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ベンチャービジネスの倒産と成功

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49

ベンチャービジネスの倒産と成功

戸  田

俊  彦

1 本稿の目的

 第一次,第二次ベンチャービジネス・ブームを経由して,わが国のベンチャ

ービジネス(以後ベンチャーと略称する)は,全体として着実に力をつけて社

会に根を張り,社会・経済的な認知を得たことは疑いのないところであろう。

 しかしながら,第一次ベンチャー興隆期からすでに16,7年遅経た現在,ベ

ンチャーを取り巻く環境は一層その厳しさを増し,ベンチャー間で優勝劣敗が

不可避となる質の時代を迎えたようである。新規創業は相変らず高水準を保ち,

成長性著しいベンチャーが明るい話題を投げかけている反面,急成長中のベン

チャーのなかに倒産に追い込まれるケースも多くなってきた。倒産という最:悪

の事態に至らずとも,経営に恩命を生じて苦境にあえぎ,合併,身売り,ある

いは大企業傘下への吸収,創業者の引揚げなど,経営破綻現象もひときわ目立

つようになってきている。

 ここに,成功ベンチャーのみを追いかけることに急であった幾多のベンチャ

ービジネス論に加えて,成功ベンチャーの何倍,何十倍にも達するとみられる

倒産ベンチャーにも目を向けて,それらが犯した誤ちからも学びとり,さらに

は,両ベンチャーを比較考察下において,改めて何がベンチ.ヤーの成功条件で

あるかを明らかにしていくことが,ベンチャーを多産少死とし,ゴーイングコ

ンサーンとして長期の維持・発展を図るために必要不可欠であろう。

 そこで本稿ではまず,いわれるところのベンチャービジネスの概念を把握し,

その特質を明らかにし,ベンチャーの実数を推定し,その社会・経済的貢献を

明らかにして,ベンチャーの実態を概観する。

(2)

50  彦根論叢 第242号

 その上で,ベンチャーが成功し,あるいは倒産するのはなぜなのかを,現在

までに公表されたおびただしいベンチャーに関する諸文献.をレビューし,新聞

雑誌をにぎわせたベンチャーの成功ケースや倒産・挫折ケースを克明に分析し

て,その発展段階別に,かつその経営領域別に成否の要因を明らかにすること

で考察を加えてみる。さらに,とくに決定的な要因とされる経営者要因につい

ては,これをパーソナリティにまで掘り下げて考察を加えてみる。

 そして最後に以上の諸考察を踏まえて,ベンチャーを成功に導くための経営

のあり方は結局のところ何であるのかについて考究してみたい。

 かくして本稿はベンチャーの倒産・成功の実態とその要因を諸角度から整理

して提示し,ベンチャーの長期的な成長・成功の条件を指し示そうとするとこ

ろにその最大の目的があるといえよう。

1 ベンチャービジネスの概念と実態

 ベンチャービジネスとは何かについての定まった定義はない。というよりも,

そもそもベンチャーは異質多元,多種多様な企業タイプの中から,昭和45年前

後から目立ちはじめた独自の特徴を有する一群の企業をさしていわれはじめた

       1)

言葉であるだけに,論者の主観や問題意識によって様々に特徴把握がなされ定

義されてきた言葉にすぎないからである。  一般的・典型的な定義としては,「独自の優れた技術や経営ノウハウを武器と して,積極的に経営拡大しようという企業家精神旺盛な自主独立の中小企業(あ       2) るいは中堅企業)」と理解されていることが多いようである。この考え方には,

①自主独立性,②中小企業(あるいは中堅企業),③独自の優れた技術や経営

ノウハウを武器,④積極的な経営拡大意図,⑤旺盛な企業家精神,という特質

が含まれており,これらを兼ね備えた企業をベンチャーと呼んでいるのである。

1)清成忠男「ベンチャー・ブームと中小企業」『ESP』152号,昭和59年12月,31頁。  同「ベンチャービジネスー日米で大きい集積の差一」『日本経済研究センター会  報』474号,昭和59年10月15日,46頁。 2)通商産業省中小企業庁編『ベンチャービジネスへの期待と課題一ベンチャービジネ  ス研究会中間報告一』東洋法規出版,昭和59年,はしがき。

(3)

ベンチャービジネスの倒産と成功  51 図表1 ベンチャービジネスの基準と特質

<べ・チ・一・ジネ・

灰色ゾーン

一ス ヤ チ、不 ンジ ベ 非ビ ① 事業開始基準 新企業,若い企業(設立後 10年以内) 設立後10∼15年の企業左記基準に該当し 設立後10年以上でも新ない企業 規事業開始後10年以内

②規模基準1中小蝶・二蝶

腫蝶

同 上

⑧ 独立性基準

  (自 主 性) 大企業(他企業,上場会社) に実質的に支配されていな い企業(大企業出資25%以 内)

④ 革新性基準

高度・独自・薪技術や薪経 営ノウハウを武器とする企 業(創造的・革新的・パイ オニア的・独自的イノベー ター) 大企業出資25%∼50% 以内 大企業の派遣・兼任役 員を受け入れている企 業 固有技術を武器とする 企業 同 上

⑤ 技術・研究

  開発基準

⑥ 事業分野基準 ⑦ 企  業 家

  精神基準

⑧ 成長性基準

⑨ 経営特質基準

⑯ 時代基準

同 上 先端・独自技術やデザインローテクノロジー企業 等の研究開発行うかその成顧客ニーズにアッピー 果の企業化に重点を置く企ルする製品・サービス 業(売上高研究開発費比率を開発した企業 3%以上) 新産業・最先端分野に取り 組む企業(新需要,新規市 場開発,新事業機会創造) 固有の市場範囲を確保 している企業(専門 化,総合化,絞り込 み,差別化)

鋳繋癖馬蝋欝騨琴2

(チャレンジ精神,創業者精 神,リスク挑戦,企業の社 会的役割認識,行動力) 高成長または成長可能性を 有する企業(積極的に経営 拡大,将来公開意欲をもつ) 高収益・高生産性・高シェ ア・高賃金・高リスク企業 (システム化,知識集約, 独自の経営哲学確立,能力 発揮,頭脳集団株式会社) 重化学工業化の成熟段階に 登場する企業(脱工業化毅 階に照応) た経営者に率いられる 企業 成長発展はめざすが将 来公開意欲はない企業 冒険的な経営を展開す る企業 時代を問わず成長産業 にのって一流企業にま で成長した企業 同 上 同 上 同 上 同 上 畳 上 封 上 (注) この図表を作成するにあたっては,稿末に記した主要参考文献をはじめとして多   数の文献を引用し参考にした。

