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リンゴにおける果皮のクロロフィル含量の非破壊計測

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73

リンゴにおける果皮のクロロフィル含量の非破壊計測

阪本大輔

1

*・原田昌幸

2

・山根崇嘉

3

・守谷友紀

1

・花田俊男

1

・馬場隆士

1

・岩波 宏

1 1農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門リンゴ研究拠点 020-0123 岩手県盛岡市下厨川 2千代田電子工業株式会社 442-8511 愛知県豊川市穂ノ原 3農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門 305-8605 茨城県つくば市藤本

Non-destructive Measurement of Chlorophyll Concentration of Fruit Skin in Apple

Daisuke Sakamoto

1

*, Masayuki Harata

2

, Takayoshi Yamane

3

, Yuki Moriya

1

,

Toshio Hanada

1

, Takashi Baba

1

and Hiroshi Iwanami

1

1Apple Research Station, Institute of Fruit Tree and Tea Science, NARO, Shimokuriyagawa, Morioka, Iwate 020-0123 2Chiyoda Electronics Co., Ltd., Honohara, Toyokawa, Aichi 442-8511

3Institute of Fruit Tree and Tea Science, NARO, Fujimoto, Tsukuba, Ibaraki 305-8605

Abstract

In order to develop a non-destructive method to measure the chlorophyll concentration of fruit skin in apple (Malus × domestica Borkh.), reflectance of diffused light through the skin of fruit was measured using a portable spectrometer. Reflectance was acquired in the 650–740 nm wavelength range to establish a model to predict chlorophyll a and b concentrations using partial least squares regression. The chlorophyll concentration was precisely predicted by each model (r2 = 0.918–0.982) in ‘Akane’,

‘Sansa’, ‘Kitaro’, ‘Jonagold’, and ‘Fuji’ in 2018. Chlorophyll concentrations of ‘Akane’, ‘Sansa’, ‘Toki’, ‘Kitaro’, ‘Jonagold’, and ‘Fuji’ in 2019 were also estimated with small errors using the prediction model of ‘kitarou’ in 2018. The chlorophyll con-centration showed a relatively high correlation with the ground color index (r2 = 0.783–0.903) and starch index (r2 = 0.694–

0.947) in all cultivars. The prediction model was not significantly affected by the temperature of fruit. From these results, the chlorophyll concentration could be non-destructively, precisely, and rapidly estimated using a portable spectrometer, and there is possibility that this can be used to confirm the best time to harvest apple.

Key Words:ground color, maturity, starch index キーワード:デンプン指数,地色,熟度

緒  言

果実の成熟は暦日,積算温度,満開後日数,果実の色, 糖,酸,硬度などによって判断されている.非破壊的な方 法の中で,満開後の日数は個々の樹単位の成熟度を決定す るには正確であるが,個々の果実については果皮色を主体 とした外観に重きが置かれている(山崎・鈴木, 1980). リンゴなどのクライマクテリック型果実の多くは,呼吸量 とともにエチレン生成も増加し,生成されるエチレンによ り果皮におけるクロロフィルの分解やカロテノイドなどの 色素の生成による果皮色の変化,果肉硬度の低下,芳香の 生成などの果実成熟が促進される(立木, 2007).加えて, 近年の温暖化による着色不良の問題が顕在化しており(杉 浦ら, 2007),赤色品種では果皮が濃赤色に着色しやすい 品種や着色を気にしなくてもよい黄色系品種が注目されて いる.果皮の着色が早期に進む良着色品種では,表面色の みで判断を行うと未熟な状態での収穫になる可能性がある ことや,近年黄色品種の中でも,台湾をはじめとした輸出 先でも人気の高い‘トキ’は収穫時期の判断が難しいこと から,品質のばらつきが見られ(深澤ら, 2010),評判を 落とす要因となっている.このようなことから,樹上にお いて果皮の表面色以外の熟度指標についても可視化できる システムの構築は重要であると考える.リンゴの収穫適期 の判断指標の一つとしてカラーチャートを利用することに より,実際の果実の果皮色と見比べながら判定している. 表面色および地色のいずれにおいても,カラーチャートは 連続的な色調の変化を代表的な色票に置き換えた階級評価 であること,また目視による官能評価であることから,調 査者や光環境による誤差が含まれることは避けられない (山根ら, 2019).リンゴでは一般的に収穫後に利用される 選果機には果皮のクロロフィル含量を指標とした熟度判 定システムが組み込まれており,等階級分けを目的とした 項目に加えている産地もある.果皮の着色状況を把握する 装置は多数開発されているが,樹上で着果した状態で品質 判定を行うシステムが実用化された例はない(石井ら, 2020 年 5 月 22 日 受付.2020 年 6 月 9 日 受理.

