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宇宙光通信技術

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Academic year: 2021

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Recent Technological Trend in Optical Space Communications

Yoshinori ARIMOTO

Recent research and developments in space laser communications are described. In the USA, NASA Goddard Space Center, MIT Lincoln Laboratory and Jet Propulsion Laboratory teamed up to perform the basic design and the key-technology development for a Mars Laser Communica-tion DemonstraCommunica-tion, where an intensity modulaCommunica-tion scheme as well as photon counting detecCommunica-tion technology and the use of fiber amplifiers are featured.In Europe,a coherent laser communication terminal is waiting for future demonstration experiment. In Japan, study efforts to realize a compact laser communication terminal have been performed and the demonstration experiment was held in an airship test flight by NICT.

Key words: space laser communications, Mars laser communication, photon counting, coherent detection 宇宙光通信は,小型・軽量の機器によって高速・大容量 の通信が行えること,利用できる周波数帯域が広くビーム が鋭いため通信システム相互間の干渉がないなどの利点を もっており,月や火星などの遠距離にある探査機や地球観 測衛星からの大容量データ伝送等を実現するための基盤技 術として,米国 NASA やヨーロッパ宇宙機関(ESA),宇 宙航空研究開発機構(JAXA)等をはじめ,多数の研究機 関で要素技術の研究,システムの開発が行われてきた.ひ とくちに宇宙光通信といっても,衛星の種類やその用途に 応じて必要となる要素技術が大きく異なる.例えば,地 球の近くを周回する人工 衛 星 と の 光 通 信 で は,1000∼ 70000 km 程度の伝送距離が必要で,1 Gbps以上の通信速 度が求められるのに対し,深宇宙,特に惑星間通信ではこ の距離が 0.1∼40 AU(AU は 1.49×10 km)と大幅に変 化するので,達成すべき伝送容量も 1 Gbps∼1 Mbps程度 まで大幅に変化する.いずれにせよ,このような遠距離の 通信において高速・大容量化を実現するためには,電波と 比べて波長の短いレーザー光の特徴を活用することにより 送信信号を相手の通信機に集中するアンテナ(望遠鏡)技 術と精密な捕捉追尾技術が重要で,さらに,地上の光ファ イバー通信とは異なり伝送容量が回線の信号対電力比 (S/N 比)に比例することから,高出力かつ高効率の光送 信機やショット雑音限界に近い,あるいはそれを超える高 感度の光受信機の研究開発が必要となる.本稿では,宇宙 光通信に関する技術開発の動向,実証実験計画を,それら に用いられている要素技術を中心に解説する. 1. 米国における研究開発および実証実験計画 米国における最初の衛星搭載機器による光通信実験は, BMDO(Ballistic Missile Defense Organization)が 2000 年に打ち上げた STRV-2(Space Technology Research Vehicle 2)衛星によるものである.光源に 800 nm 帯の半 導体レーザー(LD),光検出器に Si-APD を用いて通信速 度 500 Mbps,2チャネルの双方向通信機能をもつ光通信 装置 を衛星に搭載し,地上との間で光通信実験が試みら れたが,軌道予測に基づいて地上から送信したビーコン光 を衛星で捕捉することができず,さらに衛星の制御コンピ ューターが故障したため実験は断念された.

最新の衛星用光学技術

-m

宇宙光通信技術

有 本 好 徳

独立行政法人情報通信研究機構 (〒184-8795 小金井市貫井北町 4-2-1) E ail:arimoto@nict.go.jp

解 説

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2001年 5月には,NRO(National Reconnaissance Office) の静止衛星 GeoLITE(Geosynchronous Lightweight Tech-nology Experiment)が打ち上げられた.この衛星には, MIT リンカーン研究所(MIT Lincoln Laboratory)で開 発した光通信システムが搭載され,地上との伝搬データ取 得を含む光通信実験が行われた.実験の性格上,詳細は 表されていない.GeoLITE の実験成功により,国防 省 では増大する軍用データ伝送要求に対応するため,革新的 な通信システムの枠組みである TCA(Transformational Communications Architecture)の検討が進められてい る.これは,多数の通信衛星群や航空機を光通信で接続す るもので,光通信リンクには 10 Gbps以上の伝送レート が想定されている. 一方,NASA/JPL では 1980年代から,惑星探査など の深宇宙探査機との通信を目的とした光衛星間通信の研究 開発が進められてきた.特に JPL では,衛星搭載用光通 信機の研究開発とあわせ,光通信用の地上施設の 設も進 められ,2003年 7月にはカリフォルニア州 Wrightwood の Table Mountain山頂に,太陽光の下でも静止衛星や周 回衛星を追尾できる口径 1 m の光通信専用望遠鏡 OCTL (Optical Communications Telescope Laboratory)が設

