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地域包括支援センター職員と民生委員の関係に関する研究 : パートナー関係構築のプロセス

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Academic year: 2021

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(1)<論文>. 地域包括支援センター職員と民生委員の 関係に関する研究 〜パートナー関係構築のプロセス〜. The relationship between Staf f of Comprehensive Community Suppor t Centers and Minseiiin ~A process of the partnerrelated construction~. 横浜国立大学大学院 環境情報学府. Kichinosuke MATSUZAKI Graduate School of Environment and Information Sciences, Yokohama National University. 松崎 吉之助. 博士課程後期 . 要旨 本研究は地域包括支援センター職員と民生委員がどのように関係を構築しているのか、そのプロセスを明らかにすることを目的 としている。地域包括支援センターの職員のインタビューを関係の変化に着目しながら帰納的に分析し仮説モデルを生成した。 地域包括支援センターは地域の多様な社会資源と協働し個別相談からネットワーク構築業務などを行っており、その中でも特に 民生委員との関わりが深い。しかし民生委員の位置付けはボランティアであり、自身が地域住民でもあるという立場の問題や、専 門的教育や知識の不足等が原因となる活動のしにくさがあるとされ、なり手不足も問題となっている。そのため専門機関である地 域包括支援センターと民生委員の関係を改めて問い直す必要が生じている。 地域包括支援センターの職員から見た民生委員の関係は隣人期、知人期、パートナー期の3つのステージに分けられる。隣 人期は民生委員に対する理解が進んでいない。そのため、民生委員からの相談、依頼の意図を十分に理解することができず対 応に苦慮する。知人期は一段と相互理解が深まる時期となる。パートナー期は相互理解を前提に、お互いをサポートし合える関 係となる。民生委員という社会資源を「活用」するという意識を越え、支え合うという関係を構築する必要性が示された。. SUMMARY This research project will clarify the process involved when Staff of Comprehensive Community Support Centers build the relationship with Minsei-iin, and create a hypothesis model that analyzed interviews of the staff inductively. Support Centers cooperate with a variety of social resources in their communities and build networks through individual consultation. These activities closely involve Minsei-iin. However, Minsei-iin presents several challenges, as their position as community citizens may be problematic, and their potential lack of specialized knowledge or training can make cooperative activities difficult. It is necessary to regard a relationship of the minsei-iin as Support Centers. From the staff’s perspective, the relationship with Minsei-iin can be divided into three stages: Neighbor stage, Acquaintance stage and Partner stage. Neighbor stage: A sense of understanding between Minsei-iin and staff at the support center has not yet developed. Acquaintance stage: A mutual understanding has formed between Minsei-iin and staff at the support center. Partner stage: A sense of responsibility to support the Minsei-iin develops and the cooperative sentiment to help each other strengthens between staff at the support center and Minsei-iin. Minsei-iin are not the object of the practical use. It is necessary to build the relationship to be able to support mutually. 1.研究背景. ン(社会保障国民会議 2008)では 2025 年には現状 のサービス内容の場合で 19 兆円、サービスを拡大. 2005 年 に 20 % を 越 え た 我 が 国 の 高 齢 化 率 は、. した場合で最大 24 兆円に達すると予想されており、. 2025 年には 30%を超えると予想されている。高齢. 介護保険制度そのものの「持続可能性確保」が大き. 者の増加とともに何らかの支援を必要とする要援護. な課題となっている(地域包括ケア研究会 2010:. 高齢者の数も増えている。介護保険制度が施行され. 53)。また一方で「単独および高齢者夫婦世帯の増加」. た 2000 年当時は全高齢者の 10%程度(218 万人). 「認知症高齢者の増加」「家族機能の低下」「地域の. で あ っ た 要 介 護( 要 支 援 ) 認 定 者 は 2015 年 に は. 相互扶助の弱体化」なども指摘されており(長寿医. 17%(576 万人)、2025 年には 20%(755 万人)と. 療開発センター 2010:9)、高齢者ケアをめぐる状況. 予想される。介護保険給付費の増加も著しく、2000. は厳しさを増している。こうした状況に対応するた. 年の 3.6 兆円から 2010 年には 7.3 兆円. 1). めに国は「地域包括ケア」2)を推進している。. となってい. 「地域包括ケア」は「地域住民が住み慣れら地域. る(地域包括ケア研究会 2010:4)。シミュレーショ. 11. 地域包括支援センター職員と民生委員の関係に関する研究 〜パートナー関係構築のプロセス〜.

