南海トラフ地震における療養施設の被災状況予測
10
0
0
全文
(2) 180 南海トラフ地震における療養施設の被災状況予測. cilities and plan evacuation measures. Key words: Nankai Trough earthquake, Care facility, Estimate a damage to medical institutions, Transfer plan, DNavi. する DMAT の派遣計画を立案,報告した4).. 1. 緒 論. 今回はこのソフトウェアに療養病床のデータを. 南海トラフ地震は,今後 30 年以内に 80%の確. 追加し,療養病床に収容中の入床者の避難,支援. 率で発生するといわれている巨大地震である.こ. 計画を作成するための基礎データを作成した.. の地震では甚大な被害が予想されており,医療機. 2. 方 法. 関の被災予測や支援対策も行われつつある.しか し,これまで療養施設の被災予測は行われてこな. 今回は,2018 年 3 月の時点での全国の保険医. かった.自力で移動できない入床者が多い療養施. 療 機 関 お よ び 災 害 拠 点 病 院 の リ ス ト に 加 え,. 設の避難では特別な配慮と準備が必要となる.今. 2018 年 3 月の厚生労働省病床機能報告5) の中の. 回は,南海トラフ地震における避難,災害支援計. 医療および介護療養病床を持つ施設のリストおよ. 画の基礎となるデータを作成する目的で,療養施. び病床数のデータを元に, 未記載分を追加調査し,. 設における被災予測を作成し,若干の考察を加え. DNavi に追加して被災予測を行った.. た.. 2018 年 3 月の厚生労働省医療施設動態調査6). 筆者らは以前の研究で,各地厚生局が公開して. では療養病床を持つ施設数は発表されているが,. いる保険医療機関のリストを取得し,国土交通省. 個別の施設名は記載されていない.一方,厚生労. の位置標高情報と災害拠点病院の情報を付加した. 働省病床機能報告では療養病床を持つ施設名が記. 上で,内閣府の南海トラフ地震の被害想定を突合. 載されているが,各施設の申告に基づくデータで. 1,2). .このソフトウェ. あるためか厚生労働省医療施設動態調査と比較す. アは,内閣府の南海トラフ巨大地震対策検討ワー. ると約 3,000 施設が未記載となっている.本研究. キンググループが平成 24 年 8 月から平成 25 年 5. では,未記載分の調査を行い,療養病床のリスト. 月の間に取りまとめた南海トラフ地震の被災予. を作成し,DNavi に追加した.緯度経度標高は. したデータベースを作成した. 3). 測 を全国の保険医療機関に当てはめ,保険医療. 国土交通省国土地理院が公開しているデータベー. 機関の緯度,経度,標高より医療機関個々の被災. スを使用し,各施設の住所に対応する緯度,経度,. 予測を計算し,地図上に被災状況別に色分けされ. 標高を取得した.. たマーカーとして表示する機能を持つ.このソフ. 内閣府の災害予測では津波被害が 11 のケース. トウェアは,極端に情報が少ない甚大災害の発災. に分けられており,これに 2003 年中央防災会議. 初期に,DMAT が支援すべき災害拠点病院や到. が行った予測と,11 ケースの中の各地の最大津. 達するまでの経路を選択するための支援ツールと. 波高を加えた合計 13 ケースについて,医療機関,. して使用できるほか,あらかじめ被災地および医. 療養施設ごとに津波高を入力した.地震の震度に. 療機関の被災状況を予測し,おおよその DMAT. ついては内閣府による 6 ケースに加え,2003 年. の配置計画を立てておくことができる.このソフ. の中央防災会議の予測を加えた 7 ケースが公開さ. トウェアを DNavi と称してデータのアップデー. れており,すべての医療機関,療養施設について. トを続けている.2017 年には,首都直下地震の. 7 ケースのそれぞれの震度を計算し,これに各地. 被災予測を追加し,同様の手法で首都直下地震の. それぞれの 7 ケースの中の最大震度を加えた 8. 医療機関の被災状況を予測し,首都直下地震に対. ケースを入力した..