置されている . 21世紀に入り,NASA では,将来の深宇宙探査におい て通信容量を増大するため,光通信システムの検討が開始 された.ここで想定しているのは,有人火星探査計画にお ける大容量データ伝送や,月との双方向 HDTV 伝送等で ある.このための最初の技術実証実験として,2009 年に 打ち上げ予定の火星周回通信衛星 MTO(Mars Telecom-munications Orbiter)に光通信装置 MLT(Mars Laser-com Terminal)を搭載し,火星から地球へ大容量のデー タ伝送を行う実験が検討された.この計画は NASA God-dard Space Centerが取りまとめを行いながら,JPL およ び MIT のチームが個々の独自技術についての研究開発を 進めたもので,米国におけるこの 野の技術力を結集した ものになっている . 火星-地球間の通信では通信距離が 0.1∼2.4 AU 程度ま で変化するため,実現可能なデータ伝送速度も 30 Mbps∼ 1 Mbpsとなる.このためには,直径 5 m 程度の地上の大 型望遠鏡を受信に用いることを前提として,5 W 程度の 送信出力,電力効率のよい多値 PPM 変調方式やフォトン 計数型検出器を用いて受信感度向上を図ることが必要とな った.本計画は,2005年の設計審査の結果,開発フェー ズに進むことができなかったが,現時点では最も高性能な システムと えられるので,以下に設計結果の概要につい て紹介する. 1.1 地上受信システム 火星からの信号を受信する地上望遠鏡は,稼動時間を最 大にするためには,日中,特に太陽入射角が 3度まで接近 しても光学系に損傷を与えることなく動作する必要があ る.このため,JPL ではパロマ天文台の直径 5 m の Hale 望遠鏡を改造し(PRT:Palomar Receive Terminal),主 鏡の前面に 1.5 m の大きさのポリマー薄膜製の誘電体多層 膜フィルターを並べて,太陽光の望遠鏡内部への入射を 5∼10% 程度に制限する対策が検討された .地上で火星 からのレーザー光を受信する場合,大気ゆらぎのため受光 スポットが広がって受信感度が劣化することが えられる が,通信速度が数十 Mbps以下であれば大口径の受光デ バイスを用いることですべての電力を受光できるため,特 別なゆらぎ補償技術は用いていない.ただ,受光口径を大 きくするに従い背景光の影響も大きくなるので,光学系の 内部に適切なフィールドストップの設置と,通過帯域 0.1 nm 以下の狭帯域フィルターが必要である.火星との位置 関係により,ドップラーシフトによる受信光の波長変化が 0.1 nm 以上あり,通過帯域のチューニングが可能なエタ ロンとブロッキングフィルターの組み合わせが採用されて いる.微弱な信号の受信には,フォトン計数型検出器が用 いられる予定で,HPMT(Hybrid Photo-Multiplier Tube) が検討されている. この望遠鏡には,受信系のほかにビーコン送信系が取り 付けられるが,ビーコン送信系は波長 1076 nm,出力 100 W 以上の Yb 添加ファイバーレーザー出力を複数台,望 遠鏡の開口で合成し, 合出力 500∼1000 W を実現する. この開口合成は,大気ゆらぎの影響を平 化する効果もあ る.この送信レーザーには,受信の際に背景光との識別を 容易にするため 500 Hz のオン/オフ変調が加えられ,こ の中に火星へのアップリンク信号伝送のための 1∼100 bpsの信号パターンが付加される.PRT とは別に,MIT では,独立な追尾機構とドームをもつ口径 0.8 m の望遠鏡 を複数台用いたアレイ受信システムを用意し,受信したフ ォトンパルスを合成して必要な受信感度を得るシステム LDES(Iink Development and Evaluation System)も検 討された . 1.2 火星周回衛星搭載用の光通信装置 MLT の光アンテナ口径は 30.5 cm で あ り,波 長 1064 nm のレーザーを回折限界(3.5∼4μラジアンのビーム 幅)で送信する.火星との通信では,光行差に伴う送受信 ビーム方向の差が 400μラジアンに達するので,地球から のビーコン受信方向に対してビーム幅の 100倍以上離れた