(2) で安心して尊厳あるその人らしい生活を継続するこ. どでその存在が改めて世間から注目されており(朝. とができるように、介護保険制度による公的サービ. 日新聞 2011 年 1 月 17 日)、現任者への負担増が懸. スのみならず、地域のフォーマルやインフォーマル. 念されている。. な多様な社会資源を本人が活用できるように、包. 平成 23 年の改正介護保険法で示されたとおり、. 括的および継続的に支援すること」(長寿社会開発. 地域包括支援センターはこれまで以上に民生委員と. センター 2010:9)とされている。 「地域包括ケア」. 連携し、その関係を深める必要がある。しかしその. の背景には増加の一途をたどる介護保険給付費の抑. ことが単に民生委員の負担を強いるだけでは、さら. 制と、その人らしい地域での生活を実現するという. に民生委員を追い詰めることになる。民生委員の負. ノーマライゼーションの視点が影響している。「地. 担増はさらなる後継者不足に結びつき、結果として. 域包括ケア」の実践部隊として 2006 年に地域包括. 地域福祉基盤の崩壊に繋がりかねない。民生委員を. 支援センターが設置された。地域包括支援センター. 取り巻く状況なども踏まえ、地域包括支援センター. は高齢者個人や家族の個別相談等に対応するほか、. と民生委員の新たな関係のあり方についても模索し. 地域での見守りネットワーク構築など幅広い業務を. ていく必要がある。先行研究では地域包括支援セン. 3). 行っている 。地域包括支援センターにはこれらの. ターが民生委員等の地域社会資源と「ネットワーク」. 業務を行うに当たり、地域に存在する様々な社会資. を形成する際の課題や方法が検討されている(白澤. 源と連携・協働することが求められる。数多く存在. ら 2010:村山ら 2010)。. する地域の社会資源の中で、地域包括支援センター. しかしこれらの先行研究は「ネットワーク」形成の. は特に民生委員との関わりが深い(地域保健研究会. 手法の解明が目的であり、「ネットワーク」を構築. 2009:神奈川県社会福祉士会 2007) 。地域包括支援. する前に考慮すべき地域包括支援センターと民生委. センターと民生委員は根拠法も異なるが、ともに「あ. 員の関係のあり方について言及しているものではな. る特定の地域の中で、住民のさまざまな相談・課題. い。また創設から間もない地域包括支援センターと. に対応する」という点では非常に密接な関係にあり、. 民生委員の関係のあり方について論じた先行研究も. 地域包括支援センターにとって民生委員は不可欠な. 見当たらない。そこで本研究は地域包括支援セン. 社会資源である。2011 年 6 月に改正された介護保険. ターと民生委員の関係のあり方に着目する。. 法では地域包括支援センターの機能強化が示され、 連携を図る社会資源として民生委員が明確に位置づ. 2.研究目的. けられた4)(介護保険法第 115 条の 46 第 5 項)。地 域包括支援センターにとって、民生委員との連携強 化は大きな課題である。. 民生委員と連携強化については介護保険法で明記. しかしながら民生委員を取り巻く状況は年々厳し. されたが「望ましい関係像」や関係構築のための「具. さを増しており、先行研究からも民生委員が地域. 体的方法」については特に示されていない。しかし. で活動することが非常に困難であることが明らか. 設置から 5 年が経過した地域包括支援センターの実. になっている(工藤 2005:三橋ら 2008:森 2010)。. 践現場では民生委員との日々のやりとりの中で、関. 先行研究から民生委員活動の困難性を整理すると①. 係のあり方の模索を含め、関係構築のための様々な. 「専門的判断を迫られる場面の増加」②「対応困難. 工夫が行われていると考えられる。こうした取り組. な対象者への関わりの増加」③「活動範囲の曖昧さ. みは職員個人の実践知のレベルでとどまっており、. による、行きすぎた関わり」④「地域住民からの誤. 第三者が参考にできる形でまとまってはいない。こ. 解や批判」⑤「専門的教育や知識の不足」等があげ. れらの日々のやりとりの中に、これからの地域包括. られる。こうした事情などに加え、民生委員自身の. 支援センターと民生委員の関係構築を考える際に有. 高齢化も進み、民生委員の後継者不足も全国的にも. 効な視点や方法または課題を見つけることができる. 顕著である(朝日新聞 2010 年 12 月 5 日) 。また民. と考える。そこで本研究では地域包括支援センター. 生委員は高齢者の他に障害者、児童、低所得者など. で一定期間業務を行っている職員にインタビューを. その支援対象は幅広い(全国社会福祉協議会 2010)。. 行い、地域包括支援センター職員が民生委員とどの. 近年は「不明高齢者問題」「災害時の安否確認」な. ような関係を構築し、またその関係構築はどのよう. 論文. 12.

(3) に進められているのかを帰納的に分析し、探索的仮. 生活背景が民生委員活動にも影響する。民生委員と. 説モデルを生成することを目的とする。この探索的. しての役割は同じでも、すべての民生委員が同等に. 仮説モデルで明らかになった関係構築についての課. 活動に従事できるわけではない6)。その為、民生委. 題と具体的な視点や方法は地域包括支援センターの. 員との関係構築を分析する際には、個々の民生委員. 新人研修等で活用することができると考える。. との関係に着目する必要があると考えられる。そこ で本研究では地域包括支援センター職員と個々の民. 3.研究対象. 生委員の関係に焦点を絞る。. 地域包括支援センターと民生委員の関係について. 4.対象データ及び倫理的配慮. は地域包括支援センターと民生委員の組織である民 生委員児童委員協議会(以下民児協)の関係として. 以下の条件を満たす 6 名(社会福祉士 3 名、主任. 捉えることも可能である。しかし、地域包括支援セ. 介護支援専門員 2 名、看護師 1 名)からのデータを. ンターと民児協が関係を構築することと、地域包括. 分析対象とした。①委託型地域包括支援センター職. 支援センター職員が個々の民生委員と関係を構築す. 員②地域包括支援センター職員としての勤務年数が. ることは必ずしも一致しない。民生委員は決まった. 4年以上③民生委員の会合等に定期的に参加し、個. 5). 世帯数ごとに 1 人配置されている 。その為、地域. 別支援ケースにおいても民生委員と連携・協働した. 包括支援センターの職員が実際に地域で要援護高齢. 経験をもつ④筆者が定期的に会うことができる。地. 者の課題や相談と向き合うときに、連携・協働する. 域包括支援センターには委託型と行政の直営型があ. 民生委員はその要援護高齢者の居住地で特定され. る7)。本研究では委託型の地域包括支援センター職. る。. 員を対象とした。その理由としては、行政直営型の. 民生委員との連携・協働は欠かせないが、前提と. 職員は、地域包括支援センターの職員であると同時. して地域包括支援センター職員と個々の民生委員と. に行政の職員であるため、行政職員と民生委員の関. の繋がりを強化することが必要となる。また民生委. 係としても捉えることが可能となるからである。調. 員は資格試験制度を基盤としている国家資格などと. 査協力者には口頭と文書でデータの取り扱い等につ. 比べて、年齢、性別、家族の有無、仕事の有無、社. いて説明し、同意書を得た。. 会経験、地域での生活歴など様々な民生委員個人の. 表1:調査協力者一覧 ※ 1、※ 2 インタビュー実施日における年数 ※ 3 在宅介護支援センターは老人福祉法に基づき平成 2 年に設置された、地域の高齢者・介護に関する総合相談 センター。地域包括支援センター設置に伴い、多くの在宅介護支援センターが地域包括支援センターへ移行した。. 13. 地域包括支援センター職員と民生委員の関係に関する研究 〜パートナー関係構築のプロセス〜.

