微気象緩和に関する実験的研究
微気象緩和に関する実験的研究
能登
勇二
(工学部環境工学科) 環境負荷の小さい方法による夏季の生活熱環境改善を目的に、深さ1∼2mの浅い地下貯水槽の水を 地表近くの砂地層中に埋めたパイプ内を循環することによる微気象緩和実験を行った。通水による系外 への流出熱量は昼間で平均で全天日射量の㪈㪍%に相当するものとなった。地上㪊㪇cm 点での気温は通水 しない場合に比べ、昼間で㪇㪅㪊䍽㪚まで、夜間は安定して㪇㪅㪉䍽㪚䌾㪇㪅㪊䍽㪚低くなった。深さ㪌cm の地温は通水 しない場合に比べ、日中で最高 䋲䌾䋴䍽㪚低くなるなどの結果が得られた。 キーワード:熱環境改善、地下熱、地下貯水槽、循環水1.はじめに
我が国では長い高齢化社会の時代を迎えようとしてい る中、地球温暖化、ヒートアイランドなどにより我々の生 活熱環境が悪化しつつあり、その対策が望まれている。地 球環境保全に対する関心が高まり、省エネルギーが重要視 されており、生活熱環境改善の対策は環境に対する負荷の 少ない方法による必要がある。その一つの方策として、自 然エネルギー、特に地中熱の利用を考え、微気象緩和実験 を行っている1) 。ここでは、対象としている微気象は地上 付近の我々の生活空間を想定している。具体的には、我々 の生活空間の中の一般家庭の庭程度から、公園、小・中学 校等のグラウンドの砂地表面を主とする土地の上部空間な どの気象を対象として考えている。微気象の緩和について は、夏はより涼しく、冬はより暖かくという観点から、冬 季については融雪も含めて微気象緩和実験も行っている 2)。これは、積雪地方では、温暖化とともに冬の積雪量が 減少しているとはいえ、寒さとともに生活の障害となって いるという調査結果3)等による。 地中熱は深度㪈㪌m 程度になると年間を通して安定して いることが知られているが、これを取り出すのはかなり労 力とエネルギーが必要である4) 。ここでは、深さ1∼2m 程度の地下熱を利用することを考えている。この熱を地下 貯水槽の水を利用し地上にポンプでくみ上げ、水も循環利 用するものである。地下1mの地温は、図1に示すように 季節とともに変化し、夏は地上付近の気温より低く、冬は 地上付近の気温より高い。水温は冬季でも月平均で5゚ C 以上であり、このままで散水して消雪に用いるには不適当 であるが時間をかけて融雪に用いることが可能である。 本報では、㪉㪇㪈㪇年夏季の微気象緩和に関する実験によっ て若干の知見が得られたので報告する。 図1 地下1mの月平均温度の経月変化 (筑波大学の値は参考値5))䋲
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富山県立大学構内に図2に示すような実験施設を実験A 地とB地として設置した。A地とB地ともに、草地を掘り 込み厚さ㪈㪇cm で砂を敷き詰めた。A地にには、内径㪈㪊mm、 総延長㪋㪇m のステンレスパイプを深さ䋵㪺㫄の位置に幅䋲䌭 㬍䋲䌭、間隔㪈㪇cm で設置した。この地中管の一端から地下 貯水槽からポンプ揚水した水を流入させ、他の一端から地 下貯水槽にもどし、水を循環使用することとした。地下貯 水槽は底面深さが地上から㪈㪅㪌m、広さは䋴㬍䋴㬍䋱㫄である が、水深は㪍㪇cm 前後である。ここから、㪊㪇m を超える長 さのホースを使いポンプ揚水し、循環使用した。 実験は地下貯水槽から常時ポンプで水をA地の地中管内 を循環させる一方、流水の循環のないB地を比較地とした。 通水流量は、夜間は 䋹 ml/s で一定にし、日中は㪈㪇䌾㪊㪇ml/s の範囲で日により変化させた。 図2に示すようにA地とB地の気温を中心にした微気象図2 実験施設の概要 表1 観測機器 図3 実験期間の気温と降水量(富山県立大学構内) 因子について観測した。観測項目は、気温、地温、地中管 の流入水水温、流出水水温、地下貯水槽水温、実験地表面 温度、降雨量である。 