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InPモノリシック集積偏波制御回路

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(1)

InP

モノリシック集積偏波制御回路

種村

拓夫

a)

中野

義昭

Monolithic InP Polarization Manipulating Circuits

Takuo TANEMURA

†a)

and Yoshiaki NAKANO

あらまし コヒーレント光通信方式の本格的な導入に伴い,多数の光学素子をコンパクトに集積できるInP 系

光集積回路(PIC) は,光送受信器の低コスト化,省電力化,省スペース化を実現する上で不可欠な技術になって いる.一方,次世代光通信システムでは,偏波多重方式やストークスベクトル変調方式に代表される,偏波状態

をより積極的に活用する技術が注目されており,既存のPIC 技術の延長にない偏波制御機能が求められている.

本論文では,InP 系 PIC の新しい可能性を開拓する試みとして,著者らが行っている InP モノリシック偏波制 御回路の研究開発状況を紹介し将来展望を述べる. キーワード 光集積回路,InP,モノリシック集積,偏波制御/変調,偏波検出

1.

ま え が き

大容量コヒーレント光送受信器の小型化・低消費電 力化・低コスト化を実現する技術として,レーザ等の アクティブ素子と,光ハイブリッドや合分波器等のパッ シブ光回路をモノリシックに集積したInP系光集積回

路(PIC: photonic integrated circuit)の重要度が増

している[1]∼[3].その集積度は,いわゆる「光のムー ア則」に従って発展を続けており[4],最近では,InP フォトニクス用ファウンドリーサービスが本格的に稼 働するなど[5],InP系PIC技術は一定の成熟期を迎 えたと言える. レーザや変調器などの基本素子の汎用化が進む一方 で,未だに集積が難しい光素子も少なくない.その一 つが「偏波制御素子」である.InPチップ上で光の偏 波状態を自在に制御する技術は,偏波多重送受信器へ の応用をはじめ,ストークスベクトル変調方式や偏波 依存光センシングなど,多様な可能性が期待されてい る.単一の偏波変換器に関しては,従来から様々な構 造が提案・実証されているものの[6], [7],他素子との 結合や作製プロセスの互換性の観点から,大規模な PIC内に集積する上での課題が残されていた. 東京大学大学院工学系研究科,東京都

School of Engineering, The University of Tokyo, 7–3–1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo, 113–8656 Japan

a) E-mail: [email protected] 以上の背景から,著者らは,InP系PICに新たに 偏波制御機能を導入することを目的とし,レーザや変 調器などとの集積性に優れる偏波変換器と応用素子の 研究開発を進めている.本論文では,最新の成果を紹 介し,今後の展望を述べたい. まず2.で,基本素子となるハーフリッジ型偏波変 換器の原理と実験結果を紹介する.この技術を応用し た回路として,偏波制御・変調回路と偏波アナライザ 回路について,3.4.でそれぞれ述べる.

2.

ハーフリッジ型偏波変換器

種々の偏波制御を行う上でまず必要となる基本素 子が,transverse electric (TE)光とtransverse mag-netic (TM)光を互いに変換する偏波変換器(PC: po-larization converter)である.空間光学系では,波長 板を傾けて配置することにより光の偏波状態を回転で きるが,チップ上で同様の機能を実現するには,基板 に対して何らかの非対称性をもつ導波路構造を導入す る必要があり,容易ではない.従来,片側傾斜構造やト レンチ構造など様々な素子が提案されているが[6], [7], 上部クラッド層が薄い,特殊な層構造を要する,作製 において精密な位置合わせが必要であるなど,PICと の集積に適さないものが多い. これに対して,著者らが提案した「ハーフリッジ型 PC」を図1に示す.リッジ導波路の片側をハイメサ 導波路にしただけの,通常のリッジ導波路に近い断面

(2)

図 1 ハーフリッジ型 InP 偏波変換器 Fig. 1 Schematic of half-ridge InP polarization

converter.