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阪本大輔・原田昌幸・山根崇嘉・守谷友紀・花田俊男・馬場隆士・岩波 宏 74 2016).このような状況の中,山根ら(2019)はニホンナ シについて樹上で携帯型分光計を用い,果皮のクロロフィ ル含量および地色を迅速かつ高精度に測定できることを 明らかにしており,リンゴにおいても同様の方法によっ て,簡易に果皮のクロロフィル含量が計測できることが 推察された.一方, これまでにリンゴではデンプン含量は 果実の成熟に伴って減少しており (Lau, 1988),果実内 デンプン含量を指標とした収穫期判断が行われている (Thammawong・Arakawa, 2007).そこで,市販の携帯型分 光計を用い,果皮のクロロフィル含量を非破壊で計測し, これまで目視では判別しづらかった地色を簡便で高精度に 評価する方法を明らかにするのと同時に,クロロフィル含 量と成熟の指標として用いられているデンプン指数との関 連性を明らかにすることにより,簡易にリンゴ果実の収穫 適期判定が可能となる技術開発を目指した.

材料および方法

1.携帯型分光計によるクロロフィル含量の推定ならびに クロロフィル含量と地色およびデンプン指数との関係 性についての検討 2018 年および 2019 年の 2 年間,農研機構果樹茶業研究 部門リンゴ研究拠点(岩手県盛岡市)の圃場に栽植されて いる14 年生~19 年生のリンゴ ‘あかね’, ‘さんさ’, ‘ト キ’(2019 年のみ実施), ‘きたろう’, ‘ジョナゴールド’ お よび‘ふじ’において各2~4 樹の果実を使用した.果実 は無袋栽培とし,一般的な栽培管理とした.未熟な果実か ら過熟の果実まで収穫適期前後の約1~2 か月前の間に 3 回程度時期を分けて各品種 30 果程度収穫し,実験に 供試した.採取した果実は室内において,赤道部を中心に 各果2 箇所の測定部位を予め決定して印をつけ,650~ 740 nm の波長域を計測できるように変更した携帯型分光 計(おいし果,千代田電子工業(株))を用いて,各部位の 拡散反射光の反射率を測定した.地色について,携帯型分 光計の測定に用いた部位で赤色品種では‘ふじ’,黄色品 種では‘ゴールデンデリシャス’の地色用カラーチャート (リンゴ地色,富士平工業(株))により判定を行った.ク ロロフィル含量の実測値とデンプン指数の関係性を明らか にするため,2018 および 2019 年に上述した各品種におい て,デンプン指数はりんご生産指導要項(青森県りんご生 産指導要項編集部会,2018)に従ってヨウ素・ヨウ化カリ ウム溶液によるヨードでんぷん反応による染色の程度につ いて,完全消失を0~完全染色を 5 として 0.5 刻みの 11 段 階で判定した.クロロフィル含量は山根ら(2019)の方法 に基づき測定した.具体的には,地色判定後の測定部位の 果皮をセラミック製のピーラー(CP-99,京セラ(株))で 一定の厚さ(0.8~0.9 mm)に剥ぎ取り,直径 12 mm のコ ルクボーラーで切り抜いた果皮ディスクを作成した.その 後,2 mL のマイクロチューブに 1 mL の N,N-ジメチルホル ムアミドを入れた後,果皮ディスクの中央部で2 分割した ものを浸漬し,約4°C の冷暗所で 24 時間抽出した.抽出 液から果皮を取り出した後,10000 × g で 3 分間遠心分離 (CF15RX,(株)日立製作所)し,得られた上澄み液につい て, 分光光度計 (Bio Spec-1600, (株)島津製作所) で 646.8, 663.8 nm, および懸濁度のベースラインとしてクロロフィ ル吸光のない750.0 nm の吸光度を計測した.クロロフィ ルa および b を合計した総含量は,計算式;クロロフィル 含量 (μg・mL–1 = 17.67 (A646.8–A750.0) + 7.12 (A663.8– A750.0)(A は各波長の吸光度を示す)により求めた.上 記で得られたクロロフィル含量の実測値と携帯型分光計の 反射率を用いて,クロロフィル含量推定モデルを作成し た.すなわち,クロロフィル含量実測値を従属変数 (Y) として,各波長における拡散反射光の反射率を独立変数 (X) として,部分的最小二乗回帰分析を行い,クロロフィ ル含量推定モデルを作成した.また,モデルの回帰式の年 次間および品種間差については,共分散分析により有意差 を検定した.統計解析は統計ソフトウェアエクセル統計 ((株)社会情報サービス)を用いた. 2.果実温が携帯型分光計の計測値に与える影響の検討 果実温が携帯型分光計の計測値に与える影響を評価する ため,2018 年の ‘きたろう’ については,地色などの測定 の前に,予め印をつけた同一部位について,果実温を変 え,携帯型分光計による測定を計3 回行った.すなわち, 収穫後に冷蔵庫に搬入し,果実温を下げた果実(測定時果 実温4.1~5.6°C),その後室内に約 2 時間および 4 時間静 置した果実(同16.4~18.5°C,同 22~22.8°C)を順次測 定した.測定はすべて室内で実施した.果実温は代表4 果 について,データーロガー (mini LOGGER GL240, グラフ テック(株))を接続した熱電対を約5 mm 深で果実に挿し 込み,測定データの平均値を測定時の果実温とした.

