国際マーケティング・ジョイントベンチャー序論 : 中国市場戦略の基盤再構築に向けて
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(2) 2 ( 116). 第23 巻. 横浜経営研究 図表 1. 第 4 号 (2003). 中国マーケットを 求めて進出した 日本企業の JV 評価. I. Ⅱ. m. 几. 0%. 20%. 40%. 60%. 80%. 100%. 米質問項目 1 「中国側パートナーから 現地マーケットに 関する情報が 入ってこない」. Ⅱ「パートナ 一の自社製品販売が. (中国側パートナ. 芳しくない」. Ⅲ「中国の人材にマーケティンバのノウハウを Ⅳ「中国で得られたマーケティンバ 当てはまらない ,. 一. 2 : どちらとも言えない ,. 米アイテムⅡのサンプル. ). 伝えるのは難しい」. 知識が中国以覚のビジネスにも. 米 すべて 点 尺度 (1 : まったく当てはまらない. 一に製品販売を 委託した場合 貢献している」. 5 : たいへんよく 当てはまる ) で測定されたものを. 3 点 (1. 3 : 当てはまる ) に百集計. 数は 46, それ以外は 161. ヴな 対応に収 飯 してしま. しかし,現場の 声にも疑問が 出てくる.それ. はこうした現場の 状況にどのようなインプリケ 一. ションを与えてくれるのだろうか.. この点 ,. べきことなのだろうか.それとも 日本企業の戦. これまでの研究は ,中国はもとよりマーケティ ング をめぐる国際 mV にいまだ十分な 分析の メ. 略や オペレーションの 拙さを意味しているのだ. スを 入れていない.. は 果たして中国自体の 問題点だけに 帰因 させる. ない,だが一方で, 日本企業にも 期待した メリ. ビジネス現場から 聞こえてくる 声と国際 JV 研究の間には ,ある種のギャップが 横たわって. ソト をいかに引き 出すか,そのオペレーション. い る. これが我々の 基本認識であ る.. ろ. うか .つまり,中国にも 問題はあ るかもしれ. に 問題があ るのではないだろうか. ひいてはそ. だが,国際mV に関する研究は 盛んであ. の 巧拙に企業間格差があ るかもしれない.であ. 特に 80 年代終わりになると ,戦略提携のスタイ. れば, この問題は中国ビジネスをめぐる 日本企. ル として,知識や 学習といったコンセプトを 使. 業のマネジメント 論 として展開されねばならな. って数多くの 成果が現れた. この「知識・ 学習. い. パースペクティヴ」からすると ,. ・. このことは, ]V 方式を採用したからといっ て ,無条件に期待したメリットが 得られるわけ ではないことを 示している.では,従来の研究. る・. さきに挙げた. メリットは,市場特殊的知識の 獲得という領域 として位置づけられる. さらに,. このパースペクティヴによれば ,. パ.
(3) 国際マーケティンバ・ジョイントベンチャー. 一 トナーからマーケティンバ 面のメリットをい. かに得るかだけが 国際 JV の問題ではないこと がわかる.いかにこちらから 現地に知識を 移転 するか,いかに特定の JV で得られた知識をほ かの JV や事業に活かすかといった 問題があ る 先行研究は, この点に関して 多くの発見やイン プリケーションを 示してきた.. しかし,中国JV でのマーケティンバ 現場は, これらの問題に 関しても,いっそうの 検討が必 要であ ることを我々に 訴えていると 思われる. 図表 1 のアイテムⅢを 見ると,多くの 日本企 業が中国人の 人材に対して 自社のマーケティン グ知識を移転するのが 難しいと感じている. ま た,アイテムW を見ると,中国でのJV から 得 られたマーケティンバ 活動の経験が ,本社や第 三国にあ る自社組織のビジネス 展開に貢献して いるとする意見も 少ないことがわかる. つまり,第一の領域と同じように ,知識を中 国に移転したり ,中国で得られた知識をほかの ビジネスに活かすという 局面に関しても ,現場 からはその困難性あ るいは否定的な 見解が出さ れているのであ る. これをどのように 捉えるべきか.そして,. 日. 本企業の中国Ⅰ V に対して, どのようなマーケ. 序論 (谷地腔安 ). ( 117) 3. 直接投資を行うケースが 中国には多い.そのう え,マーケットには 債権 回収や物流面での 問題 があ り,生産能力と 販売能力の深刻なギャップ が起きている.これが生飯並行展開問題であ る ". それにならぶもう 一つの問題として ,マーケ ティン グ ]¥ のマネジメントに 中国ビジネスを. めぐる大きな 問題があ り, これを検討すること が中国市場戦略の 基盤再構築に 直結すると我々 は見ている.. そこで,本稿で明らかにしたりことは ,中国 マーケティンバ JV を分析するためのグラン ド・フレームと 問題が潜んでいる 領域であ る 知識・学習パースペクティヴに 関する先行研究 を振り返りながら ,. グランド・フレームと 問題. 領域を明確にし ,中国マーケティンバTO 分析 の第一歩としたい. 2. 国際マーケティンバ・ジョイント・ ベンチャーとは 2. 1. ジョイント・ベンチャ. 一. 企業が海外に 進出するときには , さまざまな スタイルがあ る,そのなかで,現地法人を設立 する場合, mV 方式をとることがしばしばあ. る・. このような実務と 理論のギャップを 埋め,中国 ]¥ の諸相を明らかにすることをグランド・ テ. JV は,海外現地法人への出資上 ヒ率 という 視 点から分類される.あ る企業が現地法人を 設立 するとき, もしその法人への 出資が自社だけに よ るなら,完全所有 ( Ⅱ伍 077ヂ Owne 』 : WO) 方式と呼ばれる. JV 方式は W0 方式以外のもの. 一%としている.特に , 我々の対象は ,現地で. すべてを含む.つまり , 自社とそれ以外の 企業. の製品販売を 目的としてつくられる JV であ る・ これを本研究では「国際マーケティンバ JV と呼ぶ. また,中国を 対象に設立されたこのよ うな JV を「中国マーケティンバ JV 」と呼ぶこ とにしよう.. が 共同出資によって 現地法人を設立することで. ティンバ上のマネジメント・インプリケーショ ンを与えることができるだろうか.本研究は ,. 」. すでに我々は ,中国のような新興市場では ,. あ る. 図表 2 に見るように , JV では少なくとも 三. つの法人組織が 関わってくる ". 本研究では, あ る企業が特定 回 に直接投資を 行 い , JV を づ くるとして,その 投資企業のことを「自社」と. 生飯並行展開問題が 深刻な問題となっているこ. とを指摘し分析した.欧米市場のように 間接 輸出から販売直接投資,そして 生産直接投資と いうように, ビジネス・スタイルを 段階的にシ フトさせていくやり 方ではなく,最初から 生産. 2) 谷地 [1999]第 3 章を参照のこと , 3) このような図式は Jv 研究で べ一 ス となって い るものであ る・たとえば , Tiemessen. Mallhews[1999] を参照.. et. al [19971,.
