。  この高騰には、教育に対する公的支出・支援の程度が影響している。2015 年度版のOECD 「Education at a Glance(図表で見る教育)」7)によると、2012 年時点で国内総生産(GDP)に 占める教育機関への公的支出の割合は、比較可能な調査対象 32 か国中 3.5%で最下位、高等 教育段階では 0.5%でワースト2である。私費負担分 1.0%を足すとOECD 加盟国の平均に達

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するが、これを公私割合で見ると、OECD 平均が約7割の公費負担であるのに対し、日本が 34.3%で最低である。  ちなみに、この資料において日本について分析している「カントリーノート」8)では、「日本 の高等教育機関の学生は、国公立でも私立でも、特に高額の授業料を請求されている」「デー タのあるOECD 加盟国で最も高額な国の一つである。日本の高等教育機関に対する支出の約 52%は、家計からの支出である」「多くのOECD 加盟国には学生の学費負担をサポートする学 生支援制度があるが、日本は制度の整備が比較的遅れている」「日本の高等教育機関の学生は 民間ローンより低利の公的貸与補助の恩恵を受けることができるが、卒業時に多額の債務を課 すこれらの貸与補助を利用している学生は 38%のみである」と記述されている。  このように、奨学金問題が注目されるようになった背景には、子どもの貧困率の上昇、奨学 金返還の厳しさ、若者の賃金の低迷、奨学金改革の議論、国立大学の授業料の高止まり、日本 の教育に対する国の支援が極めて少ないことなどがある。 3.政府による奨学政策の動向  しかし、このような状況の下、教育に対する投資として、政府も手は打っている。2010 年 4月に児童手当が中学生まで拡充され、高校の授業料無償化も実施された。この施策が幸いし てか、文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」9)によると、経 済的理由で中退する高校生は 2009 年度が 2.9%だったが 2014 年度には 1.6%まで減少してい る。また、大学の授業料減免事業の予算は 2010 年度が 196 億円でこれまでと同水準であったが、 東日本大震災により家計急変者が続出したことも影響し、2011 年度が 243 億円、2012 年度が 268 億円、2013 年度が 291 億円、2014 年度が 301 億円、2015 年度が 307 億円と増額している。  一方で、日本学生支援機構の大学等奨学金事業予算は、以下の表の通り 2013 年度まで増額 を続けている。2014 年度以降は有利子奨学金が減少している一方で、無利子奨学金は期間を 通して漸増している。ただし、全体としては予算も人員も減少傾向にある。 表①-日本学生支援機構 大学等奨学金事業予算推移(額:億円、人員:万人) 年度 2011 2012 2013 2014 2015 2016 予 算 合 計 事 業 額 10,781 11,263 11,982 11,745 11,139 10,944 貸与人員 127 135 144 141 134 132 無利子 奨学金 事 業 額 2,597 2,767 2,912 3,068 3,173 3,258 貸与人員 36 40 43 45 47 48 有利子 奨学金 事 業 額 8,185 8,496 9,070 8,677 7,966 7,686 貸与人員 91 96 102 96 88 84 (四捨五入で合計が一致しない年もある)  有利子奨学金が減少していることについて、2015 年3月 13 日開催の日本学生支援機構「平 成 26 年度運営評議会 議事録」10)によると、委員から「平成 25 年度から平成 26 年度にかけて 有利子奨学金の貸与人員数が 92 万人から 86 万人となっている。6万人を減らしたことは適正 なのか」との質問に対し、機構が「有利子奨学金については、貸与を希望する学生全員に貸与 できている状態である。有利子奨学金予算の減少については希望者が頭打ちになっているもの であると考えている。一方、無利子奨学金については予算を増やしているが、結果的に全体と しては減少した形となっている」と答え、同席した文部科学省は「有利子奨学金の希望者が減