結果および考察

1.果皮クロロフィル含量推定モデルの品種,年次間差異 2018 年産果実における果皮クロロフィル含量の実測値 と携帯型分光計の各波長における拡散反射光の反射率から クロロフィル含量推定モデルを作成したところ, ‘あか ね’, ‘さんさ’, ‘きたろう’, ‘ジョナゴールド’ および ‘ふ じ’ において,線形近似でそれぞれ決定係数 r2 = 0.940, 0.918, 0.982, 0.966 および 0.967 と危険率 0.1%以下で有意 な高い相関が得られたことから,携帯型分光計によりクロ ロフィル含量が測定できると考えられた(第1 図).次に, 2019 年産の各品種のクロロフィル含量の推定値と実測値 との関係について,2018 年産で相関が高く,連続的なク ロロフィル含量の測定値が得られた ‘きたろう’ のクロロ フィル含量推定モデルを用いて,各品種における推定値と 実測値との関係について解析したところ,それぞれ決定係 数は ‘あかね’ では r2 = 0.954, ‘さんさ’ では r2 = 0.934, ‘ト キ’ で は r2 = 0.944, ‘き た ろ う’ で は r2 = 0.981, ‘ジ ョ ナ ゴールド’ では r2 = 0.926 および ‘ふじ’ では r2 = 0.919 とな