(4) 4 ( 118). 第23 巻. 横浜経営研究. 第 4 号 (2003) ル人. タイ 去 J @V. ス 本一. のト. 基ナ. 2. 図表 自社,. 国境,. 図表 3. 出資比率. 日系在覚法人への 出資比率分布. 法人数. 構. 上文. 1[ (%) 二ヒ. 累積構成比. (%). 25% 未満. 361. "2 D.. 5.2. 25 ∼ 50% 未満. 1,015. 14.6. 19.8. 50%. 341. 4.9. 24.7. 50 一 750/@未満. 972. 14.0. 38.7. 75 ∼ 100% 未満. 913. 13.1 48.2. 51.8. 100%. 3 。 363. ムき ロ 千. 6.965. 口. 100.0. 100.0. 米経済産業省『我が 国企業の海外事業活動. (第 30 回Ⅱを出所・ 加工. 米製造業べース.. 呼び, 自社とともに JV に出資する 他 企業を 「パートナー」と 呼ぶ.パートナーは現地国籍. 地 法人に対する 経営権 を十分行使できるかにあ. の 企業と考える.そして ,両者が出資して設立. るというのが ,. した会社組織のことを「 mV 法人」と呼んで 統. ような見方に 従えば, 99% 出資は WCn 方式と見 なしても差し 支えないだろう ", この調査では , 出資比率を 25% レンジでカウントしている. そ れを見ると,出資比率75% 未満の JV は全体の. 一. したい.. 図表 3 で日本企業に 目を向けてみよう.経済 産業省の最新調査が 捕捉した日本企業の 現地法 人 ( 製造業べース ) 6,965社のうち, W0 方式は 3,363 社 48.2% であ り,それ以外のJV 方式は 3,602社 51.8% であ る・共同出資には 比率があ り, 99% でも ]V 方式 と な る が, そ. 概念的にいえば. もそも出資比率が 経営的に問題となるのは , 現 これまでの見方であ る 4.. この. 4) Geringer二 :Hebert [1989/1991] を参照・ 5) 出資比率から 見た w0 方式と Jv 方式について , 明確な境界線は 決められていない.ただし ,先行研 究の多くは 95% を便宜的なラインにしている.
(5) 国際マーケティンバ・ジョイントベンチャー. 図表 4. 序論 (谷地腔安 ). 在米中法人への 出資比率分布. 中国 出資比率. 119)@ 5. 米国 累積構成比. 構成比 (%). 累積構成上. 構成比 (%). (%). ヒ. (%). 25%d未満. 4.4. 4.4. 5.0. 5.0. 25 ∼ 50%d 未満. 16.1. 20.5. 3.9. 8.9. 50%. 8.6. 29.1. 2.9. 11.8. 50 ∼ 750/@未満. 24.1. 53.2. 6.2. 18.0. 75 ∼ 100% 未満. 14.9 31.9. 68.1 100.0. 7.6. 25.6 100.0. 100% 合計法人数. 1,428. 1,251 (第30 回Ⅱを出所・ 加工. 米経済産業省『我が 国企業の海外事業活動 米製造業べース.. 38.7% , 50% 以下でも 24.7% を占める. ]V 方式の採用が 活発なのは,中国やインド. ことであ る.二つのは,設立した法人があ る国 以外のマーケットに 向けて販売することであ る.. る 進出が全体の 大勢を占めてきた.図表 4 は ,. 二つの目的は ,いずれも生産直接投資であ ながら,製品の出荷先という 視点から引き 出さ. 中国と米国を 対比させて,その実態を示したも. れたものであ る. ここでは,一つのの 目的でな. のであ る.合計法人数は両国でかなり 近 い .. される直接投資を「 M DI. のような新興市場であ る・そこでは , JV に ょ. り. し. かし構成比から 見ると,米国と 比較して中国へ. Dfrect. の JV 志向が明瞭に 読みとれる・. 資 ) 」,二つのを「EDI D 斤ec. 2.2. 国際マーケティンバ・ジョイント・ と. コ. 亡. 亡. t. 現地市場志向の 直接投. (Exp ㏄甘 -oHe. 刀亡. ed. Innvestm]en : 輸出志向の直接投資 ) 」と 呼ぶことにしよう f,. このタイポロジーからす. べ. 亡. 亡. ると,本研究で対象とするのは MDn であ る.. ンチャー 図表 3. 血 vestme. (Mar 女e -o ㎡ en ed. EDI は中国マーケットに 販売するわけではない から,現地マーケティンバをめぐる 問題は起こ. 4 には, JV といっても異なるタイ. プ のものが含まれている.はじめにこの. 点を確 誌 しておきたい. まず, これらは生産機能を 持 っ 現地法人であ ることは共通しているのだが. らないからだ. ,. 次に,製造業べー スの統計であ る図表 3 と 4. 一つは,現地のマーケットに 向けて販売する. には定義上, mV であ っても含まれていない タ イブ があ る.それは,生産活動を 行わず,販売 活動だけを行 う 現地法人であ る. これも同じ 直. 6) この分類の詳細は 谷地 L1999」第 2 章を参照. 7) 実は, 間接・直接輸出にはこれとは 異なる定. [1982] 邦訳第 3 章 ). しかし ここでは生産を 本国 ないし第三国で 行うか,あるいは販売する 国で行う. 法人設立の目的に 注目すると大きく. 二つに分け. られる.. 本国内の輸出業 義づけがあ る.それは,間接輸出が 者を通じて海外で 販売することを 指し直接輸出が 現地の流通業者に 販売することを 指すものであ る. 両方に共通しているのは ,海外に自社所有の 販売組 織を設立していないことであ る.そのなかで ,国内 の輸出業者をバイパスして 現地の流通業者と 取引す ることを「直接」という 言葉で表現している (Ro0t. かという視点から , まずは生産直接投資と. 輸出を区. 分する.そして ,輸出のなかで自社所有の販売組織 を現地に設立しているかどうかという 視点から,間 接・直接輸出を 分けている.従って , ここで紹介し た 定義に含まれる 間接・直接輸出は , われわれの分 類で ぃ 6 間接輸出に一括されることになる..