(3) 医療情報学 39 (4) , 2019 181. 療養施設の被災予測については,震度,津波高 ともに最大被害のケースを使用した.津波高が施 設の標高を上回る場合を津波被害とした.震度 6 強以上の揺れに暴露した場合,耐震化設備のない 医療機関は被災し使用できなくなり,震度 6 弱で あれば耐震化されていなくても使用可能として計 算した.すなわち,津波被害を逃れた施設のうち, 震度 6 強と震度 7 の施設に耐震化されていない 率を乗じた数値を揺れにより被災する施設数およ び病床数とし,この値と津波で被災する施設の和 を継続使用が不可能な被災施設として計算した. 耐震率は厚生労働省が公開している 2018 年の都 道府県別医療機関の耐震率3)を使用した.さらに, 南海トラフ地震の予測のうち被害が最小と考えら れるケース 1[ 「駿河湾~紀伊半島沖」に「大す べり域+超大すべり域」を設定]と,最大被害と を比較した.. 図 1 DNavi の津波ケース別被災予測の一部 左から,施設の標高,内閣府の津波被災予測 11 ケース とその中の最大,2003 年の中央防災会議の予測,実際 の災害の津波高(空欄,発災時に入力) ,災害拠点病院 の種類,病床数,療養病床数.下段は標高が津波高よ り低い場合は「×」 .. 3. 結 果 2018 年 3 月の厚生労働省医療施設動態調査に よると,国内の 1 床以上の入院病床がある医療機 関は約 15,500 施設,病床数は約 1,650,000 床で あった.一方,療養病床の合計は 333,445 床であっ た.このうち,今回の調査で医療機関ごとの病床 数が取得できたのは 323,335 床(97%)であった. この中で津波被害を受けるのは約 540 施設,約 34,000 床,津波被害は受けないが揺れによる被 災が予想されるのは約 200 施設,約 15,800 床で あった.合計すると約 740 施設,約 49,800 床に 津波あるいは揺れによる被災が予想された.被災 が 予 想 さ れ る 全 医 療, 介 護 施 設 の 病 床 数 は 246,400 床であったが,約 20%を療養病床が占 めるという結果となった.図 1 にケース別の津波 被災予測, 図 2 にケース別の揺れによる被災予測, 図 3 に津波と揺れによる被災予測を表示する DNavi 画面を示す.図 4~図 11 に療養病床を持 つ施設をプロットした地図を示す.図 12 に療養 施設の都道府県ごとの被災病床数を,図 13 に比 較対象として全医療機関の被災病床数を示す. 12 府県で被災病床数が 2,000 床を越えており,4. 図 2 DNavi の揺れによる被災ケース別被災予測の一部 左から順に内閣府の予測 6 ケース,2003 年の中央防災 会議の予測,実際の災害の震度(空欄,発災時に入力) , 被災判定に選択した震度(網掛け部分のバックと同じ) , 拠点病院では耐震施設かどうか,拠点病院の種類,病 床数,療養病床数.下段は耐震設備がない場合は 6 強 以上は「×」 ,耐震設備があれば「○」 ..
(4) 182 南海トラフ地震における療養施設の被災状況予測. 図 3 DNavi の津波と揺れによる被災予測の一部 津波高,震度を選択された状態を示す.左から順に, 標高,津波高,震度,下段に津波高との関係,震度と 耐震設備との関係,耐震施設かどうか,災害対策設備 の状況等,災害拠点病院の種類,病床数等,療養病床数.. 図 6 療養病床を持つ施設の被災予測.中京地区. 図 4 療養病床を持つ施設の被災予測.関東地区 マーカー;黒:津波被災,グレー:震度 6 強以上,白: 6 弱以下. 「拠」は災害拠点病院を示す.. 図 7 療養病床を持つ施設の被災予測.関西地区. 府県で 3,000 床を越えていた.図 14 に被災する 療養病床数のその都道府県の療養病床数に占める 割合を示す.8 府県で被災すると予測される病床 が 40%を越えていた.図 15 に全病床のうちの療 養病床の割合と,南海トラフ地震で被災する全病 床のうちの療養病床の割合を示す.全病床の被災 率に比べ,療養病床の被災率が高いのは茨城県, 図 5 療養病床を持つ施設の被災予測.東海地区. 熊本県,沖縄県であった.図 16 にケース 1 と最.
