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看護研究の粗視化と特徴的キーワード抽出

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Academic year: 2021

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医療情報学会・人工知能学会 AIM 合同研究会資料 SIG-AIMED-008-05

看護研究の粗視化と特徴的キーワード抽出

Coarse graining of nursing research

and characteristic keyword extraction

今井 哲郎

1

川口 孝泰

2

Tetsuo Imai

1

Takayasu Kawaguchi

2

1

長崎大学 大学院工学研究科

1

Graduate School of Engineering, Nagasaki University

2

東京情報大学 看護学部 遠隔看護実践研究センター

2

Telenursing Research Center, Faculty of Nursing, Tokyo University of Information Sciences

Abstract: It is required to promote interdisciplinary research also in nursing research. How-ever, there is still insufficient information for researchers outside nursing research to grasp nursing research comprehensively, which impedes collaboration between nursing researchers and those in other fields. To promote interdisciplinary research, we are providing information by quantitative and objective analysis. In this article, by co-author network analysis we extracted nursing research groups which are characterized with some keywords, and made coarse-grained nursing research maps.

1

はじめに

看護研究 (看護学に関する学術研究) は,患者等のケ アに関する様々な取り組みが主要な研究テーマである. 患者等のケアの場では,医療や介護に携わる様々な職 種の密接な連携 (他職種連携) が求められるが,その要 となる働きを担うのは看護師である.そのため看護研 究においては,様々な学術分野との連携が必然的に重 要である.また近年の少子高齢化に伴い,医療従事者 や介護従事者などの医療資源の不足や医療費の高騰等 の諸問題が深刻となっており,患者のケアに関する業 務においても,その省力化が社会的に強く求められて いる.そのためには近年発展の著しい AI や IoT といっ た情報分野との連携を促進していくことが重要である. そのため今後の看護研究の発展には特に,他分野との 学際的研究の促進が大きな役割を果たすと考えられる. 看護研究における既存の研究動向の分析は,分野の 代表的研究者らが従来型の分類に基づいて分類するも のであり,また対象も単一論文誌のみがほとんどであっ た.看護研究においては,科学計量学の手法に基づく自 己組織的な研究動向の分析は,著者らの取り組み [1, 4] を除いてはほとんど行われていない.そのため,看護 研究の初学者や特に他分野の研究者にとって,看護研 究全体の俯瞰的把握のための情報が必ずしも十分では 連絡先:長崎大学 大学院工学研究科       〒 852-8501 長崎県長崎市文教町 1-14        e-mail: [email protected] なく,看護研究との共同研究の足がかりがつかめない ために,看護研究において特に重要な学際研究が阻害 されているという問題があった.さらには看護研究の 学術活動の他の分野との客観的手法による比較が十分 ではないことから,看護研究が他の分野に対して持つ 優位点や改善点などが十分に把握できないという問題 があった. そこで現在著者らは,研究者間の共同研究という観 点から,看護研究の研究領域や研究者グループを科学 計量学的手法によって明らかにし,さらには他分野の 学術活動の分析・比較によって看護研究が特有に持つ 特徴を明らかにする取り組みを行っている.本研究の ねらいは,看護分野と他分野との学際共同研究の促進 を図るとともに,看護研究初学者へ向けた看護研究ガ イドとしての情報提供や,中堅研究者へ向けた現在位 置把握+周辺研究の可視化とそれによる分野内/学際共 同研究活動の促進,リーダー研究者へ向けた看護研究 発展のための共同研究促進方策に資する情報提供を行 うことである. 本稿では,科学計量学的手法の一つでもある共著ネッ トワーク分析の手法により看護研究グループを抽出し, また各研究者グループに関して特徴的キーワードによ る分析を行うことで,看護研究の粗視化を行う.