気温は、A地とB地とも実験地中央で地表面から高さ㪊㪇 cm 、㪍㪇cm、㪈㪇㪇cm で測定し、これらの点を以下ではA地 とB地それぞれ A1 、 B1 、 A2 、 B2 、 A3 、 B3 とした。地温 はA地とB地の図図2に示す深さ䋵㪺㫄䈱位置それぞれ GA、 GB で測定した。また、地中管の流入水水温と流出水水温 はそれぞれ管の流入口と流出口で測定した。また、A地と B地の地表面温度は断続的に日中㪈㪋㪑㪇㪇を目安に測定した。 降雨量は時間雨量を記録した。これらの測定機器は表1に 示す通りである。 また、この施設は地下貯水槽は既存の実験室の下に設け られたものを使ったこと、ポンプ電源の必要性などから大 学構内にあり、周囲に建物があることにより、日中は一部 図4 実験地の地上30cm点の一日の気温変化 図5 地上30cm、地上60cm、地上100cm各点のA地とB地の 気温差㰱㫋の1日の変化 (地上 30cm、地上 60cm、地上 100cm 各点の気温差Δ t をそれぞれ B1-A1、 B2-A2、B3-A3 としている) で日射が遮られる時間帯が生ずる。
3.実験結果
実験は、現在も継続中であるが、ここでは7月 21 日か ら8月 14 日までの実験結果について述べる。この期間中 の気温と降水量については、図3のように、連日最高気温 が㪊㪇䍽㪚を超え晴天日がつづき、期間の後半に少しまとまっ た降雨がみられた。1日の観測結果の代表的な例として7 月 26 日の結果を取り上げた。この日の昼間(㪐㪑㪇㪇䌾㪈㪐㪑 㪇㪇) の地中管内流量は㪈㪇㪅㪌 ml/s である。 䋨䋱䋩 ᳇᷷䈱ᤨ㑆ᄌൻ A1 と B1 の一日の気温変化の1例を図4に示した。ま3 -図6 GA、GBにおける地温の一日の変化 図7 GAとGBの地温差の一日の変化 た、A1 と B1 、 A2 と B2、A3 と B3 それぞれの気温差の1 日の変化を図5に示した。A1 と B1 においては、午前8 時から9時過ぎにかけて、A1 の気温が B1 に比べ急激に 高くなり、午後3時過ぎから5時にかけては、逆に B1 の 気温が A1 に比べ急激に高くなっている。その他の時間で は、概ね A1 の気温が㪇㪅㪉䌾㪇㪅㪊䍽㪚低くなっており、地中管 流水の気温低下効果が表れている。A2、B2 においても同 様な気温変化をしているが日中は A2 では気温低下効果が 見られるが、夜間は両地点の気温差はほとんど見られない。 また、A3 と B3 でも全体としては他の点と同様な気温変 化をしているが、午前の急激な気温変化の時間を除いて、 1日を通して両地点の気温差は小さくなっている。 以上のような晴天日1日の気温の変化傾向は、他の日で も同様にみられた。ここで、午前と午後にみられるA地と B地の気温差の急激な変化は、実験施設の位置が周囲の建 物により日射が遮られ、陰の出来る時間がA地でB地で異 なることによると考えられた。そこで、A地とB地を 24 時間連続写真撮影した結果、両地の日射条件がほほ等しく 図8 A地における各気象因子の一日の変化 GA:GA の地温、Wtin:地中管流入水水温、Wtout::地中管流出水水温 㰱㪮㫋㪑地中管流出水と流入水の水温差、A1:A1 気温、 なるのは日中ではほぼ㪈㪈時から㪈㪋時の間であり、また、こ の時間帯で実験期間ではほぼ実験地全面に日射があること がわかった。 䋨䋲䋩 ᷷䈫ਛ▤ᵹ᳓᳓᷷䈱ᄌൻ A地とB地の GA、GB の地温を比較したのが図6、GA と GB の地温差を示したののが図7である。 まず、GA、GB の地温ともに、日射の始まりとともに 上昇し始め、㪈㪋㪑㪇㪇頃にはこの日は㪌㪌䍽㪚を超える温度とな った。この時点で、GB では GA より䋲䍽㪚高くなっている。 また、このように高温となったのは、センサーの設置が砂 層でなされたことと設置深が浅かったことに起因するとみ られる。また、夜間は GB では GA より地温が㪇㪅㪈䌾㪇㪅㪉䍽㪚 高くなっている。 また、A地における A1 の気温、GA の地温、流入水水 温、流出水水温、流出−流入水水温差をまとめたものが図 8である。