図 2 ハーフリッジ型導波路の導波モード解析結果(磁界 ベクトル分布.w = 1.0 µm,d = 0.3 µm)[8] Fig. 2 Waveguide modes of the half-ridge waveguide.

(magnetic field, w = 1.0 µm, d = 0.3 µm) [8] 構造をもつため,レーザや変調器等の他のInP素子と の低損失モノリシック集積に適している.更に後述す るように,セルフアラインプロセスによる容易かつ高 歩留まりプロセスで作製できるという利点を有する. 2. 1 ハーフリッジ型偏波変換器の原理 ハーフリッジ型導波路の固有導波モードの計算結果 例を図2に示す[8].このように,導波路幅wとコア 厚d を適切に設計することにより,基板に対して約 45度傾斜した固有導波モードを得ることができる.こ の場合,45度傾いた複屈折媒質(波長板)として作 用するため,例えばTE光を入力すると導波路内で 二つの固有モードが等しく励振される.その結果,半 ビート長を伝搬後に,電界・磁界ベクトルが 90回 転したTMモード光が得られる.3次元ビーム伝搬法 (BPM: beam-propagation method)による計算から, 180 μm長の素子で,97%以上のTE-TM変換効率が 得られることが確認された[8]. 2. 2 偏波変換器の作製と評価 ハーフリッジ型PCのもう一つの利点は,セルフア ラインプロセスにより容易に作製できる点にある[9]. 作製手順の一例を図3に示す.(a)ドライエッチング によってリッジ導波路を形成した後に,(b)サンプル を斜めに傾けてSiO2 膜を蒸着する.次に,(c)変換 器部分にフォトレジストによるパターニングを行い, 図 3 偏波変換器の作製手順.

Fig. 3 Fabrication procedure of polarization converter.

図 4 試作したハーフリッジ型導波路の断面 SEM 像 (a) と偏波変換率の測定結果 (b) [9]

Fig. 4 Cross-sectional SEM image (a) and measured polarization conversion ratio (b) of the fabri-cated PC [9]. (d)先とは逆向きに傾けてSiO2 膜を蒸着し,(e)リフ トオフを行う.最後に,(f)再度ドライエッチングを行 うことにより,偏波変換器部の片側のみをハイメサ状 にエッチングする.このようにセルフアラインプロセ スを用いることで,精密なアライメントを不要とし, リッジ導波路と偏波変換器を容易に集積できる. (b),(d)における斜め蒸着プロセスは,一般的に用 いられるプラズマ化学気相堆積(CVD)法やRFス パッタ法に比べてSiO2 膜の品質と厚みの制御性が劣 ることが懸念される.しかし,ここで堆積するSiO2 膜の役割は,エッチングしない側面をカバーするため のみであり,膜質と膜厚の精密な制御性は要求されな い.また,(f)のドライエッチングプロセスによって 形成されるエッチング面は,(a)で用いた最初のハー ドマスクによって決まるため,(b)において堆積した SiO2 膜の品質がエッチング側面のラフネスに影響す ることはほとんどない.そのため,高歩留まりかつ均 一性良く大面積ウェーハプロセスにより作製できる. 原理検証のため,PCとリッジ導波路を集積した素 子を作製した[9].図4 (a)にPC部分の断面走査型電 子顕微鏡(SEM: scanning electron microscope)像

を,偏波変換効率の測定結果を図4 (b)に示す.1510∼

(3)

図 5 ハーフリッジ型 PC と SOA を集積した PIC Fig. 5 PIC with half-ridge PC and SOA.