(4) 5.データ収集方法. 7.分析手順. インタビューは半構造化面接で各 60 分〜 90 分. M-GTA の手順に沿って、得られたデータの中で. 行った。了解を得て IC レコーダーで録音し、録音. 特に内容が豊かであると思われるケースから分析を. したデータは逐語でテキスト化した。インタビュー. 開始した。本研究のリサーチクエスチョンは「地. 実施期間は平成 22 年 10 月〜平成 23 年 4 月である。. 域包括支援センター職員は個々の民生委員とどの. 本研究のリサーチクエスチョンは「地域包括支援. ような関係をどのように構築しているのか」であ. センター職員は個々の民生委員とどのような関係. る。このリサーチクエスチョンを元にデータ収集を. をどのように構築しているのか」である。地域包. 行うが、M-GTA ではさらにデータ分析に際し、分. 括支援センターと民生委員の関係について具体的. 析テーマを設定する。分析テーマとは M-GTA の手. な「望ましい関係像」や関係構築のための「具体的. 法の一つであり「問題意識、関心を確認し、それら. 方法」が示されているわけではないが、地域包括支. に沿って解釈が行えるように操作化していくことと. 援センター職員と個々の民生委員の普段のやりとり. いえる」(木下 2003:134)。具体的にはデータが得. の中に、関係構築のための様々な戦略が意識・無意. られた後でデータ全体を見渡し、データが語ってい. 識の下に行われていると考えられる。その為インタ. ることが何かを明らかにした上で、データ解釈の着. ビューガイドは個々の民生委員とのやりとりがより. 目点を定めることである。データからは主に個々の. 明確に確認できるように、民生委員との連携・協働. 民生委員とお互いにサポートできる関係構築を目指. において「印象的な事例」 「期待すること」 「困った. す地域包括支援センター職員の姿が豊富に語られて. こと」 「気をつけていること」 「民生委員との関係が. いた。最初からお互いにサポートできる関係にある. どのように変化したか」等とした。. わけではなく、様々なやりとりやイベントなどを経 て、お互いにサポートできる関係に到達する。この サポートし合える関係を本研究では「パートナー関. 6.分析方法. 係」8)と置き換え、最終的に分析テーマを「地域包 括支援センター職員による民生委員とのパートナー. 本研究では木下(木下 2003;2007)の修正版グラ. 関係構築のプロセス」とした。設定された分析テー. ンデッドセオリーアプローチ(以下 M-GTA とする). マから意味があるデータに注目しながら分析を行っ. を分析手法として採用した。本研究は「地域包括支. た。. 援センター職員が個々の民生委員とどのような関係. M-GTA で は 分 析 の 最 小 単 位 が 概 念 で あ る。. を、どのように構築しているのか」を明らかにする. M-GTA に お け る 概 念 と は 木 下( 木 下 2003:192). ことを目的としている。地域包括支援センター職員. によると「データ解釈から生成された仮説的なもの」. と個々の民生委員の関係は地域包括支援センター職. 「ひとつの概念が厳密にひとつの特定の現象を説明. 員から一方的な働きかけで成立するものではない。. するという自然科学的理論における概念とは、異な. 地域包括支援センター職員からの働きかけに対する. る種類のものである」とされている。そのため、既. 民生委員の反応や、民生委員からの働きかけなども. 存の概念からの転用ではなく、あくまでも得られた. 複雑に絡み合う、相互作用プロセスと捉えられる。. データに即して「自分で概念を命名するのが最善」. 本研究はこうした人間同士の複雑な相互作用からな. と説明しており、本研究でも M-GTA の手法に則り. るプロセスを捉え、その結果を実践現場で参考とな. 概念生成を行った。概念生成には分析ワークシート. るような理論を生成することを目的としている。そ. を活用し帰納的に生成した。M-GTA では一定の概. の為、人間の相互作用の変化の説明力に優れており、. 念生成後に、グルーピングするのではなく、「ひと. なおかつ「応用者」による実践での応用を強く意識. つの概念を基点にそれと関係のあるもう一つの概念. した手法である M-GTA が本研究の手法としても適. を見出していく作業を繰り返す」(木下 2003:211) 。. していると考えた。. 例えば本研究ではデータの中で民生委員との関係に おいて、相互に支え合う状態を示す例が発見された. 論文. 14.

(5) 図1:地域包括支援センター職員による民生委員とのパートナー関係構築プロセス. が、次に相互に支え合えない状態を示すものがない. ゴリーが生成された。【関係変化】は地域包括支援. かデータの中で検討し、さらに他の状態もあるのか. センター職員からみた民生委員との関係の状態を示. どうかも検討した。こうした比較を繰り返しながら. すカテゴリーで単に顔を知っている関係から、お. 概念を生成した。また同時に複数の概念から成るカ. 互いを支えあう関係へと進化するプロセスが示され. テゴリーを生成し、カテゴリー間の相互の関係の分. た。地域包括支援センターの職員から見た民生委員. 析を行い、結果をストーリーラインにまとめた。. の関係は単なる顔見知りの関係であると言える『隣 人期』9)から始まり、相互の理解を促進させ、民生 委員からの評価を得る『知人期』10)を経て、お互い. 8.分析結果. に支えあう関係である『パートナー期』へと変化す る。しかし民生委員の交代などがあると、再び『隣. 分析の結果、図1のような理論図が得られた.概. 人期』に戻り、一から関係性を構築していくことに. 念は『』 、サブカテゴリーは〈〉、カテゴリーは【】. なる。この【関係変化】は地域包括支援センター職. と記す。またデータ該当箇所(バリエーション)の. 員が個々の民生委員と具体的な課題・相談等に取り. 一部を「下線・イタリック体部分」内に示した。以. 組む際の【対応変化】に影響を受ける。【対応変化】. 下図1の内容について述べる。なお、ここでの「民. では民生委員に対しての理解が不十分であり、民生. 生委員」とは民児協などの組織ではなく「個々の民. 委員からの理解も得られていない状態では〈対応不. 生委員」のことである。. 十分〉となるが〈個人理解〉〈理解を求める〉 〈期待 に応える〉などの対応を経て、最終的には民生委員. 全体のストーリーライン. の力も、地域包括支援センターの力も〈お互いに活 かす〉ことができるようになるプロセスである。 【下. 【関係変化】【対応変化】【下準備】の 3 つのカテ. 15. 地域包括支援センター職員と民生委員の関係に関する研究 〜パートナー関係構築のプロセス〜.

