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エジプトにおける日本語学習者の動機づけ : アインシャムス大学における調査報告

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Academic year: 2021

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エジプトにおける日本語学習者の動機づけ

― アインシャムス大学における調査報告 ―

1.背景と本研究の目的   エジプト・アラブ共和国(以下エジプト)にはピラミッド,スフィンクスといっ た世界遺産があり,世界各地から観光客が集まって来ている。しかし2011年の革命, 2013年の政変という経済,政治の混乱に伴い,治安が悪化し観光客が激減している。 実際,2010年日本人渡航者数(観光客が大部分)は,過去最高の約12.6万人に達し たが, 2016年には約1.9万人に落ち込んでいる(外務省領事局政策課,2016)。その 中にあって日本語学習者の現状について言えば,現在エジプトには日本語を主専攻 とする大学が5校ある。その嚆矢として,1974年にカイロ大学に日本語日本文学科 が設置された。これはアラブ世界における初の日本語専攻コースである。それに続 き,2000年にアインシャムス大学(以下 ASU)の言語学部にも日本語学科が設置 された。その後,ミスル科学技術大学,バンハー大学,アスワン大学に日本語専攻 の学科が設置されている。また国際交流基金のカイロセンターで日本語講座が開か れ,中学生から社会人までが日本語を勉強している。2015年現在,日本語学習者は エジプト全土で832名になっている。(国際交流基金,2017)  そうした学習者の動機づけとして,アタシゴレスタン(2012)はエジプト人学習 者には観光関連分野で日本語を活用したいという学習者の動機が存在すると述べて いるが,観光客が激減している現在この動機は強くないと考えられる。また,エジ プトには日系企業は51社しかなく日本語を生かした就職先が多くあるとも言えな い。では,エジプトの日本語学習者はどのような動機づけを持って日本語学習に取 り組んでいるのだろうか。  本稿の目的は,エジプトの大学で日本語を専攻している日本語学習者の動機づけ の構成要素を明らかにし,実際に行なわれている大学の授業と日本語学習者の動機 づけとの結びつきが妥当なものかを検証し,問題点を明らかにすることである。問 題点があれば,早急に改善する必要があろう。本稿では筆者が勤務している ASU 言語学部日本語学科を研究対象とする。 2.先行研究と本研究の目的 2.1 これまでの動機づけ研究の概略

 第二言語習得研究の分野では,Gardner and Lambert(1972)が提唱した社会心 理学を背景とした「総合的動機づけ」と「道具的動機づけ」がよく使われている。 「総合的動機づけ」とは「第二言語社会に同化・統合しようとする態度」であり,「道

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具的動機づけ」は「就職や経済的成功などの実利目的を達成しようとする態度」で ある。しかし,小林(2016)は,この2分類の動機づけを使った研究では研究者に よって定義や下位分類が異なり,定義のぶれや分類が異なることを指摘している。 そのため,研究者間で同じような結果が異なる見解になることがあると指摘してい る。一方,Deci(1975)は教育心理学を背景とし,動機づけを「内発的動機づけ」 と「外発的動機づけ」に分類した。小林(2016)はこの2分類の動機づけなら研究 者間のぶれは少ないと述べている。Deci(1975)によると,「内発的動機づけ」と は「学習内容に興味があるから学習する」,「新しいことを知るのが楽しいから学習 する」など学習自体が目的で,外からの報酬とは無関係であるものである。また,「外 発的動機づけ」とは「就職に有利だから学習する」,「親や先生に怒られたくないか ら学習する」など,実際に報酬がもらえる,または罰を回避することに基づくもの である。本研究では教育心理学の「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の分類 を援用する。  このような「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」について市川(2001)は, 6つの志向として捉え直している。6つの志向とは「充実志向」,「訓練志向」,「実 用志向」,「関係志向」,「自尊志向」,「報酬志向」である。「充実志向」は学習する こと自体が楽しいし,やっていると充実感があり,内容重視なので学習することに よって得をするかどうかは考えていない。「訓練志向」は知力をつけることが動機 づけになっている。学習することによってスキルが身につく課題,頭が良くなる課 題でないとやりがいがない。「実用志向」は学習は自分の将来の仕事や生活に生か せるからやるという考え方で,学習することによって仕事や生活が豊かになるとい うような内容が役に立つものでないとやりたがらない。「関係志向」は「みんながやっ ているから」「先生が好きだから」というふうに他者につられて学習しているとい 図1.6つの学習志向の関係 市川(2001) 大 (重視) ←内容関与的動機 ←内容分離的動機 小 (軽視) 小 学習の功利性 大 (軽視) (重視)