(6) 6 ( 120 ). 横浜経営研究. 図表 5. 第23 巻. 第 4 号 (2003). 海外進出スタイルと 国際マーケティンバ JV. W0 方式. mV 方式. MDI. 現地生産. EDI. 米綿掛け部分が 国際マーケティンバ JV であ る. 接 投資ではあ る. しかし進出スタイルでは 輸 出になる.輸出には大きく分けて「間接輸出」 と「直接輸出」があ る.前者は外部の 業者を通 じて製品を販売することであ る.後者では現地 に 自社所有の組織をつくり ,それを通じて販売 する ". 輸出の場合, MDH や RDT のような区別 は 意味がない. むしろ,輸出では 直接輸出とし て 現地に販売子会社を 設立する場合に ]V 方式 をとるかどうかの 問題が出てくる. 図表. 5. は以上を総括したものであ. る・. のなかで,本研究は「知識・ 学習パースペク テ イ. ヴ」を分析べ ー スとしていく ,ただ,終始一. 貸してマーケティンバ mV にフォーカスを 合わ せた研究が少ないことも. 確かであ る.そこで,. 先行研究のオーバービューを 行い,それに基づ いてマーケティンバ mV を対象にした 本研究の フレームを考える.. さらにそこから 問題領域を. 示す.. JV 方. 3.1. 知識・学習パースペクティヴの 背景. 式で マーケティンバをめぐる 問題が出てくるの は ,現地生産を行 う MDI と直接輸出と、' 、 っ 一つ 一. 国際 WV に関する研究は 当初, W(H 方式を規制 する開発途上国への 参入スタイルという 意味合. の シチュエーションで づ くられた JV において. い から,マクロ ・デー ー。 タによってその 動向を把. であ る・本研究では ,. 握 したり,株式所有比率といった 出資条件の設 定 ,そのアウトプットとしてのmV 法人のパフ. この ょう な JV のことを. 「国際マーケティンバ JV 」と呼ぶことにしよ. 3. 知識・学習パースペクティヴ すでに述べたように. ,. と 国際 JV. 中国マーケティンバ. ]¥ の現場からは ,期待したマーケティンバ面 での メリットが得られないという 声や, もとも と 期待などしてこなかったという. 声 , さらには. 自社からマーケティンバ 知識を移転するのが 困 難 なことや中国マーケテ・インバ JV で得られた. オーマンス や 生存率との関係を 明らかにする 研 究 が多かった ". つまり,それまでの 研究は ,. 国際 JV を組む理由として ,現地政府による WO 方式規制への 対応策, WCn 方式と比較した 投資 規模抑制,マーケティンバなどの 現地に関する 知識の獲得,政府や流通チャネルへのアクセス を 重視し,それらを投資リスクの 回避・抑制と いうコンセプトに 集約してきた 9,.. 知識のほかのビジネスに 対するアプリケーパビ. リティに関して 疑問の声が聞こえてくる. これ らの問題をどのように 定式化し,分析の姐上に 乗せるべきだろうか. そのためには ,国際マーケティンバmV を 見 る 視点・パースペクティヴが. 必要であ る.. mV. これまでの研究を 展望すると,国際 に関 しては古くから 理論的,実証的研究があ る. そ. 「. 8) たとえば, Franko [1971 Ⅳb], Friedman=Beguin 19711を参照・ 9) ここには取引コストの 経済理論を使って w0 万. 式や ライセンシングといったほかの 進出スタイル. る. と. Jv 方式の間の選択条件を 明らかにする 研究も含まれ さ も. に,開発途上国の 多くは政治的な 不安定性. ることから,外国政府による 国際経営リスク qx 見なして 用・没収,資産 Jvを考え. 凍結の可能性を があ. と. る 流れもあ る・たとえば , 梅執 1992] を参照.
(7) 国際マーケティンバ・ジョイントベンチャー. また, mV を形成するにあ たっての意思決定 問題という視点から ,その動機やパートナ 一の セレクションに 注目する研究も 多い.言い換え れば,形成後の実行や ]¥ の変化に関する 研究 が少なかった. さらに,たとえ 実行面でのマネ ジメントを分析射程に qx めても,多くはコント ロールの問題として 扱い,結局は形成にあ たっ ての意思決定として ,出資比率やトップマネジ メントのアレンジメント 問題に還元する 傾向が あ ったⅢ. しかし, 80 年代終わりになると ,国際JV の. 研究は一つのトレンドの 下に置かれることにな る.それは, ビジネスの世界で 盛んになった 戦 略提携のスタイルとして JV を位置づけるとと もに,知識と学習というコンセプトを 使って JV の存立根拠やマネジメントのポイントを 明 らかにしていくという 流れであ る.競争激化や 製品ライフサイクル 短縮, ビジネスリスク 増大 といった,相互に 関連する環境変化キーワード を べ ー スに,グローバルな 新技術・製品開発に. フォーカスを 合わせ,その効果的・効率的な 手 段として国際 JV を議論するようになった・そ. 序論 (谷地腔安 ). 121 ) 7. を見ていくと ,いくつかのタイポロジーがあ. る. ことがわかる. まずはここを 検討しよ. 3.2. 三つの知識タイポロジーとそのリンケ ージ. 一つのタ イ ポロジーは ,. ぅ. えで挙げた国際. JV の目的に沿ったものであ る・ ここでは,国 際 mV に関する知識として 市場特殊的知識,企 業特殊的知識, JV マネジメント 知識があ る・ まず,市場特殊的知識は ,特定回 に立地する 企業の活動に 影響するファクタ 一に関してであ り,その国の顧客やサプライヤコ 流通チャネ ル,法規制をめぐる 知識であ る. この知識に対する 関心のウェートは ,知識・ 学習パースペクティヴの 研究において 大きく異 なっている. 一方で,特定回 に新規参入するとき. , 自社に. 欠けているのがこの 市場特殊的知識であ り,現 地のパートナーからそれを 補う手段として 国際 JV を位置づけ,重視する 研究があ る ".,. もう一方で, この知識にあ まり注目していな い研究があ る. 「特定の海覚マーケットから 得. の議論においてコア・コンセプトになったのが. られた知識や 能力は特殊であ るため,ほかのマ. 知識や学習であ った.. 一 ケットに適用することは 難しい」. すなわち, JV 方式は異なる 企業が持っ知識 を相互に移転しあ い,それをフュージョンさせ ることで新たな 知識を創造する 場 ・手段として 見られているⅢ. さらに,特定の JV で得られた 知識を既存他事業の 強化に活かしたり ,多角化 のための知識として 活かす・ さらには, JV を マネジメントするための 知識としてほかの JV に活かすという よう に,事業上・ 地理上のバロ ーバル な 学習の場・手段として 捉える よう にな ったのであ る 12,. このことは,知識と 言ってもそこにはいくつ かのタイプがあ ることを示している.先行研究. 間学習を通じて 得た (市場特殊的 : 筆者による ) 知識がその合弁以覚に 利用不可能であ るという. , ". 「組織. なら, その知識はあ まり価値を持たない」 ".. と主張する. つまり,そこでは学習成果としての 知識が全 社的に共有・ 共用されるようなものでなければ ならないという 考え方があ る.そこで注目され るのが企業特殊的知識や JV マネジメント 知識 であ る,. 13) Bea ㎞ sh=Inkpen [l995], Sim [onln . 1999b], Griffilhelal.[2001] を参照・. 昭州. 参. 、ン. を. 6 8. ぺ. び照照. お る を. よ奏 参. 一一一. ミリ. ジジジ. 83. 090 090. 山 大高. 01211l. 14) DeliosⅠ Bea ㎞ sh [2001],P.l029 を参照・ほかに , Berkema elal. [1996], Madhok [l9971も 同じ。 ナ とを 指 摘 している. 15) 高井 [2001], 54 ぺージ な 参照・ほかに lnkpen [19951,P.53 も同じことを 指摘している.