(2)

2

分析手法

本稿では,学術文献データベースの著者情報から共 著ネットワークを構築し,コミュニティ検出を実施し た上で,文献に付与されているキーワードによってコ ミュニティと論文誌の特徴を分析した.本稿では,研究 トレンドを時系列変化を見るために,全文献を発行年 によって 3 期 (第 1 期: 1982–1994, 第 2 期:1995–2006, 第 3 期: 2007-2018) に分け,各期および全体を通した 通期 (1982–2018) について,その特徴を分析した.な お他の期間が 12 年であるのに対し,第 1 期のみ 13 年 としているのは,この期間が看護研究の草創期に当た るために文献数が少ないためである.

2.1

共著ネットワークの構築

本稿における共著ネットワーク構築の流れを図 1 に 示す.本稿における共著ネットワークは,著者をノー ドとし,2 人の著者間に共著関係がある場合にノード 間にエッジを付与して構築されるものである.一編の 論文に 3 名以上の著者がある場合は,その全ての著者 間にエッジが付与される. 本稿では,文献情報データベースとして医学中央雑 誌刊行会が提供する医中誌データベースを用いた.本 稿の分析対象は看護研究であるので,抽出対象とする文 献を,一般社団法人日本看護系学会協議会会員学会 44 学会 (2018 年時点) 発行の論文誌 (前身論文誌を含む) に 1982 年から 2018 年までに掲載された全ての原著論 文とした.抽出された文献は全部で 9 700 編であった.

2.2

コミュニティ検出

看護研究における研究グループを洗い出すために,共 著ネットワークに対してコミュニティ検出を行った.コ ミュニティ検出とはネットワークにおけるクラスタリン グ手法の一つで,ネットワーク全体からつながりの強 い部分ネットワーク (=コミュニティ) を検出する手法 である.コミュニティ検出アルゴリズムとして,本研究 では Louvain 法 [3] を用いた.これはネットワークにお けるノードをハードクラスタリングする手法の一つで, コミュニティ検出の「良さ」を表す指標であるモジュラ リティを最大化するアルゴリズムである.Louvain 法は 大規模ネットワークに対しても計算量が小さく,最速か つ最高精度の手法として知られている.Louvain 法で は,ノード選択順序をランダムに決定するため,ノード 選択順序によってコミュニティ検出結果が異なる.その ため本稿では,ランダムに生成した 10 000 パターンの ノード選択順序に対して Louvain 法を実行し,モジュ ラリティの値が最大となる結果を,コミュニティ検出 結果とした.

2.3

特徴語検出

本稿では各論文誌/コミュニティの特徴付けを行うた めに,各論文誌/コミュニティの特徴語を抽出する.医 中誌に収録されている文献にはそれぞれ,医学中央雑 誌刊行会が定める「統制語」と呼ばれるキーワードが 付与されており,本稿ではこのキーワードを用いて各 論文誌/コミュニティの特徴付けを行う.キーワードの 特徴量を定量的に評価する方法として,本稿では広く 利用されている tf-idf 法を用いた.本稿において tf-idf は,ある論文誌/コミュニティ内でキーワードがどれだ け多く使用されているのかを示す指標である TF(Term Frequency) と,そのキーワードがどれだけ少ない数の 論文誌/コミュニティで使用されているかを示す指標で ある IDF(Inverse Document Frequency) の積として算 出される [2].TF と IDF の算出方法にはさまざまなバ リエーションがあるが,本稿では以下の定義を採用し た.論文誌/コミュニティi に関して,キーワード x の TF および IDF は tf (x, i) =n(x, i) yn(y, i) idf (x) = log ( N df (x) ) として算出される.ここで n(x, i) は論文誌/コミュニ ティi における全文献の中でキーワード x を含む文献の 数であり,tf (x, i) の分母は論文誌/コミュニティi にお ける全文献数となる.また N は全文献数を,df (x) は その中でキーワード x を含む文献数を示す.したがって 論文誌/コミュニティi に関して,キーワード x の tf-idf 値は, tf -idf (x, i) = tf (x, i)· idf(x) となる.