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方向に安定に送信ビームを指向させる必要がある.このた め,受け持つ外乱の周波数帯域を 割し,ビーコンの受信 強度や外乱の大きさで適応的に制御方法を切り替える指向 追尾システムが設計された . 図 1に MLT の内部構成を示す.光アンテナおよび指向 追尾光学系はパッシブな振動減衰機能をもった 6本の支柱 (hexapod)で衛星に固定され,これで 300 Hz 以上の周 波数成 の外乱を減衰させる.アクティブな制御系のう ち,最も高い周波数を受け持つのは精追尾ミラー FSM (fine steering mirror)と四 割検出器で構成される精追 尾系で,これは光アンテナの横に設置された慣性基準装置 MIRU(magnetohydrodynamic inertial reference unit) 内の擬似光源(波長 1310 nm)を追尾し,DC から 900 Hz までの振動外乱を抑圧する.低い周波数領域の外乱は,二 次元アレイ検出器 FPA(focal plane array)を用いて, 遠距離の場合は地球の太陽反射光の方向を検出し,近距離 の場合は地上局からのビーコン光の方向を検出し,これら の誤差信号により,慣性基準装置 MIRU の姿勢,すなわ ち擬似光源の指向方向を安定化する.この追尾系の制御帯 域は 2 Hz である.地上からのビーコン光の方向は,追尾 系の絶対基準としても用いられる.一方,送信ビームの方 向を制御するため,専用の光行差補正機構 PAM(point ahead mechanism)が用意され,送信光の一部をコーナ ーキューブ反射器で折り返して FPA で検出することによ り,400μradの補正角を安定に制御できるようにしてい る.これらの制御には,宇宙用のシングルボードコンピュ ーターと Compact PCI バスが採用されている. 光アンテナは 15倍の倍率をもち,1.5 mrad(0.09 度)の 視野内で回折限界かつ低ディストーションとなるよう設計 されている.光アンテナを含む光学系は衛星とは熱的に独 立しており,アクティブな熱制御により 21±2°C に維持さ れる.地上受信系と同様に,MLT も太陽光の入射角 2度 で正常に動作する必要があり,光アンテナおよび光学系に 対する太陽光の熱入力を軽減するため,光アンテナ開口に は太陽光遮断フィルターが設けられている. 通信用光源には,回折格子で波長安定化した Yb添加 ファイバーレーザーを用いており,この光源を市販の LiNbO 外部光変調器で変調する.この際,MLT では通 信速度が変化するので,変調パルス幅を 1.6 ns,3.2 nsあ るいは 4.8 nsに切り替えて 32値あるいは 64値のパルス位 置変調(PPM)を行う.変調された信号を,ダブルクラ ッド型の高出力 Ybファイバーアンプにより,平 出力 5 W,ピーク出力 320 W として光アンテナより送信する. MLT で採用されたダブルクラッド型のファイバーアンプ は,マルチモードファイバーを介して複数の LD で励起す ることにより,15% を超える良好な電力効率(wall-plug efficiency)と高い信頼性を得ている .また,変調信号に は符号化率 2 の 1のターボ符号による誤り訂正を付加す ることにより,理論的なチャネル限界に対して 1 dB の劣 化という高感度を達成する.例えば,MIT の LDES の受 信システムでは,8×8のガイガーモード InGaAs-APD ア レイを用いて独立にリフレッシュを行うことにより不感時 間を短縮し,50∼150 kbpsの通信速度で 2∼3 bits/photon という良好な受信感度を達成している.一方,JPL では, HPMT を用いることにより,チャネル限界に対して 2 dB 劣化の感度をもったフォトン計数型の受信系を想定してい る. 2. ヨーロッパにおける研究開発および実証実験計画 欧州では,1985年から欧州宇宙機関(ESA)を中心とし て,SILEX(Semiconductor Laser Inter-satellite Link Experiment)計画が進められてきた.1998年 3月には, 光通信機器を搭載した地球観測衛星 SPOT-4が最初に打 ち上げられた後,光通信の相手となる静止衛星 ARTEMIS が 2001年 7月に打ち上げられた.2001年 11月 20日には, ARTEMIS と SPOT-4間で世界初の衛星間光通信リンク 実験が行われた .SILEX 計画では,直径 25 cm のカセ グレン型の光アンテナを用いており,アンテナ後部に光送 受信機や捕捉追尾センサー等を含む光学ベンチを配置し, 周辺電子回路とあわせて直 2軸ジンバル上に搭載してい る.800 nm 帯の LD 光源と Si-APD による検出器を組み 合わせた強度変調/直接検波方式が用いられ,ARTEMIS から 2 Mbps, SPOT-4から 50 Mbpsの光信号を伝送する. 最大通信距離は約 45000 km,搭載用光通信機の 重量は 図 1 火星周回衛星搭載用の光送信機構成.