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少している理由について、JASSO とも相談しながら分析を進めている。約6万人の減少のう ち、新規貸与者の約2万人は無利子奨学金が増えていることでおそらく説明はつく。ところが、 既に貸与を受けている学生のうち、1年生から2年生へ、2年生から3年生へ進級する時、こ の2学年で 2014 年度と比較すると減少している。進級のタイミングで学生が退学しているの ではないかということも含めて、現在調べているところ。必ずしも退学が要因とは言えないが、 約 3 万人の在学中の学生が有利子奨学金の貸与を辞めているという現状があるため、その理由 について詳しく調べてもらっている」と補足している。  さて、そんな中、2015 年 10 月 26 日、財務省財政制度等審議会の財政制度分科会において 「国立大学法人運営費交付金」について議論されている11)。そこでは、厳しい財政事情の中で、 国立大学法人も収入源の多様化を図るべきではないかとされ、「寄附金や民間研究資金の確保、 授業料の引上げなど交付金以外の自己収入を確保する努力」を求めている。国立大学法人の寄 付金については、2016 年度より、「国立大学法人等が実施する学生等への修学支援事業に対す る個人寄附に係る税額控除の導入」によって、少額でも控除額が大きくなり寄付しやすい環境 が整備された。また、民間企業等と共同研究をさらに推し進めて資金を確保することも重要で ある。しかし、授業料を引き上げることは、学生生活や学生募集など大学運営の根幹に関わる 問題であり、寄付集めや研究資金確保とは意味合いが異なる。  以上述べてきた事から分かるように、教育に対する公費による投資はOECD 加盟国で最低 ランクであるのに加え、政府による施策は効果が限定的であり、結果として授業料値上げが提 起される状況に至っている。  しかし国立大学は、「地域あるいは所得の差にかかわらず、大学への進学機会を全国的に下 支えする役割」12)があり、これを果たすためにどのような奨学支援が望ましいのか、次節では、 本学のような地方・国立大学という視点で、エリア限定で公表されている限られたデータを基 に、考察していく。 4.山梨大学(地方・国立大学)学生の経済・生活実態 表②-山梨大学授業料減免状況(各年「山梨大学大学案内」13)より筆者が作成) 年度 2010 2011 2012 2013 2014 2015 申 請 数 1,560 1,660 1,625 1,518 非公表 非公表 全 額 免 除 214 242 357 543 289 463 半 額 免 除 1,153 1,200 1,019 732 552 305 免 除 者 合 計 1,367 1,442 1,376 1,275 834 768 学 生 数 4,932 5,018 5,044 4,935 3,955 3,945 全額/学生数 4.3% 4.8% 7.1% 11.0% 7.3% 11.7% 半額/学生数 23.4% 23.9% 20.2% 14.8% 14.0% 7.7% 修 士・ 博 士 含 む 含まず 【注1】申請数や免除数は前期・後期の延べ人数。両期受給含む。 【注2】学生数は山梨大学「データ版」各年度より引用。また、授業料減免データ に関して、2013 年度までは学部生・修士・博士の各数が公表されているが、2014 年度より修士・博士が非公表になっている。よって、「学生数」も同様に対応・掲 載した。

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 本学学生の経済・生活実態について、まず授業料減免状況から見ていくことにする。2014 年度から公表形式が変更されているが、入手可能な 2010 年以降の状況を見ると、2014 年度ま では半額免除のほうが多いものの、全額免除が増え続け、半額免除が減少している傾向が読み 取れる。しかし、2015 年度には全額免除の数が半額免除を逆転した。「薄く広く」免除できる 状況ではなく、全額免除しなければならないくらい厳しい経済状況の学生が増え、その分の格 差が広がっている、と見られる。 表③-山梨大学日本学生支援機構奨学金受給状況(各年「山梨大学大学案内」より筆者が作成) 年度 2010 2011 2012 2013 2014 2015 無 利 子 奨 学 金 673 685 697 662 659 687 有 利 子 奨 学 金 879 928 903 855 820 731 合 計 数 1,552 1,613 1,600 1,517 1,479 1,418 学 部 生 数 3,935 3,964 3,994 3,920 3,955 3,945 無利子/学部生 17.1% 17.3% 17.5% 16.9% 16.7% 17.4% 有利子/学部生 22.3% 23.4% 22.6% 21.8% 20.7% 18.5% ( ※ 他 奨 学 金 ) 非公表 非公表 347 346 346 353 【注1】「学部生数」は、山梨大学「データ版」各年度より引用。 【注2】他奨学金は 2010 ~ 2011 年度は非公表、2012 年度以降もほぼ同数で含めず。  次に、日本学生支援機構奨学金の受給状況の推移を見ていく。表からは、無利子奨学金の受 給者は横ばいで、有利子奨学金の受給者は下降傾向にある。前述した通り、全国的なデータと も合致する。  このような傾向について、本学に限らずいくつかの調査でも指摘されている。例えば、東京 地区私立大学教職員組合連合「私立大学新入生の家計負担調査 2015 年度」14)によると、奨学 金を希望する人は、2010 年が 67.9%、2011 年が 64.7%、2012 年が 64.2%、2013 年 61.1%、 2014 年が 61.7%、2015 年が 60.3%と減少を続け、そのうち申請した人は 2010 年が 64.2%、 2011 年が 64.7%、2012 年が 63.4%、2013 年が 65.4%、2014 年が 63.0%、2015 年が 63.2%と 横ばいを続けている。つまり近年は、奨学金に実際に申請する人が漸減している状況が見られ る。  また、ソニー生命保険株式会社「子どもの教育資金と学資保険に関する調査 2016」15)によ ると、高校生以下の子どもの親に、子どもを大学等へ進学させるための教育資金を準備してい る方法を聞いたところ、奨学金は 2014 年が 15.2%、2015 年が 8.2%、2016 年が 4.8%と急落 している。今度は大学等に通う子どもの親に、子どもを大学等へ進学させるための教育資金を 準備してきた方法を聞いたところ、奨学金は 2014 年が 36.0%、2015 年が 41.1%、2016 年が 25.2%という結果であった。各年を足すと、奨学金というお金を借りることから遠ざかってい る近年の傾向が窺える。  これを「景気回復で親の給与が上がっているから借りずに済んでいる」と説明するのにはか なり無理がある(前述の通り、実質賃金は5年連続マイナスである)。明らかに「後々返済が 困難なので最初から借りない」と読み取るのが自然であり、経済的な困窮で大学進学を諦めた 潜在的(希望的)進学者とも言うべき層もいるのではないだろうか。  次に、2005 年度と 2013 年度の山梨大学学生委員会「山梨大学学生生活実態調査報告書」16) を基に、本学学生の生活実態を概観していく。