(4)

 52 彦根論叢 第242号

 これに限らず一般にベンチャーの基準,特質としてあげられてきているもの

を整理してみるならば図表1のごとくなろう。ここに示された10基準をすべて

厳密に満たす企業は典型的なベンチャーといってよいが,その数はきわめて限

定されたものとなろう。

 したがって実際にはこれらの基準のうちいくつかを満たすだけで,あるいは

その基準の限界を広げて灰色ゾーンまでもベンチャーと考えたものがごく一般

的に認められるベンチャー概念であろう。本稿でも先の一般的・典型的な定義,

すなわち図表1の規模基準,独立性基準,革新性基準,企業家精神基準,成長

性基準および事業開始基準をも含めて定性的なワクをはめつつも,その不明確

な概念にふりまわされないで,一般的にベンチャーの倒産・成功要因を明らか

にするという目的からいって,さらにはベンチャーの発掘,育成,振興といっ

た実際にも十分に対応可能なように,できるだけ幅広くかつ柔軟にベンチャー

の概念を把握して行きたいと考える。

 したがってベンチャーは,設立後日の浅いことからくる特質・特徴,中小企

業からくる特質・特徴,独立自主性からくる特質・特徴,技術やノウハウを武

器とすることからくる特質・特徴,旺盛な企業家精神の発揮からくる特質・特

徴,高成長性からくる特質・特徴を,その経営上に共通的にかつ明瞭な形で示

すことになるのである(図表2参照)。

 ベンチャーは以上述べたような諸特質・特徴を共通的にもつ中小企業の1つ

の類型であるだけに,非常に数の少ない企業群であるといわざるをえない。ベ

ンチャーの定義にもよるが,たとえば図表3に示されるようなベンチャーの数

をあげることができるにすぎない。最大に見積っても1万を越えることはなく,

厳しく見積れば数百を数えるばかりである。

 したがってベンチャーの社会・経済的な貢献は,現在のところ「中小企業全

      3)

体のなかではベンチャービジネスは,数字の形成力をもたず」量的にはほとん

ど貢献していないといわなければならない。しかし,図表4にまとめたように

3)百瀬恵夫『日本のベンチャービジネスーその経営者像とキャピタルー』白桃書房,  昭和60年,202頁。

(5)

ベンチャービジネスの倒産と成功  53 図表2 ベンチャービジネスの経営上の特質・特徴 経  営  者 企業櫨造・戦略 ト 一 タ ル・ マネジメント 製 品・技 術 ・生    産 財 務 マーケティング 組 織・労 務 旺盛な企業家精神(リスク挑戦への勇気野心,夢やロマン,精  力,変化への主体的・能動的対応能力,達成意欲,専門能力発  揮) 独自の経営理念・ビジョンの共有・浸透 現場重視,陣頭に立った活きた情報収集 新企業で年齢が若い 企業規模が中小 経営資源の重点的配分(差別化・専門化,ニッチ市場の発見に力  入れ,思い切った目的・分野の回り込み・方向づけ,ドメイン  の柔軟な定義) 研究・技術開発,デザイン,ソフトウェア集約的イノベーター志  向の頭脳裏企業 法人企業形態をとり,独自の立地条件をもつ 従来の産業・業種分類に適応しない ユニークな企業カラー,キャラクター,存在理由をもつ 急激な成長実現,成長力抜群 システム的発想(外部資源の積極利用,他の専門的企業と相互補  群盲関係,開発・生産・営業が一体化・有機的連携) 人的経営資源の蓄積・充実(技術・ノウハウ・経験は人に蓄績さ  れ資産化) 革新的技術・技術開発力を所有(強力な特許,商標,企業機密の  存在) 製品技術に注力 技術者・研究者をリクルートする能力の不足 ベンチャーキャピタルを巧みに誘引 資金調達力不足 ニーズ・市場志向的(マーケティングに敏感,強固な得意先との  結びつき,直販体制,海外市場・新市場開拓戦略の所有,系統  づけた商品化戦略) 販売力の不足 有機的・機動的組織編成(頻繁・柔軟な組織変更,能力発揮型の  職場創出,少数精鋭,ハードワーク辞さず,異質性に着目した  人材配置) 組織より人を尊重(自主性・自律性・柔軟な発想・チャレンジ尊  重,自己実現の場,公平な評価,労使関係進歩的,人材育成に  資金投入,仲間意識の尊重) 組織・管理能力が不十分(管理者・監督者不足) (注) 図表1に同じ。

(6)

54 彦根論叢 第242号

図表3 ベンチャービジネスの推定数 ベンチャー定義と論者 新設株式会社数(昭和 58年)   (今原氏) 上場予備群(企業家的 経営者がおり利益伸び ている)  (今原氏) 年商10億円未満の研究 開発型中小企業(昭和 57年)   (米澤氏) 研究開発型企業       (百瀬氏) 日経ベンチャービジネ ス情報(昭和61年) イノベーター的企業       (清成氏)

VEC債務保証企業+

VC投資先 (米澤氏) ハイテクベンチャー       (清成氏)        数

1千2千3F4千5千6 IF 7千8千9千1万

t ’       t      l /1−1 46, OOO i 1, 753 11, eOO以上 一H 200十700 j 4, OOO 110,000以下 ]・,…(蒜轡化型〉 一1200 (注) この図表を作成するにあたってはつぎの文献によった。  ① 今原禎治『大成功への戦略』かんき出版,昭和59年,1頁,41頁。   ② 米澤成彬「ベンチャービジネスの本質と実像」『企業診断』31巻8号,昭和59   年8月,26頁。   ③ 百瀬恵夫『日本のベンチャービジネスーその経営者像とキャピタルー』白桃   書房,昭和60年,201頁。   ④ 『日経会社情報増刊ベンチャービジネス情報 1987年版』日本経済新聞社,   昭和61年,1頁。   ⑤ 清成忠男「ベンチャービジネスー日米で大きい集積の差一」『日本経済研究    センター会報』474号,昭和59年10月15日,47∼48頁。

さまざまな貢献を多方面に果たして大きな期待が寄せられている存在であるこ

とも疑いのないところであろう。図表3と図表4から明らかなようにベンチャ

ーの社会・経済的貢献は量的な面よりむしろ質的な面に大きなウエイトがあり,

先導的,先駆的,起爆剤的な役割や企業家精神復活現象といったその質的貢献

は,それはそれで現在すでに社会・経済界に,計り知れない精神的光明を与え

       4)