関係

志向

自尊

志向

報酬

志向

充実

志向

訓練

志向

実用

志向

学 習 内 容 の 重 要 性

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う考えである。「何を学ぶか」よりも「誰と学ぶか」に関心が高い。「自尊志向」は プライドや競争心から「負けたくない」気持ちで学んだり,「いい結果を出すと優 越感がわく」という動機で気分的なものである。「報酬志向」は外からの物質的な 報酬を意識している。「いい結果を出すと何かがもらえる」「成績がよかったら,お 小遣いがもらえる」という理由である。  市川(2001)は「報酬志向」に向かっていくと「外発的動機づけ」に近づくとし, 「充実志向」に向かうと「内発的動機づけ」になるとした。つまり「報酬志向」が 典型的な「外発的動機づけ」になり,「充実志向」が典型的な「内発的動機づけ」 になる。本研究では「内発的動機づけ」,「外発的動機づけ」という2つの動機づけ だけで日本語学習者の動機づけを区分してしまうことは難しいと考え,さらに細分 化した市川(2001)の6つの志向を用いることにした。 2.2 アフリカ地域・中東地域の日本語学習者の動機づけ  エジプトは北アフリカ地域に属する。北アフリカ地域のエジプト,リビア,モロッ コ,アルジェリア,チュニジアにおける日本語学習者の学習動機については先行研 究が見当たらない。国際交流基金(2017)の調査でもわかるように,北アフリカ地 域は日本語教育機関が極めて少ない。実際,日本語教育機関数はリビア0,チュニ ジア1,アルジェリア1,モロッコ6,スーダン1,エジプト12となっている。こ の地域には日本語教育機関が少なく,日本人教師も少ないため,調査もあまり行わ れていなかったようである。またエジプトは,イスラム教徒が90%を占めるため中 東地域に属するとも解釈できることから,中東地域にまで拡げて考えると,根本 (2012)が中東のトルコ,バーレーン,カタールの学習者の動機づけを調査している。 根本(2012)は一般的に言われている日本のポップカルチャーに興味を持つことが 日本語学習につながっているかを調査した結果,そのような動機づけが日本語学習 につながるとは一概に言うことができないとしている。 3.調査方法 3.1 調査対象者  調査対象者はエジプトの国立大学 ASU 言語学部日本語学科に所属する1年生か ら4年生までの学生67名である。この67名の内訳は,1年生16名,2年生24名,3 年生11名,4年名16名である。3年生が少ないのは日本に留学している学生が4名 いるためである。各学年のおおよその日本語能力は日本語能力試験で考えると,1 年生N5,2年生N4,3年生N3,4年生N2である。また,ASU 言語学部日本語 学科は高校生の時,最終試験の英語で満点を取った学生しか入れないと言われてお り,成績が優秀な学生が多い。特に日本語学科は言語学部の他学科に比べても成績 が優秀な学生が集まっている。 3.2 調査方法  2017年11月から12月にかけて,筆者の現在の勤務校である ASU 言語学部日本語 学科の学生に,アンケートの主旨を説明し,成績には一切関係しないことを伝え,

