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バリ・チューバアンサンブルに関する一考察(その6) ―バリ・チューバの管楽器教育に伴う選曲と楽曲的特徴(1)―

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Academic year: 2021

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バリ・チューバアンサンブルに関する一考察(その6)

―バリ・チューバの管楽器教育に伴う選曲と楽曲的特徴(1)―

A consideration on The Bari-Tuba Ensemble(6)

Characteristic of selection of music with the wind instrument education of the

Bari-Tuba and the musical piece (1)

髙島 章悟

†   

TAKASHIMA Shogo

概要(Summary)

 4人の奏者との個人レッスン及びグループレッスンを重ねたことにより得ることができた要素 と、アンサンブルコンテストの規定に基づき、また様々な形態のアンサンブルを鑑賞し、情報収集 を行った結果、7つの楽曲を選択した。本稿ではそれらの楽曲に関し楽譜を通じて、選曲するため の重要な要素が組み込まれている部分を引き出しながら、分析的要素を取り入れて説明する。第一 編目はマルティノ作曲:ユーフォニアム・チューバのためのファンタジー、青島広志作曲:グノー ム、シューリー作曲:チェロキーについてである。 キーワード:和音,音程,検証,結果,小節

1.はじめに

 筆者は、その1からその4において楽器演奏の基礎的な指導についての検証、和音の響きを主体 としたレッスンの構築を確立し、その5では楽曲選択(選曲)する上で、アンサンブルコンテスト における様々な演奏形態と楽曲を調査し、その特徴を見つけ出した。2001年度より2010年度まで の間、8度エントリーした際に、筆者と奏者は選曲会議において、幾つか挙がった候補曲を厳密に 吟味し、7曲(2001年度、2007年度は同じ楽曲)を選択することができた。本稿では、それらの 楽曲の特徴に関して、先ずその5の3.情報を収集するにおいて見つけ出すことができた下記の① から⑤の要素と照らし合わせた。 ① 急と緩を組み合わせた構成で緩急の転換が分かりやすい(例えば急-緩-急、緩-急-緩などの 三部構成) ② 急と緩それぞれの中に聴かせどころ(山場、クライマックス的フレーズ)がある ③ マルカート奏法とレガート奏法の違いが鮮明である ④ 高音域から低音域まで合奏体に厚みがある ⑤ フォルテ系の表現とピアノ系の表現の違いが鮮明である  次に、その4に該当する有効的な和音の響きがどのように取り入れられているか検証した。これ らに関して、楽譜を取り入れて楽曲の中での特徴を述べる。 † 宇都宮大学 教育学部(連絡先:[email protected] 髙島章悟)

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2.マルティノ作曲:ユーフォニアム・チューバのためのファンタジーの場合

  冒 頭 部 分 ( 1 小 節 目 か ら 8 小 節 目 ) で は A l l e g r o ( ♩ = 1 3 2 ) に 指 定 さ れ 、 E u p h o n i u m I 、 EuphoniumⅡがユニゾン、TubaⅠ、TubaⅡがオクターヴで進行している。この段階でTubaの動き がその4の4.8度(オクターヴ)の音程にて示した検証結果に当てはまると判断した。そして、 アクセント奏法、スタッカート奏法と拍子の変化(5/4,4/4,3/8,5/4,7/8,4/4)により4パートの 同じ動きが立体的に表現され、インパクトの強いものになると感じた。以上のことからこの部分は ②にもあてはまる(譜例1)。 譜例1  32小節目から61小節目にかけてはSloewr(♩=120)と指定されている。Euphoniumの旋律部が二 拍三連を有効にするレガート奏法であること、またTubaの伴奏部が二分音符を中心とした動きに 切り替わっていることにより、二分の二拍子の緩やかな流れを感じさせる。 40小節目から45小節目のTubaの動きに着目すると、TubaⅠの音符を軸にTubaⅡの音符が3度の 音程を1オクターヴ上げた書法を取っていることがわかる。これはその4の2.3度の音程、2− 2 第3音を1オクターヴ上げた場合にて示した結果にあてはまる(譜例2)。61小節目では Euphonium I,ⅡがGisとEisの3度の音程、Tuba I,ⅡがGisとCisの5度の音程で解決し、その4の 2.3度の音程、2−1 長3度、短3度の音程における譜例10の検証結果および3.5度の音 程の譜例17における検証結果にあてはまる。さらにTubaⅡが3拍目に単独で1小節目の音と同じ Cisの音をフェルマータで再度演奏することにより、和音を強調する形となる。さらにpで表現する ことで、その印象を強くするものとなり、この場面を締めくくる(譜例3)。 譜例2      譜例3        62小節目からTempoⅠ(♩=132)となる。四分の三拍子の前奏的部分から68小節目の四分の四拍 子へと移り変わり、それ以降次のテンポ変化まで、全てのパートが旋律を持ち回るように演奏する。 各奏者の音色から出てくるフレーズの変化を表現することで色彩感が生まれ、また、伴奏パートと 合わせることで立体感が引き出される。104小節目の2拍目から4拍目にかけてTuba I,Ⅱの四分音