ていることに注目すべきであるし,今後のベンチャーの質・量にわたる拡充は,

4)石尾登・上山俊幸『ベンチャービジネス経営成功の秘訣』日刊工業新聞社,昭和60   年,33頁。

(7)

ベンチャービジネスの倒産と成功  55 図表4 ベンチャービジネスの貢献

労働への貢献

マネジメント へ の 貢 献

蠣皆瀬

史劣書議

大組織になじめない企業家としての資質をもった人に活躍の場を  提供する アイデア,知性,感性,趣味を生かし自己実現の欲求を充足でき  る 労働力のソフト化・流動化現象は労働観の変換につながる ベンチャーマネジメントの形成(創業のあり方,独自の経営理念,  固有の企業文化,人や金の使い方,組織の活かし方,技術・市  場開発の仕方,企業家精神の発揮,に焦点を合わせる) 技術革新・研究開発・事業創造に最適な企業体質・経営手法・管  理組織を生み出す(研究開発特化企業の出現) 環境変化のなか対応力・展開力を高め利益ある成長の最良の戦略 技術開発基盤の強化・底上げ(イノベーションの苗床,イノベー  ション遂行人材の輩出,人材の中にノウハウ蓄積) イノベーシーdン・技術開発に多大の成果(研究開発投資の成果を  高める,開発速度速い,コスト低い,機動的・融通的・集中的  問題解決,実需につながる) 中小企業全体の活性化への先導的役割 従来の中小企業観の転換とその多様化を迫る (中小企業の伝統的  イメージ変換,中小規模のハンディを改正,専門性・ニッチ戦  略の有効性) 大企業への貢献

産業への貢献

地域への貢献

会募讐譲

大企業の硬直性・大企業病にインパクトを与え活性化させる 大企業の研究開発が改良型研究開発に集中 大企業とベンチャービジネスの共同事業(ジョイント・ベンチャ  一),大企業の周辺産業で活躍 明日の大企業の苗床,大企業の露払い,捨石 産業組織の活性化への寄与,産業構造転換の先兵役 新事業開発,新産業開拓 ハイテク産業の担い手,急成長産業への参入,既存産業の活性化 地域経済の活性化への貢献 地域における先端技術拠点形成・潜在的な技術開発力・技術情報  量の底上げ 経済活性化(技術革新促し構造不況の下支え・打開,転出拡大,  経済に新ダイナミズム) 経済全体の労働生産性の向上,税収基盤拡大,新規株式公開企業  の増加 経済構造に変革(企業家経済,反寡占,経済の長期的安定化) 社会的潜在ニーズを充足,隙間市場への適合,サービスレベルの  改善 雇用創出

社会への貢献

価値観の転換(知識力より独創力の尊重,学歴社会からの脱皮) 社会構造の変革(社会刷新) (注)図表1に同じ。

(8)

56 彦根論叢 第242号

国民経済に無視できぬインパクトを及ぼしていくことは間違いのないところで

あろう。

皿ベンチャービジネスの発展段階と倒産・成功要因

 東京商工リサーチによると,ベンチャーキャピタルの投資を受サた企業か,

マスコミを通じて「ベンチャー」と認定されたものをベンチャービジネスとし

て定義づけてみた場合,その倒産件数は昭和60年に21件,負債総額156億4千

      ラ

万円,昭和61年には64件,2,105億6千万円にのぼっているという。ベンチャ

ー総数からみてこの倒産件数は決して少ないものとはいえないし,その急増傾

向と大型ぶりが目立っていることに注意しておく必要があろう。

 ごのようにベンチャーの危険性がきわめて高いのは,ベンチャーは大きなリ

スクを伴う技術開発を経営活動の中心に据えていることに加えて,精通してい

ない市場を対象にして販売チャネルにしても一から作らなければならないし,

資金,人材,組織にかかわる経営管理上の多くの難問に一斉に直面するからで

ある。したがって総合的かつ長期にわたって成功をおさめることができる確率

はきわめて限られたものとならざるをえないのである。図表5に示された各研

究者により試算されたベンチャーの失敗率はこの状況を如実に物語るものであ

ろう。

 そこで本節では,ベンチャーの長期的な存続・維持・発展を視野に置いて,

いくつかの発展段階に分けて,各段階における成功要因ないし倒産・挫折要因

を経営活動領域別に描出してみることとした。このように発展段階を分けたの

は,創業後聞もない企業と3年,10年とたった企業では,解決すべき課題も経

営活動上の特質も異なっており,成功に貢献した要因や倒産・挫折を引きおこ

した要因に違いがあるとみるからである。

 今,典型的な成長ベンチャーをモデルケースにとって,そのライフサイクル

すなわち企業成長の段階を動態的に描き出してみると図表6のようになる。こ

5) 東京商工リサーチ「興信特報」昭和60年12月度,No.10,「倒産,月報」昭和61年12月  度,No.12∼14。

(9)

ベンチャービジネスの倒産と成功  57 図表5 ベンチャービジネスの失敗率 対象ベンチャービジネスと論者 アメリカ・ベンチャー失敗率(馬淵氏)        (清成氏) アメリカ・ベンチャー創業後3年以内 消滅率       (清成氏) アメリカ・ベンチャー創業後5年以内 消滅率 (コーヘン氏)(日経ビジネス) アメリカ・ボストン周辺ベンチャー  (ロバーツ氏)(清成・中村・平尾氏) アメリカ・ベンチャー失敗率(馬淵氏)        (清成氏) アメリカ・ベンチャー失敗率(馬淵氏)        (清成氏) 日本・VEC債務保証企業中代位弁済 率       (佐野氏) アメリカ・ベンチャースタートアップ から上場まで失敗率(馬淵氏)(清成氏) アメリカ・ベンチiV 一華成功率       (シェイムズ氏)(末松氏) 日本・投資育成会社の例  (対木氏) 日本・第一次ベンチャーブーム脚光ビ ジネスの消滅・転換率   (小林氏) アメリカ・ニューヨーク有力VC投資 企業失敗率        (岩田氏) アメリカ・ミネアポリス市等の技術系 ベンチャー倒産率最長11年間(清成氏) アメリカ・ベンチャー(野村総研)        (今原氏) スタートアップ十 三長 成期  成長期 安定      失  敗  率 lo 20 30 40 so 6e 70 so go looo/e       l  l