換効率が得られた.また,リッジ導波路との結合損は 小さく,PC部での伝搬損を含めた全体の挿入損失は 1dB以下と見積もられた[9]. 2. 3 能動素子とのモノリシック集積 ハーフリッジ型PCと能動素子とのモノリシック集 積の可能性を検証するために,図5のPICを試作し た[10], [11].導波路幅4.0 μm,長さ800 μmの半導 体光増幅器(SOA)の後段に1× 11スターカプラを 接続し,ポートごとに長さの異なるハーフリッジ型 PCを配置している.図5に示すように,圧縮ひずみ 量子井戸を含んだSOA部分はエッチングの浅いリッ ジ導波路,その他のパッシブ導波路はInGaAsPコア 中央までエッチングしたリッジ導波路構造にした.オ フセット量子井戸手法を用いてアクティブパッシブ集 積を行い,更に斜め蒸着法とドライエッチングによっ てハーフリッジ構造を作製することで,活性層を含む 能動素子とPCのモノリシック集積を行った. 作製した素子を10.0◦Cに保ち,波長1550 nm,TE モードの光を入力し,各ポートから出力される光の TE・TM成分の強度を測定した.図6はPCのない ポート(LPC= 0 μm),及び,長さ90 μm,幅1.1 μm のPCを集積したポートからのTE・TM各モードの 出力強度を示す[11].SOAへの注入電流の増加ととも に,PCのないポート(図破線)ではTEモードの光 が支配的であり増幅されているが,PCのあるポート (図実線)からはTMモードに変換されて出力されて いるのがわかる.これにより,同一チップからTE・ TM両モードを出力する動作に成功した. 2. 4 作製誤差に対する耐性 大規模PIC上に集積する上で実用上重要となるの が,作製誤差に対する耐性である. 図 6 SOAへの注入電流に対する出力光パワーの TE・ TM成分(WPC= 1.1µm)[11]

Fig. 6 TE and TM components of the output power with increasing current to SOA (WPC= 1.1µm) [11].

図 7 最大変換効率(左)と半ビート長(右)の導波路幅 W とコア厚 d に対する依存性 [12]

Fig. 7 Maximum conversion efficiency (left) and half beat length (right) as a function of w and d [12].

図 8 変換効率の導波路幅 W(左)とコア厚 d(右)に対 する依存性 (L = 215 µm)

Fig. 8 Conversion efficiency as a function of W and d.

図7に,最大変換効率と半ビート長の導波路幅W とコア厚d(図1参照)に対する依存性の計算結果を 示す[12].更に,W = 1.0 μmd = 0.3 μmを設計 中心とし,PC部の長さを半ビート長である215 μm に固定した場合について,実際に得られる変換効率の Wdの依存性を図8に示す.例えば,90%以上の 変換効率を達成するための作製誤差の許容範囲は,導 波路幅に関して0.1 μm,エッチング深さに関しては 40 nmであることが分かる. 特にエッチング深さについては,許容範囲が広くな く簡単ではないが,エッチングレートを精密に制御す

(4)

することで,作製誤差耐性が劇的に改善することも分 かっており[12],現在検討を進めているところである.

3.

モノリシック集積偏波制御

/

変調回路

前節で実証したハーフリッジ型PCを基本素子とし て用いることで,InPチップ上で様々な偏波制御が可 能になる.その一例として,偏波状態(SOP: state of polarization)を動的に制御するモノリシック偏波制 御/変調回路を提案し,素子の作製と実証を進めてい る.このような素子は,近年注目を集めている4次 元信号変調方式[14], [15]やストークスベクトル変調

(SVM: Stokes vector modulation)方式[16], [17]用

の送信器として需要が高まっている.更に,RFフォ

トニクス[18]や偏波依存光コヒーレンストモグラフィ

(OCT: optical coherence tomography)[19]などへ の応用も期待される. 3. 1 偏波制御/変調回路の構成と機能 図9に,著者らが考案した一連の偏波制御・変調回路 の構成と機能を示す[20], [21].全ての変調器について, 1/4波長偏波変換器(λ/4-PC)と偏波依存位相変調器 (PD-PM)を直列に接続した構成を取る.λ/4-PC部 は,1/4ビート長のハーフリッジ型PCからなり,45 傾けた1/4波長板として働く.一方PD-PMは,外部 信号を印加することで,TEモードとTMモード成分 に異なる位相差を与える機能を果たす.例えば,対称 なリッジp-i-n導波路構造に逆バイアス電圧を印加す ることで,バルクInGaAsP層中のフランツケルディッ シュ(FK: Franz-Keldysh)効果やポッケルス効果等 の電気光学効果を利用することができる.更に,ひず 図 9 偏波制御/変調回路の構成と機能 [20] Fig. 9 Architectures and functions of proposed