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アンケート用紙を配布し,無記名で提出してもらった。 3.3 調査内容  「どうして日本語学科に入ったのか」という質問と「今,どうして勉強している のか」という大きく分けて2つの質問を行った。前者は日本語の勉強を始めること になった動機を聞くためで,後者は今どのような動機で勉強をしているのかを聞く ためである。  「どうして日本語学科に入ったのか」についての質問事項は事前に ASU を卒業 後日本語教師として勤務しているエジプト人講師に考え得る答えを全て出してもら い,それを参考に作成した。「今,どうして勉強しているのか」という質問につい ては市川(2001)の質問事項6項目36問をランダムに配し,日本語での質問と英語 での質問を載せた。日本語学科の学生は高校生の時の英語の点数が高く,英語能力 が高いため,アラビア語でなくても問題ないと考えた。 3.4 「どうして日本語学科に入ったのか」調査結果  複数回答を可とし,◎,〇,×で回答させた。◎は「とてもそう思う」,〇は「そ 表1.「どうして日本語学科に入ったのか」調査結果 (※網掛けは上位3番までを表す) 1年生 (16名) (24名)2年生 (11名)3年生 (16名)4年生 計67名 点(平均値) 点(平均値) 点(平均値) 点(平均値) 計(平均値) 高校生のとき英語の成績がよかったから 16(1.00) 17(0.71) 14(1.27) 16(1.00) 63(0.94) 日本のアニメ,マンガに興味があったから 13(0.81) 9(0.38) 4(0.36) 11(0.69) 37(0.55) 日本の伝統文化に興味があったから 17(1.06) 22(0.92) 4(0.36) 12(0.75) 55(0.82) 日本へ行ってみたかったから 20(1.25) 22(0.92) 8(0.73) 19(1.19) 69(1.03) 日本語学科は留学するチャンスがあると聞いたから 16(1.00) 25(1.04) 9(0.82) 12(0.75) 62(0.93) エジプトにある日本の会社に入りたかったから 13(0.81) 17(0.71) 10(0.91) 8(0.50) 48(0.72) 日本にある日本の会社に入りたかったから 17(1.06) 18(0.75) 5(0.46) 9(0.56) 49(0.73) 日本人の知人がいたから 2(0.13) 3(0.13) 0(0.00) 0(0.00) 5(0.07) 家族に勧められたから 9(0.56) 12(0.50) 6(0.55) 4(0.36) 31(0.46) 知人に勧められたから 2(0.13) 4(0.17) 5(0.46) 2(0.13) 13(0.19) 日本語自体に興味があったから 18(1.13) 18(0.75) 1(0.09) 16(1.00) 53(0.79) 日本人に興味があったから 18(1.13) 19(0.79) 5(0.46) 11(0.69) 53(0.79) 何でもいいから英語以外の外国語を勉強したかったから 16(1.00) 17(0.71) 10(0.91) 12(0.75) 55(0.82) その他 1(0.06) 4(0.17) 2(0.18) 4(0.36) 11(0.16) 計 178(-) 207(-) 83(-) 136(-) 426(-) う思う」,×は「そう思わない」とした。◎は2点,〇は1点,× は0点で計算し ている。  海外の日本語学習者はアニメ,マンガがきっかけで日本語を勉強し始めるとよく 言われているが,今回の調査では ASU の学生にはそのような動機づけは低かった。 もちろん,日本のアニメはエジプトでも人気があるが,「子どものときに見たが,

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今は見ない」という声をよく聞く。  「日本へ行ってみたかったから」という動機が3つの学年で高い。これはエジプ トから日本までは直線距離でも9,600km あり,またイスラムの国と仏教の国といっ た精神的にも物理的にも遠い国に,日本語を勉強すれば行くチャンスができるかも しれないと考えたのであろう。実際,ASU の日本語学科は提携校もあり,他学科 と比べ留学のチャンスが多い。「高校生のとき英語の成績がよかったから」という 動機の裏には ASU の日本語学科はエジプト全土から優秀な学生が集まって来てお り,高校生のときの英語のテストがほぼ満点でないと入れない。このため,英語の テストがよかったため,何も考えずに ASU 日本語学科に出願した者がいるという ことである。また第一希望は医学部であったが,点数が少し足りないため日本語学 科に出願した者もいる。他には「日本語自体に興味があったから」という動機もあ る。アラビア語は右から左に書くが,日本語はアラビア語と違い,左から右に書く。 または縦に書く,漢字があるなどアラビア語とさまざまな点が異なるため興味があ るのであろう。他には「日本人に興味があったから」というものもある。これは過 去にテレビで日本特集がされ,「日本人は日本という地球とは異なる惑星に住む全 く違う人種」として紹介された影響があるのかもしれない。またエジプトの町を歩 いていても日本人に会うことは少なく,日本人に会うためには日本語学科に入れば 簡単だという意識もあったと日本語学習者から聞いた。就職が目的で日本語の勉強 を始めた者は少ない。全体的にはあまり将来のことは考えずに日本語学科に入った 者が多い。また,「何でもいいから英語以外の外国語を勉強したかったから」とい う動機もあり,日本語を強く学習したいという動機はあまり見られない。 3.5 「今,どうして勉強しているのか」調査結果 3.5.1 調査について  複数回答を可とし〇,△,×で回答させた。〇は「とてもそう思う」,△は「そ う思う」,×は「そう思わない」とした。「どうして日本語学科に入ったのか」の 調査で◎,〇,×がわかりにくいという調査対象者からの指摘があり,「今,どう して勉強しているのか」では〇,△,×とした。〇は2点,△は1点,× は0点 で計算している。クロンバックのα係数は「充実志向」,「訓練志向」,「自尊志向」 では0.70を上回っているが,「実用志向」0.67,「関係志向」0.57,「報酬志向」0.62 表2.「今,どうして勉強しているのか」調査結果 (※網掛けは上位1位を表す) 1年生 2年生 計1・2年生 3年生 4年生 計3・4年生 充実志向(Q1,3,8,15,20,30) 148 225 373 96 143 239 訓練志向(Q2,5,7,10,11,26) 111 190 301 90 102 192 実用志向(Q13,14,18,23,31,36) 134 242 376 92 130 222 関係志向(Q6,12,19,21,24,33) 61 123 184 40 44 84 自尊志向(Q16,19,25,28,29,34) 91 136 227 49 73 122 報酬志向(Q4,9,22,27,32,35) 93 159 252 65 75 140