3

結果

3.1

コミュニティの研究動向の分析

各期および通期について,本手法による看護研究の 粗視化と各コミュニティの特徴的キーワードの分析を 行った.通期 (1982–2018) の結果を図 2 に示す.図 2 の結果では,全部で 60 個のコミュニティが検出された. ノードで示されるコミュニティのキーワードを見ると, 概ね類似したキーワードが並んでいることが確認でき, 研究グループ内である程度共通の研究テーマがあるこ とが分かる.他にも,どのキーワードに関する研究グ ループが大きな規模を持っているのか,またノードを つなぐエッジを見ることでどの研究グループ同士の関 係性が強いかを把握できる.

(3)

論文誌 𝒌𝒌 著者A,著者B,著者C 医中誌 データベース 論文誌 𝒋𝒋 著者A,著者C,著者E 論文誌 𝒊𝒊 著者A,著者C,著者D 共著NWを構築 • 著者がノード,共著関係が エッジ • 各著者ペアの掲載論文誌 や論文キーワードを記録 論文誌 𝒌𝒌 著者C,著者D 論文誌 𝒋𝒋 著者A,著者D,著者E 論文誌 𝒊𝒊 著者C,著者E 学術文献DBの決定 • 医学中央雑誌刊行会 が提供 • 医学・歯学・薬学及び 看護学・獣医学・公衆 衛生学などの関連分 野の国内文献を収録 文献情報の抽出 • 看護系学会協議会会員の 44学会発行の論文誌 (前身論文誌を含む) • 1982年~2018年の9 700編 • 原著論文のみ コミュニティ抽出 • 研究者全体をサブグループ(「コミュニティ」)に分割 • コミュニティ内部のエッジ数が,コミュニティ間をまた ぐエッジ数よりもできるだけ大きくなるように分割 (「Louvain法」) [キーワードd +キーワードe +キーワードf] [キーワードG +キーワードh +キーワードi] [キーワードa +キーワードb +キーワードc] [キーワードj +キーワードk +キーワードl] コミュニティの特徴語分析 • 各コミュニティ内に含まれる文献キー ワード(医中誌の「統制語」)をTF-IDF で抽出 図 1: 本稿の分析の流れ このような看護研究の俯瞰的な情報を広く提供する ことで,他分野の研究者にとっては看護研究との連携 を検討しやすくなり,また看護研究者にとっては,俯 瞰的把握,自身の現在位置の把握,今後の看護研究の 発展への示唆となることが期待できる.

3.2

論文誌の研究動向の時系列分析

論文誌に関する研究動向について述べる.ここでは 日本看護学教育学会誌を取り上げ,各期における特徴 的キーワードの推移によって,研究トレンドの変化を明 らかにする.表 1 に,日本看護学教育学会誌における 各期の tf-idf 値の上位 10 個のキーワードを示す.キー ワード「看護大学教育」について注目すると,第 1 期で はランク外となっていたが,第 2 期では第 8 位に,第 3 期では第 1 位になっている.これは,1991 年度には 11 校であった看護系大学の数が,2015 年度には 241 校 にまで急激に増大したことにより,看護学の教育に関 して「看護大学教育」の重要性が増大したことを反映 していると考えられる.このように,特徴的キーワー ドの推移を示すことで,各看護系論文誌における研究 トレンドの変化を明らかにすることができる.

4

おわりに

本研究では看護研究と他分野との連携研究促進へ向 けた情報提供のために,共著ネットワーク分析の手法 を用いて看護研究の動向を可視化し,分析結果の一部 を示した. 今後は,研究コミュニティと研究テーマのより詳細 な時系列分析を行うことで,看護研究の変遷を明らか にしていく予定である.また看護研究によって形成さ れる共著ネットワークの特徴と,医学等の周辺分野,ま た情報工学などの他分野の共著ネットワークの特徴を 比較することで,看護研究の共著ネットワークが特有 に持つ特徴を明らかにすることが期待される. また今後,海外の共著 NW との比較をすることで, 国際的研究を推進する方向性を得ることも期待される. 著者らによって既に一部の分析を行われている [4] が, 海外の看護研究については CINAHL などの海外看護文 献データベースが知られており,これらのデータベー スから構築した海外の看護研究における共著 NW と比 較することによって,日本と他国の国際協力のあり方 の差異を見いだし,日本の看護研究者特有の特徴を明 確化することが期待できる.また世界全体の看護研究