(5) 医療情報学 39 (4) , 2019 183. 図 8 療養病床を持つ施設の被災予測.紀伊半島. 図 10 療養病床を持つ施設の被災予測.九州地方. 図 9 療養病床を持つ施設の被災予測.中国四国地方. 大被害の療養病床の津波と揺れによる被災予測 を,図 17 にケース 1 と最大被害の療養病床の津. 図 11 療養病床を持つ施設の被災予測.沖縄県地方. 波による被害の予測を示す. 津波被害については, 被害が少ないとされているケース 1 と最大被害の 場合とで大きな差がなかった. 4. 考 察. 起こることはなく,ある程度の幅の差違が存在す ると考えられる.われわれの被害想定では,この ような予測の誤差は問題にせず,内閣府より発表. 1)被災状況の推定についての問題点. されている予測に基づいてそのまま計算を行っ. 本研究の計算の基礎となる内閣府の被災予測. た.計算自体には誤差はないものと考える.すな. は,過去の災害を分析した結果得られたおおよそ. わち,今回の被災予測における誤差は,内閣府の. の想定である.今後現実に発生する災害はこの想. 予測と現実に発生する災害との差違と,医療機関. 定に近いと考えられるものの,その通りの災害が. を使用不能とする線引きの設定,および個別の医.
(6) 184 南海トラフ地震における療養施設の被災状況予測. 図 12 都府県別療養施設の被災病床数. 図 15 全病床のうち療養病床数の割合,および被災が 予想される病床のうち療養病床数の割合. 図 13 都府県別全被災病床数. 図 16 ケース 1[「駿河湾~紀伊半島沖」に「大すべり 域+超大すべり域」を設定] (半割れ)におけ る療養病床の被災病床数. 図 14 都府県別療養施設の被災病床の割合. 療機関の災害に対する耐性の差によると考えられ る.今回の研究では,それらの予測の幅を定量的 に評価することは行えなかった. 揺れによる被害の予測については,震度 6 強以 上の揺れに暴露した場合,耐震化設備のない医療 機関は被災し使用できなくなり,震度 6 弱であれ ば耐震化されていなくても使用可能とした.この 判定基準は,これまでの地震被害からほぼ妥当で. 図 17 療養病床の津波被害.最大被害のケースとケー ス 1 の比較.
(7) 医療情報学 39 (4) , 2019 185. はないかと考えたが,震度の値が低いとされてい. 西側でも最大被害に近い被害が発生する結果と. ても局地的に強い揺れが発生する可能性もある.. なったことには注意が必要である.. 耐震設備があっても内部施設や機材の破損のため. 医療機関の災害対策として,以下の 4 点が重要. 使用不能となる医療機関が出現する可能性もあ. であると考える. ①新規に発生する負傷者の収容,. り,震度 6 弱以下でも診療を継続できない施設が. ②津波による被災が予想される医療機関の入床者. 出現するとすれば,病院避難が必要となる施設数. を津波の到達前に緊急避難すること,③被災した. はこの計算値より増える可能性があることを考慮. 医療機関から入床者を別の医療機関へ移送するこ. に入れておく必要がある.. と,④移送された患者を収容,治療すること.. 図 12~図 15 に示す結果は,それぞれの地域の. このうち療養施設に関係する 2 点目以降につい. 最大被害想定を集めたものであり,震源によって. て考察する.. はこれより被害が小さいと予想されている地域が. (1)津波の到達前に緊急避難すること. 存在する.災害対策を作成する上では各地域の最. 津波により被災すると予測される施設におい. 大被害を下敷きにする必要があると考え,このよ. て,津波が到達する前に,療養病床の入床者と,. うな形で取りまとめを行った.. 自力で移動できない重症者とを安全な場所に移動. 本研究では,厚生労働省病床機能報告に加えて. させるのには非常な困難が伴うと予想される.内. ネットなどで公開されている情報を網羅する独自. 閣府では,地震が発生してから津波が到達するま. 調査で追加しており,療養施設に対する全数調査. での詳細な予測を発表しており,概要を表 1 に示. として行っている.厚生労働省医療施設動態調査. す.. を母集団として検定を行うのではなく,われわれ. 内閣府の予測では,南海トラフ地震では揺れか. の調査結果を全数調査の結果としてもよいのでは. ら津波到達までの時間が極端に短い地域があると. ないかと考えて,統計学的な推測値の検定などは. されており,地域によっては避難が不可能あるい. 行っていない.. は非常に困難と考えられる.地震発生から 10 分. 2)今回のデータに基づく災害対策. 