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となり,α係数0.70を下回っていた。  ASU 日本語学科では成績上位者5名から8名ほどが3年時に交換留学制度を使 用し,日本の提携大学に1年間留学できる。そのため,動機づけが変わる学習者も いると思われる。1年生と2年生を低学年,3年生と4年生を高学年として分けて 考える。 3.5.2 調査結果  1年生では「充実志向」のポイントが高く,2年生では「実用志向」のポイント が高かった。しかし,2番目の志向との差は大きくはない。1年生では「充実志向」 の中の「何かができるようになっていくことは楽しいから」「いろいろな知識を身 につけた人になりたいから」がポイントが高い。2年生では「学んだことを,将来 の仕事に生かしたいから」や「勉強で得た知識は,いずれ仕事や生活の役に立つと 思うから」といった実用志向の項目のポイントが高い。これは1年生は入学したば かりで将来のことはあまり考えず,目の前のことしか見ていないが,2年生になり 留学や卒業後の将来についても考えるようになるためであろう。  3年生は留学できなかった学生と留学しなかった学生である。現在日本に留学し ている学習者はアンケート調査に含まれていない。「何かができるようになってい くことは楽しいから」「知識や技能を使う喜びを味わいたいから」といった項目の ポイントが高い。また4年生でも「何かができるようになっていくことは楽しいか ら」「知識や技能を使う喜びを味わいたいから」といった項目のポイントが高い。 これは留学して満足し,または留学できなかったため,これからの目標を見失い, 目の前のことだけを考えているためだと思われる。4年生になると,論文の書き方 や,発表の仕方を中心に勉強している。将来日本語で何かをすると言った長期的な 目標ではなく,論文の書き方,発表の仕方といった授業での成績や授業で使う日本 語の上達と言った短期的な目標にシフトしているためだと思われる。これには,エ ジプトには日系企業が少ないため,日本語を生かした仕事に就くことが期待できな い事情もある。同じく日本語を生かした就職先が少ないウクライナでも日本語専攻 の大学生は高学年になり,留学できないことがわかると意欲をなくしていくことが 指摘されている(大西,2010)。ASU 日本語学科でも同じ現象が起きていることが 読み取れる。留学という目的が達成されたため,または達成できなかったため,将 来的なことに目が向かなくなっているようである。またウクライナ同様日本人との 接触機会があまりない孤立環境とも言えるため,日本語を身につけ将来何かをする ということが考えられず,目の前のことに取り組むことに集中していると推測でき る。 4.まとめと今後の課題  「どうして日本語学科に入ったのか」の調査では日本語学習者の動機づけが弱い ことが分かった。弱い動機づけのままでは,ASU 言語学部の中でも習得が難しい とされている日本語を継続して学習していくことは難しい。過去には日本語の難し