(6) 準備】は地域包括支援センター職員が民生委員と. らの話を聞いていいんだろうかって。たぶんお互い. 日々接する際の関わり方、スタンスであり、【対応. の査定はたぶんしてると思うんだけど。その中で. 変化】を促す際の準備として位置付けることができ. OK、この人には言っても大丈夫なんだなっていう. る。以下カテゴリーごとに記述する。. 信頼が民生委員さんから包括にできつつあった(N o 1.9). 【関係変化】 『パートナー期』…民生委員を社会資源として活用. 『隣人期』…地域包括支援センター職員と民生委員. するという視点だけではなく、民生委員を支えると. が地域での様々な会合などで顔を合わせる機会は多. いう意識が芽生える。また民生委員の力を活用する. い。そのため地域包括支援センターの職員は民生委. 際も、民生委員の実情にあった形で依頼できる。そ. 員の存在については理解している。しかし、その関. の結果民生委員からのサポートも得やすくなり、相. 係は単に顔を知っている程度である。顔を知ってい. 互に支えあうという関係になる。. ることが、地域包括支援センター職員にとって、地 域での支援活動における有効な社会資源であること. ・今は、かえって「私はここをします。民生さんの. は全く別のことである。民生委員から信頼されてい. ほうには申し訳ないけどここをお願いするね。それ. るという実感を持つこともできない。お互いに近く. をすることによって、こうやった形の支援をしてい. で活動しながら、存在を遠くに感じる。. くんだよ」っていうのが、こう道筋がある程度立て られるようになってからは、それほど民生さんにお. ・逆にそういう民生委員さんって関係性も持ててい. 電話するときに、こう変なところに力を入れてとい. ないわけじゃないですか。でそう関係がない全く、. うことは、今、感じてはない。(No5.8). こうあんまりお話もしたことがない民生委員さんに 対して、あんたらのところ何も課題ないのって、ど. ・今はお互いの顔の見える落ち着いた関係性ができ. んなにきれいな言葉に変えたってむかつくだけで. てきて、ここまではできるよ、ここからはできない. しょ。言われたらNo 3.16). よ。できないけど、じゃあ一緒に考えますよ、と いう姿勢があるのが伝わってきているかな。(No1.. 『知人期』…単なる顔見知りの状態から相互理解が. 18). 進んだ時期。民生委員対する理解が深まり、依頼や 相談に対しても専門職として対応できる。しかし民. 『交代による終了』…民生委員は1期3年の任期と. 生委員の強みを活用するまでには至らず。また民生. なる。民生委員交代の後は、新しい民生委員と相互. 委員からも声をかけてもらうことが増える。地域包. 理解を深め、パートナー関係を構築する必要がある。. 括支援センターから民生委員に声をかけても警戒さ. 民生委員は資格試験制度ではないため、民生委員に. れることもなく、存在を認めてもらえているという. 選出された時点で誰もが同じ知識、技術、価値観な. 実感を持つことができる。具体的な課題・相談の有. どを有しているわけではない。また地域での生活者. 無に関わらず気軽に声を掛け合うことができる。. としての背景も個々人で全く異なる。その為、前任 者との関係がそのまま後任者との間に成り立つとは. ・以前から担当してる方と話していると、それを待っ. 言い難い。そのため民生委員が交代した場合は『隣. て声をかけてくれる民生さんが出てきたので、そこ. 人期』に戻り最初から関係を深めていく必要がある。. で話してると「あっ、そうだ、あのケース言っとこ う」とか、あの会議始まったから、廊下で立ち話を. ・必ず 11 月のときには行って。やめる方にありがと. して「実はこういったケースはどこにつなげばいい. うと言ってきて。12 月の初めにまた新しい方に挨拶. んだろうか」とかっていうお話をいただけるように. をしながら。でもこれからもう一回やり直し。それ. なった(No 5.6). は確かにやり直しで。(No1.18). ・そこで初めて専門的な機関として包括が来て、こ の人に言ってもいいんだろうか、または、その人か 論文. 16.

(7) 【対応変化】. ・失敗というかもう、いろいろと、やっぱり失敗もあっ. 〈対応不十分〉…民生委員への対応が十分に行えな. たのは、大変だったときすぐ行ってしまう…民生委 員さんがどんな価値判断あるかわかんなくて、とに. い状態である。理由としては地域包括支援センター. かく大変だと思ったら、いってみないといけないか. 職員が個々の民生委員、もしくは民生委員制度その. な、という思い込みも、こっちにもあって(No1.7). ものについて十分に理解していないことが考えられ る。また逆に民生委員から地域包括支援センター職. 〈個人理解〉…民生委員を個人として理解すること。. 員、もしくは地域包括支援センターそのものに対す. 地域での生活者であることの他に、強みや社会背景. る理解が不十分であるために起こる。 〈対応不十分〉. などを理解する。民生委員は生活者でもあり、民生. には地域包括支援センター職員の対応が受身である. 委員活動と生活者としての日常生活が職業人よりも. ことで生じる『困惑』と、積極的に動くが空回りで. 非常に近い位置にある。そのため、民生委員のある. ある『未整理対応』がある。今後民生委員に対する. 行動が民生委員としてのものであるのか、または生. 理解が深まると、相談、依頼の背景を読み解くこと. 活者、近隣住民としてのものなのか区別することは. ができ、効果的な対応ができるようになる。. 難しい。そのため個人としての民生委員を理解する ことが必要になる。民生委員が活動する地域の特性. 『困惑』…この時期は民生委員に対する理解が進ん. を知ることも、民生委員の〈個人理解〉の一助となる。. でいない。そのため、民生委員からの相談、依頼の 意図を十分に理解することができず対応に苦慮す. ・地域性によっては、もともと派閥的なものがある. る。またこの時期は民生委員も地域包括支援セン. 地域もあるんですよね。そうすると、あそこの民生. ターに対する理解が十分ではない。そのため、寄せ. 委員さんは、ここのあたりに住んでる人とは仲良く. られる相談、依頼の内容が必ずしも地域包括支援セ. ないとかっていうのもあったりはするので、それは. ンターの業務範囲であるとは限らない。『困惑』は. 本当に気をつけて接していかないといけないですの. 民生委員からの相談・依頼に対しどのように反応す. で(No2.8). ればよいか分からず、地域包括支援センター職員が 反応できない状態を表す。. 『住民としての理解』…民生委員は地域の住民でも あり、生活者でもある。そのため、民生委員活動を. ・「大変だ」っていうその「大変だ」の基準がやっぱ. 行うことが、民生委員の地域での生活を困難にする. りあいまいなので、本人にとって「大変だ」なのか、. ことがある。こうした状況下に置かれやすい立場で. 民生委員さんが見て「大変だ」なのか、隣の人が何. あることを、地域包括支援センター職員は配慮しな. か言って「大変だ」なのか…なんとかしたいと思っ. がら連携・協働する必要がある。. てるのは誰なのかなとか、っていう意味でははじめ すごく、こちらの初動がちょっと迷った。誰に対し. ・民生委員さんってどうしても一人で、あと地域の. て何をしたらいいんだろう。(No1.3). 中に住んでいるので、苦情とか、本当にその方が生 活しづらくなってしまうのが、一番やっぱり困るの. 『未整理対応』…民生委員からの依頼・相談に対し、. で(No2.8). 言われたままに対応してしまうこと。専門職ではな い民生委員からの相談、依頼は必ずしもその内容が 整理されているとは限らない。相手に対する理解が. 『強みの理解』…民生委員が社会資源としてもって. 進んでいれば課題を『整理・提案』することも可能. いる強みを理解すること。民生委員に対しては見守. となる。しかしこの時期はその相談・依頼の背景を. りをはじめ社会からの期待も大きい。しかし全ての. 読み解くことができないため、とにかく言われたま. 民生委員が一律に同じ力を持っているわけではな. まに動いてしまう。ここでは専門職としての対応と. い。個々の民生委員によってその強みは違う。その. はなっていない。民生委員との相互理解が進んでい. 中で民生委員が持っている強みを正しく理解するこ. ないことに加え、地域包括支援センター職員の経験. とは、今後民生委員と協働する際に民生委員に対す. が浅い場合に起こる。. る期待を明確にすることになる。ここでは気さくな. 17. 地域包括支援センター職員と民生委員の関係に関する研究 〜パートナー関係構築のプロセス〜.