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157 kg,消費電力は 150 W である.

ESA の SILEX 計画とは別に,ドイツにおいて,SOLA-COS(Solid state Laser Communications in Space)計 画 とよばれる Homodyne PSK 方式による独自のコヒー レント光通信システムの研究開発が進められてきた.この 方式を用いた光通信機器(LCTSX)を,2006年に打ち上 げられる TerraSAR 衛星に搭載する計画が進められてい る.ここでは,レーザー光源にコヒーレント通信用に開 発 さ れ た 波 長 1064 nm の Cr :Nd:YAG NPRO(non-planer ring oscillator)が用いられ,予備系を含む複数の 半導体 LD 励起(波長 808 nm)により 10年後の 信 頼 度 0.9998を得ている.ファイバー出力が 20∼150 mW,長期 周波数ドリフトが±500 MHz/10年である.波長チューニ ングは温度制御により 80 GHz 以上をカバーし(帯域> 0.1 Hz),さらに,ピエゾアクチュエーター(PZT)制御 により±100 MHz(帯域>50 kHz)を実現している.こ の 光 源 か ら の 信 号 を LiNbO の 位 相 変 調 器 に よ り 5.5 Gbpsで変調した後,ファイバー増幅器により 1 W まで増 幅し,光アンテナから送信する.これらの装置の内部接続 には,偏光保持型のシングルモードファイバーを用いてい る. LCTSX の構体内部には直径 12.7 cm のカセグレン型光 アンテナが設置されており,構体外部に設置された 2枚の 平面鏡による潜望鏡型の駆動機構により送受信ビーム方向 を制御する.内部光学系は,精追尾用の FSM(fast steer-ing mirror),光行差補正用の FSM,送信用ファイバーコ リメーター,精追尾誤差検出と Homodyne PSK 信号復調 を行う受信ユニットから構成される.送信と受信の 離に は偏光(直線偏光)を用いており,光アンテナからは内部 光学系の 1/4波長板により円偏光のレーザー光が送受信さ れる.内部光学系と送信部,ローカル光源とはおのおのフ ァイバーで接続されている.LCTSX は,通信ビームだけ で捕捉追尾を行うのが特徴で,受信ユニットからの追尾誤 差信号により,捕捉・粗追尾および精追尾を行う.送信レ ーザービーム幅は狭いので,捕捉の際には最初に片側の通 信機(slave)の指向方向を固定し,もう一 方 の 通 信 機 (master)の指向方向をスパイラル型にスキャンし,送信 レーザービームが相手(slave)側の捕捉センサーの視野 を横切る瞬間ごとに,slave側で masterから受信したレ ーザーの方向を検出し,自身の指向方向を少しずつ修正し てゆく.この動作を一定時間繰り返した後は,masterと slaveを入れ替えて同じ捕捉動作を繰り返す.これによ り,双方の指向誤差が小さくなり,捕捉センサーにある一 定の頻度でレーザー光が受信できるようになるので,さら に,スキャン範囲を狭めたうえで同時に masterと slave の指向方向をスキャンし,両方の捕捉センサーで安定にレ ーザー光の受信ができるようにする.以上の捕捉動作終了 後は,通信信号復調用の検出器で受信光が検出できるよう になるので,この信号をもとに精追尾誤差を検出し,追尾 誤差を収束させる.以上の捕捉・追尾機能および信号受信 部の機能は,1ビット当たり 40フォトンの受信信号電力 の条件で試験され,正常に動作することが確認されてい る . 3. 日本における研究開発 日本では,1994年に,通信 合研究所(CRL,現 NICT) が開発した波長 0.83μm の半導体レーザーを用いた光通 信実験装置(LCE)を宇宙開発事業団(NASDA,現 JAXA) の技術試験衛星Ⅵ型(ETS-VI)に搭載して,世界初の光 通信実験が CRL および JPL の地上局との間で実施され た .この実験の後,CRL では,1998年から NASDA の 募 に 応 じ る 形 で,宇 宙 ス テ ー シ ョ ン か ら 地 上 に 2.5 Gbpsの信号を伝送する光通信実験のための装置開発を進 めていたが,2003年に開発を中止している. 一方,JAXA では,ESAとの国際協力により,ARTEMIS との間で光衛星間通信実験を実施する計画を 1992年から 開始した.このための光衛星間通信実験衛星 OICETS は, 2005年 7月に打ち上げられ,ARTEMIS および地上局と の間で光通信実験を実施している.OICETS に搭載され た光衛星間通信機器(LUCE:laser utilizing communica-tions equipment)は,直径 26 cm のカセグレン型光アン テナをもち,質量は 149.6 kg,消費電力はスタンバイ時に は 130 W,追尾時には 232 W である.詳細は別項の解説 をご覧いただきたい.また,通信・放送機構(現 NICT)川 崎次世代 LEOリサーチセンター(NeLS:Next-generation LEO System Research Center)でも,「グローバルマル チメディア移動体衛星通信技術の研究開発プロジェクト」 において,多数の周回衛星通信システム向けの光衛星間通 信技術の研究開発が行われた.ここでは,波長 1.5μm 帯 を用いて伝送距離 ∼3000 km,伝送速度 2.5 Gbpsをもっ たシステムが検討された . 4. 成層圏プラットフォーム定点滞空試験における光 通信実験 NICT の光宇宙通信に関する技術開発成果を活用した 地上における最初の応用実験として,高度 4 km を実験飛 行する成層圏プラットフォーム定点滞空試験機に光受信機 を搭載し,地上から波長 1.5μm 帯のレーザー光により地