以内に津波が襲う静岡県,愛知県,三重県,和歌. 被災が予想される医療機関の病床数のうち約. 山県,徳島県,高知県では健常者でも避難が困難. 20%を療養病床が占めることが明らかとなった.. と予想される.住居や働く場所を選択する場合に. 図 15 に示すように,被災する医療機関の病床数. 平時の利便性をとるか,万一の津波被害を考える. のうち,療養病床が占める割合の多い県があるこ. かは個人の価値観によると思われるが,自力避難. とも明らかとなった.後段で詳述するが,これら. が難しい療養病床の入床者に対しては,避難手段. 療養病床の入床者は避難に特に介助を必要とする. の提供を行うか,あるいは万一の場合に避難が難. と考えられる.最小被害とされるケース 1(図. しいことが予想される場合は,その旨情報提供す. 16)と最大被害(図 12)を比較すると,揺れに. るなどの配慮が必要と思われる.. よる被害は内陸部を中心にケース 1 で少なかった. 避難開始のタイミングについて,群発地震など. が,津波被害についてはあまり差がないという結. の大地震の兆候が得られた段階で避難を行うべき. 果となった(図 17).ケース 1 は「半割れ」と呼. という提案もある.しかし,近年「現時点におい. ばれており,東側で甚大な被害が起こる一方,西. ては,地震の発生時期や場所・規模を確度高く予. 側では比較的被害が軽いが西側でも引き続いて同. 測する科学的に確立した手法はない」7) との知見. 規模以上の地震が起こる可能性が大きいため,最. に基づき大規模地震対策特別措置法を見直すなど. 初の地震で被害が少ない地域も避難が必要との注. の政策転換が行われており,現実的にも予測の空. 意喚起がなされている.今回の予測では,津波被. 振りが多いために実現は難しいと思われ,さらに. 害については先行して発生する東側震源の地震で. 新たな方策が求められている..
(8) 186 南海トラフ地震における療養施設の被災状況予測. 表 1 津波到達時間(単位:分) 内閣府 平成 24 年 8 月 29 日報道発表資料より 津波高 都府県 茨城 千葉 東京島嶼部 東京 神奈川 静岡 愛知 三重 大阪 兵庫 和歌山 岡山 広島 山口 徳島 香川 高知 愛媛 福岡 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖縄 最短. 養病床以外の重症者を抱える医療機関も移転を考 慮すべき対象と考えられるが,平時のアクセスの. 1m. 3m. 5m. 10 m. 78 31 11 185 26 2 9 4 59 39 2 181 161 92 6 81 3 19 194 127 131 18 16 27 59 2. 99 32 12 ― 30 3 18 5 105 48 3 ― ― ― 8 ― 3 23 ― ― ― ― ― 29 103 3. ― 36 12 ― 60 4 24 13 ― 62 3 ― ― ― 11 ― 4 25 ― ― ― ― ― 30 ― 3. ― ― 12 ― ― 5 27 19 ― ― 4 ― ― ― 24 ― 19 32 ― ― ― ― ― 49 ― 4. 利便性の問題や移転の財源などの社会的事情のた めに簡単にはいかない.高知県等では,要配慮者 施設を高台に移転するような支援を行う制度を創 設するなどの対策を行っている.内閣府では「災 10) を公開 害時要援護者の避難支援ガイドライン」. しているが,甚大災害に対する現実的な減災・救 援計画は今後のさらなる検討を待たなければなら ない. (2)被災施設からの入床者搬送 医療機関入院中の重症者とともに,これらの療 養病床の避難, 移送には特別な配慮が必要である. そのため,療養病床数や,全病床に対する比率を 把握しておくことは重要である.移送に車椅子あ るいはストレッチャーによる介助が必要と考えら れる介護度 3 以上の入床者は医療療養施設でおよ そ 47%,介護療養施設で 40%前後とされてい る11) が,介護度が 1 や 2 であっても長距離を自 力で歩行するなど自力避難は困難な入床者も多い と予想される.これらの入床者を安全に搬送する ための介助者の人数や車両などの搬送手段に対す る配慮が必要とされる.高層階のある医療療養施 設では,病院避難に際して停電によりエレベータ が使用できない場合の患者搬送が困難であるとの 指摘が行われており12),施設内での対策も必要で ある.これまでの報告では,車椅子を使用してい. 