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さが原因で退学,転科した学生もいると聞く。弱い動機づけをどのようにすれば強 い動機づけに変えていけるのか考えていかなければならない。  「今,どうして勉強しているのか」については ASU 日本語学科の低学年,高学 年とも「内発的動機づけ」のほうが「外発的動機づけ」よりも高いことがわかった。 「外発的動機づけ」よりも「内発的動機づけ」のほうが良いとされることが多いが, 市川(2001)は「志向」に「優劣はない」としている。筆者も学習者にはさまざま なタイプがあり,さまざまな動機づけが存在すると考え,動機づけの優劣はないと 考える。ただ,志向の傾向はアンケート調査結果からわかるようにやはり存在する。  低学年と高学年の間には日本への留学があり,その留学を境に動機づけが変わっ ていると推測できる。低学年は留学や将来の仕事を目標に日本語学習を行っている が,高学年はエジプト国内での就職が難しいことがわかり,何を目標にしていいの か,何を動機づけにすればいいのかわからなくなっていると考えられる。高学年の 動機づけの特徴に合わせたカリキュラムを早急に考え直さなければならないだろ う。低学年から高学年にかけての教科書は『みんなの日本語』の初級から中級であ り,それを使い日本語学習をしているが,ただ単にレベルが上がるから,教科書の シリーズのレベルを上げるのではなく,動機づけに合うテキストやカリキュラム全 体の見直しが必要であると考える。高学年は「充実志向」と「実用志向」が高い傾 向があり,中でも「知識や技能を使う喜びを味わいたいから」「何かができるよう になっていくことは楽しいから」という項目が高いため,日本語が上達するにつれ, 何かができるようになるカリキュラムや就職以外で日本語を使う機会の創出も考え なければならない。一回きりで終わるものではなく,継続し,日本語力の向上が実 感できるものが理想である。半期に一度程度,外部の日本人を招いて,ビジターセッ ションを行うことがあるが,一回きりでは動機づけにはなりにくい。岩中(2011) が行った「有能さの支援」のような学習者が有能さを感じることができる授業がポ イントになるかもしれない。  今回の調査は ASU 日本語学科のみで行ったが,エジプトにおける日本語教育の 高等教育機関全てに当てはまるものではない。アスワンなどエジプト南部では接触 できる日本人も少なく,また将来日本語を使った就職先もさらに少ない。全体の状 況を明らかにするためには,調査機関,調査数を増やす必要がある。 〈参考文献〉 アタシゴレスタン マリアム(2012).「イランにおける日本語教育の課題と解決に 向けての提言―中東地域におけるトルコとエジプトとの比較を通じて―」『日 本研究教育年報』16,1-19 市川伸一(2001).『学ぶ意欲の心理学』東京:PHP 新書. 岩中貴裕(2011).「学習意欲の向上に貢献する教室活動―考慮すべき3つの心理的 欲求―」『大学英語教育学科中国・四国支部研究紀要』8,1-18 大西由美(2010).「ウクライナにおける大学生の日本語学習動機」『日本語教育』 147,82-96

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外務省領事局政策課(2016).『海外在留邦人数調査統計(平成29年要約版)』 Gardner, R. C & Lambert, W. (1972). Attitude and motivation second language

learning: Rowley, MA: Newbry House

国際交流基金(2017).日本語教育国・地域別情報2015年度 http://www.jpf.go.jp/ j/project/japanese/survey/area/country/2017/index.html#header(2018年 9 月1日閲覧)

小林由子(2016).「日本語学習研究における「内発的動機づけ」の再検討」『北海 道大学国際教育研究センター紀要』20,81-92

Deci, E. L. (1975). Intrinsic motivation. New York: Plenum Publishing Co. (安藤延 男 ・ 石田梅男[訳]1980『内発的動機づけ―実験社会心理学的アプローチ』東 京:信書房.)