一0

9 [ 67 1 85 1 20 1 80

一7

180 1 99. 8 199 [83 i99 124 150 倒産 残存 買収 1 so (注) この図表を作成するにあたっては次の文献によった。   ① 清成忠男『ベンチャーキャピタル』新時代社,昭和47年,85∼87頁。② 清   成忠男・中村秀一郎・平尾光司『ベンチャー・ビジネス  頭脳を売る小さな大企   業一』日本経済新聞社,昭和46年,16頁。③ 大河原暢彦「米国ベンチャーの寿   命わずか5年」『日経ビジネス』昭和60年4月15日,136頁。④ 末松玄六「ベンチ   ャービジネス経営の問題点」『経営会計研究』43号,昭和59年10月,68頁。⑤ 清   成忠男「ベンチャー・ビジネスーその日米比較  」『組織科学』17巻4号,昭和   59年1月,41頁。⑥対木隆英「ベンチャー・ビジネスと企業家精神」『組織科学』   17巻4号,昭和59年1月,44頁。⑦ 岩田「中小企業の研究開発と企業成長」『中   小企業金融公庫.月報』19巻2号,昭和47年2月,36頁。⑧ 小林忠嗣「ベンチャー   ビジネスの経営力とその診断」『企業診断』31巻8号,昭和59年S月,30頁。⑨佐   野忠克「ベンチャービジネスをどう育成するか」『金融ジャーナル』25巻6号,昭和   59年6,月,67頁。⑩ 今原禎治『大成功への戦略』かんき出版,昭和59年,70頁。

(10)

58 彦根論叢 第242号

図表6 ベンチャービジネスの成長段階の定義と特質 VBの成長の軌道 売企現業

pャ

@長

時間 成長段階 スタートアップ期

リ・キー成長期 1錠成長期

定   義  研究・開発・試作期をも含あて,企業の立ち上力寄り  (倉朋業, 開始, 構造形成乳第1,第2,初期,幼年期)段階をさす  製品の市場への本格的参入がなされ,第2,第3の vロジェクトが連なって成 し成長スピードが高まっ トいく成長前期(初期成長, ャ長加速,第3,急成長, 」陸,少年期)段階をさす  知名度,信用度高まり社 熨フ制も充実して有力企業の一員に仲間入りし,上場 目前にして比較的なだら ゥな拡大を続ける成長後期 i安定追求,成熟期,第4,壮 N期,上場準備)段階を.さす

戦略目標

 成立し存続するために ヘ新製品開発とその市場 サが最大の課題であり, ^イミングとスピードが d要である  新規参入,追従企業との 」争をのりきり,成長のた ゚の資源獲得ができるかど 、かが最大の課題であり, }成長に耐えられるかどうかが鍵となる  管理システムの充実に力 黷ト異業種,海外をも ワめた企業間競争に勝ち抜いて,新たな展開が必要と ネる トップ・マ lジメント  目前の仕事に追いかけられるが旺盛な企業家精神(強烈な個性,独特の o営理念)による企業成立・生存が図られる  オーナーマネジメントか 迺E却して,マネジメント `ームを形成し企業家職能に専門経営者の能力が付加されていく必要がある  複数専門経営者の外部導 ?ェ図られ,トップは例外 ヌ理と企業買収などの大きな戦略展開に専念する マネジメン g・スタイ mレ

灘鍛轟轟1

 長期戦略・計画が実施さ 黷トおり,社内規定などが ?゚られ,形式,秩序が重 じられ事業が多角化し事 ニ部制がしかれる 製品・技術・生  産  売上高研究費比率が非常に大きく,明瞭化された製品・技術コンセプト ノ基づき研究・開発・設 v・原型製作,試験的生 Yが行われる(技術的新製品開発中心)  市場に合わせ多様な新製 iを開発し,その技術はパ eントにより保護されるよ 、になるとともに技術者集 cの管理と生産工程の効率 サが鍵となる(市場的新製 i開発中心)  次の柱となる新製品・事 ニの開発が異業種交流をも ヘかってすすめられると同 桙ノ,生産部門の効率化,コスト低減のために製造技 p,ノウハウの革新に特捌の工夫がこらされる 財   務  自己資金が中心である ェ,製品生産段階に入れ ホ資金需要は最大とな 閨C資金集めに奔走する  設備および運転資金量急 揩オ,資金調達力(金融機 ヨ,VCの融資,保証,投 早C私寡)と資金運用・売上債権管理の問題が重要化 キる  物的担保も蓄積され,銀 s融資も容易になり,一定の自己金融力もあり,資本 s場からの資金調達も可能となって,資金・利益・予 Zの全社的総合管理が肝要となる マ 一 ケ

eィング

 製品と市場の創造に重 _があり,コネ市場を中心にユーザーのファン化が大切である  海外をも含めた販売チャ lルの開拓と販売促進が重 汲ウれ,全社あげて「売る」ことに力が注がれる  国内・海外販売チャネル,製品ライフサイクル管 揩ネど多角型マーケティン Oが必要となる 組織・労務

麟正忌繊

 官僚化の危機が目立って ォて,従業員の意識改革, ¥力開発,社内コミュニケーションの円滑化,実績・ ¥力主義の人事が重要化す (注)図表1に同じ。

(11)

      ベンチャービジネスの倒産と成功  59

のようにS字型カーブになるのはもとよりプロダクト・ライフサイクルの仮

定に基づくものであるが,現実のベンチャーの売上高の推移を観察してもかな

      の りの妥当性をもっているように思われる。

 またベンチャーの発展が各段階ごとにきわめて特徴的な特質を示すことにな

るのは,つぎのような理由によるものであろう。

 ① ベンチャーは一からの出発であり,さまざまな経営資源が用意され投入

  されていくとともに規模が拡大して,研究開発中心の組織から,販売,財

  務,人事といった組織の充実が必要になって,段階的な変化がみられるこ

  と。

 ②成長は必ずしも直線的とはならず,成長プロセスのなかで成長阻害要因

  が生起し,危機が累積して脱皮成長が必要となり,いくつかの節目をつく

  ること。

 ③ 企業も有機的組織であるからして量的成長に限界が訪れ,質的成長へと

  展開すること。

 ④ 経営者や従業員,それに組織自体の若さは,ナイーブさと熱中を特徴と

  し,危機やプレッシャーの大きさを誇張しがちで過敏な反応を示すのに,

       つ

  年長化すればゆっくり動くこと。

 ⑤ とくに経営者や従業員自体が年とともに若さや創造性,感受性が失せ,

  研究開発に向かなくなって,知識,経験が生かせる生産・販売部門に向か

  わざるをえないこと。

 したがって成長発展を望むベンチャーは,各発展段階を経過せざるをえず,

それぞれの段階における成長危険を適切に解決してはじめてつぎの発展段階に

進むことが可能になるといわなければならない。

 ベンチャーの発展過程が図表6のごとく把握されるとするならば,ベンチャ

ーの倒産過程は成長過程からの逸脱として把握されることになり,かってアー

 6)日経ビジネス「なぜベンチャーは挫折したか」『日経ビジネス』昭和60年5月13日,   9頁,12頁,18頁に示されたベンチャーの売上曲線を参照のこと。  7)カンター,R. M.著,長谷川慶太郎監訳『ザ・チェンジ・マスターズー21世紀への   企業変革者たち一』二見書房,昭和59年,117頁。