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符が5度の動きで書かれており、そこにEuphoniumⅡが同じ四分音符の動きで重なっている。不 協 和 音 と 純 正 和 音 が f で 表 現 さ れ る こ と に よ り 、 印 象 が 強 く な る ( 譜 例 4 ) 。 こ れ は 、 後 に Rall,dim....molto....から109小節目、110小節目のVery Slowにかけて、Tuba I,ⅡがH音とC音の8度 に変わり落ち着くまでの動きを引き立たせるという効果を生み出している(譜例5)。 譜例4       譜例5            Very Slow以降134小節目のTempoⅠに至るまでの間、旋律間の節目にはTubaⅠの音符を軸に、 TubaⅡの音符に3度の音程を1オクターヴ上げた書法と5度の音程が用いられ、旋律を引き立た せている。特に119小節目から128小節目ではEuphoniumⅡの主旋律とEuphonium Iの副旋律が交 互に動き、125小節目ではEuphoniumの旋律と副旋律が3度で同じ動きをしている。一方、Tuba ⅡのF音、TubaⅠのAs音は3度を1オクターヴ上げている。それにより、響きに厚みが出て Euphoniumの旋律が盛り上がりを見せ、緩やかに楽曲全体のクライマックスを演出している、即 ち聴かせどころであり②に当てはまると筆者は判断した(譜例6)。 譜例6             134小節目のTempoⅠからは、八分の七拍子の1拍目と4拍目にアクセント奏法を取り入れるこ とにより、拍子の持つ軽快さと鋭さを演出した前奏的な動きから始まっている。その後161小節目 までの間、八分の七拍子と四分の四拍子が交互に出てくる中、154小節目及び155小節目の2小節 間のみ八分の六拍子で書かれている。曲全体を通しても八分の六拍子はこの部分のみである。 EuphoniumⅠ,Ⅱの旋律部が3度及び4度の純正和音で進行し、TubaⅡの動きに対してTubaⅠが3 度を1オクターヴ上げて進行している(譜例7)。それにより八分の六拍子が印象の強いものとな り、八分の七拍子と四分の四拍子を引き立たせ、飽きさせない。その後は四分の四拍子の中に八分 の七拍子が2小節組み込まれている。176小節目ではSlowerのレガート奏法からアクセントを用い たマルカート奏法に切り替わり、32小節目からの動きを再現し(譜例8)、183小節目と終わりの 184小節目で最初と同様、オクターヴを使ったユニゾンで勢いよく締めくくる(譜例9)。  

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譜例7      譜例8                譜例9

3.青島広志作曲:グノーム(ユーフォニアム、チューバ・アンサンブルのための)の場合

 1楽章(Allegro agitato)の冒頭部分から4小節目にかけての伴奏が、1拍目が四分音符の長三 和音(EuphoniumⅡがAs 音、Tuba IがC音、 TubaⅡがF音)で進行している。3パートが同じ音程、 同じ和音をスフォルツァートの山型アクセントで4回に渡り繰り返し演奏する。TubaⅠ,Ⅱが三和 音の第5音と第1音、EuphoniumⅡが第3音を担当していることから、その4の5.四人の奏者 による和音練習の確立、5−1 バランスを掴む練習における譜例22の結果に当てはまる。これ により、鮮明な和音の響きに厚みが加わり、EuphoniumⅠの旋律を引き立たせ、インパクトの強 い前奏となっている(譜例10)。 譜例10  62小節目、63小節目ではEuphoniumⅠとTubaⅡ、EuphoniumⅡとTubaⅠがそれぞれ同じ動き のオクターヴで進行し、64小節目、65小節目で3度の進行に切り替わっている。ここでは2つの 異なる楽器同士での組み合わせとなっているため、再度検証を行った。その結果、TubaⅠがバ