polarization controller/modulator. [20]. では,PD-PM1部に電圧V1 を加えることで,入力 TE波,若しくは,TM波をポアンカレ球のS2-S3面 上の任意のSOPに変換することができる.Type 2で は,Type 1を2段直列に配置することで,ポアンカ レ球全面をカバーした任意のSOPに変換する.Type 2’は,Type 2を逆向きに使用した場合であり,任意 の入力SOPをTE波,若しくは,TM波に変換する ことができる.最後にType 3は,Type 2の入力側 にもう一段PD-PM部を追加した構成であり,任意の SOPから任意のSOPへの完全なる偏波変換機能を実 現する. 想定される応用例も図9の表中に記す.Type 1, Type 2は,SVM用送信器や光センシング用途に用 いることができる.Type 2’は,高速に変動する光の SOPを固定する機能を果たすので,動的光ネットワー クや光素子の偏波依存性を除去するために用いること ができる.最後にType 3は,偏波モード分散補償な どのより高度な応用が期待される. 3. 2 偏波制御/変調回路の原理 ポアンカレ球面上でのストークスベクトルの軌跡を 辿ることで,図9に示した一連の偏波変調器の動作を 理解することができる[20].一般に,λ/4-PC中を伝 搬すると,伝搬光のストークスベクトルは,ポアンカ レ球上でS2軸の周りを90回転する.一方,PD-PM 内では,S1軸の周りを回転し,その回転角は,印加電 圧によって制御することができる. まず,Type 1変調器を考える.TE波をλ/4-PC1 部に入射すると,伝搬に伴い,図10 (a)のようにS2 軸の周りを90回転し,右円偏波状態(北極点)に変 換される.次にPD-PM1部において,S1 軸の周りを 回転するが,その回転量は,外部電圧V1によって制 御することができる.その結果,Type 1変調器の出 力では,S2-S3 面内の任意の偏波状態にすることがで きる. Type 2変調器では,更に λ/4-PC2部を伝搬する ことで,図10 (a)のようにS1-S2 面(赤道)上の直 線偏波状態に変換される.λ/4-PC2出力におけるス トークスベクトルをV1の関数としてプロットすると, 図10 (b)のように赤道上を回転することが分かる.最

(5)

図 10 偏波制御・変調回路の原理

Fig. 10 Operation principle of polarization controller/ modulator. 後に,PD-PM2によって,図10 (c)のように再度S1 軸の周りを回転させる結果,ポアンカレ球上の全ての 点をカバーすることができる. Type 3変調器では,更に入力側にPD-PM0を追加 することで,入力偏波状態への制約も取り払うことが できる.図10 (d)のように,まず適切な電圧V0 を印 加することで,PD-PM0出力においてS1-S2 面上の 点に変換する.その後は,Type 2と同様の軌跡を辿 ることにより,任意の入力偏波状態から任意の出力偏 波状態への変換が得られる. 3. 3 偏波制御回路の試作と原理検証 原理検証のため,Type 1及びType 2偏波変調器を 試作した[21].PD-PM部には,対称リッジ導波路型 電気光学位相変調器を用いた.厚み500 nm,発光波 長1.3μmのバルクInGaAsP(Q1.3)からなるp-i-n 構造に逆電界を印加することで,FK効果とポッケル ス効果を介して変調を行った.位相変調効率の偏波依 存性を最大にするために,FK効果とポッケルス効果 の偏波依存特性が同じ符号で増長されるように,導波 路を[011]方向(逆メサ方向)に形成した[22].図4の 素子と同様に,λ/4-PC部とPD-PM部のモノリシッ ク集積には,セルフアラインプロセスを用いた.作製 した素子のSEM像を図11に示す. 波長1550 nmの連続波の偏波状態をTE偏光に調 整して素子に入射し,出力光の偏波状態を測定した. まず,Type 1変調器について評価を行った.PC長 図 11 作製した偏波変調素子の断面 SEM 像.(a) PC 部, (b) PD-PM部

Fig. 11 Cross-sectional SEM images of the fabricated polarization modulator at PC (a) and PD-PM (b) sections.