(12)

60  彦根論叢’eg 242号 図表7 成長ベンチャービジネスの軌道と倒産ベンチャービジネスの軌道

 驚異

康優秀

指良好

標  不良    、  、 馬 成長軌道          噌馬、       、        へ

   ’     、

  ”        \ ③倒産軌道

_騨髄②旧道 \

   、        、       馳      倒産       年  数     (注)Argenti, John,Corporate Collapse:The Causes and Symptoms,       McGraw−Hill Book Company(UK)Limited,1976, p.150.戸田       俊彦『企業倒産の予防戦略』同文舘,昭和59年,102∼110頁を参       照のこと。 ジェンティ(Argenti,」.)が一般企業の倒産軌道として示した3タイプがその        s) ままあてはまるとみてよいであろう(図表7参照)。

 タイプ1のベンチャー倒産は創業後日の目を見ることもなくすぐに消滅して

しまうものである。自らのアイデアや技術をもとに新規事業をはじめたものの,

資金的余裕もないままに,アイデア倒れや技術未熟などによって,あるいは製

品開発には成功したものの売上に結びつかずいつの間にか退出したベンチャー

である。

 ベンチャーにとって最も苦しいのはスタートアップの時期である。リスクが

大きく信用もないためほとんど銀行に相手にされない上に,人事,購買,販売,

経理といった企業経営上の問題がつぎつぎと発生してくるからである。ほとん

どのベンチャーがこの段階で企業生命を断っているといってよい。

 とくに「市場に焦点を合わせていないということが,まさに生まれたてのべ

       9) ンチャービジネスの最:大の病気」であり,現金欠如,拡張資本欠如,支出や在 s) Argenti, John, Corporate Callapse: The Causes and Syrnptoms, McGraw−Hill   (UK).1976, pp.148−168.中村元一訳『会社崩壊の軌跡一生き残るための戦略一』   日刊工業新聞社,昭和52年,261∼296頁。戸田俊彦『企業倒産の予防戦略』同文館,   昭和59年,99∼130頁。 9) ドラッカー,P.F.著,小林宏治監訳,上田惇生・佐々木実智男訳『イノベーショ   ンと企業漏精神一実践と原理一」ダイヤモンド社,昭和60年,328頁。

(13)

      ベンチャービジネスの倒産と成功  61

庫や債権などの管理不能といった三つの病因がときとして同時に襲って命とり

      10) となるか健康を害することとなる。

 タイプ2のベンチャー倒産は,研究開発に成功をおさめマスコミにも注目さ

れるところとなってあまりに急激に規模拡大がすすみ,トップ経営陣の構築に

失敗して経営力が規模拡大に追いつけず,そのため無理が重ねられリスクは頂

点に達し,一転奈落の底へ突きおとされるものである。

 倒産した急成長ベンチャーはマスコミの注目を浴びるにふさわしい技術,ノ

ウハウをもっていたことは確かだが,それだけで資金がついてくるとは限らな

いし,わずかな年数で零細企業のマネジメントから中企業・中堅企業のマネジ

メントにまで既存の管理体制を打破しつつもっていくことは至難のわざなので

ある。

 なによりも経営者自身や幹部が人格の変革まで含めてその役割や行動を変え

なければならないからである。また,適切な財務政策,キャッシュフローの分

      ID

析と予測と管理にもとつく財務.ヒの見通しがないことが危険を増幅する。つま

り,起業家から経営者への転換の失敗,組織の不備,自己過信と理想主義,経

理を部下にまかせきり,などはこのタイプを特色づける倒産理由であろう。

 タイプ3のベンチャー倒産は,相当の規模にまで達したものの安定的成長軌

道へのせるのに失敗し,ジリ貧となって2度のショックを受け倒産していくも

のである。企業が守勢に回ったとき,企業家精神は喪失して官僚化,制度化が

すすみ,製品開発力やマーケティングカなど経営力が環境変化に対応できなく

なって,経営者交替の失敗,強大な競争相手の出現などをきっかけに下降に向

かうものである。

 とくにこの場合「初期の成功要因は,決して持続的成長を保証しない。むし

      12)

ろ,その成長要因が環境変化の中でマイナス要因ともなる」ことへの認識が必

要であろう。 10) ドラッカー,前掲書,329頁。 11) ドラッカー前掲書,328頁。 12)日経ビジネス「起業家たちの15年」『日経ビジネス』昭和61年2月24日,7頁。

(14)

62 彦根論叢第242号

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(16)

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彦根論叢第242号

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(19)