東日本大震災では,移動困難な患者に付き添う. る入床者 1 名に対してスタッフ 1~2 名,寝たき. ために自分も避難を行わず,津波に巻き込まれた. りの入床者で 2~4 名が必要とされている.災害. 多くの医療関係者の記録が報告されているが. 8,9). ,. 時の搬送にはスタッフが不足するとの指摘も行わ. 現状のまま南海トラフ地震が発生した場合は類似. れている13).. の状況がさらに大規模に出現することが予想され. 被災した施設から入床者を移送する場合は,近. る.津波に対しては,被害を受けない高台に移転. 隣の施設に搬送するのが最も容易な避難方法とな. するのが最も確実な対策であるのは明らかであ. る.図 14 に示す中の,被災率の少ない地域では. り,特に津波到達までの時間が短い地域では高台. このような近隣への移送が可能と考えられる.交. 移転の必要性が大きいと考えられる.現状では全. 通手段が途絶し,復旧するまで数日かかることも. 国で津波で使用できなくなる可能性がある医療お. 考えられるため,被災した医療機関でも数日間は. よび介護施設は 2,000 施設,160,000 床と予想さ. 外部の支援なしに自施設で診療継続が可能な物資. れる.このうち少なくとも療養病床を持つ施設,. を貯蔵しておくことが必要である.災害拠点病院. 約 540 施設,34,000 床,さらにこれに加え,療. などでは物資貯蔵の必要性が明示されているが,.
(9) 医療情報学 39 (4) , 2019 187. 搬送困難な入所者を抱える施設でもこのような物. 難対策を立案しておく必要があると考える.. 資貯蔵が必要と考える.. 5. 結 論. 被災予測の結果は,最大被害を受ける県では約 80%の病床が被災するなど甚大なものであった.. 南海トラフ地震で被災する医療機関は甚大であ. 東海,大阪,四国,九州の東側等 8 つの県で使用. る.療養病床の被災予測から,かかる病床に入院. できなくなる病床数が 40%を越えていた.特に. している要介護者への支援も深刻な問題となるこ. 大阪府および愛知県において使用できなくなる療. とが明らかとなった.. 養病床が約 4,500 床を越えていることには注意が 必要である.使用できなくなる病床数が多い県で. 本研究の一部は,平成 30 年度厚生労働科学研. は,遠距離搬送が必要となる可能性が高いと考え. 究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業) 「首. られる.甚大災害時の搬送手段の確保については. 都直下型地震・南海トラフ地震等の大規模災害時. 本論文の範囲を超えるが,速やかな搬送が行えな. に医療チームが効果的,効率的に活動するための. い場合は生命の危機となるケースも発生すること. 今後の災害医療体制のあり方に関する研究」とし. が予想される.図 4~図 11 を見ると,被災施設. て行った.. の周囲に搬送先となる施設が近くには少ない地域 も目立つが,地上の交通が途絶した状況において 空路輸送のみで大量の患者輸送を行うのは難し く,療養病床の受け皿としての現場救護所や病院 船14)などを使用することも検討すべきと考える. (3)被災施設などからの受け入れ 広域災害対策として,甚大災害時に被災施設の 入床者を受け入れることが可能かどうかも検討し ておく必要がある.受傷者や重症患者の受け入れ 施設として災害拠点病院の整備が進んでいるが, 療養病床の入床者の収容先としての利用はあまり 想定されていない.一般の療養施設を搬送先とす る場合に,移送された人々を受け入れる能力があ るかどうかの検討もこれからである. 介護療養病床は 2019 年度末までに廃止,転換 することになっていたが,介護療養病床の廃止は 3 回 目 の 延 期 と な り, 介 護 医 療 院 へ の 転 換 は 2024 年 3 月末とされた.介護医療院は 2018 年 8 月の時点で 63 施設,4,583 床,2019 年 6 月の時 点で 223 施設,14,444 床開設されており,一方 療養病床を有する病院,診療所は 2019 年 6 月で 4,473 施 設,318,965 床 と な っ て い る15). 今 後, 療養病床入床者が介護療養型老人保健施設や介護 医療院,および自宅介護へと移行するのに伴い, 要介護者の全貌を把握することが困難となる可能 性もあり,引き続き要介護者の動向を把握し,避. 本研究には利益相反はない. 参 考 文 献 1)岡垣篤彦,定光大海.GIS 連携アプリケーション の作成による南海トラフ巨大地震の医療機関の被 害想定作成および DMAT による急性期医療対応計 画策定.