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表④-住居 年度 自宅 賃貸 寮他 2005 28.1% 64.6% 7.3% 2013 31.7% 57.3% 11.0%  まず、住居形態を見てみると、表④のように、賃貸アパート等を借りる学生が減っており、 自宅通学の割合が増えていることから、堅実な地元志向が窺える。また、「寮他」は下宿や学 生寮などを指しており、地方・国立大学に通う県外生においても、賃貸アパート等を避けてい る。県外・県内出身問わず、経済的負担を避ける傾向が見て取れる。 表⑤-授業料の主たる支払者 年度 両親 本人 その他 2005 86.7% 9.9% 3.4% 2013 81.4% 12.9% 5.7%  次に、授業料の主たる支払者については表⑤の通り、「両親」が減って、「本人」が増えてい ることが注目される。「その他」は配偶者や親族などを指すがこれも増加している。本学のよ うな地方・国立大学においても、両親が授業料を負担できなくなっている状況が窺える。ちな みに前述した通り、授業料は 2005 年から 2013 年を経て現在(2016 年度)に至るまで同額で ある。 表⑥-アルバイトに従事する時間(1 週間平均) 年度 しない ~4h 4~8h 8~ 12h 12 ~ 16h 16 ~ 20h 20h ~ 2005 36.5% 12.0% 14.4% 12.4% 9.1% 8.3% 7.2% 2013 36.5% 8.3% 12.1% 13.0% 13.7% 8.3% 6.3%  アルバイトに従事している状況を1週間あたりの平均時間で見てみると、表⑥のように、ア ルバイトをしない学生が最多(36.5%)であることは変わらないが、従事している学生の分布 を見ると、2005 年度では4~8h をピークに分布している。それに比べて 2013 年度では、12 ~ 16h をピークに分布しており、全体的にアルバイトに従事する時間が長くなっている。アル バイトに従事する人としない人との間で自由に使える時間の差が広がり二極化が進んでいる。 表⑦-大学を通して申請する奨学金制度の利用状況 年度 知っている 利用した事ある 知っているが 利用した事ない 知らない 2005 32.8% 53.2% 14.0% 2013 41.3% 41.4% 15.8%  表⑦は、日本学生支援機構の奨学金など、大学を通して申請できる奨学金制度についての認 識と利用状況を示している。前述の「山梨大学日本学生支援機構奨学金受給状況」では、2010 年度以降は全体としての利用者の数が減少しているという傾向が見られたが、2005 年度に比 べれば2013 年度は利用者が増えていることが分かる。