(8) 民生委員の性格を地域包括支援センター職員は強み. 期待をまず読み解き、専門性を持って応える必要が. として理解している。. ある。課題・相談に対し『整理・提案』、地域包括 支援センター職員の動きを意図的に伝え、安心感を. ・民生委員さんはダイレクトに「お母さんこんなに. 与える『動きを見せる』など課題・相談に対する具. 困っているんだから、とにかく来て頂戴」って言え. 体的な対応のほかに、時として困難な状況にある民. ちゃうところが、強みかもなと思いますし(No4.9). 生委員を支えるために『寄り添う』ことも行う。〈期 待に応える〉ことで評価を獲得する。. 『状況理解』…民生委員が置かれている心理社会的 状況を理解すること。民生委員は一人一人社会的背. ・民生委員さんにとっても、やっぱり投げたボール. 景が異なり、その社会背景の違いがそのまま民生委. がどこに収まって、どう投げ返されてくるのかを期. 員としての活動内容に大きく影響する。民生委員と. 待して包括に連絡してきてくれると思うので、そこ. しての役割は共通であるが、仕事の有無、性別、年齢、. を受け止めることは必要かなと。(No1.13). 家族背景、健康状態、地域での生活歴など活動に影 響する要因はいくつもあり、ここを無視して民生委. 『整理・提案』…民生委員からの相談・依頼に対し. 員だからと一律に期待をすることはできない。. て内容を整理して解決策を提案すること。関わり当 初は『困惑』『未整理対応』だった対応も、相互理. ・あとは民生委員さんの負担感をこちらで聞いてい. 解が促進することで相手の真意を理解し、有用な対. くっていうのは、心がけてやっていたので、民生委. 応方法を提案できるようになる。特に民生委員は地. 員さんから電話がなくても、こちらから民生委員さ. 域包括支援センターよりも地域に密着した存在であ. んに連絡して、「最近の様子いかがですか」とか。. るため、住民からの相談や課題がダイレクトに寄せ. あとは、民生委員さんはご夫婦の方だったので、奥. られやすい。その為寄せられた相談・課題が十分に. さんに対しても一応「最近はどうですか?」ってい. 整理されていないことも多い。. うようなことをですね。「ご主人お疲れになってま せんか」とかっていうことは、一応電話に出たとき. ・今の状況をもう少し詳しく教えてください。今す. に聞いていくっていうところは、おこなっていった. ぐ必要なことか、休み明けでもいいのか、その対処. ところです(No2.5). 法を急がないっていう。基本的な部分かもしれない けれども(No1.6). 『理解を求める』…民生委員に対する理解と並行し て、地域包括支援センター側のことを理解してもら. 『動きを見せる』…地域包括支援センターの動きを. えるように働きかけること。パートナー関係の構築. 民生委員に分かるように意図的に伝えること。地域. は相互理解が前提であり、一方通行の関係ではない。. 包括支援センターが民生委員からの依頼・相談に対. 地域包括支援センターの職員も自らの機関、立場な. して対応していたとしても、それを相手に伝えなけ. どを民生委員に理解してもらう必要がある。民生委. れば、なにもしていないと誤解されてしまう。その. 員からの地域包括支援センターに対する理解があれ. ため、地域包括支援センターが今何をしているのか. ば、地域包括支援センターからの対応が民生委員に. を言葉や具体的な行動で伝えていくことが必要にな. とって納得しやすいものとなる。. る。. ・案内文持って行きながら、ちょこちょこって話を. ・訪問したとか、サービスにつながったっていうの. してきて。あたしたち今こんなことで困っているん. は、必ず民生委員さんに返していかないといけない. で、力を貸してくださいって言って、お願いしてい. な、というのは気をつけてますね(No2.13). くから(No3.16) 『寄り添う』…民生委員の心情にサポーティブに寄 〈期待に応える〉…民生委員からの地域包括に対す. り添い、理解を示すこと。民生委員は時として課題. る期待を読み取り、その期待に応える。民生委員の. を抱え込んだり、地域住民から理解が得られず孤独. 論文. 18.

(9) な状態に陥りやすい。そのため、民生委員の心情に. 支援活動の中で意識的に活用すること。『強みの理. 寄り添い、支えることが必要になる。. 解』で強みについては理解していても、すぐにそれ を活用できるわけではない。こちらの強みを提供 〈期. ・近くの人からは「民生委員なんだから、あんた食. 待に応える〉『援護射撃』する中で個々の民生委員. 事ぐらいつくってあげなさいよ」とか「買い物ぐら. の『強みを活かす』ことができる。ここでは、介護. いいってあげなさいよ、私だったらそうするわ」っ. に消極的な家族に対して、地域包括支援センター職. て言ってるんですけど。「民生委員ってどこまで何. 員からではなく、地域から「一目置かれている」民. する人なんでしょうか、っていうのがね、私の対応. 生委員の強みを意図的に活かすことで地域包括支援. は冷たいでしょうか、非人道的でしょうか」って. センター職員は家族に働きかけている。. な感じで。確かにそう思われるのはつらいですね。 (No1.14). ・民生委員さんに「わたしがいきなり電話してもきっ とそっちでうまくやってください」って言われちゃ. 〈互いに活かす〉…地域包括支援センター職員は民. うのが関の山なので、民生委員さんの方からちょっ. 生委員をサポートする意識が強まり『援護射撃』を. とお話していただけませんかっていうお願をして、. 行うようになる。また同時に民生委員からのサポー. 息子さんを引っ張りだしてきてもらって(No4.8). トを意図的に地域包括支援センターの職員が得られ るようになり『強みを活かす』ことが可能となる。. 【下準備】…地域包括支援センター職員は専門職と して個々の民生委員の期待に応え、互いに活かすこ. 『援護射撃』…民生委員が困らないように、陰なが. とができる関係を構築する。しかし専門職として民. ら民生委員をフォローすること。民生委員の立場も. 生委員と関わる以前に、良好な関係維持のための努. 尊重し、地域包括支援センターが前面に出ることは. 力が必要になる。専門職としての力量があっても存. しない。あくまで陰から。表だっておこなうことは. 在そのものを受け入れてもらえなければその専門性. 民生委員を否定することにも繋がりかねない。後ろ. を発揮することもできない。また個々の民生委員と. からサポートする姿が示されており、背後から射撃. の関わりには濃淡ができてしまうことはやむを得な. を行う意味である『援護射撃』と命名した。民生委. いが、意図的に接点を作らなければ相互理解は進ま. 員からの相談に対してのサポートではなく、民生委. ない。また相互理解が進まなければ個々の民生委員. 員が活動しやすいように気を配ることであり、より. からのサポートを得ることも難しくなる。【下準備】. 積極的に民生委員をサポートする姿勢が現れてい. ではこうした民生委員と具体的な課題・相談等で関. る。 〈個人理解〉が進み『寄り添う』ことを経てよ. わる以前に地域包括支援センター職員が民生委員と. り個々の民生委員が置かれている状況がイメージで. の関係構築のために行う準備である。. きるようになったからこそ可能となる。ここでも地 域包括支援センター職員は民生委員がいない場所で. 『イメージ作り』…民生委員が地域包括支援センター. 関係機関に対して働きかけることで、その活動がス. に対してポジティブなイメージを持ち、円滑なコ. ムーズに行われるようサポートしていた。. ミュニケーションが図れるように日頃のやり取りの 中でマナーを意識して関わること。. ・市の機関も巻き込んでカンファレンスを開いて、 その中でも民生委員さんがこうやって管理してるっ. ・民生委員さんは本当に地域の人でもあり、民生委. ていうのは、市の人にも一応把握しておいてもらっ. 員さんでもあるので、その評価っていうのは本当に. て。お金のやり取りも全部ノートに書いておくって. 広く、すぐに広がる部分はあるので、本当に気をつ. いうのはルールを決めて、民生委員さんがやってい. けるようにしてますので、電話をかける時間とか訪. たあと「トラブルにならないように」っていうこと. 問する時間とか、本当に1、2分の感覚で気をつけ. は、ちょっと気をつけていったところですね(No2.6). るようにはしてますので(No2.10). 『強みを活かす』…民生委員個人がもつ「強み」を、. 『接点作り』…民生委員と話をする機会を意図的に. 19. 地域包括支援センター職員と民生委員の関係に関する研究 〜パートナー関係構築のプロセス〜.