図 12 Type 1 (a),及び,Type 2 (b) 変調器の測定結果 Fig. 12 Measured SOP from Type 1 (a) and Type 2

(b) modulators. LPC= 170 μm,PD-PM長LPM= 5 mmの素子に ついて,出力偏波状態の測定結果を図12 (a)に示す. PD-PM1部に印加する逆バイアス電圧V1を増加させ ると,出力光のストークスベクトルがポアンカレ球を 一回転するのが分かる.このとき,一回転に必要な電 圧は約4.3Vであった.次に,Type 2変調器の評価を 行った.LPC= 170 μmLPM= 2 mmの素子につ いて,出力偏波状態の測定結果を図12 (b)に示す.V1 とV2 を変化させると,ほぼ直交した向きにストーク スベクトルが回転することが確認された. 3. 4 量子井戸型偏波制御回路の設計と予備検討 前節で素子の試作と原理検証に成功したものの,一 回転に必要な電圧は4.3Vと高く,また,FK効果に起 因する偏波依存損失(PDL: polarization dependent loss)により,ポアンカレ球面上全面にわたって良好 な変換を得ることは難しかった.この問題を解決する ために,PD-PM部にひずみMQW層を導入する方 法が考えられる. MQW層に圧縮ひずみを加えると,光吸収特性の偏 波依存性が増長され,クラマース・クローニッヒの関 係を通じて,バンドギャップ以下の波長の光に対して 複屈折が生じる.この状態でMQW層に逆電界を印

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その場合は,ナノ秒以下の高速動作は期待できないが, 熱光学型に比べて高速なオンチップ偏波制御素子とし ての応用が考えられる. MQW層による偏波変調効果を調べるために,発光波 長が1400 nm,0.1%の圧縮ひずみをもつInGaAlAs/ InAlAs MQW層を導入したPD-PM素子を試作し, 電流注入による偏波変調特性を測定した[23].その結 果,長さ1.8 mmのPD-PM素子を用いて4.5 mA の電流注入時に,TE/TM間でπの位相差(PDLは 0.3 dB以下)が得られ,出力光のSOPがポアンカレ 球上を半周することを確認した.このとき必要な電圧 は1.2 V,直流消費電力は5.4 mWであった.この結 果から,PC部と合わせて,全長6 mm以下,直流消 費電力16.2mW以下の小型かつ省電力なモノリシッ ク集積Type 2偏波制御器が実現できると見積もられ た.現在,素子全体の作製と実証を進めているところ である. 3. 5 ストークスベクトル変調器への応用と偏波依 存損失の影響 PD-PM部においてPDLが存在する場合について, 偏波変調器としての特性を調べ,用途に応じて許容さ れるPDL量を定量的に見積もることは,実用上重要 である. Type 2変調器について,PDLが存在する場合に, 出力光の偏波状態がどのように変化するかを計算した 結果を図13に示す.PDLがない場合は理想的にポア ンカレ球上全面をカバーするのに対し,πの偏波依存 位相変化を与えたときのPDLが3 dB,10 dBと大 きくなるにつれて,出力光の偏波状態がS1= 1の点 に収束し,出力光が全面をカバーできなくなることが 分かる. 実際の応用例に即したPDLの許容量を調べるため に,SVM用送信器[16]にType 2変調器を適用した場 合についてPDLの影響を調べた.例えば,8値SVM 信号変調器は,図14のように,Type 2変調器の電極 を3区間に区切り,Data 1,2,3のデジタル信号を 用いて駆動することによって得られる.PDL = 0 dB のときは,理想的にポアンカレ球上で等間隔な八つの 状態が得られるが,PDLが存在する場合は,一部の 図 13 8値ストークスベクトル変調器の構成例 Fig. 13 Architectures of octal Stokes vector modulator.