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表⑧-大学を通さずに申請する奨学金制度の利用状況 年度 知っている 利用した事ある 知っているが 利用した事ない 知らない 2005 5.8% 68.0% 26.2% 2013 10.0% 50.2% 38.3%  奨学金制度には大学を通さずに申請する地方自治体や各種団体の奨学金制度もある。表⑧は、 そのような制度の認識と利用状況である。表⑧によると、地方自治体や各種団体の奨学金はそ う多くないが、「利用した事がある」人が増えている。一方で「知らない」人も多くなっており、 奨学金の給付主体による周知活動が振るわない、あるいは学生の側に情報が届いていないこと が読み取れる。 表⑨-授業料減免等の制度の利用状況 年度 知っている 利用した事ある 知っているが 利用した事ない 知らない 2005 12.2% 69.1% 18.8% 2013 21.2% 63.4% 14.0%  表⑨は、奨学金制度とともに学生に対する経済的支援の柱となる授業料減免制度の利用状況 を示している。前述の「山梨大学授業料減免状況」と同様に、2005 年に比べれば 2013 年度は 認知度も利用者も増えている。 5.山梨大学(地方・国立大学)学生の収入と生活費  本学で行った調査を補完するものとして、ここからは、全国大学生活協同組合連合会「学生 生活実態調査報告書」17)を基に、学生の収入と生活費について見ていきたい。なお、本学が位 置する山梨県は、地域として「北甲地区」(=埼玉除く北関東・甲信越地区)という括りで掲 載されている。 表⑩-地域別にみた1か月あたりの収入と生活費の状況 2015 年 自宅生 下宿生 寮生 北甲 全国 北甲 全国 北甲 全国 収入合計 61,820 62,190 111,500 122,580 115,930 93,070 主な 内訳 小遣い・仕送り 10,180 15,040 62,610 71,440 29,430 36,260 奨学金 17,950 11,470 24,970 23,270 55,430 30,680 アルバイト 32,470 33,960 20,340 25,320 31,070 24,450 支出合計 59,550 59,890 106,290 118,200 118,570 91,030 主な 内訳 食 費 8,940 12,250 24,290 24,760 21,330 25,190 居住費 80 280 47,750 53,100 15,380 19,150 交通費 8,220 9,020 2,550 3,320 3,440 3,990 貯金・繰越 22,070 17,190 7,230 12,500 54,090 19,490 ※下宿生=アパート・マンション・学生会館・食事付下宿・知人宅  寮 生=大学寮、公営寮、子弟寮 ※小遣いは自宅生、仕送りは下宿生及び寮生

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 表⑩は自宅生・下宿生・寮生別に主な収入・支出内訳を地区ごとに表したものである。  まず、北甲地区の自宅生は、全国平均を比べると収入合計も支出合計もほぼ同額であるが、 収入面では小遣いが少ない分を奨学金に依存している。支出面では、食費が少ない分を貯蓄に 回している。  次に、北甲地区の下宿生は、全国平均を比べると収入合計も支出合計も約1割少ない。収入 面では仕送りやアルバイトが少ない。支出面では、居住費は安くなっているが、貯蓄に回すお 金が極めて少ない。  さらに、北甲地区の寮生は、全国平均を比べると収入合計も支出合計も約2~3割多い。収 入面では仕送りが少ないが、奨学金とアルバイトで賄っている。支出面では、食費・居住費と もに安いが、奨学金と同額が貯蓄に回っている。  総じて言えば、下宿生の生活が厳しいことが見て取れる。下宿生は一般的に一人暮らしが多 いため、炊事その他の家事に追われることもあって自宅生よりも時間的余裕が少なくなってい ることが予想される。  そこで次に、学生の学習実態について見ていくこととする。 6.山梨大学(地方・国立大学)学生の学習実態  奨学支援の必要性を考える際に、学習実態を理解しておくことは不可欠である。ここでは、 「山梨大学学生生活実態調査報告書」を用いて、主に学習にかける時間を中心に見ていくこと にする。 表⑪-授業外学習の時間(大学の授業関連) 年度 しない ~1h 1~2h 2~3h 3~5h 5h ~ 2005 17.8% 39.0% 25.5% 10.3% 4.8% 2.4% 2013 6.7% 32.2% 36.0% 13.8% 7.0% 3.8%  表⑪は、授業の時間を除き、それに関わる学習を1日平均どの程度行っているかを聞いた質 問への回答状況である。授業に関連する学習を、「しない」と回答する学生が圧倒的に減って いる。実際の時間数では、2005 年では1時間以内が最も多く、それ以上の学習をする学生の 割合は徐々に減少しているのに対してり、2013 年では1~2時間にピークがきており、それ 以上の時間数においても満遍なく増えている。後に述べる単位の実質化への「取り組み」が進 み、予習・復習に関する課題が増えていることがその背景にあるものと考えられる。 表⑫-授業外学習の時間(自発的な学習) 年度 殆どしない 月数日 週数日 ほぼ毎日 2005 45.3% 22.3% 23.0% 9.4% 2013 28.8% 34.1% 25.5% 10.9%  次に、大学の授業に関するものとは別に自発的な勉強をしているかどうかを問う質問では、 表⑫のように、殆どしない人が減り、定期的に勉強する人が増えている。  このように、「大学の授業のための勉強」「自発的な勉強」が増えている傾向があり、前述の ように「単位制度の実質化」に対する大学側の「取り組み」によるものが大きいようである。  「単位制度の実質化」については、2008 年の中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向

