• 検索結果がありません。

第4 回国際共同ワークショップを振り返って

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "第4 回国際共同ワークショップを振り返って"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

第4 回国際共同ワークショップを振り返って

著者

岩佐 将志

雑誌名

関西学院大学先端社会研究所紀要 = Annual review

of the institute for advanced social research

8

ページ

106-107

発行年

2012-10-31

(2)

第 4 回国際共同ワークショップを振り返って

岩 佐 将 志

(芝浦工業大学工学部非常勤講師/ 元関西学院大学先端社会研究所専任研究員) 本国際共同ワークショップでは、戦争が社会に与える影響や、それが社会において如何に記憶さ れてきたのか等について、これまで様々な視点や事例に基づく考察が行われてきた。4 度目の開催 となった今回は、オランダ、日本両国の研究者に加え、関西学院大学からドイツ出身の Hans Peter Liederbach社会学部教授、中国(香港)出身の Timothy Tsu 国際学部教授の参加もあり、参加者の 出身国は 4 ヶ国に拡大した。ヨーロッパ、アジアの双方からそれぞれ丁度 2 ヶ国ずつの研究者が一 堂に会したことで、本ワークショップは従来以上にこの両地域の研究者同士の知的交流という意味 合いを帯びたものとなった。このことは、議論に厚みを加える上で意義があったのではないかと思 う。 私はこのワークショップで、近年の日本のテレビ番組における戦争(専らアジア・太平洋戦争) の表象のされ方について、実際に放送されたドキュメンタリー番組の映像を紹介しながら報告を行 った。まず本報告の基本的前提として指摘したのは、第二次世界大戦を記憶するという営為とテレ ビの一般社会への普及とは、共に 20 世紀半ばの似たような時期に始まったことであり、故に戦後 社会が戦争を記憶するための認識枠組みそれ自体が、それを伝えるテレビというメディアの特性に 大きく依存したものであったという点である。これを踏まえ、現代のテレビにおける戦争の記憶の 構築のされ方は、歴史資料のデジタル・アーカイブ化の進展、歴史的な出来事に感情移入したい視 聴者の欲望等の要因と絡み合いながら、次第に変容を遂げつつあるのではないかとの見方を呈示し た。また、戦争の記憶に関する近年のテレビ番組の特徴として、戦時中を生きた人々を「善玉/悪 玉」の二分法に回収し切れない通俗的な存在として描写すること、取り扱う時代や場所が「戦時中 の日本」を中心としながらも拡大・拡散する傾向があることなど、幾つかの類型が浮上しつつある という考察を行った。 本報告は、私がそれまでに収集したテレビ番組の録画データに基づいて行ったものであり、まだ 仮説の域を出ていない。今後は戦争の記憶に関するテレビ番組の更なる分析等を通じ、議論の検証 ならびに精査を行ってゆくことを検討している。また、先端社会研究所在籍時に取り組んだ、アジ ア・太平洋地域の米軍駐留がその意図せざる結果として生み出した文化現象に関する歴史的な研究 の延長線上に本研究を位置づけ、文化のアメリカニゼーションの現代的形態の一例として本研究を 捉えてゆくための理論的視座を整備してゆきたい。 次に、本ワークショップ全般を通しての感想を述べたい。今回行われた 12 本の報告は、関西学 院大学、オランダ戦争資料研究所の双方からそれぞれ 6 本ずつであった。このことは、両機関の共 催する国際共同ワークショップとして非常にバランスが取れていたと思う。内容的に目を引いたの は、後者の 6 本のうち、3 本はオランダ領東インドと関連するものであったことである。具体的に 関西学院大学 先端社会研究所紀要 第 8 号 106

(3)