根本愛子(2012).「日本語学習の選択動機に関する一考察:中東の日本語学習者と 非日本語学習者の比較から」『一橋日本語教育研究』1,37-48

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資料1 Q :どうして日本語学科に入りました か。 W hy d id y ou e nt er th e D ep art m en t o f J ap an es e L an gu ag e? ↓ ここ に ◎、 〇 、 ×を か いて く だ さい 。 複数 回 答可 ( P lea se w rit e◎ ,〇 ,× /m ul tip le an sw er s a llow ed ) 1, 高校 生 のと き 英 語の 成 績が よ か った から (B ec as us e W he n I w as in hi gh s cho ol , I go t g oo d gr ade s in E ng lis h. ) 1) 今 いま 、 何 年生 な ん ねん せい ですか。→( 1 2 3 4 ) 年生 ねん せい で す。 2, 日本 の アニ メ 、 マン ガ に興 味 が あっ た から (B ec au se I w as in ter es ted in J ap an es e an im e a nd m an ga. ) 2)わたしは ( 男 おと こ 女 おん な )で す。 3, 日本 の 伝統 文 化 に興 味 があ っ たか ら (B ec au se I w as in ter es ted in tr ad iti on al J ap an es e c ul tu re .) 4, 日本 へ 行っ て み たか っ たか ら (B ec au se I w an ted to go to J apa n. ) 5, 日本 語 学科 は 留 学す る チャ ン ス があ る と聞 い たか ら ( B ec au se I h ear d t hat J ap an es e d ep ar tm en t h as a c ha nc e t o s tu dy ab ro ad .) 6, エジ プ トに あ る 日本 の 会社 に 入 りた か った か ら (B ec au se I w an ted to wo rk fo r a J apa ne se c om pa ny in E gy pt .) 7, 日本 に ある 日 本 の会 社 に入 り た かっ た から (B ec au se I w an ted to wo rk fo r a Ja pan es e c om pa ny in J ap an .) 8, 日本 人 の知 人 が いた から (B ec au se I had J ap an es e f rien ds a nd ac qu ai nt an ce. ) 9, 家族 に 勧め ら れた か ら (B ec au se I w as a dvi se d b y my fam ily .) 10, 知人 に 勧め ら れた か ら (B ec au se I w as a dvi se d b y m y f rie nds .) 11 , 日本 語 自体 に 興 味が あ った か ら (B ec au se I w as in ter es ted in J ap an es e lan gu ag e. ) 12 , 日本 人 に興 味 が あっ た から (B ec au se I w as in ter es ted in J ap an es e pe op le. ) 13, 何で も いい か ら 英語 以 外の 外 国 語を 勉 強し た か った から (B ec au se I w an ted to s tu dy an y f or ei gn lan gu ag e ot her th an E ng lish .) 14 , その 他 →自 由 に 書い て くだ さ い。 (O th er → P le as e w rit e. )