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けて」18)が提起している。答申は、我が国の学生の学習時間が短く、授業時間外の学修を含め て 45 時間で1単位とする考え方が徹底されておらず、学習時間の実態を国際的に遜色ない水 準にすることを目指した総合的な取組が必要であることを提起している。大学は、学生の学習 時間等の実態把握、授業計画の明確化、必要な授業時間の確保などに取り組むことを期待して おり、国によって行われるべき支援・取組として、学習時間の把握、上限単位の設定(キャッ プ制)の促進、シラバスの内容調査などを挙げている。この答申を踏まえた取り組みによって、 大学生の自宅学習時間が増えてきたものと思われる。  実際、大学改革支援・学位授与機構による「平成 26 年度大学機関別認証評価実施結果報 告」の本学版19)によると、「学年暦によれば、1年間の授業を行う期間として定期試験等の期 間を含め、35 週確保されており、各授業は、前期・後期とも 15 週が確保されている。学生便 覧において、1単位の学修時間は、45 時間であること、時間外の学修が必要なことを記載し、 学生に対しては、入学時のガイダンス等において周知を図るとともに、各学部の履修規程に おいても定めている。全学共通教育科目において、医学部学生を除き、GPA(Grade Point Average)に基づくCAP制を導入し、単位の実質化を図っている。」「平成 25 年度実施の学生 生活実態調査では、1日平均の授業外学修時間について、医学部医学科と工学部においては「2 時間以上」と回答した学生が 25 ~ 32%いるが、全学では約 75%の学生が2時間未満と回答し ており、平均で1日当たりの授業外学修時間は約 1.4 時間であり、授業時間外での学修は十分 と言えず、更なる増加・確保が望まれる。これらのことから、授業外学修時間確保に十分な成 果を上げているとは言えないものの、単位の実質化への配慮がなされていると判断する」とあ り、一応は単位の実質化への配慮を認めている。  しかし、「取り組み」は進んでいるが、前述で「授業外学修時間確保に十分な成果を上げて いるとは言えない」と同機構に評価されているように、単位の実質化の「完遂」には程遠い状 況であることも表⑧・⑨が示している。前述のように、生活のためのアルバイトの時間が増え 続けるという厳しい生活実態が、大学側の様々な単位の実質化に向けた取り組みにもかかわら ず、実質化の実現を妨げている面があるという指摘をせざるを得ないのではないだろうか。  大学生の学習を支える基礎条件としての奨学支援のあり方も改めて考え直す必要性が、本稿 で整理した様々な調査から見える学生の生活・学習実態から見ても明らかになったと思う。 7.新しい奨学支援創設の動き 7.1 新たな所得連動返還型奨学金制度創設の動き  2015 年9月に創設された「所得連動返還型奨学金制度有識者会議」の「新たな所得連動返 還型奨学金制度の創設について(第一次まとめ)」20)によると、「教育振興基本計画(2013 年6 月 14 日 閣議決定)」の中で、「卒業後の所得水準に応じて毎年の返還額を決める制度への移行」 を謳っており、その後も、「学生への経済的支援の在り方について(2014 年8月 29 日 学生へ の経済的支援の在り方に関する検討会)」、「子供の貧困対策に関する大綱(2014 年8月 29 日 閣議決定)」、「教育再生実行会議第八次提言(2015 年7月8日 教育再生実行会議)」、「一億総 活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策(2015 年 11 月 26 日 一億総活躍国民会議)」等、 政府の提言等において累次にわたって、卒業後の所得に連動して返還額が変わる奨学金制度の 検討・導入が求められている。「所得連動返還型奨学金制度有識者会議」も、このような流れ の中で設立された会議である。  現在、日本学生支援機構では、「返還猶予制度」「減額返還制度」「延滞金の賦課率の低減」「返 還免除制度」など返還義務の軽減がなされている。また、「所得連動返還型奨学金制度」と称