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ス・チューバ(F管)を使用しており、コントラバスチューバよりも音質がユーフォニアムにより 近いことから、その4の2.3度の音程と、その4の4.8度(オクターヴ)の音程にあてはまる と判断した(譜例11)。この動きがクレッシェンドで演奏される。その後、68小節目に出てくるC 音とG音の5度の音程を経て、69小節目におけるTubaⅠ,ⅡのC音のユニゾンで楽章を締めくくり、 attaccaにより2楽章(Allegro vivace)へと移行する(譜例12)。 譜例11       譜例12  2楽章では無調の動きが続く中、四分の三拍子の1拍目でユニゾンあるいはオクターヴを使用し ているフレーズが3度登場する。それらがスフォルツァート、山型アクセントで表現されているこ とにより、この楽章の主題的要素として存在していると筆者は考えた(譜例13、譜例14、譜例 15)。 譜例13 譜例14

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譜例15  3楽章(Presto)4小節間のトリル奏法の後、5小節目(Vivace)からはTubaⅡによる八分音符 の山型アクセントと、EuphoniumⅠ,Ⅱのマウスピースを手で叩く奏法(2回目のみ)が加わり(譜例 16)、9小節目にTubaⅠがユニゾンで加わる(譜例17)。13小節目2拍目からは8度(オクター ヴ)での動きに変化し(譜例18)、16小節目でのクレッシェンドの後、EuphoniumⅠ,Ⅱが音程の ついた十六分音符に切り替わり同じ動きとなる。さらに、EuphoniumⅠ,Ⅱのフレーズの最初と5 つ目のE音が8度(オクターヴ)となっており、メロディに厚みが出る。19小節目でTuba I,Ⅱが再 びユニゾンとなる(譜例19)。拍や小節によりズレた形で書かれており、これらの動きとその変 化が、ユニークで面白味があると筆者は判断した。 譜例16          譜例17 譜例18        譜例19      これらの動きは、74小節目からにおいても再現される。その後、TubaⅡのCadenzaが訪れ、こ の楽曲の大きな聴かせどころとして重要な役割を担い(譜例20)、87小節目から1楽章の冒頭部

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分と終わりの部分が再現され、楽曲を締めくくる。 譜例20

4.シューリー作曲:チェロキー(ユーフォニアム・チューバのための)の場合

 冒頭ではTubaⅡのD音を軸にTuba Iが8度(オクターヴ)、EuphoniumⅡが5度のA音、 EuphoniumⅠが3度のFis音で、バリ・チューバアンサンブルの演奏形態として安定感のある長三 和音の響きから始まる。2小節目ではEuphoniumⅠ,ⅡおよびTuba I,Ⅱそれぞれがオクターヴの関 係、3小節目の四分音符は5度の関係にあり、フェルマータでGraveのフレーズを締めくくってい る(譜例21)。そして4小節目の弱起(アウフタクト)を含む四分の三拍子(Andante moderato maestoso)からはEuphoniumⅠのメロディラインに対してEuphoniumⅡ、Tuba I,Ⅱのコード、9 小節目のアウフタクトを含む1小節ある四分の四拍子からEuphoniumⅡがメロディを演奏し、代 わってEuphoniumⅠがTuba I,Ⅱと共にコードに移り変わる。12小節目のアウフタクトで、再びメ ロディがEuphoniumⅡからEuphoniumⅠに戻る。コードに着目すると、Tuba I,Ⅱが5度の関係の 時はEuphoniumがTubaⅡを基準にオクターヴの関係にあり、Tuba I,Ⅱが8度(オクターヴ)の場 合は5度の関係となっていることがわかる(譜例22)。 譜例21 譜例22