医療情報学 2015;35, 1:13-17. 2)定光大海,岡垣篤彦,平尾智広,他.南海トラフ 巨大地震の被害想定に対する DMAT による急性期 医療対応に関する研究.平成 25 年度厚生労働科学 研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業) (H25特別-指定-023) . 3)内閣府.南海トラフ巨大地震対策検討ワーキング グループ(第一次報告) .平成 24 年 8 月 29 日. 4) 岡 垣 篤 彦, 定 光 大 海. 首 都 直 下 地 震 に お け る DMAT 派遣支援アプリケーションの作成および医 療機関の被災予測.医療情報学 2017;37, 2:5567. 5)厚生労働省平成 28 年度病床機能報告. h t t p s : / / w w w . m h l w . g o . j p / f i l e / 0 5 - S h i n g i k a i 10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000168622.pdf 6)厚生労働省.平成 29 年(2017)医療施設(静態・ 動態)調査・病院報告の概況. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/ 17/ 7)中央防災会議.防災対策実行会議 南海トラフ沿い の地震観測・評価に基づく防災対応検討 WG.南 海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応 のあり方について(報告) (平成 29 年 9 月 26 日公 表) ,平成 29 年..
(10) 188 南海トラフ地震における療養施設の被災状況予測 8)辰濃哲郎.海の見える病院 語れなかった「雄勝」 の真実.医薬経済社,2013. 9)菅野 武.寄り添い支える 公立志津川病院 若き内 科医の 3・11.河北新報出版センター,2011. 10)内閣府.災害時要援護者の避難支援ガイドライン, 2018 年 3 月. http://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/ youengosya/h24_kentoukai/ 11)厚生労働省.療養病床に関する基礎資料 第 7 回社 会保障審議会 療養病床の在り方等に関する特別部 会 . p3, 2016. 12)文部科学省.病院の震災対策.東日本大震災から の 10 の提言.p57-58. http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/. giji/__icsFiles/afieldfile/2016/04/08/1369228_3.pdf 13)高木徹也,土屋伸一,長谷見雄二.病院病棟にお ける災害時の患者 移送区分及び災害対応体制に関 する実態調査.日本建築学会技術報告集 2013; 19, 42:601-604. 14)内閣府.災害時多目的船(病院船)に関する調査・ 検討報告書.平成 25 年 3 月. http://www.bousai.go.jp/jishin/sonota/pdf/ h24tamokutekisen_houkokusyo.pdf 15)介護医療院の開設状況について.厚生労働省老健 局老人保健課,令和元年 8 月 1 日. https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/ 000505270.pdf.
(11)
関連したドキュメント
後援を賜りました内閣府・総務省・外務省・文部科学省・厚生労働省・国土交通省、そし
「兵庫県災害救援ボランティア活動支 援関係団体連絡会議」が、南海トラフ
データベースには,1900 年以降に発生した 2 万 2 千件以上の世界中の大規模災 害の情報がある
指針に基づく 防災計画表 を作成し事業 所内に掲示し ている , 12.3%.
粗大・不燃・資源化施設の整備状況 施設整備状況は、表−4の「多摩地域の粗大・不燃・資源化施設の現状」の
Key words: Kumamoto earthquake, retaining wall, residential land damage, judgment workers. 1.は じ
東京都北区地域防災計画においては、首都直下地震のうち北区で最大の被害が想定され
2 次元 FEM 解析モデルを添図 2-1 に示す。なお,2 次元 FEM 解析モデルには,地震 観測時点の建屋の質量状態を反映させる。.