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する制度もあり、実際、無利子奨学金貸与者の約3割に適用されている。しかしその内容は、 申請時に年収 300 万円以下の家庭の学生が、卒業後に自分で 300 万円の収入を得るまでは返還 を猶予でき、300 万円を超えると月額 14,400 円(平成 27 年度)を一定額返還するというもの であり、申請時の家庭の収入が適用の判断基準で、かつ本人の所得に応じた返還額ではないた め、現在提起されている『所得連動返還』とは異なる制度である。特に、2014 年度末で 25 ~ 29 歳の無利子奨学金返済者は 300 ~ 400 万円層が最も多く(24.0%)、この層にとって一定額 返還は厳しいものがある。  一方、新たな所得連動返還型奨学金制度とは、卒業後の学生本人の年収 144 万円までは月額 2,000 円、それを超えると課税対象所得の約9%を軸に月々の返還額が決まる制度と現行の月 額一定額返還という制度を、学生が貸与開始時にどちらか選択できるだけでなく、貸与終了時 までの間に返還方法の変更も可能にするというものである。加えて、両制度とも、本人の年収 が 300 万円以下の場合は(通算 10 年まで)返還猶予が可能となり、学生が安心して返還でき る制度となるよう設計していると思われる。 7.2 「給付型奨学金」創設の動き  さらに 2016 年1月 26 日の施政方針演説に対する代表質問への答弁で、安倍総理大臣は「給 付型奨学金については、財源の確保や対象者の選定など、導入にはさらに検討が必要だ」と述 べ、同年3月 29 日、記者会見で「本当に厳しい状況にある子供たちには、返還が要らなくな る給付型の支援によってしっかりと手を差し伸べてまいります」と述べて、給付型奨学金創設 に前向きな考えを示した。一部、「給付型見送り…政府、年末の予算編成で判断」(毎日新聞: 同年5月 13 日)との報道もあったが、同年6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍 プラン」21)では、「給付型奨学金については、世代内の公平性や財源などの課題を踏まえ創設 に向けて検討を進め、本当に厳しい状況にある子供たちへの給付型支援の拡充を図る」とある。  今年に入って、連立与党が給付型奨学金の創設について総理に申し入れを行い、野党各党も 独自の制度案を提示するようになったが、前述の「ニッポン一億総活躍プラン」にある「本当 に厳しい状況にある子供たちへの給付」に沿うならば、対象者・人数・給付額等規模について 財源等とも勘案し、相当限定しなければならず、夏の参院選の争点の1つになると思われるた め、具体的な検討は参院選後から年末の 2016 年度予算編成の中で行われるであろう。 7.3 山梨大学の奨学支援22)  自治体や企業・団体のみならず、多くの大学が独自の給付型奨学金制度を設けている。  本学では、学業成績や人物等の優れた学部生に対して最終年次の後期分授業料を全額免除す る「特別待遇学生制度」、同様の学部生(3年次・医学部4年次)を表彰して副賞として奨学 金を授与する「学業成績優秀者表彰制度」(2015 年度は 18 名)、大学院博士課程及び教育学研 究科在籍者の学業奨励及び経済的負担軽減を目的とする「大学院学術研究奨励金」や、入学料 や授業料の免除や徴収猶予などの独自の奨学支援がある。  また、2016 年度より、2015 年 12 月にノーベル賞を受賞された本学卒業生・大村智特別栄誉 博士の「次世代の若手研究者等の育成を推進したい」というご意向を踏まえ創設された「山梨 大学大村智記念基金」を活用した「大村智記念基金奨学金」の給付が始まった。学部生へは初 の返還の必要の無い給付型奨学金であり、2016 年度は新入生を対象に入学試験等の成績を総 合的に判断の上、15 名に 30 万円ずつ支給した(2017 年度以降は内容を変更する可能性がある としている)。