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上ディジタル放送信号を伝送する(光フィーダーリンク) 実験が行われた .搭載用の光受信機構成を図 2に示す. 光フィーダーリンクの減衰を補償するため,光受信機で は,Er添加ファイバー増幅器(EDFA)で増幅した光信号 をフォトディテクターにより電流に変換し,この電流が一 定になるように EDFA の利得を制御する.図の点線矢印 がレーザービームの伝送経路を,実線の矢印が電気系の信 号伝送経路を示す.安定な光フィーダーリンクを確保する ためには,地上局と飛行 の両方に高精度の追尾が必要 で,光受信機側からもビーコン光を送信して,地上の光送 信機で追尾する. 図 3に,平成 16年 11月 22日の定点滞空試験の状況を 示す.この実験では,CCD カメラによるビーコン光の初 期捕捉,2軸ジンバルの駆動による双方向の光アンテナ追 尾実験のみが実施できた.初期捕捉の状況を図 4に示す. (a) はビーコン光捕捉直前を,(b) はビーコン光捕捉追 尾後を示し,地上局の光アンテナ内に設置した CCD カメ ラで撮影したものである.試験機・地上局間の双方向のビ ーコン光の捕捉追尾に成功している様子がわかる.光アン テナモジュールは,図 5に示す 3枚のプラスチック製,軸 外し非球面鏡を用いた小型軽量設計で,有効径 4 cm,超 小型の追尾ミラー駆動機構を内蔵している.重量は約 2.4 kg である.粗追尾に 用した CCD の対角視野は±0.8度 である.ビーコン光のビーム幅は上り 2度,下り 0.5度で あり,対向する送受信機が,この視野の中に入るように光 アンテナの初期角を制御する必要がある.このため,機体 の位置,姿勢データをリアルタイムで処理し,搭載光受信 機および地上の光送信機のアンテナ初期角を計算・表示す るシステムを用意し,必要に応じて初期角をコマンドによ り送信した.アンテナの駆動には市販の L 字型 2軸ジン バルを 用した. 光アンテナの直径を 4 cm とすると,波長 1.5μm の信 図 4 定点滞空試験におけるビーコン捕捉追尾.(a)ビーコン光捕捉直前,(b)ビーコン光捕捉追尾後. 図 3 地上局の光アンテナおよび 2軸ジンバルの外観. 図 2 成層圏プラットフォーム定点滞空試験機に搭載した光 受信機の構成. (a) (b)