       ベンチャービジネスの倒産と成功  67

 ところで,実際に倒産したベンチャーのケースの場合,倒産要因が倒産時の

年齢ごとに特徴を示したかどうかをみてみたのが図表8である。これは東京商

工リサーチが昭和60年初から61年8月までに把握したベンチャー倒産を創業か

ら倒産時までに経過した年月順に並べて示したものである。

 またこの図表8にもとづき倒産要因を11に集約化して倒産時の年齢別にプn

ットしてみたのが図表9である。

 これらの図表から,シャープな形では表われていないが,倒産時の年齢の変

化とともに倒産要因が微妙に変わってきていることをよみとることができよう。

 さらに図表10・11・12・13は,各種文献や新聞雑誌などにみられるベンチャ

ー記事などからベンチャーの発展段階別に,そしてまた経営領域別にその倒産

・成功要因をあげて整理してみたものである。

 これにより,ベンチャーの倒産は,一般企業と同様,表面上は図表8が明瞭

に示していたように売上不振や資金調達の失敗,あるいは連鎖倒産としてあら

われるが,その背後には,経営者自身やパートナーの経営能力の不足や経営戦

略の欠陥が各段階ごとに指摘されていることは注目される。また,ベンチャー

の倒産ないし成功の要因は各段階ごとにそれなりの特徴を示して決して一様で

 図表10ベンチ1・ 一ビジネスの倒産・成功要因(各期共通) ←一

ャ功 要 因       倒 産要 因→

市場・潜在市場規模が大,または成長性  が大 新事業機会の存在 経営全面に有能な経営者が存在する 独自の経営理念を確立している 旺盛な企業家精神の発揮 多様な人的ネットワークを形成して情報  収集,人脈形成に強味をもっている 有能な信頼できる参謀,パートナーの存  在 発想は大胆であるが実行は細心 企業外要因 企業闇競争激化(技術革薪の進展,陳腐  化加速,市場狭小) 時代遅れの法律・行政,人材の偏在,モ  ビリティ小 経済変動,停滞化,業界不況,ニッチ市  場の消滅 ベンチャービジネス選別の進展(ベンチ  ャーキャピタルのマネーゲームの終  焉) 熟 未 力 能 営  裂  分  立 た対 っの 経りあム ,誤が一 足,題チル 不さ問二 二甘にトル 経の一ン・ の断ナメン 者判トジマ 営営[ネン 六経パマワ 経営者要因

(20)

68 彦根論叢 第242号

事業の絞り込み,隙聞市場,独自分野に  徹し競争を避ける 困難に挑戦し,パイオニアとして活動す  る 環境変化に応じ随時事業の定義を見直し  ている 成長段階に見合った体力作りを行いなが  ら着実に成長(成長段階に見合った変  身,無理しない,単なる拡大に走らな  い,経営体質の強化を継続的に行う) リスクに備える(計画の重視) 積極的に変化を生み出し自社の強みを構  隠する努力を惜しまない(変化のマネ  ジメントにすぐれる,新製品続々出す) 外部機関,組織,政策,制度を上手に利  涙する ユニークな新製品開発,製品の独自性・  優秀性 堅固な特許,商標,企業機密保持 独自・新・独創的・先端的・革新的技術  ・研究開発力(研究費比率,研究者比  率,新製品比率高い) 技術を事業化,商品化,生産のノウハウ  にすぐれている 有能な経理マンの存在(技術のわかる経  理マン) 予算および財務計画の具体性と緻密性 資金の調達・運用が確かである 強力な営業販売力,強力な宣伝・販売促進 市場調査能力,マーケットアセスメン  ト,二こズの把握 市場を理解し開拓の仕方を知っている 顧客訴求力をもつ製品・サービスの提供 人的資源活用に積極的工夫(同族会社で  なく英知集団,高度の自律性,必要に  応じプロジェクトチーム結成,部下教  育,結果による評価,異質な人の組合  せ重視,適材適所) 社員の帰属意識が高い,組織への高い一  体化  戦略要因 企業構造・  マネジメント要因 トータル・ 産要因 製品・技術・生 財務要因 ング要因 マ!ケテイ 組織・労務要因 単純な製品,1回限りの購入製品を事業  とした タイミングを失し流行遅れの事業・製品  となった 経営にアンバランスがみられる 情報不足,情報収集力に欠ける 経営管理がない,経営基盤が脆弱 他力に依存しすぎる 規模拡大にとらわれすぎる,惰性に走る 経営計画の失敗 製品の欠陥,モノマネ製品,容易にコピ  一できる製品 技術上の欠陥・問題,技術が伴わない,  技術未熟,古い技術 開発そのものにほれこみ過剰投資,技術  偏重 財務基盤が脆弱,資金の不足,自己資  本不足,物的担保不足 資金調達の失敗 財務知った人材がいない,財務政策・管  理がない マーケティングの欠陥,弱さ,欠如 競合品より高い価格,競合品に顧客満足 製品に関連のない貧弱なサービス 市場規模限定,綾り込みの失敗 人材の不足 組織がない,組織管理制度が弱体,社内  体制未整備 社内雰囲気が陰湿,人間関係がこわれる (注) 図表1に同じ。

(21)

ベンチャービジネスの倒産と成功  69 図表11ベンチャービジネスの倒産・成功要因(スタートアップ期) ←一ャ 功 要 因       倒 産 要 因→ 各種機関・投資家の助成・支援 強力なパートナーによるスタート(技術  の天才と卓越した経営センスの保有  者) 個人的な人脈,交友的つながりというネ  ットワークの存在 経営者自身の人間的資質秀でる ハードワークを辞さず必死となる スターートのタイミングがよい 事業・製品分野の選択がよい (参入困  難,小企業少ない,成長性が高い,限  られた分野へ特化) 事業計画書が存在する 市場・製品・資源・組織の聞に一貫した  タイトな関係あり(研究開発・市場開  発に同一入が携わる,開発・生産・営  業との協力,効率的連携) 高精度で信頼性の高い製品との評価獲得  (ユーザー密着の開発体制,製品コン  セプトを明確に設定,開発のスピード  が速い) 根源的革新に成功 新用途の創出を図る(他分野への応用可  能性模索) 十分な創業費用(高い投下資本,評価確  立までもちこたえる資金用意) 新事業のための市場調査 受注確保(事業開始前・見本段階で注文  獲得,ユーザーとの間にトップ自ら強  い人聞関係・結びつき・交流,顧客の  フアン化) 販売ルート確立に工夫(独自の直販体  制,アフターサービス・相談サービス  つき販売) 営業と開発が一体になった組織的対応 企業外要因 経営者要因 戦略要因 企業構造 因 ネジメント要 トータル・マ 生産要因 製品・技術 財務要因 マーケティング要因  労務要因 組織・ 独立意識が強すぎ孤立した 事業・製品分野の選択に失敗  易,ほとんどが中小企業) (参入容 薪事業アイデアを潜在的投資家,信用供  尊者,顧客に理解させることに失敗 知名度のなさ 製品に対する市場性の欠如(趣味的製  品,多数の特許が商品化に結びつかな  い,製品設計・商品化の失敗,製品化  急ぎすぎ,ユニークな製品でない,品  質劣る) 開発投資の負担過重 リスクの大きなプロジェクトにあえて挑  戦 初期投資不足(低い投下資本,開発・宣  伝費不足,資金難) 経理面での知識不足 不正確な市場調査(ニーズ情報,市場情  報収集が不十分) 価格設定,発売タイミングの失敗 市場開発に失敗(ユーザーの理解得られ  ず) (注)図表1に同じ。

(22)

70 彦根論叢第242号

図表12ベンチle・一ビジネスの倒産・成功要因(リスキー成長期)