(8) 8@ ( 122). 横浜経営研究. ・. 第23 巻. 企業特殊的知識は , 大きくはあ る企業のビジ. ネスそのものに 関する知識であ り, より絞り込 めば特定のパートナーが 専有的に持っている 知 識 であ. る樹. .技術はその典型だ,パートナーが. 第 4 号 (2003) い 知識であ る. 「個人が知らないことをチーム. や部門は知っている」と 表現されるように ,個 人が移転に努力しても ,その帰属スパンが広い. ゆえにそれが 難しいという 特性を持つ ". 移動 型知識を個人特殊的知識,密着型知識を 組織 特. 持っている既存技術や JV での活動を通じて 相 互の知識をフュージョンして 生まれた技術をバ. 殊的 知識と呼ぶ研究もあ る,。 ,.. ローバルかつクロスビジネスで 活用していくこ. このようなタイポロジーをべ. とは,多くの 研究で重要視されている.. ー. スとする研究. は,国際ビジネスにとって 必要となる知識がし. JV マネジメント 知識は協調ノウハウ ,パー. mV に活かすか,いかにしてそれが可能な知識. ばしば後者の 組織特殊的知識であ り,特定の人 材をスカウトしても 獲得が困難であ るからこそ, 国際 JV という知識の 獲得装置が形成されるの だと主張する ". 個人ではなく ,組織を通じて 存在する知識は ,組織によってこそ獲得・移転 されるという 考え方であ る. さらに, このよう な 知識は参入時点で 自社に欠けているだけでは なく,その後に 経験を蓄積しても 得るのが難し いこと, これが国際 JV を組む根拠になるとい う考え方もあ る ",. を創り出すかⅨ. グローバル競争時代の 課題と. 三 つ 日のタイポロジーは ,知識自体の特性に. トナリンバ知識とも 呼ばれ,パートナーと 協働 するために必要となる 知識を いう .パートナー が持っ知識を 得るための知識, JV をうまくマ ネジメントするための 知識であ り, JV 経験の なかで蓄積され ,ほかのJV 事業の設計やマネ 、ジメントのインプットとなる. ".. つまり,特定の]V から得られた 知識をいか にほかのビジネスに 活かすか, いかにほかの. して, このようなニーズにフォーカスを 合わせ. よるものであ る.. ているのであ る.すると,端的に 言えば,市場. 定個人に内包されたり ,機械に具体化されてお. もっともシンボリックなのが 知識の暗黙性・ 明示 (形式 ) 性であ ろう.知識の暗黙性が高い ほど,その移転・ 獲得はより困難であ るという 命題を立て,実証してきた ". だが,国際JV を 組む理由として 重要とされるのが 暗黙知の獲得 であ る.形式知の獲得には多様なメソッドがあ るが,暗黙知の獲得はとくに 市場取引では 難し く,そこで国際mV という枠組みを づ くり, さ らにそのなかに 適切なメカニズムを 構築して達 成しようと考えるのであ る ". さて,以上に 示した知識には ,異なるタイポ. り,それゆえに 移動が素早く 容易な知識であ. ロジ一間でその 重複性をめぐる 議論があ る. こ. 特殊的知識と 企業特殊的知識・ JV マネジメン. ト知識の間の 大きな違いは ,各知識が特定JV のビジネス以覚に 使えるかという ,外部的なア プリケーパビリティという 基準にあ るように見 える. 二つ目のタイポロジーは ,知識の所在あるい は帰属スパンをべ. ー. スとするものであ る.. そこでは,移動型知識と 密着型知識という ィ. タ. ポロジーが提示されている.移動型知識は 特 る. 一方,密着型知識は個人やバループの 間の関係 のなかに存在し ,それゆえに表現や移動が 難し. こも検討しておく 必要があ る.. 1g) Badaracco n1g91]邦訳第 2 章および第 4 章を参照 20) Cho Ⅰ Lee[l997], P.36 を参照 16) Ⅲemessen etaI.[1997],P.380 を参照・ 17) Simonin [19971, ⅢemessenetaI.[1997] を参照・ 18@ Lyles 二 Salk [l996], Lyles [1988], Simonin [1997], Nonaka [l990l, von Krogh etal.[2000]邦訳第 9 章を参照.. 21)@ Choi=Lee@[1997] ,. p. ・. 43 , Makino=Delios@[1997] ,. p.377-378を参照・ 22) Makino Ⅰ Delios[19971,pp.377-378 を参照 23)@ Child=Faulkner@[1998] , p , 295 , Simonin@[1999a/b] , Weslney [2001]を参照.