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号光のビーム広がりは 49.4μradとなり,受信点でのビー ム直径は 24.6 cm で,100 mW の送信出力を仮定すると, 大気ゆらぎによる損失(シンチレーション),光アンテナ の鏡面精度や反射率の影響,ファイバーへの結合を含む内 部損失を 慮しても,受信電力は−6.8 dBm と予想され る.一方,フィーダーリンク伝送系の C/N 比を 40 dB 以 上確保するために必要な EDFA 入力端での最小受信電力 は−24.0 dBm である.したがって,十 大きな回線マー ジンが得られており,仮に成層圏プラットフォーム高度 (20 km)に光受信機をもっていったとしても回線が成立 する. 成層圏プラットフォーム定点滞空試験では,実験時間の 制約からフィーダーリンク信号伝送実験までは実施できな かったので,長時間のより安定した設置環境が期待できる ビル間において,残された光アンテナモジュールおよび精 追尾システムの動作評価を実施した.2006年 1月には, NICT で新たに製作した通信速度 10 Gbpsの光送受信機 を実験系に組み込み,双方向のデータ伝送実験を実施し た.その結果,2時間以上にわたって全く誤りのない高品 質伝送ができることを確認した.ここで用いられた送受信 機は,EDFA と組み合わせて最適動作するよう設計され ており,最小受信感度−37 dBm,ダイナミックレンジ 35 dB を達成している. これらの成果は,将来,宇宙空間だけではなく,高速大 容量通信を必要とする地上の移動体(飛行機や 舶,車 両)への光通信や,光ファイバー通信と同じ伝送路を必要 とする空間通信に有効に活用されると えられる. 文 献 1) I.I.Kim,B.Riley,N.M.Wong,M.Mitchell,W.Brown,H. Hakakha, P. Adhikari and J. Korevaar: Lessons learned for STRV-2 satellite-to-ground lasercom experiment, Proc. SPIE, 4272 (2001)1-15.

2) K. E. Wilson, M. Britcliffe and N. Golshan: Progress in design and construction of the Optical Communications Telescope Laboratory (OCTL), Proc. SPIE, 3932 (2000) 112-116.

3) D. M. Boroson, C.-C. Chen and B. Edwards: Overview of the Mars laser communications demonstration project, IEEE LEOS Newslett., 19, No. 5 (2005)8-11.

4) C.-C. Chen, A. Biswas, W. T. Roberts and M. J. Britcliffe: Turning Palomar into a deep-space optical receiver, IEEE LEOS Summer Topical Meeting, MA1. 3 (2005)pp. 7-8.

5) L. M. Candell: LDES:A prototype array optical receiver for the Mars laser communications demonstration Pro-gram, IEEE LEOS Newslett., 19, No. 5 (2005)15-16. 6) J. J. Scozzafava, D. M. Boroson, R. S. Bondurant, A. D.

Pillsbury, J. W. Burnside, N. W. Spellmeyer, P. L. Ward, F. K. Knight, M. L. Stevens and D. R. Bold: The Mars lasercom terminal, IEEE LEOS Newslett.,19,No.5(2005) 12-14.

7) N.W.Spellmeyer,D.O.Caplan and M.L.Stevens: Design for a 5-Watt PPM transmitter for the Mars laser communi-cations demonstration, IEEE LEOS Newslett., 19, No. 5 (2005)22-23.

8) T.Tolker-Nielsen and G.Oppenhauser: In orbit test result of an operational optical intersatellite link between ARTEMIS and SPOT4, SILEX, Proc. SPIE, 4635 (2002) 1-15.

9) K. Pribil and J. Flemming: SOLACOS YKS―An optical high datarate communication system for intersatellite link applications, Proc. SPIE, 2381 (1995)83-89.

10) R.Lange and B.Smutny: Highly-coherent optical terminal design status and outlook, IEEE LEOS Newslett., 19, No. 5 (2005)34-36.

11) 荒木賢一,有本好徳:“光通信実験の概要”, 通信 合研究所 季報,43, No. 3 (1997)493-520.

12) Y. Koyama, E. Morikawa, M. Ohkawa, S. Motoyoshi, H. Watanabe, R. Suzuki and Y. Yasuda: Space demonstra-tion experiments plan of a next-generademonstra-tion LEO system for global multimedia mobile satellite communications, 54th International Astronautical Congress,IAC-03-M.4.02(2003). 13) 有本好徳,勝尾双葉,木内 等:“飛行 との光捕捉追尾実

験”,第 5回成層圏プラットフォームワークショップ(2005) pp. 223-229.

(2006年 4月 17日受理)

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