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資料2 学 習動 機を 測定 する 質問 事項 Q ue sti on to m ea su re m oti va tio n f or s tu dy Q :W H Y D O YO U S TU D Y? pl ea se w rit e 〇 or △ or × . 新し い こ とを 知 りた い とい う 気持 ち から み んな が やる か ら、 な ん とな く あた り まえ と 思っ て 1 B ec au se I w an t to k no w ne w thi ng s. 19 B ec au se ev er yo ne s tu dy ies an d i t m ak es m e f ee l i t i s n at ura l. 勉強 し な いと 、 頭の 働 き がお と ろえ て しま う から わ から な いこ と は、 そ の まま に して お き たく な いか ら 2 B ec au se m y h ea d w ill g et w or se , u nl es s I s tu dy . 20 B ec au se I d o n ot w an t to le av e it a s it is n ot u nd er st oo d. すぐ に は 役に 立 たな い に して も 、勉 強 がわ か る こと 自 体お も しろ い から 親 や好 き な先 生 に認 め て もら い たい から 3 B ec au se t o u nd er st an d i tse lf i s i nt er est in g, e ve n t ho ug h st ud y i s n ot u se fu l i m m ed ia te ly . 21 B ec au se I w ou ld li ke m y p ar en ts an d m y f av or ite tea ch er to re co gn iz e m e. 学歴 が よ くな い と、 お と なに な って い い仕 事 先が な いか ら 学 歴が い いほ う が、 社 会 に出 て から も と くな こ とが 多 いと 思 う から 4 B ec au se I c an no t no t g et a g oo d jo b w he n I fi ni sh hi ghe r ed uc at io n i f my a cd emi c ba ck gro und is no t g oo d. 22 B ec au se I th in k t hat b et ter ac ad em ic b ac kg ro un d hav e m or e ad van tag es af ter y ou b ec om e a m em ber of so ci et y. 合理 的 な 考え 方 がで き るよ う にな る ため 勉 強し な いと 、 将来 仕 事 の上 で 困る から 5 B ec au se I w an t to b e ab le to thi nk re as ona bl y. 23 B eca us e i t w ill ca us e s om e p ro bl em s in th e f ut ur e un le ss I s tu dy. 回り の 人 たち が よく 勉 強 する の で、 そ れに つ ら れて 勉 強し な いと 、 親や 先 生 にわ る いよ う な気 が して 6 B ec au se Peo pl e ar ou nd m e s tu dy s o har d t hat I c an not h elp s tu dy in g. 24 B ec au se I f ee l l ik e I am s or ry fo r p ar en ts an d te ac her s i f I d o n ot s tu dy . 勉強 す る こと は 、頭 の 訓 練に な ると 思 うか ら 成 績が い いと 、 他の 人 よ りす ぐ れて い る よう な 気持 ち にな れ る から 7 B ec au se I th in k t ha t s tu dy in g w ill b e a tr ain in g f or m y b ra in . 25 B ec au se I fe el li ke I am s up er io r to ot her s i f m y g ra des are g oo d. 何か が で きる よ うに な っ てい く こと は 楽し い から 学 習の し かた を 身に つ け るた め 8 B ec au se I e nj oy im pr ov in g m ys elf . 26 B ec au se I w an t to le ar n ho w to st ud y. 成績 が 良 けれ ば 、こ づ か いや ほ うび が もら え る から 学 歴が あ れば 、 おと な に なっ て 経済 的 に 良い 生 活が で きる から 9 Be cau se I c an g et p oc ke t m on ey or g ift s ( fr om p ar et s et c) if m y g ra des ar e g ood . 27 B ec au se I w ou ld b e ab le t o h av e w ea lth y l ife i n t he f ut ur e if I am w el l-ed uc at ed . いろ い ろ な面 か らも の ご とが 考 えら れ るよ う にな る ため 勉 強し て 良い 学 校を 出 た ほう が 、り っ ぱ な人 だ と思 わ れる から 10 B ec au se I w an t t o b e ab le to th in k th in gs fr om v ar io us a sp ec ts . 28 Bec au se i t s ee m s th st I w ou ld b e m or e r es pec tab le per so n i f I fi ni sh a hi ghe r le ar ni ng in st itu tio n. 勉強 し な いと 、 筋道 だ っ た考 え 方が で きな く な るか ら 勉 強が 人 なみ に でき な い のは く やし い から 11 B ec au se it w ill b e im pos sib le to t hin k lo gic al ly u nl ess I st ud y. 29 B ec au se It is m or tif yin g th at I c an n ot a ch ie ve li ke ot he rs . 友達 と い っし ょ に何 か し てい た いか ら い ろい ろ な知 識 を身 に つ けた 人 にな り た いか ら 12 B ec au se I w an t t o d o s om et hin g w ith m y f rie nd s. 30 B ec au se I w an t to be co m e a p er so n w ho ac qu ires v ar io us k no w led ge. 学ん だ こ とを 、 将来 の 仕 事に 生 かし た いか ら 勉 強で 得 た知 識 は、 い ず れ仕 事 や生 活 の 役に 立 つと 思 うか ら 13 B ec au se I w an t to m ak e u se o f w hat I l ea rn ed fo r m y f ut ure w ork . 31 Be ca us e I th in k th at th e k now led ge g ai ned b y s tu dy in g w ill b e us ef ul fo r w ork a nd l ife . 勉強 し た こと は 、生 活 の 場面 で 役に 立 つか ら テ スト で 成績 が いい と 、 親や 先 生に ほ めて も らえ る から 14 B ec au se I t hi nk th at s tu dy in g i s us ef ul in th e d ai ly li fe. 32 Bec au se I w ill b e p ra ise d b y m y p ar en ts a nd te ac he r w he n I g et g oo d ex am re su lts. 勉強 し な いと 充 実感 が な いか ら み んな が する こ とを や ら ない と 、お か しい よ うな 気 がし て 15 B ec au se I d o n ot fee l f ul fil lm en t u nl es s I st ud y. 33 B ec au se I fe el li ke w ei rd if I d o no t d o as ev er yo ne do es . 勉強 が 人 なみ に でき な い と、 自 信が な くな っ て しま い そう で 成 績が 良 けれ ば 、仲 間 か ら尊 敬 され る と思 う から 16 Bec au se I fe el li ke lo si ng m y c on fide nt if I c an n ot a ch iev e l ik e ot he rs . 34 Be ca us e I th in k th at I w ill b e r es pe ct ed fr om m y c ol le ag ues if m y g rad es ar e g oo d. ライ バ ル に負 け たく な い から 勉 強し な いと 親 や先 生 に しか ら れる から 17 B ec au se I d o n ot w an t to lo se to r iv als . 35 B ec au se I w ill b e sc ol ded b y m y p ar en ts an d te ac her if I d o n ot s tu dy . 仕事 で 必 要に な って か ら あわ て て勉 強 した の で は間 に 合わ な い から 知 識や 技 能を 使 う喜 び を 味わ い たい から 18 B ec au se It` s t oo lat e t o st ar t s tu dy in g a ft er I fin d th at I n ee d i t f or m y w or k. 36 B ec au se I w an t to en jo y u si ng k no w led ge an d s ki lls .