(4)

図 2: 看護研究グループの粗視化と特徴的キーワード (1982–2018 の文献).コミュニティ(=研究者グループ) を ノードで表し,コミュニティ間の関係性を重み付きエッジで表現したコミュニティ間ネットワークである.各ノー ドの大きさは対応するコミュニティに所属する著者数に比例しており,また各ノードの位置に意味はなく,見やす さのみを基準に配置している.コミュニティ番号に続く角括弧内にそのコミュニティにおける特徴的キーワード を 3 つ列挙している. との比較により,日本の看護研究者が世界の中でどの ような位置づけにあるのかを評価できるようになるこ とが期待できる.他の分野では既に,世界の共著 NW の分析によって日本出身研究者の世界における位置づ けが分析され,今後の国際連携戦略や研究支援機関の あり方等に関する提言が行われている [5].今後,看護 研究においても同様の取り組みが行われることで,日 本の看護研究の国際競争力を高めていくために,個々 の研究者,また研究活動を支援する学会の活動のあり 方等に関する示唆を得られることが期待できる.

謝辞

本研究は JSPS 科研費 15KT0108, 16H02693, 18K10249, 18K10211 の助成を受けたものである.

参考文献

[1] 今井哲郎, 川口孝泰,: 看護系論文の共著者ネット ワークの分析による看護学専門領域の分類, 東京情 報大学研究論集, Vol. 21, No. 2, pp. 43–51 (2018) [2] 文部科学省科学技術・学術政策研究所,: サイエンス マップ 2014, NISTEP REPORT, No. 169, DOI: http://doi.org/10.15108/nr169 (2016)

[3] Blondel, V.D., Guillaume, J-L., Lambiotte, R., Lefebvre, E.: Fast Unfolding of Communities in Large Networks, Journal of Statistical Mechanics

Theory and Experiment, Vol. 2008 (2008)

[4] Imai, T., Kawwguchi, T.: Clustering of nurs-ing research journals based on co-occurrences in co-author relationships, The 38th JSST

(5)

表 1: 日本看護学教育学会誌に関する各期の特徴的キーワード (tf-idf 値で上位 10 位まで)

キーワード tf-idf キーワード tf-idf キーワード tf-idf

学生 0.039 看護教育研究 0.029 看護大学教育 0.012 態度 0.031 看護学教員 0.020 看護学生 0.011 教員 0.026 看護学生 0.019 臨床・臨地実習 0.011 問題解決 0.018 臨床・臨地実習 0.016 看護学教員 0.009 高齢者看護(教育・指導) 0.016 看護基礎教育 0.014 看護基礎教育 0.008 看護教育(心理学) 0.016 看護教育 0.013 成人看護 0.007 医学教育 0.016 看護短大教育 0.013 教育手法 0.006 教育評価 0.016 看護大学教育 0.013 看護学生-患者関係 0.006 看護教育(調査・実態) 0.010 看護教員臨床実践 0.012 学習 0.005 小児看護(教育・指導) 0.010 学習 0.012 看護専門学校教育 0.005 第1期 1982-1994 第2期 第3期 1995-2006 2007-2018

Technology (JSST2019) Conference Proceedings,

pp. 133–136 (2019)

[5] 内藤理, 佐藤啓宏, 工藤俊亮, 池内克史,: 共著関係 から見た国際的な研究者ネットワークにおいて日 本出身研究者の採るべき連携戦略, 日本ロボット 学会誌,Vol. 31, No. 6,pp. 583–590 (2013)

図 2: 看護研究グループの粗視化と特徴的キーワード (1982–2018 の文献).コミュニティ(=研究者グループ) を ノードで表し,コミュニティ間の関係性を重み付きエッジで表現したコミュニティ間ネットワークである.各ノー ドの大きさは対応するコミュニティに所属する著者数に比例しており,また各ノードの位置に意味はなく,見やす さのみを基準に配置している.コミュニティ番号に続く角括弧内にそのコミュニティにおける特徴的キーワード を 3 つ列挙している. との比較により,日本の看護研究者が世界の中でどの よ
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