(10) 作り出すこと。民生委員に対する理解は会合で顔を. に地域包括支援センター職員は民生委員の〈期待に. 合わせることや、挨拶を重ねるだけでは十分ではな. 応える〉為に様々な工夫を凝らしている。また同時. い。個々の民生委員と直接話をする機会を作りだし、. に〈個人理解〉も重要な意味を持つ。なぜなら民生. 時間を共有する中で民生委員の置かれている状況な. 委員の個人属性は様々であり、その属性の違いがそ. どの理解が進む。. のまま民生委員活動に大きく影響するからである。 その為民生委員であるという理由だけで、無条件に. ・このケースちょっと気になって今度行くんですけ. 地域包括支援センターが行う支援活動における協力. ど、民生委員さんとしてどうですか。ちょっと気に. を期待することはできない。地域包括支援センター. なるって、じゃあ、一緒にどうです。集合場所は民. 職員は〈個人理解〉で個々の民生委員がどのような. 生委員さんのご自宅でいいですか、そこから歩いて. 社会背景や価値観を持ち、現在どのような状態にい. いきましょう。そこで、あえて時間を確保して、歩. るのかを理解するためにアンテナを張り巡らしてい. きつつとか。(No1.17). る。また『強みを活かす』と同時に民生委員を『援 護射撃』でサポートしており単に民生委員を「活用」. 9.考察及び先行研究との比較. するだけの関係ではなく相互にサポートし合える関 係構築が必要あることが明らかとなった。民生委員. 本研究の目的は、地域包括支援センターが民生委. から見れば地域包括支援センターも社会資源の一つ. 員とどのような関係を、どのように構築しているの. である。地域包括支援センター、民生委員双方がお. かを帰納的に分析し、探索的仮説モデルを生成する. 互いに助け合う「パートナー」として支えあえる関. ことであった。特に地域包括支援センター職員と. 係を構築する必要がある。本研究では地域包括支援. 個々の民生委員の関係に焦点を絞った。地域包括支. センター職員は民生委員という社会資源の「活用」. 援センターは民生委員との関係を強化する必要があ. の前に、まずは自らを相手に「活用」してもらい、. るが、その関係のあり方や、関係構築の具体的な方. 信頼を得たうえで初めて「活用」できることが示さ. 法等については明確に示されてこなかった。本研究. れた。. では地域包括支援センター職員が個々の民生委員と. ここで示された特徴は先行研究で示されている専. お互いに支えあえる「パートナー」関係を構築する. 門職同士が関係を構築する際のプロセスとは異なる. ことを目指し、様々な試行錯誤を行っている姿が明. ものである。三毛(三毛 2003)は医療機関のMS. らかになった。地域包括支援センターと社会資源の. W(医療ソーシャルワーカー)と他機関の関係職種. 関係は「活用」 「改善」 「開発」があるとされている(地. がお互いを有用な社会資源として活用できる関係に. 域包括支援センター運営の手引き編集委員会 2008:. なるプロセスについて言及しているが、専門機関の. 85) 。地域に存在しない場合には社会資源の「開発」. 場合はある程度お互いの役割が双方イメージできる. や、既存の社会資源の「改善」を行う必要があるが、. 状況の中で行われていることに特徴がある。また双. まずは既存の社会資源を「活用」することが求めら. 方に繋がるメリットを自覚しやすい。しかし『困惑』. れる。民生委員を社会資源の一つとして捉えるなら. で明らかになったように、地域包括支援センター職. ば、地域包括支援センターにとって民生委員は「活. 員と個々の民生委員の関係ではお互いの役割などが. 用」する対象である。しかし地域包括支援センター. 明確ではなく、関わるメリットについてもわかりに. と民生委員はそれぞれ別組織であり、異なる根拠法. くい。また専門職同士の場合、個人の社会的背景や. を持つ。地域包括支援センターと民生委員の間には. 生活状況などプライベートの領域に関わることに意. 主従関係・上下関係は存在しない。その関係は地域. 識を向けることは稀である。これらの特徴はMSW. 包括支援センターが民生委員を一方的に「活用」す. と他機関の関係職種の間では見られない。また社会. るというような関係では成立しない。. 資源の「活用」をテーマとした先行研究としては山. 本研究で生成された『強みを活かす』が「活用」. 野(山野 2008)が在宅介護支援センターのケアマネ. に近い概念であると考えられるが、ここに至るまで. ジャーとサービス供給機関の関係について言及して. に地域包括支援センター職員と民生委員はいくつも. いる。ここではサービス供給機関が一緒に地域活動. のステップを経ている。民生委員を「活用」する前. を行うにふさわしい相手であるかをケアマネジャー. 論文. 20.