朝7時頃から日射の差し込みとともに、気温、GA の地温が急激に上昇して、しばらく遅れて、流出水水温も 上昇し始める。GA 地温が㪈㪉㪑㪇㪇頃に、A1 気温が㪈㪋㪑㪇㪇頃に ピークとなり、さらにやや遅れて流出水水温がピークとな りA地が日陰になるとともにやや急激にいずれも低下しは じめる。 この日は、昼間 㪏㪑㪉㪇䌾㪈㪏㪑㪋㪇䈱㑆䈲流入水の流量を少し 増やし 㪈㪇㪅㪌 ml/s にした。この間、夜間に比べやや流入水 温が下がるのは、地下貯水槽から地中管流入口までの水温 変化が異なることによるとみられる。 地表面の温度については、放射温度計 TJ-200 により、 日中㪈㪋㪑㪇㪇を中心に観測を試みた。この方法では1枚の画
図9 地下貯水槽の水温の経時変化 (2010年) 図10 地下貯水槽水温と地下1m地温の月平均値の変化 像の㪍㪋区画の中で、気温計の陰となる部分の地表面温度は 極端に温度が下がる。そのため、A地とB地についてなる べく時間をずらさず4方向から記録した4画像について陰 の部分を除き、それぞれの地表面温度を平均値として算出 した。その結果、7月 26 日については、A地とB地の地 表面温度は㪌㪐㪅㪉䍽㪚、㪍㪇㪅㪇䍽㪚となった。その他の日も含める と、晴天日のA地の地表面温度は㪌㪍㪅㪉䍽㪚䌾㪍㪈㪅㪉䍽㪚、B地の地 表面温度は㪍㪇㪅㪇䍽㪚䌾㪍㪊㪅㪉䍽㪚となった。A地とB地の地表面 温度の差は㪇㪅㪏䍽㪚䌾㪊㪅㪏䍽であった。 地中で暖められた水が流入する地下貯水槽の7月、8月 の水温変化を図9に示すが、循環水により日中に上昇する 日変化を繰り返しながら8月末には㪉㪍䍽㪚まで上昇した。し かし、地中管の流入水水温は、図8にみられるように外気 温の影響を受け、日中はやや上昇するが、一日の間ではほ ぼ一定している。一方、地下貯水槽の月平均水温は図10に 示すようになっており、9月をピークとした周期的年変動 を示すと考えられる。 (3)地下への流出熱量と気温の変化 地中管への流水の流入水水温と流出水水温の差と流量か ら A 地砂層から地下貯水槽への流出熱量を求め、㪈㪇分ご との時間変化を示したのが、図11である。流量は日により 図11 地下貯水槽への流出熱量の経時変化(10分間値) 図12 全日流出熱量、日中流出熱量、全天日射量の経日変化 図13 昼間のA地とB地の気温差の経日変化 図14 夜間のA地とB地の気温差の経日変化 異なり一定ではないが、流出熱量は7月下旬から8月中旬 にかけゆっくりと減少している。図12には、全天日射量と 流水による同じ時間帯の流出熱量の経日変化を示した。全 天日射量については今回観測できなかったので、近傍の富 山市気象台の値6)を用いた。流水による流出熱量は全天日 射量にほぼ比例しており、全天日射量の㪈㪍%に相当するも のとなった。また、夜間を含めた全日流出熱量は期間の日 平均で㪉㪇%に相当するものとなった。システム全体の熱の 流れの検討については今後の課題である。 この流出熱により生じる、それぞれ昼間(㪈㪉㪑㪇㪇䌾㪈㪋㪑㪇㪇)、
5 -夜間(㪈㪎㪑㪇㪇䌾⠉ᣣ㪍㪑㪇㪇)のA地とB地の地上㪊㪇cm 点、㪍㪇cm 点、㪈㪇㪇cm 点の気温差(B地気温−A地気温)の時間平均値 を㰱㫋㪻㪈䇮 㰱㫋㪻㪉䇮 㰱㫋㪻㪊として図12に、㰱㫋㫅㪈䇮㰱㫋㫅㪉䇮㰱㫋㫅㪊 として図13に示した。昼間はややばらつきがあるが、B地 に比べA地の気温が地上㪊㪇cm 点で 㪇㪅㪊䍽㪚程度まで低くな ることがわかる。地上㪍㪇cm 点でも㪇㪅㪊䍽㪚低くなり同様の傾 向を示すが全体としては7月にはその差は小さくなってい た。地上㪈㪇㪇cm 点では、A地とB地の気温差はほとんどみ られず、7月には逆にA地の気温が高くなる傾向があった。 㪈㪇㪇cm 点での結果の詳細な原因は不明であるが、7月から 8月にかけて徐々に、その差が狭まりその差が負から正に 変化する傾向がみられることから、㪈㪇㪇cm 点における日射 方向の経日変動と実験地周囲環境がこの点の気温に影響し ていることも考えられる。 夜間は、地上㪊㪇cm 点のA地の気温は安定して㪇㪅㪉䍽㪚䌾㪇㪅㪊䍽 㪚程度、B地より低くなっている。ただ、その差は8月に かけ少しずつ小さくなっている。これは、流入水水温が徐 々に上昇し、砂地層と流水水温との差も徐々に小さくなり、 気温低下効果も低下したことによると考えられ、このこと が、地上㪍㪇cm 点での7月下旬には㪇㪅㪈䍽㪚あった気温差が、 8 月になり次第に減少していることにもみられる。 地上 㪈㪇㪇cm 点では、A地とB地の気温差はほとんどみられなか った。