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 21小節目からはテンポが変化(Allegretto)すると同時に、拍子の変化も激しくなる。最初の四 分の一拍子のアウフタクト的要素と2小節間の八分の七拍子によるマルカート奏法、四分の三拍子 と八分の五拍子を組み込んだレガート奏法の対比が鮮明に描かれていることが分かる(譜例23)。 この書法は37小節目からも再び登場する。 譜例23  53小節目から56小節目にかけてのModeratoでは、EuphoniumⅠのメロディラインに対して、 EuphoniumⅡ、Tuba I,Ⅱのコードは、(56小節目にある1拍目のTuba I,Ⅱの四分音符がオクター ヴの関係になっているところ以外は)Tuba Iを軸にTubaⅡが5度、EuphoniumⅡが8度(オクタ ーヴ)の関係で一貫している(譜例24)。また、58小節目から63小節目のAndanteも、61小節目 3拍目の二分音符がTuba I,Ⅱにより8度(オクターヴ)で演奏される以外は同様である。 譜例24  64小節目からのAllegroでは、前に登場したAllegrettoと異なり四分の四拍子のまま進行し、Tuba I,Ⅱによる旋律に切り替わる。67小節目まではTuba Iの旋律に対し、TubaⅡを軸としてEuphonium Ⅱが常に5度で進行し、EuphoniumⅠが8度またはその3度上を演奏する形となっている。この ことにより、常に伴奏の安定感が維持されていると言える。続いて68小節目から73小節目にかけ てTubaⅡに旋律が移動し、Tuba Iの伴奏を軸にEuphoniumⅡが3度、EuphoniumⅠが5度で始ま っている。これはTuba I の音程がEuphoniumの音域に近づき、その分倍音が少ないことから、有

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効的な和音が出ると筆者は判断した。後に70小節目では音が重なり(1度)、72小節目では5度 の動きとなる(譜例25)。 譜例25  78小節目では58小節目が、84小節目では53小節目がそれぞれ再現され(譜例26、譜例27)、 88小節目からAdagioによるChoraleが演奏される。95小節目にかけては23小節目より31小節目 (譜例28)、96及び97小節目には55、56小節目(譜例29)、98小節目には3小節目の要素が組 み込まれている。ここでは、Tuba I,Ⅱが5度、8度、その上で3度に構成されていることがわかる。 また最後の小節ではTubaⅡによって、この楽曲における最低音のD音を演奏されることにより、最 も重厚感を醸し出した終止となっている(譜例30)。 譜例26(左が78小節目、右が58小節目)     譜例27(左が84小節目、右が53小節目)       譜例28(上が88小節目より95小節目まで、下が23小節目より31小節目まで)

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譜例29(左が96,97小節目、右が55,56小節目)     譜例30(左が98小節目、右が3小節目)       参考・引用文献

Martino,Ralph. FANTASY for Tuba-Euphonium Quartet.(Washington DC: Manduca Music

Publications,1990)pp.1-6

青島広志『グノーム ∼ユーフォニアム、テューバ・アンサンブルのための∼』(

TOSHIBA EMI

MUSIC ,1992)pp.1-12

Schooley, John. CHEROKEE For Tuba Quartet,(Nelson:HEILMAN MUSIC,1984

)pp.3-7

髙島章悟「バリ・チューバアンサンブルに関する一考察(その1)-日本の吹奏楽事情と個人レッ スンを中心に-」『宇都宮大学教育学部紀要』第62号 第1部、2012 髙島章悟「バリ・チューバアンサンブルに関する一考察(その2)-個人レッスンと教則本の用途 に関連して-」『宇都宮大学教育学部紀要』第63号 第1部、2013 髙島章悟「バリ・チューバアンサンブルに関する一考察(その3-チューニングを主体としたグル ープレッスンの構築に着目して-)」『宇都宮大学教育学部紀要』第64号 第1部、2014 髙島章悟「バリ・チューバアンサンブルに関する一考察(その4)-和音の響きを主体としたレッ スンの構築に着目して-」『宇都宮大学教育学部紀要』第65号 第1部、2015 髙島章悟「バリ・チューバアンサンブルに関する一考察(その5)-楽曲選択の重要性に着目して -」『宇都宮大学教育学部紀要』第66号 第1部、2016 平成28年9月29日受理

参照

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