は、戦時中に同地で日本軍の捕虜となったオランダ人が戦後に描いた捕虜生活を表す絵の保存と展 示について(Rene Kok 氏)、ボロブドゥール仏教遺跡保存活動への日本の関与における戦前から戦 後にかけての連続性(Martijn Eikhoff 氏と Marieke Bloembergen 氏)、戦時中にオランダ亡命政府が 設立した情報局の役割について(Eveline Buchheim 氏)である。これらの個々の報告は非常に興味 深いものであった。特に Rene Kok 氏の報告は、日本軍がフィリピンで行った性暴力の記憶に関す る写真展について武田丈人間福祉学部教授が報告された内容と密接な関連性を有するものであり、 国際比較の点でも意義が大きかった。 しかしその一方で、私を含めた関西学院大学側の参加者の中にはオランダ領東インドに関する専 門的な知識を持つ研究者があまりいなかったこともあり、個々の報告に対する突っ込んだ議論を行 うことが十分には出来なかったという印象が残った。このことは今回の反省材料として挙げられ る。オランダ領東インドは、戦時中にオランダと日本の両者が対立した地域であり、今後の国際共 同研究においても鍵となる研究対象だろう。その意味で、この国際共同研究を更に充実させてゆく ためには、先端社会研究所でこの地域に関する資料収集や研究の推進を行うこと等を検討する必要 があるのではないかという感想を抱いた。 以上のような課題は残ったものの、本ワークショップでは、各国の事例を国際比較することによ ってしか得られない新たな知見を引き出すことも出来た。例えば広島・長崎への原爆投下という出 来事が戦後オランダでどのように表象されたかを考察する Kees Ribbens 氏の報告は、日本におけ るこの出来事の記憶の形成のあり方を相対化するものとして興味深かった。このように、戦争に関 連して世界的に知られるようになった個々の人/物/出来事が、異なる国々の戦後社会でいかに異 なるかたちで解釈、記憶されてきたのかという問いについては、まだ十分な研究の蓄積があるとは 言い難い状況にあると思われる。今後、更なる研究課題の開拓の余地があるだろう。 一方、私が報告した現代日本のテレビにおける戦争の記憶の表象と、Timothy Tsu 教授が報告さ れた現代中国の映画におけるそれとの間には、「善玉/悪玉」の二分法に回収できない登場人物の 描写など、多くの点で類似性があることが見出された。このように、メディア文化のレベルで戦争 の描かれ方が世界的に均質化しつつある可能性についても、今後研究を進める価値があるだろう。 このように振り返ってみると、本ワークショップでは、愛国心の高揚や「人種」間対立の増大の ような従来からの戦争研究の問題関心に加え、「戦時」から「戦後」へと連なる時間軸の中で移行 してゆく記憶のあり方そのものに対する関心の高まりが見られたことが印象に残った。これを踏ま えた今後の国際共同研究の一つの方向性として考えられるのは、20 世紀半ば以降、異なる国々の 異なる時期に存在していた「さまざまな戦後社会」がいかに戦争を記憶してきたのか、個々の国に おける時期的な変遷や、異なる国同士の経験に見られる相違性、類似性あるいは関連性を視野に入 れながら考察してゆくということだろう。 先端社会研究所 特集 国際共同ワークショップ 107

参照

関連したドキュメント

作品研究についてであるが、小林の死後の一時期、特に彼が文筆活動の主な拠点としていた雑誌『新

主食については戦後の農地解放まで大きな変化はなかったが、戦時中は農民や地主な

今回の SSLRT において、1 日目の授業を受けた受講者が日常生活でゲートキーパーの役割を実

ISSJは、戦後、駐留軍兵士と日本人女性の間に生まれた混血の子ども達の救済のために、国際養子

○池本委員 事業計画について教えていただきたいのですが、12 ページの表 4-3 を見ます と、破砕処理施設は既存施設が 1 時間当たり 60t に対して、新施設は

と判示している︒更に︑最後に︑﹁本件が同法の範囲内にないとすれば︑

単に,南北を指す磁石くらいはあったのではないかと思

氷川丸は 1930 年にシアトル航路用に造船された貨客船です。戦時中は海軍特設病院船となり、終戦