図 14 8値ストークスベクトル変調器の構成例 Fig. 14 Architectures of octal Stokes vector modulator.

図 15 8値ストークスベクトル変調器において PDL によ るパワーペナルティの計算結果

Fig. 15 Estimated power penalty of the octal Stokes vector modulator as a function of PDL at PD-PM sections. 状態間の距離が短くなるため,パワーペナルティが生 じる.図15に,パワーペナルティの計算結果を示す. ペナルティはPDLに対してほぼ線型に増加しており, ペナルティを1 dB以下に抑えるには,π位相変調あ たりのPDLを約1 dB以下にする必要がある.この 値は,QCSE変調器を用いることで十分に達成でき る[24].

4.

偏波アナライザ回路

ハーフリッジ型PCに対称なリッジ型導波路を組み 合わせ,更に受光素子をモノリシックに集積すること で,光の偏波状態を高速に検出する小型な偏波アナラ イザ回路が実現できる.このような素子は,SVM信

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図 16 偏波アナライザ回路の模式図と試作した素子の断 面 SEM 像

Fig. 16 Schematic of the Stokes vector analyzer cir-cuit and SEM images of the fabricated de-vice. 号の安価な受光器[16]に適用できる. 図16に著者らが提案したInPモノリシック偏波ア ナライザの構成を示す[25].まず,1× 4多モード干渉 計(MMI)カプラを用いて入射光を四つのポートに分 波する.各ポートにおいて,左右非対称な導波路断面 構造をもつハーフリッジ型PC,及び,対称なリッジ導 波路(WG)を異なる順番と組み合わせで配置するこ とで,光信号に対してそれぞれ異なる偏波変換を施す. TEモード成分のみを吸収する受光器(TE-PD)を用 いて偏波変換後の信号を受光することで,各ストーク スパラメータ(S1,S2,S3)を検出する. ハーフリッジ型PCは,長さを1/4ビート長に選 ぶことで,45度傾けた1/4波長板として動作させる. その結果,ストークスベクトルは,ポアンカレ球上 でS2 軸の回りを90度回転する.一方,WG部では, TE/TMモード間の実効屈折率差を利用し,PC部と 同様に1/4ビート長にすることで,水平な1/4波長板 として動作し,S1軸の周りを90度回転する.結果と して,図16のように,ポート#1,#2,#3,#4そ れぞれにおいて,S1,S3,S2,-S1成分をS1に変換 することができる.TE-PDは,例えば,圧縮ひずみ 量子井戸型PDを集積し,必要に応じて導波路型偏光 子を追加することにより実現できる. 原理検証のため,図16破線枠内のパッシブ素子部分 を試作し評価したところ,理論通り各ポートにおいて 異なるストークスベクトル成分がS1 に変換されて抽 出できることを確認した[25].今後,量子井戸型PD を集積することで,ワンチップで任意の偏波状態を検 知する素子の実現を目指す. 図 17 偏波多重 WDM 光送信器の概要 Fig. 17 Schematic of the polarization multiplexed

WDM transmitter.

5.

む す び

InP系PICの新機能を開拓する取り組みとして, InPモノリシック偏波変換器と一連の偏波制御回路の 研究開発状況を紹介した. まず,基本素子となる偏波変換器(PC)として, レーザやSOAとのモノリシック集積に適したハーフ リッジ導波路型構造を新規に提案し,1510∼1575nm の広い波長域にわたって,96%以上の偏波変換効率が 得られることを実証した.更に,能動素子とのモノリ シック集積にも取り組み,SOAとPCを同一チップ に集積することに成功した.並行して,ハーフリッジ 型PCを用いた応用素子として,偏波変調回路と偏 波アナライザ回路を提案し,素子の試作と原理検証を 行った. ハーフリッジ型PCの最大の利点は,比較的簡易な プロセスで,他のInP導波路素子と容易に集積でき る点である.例えば,レーザ,変調器,アレー導波路 グレーティング(AWG: arrayed waveguide grating)