←成功要因      倒産要因→

当初からの出資者・創業者間の争いがな  い(意見対立は徹底話し合い,トップ  に高い信頼性,有能参謀に権限委譲で  きる度量をもつ) 問題を予測して専門家の援助を求める  (タイムリーかつ適正な判断,能力の  限界をわきまえる) 競争相手の追撃に備えた戦略をもつ 厚い経営資源を蓄積し総合するマネジメ  ント(社長と研究者が直結し意思決定  が速い) 社外の協力者を組織化したネットワーク  作り 中期的経営戦略をもつ 無理を避ける(ヒット商品に頼りすぎな  い,急成長を避ける) 成長マーケットにシフトした魅力ある商  品 製品の技術的開発に成功 低コスト,安定生産体制の確立 総合的資金戦略を確立(緊急支払債務の  完済,VEC補助金獲得,厳密なキャ  ッシュフロー分析,きびしい収益感  覚,資本構成,財務流動性に関心,資  本公開による調達順調) 先見力あるマーケティングカ(アンテナ  を鋭敏化し,マーケットを変化させて  いく,市場に強く結びつく) 市場浸透のマーケティングカ(中間取扱  業者,最終ユーザーの受入れ) 変化に対応した組織再編成 共有された価値観に基づく厳格なコント  ロールと自律性の共存 人材育成の手をうっ

要因

企業外 経営者要因 企造略 業・要 構菱刈 マネジメント要因 トータル・ ・生産要因 製品・技術 財務要因 ング要因 マーケテイ 労務要因 組織・ 競争企業の参入(大企業のすばやい追  撃,大企業の本格参入,競争品の出現) 現存の販売勢力の抵抗 トップ経営陣が存在していない(パート  ナー不在,幹部社員・経営補完者が育  っていない) 自己過信(知識・アイデア・技術力過 信,気の弛み,危機感を失う,社長の  独走,突っ走り) 自己革新の失敗(起業家から経営者への  転換がうまくいかない,創業者の役割 変化受け入れない,鈍い時間感覚) リー一一ダーシップの拙さ(Ae一トナーとの 対立,経理部下まかせ) 大企業に買収され経営破綻 急拡大政策の失敗(足許を固めない,内  部破綻,経営力強化不足,時間をかけ  ない,促成栽培のトガメ,放漫経営) 成長低く大企業に侵食される 開発・生産・マーケティングの統合不十  分(コンセンサス不足) 身分不相応の研究者をそろえ開発資金負  担過重 技術者・研究者の確保失敗 生産技術・設備の不足,設備投資の負担  過重 二番手製品が自立できず 千万円,5千万円の勘定さえいい加減 返済能力以上の資金借入れ(経営者判断  誤らせる) 資金的息切れ,現金不足,拡張資本不足 支出・在庫・債権・資本構成の管理失敗  ・不足 新製品販売の失敗 販売体制未熟(正式契約なし,販売先集  中,製品値上げ失敗,営業マンの数と  力不足,管理不十分,販売ルート未確  :立,セグメントはっきりしない) 組織管理上の問題(創業者1人の才能に  限界,技術者・研究者と他の従業員と  の摩擦) 人材の確保に失敗 (注)図表1に同じ。

(23)

ベンチャービジネスの倒産と成功  71  図表13 ベンチャービジネスの倒産・成功要因(安定成長期) ←一

ャ功要因     

倒産要因一→

経営・管理能力に秀でた経営者チーム  (全役員が社長の器の持ち主) やたら規模の拡大を追わず新規事業に積  極的に取り組む柔軟性をもつ 定期的な事業の刷新による適応性 過去の成功・失敗の原因・結果を整理蓄  積し活用している 経営のしくみのいくつかを制度化(経営  の実行システム形成) 環境適応能力が高くダイナミック経営を         自己破壊)  展開(超飛躍, 活用できる内外の経営資源のすべてを駆  使(異業種交流や共同技術開発の利用) 底深い技術を作り上げる(継続的商品開  発,i新分野の開発) 高品質商晶の量産化によりスケールメリ  ット実現 生産部門効率化,コスト低減 資本の調達・活用は戦略的に多様化(株  式公開・上場) 総合的財務管理 積極的国際化戦略展開(輸出比率高い,  現地企業と提携,グm一バル・マーケ  ティング展開) 異業種・他社との交流スクラムにより販  路開拓推進 (OEMによって大企業ブ  ランドに乗る) 市場細分化し大企業参入しにくい市場を  作り出す 組織内交流をさかんにし凝集性維持 すばやい組織的対応

要因

企業外 経営者要因  戦略要因 企業構造・ マネジメント要因 トータル・ ・生産要因 製品・技術 財務要因 マーケティング要因 競争激化(厳しい競争,市場の成熟化) 連鎖倒産 株式公開難(審査に長年月要する) ワンマン経営(自意識が強すぎる,環境  不適応) 経営継承の失敗(後継者不足) 経営陣の対立(マネジメントチームの分  裂・対立,重要幹部の転出) 理想を追いすぎ(過去の成功・成長に酔  う・こだわる,現実認識の甘さ・見誤  り) 転進の失敗(1つの商品にしがみつき撤  退を考えない,多角化の失敗,.手を広  げすぎ) 規模拡大を追い柔軟性失う(大企業コン  プレックス,量的拡大から質的拡大へ  の切り換えに遅れた) 大企業への過剰期待・依存(支援打ち切  り) 内部統制整備未熟(不良在庫の山,新事  業開発に夢中で本業管理おろそか,コ  スト管理不備,目標の遅れ・不達成) 原材料・部品の確保に失敗(品質・精度  で劣る外注部品,安定的確保に問題,  仕入欠陥) 次の製品開発に失敗(一発屋に陥る,単  晶生産に依存) 埋没原価が大きすぎる(過大設備投資) 資金活用力の不:足(関係会社・子会社支  援の失敗,不良債権の多発,売掛金回  六七・ルーズ,過大な資金調達) 資金難から融手発行,仲間取引に手を出  す 流通システムの遅れ・不適合(販売経路  の弱さ,ディーラーの不信買う,海外  戦略の失敗) 広告宣伝費の不足・過剰 厳しい価格競争に巻き込まれた(値引合  戦) マーチャンダイジングの失敗

鞍因墾鯉藩

(注) 図表1に同じ。

(24)