(9) 国際マーケティンバ・ジョイントベンチャー. まず,暗黙知と 市場特殊的知識の 関係であ る. しばしば,市場特殊的知識は 暗黙 知 に一意に 結びつけられることがあ る. しかし,暗黙性と 市場特殊性は 相互に分けて 考えるべきであ る. 言い換えれば ,市場特殊的知識にも 暗黙的なも のもあ れば明示 (形式 ) 的なものもあ るという ことだ '。'.. 序論 (谷地腔安 ). 123) 9. 知識をいかにしてほかのマーケットに 適用する か,その可能,性をいかに考えるか, ここにこそ グローバル な パースペクティヴから. 見た国際. JV マネジメント 論の間 題 領域があ る.であれ ば,第一のタイポロジ 一であ る外部アプリケー パビリティという 基準に基づくダイコトノミー は 暖昧 になってくる.. 確かに,市場特殊的知識というのは ,ほかの マーケットへのアプリケーパビリティによって. 定義されている.一口に 言えば「移転できる か ? 」という問いに 由来するが, もつと特定化 すれば,ほかのマーケットでのビジネスにとっ て有効であ るかどうかという 基準による問題で あ る. しかし暗黙性は 同じように「移転でき るか ? 」という問いを 起点とするが ,特定化す ると「移転したくても 方法的に難しい」という 基準から識別されたものであ る.同じ移転可能 性の問題であ っても,両者は次元が異なるので あ る. これは議論の 錯綜を回避するうえで 明記. 次に,企業特殊的知識と 組織特殊的 (密着型 ) 知識の関連であ る.それぞれが異なるタイポロ 、ジ ー から導かれたものであ. るにもかかわらず ,. 企業組織のなかに 埋め込まれ,それを特定の個 人が単独で再生することができない 点 , さらに それが企業としての 競争優位べ ー スとなり. ぅ. る. と主張する点で 両者に共通点があ る. 三つのに,個人特殊的 (移動型 ) 的 (密着型 ). 知識と暗黙 知. ・形式 知. . 組織特殊. との関係で. あ る. これを唱えた Badaracco. によるタイポロジ. 一. のキーワードを 取り出して対比したのが 図表. 6. すべき重要なポイント だ .. であ るが, ここから個人特殊的知識と. また, ここから市場特殊的知識自体の 考え方 にも再考の余地が 出てくる.市場特殊的知識と は,研究者がアプリケーパビリティの 低さをア プリオリに決めて 定義したことであ る,だが, 果たして特定マーケットでのビジネスから 得ら れた知識のすべてが ,ほかのマーケットに 適用 できないのだろうか. ここも注意すべきポイン トであ ろう.なぜなら ,確かに市場特殊的知識 を従来通り定義すれば ,ほかのマーケットに 適 用 できないという 意味で自社にとっての 価値は それほど高くないという 見解になる. これは多. 組織特殊的知識と 暗黙 知 という対応関係があ る ただし,完全には対応できない 個所も認めら れる.それは,個人特殊的知識と 暗黙知の所在 が 個人にあ る点だ.なぜこの26 な 関係が見ら れるのか.それは知識を個人からほかの 主体に 移転させることの 意味のなかにあ ると思われる. 個人特殊的知識が 組織特殊的知識との 比較から, その物理的な 移動可能性にフォーカスを 合わせ ているのに対して ,暗黙知は個人が端緒的に保 有するものの ,それを他者に移転する際の 可能. くの研究者が 言ったことであ る. しかし, これ. 性・困難性にフォーカスを 合わせているという. ではあ るマーケットで 得られた知識をほかの マ. ことであ る.ひじょうに単純化すれば ,個人特 殊的 知識はそれを 保有する主体が 知識を必要と する場所に物理的に 移動して自らアクションを とれば,それで 移転されたと 解釈することがで きるのであ る.だが暗黙知は 違 う .特定の個人 に留まっている 知識をほかの 個人に移転するこ とを重視する.それが 難しいのが暗黙 知 であ る. 一 ケットに適用するという 問題領域がアプリオ. リに封殺されてしまうことになり ,議論の余地 がない.むしろ,特定のマーケットで得られた. 形式 知 ,. と見られる.. l 7 9 9 l. De. 叩. を. ㎝. 3,. Ⅵ. 2[. 9 ]. e. 匝. p. 朗聡蛆. からこそ問題にするのであ る..
(10) 10 ( 124 ). 横浜経営研究 図表 6. 個人. 第23 巻. (移動型・組織特殊的. 移動型知識. 第 4 号 (2003). (密着型 ). 知識と暗黙 知 ・形式知 ). 密着型知識. Ⅰ. 取引関係を形成する Ⅰ. ,情報フロー 意志決定方法 Ⅰ Ⅰ. Ⅱ 形式的. 暗黙的. では,知識タイプ間に相互リンケージがあ. っ. たり異なる点があ る と のは,何を意味して う. いるのだろうか.. によって獲得・ 移転するのが 困難だからこそ ,. mV がその場として 設立されるという. だが, JV を形成したからといって 自動的に知識の 流. ス. れが発生するわけでもな い .現に,それが 日本. に 国際 mV を分析するのか ,その優劣を考えて. 企業の中国 JV からも聞こえてくる.そこで ,. いずれかを選択するのではなく ,. その獲得や移転をいかに 行うかと いっ, プロセ. それは, これらタ イ ポロジ一のどれをべ. ー. リンケージを. 考慮しながら 分析するというアプローチが 必要 であ ることを意味している. 特に, これは国際 mV における知識の 獲得・ 移転をプロセスとして 分析し,その有り様を明 らかにするにあ たり重要なポイント だ .その重 要 性は野中らによる 知識創造モデルが 明らかに している・. 知識・学習 パ一 スペクティヴの 先行研究は ,. 国際 JV の問題として ,知識の獲得や移転をい かに行うかという. ,プロセスあるいはメカニズ. ス あ るいは メヵ ニズムの解明が 求められるので. あ る. 暗黙矢ロ と 形式矢ロというタイポロジーをコアに. しつつも,ほかのタイポロジーとの 関係を明ら かにしたものとして ,野中[1991]の研究が挙げ られる・この 研究は国際 JV にフォーカスを 合 わせているわけではないが ,戦略提携全般を 対 象 として,組織間での 暗黙的な知識の 移転・ 獲. 得 メカニズムを「対話」あ るいは「対面的相互 作用」として 捉えた.. ムの解明を強調している '。'. 異なる企業間で 対. 象 となる知識が 暗黙的であ ったり組織特殊的で あ ったりして,市場取引や 特定人材のスカウト. 26) Inkpen [1997], pp.338-339. Tiemessen [1997],P.371を参照. et. al.