等とモノリシックに集積することで,図17のような 大規模な偏波多重WDM送信器がコンパクトに実現 できる.その一方で,今回紹介した偏波変調器や偏波 アナライザは,光通信に留まらず,光センシングやイ メージングなど広範な用途も考えられ,InP系PICの 新しい可能性を切り拓く技術と期待される. 謝辞 本論文の執筆にあたって,研究成果を提供頂 いた財津優氏,川端祐斗氏,鈴木健太郎氏に感謝する. 本研究は,文部科学省科学研究費補助金の助成を受け て実施された. 文 献

(8)

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[22] G. Hagn, Electro-optic effects and their application in Indium Phosphide waveguide devices for fibre op-tic access networks, Ph.D. Dissertation, Swiss Federal Institute of Technology, Z¨urich, p.49, 2001. [23] K. Suzuki, Y. Kawabata, T. Tanemura, and

Y. Nakano, “Design and experimental investi-gation of monolithic polarization controller with InGaAlAs/InAlAs multiple quantum wells,” Proc. Photonics in Switching (PS’15), WeI2.2, 2015. [24] R.A. Griffin, S.K. Jones, N. Whitbread, S.C. Heck,

and L.N. Langley, “InP Mach–Zehnder modulator platform for 10/40/100/200-Gb/s operation,” IEEE J. Sel. Top. Quantum Electron., vol.19, no.6, 2013. [25] 川端祐斗,種村拓夫,中野義昭,“InP モノリシック集積

偏波アナライザの提案と試作,” 2016信学総大,C-3-39, 2016.

(平成 28 年 1 月 8 日受付,3 月 30 日再受付, 7月 14 日公開)

(9)

種村 拓夫 (正員) 2001年東大・電子工卒.2006 年同大大 学院博士課程了.同年より同電子工学科助 手.2007 年より東大先端科学技術研究セン ター講師.2012 年より東大大学院工学系研 究科准教授.化合物半導体光デバイス,光 スイッチ,偏波制御素子,プラズモニクス, 光インタコネクト技術の研究に従事.2005 年 IEEE/LEOS Graduate Student Award,2006 年エリクソン・ヤングサイ エンティストアワード,2009 年電子情報通信学会フォトニック ネットワーク研究賞受賞.電子情報通信学会,応用物理学会, IEEE各会員. 中野 義昭 (正員:フェロー) 1982年東大・工・電子卒,1984 年同大 学院修士課程了,1987 年同博士課程了,工 学博士.同年東大・工・電子助手,1988 年 同講師,1992 年同助教授,2000 年同教 授,現在に至る.この間,1992 年カリフォ ルニア大学サンタバーバラ校客員助教授. 2002-2012年東大・先端科学技術研究センター教授,2010-2012 年同センター所長を歴任.分布帰還型半導体レーザの研究,半 導体光スイッチ・デジタル光デバイスの研究,モノリシック光 集積回路の研究,化合物半導体エピタキシャル成長/プロセス 技術の研究,高効率太陽電池の研究,ソーラー燃料の研究に従 事.応用物理学会光学論文賞,市村学術賞,産学官連携内閣総 理大臣賞,電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ賞 などを受賞.電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ 前会長,応用物理学会フェロー,元 APEX/JJAP 誌編集長, IEEE会員,IEEE LEOS 元理事,エレクトロニクス実装学 会,電気学会,OSA 各会員.

図 1 ハーフリッジ型 InP 偏波変換器 Fig. 1 Schematic of half-ridge InP polarization
Fig. 9 Architectures and functions of proposed polarization controller/modulator. [20]
図 10 偏波制御・変調回路の原理
図 14 8 値ストークスベクトル変調器の構成例 Fig. 14 Architectures of octal Stokes vector modulator.
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参照

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