(11) が見極め、またその力を活用できるようにするプロ. た自らインフォーマル資源として活動することであ. セスを「サービス供給機関の確保化」としている。. る。民生委員は社会福祉が貧困問題を主な対象とし. 山野が示した「サービス供給機関の確保化」も社会. ていた時代に創設された 11)。その後社会福祉のテー. 資源を見極め「活用」する際のプロセスであると捉. マは複雑化し、民生委員活動にも影響している。民. えることができる。しかしこの関係も専門職同士の. 生委員は「地域住民」を対象とした活動を行ってい. 関係であり、なおかつ複数の社会資源の中から適切. るが、その「地域住民」が抱える課題は貧困問題か. なサービス提供機関を選別しているところに地域包. ら高齢者ケア、障害者、児童虐待、ひとり暮らし高. 括支援センター職員と個々の民生委員の関係に違い. 齢者の見守りなど多様化し、尚且つこれらの課題が. がある。民生委員は各地域に一人の配置であり、地. 相互に絡み合っていることも珍しくない。その為民. 域において唯一無二の存在である。その為、仮に地. 生委員の役割や期待も年々膨らんでいる。特に民生. 域包括支援センターの職員がある地区の民生委員と. 委員は地域住民でもあることから地域の様々な情報. 良好な関係を構築していても、その関係を別の地区. を掴みやすく「孤独死」「虐待」の発見や「災害時. で「活用」することはできない。地域包括支援セン. の安否確認」などでも大きな力を発揮している。24. ターの職員は日頃から【下準備】において『気配り』. 時間 365 日活動し、その果たす役割も大きいにも関. 『接点作り』を行い、複数の民生委員の中から「パー. わらず、制度的ボランティアの位置づけであるため. トナー」を選ぶのではなく、目の前にある相手と. 基本的に無給である 12)。こうした民生委員の立場と. 「パートナー」になるための活動を行っている。. 「地域包括ケア」は非常に相性が良いため、今後も. 専門職が社会資源を有効に「活用」するための関. 民生委員が期待される状況が続くと思われる。. 係構築プロセスを明らかにしたという点で先行研究. しかし負担増が民生委員の後継者不足を招いてお. の意義は非常に大きい。しかし本研究では地域包括. り、結果として「地域包括ケア」の基盤を揺るがす. 支援センター職員という専門職が民生委員という非. ことに繋がりかねない。こうした立場にある民生委. 専門職と関係を構築するには専門職同士の場合と異. 員を専門機関・専門職が単に「活用」するという視. なるプロセス、視点が存在することが明らかになっ. 点で捉えることは非常に危険である。民生委員制度. た。そのプロセス、視点は現在の民生委員の置かれ. は「地域包括ケア」を推進する地域包括支援センター. ている状況を色濃く反映するものであった。. にとって不可欠である。現在地域包括支援センター と民生委員の関係についてはネットワーク構築の方. 10.結論. 法に関しての研究が進んでいるが、あわせて民生委 員制度が「持続可能」であるために「地域包括ケア」. 本研究では地域包括支援センター職員が民生委員. の専門機関である地域包括支援センターがどのよう. とのやり取りのなかで「パートナー」関係を構築す. に民生委員と関わるべきなのか再考する時期にさし. るために様々な活動を行っている姿が明らかになっ. かかっていると考える。民生委員活動の担い手は減. た。地域包括支援センターが民生委員を「パート. 少している状況の中で(後山 2006)、現任の民生委. ナー」として捉える視点は今後の地域福祉を考える. 員は非常に貴重な存在であるが、その後継者は必. 際に大きな意味を持つ。「地域包括ケア」が注目を. ずしも保障されている状況ではない。「活用」を考. 集める背景には、社会保障費の財源問題とノーマ. える専門機関はこのことを十分に認識する必要があ. ライゼーションの社会への浸透があるとされてい. る。. る(太田 2011)。 「地域包括ケア」の特徴の一つに. 本研究では「パートナー」としての関係構築の視. はインフォーマル資源の積極的な活用があるのはこ. 点のもと、個々の民生委員を理解しサポートした上. うした背景が色濃く影響していると考えられる。イ. で民生委員の力を「活用」する地域包括支援センター. ンフォーマル資源の積極的な活用自体は介護保険制. 職員の姿が明らかになった。例えば地域包括支援セ. 度を始めとする社会保障費の抑制やノーマライゼー. ンターの業務では包括的継続的ケアマネジメント業. ションの視点からも有効であり、これ自体特に問題. 務(介護保険法 115 条 44)の中で居宅介護支援事. 視されるものではない。民生委員に期待されている. 業所のケアマネジャーへの支援が位置づけられてい. のは地域のインフォーマル資源の入り口であり、ま. る。その為、地域包括支援センターの職員は居宅介. 21. 地域包括支援センター職員と民生委員の関係に関する研究 〜パートナー関係構築のプロセス〜.

(12) 【謝辞】. 護支援事業所のケアマネジャーをサポートするとい う意識を持ちやすい。こうした位置づけが無くても 本研究では意識的に民生委員をサポートするという. 本研究を行うに当たり、調査にご協力いただきま. 意識や姿勢が地域包括支援センターの職員には働い. した社会福祉士の皆様に心より感謝申し上げます。. ていた。本研究は特に民生委員に対して関心が高い. また本論文の作成をご指導いただきました先生方に. と思われる地域包括支援センターの職員を対象にし. 感謝申し上げます。. て行っているため、こうした調査協力者の特徴が結 果にも色濃く出ていると捉えることもできるが、民. 【注】. 生委員との関わりが薄い、新人や経験年数の短い職 員などが民生委員と関わる際に参考にできると考え. 1)平成 20 年度の社会保障給付費(年金・医療・. られる。. 福祉その他を合わせた額)は 94 兆 848 億円。. また地域包括支援センターに限らず、今後様々な. うち高齢者関係給付費は 65 兆 3567 億円であり、. 専門機関・専門職種が民生委員を「活用」する状況. 社会保障給付費の 69.5%が高齢者関係となって. が増えると予想される。その際にも本研究で明らか. いる(国立社会保障・人口問題研究所)。. にした視点・プロセスなどを活かすことができると. 2)「地域包括ケア」 は厚生労働省老健局長の私的. 考えられる。. 研 究 会 で あ る 高 齢 者 介 護 研 究 会 が ま と め た 『2015 年の高齢者介護』 (2003)で示されたのが. 11.今後の課題. 最初である。 3)地域包括支援センターの業務は介護保険法 115. 本研究は地域包括支援センターと民生委員の関係. 条 44 の「地域支援事業」のうち「包括的支援. をテーマとしているが、分析の途中で地域包括支援. 事業」を行うものとされている。①介護予防ケ. センター、民生委員の置かれている状況は相当の地. アマネジメント②総合相談・支援事業③権利擁. 域差があることが確認された。本研究は限られた地. 護事業④包括的・継続的ケアマネジメント。現. 域における調査でることに加え、またインタビュー. 在はその他に介護保険法 115 条 22 にある指定. 対象のサンプリングにおいても地域差を考慮したも. 介護予防支援事業所として「要支援認定者」へ. のとはなっていない。本研究で示された探索的仮説. のケアマネジメントを実施している。. モデルはあくまでも限定された範囲の中での結果で. 4)ここでは民生委員の他に介護サービス事業者、. ある。また仮設モデルは完成されたものではなく常. 医療機関、ボランティアその他の関係機関も明. に修正、発展を求められる。今後は地域や経験年数. 記されている。. など様々な条件からのサンプリングと継続的比較分. 5)厚生労働省の通知により、東京都区部・指定都. 析を行い、生成された仮説モデルをより強固にする. 市においては 220 〜 440 世帯ごとに 1 人。中核. ことを目指す必要がある。. 都市・人口 10 万人以上の市においては 170 〜. また本研究は地域包括支援センターの職員側から. 360 世帯。人口 10 万人未満の市においては 120. の民生委員と関係構築についての分析となっている. 〜 280 世帯ごとに 1 人。町村は 70 〜 200 世帯. が、個々の民生委員から地域包括支援センター職員. ごとに 1 人とされている。平成 22 年 11 月現. を見た場合の視点についても分析を行う必要があ. 在全国に 22 万人を越える(全国社会福祉協議. る。本研究からは民生委員をサポートする視点を得. 会 2010)。. ることができたが、本当に民生委員が地域包括支援. 6)後山(後山 2006)は民生委員活動の担い手は女. センターに求めているものを探るには、民生委員か. 性が中心となりつつあり、半数以上が他の役職. らの視点が必要となる。. や家事、子育てなどと兼任であるため、民生委 員活動に制限があると指摘している。 7)委託型 64.5%(2564 か所)、直営型 35.5%(1412 か 所 )(2008 年 4 月 ) と な っ て い る( 福 田 2010)。. 論文. 22.