(11) 国際マーケティンバ. (@125@)@11. ,ジョイントベンチャー序論 (谷地腔安 ). そこでは,いまや有名になった「組織的知識. ( 市場・企業特殊性,. JV マネジメント. ). が相互. 創造の SECI モデル」が示されているが ,戦略. にリンクしており ,そのなかで知識がダイナミ. 提携で重要なのは 知識転換プロセスのうちの 表 出化と内面化であ るとする ". この二つは暗黙 知と 形式知の転換プロセスであ り,そのプロセ ス として対話・ 対面的相互作用を 挙げている ".. ックに移動していくと 捉えねばならないことを. このメカニズムは 知識の転換プロセスを 促進し,. ひいては組織間の 知識移転・獲得,創造を 促進 するというのであ る.. 意味しているのであ る.言い換えれば, どれか. 特定の知識タイポロジーを 採用しても国際 JV での知識をめぐる 問題は捕捉できず ,解けない ことを意味している.. 換プロセスであ ると主張した.具体的には 知識 の獲得・移転には 個人・集団・ 組織・組織間と. 3.3 プロセス視点による 知見 知識・学習パースペクティヴの 研究は,国際 JV をめぐるこうした 知識に注目しいかに 自 社がそれを獲得するか ,逆にいかにして自社か ら移転するか ,その条件やメカニズムの 解明を 目的とする.そこでとられているのは 知識が獲 得・移転される ,そのプロセスに注目するとい う視点であ る. これまでの研究のように ,知識の流れを 出. いうレベルがあ り, また知識の牛ぎ,性に応じて移. 資,非出資の選択や出資比率の 選択, トップ マ. 転・獲得のメカニズムがあ ると考えた.. ネジメントのアレンジメントのような 制度的問 題に還元してしまうのは ,議論として十分では ないという考えがあ る.むしろ,実際にどのよ. そのうえで野中が 強調するポイントが. ミク. ロ ・マクロという 視点であ る. これまでの研究. の多くは,組織間での 知識の流れをマクロ・レ ベルで捉えてきたことを 指摘し,知識の流れは たとえ組織間という. 名辞をつけられたとしても ,. その中身はミクロとマクロ・レベル 問の知識転. つまり,知識の獲得や移転というのは ,暗黙 知 ・形式知の間の 転換プロセスであ り, また各 知識を転換せずにそのままほかの 主体へと移転 するプロセスなのであ り,そのプロセスを 傭撤. うに知識の流れが 起こったり滞ったりするのか ,. その中身,プロセスにフォーカスを 合わせよう. したときに個人から 組織間というレベルでの ス. としてきたのであ る.. パイラル構造が 見えてくる.. そうすることで ,一口に知識の獲得・移転な どと言っても ,注意すべきポイントがあ ること. これは知識をべ ー スに国際 JV を見るにあ た. り,知識特性 ( 暗黙性・形式性 ), 知識の帰属 スパン (個人・組織特殊的 ), そして目的次元. がわかっている.. 第一に,知識の獲得が持っ具体的な 意味であ る・. 27) この時代にはまだ「 SECl プロセス」というタ ーム (vonKroghelaI. [2000], 妹尾ほか 編 [20011) は. 先行研究は, 自社から見たパートナ 一の持つ 知識へのアプローチには ,アクセスと 内部. 提示されておらず , また表出化は 分節化と呼ばれて. 化・獲得があ るとしている 棚 .前者は,パート. いる.. 28) 野中によれば ,対面的相互作用は 要約すると. ナ一の持つ知識が 特定提携事業のアウトプット. 四つの特性を 持つ , ①実在情報の 存在.それは言葉 に 限らず,態度や 行動といったノンバーバル な 情報. にのみ具体化されるものであ り,たとえばパ一. を含むものであ るために,大量かつ 細かな情報を 効 ほかのメカニズム 率的 ・正確に送ることができる ではこれを代替できない.②同時受発信と 同時進行 が可能であ ること.③瞬時のフィードバックが 可能. トナ一の流通チャネルを. を委託するのはその 典型であ る.これは結果的. に相手の知識を 利用して自社製品のマーケティ l 5 9 19. en. kp. am. sh. Be. 5 8 4 8 p p. 91. 19. 参. m a 昭 .一. H. p. 認・訂正できる.. 29) を 30. であ ること.④小参上が 可能であ ること.つまり , 相. 互 作用のなかで 発生してしまった 誤解を発見・ 確. 通じて自社製品の 販売.
(12) 12 ( 126 ). 横浜経営研究. 第 4 号 (2003). 第23 巻. で結 のの. き. たそ. ント だ ,すなわち,パートナ 一の知識獲得とい. っても, 自社にとってはその 知識を内部化する か,あるいは知識をパートナ 一に置いたまま パートナーが 協働ビジネスのためになにがしか. て. 知識を獲得するという 言葉に複数の 意味があ る ことを指摘していると 考えられる. ここはマー ケティンバ JV を対象とするときに 重要なポイ. し. かしそれだけではない. 自社がパートナ 一の. 対. し. 明ル. 知識へのフォーカス・シフトを 示している.. う. 方 他. ところが,そのような 関係では組織間学習が 促進されなかったり ,そもそもパワ 一関係で抑 えられるようなパートナーは 自社にとって 必要 となる優れた 知識を保有しているか 疑問になる. @. このダイコトノミーは ,一見すると 市場特殊 的知識から企業特殊的・ 国際 JV マネジメント. ナ. 示された,。 ,.. っ Ⅰ. プリケーションが 可能となる.. の. 大きなプレゼンスを 持っよ. 方. を有効に展開することを 意図しているもの であ るが,パートナ一の知識が自社に 入ってき ているわけではない.一方,内部化とはまさに それを行うことであ り,そこから特定の mV に 限らず,新しいマーケットや 製品,事業へのア ング. になれば,いわば. 支配・従属的な 関係が発生し ,パワ一によって コンフリクトの 発生を抑止できるという 考えが. という,学習のトレードオフが 生まれることに なってしまう.言い 換えれば,そうしたパワ. 一. 関係に基づくのとは 異なる新たなメカニズムを. 構築しなければならない. その意味で, 国際 JV マネジメントには 単一企業とは 異なるマネ 、ジメント・メソ. ド ロジーが必要であ ることが意. 局面を見出してはいたが ,むしろ両者を別個に. 識された. そうして研究が 進められた結果,なにも 従来 的なパワー・コントロールによらずとも ,国際 JV で想定されるコンフリクトを 解消し,知識 の移転や獲得がなされることが 明らかになって きた,". このことは,知識の 獲得・移転という 明確な戦略的意図を 維持した ぅ えで,そのため. 扱ってきたのであ る, しかし,知識・ 学習 パ一. のメカニズムが 重要であ ることを示すものであ. スペクティヴに 基づくと, これらはまさに 知識 という視点から ,獲得のスタイルとして 一括す ることができるようになる. 第二に研究が 進むなかで,国際JV の安定性 や成果に関する 従来の知見の 妥当性が問われた. る.. のアクションをとることで ,結果として自社に 貢献する.つまり 知識を覚 化したままでの 活 音は. 用 という二つの メソド ロジーがあ ることを示し ている. この点,マーケティンバ・メリットを 追求する国際 ]¥ の研究は,表面的には二つの. ことであ る.. 第三に,国際mV を知識・学習パースペクテ. ィヴから捉えるときの 重要な問題として ,知識 創造のための メソドロジ 一に国際的な 相違のあ. ることが明らかになった. すでに述べたように ,知識創造モデルは 知識. のマネジメント 問題をコントロール 問題と見な. の転換プロセスとして 四つを挙げたが ,これら は個人から集団,組織,そして 組織間というレ. して,出資比率やトップマネジメントのアレン. ベルをまたいで 行われる, しかしそのどれが. 、ジメント決定問題に 還元してきた.そのべー ス. 重視されるかに 国際的な違いがあ ることが指摘 された ",. まず,欧米企業には 形式化志向があ ると言わ. すでに述べたように ,従来の研究は国際 JV. になる考え方は ,国際JV とはそもそも 異なる 組織間のリンケー ジ であ り,企業間コンフリ ク トの発生可能,注が高いこと,それが安定性や成 果に大きく影響するというものであ った. そこ で ,パートナ一間でのコンフリクト 発生可能,性. をいかに削減するか ,その条件を探ろうとして. 「. 30) 矧 ling [19831を参照・ 31) たとえば, Pucik [1988], Inkpen [l995], 高井 2001]を参照・.