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㪉㪇㪈㪇年7月から8月に、深さ1∼2mの浅い地下に位 置する貯水槽の水を地表近くの砂地層に埋めたパイプ内を 循環することによる微気象緩和実験を行った。その結果は 以下のようなものとなった。 1)流水による流出熱量は全天日射量にほぼ比例しており、 昼間で平均で全天日射量の㪈㪍%、一日では㪉㪇%に相当す るものとなった。 2)地上 㪊㪇cm 点の気温は流水のない場合に比べ、昼間で 㪇㪅㪊䍽㪚まで 、夜間は安定して㪇㪅㪉䍽㪚䌾㪇㪅㪊䍽㪚低くなった。 3)深さ䋵㪺㫄の地温は流水のない場合に比べ、日中で最高で 䋲䍽㪚䌾䋴䍽㪚低くなっていた。 4)日中の地表面温度は流水のない場合に比べ、㪇㪅㪏䍽㪚䌾㪊㪅㪏 䍽㪚 低いものとなった。 参考文献 1)田中宏明、能登勇二(2010):自然エネルギーの利用を考 えた夏季の微気象緩和実験、富山県立大学卒論研究発表 会 2)石田渉、能登勇二(2010):自然エネルギーの利用を考え た融雪実験、富山県立大学卒論研究発表会 3)能登勇二、石本友子(2004):積雪地方住民の雪に対する 意識と調査 ”,水資源・環境研究, 第17巻, pp.1∼14 4)路面消・融雪施設等設計要領編集委員会(2000):路面消 ・融雪施設等設計要領、建設省北陸地方建設局道路部監 修 5)筑波大学陸域環境研究センター: http://www.suiri.tsukuba.ac.jp/databasehtml/terc,2010.10 6)気象庁(2010):気象観測データ http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.phpA Experimental Research for Microclimate Modification
Yuji NOTO
Department of Environmental Engineering,Faculty of Engineering
A Experimental research for microclimate modification using circulating water-flow in the pipe buried under the ground surface was done. It was stored in an underground tank of 1.5m in depth. The outflow heat from the system was almost proportional to the amount of global solar radiation, and is 16% of it on the average in daytime. The temperature at 30cm point on the ground surface was lower at 0.2 ℃ in average compared with the experimental case of no water-flow. The underground temperature of 5cm in depth was lower at 2 ∼ 4 ℃ in daytime compared with the same case .