 72 彦根論叢 第242号

はないし,資金や技術だけで倒産ないし成功するものでもなく,経営全般にわ

たって各要因が総合的に働いていることが改めて認識されるのである。

 また,倒産ベンチャーと成功ベンチャーの差は,それぞれ別の種類の要因が

働いたとみられるよりは,むしろ倒産ベンチャーは成功ベンチャーで働いた要

因,すなわち確実なマネジメント,が欠如していたか不足していてベンチャー

の強みを発揮できなかったということであり,成長危険にあまりに無防備であ

ったところにあるといえよう。

IVベンチャービジネスの経営者と倒産・成功要因

 ベンチャーは中小企業の一類型であるからその成否は経営者の在り方に依存

するところが大きい。ベンチャー経営者は製品,サービス,技術を売りものに

企業を組織し,成長への島先案内人となって企業を成長軌道にのせていく。そ

れには,従業員や得意先や仕入先や金融機関などありとあらゆる利害者集団を

動かし根強い支持を得ることができなければならず,人柄から理念,能力,行

動に至るまですぐれたものをもっていなければならない。

 ここに成功ベンチャー経営者のパーソナリティと倒産ベンチャー一経営者のパ

ーソナリティを多数の成功・倒産ベンチャーの事例分析や諸文献の記述等から

抽出して,性格・能力的特性,意識・理念的特性,行動的特性に分けて示して

みた。図表14と図表15がそれである。

 倒産経営者のパーソナリティ項目が少ないのは,観察された倒産ベンチャー

経営者が少ないことによるものと思われる。その点を除けば,ベンチャー経営

者のパーソナリティは,一般企業の成功経営者および倒産経営者のパーソナリ

      13)

ティと特に異なるところはないようである。成功するベンチャー経営者は成功

すべきパーソナリティを備えているのであり,倒産するベンチャー経営者はそ

れらパーソナリティ特性に欠け,むしろそれとほぼ対照的なパーソナリティ特

性を示していることが明らかになるのである。

 そして実はこのパーソナリティの差異が,基本的には旺盛な企業家精神と経

13)戸田俊彦,前掲書,150∼151頁を参照のこと。

(25)

ベンチャービジネスの倒産と成功  73 図表14成功経営者のパーソナリティ 性格・能力的特性 意識・理念的特性  行動的特性 意志(力) エネルギッシュ(精力  的,活動的) 活力(バイタリティ) カリスマ性(型) 感受性(感性,感覚力,  センス) 機敏性(敏速性,機動  力) 客観性 教育(高学歴) 気力 勤勉 決断力 見識 行動力(実行力) 個性が強い

1才纏軽罰離

 面するほど楽しくな  るという一) 自信 持続力(性)(忍耐力,  粘り強さ) 正直さ(素直さ) 情緒安定性 自律性(自己規律,自  己規制力) 進取の気性 信頼性 誠実 責任感(個人一) 積極性 想像力 創造力(性)(独創性) 体力 知性(知識力,知識水準が  高い,専門知識) 独立自主 能力,  力(意思決定一,演 出一,革新的一,活用一, 感化一,管理一,技術駆 使一,経営一,計画一, 交渉一,構想一,資金繰 り一,失敗を生かす一, 失敗から学ぶ一,集中一, 状況認識一,情報収集一, 信用をかちうる一,説得 一,先見一,専門一,組 織一,対応一,直感一, 展開一,動機づけ一,洞 察一,統率一,人間関係 一,判断一,人を使う一, 人を魅了できる一,批判 活用一,表現一評価一一, 分析一,目標設定一,予 測一,理解一,論理的一) バランス感覚 入柄(人となり) 魅力(親しまれる性格,人  間的一,個人的一) 明朗 野心 勇気(冒険心) 楽観的(主義) 臨機応変 若さ 一生懸命 意欲(やる気,学ばうと  する一,達成一,問題  解決一) 確信(信仰,信念) 価値観 企業家精神(魂) 危険負担 興味 経営理念(幅広い経営観) 計画性 現実的 個人財産投入覚悟 こまやかな心(気配り) 自覚 時間感覚(時代一) 自己実現欲求 市場志向 実験的精神 志の高さ 執念 情熱 創業動機 挑戦(チャレンジ精神)に  生きがい ハングリー精神 ビジョン 広い視野 誇り 目的・目標(次元の高い  一,経営一,企業一) 目標志向 欲望が大きい アイデアマン 過去の個人実 績 経験 謙虚 健康 自己主張 したたかさ しなやかさ  (柔軟性) 情報源豊富 信義第一 人脈形成 率先垂範 手堅さ 徹底 パートナーを  もつ ハードワーカ 早耳 (注)図表1に同じ。

(26)

74 彦根論叢

第242号

  図表15 倒産経営老のパーソナリティ 性格・能力的特性 意識・理念的特性 行動的特性 アンバランス 疑いやすい(疑い深い) 横柄 硬直的 傲慢 自己顕示(自己中心的,自  分を持ち出す傾向) 自信過剰(過信) 怠慢(マーケティングへの  一) 独善的(他人の言う通りに  ならない) 粘りがない 能力の欠如(先見一,状況  適応一,組織一,評価一,  リーダーシップー) 見栄っ張り 優柔不断 利己的 焦り 甘さ(姿勢の一,実態把握  の一,見通しの一) 経営理念の欠如 支配欲 視野狭小 陶酔 熱意不足 不安 無計画性 油断 欲深(私財の獲得。確保に  狂奔,役得) 理想主義 受け身的封応(変化に鈍感) 外部資金・援助拒否 勝手な解釈をしゃすい 経験不足 計数感覚の欠如 公私混同(私物化) 私生活面で頭を悩ます 投機 派手な対外活動 不徹底 不和・衝突 付和雷同(値引きに一) 傍若無人 無気力 無自覚 無責任(責任回避) 無節操 無配慮(部下への一) 無反省 無理押し(聞く耳もたぬ) ルーズさ(資金回収の一) ワンマン・ルール  (注) 図表1に同じ。

営資源の駆使力の差異となって,前節で明らかにされた倒産ベンチャーと成功

ベンチャーの差異,すなわちマネジメントの着実性と成長危険への準備の有無

を大きく規定していたものと考えられる。

 また,企業家精神とその発動のあり方は企業の成長とともに量的にも質的に

も変化していく。したがって持続的成長を可能にするためには,経営トップ自

      14)

身も要求される資質に相応して成長し,変身しなければならないといわざるを

えないのである。

        Vベンチャービジネス経営の成功条件

本節では今までみてきたことを念頭において,ベンチャーが倒産・挫折を回

14)青山幸男「“唯我独走”に陥らないために社外パートナーを組織化ぜよ」『日経ビジ  ネス』昭和61年2月24日,42頁。

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