(13) 国際 マーケティンバ. ,. ジョイントベンチヤ 一 序論. 、. れる.これは,暗黙的な知識を 形式化し (分節 化・表出化 ), さらにそれを 形式 知 として組織 的に共有しょうとする (連結化 ) 傾向があ るこ とを指す.一方,日本企業には 暗黙 知 志向があ ,暗黙的な知識を 暗黙 知 のまま移転・ 共有し ようとする (共同化・社会化 ) 傾向があ るとい り. うのであ る. 知識創造の メソドロジ 一に国際的な 違いがあ. る場合,双方はまずこの 違いを認識し ,相手の メソド ロジーを理解しなければならない・あ る いは,一方が他方の メソドロジ 一に合わせなけ ればならない. これが難しいのであ る・だが, これができないと 協働も難しくなる.この 研究 は国際 WV に フォ 一ヵ ス を合わせたものではな いが,知識・ 学習パースペクティヴから 見た国. 際 JV の根本的な問題であ ると言える, この議論では ,問題の難しさを 認めっ っ. も. だからこそそのためのマネジメントを 開発する ことにより,異質な 視点からのリッチな 知識の 創造が可能になると 主張する,こうした 知識創 造の基盤作りにまず 必要なこととして 対話的相 互作用を挙げていることは ,すでに見た議論と 同じであ るが 甜 ,そのうえでもう 一つ提示され た コンセプトが「バローバル・プロジェクト. リーダー」という 主体であ った・ このアクターは ,知識創造のメソド ロジーが 異なるメンバ 一間で暗黙知の 共有を促すフィー ルド・ビルダー. ( 場の創造者. ), 国別の暗黙 知. の形式化を促す ナ レッジ・エンジニアとして ,. コンセプト創造とその 実現を支援するチームリ ーダ一であ る. このようなアクターは 国際的な 拠点間の相互作用による 製品開発というコンテ クストから定義されたものであ る. しかし 国 際 ビジネスにおける 知識問題を見るとき ,これ を意識して積極的に 解決する役割を 持ったアク ターが必要であ ることを唱えている 点で重要だ・. 谷地腔安. ). ( 127 ) 13. 4, 国際マーケティンバ JV における 知識サークリンバ・プロセス 4.1 三つの サ一 ク / ン グ ・コンポーネ、 ント 中国マーケティンバ JV の現場から聞こえて くる声を知識・ 学習パースペクティヴに 乗せる と, どのような領域の 問題になるのだろうか・ 大きくは三つの 領域があ る・ 第一 に,知識の獲得という 領域での問題であ る.. 国際マーケティンバ JV は,自社の海外進出 スタイルとして ,マーケティンバ面でのメリッ トをパートナ 一に求める枠組みとなる.あ る外 国マーケットに 参入しようとするとき ,自社に は 現地マーケットに 関する知識や 製品の販売チ ャネルが欠如している.そこで 現地企業をパー トナーとして JV を組み,知識やチャネルを獲 得・利用しようとする・この 局面は先行研究で. も古典的といえるような 国際 JV の動機となっ てきた,知識・ 学習パースペクティヴからする. と,これは自社にとっての 知識の獲得をめぐる 領域となる.そして,先行研究の展望に示され たように,この獲得という言葉のなかには , パ 一 トナ一の知識を 内部化することと ,パートナ. 一の持つ知識を 外部化したまま 活用するという 次元があ る,. ここで,パートナ 一の知識を内部化する 点に 関して,ただちに次のような疑問が 生まれてく る .それは,自社は 知識を内部化すること 自体 を目的としているのかという 疑問であ る・それ は違う.パートナーからの 知識は,現地マーケ ットでの製品販売を 効果的・効率的に 行い,結 果として参入を 成功に導く,インプットとなる ものであ る.すると,そこでは 自社は何を行っ. ているのか.パートナーから 得た知識と,自分 たちが持つ知識とを 結合するという 作業であ る・ そうして有効な 戦略をつくり. ,実施していくの. 召 日" @召 目@ @. 80l]. 拳拳 なな. 89 99 ll. 23 33. 中[中 [ 野野. であ る.つまり,国際マーケティンバ JV には パートナーが 持つ知識と自社の 持っ知識を結合 するという領域が 存在する・ ここから,知識の 獲得と結合は 継起的なプロ.
(14) 14 ( 128 ). 横浜経営研究. 第23 巻. セス であ り,かつ一つのシンセシスになって い. ることがわかる・ 本研究では,知識の結合を合. わせてこれを「知識獲得」とし ,国際マーケテ ィング JV における第一の 問題領域とする・ 第二に,以上を知識が流れるべクトルから 見 ると,パートナーから 自社の方向に 向かう矢印 として示すことができるだろう.すると ,. ここ. から逆の方向,つまり 自社からパートナーへの 知識の流れが 想定されることになる.それは 自 社が持っマーケティンバ 関連の知識をパートナ 一に提供するというものであ る.. 確かに,パートナーは現地マーケットに 関し て自社よりもリッチな 知識を持ち合わせている だろう. しかし, 自社は本国でマーケティンバ 活動を行ってきており ,そこから知識を 蓄積し ている.しかも ,自社が複数の国でマーケティン グ活動を行ってきた 多国籍企業であ れば,そう した国での活動に 基づく知識を 備えている. 本 国 ・第三国で培ってきた 知識を,対象とする 現 地マーケットに 適用できるかどうかというクエ. 第 4 号 (2003). 図表 1 によれば,多くの日本企業が中国人の 人材に対して 自社のマーケティンバ 知識を移転 するのが難しいと 感じている. 日本企業の中国 JV 現場から聞こえる 声は, この第二の領域で あ る知識移転に 関しての問題であ る. さて,以上に見た二つの局面には 共通点があ る・それは, フォーカスとしている mV のマー ケティンバ・ビジネスに 対象が限定されている. ことだ・言い 換えれば, 自社による知識の 獲 得 ・移転は,その JV が目的とする 現地でのマ ーケティンバ 活動を成功させるためになされる. しかし知識・ 学習パースペクティヴの 先行. 研究は,第三の 領域を提示している.それが 「知識 再 創造」であ る・特定の JV を通じて知識 の 獲得・移転が 行われる.それを通じて知識が. 生まれることが 考えられる.知識 再 創造とは, 現地で生み出された 知識を, さらにほかの 新 規・既存 JV のマーケティンバ 活動に活かすこ とであ る・ また, JV という枠組みを 超えて, ほかの国でのマーケティンバ・ビジネスにアプ. スションが出てくる. これは国際マーケティン. ライすることであ る.野中らはそれを「ローカ. グ研究においてコアとなってきた 領域であ る 34... ル知識のバローバル 化」と別称した 矧 .. 重要なのは,国際マーケティンバ JV では,. また,. しばしば特定マーケットにしか 使えないと見ら. パートナーが 自社製品の販売活動を 行ったり,. れてきた市場特殊的知識が , 実はそうではなく. パートナ一の 人材が mV 法人に移管され ,彼ら が販売活動に 従事することであ る. そうして,. ほかのマーケットにもアプライしうる 可能,性を. パートナ一の 人材が現地マーケットで 販売活動. を展開するにあ たり, 自社が蓄積した 知識を利 用してもらおうという 意図が生まれてくる. この意図をアクションに 移すとき, 自社から パートナ一に 向かって知識フローが 発生するこ とになる. ここでは,パートナ 一の人材が知識. を受け取り,それを 自らの知識と 結合して販売 活動を展開する ,このような局面は,自社から 見ると「矢口 調 移転」という 第二の領域となる.. 指すコンセプトであ る. しかし,冒頭のデータは ,. ここにも日本企業. の中国マーケティンバ JV をめぐって問題があ ることを示している. 中国でのマーケティンバ. JV 経験から得られた 知識をほかのビジネスに アプライすることに ,否定的見解が投げかけら れている. ここから,得られた 知識が実際に 市 場特殊的であ って,ほかのマーケットでの ビジ ネス. にアプライする 意味がないのか ,それとも. 日本企業にもともとそのような 意識がないのか , あ るいはアプライしたくてもできないファクタ. ーが市場特殊勝以覚にあ るのかという 素朴な疑 34) これは標準化・ 適応化問題と 呼ばれ,国際マ 一 ケティンバ研究における 中心問題であ る.その基 本構図に関しては , TheodosiouⅠ Kalsikeas [20011を参 照・. ,. 35). von. Krogh. eta@ , ・. [2000]邦訳第 9 章を参照.