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り,RMSEP(= 0.198~0.394)も小さかったことから 2018 年産‘きたろう’で作成したモデルは,品種横断的にクロ ロフィル含量を推定するのに適していると考えられた(第 2 図).これらの結果から,2018 年産‘きたろう’のクロ ロフィル含量推定モデルを用いて,2019 年産‘あかね’, ‘さんさ’, ‘トキ’, ‘きたろう’, ‘ジョナゴールド’ および ‘ふじ’のクロロフィル含量を推定することが可能と考え られた. 2.クロロフィル含量と地色カラーチャート値およびデン プン指数との関係 1)地色 2019 年 産 ‘あ か ね’, ‘さ ん さ’, ‘ト キ’, ‘き た ろ う’, ‘ジョナゴールド’ および‘ふじ’ のクロロフィル含量実測 値と地色カラーチャート値との関係については,6 品種で ほぼ同様の傾向を示し,クロロフィル含量が約5 μg・cm–2 未満の範囲では,二次関数による近似で,それぞれ決定 係数r2 = 0.903, 0.804, 0.846, 0.865, 0.783 および 0.825 とな り,危険率0.1%以下で有意となる高い相関が得られた(第 3 図).同一の地色判定値でのクロロフィル含量の幅は, 各品種の収穫適期とされるカラーチャート値の多くは 4~5 であることから,それらを平均した値 4.5 で見た場 合,赤色品種で0.36~2.12 μg・cm–2,黄色品種で0.66~ 1.91 μg・cm–2となった.山根ら(2019)の指摘するとおり, この誤差はカラーチャート値が階級値であることと,目視 による判定にはばらつきがあることが主な原因と考えられ る.加えて,赤色品種は黄色品種に比べ,範囲が広くなっ た.この要因として赤色品種では,着色により地色が判別 しづらくなったことが考えられる. 2)デンプン指数 多くのデンプンは果実の成熟期間中に分解され,糖の 増加に重要な役割を果たしており (Ohmiya and Kakiuchi, 1990),リンゴ果実のデンプン含量は収穫適期を判断する のによい指標である(Lau, 1988).そこで,2018 年産およ び2019 年産の果実を用いて,クロロフィル含量実測値と デンプン指数との関係性について検討を行った.品種ごと に2018 年産および 2019 年産を合わせたデータ解析をした ところ(‘トキ’は2019 年産のみ),二次関数による近似 で,‘あかね’, ‘さんさ’, ‘トキ’(2019 年のみ実施), ‘き たろう’,‘ジョナゴールド’および‘ふじ’でそれぞれ決 定係数r2 = 0.845, 0.694, 0.947, 0.753, 0.801 および 0.779 と なり,危険率0.1%以下で有意となる高い相関が得られた (第4 図).それぞれの品種について収穫適期のデンプン指 第1 図 果皮のクロロフィル含量の実測値と計算値との関係 (2018 年産) 第2 図 2018 年産 ‘きたろう’ の推定モデルを用いた場合の 2019 年産の各品種における実測値と計算値との関係

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阪本大輔・原田昌幸・山根崇嘉・守谷友紀・花田俊男・馬場隆士・岩波 宏 76 数が示されているので,その指数に対応したクロロフィル 含量を示せば,収穫適期が判断できる可能性がある.例え ば, ‘トキ’は 1.5 以下, ‘ふじ’は 2.0 以下が収穫適期の判 断指標とされているが(青森県りんご生産指導要項編集部 会, 2018),このときクロロフィル含量は,それぞれ 0.92, 2.35 μg・cm–2以下であれば収穫適期と判断できる. 3.果実温がクロロフィル含量推定値に及ぼす影響 果実温がクロロフィル含量推定値に及ぼす影響について は,山根ら(2019)は,低い温度(8.1°C)で値が高く,高 い温度(36°C)で値が低く計算される傾向があり,その差 は低温度域で大きかったことを報告している.今回試験し た温度域(4~22°C)においては,クロロフィル含量推定 値に及ぼす影響は見られなかった(第5 図).ただし,近 年,早生種が収穫される時期の気温は30°C 前後となるこ とから,今後,今回計測した温度より高い温度域での検討 を行う必要がある. 以上のことから,650~740 nm の波長域を測定できる携 帯型分光計により,2018 年産供試品種では,品種に関わ らず,高い相関が得られ,2018 年産 ‘きたろう’ の推定モ デルを用いて2019 年産の 6 品種のクロロフィル含量をわ ずかな誤差で測定できることから,推定モデルは汎用性が 高いことを明らかにした.加えて,リンゴでの収穫期の指 標となるカラーチャートを用いた地色およびデンプン指数 との関係性についても調査を実施したところ,果皮のクロ ロフィル含量を高精度で測定できること,収穫の目安とし て用いられている地色およびデンプン指数とクロロフィル 含量との間に高い相関があることを明らかにした.今回, 第3 図 クロロフィル含量と地色との関係(2019 年産) 第4 図 クロロフィル含量とデンプン指数との関係(2018 お よび2019 年産) ▲:2018 年産,◆:2019 年産 第5 図 2018 年産 ‘きたろう’ における果実温がクロロフィ ル含量計測値に及ぼす影響 4.1~5.6°C(短長破線)y = 0.9818x + 0.0315(r2 = 0.982), 16.4~18.5°C(長破線)y = 0.9817x + 0.0317(r2 = 0.982) および22.0~22.8°C (単線) y = 0.988x + 0.0204 (r2 = 0.988)