(13) 8) 「パートナー」は「仲間」「同伴者」「相棒」等. チのすべて』弘文堂. の意味があるが(広辞苑)、本研究では顔見見. 工藤禎子(2005)「転入高齢者に対する民生委員の. 知りの状態からさらに関係が進み、様々な課題. 関わりの実際と支援のあり方」『北海道医療大学看. を共に行う「仲間」となった状態を「パートナー」. 護福祉学部紀要』No12,53-59. とした。. 高齢者介護研究会(2003)『2015 年の高齢者介護』. 9) 「近隣関係によるつながりは総じて浅い」(平成. 国立社会保障・人口問題研究所(2010)『平成 20 年. 19 年版国民生活白書)と指摘されているよう. 度社会保障給付費』. に、現在のわが国では全体的に隣人との関係は. http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/kyuhuhi-h20/. 弱いとされている。そのため、本件研究では「隣. kyuuhu_h20.asp. 人」が通常意味する「となり近所に住む人」 (明. 後山恵理子(2006)「民生委員制度の有償化に関す. 鏡国語辞典)から「物理的に近い距離にありな. る考察 - 有償ボランティア活動との比較を通じて」 『東海女子大学紀要』26(2006),53-59.. がら、関係は希薄である」ことを示す概念名を 『隣人期』と命名した。筆者の造語である。. 財団法人長寿社会開発センター(2010)『地域包括. 10) 「知人」には「お互いに知っている人」 (明鏡国. 支援センター業務マニュアル』. 語辞典)として一般的に使用されている単語で. 社会福祉法人全国社会福祉協議会(2010)『新任民. あるが、ここでは「物理的に近い距離にありな. 生委員・児童委員の活動の手引き』. がら、関係は希薄である」状態から、会えば挨. 社会保障国民会議(2008)『医療・介護費用のシミュ. 拶以上の会話ができる、お互いの情報の蓄積が. レーション』. ある状態を示す概念名として命名された筆者の. http://www.kantei.go.jp/jp/singi/. 造語として使用している。近い単語に友人があ. syakaihosyoukokuminkaigi/iryou.html. るが、友人は「親しく対等に付き合っている人」. 社団法人神奈川県社会福祉士会(2007)『地域包括. と親密さにおいて更に深い状態を示すため、こ. 支援センター社会福祉士相当職員実態調査報告書』. こではそぐわないと判断し『知人期』とした。. 白澤政和(2009)『地域包括支援センター・在宅介. 11)森(森 2010)は民生委員の歩みを「形成期」 「整. 護支援センターのネットワークづくりの現状と課. 備期」 「拡充期」「調整期」「基礎構造改革と自. 題』平成 21 年度「地域包括支援センターの業務の. 律志向期」に整理した。. 検証及び改善手法に関する調査研究事業」報告書,. 12)2000 年の民生委員法改正で「給与を支給しない. 全国地域包括・在宅介護支援センター協議会. もの」と位置付けられた(民生委員法 10 条)。. 大修館書店(2009)『明鏡国語辞典』. 後山(後山 2006)は民生委員と有償ボランティ. 地域包括ケア研究会(2010)『地域包括ケア研究会. アの比較を踏まえ、民生委員活は「社会的評価」. 報告書』. を受けることで意識が高まるとして有償化の効. 地域包括支援センター運営の手引き編集委員会編 (2008)『地域包括支援センター運営の手引き』. 用について言及している。. 特定非営利法人地域保健研究会(2009)『地域包括 支援センター機能の進化および高齢者福祉活動体制. 【参考文献】. 強化に関する調査研究ダイジェスト版』 内閣府(2007)『平成 19 年版国民生活白書』. 朝日新聞(2010.12.5)「老いる民生委員」. http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/. 朝日新聞(2011.1.17)「民生委員 国基準の 59%」. h19/01_honpen/html/07sh020101.html. 太田貞司・森本佳樹編(2011)『地域包括ケアシス. 福田健(2010)「地域包括支援センターの課題と今. テム その考え方と課題』光世館. 後 の 方 向 性 」『 自 治 体 チ ャ ン ネ ル 』No116,2010,. 木下康仁(2003)『グラウンデッド・セオリー・ア. 18-20.. プローチの実践 質的研究への誘い』弘文堂. 三毛美代子(2003)『生活再生に向けての支援と支. 木下康仁(2007)『ライブ講義 M-GTA 実践的質的. 援インフラ開発 グラウンデッド・セオリー・アプ. 研究法修正版グラウンデッド・セオリー・アプロー. ローチに基づく退院援助モデル化の試み』相川書房. 23. 地域包括支援センター職員と民生委員の関係に関する研究 〜パートナー関係構築のプロセス〜.

(14) 三橋美和・桝本妙子・福本恵(2008) 「民生委員・. 900-907.. 児童委員の子育て支援に関する実態調査:母子保健. 森征子(2010)「民生委員活動の困難さに関する考. 活動との連携の視点から」『京都府立医科大学看護. 察 - メンタルヘルスケアという視点から -」『武蔵野. 学科紀要』17, 101-110, 2008.. 大学大学院人間社会・文化研究』第 4 号,61-71.. 村山洋史・奈良部晴美・兒島智子・ほか(2010)「地. 山井理恵(2010)『利用力 / 提供力を促進するケア. 域専門機関とインフォーマル組織間のネットワーク. マネジメント - 支援困難なクライエントに対する実. 構築促進プログラムの開発」 『日本公衛紙』57(10),. 践活動の質的研究 -』相川書房. 論文. 24.

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参照

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