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以上、様々な面から学業を奨励しているが、これらの財源は大学独自の資金・基金からであり、 かつ本学のみならず地方国立大学の財政は厳しく、大きく拡大させることは難しい。やはり国 による積極的な支援が求められる。 8.まとめ  以上、本稿では、経済的側面からの奨学支援について、これまで行われてきた調査などを基 に最近の動きを追ってきた。これまで得られた知見を整理すると、以下のようにまとめられる。 (1)教育に対する国からの投資、特に大学生への支援制度はOECD 最低ランクに位置し、大 学授業料も高止まり状態を続けている。雇用の不安定化と若者の賃金低下で、卒業後に借りた 奨学金を一定額ずつ返済する仕組みは今の若者には厳しくなっている。(2)近年の政府の政 策について、児童手当拡充や高校無償化は一定の効果を上げたが、大学生に対する支援の効果 は限定的で、ここ数年は奨学金予算も頭打ちの状態が続いている。一方で授業料値上げが政府 関係者から提起される状況に至っている。(3)本学ではここ数年、授業料免除は全額免除が 多くなり「広く薄く」免除することでは対応できない程、経済的に厳しい家庭が増えている。 奨学金も後の返済を考えて利用を控える傾向もある。(4)本学学生は以前より賃貸住宅暮ら しが減少し、両親が授業料を払う家庭も減り、学生のアルバイト時間は増えている。(5)北 甲地区の賃貸アパート等で生活する学生は、仕送りやアルバイト収入が少なく、貯蓄に回すお 金も手元に殆ど残らず、一人暮らし生活での時間的余裕も無く、生活実態が全体的に極めて厳 しい。(6)単位制度の実質化に向けた取り組みにより学習時間が増加傾向にあるが、生活実 態の影響が増加の妨げになっている可能性がある。(7)現在、卒業後の所得によって月々の 奨学金返済額が決まる制度が政府の会議で議論されているが、給付型奨学金は財源等の問題で 足踏み状態が続く。大学独自の奨学金も限りがある。  以上の状況下で大学生に対して早急に求められる政策は、まずは、賃貸アパート等に住む自 宅外の学生に対する支援と考える。仕送り額によって奨学金が決まり、足りなければアルバイ トももっと頑張るが、それでは自宅学習に影響が出てしまう。だから県外を敬遠し地元志向が 強まる(のを余儀なくされる)のではないだろうか。現在、日本学生支援機構では、無利子奨 学金については国公立大学の自宅生が月額 45,000 円、自宅外生 51,000 円となっているが、こ の差額では自宅外生の生活は厳しいだろう。やはり経済的に厳しい家庭の自宅外生に「給付型 奨学金」を先行導入する必要性を強く感じる。私立大学も同様であろう。例えば1~2万円程 度を「給付型奨学金」として上乗せすることからスタートしてはどうか。  また、本学が位置する地域を含む地方の大学生に対しては、仕送りする保護者の負担を減ら すために「授業料減免」の拡充が効果的と考える。「国立大学運営費交付金」を地方大へ拡充 分を増額するべきであろう。勿論「減免」額も、もっとメリハリが効いた幅・ステージがあっ てよいだろう。  加えて、居住形態に限らず各家庭での格差が広がっていることもあり、全体的な底上げも必 要である。一律全員に給付型奨学金を給付できればいいが、財政が厳しい中、これが難しいの であれば、少なくとも原則無利子奨学金(有利子は廃止)として、新所得連動返還型奨学金の 全面導入で、希望する全ての学生が無利子奨学金を借りられる制度を整備すべきであろう。  これらの提案は国立大学の授業料が一定であることが前提であるので、先述のような値上げ の事態になれば、都市部の大学よりも地方の大学に対する影響がより大きい。本来であれば、 地方の大学授業料そのものを減らせればいいが、自主財源に直結する話であり、簡単に結論は 出しにくく、今後の課題であろう。

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 国立大学は必要最低限の高等教育を全ての人に等しく受けさせる機関であり、格差が広がる 現代にはますますその理念が求められる。限られた予算を「授業料減免」「給付型奨学金」「新 所得連動返還型給付金」やその他様々なメニューを、家庭の所得・大学所在地・居住形態等別 に複合的に組み合わせて、きめ細やかなで効果的な奨学支援を模索するべきである。その中で も特に地方大学の存在は、地域が成り立つための中心的な役割を担う責務であり、「地方創生」 と謳うならば、地方の大学生の奨学支援に特に力を入れていただくことを要望したい。 9.おわりに  今回の論文作成を通して、本学学生の実態を示すデータが不足していることを感じた。これ まで「山梨学生生活実態調査報告書」が発行されたのは 2005 年度及び 2013 年度の2回のみで ある。授業料免除や奨学金貸与状況のデータも、申請数や学生数(学部生及び院生)の一部が 非公表となっているなど、全体を把握しにくくなっている。勿論、アンケートや編集には人員 も費用も掛かり、個人情報保護の観点からもどこまでデータを公表するかは検討すべきだが、 できれば同報告書の単年度(少なくとも隔年)実施をお願いしたい。質問項目も、他機関・大 学等の同様の調査を見ながら、様々な角度から学生の実態が分かるような項目となるよう再検 討をお願いしたい。授業料免除や奨学金貸与状況のデータも、できれば公表する項目をもう少 し増やしていただきたい。  また、本学では、各部署が様々なデータを独自で収集・集計・公表しているが、これを大学 (本部)の一部署で一括して集積するような体制があれば、大学に関わるデータを本部として 有効活用できるだろう。これは各部署で追加の業務が発生するのではなく、大学本部がデータ を集積するボックスを設けて、そこにデータを入れるだけである。あとは管理する担当者が適 宜編集し、提供元と連携しながら、あらゆる面から大学全体を把握する資料ができるだろう。 その際は、様々な情報発信する広報部署との連携も欠かせない。自らの大学の特長や強みを本 部として把握し、これらのデータを戦略的に用いて、各種媒体・時期・テーマなどを見極めな がら、効果的な情報発信が容易になるだろう。 参考文献 1)国会会議録(検索システム)2016.1.22 衆議院本会議、2016.1.26 衆議院本会議 2)OECD Family database“Child poverty”2014.