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資料3 「今,どうして勉強しているのか」回答結果 充実志向 1年生 2年生 3年生 4年生 Q1 新しいことを知りたいという気持ちから 27 43 22 27 Q3 すぐには役に立たないにしても、勉強がわかること自体おもしろいから 20 28 10 22 Q8 何かができるようになっていくことは楽しいから 29 45 19 28 Q15 勉強しないと充実感がないから 20 31 14 18 Q20 わからないことは、そのままにしておきたくないから 23 35 12 22 Q30 いろいろな知識を身につけた人になりたいから 29 43 19 26 訓練志向 Q2 勉強しないと、頭の働きがおとろえてしまうから 16 22 10 12 Q5 合理的な考え方ができるようになるため 20 34 19 17 Q7 勉強することは、頭の訓練になると思うから 17 40 16 22 Q10 いろいろな面からものごとが考えられるようになるため 28 37 19 26 Q11 勉強しないと、筋道だった考え方ができなくなるから 12 30 12 8 Q26 学習のしかたを身につけるため 18 27 14 17 実用志向 Q13 学んだことを、将来の仕事に生かしたいから 27 47 19 22 Q14 勉強したことは、生活の場面で役に立つから 25 38 13 18 Q18 仕事で必要になってからあわてて勉強したのでは間に合わないから 10 28 10 15 Q23 勉強しないと、将来仕事の上で困るから 19 38 11 22 Q31 勉強で得た知識は、いずれ仕事や生活の役に立つと思うから 24 46 18 25 Q36 知識や技能を使う喜びを味わいたいから 29 45 21 28 関係志向 Q6 回りの人たちがよく勉強するので、それにつられて 10 22 6 7 Q12 友達といっしょに何かしていたいから 5 14 6 2 Q19 みんながやるから、なんとなくあたりまえと思って 14 23 7 5 Q21 親や好きな先生に認めてもらいたいから 11 26 7 11 Q24 勉強しないと、親や先生にわるいような気がして 13 24 10 14 Q33 みんながすることをやらないと、おかしいような気がして 8 14 4 5 自尊志向 Q16 勉強が人なみにできないと、自信がなくなってしまいそうで 20 20 11 17 Q17 ライバルに負けたくないから 11 18 8 12 Q25 成績がいいと、他の人よりすぐれているような気持ちになれるから 12 24 5 8 Q28 勉強して良い学校を出たほうが、りっぱな人だと思われるから 25 37 12 18 Q29 勉強が人なみにできないのはくやしいから 12 20 9 11 Q34 成績が良ければ、仲間から尊敬されると思うから 11 17 4 7 報酬志向 Q4 学歴がよくないと、おとなになっていい仕事先がないから 24 37 14 20 Q9 成績が良ければ、こづかいやほうびがもらえるから 3 6 6 2 Q22 学歴がいいほうが、社会に出てからもとくなことが多いと思うから 26 44 16 25 Q27 学歴があれば、おとなになって経済的に良い生活ができるから 17 39 14 16 Q32 テストで成績がいいと、親や先生にほめてもらえるから 13 18 9 11 Q35 勉強しないと親や先生にしかられるから 10 15 6 1

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