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屋外での測定は実施していないが,山根ら(2019)は,ニ ホンナシにおいて室内で測定したクロロフィル含量推定値 と野外で測定したクロロフィル含量推定値との関係をみて おり,晴天時の野外の日向や日陰での測定結果と室内の測 定結果ではほぼ同じ測定値を示し,野外での測定が可能で あることを報告していることから,今回供試したリンゴに おいても同様のことがいえると考えられる. 遠藤(2004)は,営利栽培南限地に近い福島県において 現在着色不良が問題なのは早生種の‘つがる’や中生種の ‘ジョナゴールド’であると報告している.これに対し, 農研機構では収穫時期に高温でも着色が優れた‘紅みの り’ および ‘錦秋’ を育成しており(阿部ら, 2018a, b),都 道府県の公設試験場においても,同様の目的での品種開発 が進んでいる.一方で,例えば富山県において‘紅みの り’は地色用カラーチャート値で4.5 程度を目安に食味を 確認して収穫を行うことを推奨しているが,良着色性品種 は目視では地色の確認が難しいケースもあり,表面色だけ で判断すると未熟な状態で収穫する恐れもあることから, 今後普及が進むにつれ問題が生じる可能性がある.今回供 試した‘あかね’は着色が優れた品種であるが(Honda ら, 2014),着色が進んだ状況においても,果皮のクロロフィ ル含量を高精度で測定できることが明らかとなった. リンゴでは早生種や中生種で熟度のばらつきが大きい 品種が多いことが報告されている(佐藤ら, 2001).野呂 (2005)は,収穫期の判断はカラーチャートによる表面色 や地色だけでなく,着色指数,デンプン指数,硬度,糖 度,酸度などいくつかの品質項目も合わせて総合的に行う 必要性を指摘している.これまでに非破壊的に果実中の デンプン含量を測定する方法も報告されているが(別所 ら, 2003),樹上において複数の収穫指標のデータが考慮 された収穫判定装置はリンゴにおいて実用化された例はな い.本研究において,携帯型分光計により得られた果皮の クロロフィル含量について,カラーチャートによる地色や デンプン指数との相関関係が得られた.このことから,ク ロロフィル含量により熟度の判定ができる可能性が示唆さ れた.今後,クロロフィル含量と硬度,糖度,酸度との関 係性を調査することにより,これまで複数の項目で実施し てきた収穫適期判断をクロロフィル含量により実施可能か どうかについて検証を重ねる必要がある. 本研究で使用した携帯型分光計について,現状では作業 者が果実1 個 1 個に対し使用して収穫判断を行うといった 方式は現実的ではなく,代表的な果実に使用することによ り,園全体の収穫判定を行うことになると考えられる.一 方で,今後,後継者不足により生産者人口が減少する状況 の中で生産量を維持していくためには1 戸当たりの栽培面 積の拡大をしていく必要があり,現在様々な場面での作業 の機械化が検討されている.将来的に収穫ロボットを活用 する場面において,収穫基準が明確になるシステムの構築 は重要になってくることが想定され,今回明らかにしたク ロロフィル含量により収穫適期を判定する手法は有用な ツールの一つになり得ると考えられる.

摘  要

リンゴの果皮のクロロフィル含量を非破壊で計測するた めに,携帯型分光計を用い,果皮を透過した650~740 nm の波長域の拡散反射光の反射率を非破壊で測定し,部分的 最小二乗回帰分析を行いクロロフィル含量の推定モデルを 作成した.その結果,2018 年産の ‘あかね’,‘さんさ’, ‘きたろう’,‘ジョナゴールド’ および ‘ふじ’ において, 決定係数r2 = 0.918~0.982 と高精度にクロロフィル含量を 推定することができた.2018 年産の ‘きたろう’ で作成し た同推定モデルで,2019 年の上記 5 品種および ‘トキ’ の クロロフィル含量の検証を行ったところ,決定係数が r2 = 0.919~0.981 と高く,誤差も小さく推定できた.また, すべての品種でクロロフィル含量とこれまで収穫適期の指 標として用いられてきた地色やデンプン指数との間に高い 相関がみられた.推定モデルは今回試験した温度帯では果 実温の影響は少なかった.以上のことから携帯型分光計を 用い,果皮のクロロフィル含量を迅速かつ高精度に測定 き,リンゴの収穫期判定に活用できる可能性が示唆された.

引用文献

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参照

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