 〈http://www.oecd.org/els/soc/CO2_2_ChildPoverty_Jan2014.xls〉 3)日本学生支援機構「奨学金の返還者に関する属性調査」  〈http://www.jasso.go.jp/about/statistics/zokusei_chosa/index.html〉 4)国税庁「民間給与実態統計調査結果」  〈https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/jikeiretsu/xls02/m04.xls〉 5)厚生労働省「毎月勤労統計調査 平成 27 年度平均統計表」(2016.5.20)p14  〈http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/27/27-2fr/dl/pdf27fr.pdf〉 6)国立国会図書館「諸外国における大学の授業料と奨学金」調査と情報―ISSUE BRIEF― NUMBER 869(2015.7.9)p2-3  〈http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9426694_po_0869.pdf?contentNo=1〉 7)文部科学省「図表でみる教育(Education at a Glance)OECD インディケータ」2015.  〈http://dx.doi.org/10.1787/888933285413〉 8)同前 2015 年版(カントリー・ノート:日本)p6-7

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 〈http://www.oecd.org/japan/Education-at-a-glance-2015-Japan-in-Japanese.pdf〉 9)文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(2015.9.16)p53  〈http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/27/09/_ _icsFiles/afieldfile/2015/10/07/1362012_1  _1.pdf〉 10)日本学生支援機構「平成 26 年度運営評議会 議事録」p1-2  〈http://www.jasso.go.jp/about/organization/sosiki/hyogikai/_ _icsFiles/afieldfile/2015/10/  19/hyogikai_26_gijiroku.pdf〉 11)財務省 財政制度等審議会財政制度分科会 配布資料「文教・科学技術」(2015.10.26)p25  〈http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/ proceedings/material/zaiseia271026/02.pdf〉 12)国立大学協会「日本の将来と国立大学の役割」(2001.5)  〈http://www.janu.jp/active/txt6-1/h14_5/03.html〉 13)山梨大学「大学案内 2012」p81、「大学案内 2013」p81、「大学案内 2014」p82、「大学案内 2015」  p82、「大学案内 2016」p54、「大学案内 2016」p56 14)東京地区私立大学教職員組合連合「私立大学新入生の家計負担調査 2015 年度」ホームページ  掲載版(2016.4.6)p13  〈http://www.tfpu.or.jp/2015kakeihutan-chousa-essence20160406.pdf〉 15)ソニー生命保険株式会社「子どもの教育資金と学資保険に関する調査 2016」NEWSLATTER  (調査レポート)(2016.3.2)p10、  〈http://www.sonylife.co.jp/company/news/27/files/160302_newsletter.pdf〉、「同 2015」  (2015.3.13)p11  〈http://www.sonylife.co.jp/company/news/26/files/150313_newsletter.pdf〉 16)山梨大学学生委員会「平成 25 年度山梨大学学生生活実態調査報告書」(2014.3)p26,28,76,  84,87,89-91、山梨大学教学常置委員会「平成17年度山梨大学学生生活実態調査報告書」(2006.  2)p23-25,53,59-62 17)全国大学生活協同組合連合会「第 51 回学生の消費生活に関する実態調査報告書  CAMPUS LIFE DATA 2015」p5,17

18)文部科学省中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」(2008.12.24)  〈http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/_ _icsFiles/afieldfile/2008/12/  26/1217067_001.pdf〉 19)大学改革支援・学位授与機構「平成 26 年度大学機関別認証評価実施結果報告」山梨大学 該当部分(2015.3)p2-(12)-18  〈http://www.niad.ac.jp/sub_hyouka/ninsyou/hyoukahou201503/daigaku/no6_1_1_ yamanashi_d201503.pdf〉 20)文部科学省所得連動返還型奨学金制度有識者会議「新たな所得連動返還型奨学金制度の創 設について(第一次まとめ)」(2016.3.31)p6-17  〈http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/069/gaiyou/_ _icsFiles/afieldfile/  2016/04/07/1369437_1_1.pdf〉 21)首相官邸 一億総活躍国民会議「ニッポン一億総活躍プラン」(2016.6.2)p12-13  〈http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ichiokusoukatsuyaku/pdf/plan1.pdf〉 22)山梨大学ホームページ  「学生支援」〈http://www.yamanashi.ac.jp/campuslife/4015〉

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 「大村智記念基金奨学金」〈http://www.yamanashi.ac.jp/campuslife/3944〉  「独自の経済的支援」〈http://www.yamanashi.ac.jp/campuslife/345〉

参照

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