(15) 国際マーケティンバ・ジョイントベンチャー 図表 7. 序論. (谷地腔安 ). ( 129 ) 15. 国際マーケティンバ」 V の知識サークリンバ・プロセス. 自社グローバル・ネットワーク. 自社本社 結ムロ 口. マーケティンバ 知識 の「 再 創造」. mV 法人 「. パートナー. マーケティンバ. 自ネ土. 知識の「獲得」 口 結ム ロ. 結合 マーケティンバ. 問 が浮かぶ.国際マーケティンバ. 研究における 標準化・適応化問題と 関連して,ここは非常に 重要で,検討価値があ る領域だと思われる・ このように,従来の 知識・学習パースペク テ イ. ヴを国際マーケティンバ mV に適用してみる. と ,図表7. に示すように ,マーケティンバ知識 の獲得,移転,再 創造という「サークリンバ・ プロセス」があ ることがわかってくる. このサ. ークリング・プロセスを 構成する三つの 領域が, 国際マーケティンバ mV における知識活動の コ ンポーネン 4 .2. ト. となる.. イング知識は ,獲得すること 自体が目的ではな く,それを自らの 知識に結合することで ,初め て現地に対するマーケティンバ 戦略の策定や 実 行, さらにそのマネジメントに 貢献する・移転 と結合も同じであ る. この場合は自社とパート ナ 一の人材を両睨みする. 自社が持っている 知 識を移転すること 自体が目的ではない・ 移転し た自社の知識をパートナ 一の人材が自らの 知識 と結合する.そこから 現地に対するマーケティ ング戦略の策定や 実行, さらにそのマネジメン トが 展開されるのであ る.. サークリング・プロセス・コンポーネ、. つまり,知識の獲得・移転は ,知識が流れる 二つの方向からセットとなっている.自社を 視. ント のリンケージ. 点とするのではなく , 自社とパートナーを 両睨. 国際マーケティンバ JV には,マーケティン. グ知識の獲得,移転,再 創造というコンポーネ ントがあ り,これをまとめて 知識のサークリン グ ・プロセスと 呼んだ. しかし,サークリング・プロセスとして 捉え ると,三つのコンポーネントには 相互にリンケ ージがあ ることもわかる. まず, 自社が期待するパートナ 一のマーケテ. かすると,コンポーネントとして 挙げた知識の 獲得と移転は , mV 法人内において 方向が異な る知識の流れとしてまとめることができる.. こ. のように獲得・ 移転をセットで 捉えるのはマク. ロ・べ ー スの JV 研究に多い・. しかし,本研究. ではこのような 見方をとらず ,あえて獲得と移 転を分けておくことにしたり. 理由は二 つ あ る.一つぼ,あ くまでも現地に.
(16) 16 ( 130 ). 第23 巻. 横浜経営研究. 投資する自社の 視点をとることで ,国際JV の. 第 4 号 (2003). となるからであ る.二つめに,すでに先行研究. という局面になる.一方,本社をコアとする 自 社ネットワークからすると , これは JV に対す る知識の移転という 局面になる. ここから知識. では,獲得と 移転の間で異なる 問題があ ること. の再創造とは ,. が示唆されているからだ.たとえば ,知識の流 れに影響するファクターとして ,それに関わる. 見た知識獲得・ 移転のシンセシスとなるのであ. マネジメント 論を展開することが 本研究の目的. 主体のモチベーションとインセティヴがあ. り. グローバル・ネットワークから. る.. 以上の議論は 何を意味しているのだろうか.. これが流れる 方向で異なっているという 指摘が あ る '". 一方,先行研究によれば,知識の獲得と 移転 には共通する 問題があ ることもまた 確かであ る. 重要なのが獲得・ 移転の対象となる 知識の性格 であ る.先行研究は知識の暗黙性・ 明示性や組 織性・個人性という 特性を識別し ,そのような. してフォーカスとする mV 法人をうえから 眺め ると,理念型としてはすべてのユニットにおい て知識の移転・ 獲得そして 再 創造が行われてい. 特性が獲得・ 移転のフィージビリティ やメソド. グ ・プロセスを 考えることができる.. ロジ 一にインパクトを 及ぼしていると 指摘して いる. これは,獲得・ 移転の両方に 共通の課題. 図表 8 をべ ー スに示そう.. まず, 自社の本社・ 子会社ネットワーク , そ. ることがわかる.. このようなグローバル・マッ. ピンバから見るからこそ ,知識のサークリン しかし図表を 見てわかるように , このこと. かもしれない. 本研究では, まず二つの領域それぞれを 別個 に検討し,そのうえで 双方に共通する 問題を検 討するというアプローチをとっていくことにし. は実際に分析する 際にサークリング・プロセス が複雑に錯綜するうえ ,三つのコンポーネント を特定化できなくなることも 意味する. 図表で本社と JV の間に知識のそりとりがあ るとすれば,本社からJV への流れは本社から 見て移転, JV から見ると獲得になる・そして 流れは 逆 方向にもあ る. この場合は本社から 見 て獲得, JV から見ると移転になる・ ここに,. たい.. さらに第三国のユニットが 加わるのであ る.. があ ることを意味している. この問題を国際マ ーケティンバ JV に適用する場合,共通のフ ン 一. ムワークのもとに 統合していくことができる. 次に関係するのは ,知識の再創造と 獲得・移. グローバル・ネットワーク 内にあ る特定の組. 転であ る, この関係はフレームを 少し広げてお. 織ユニットにフォーカスをフィッ クス しなけれ. く必要があ る.従来の研究は ,. ば,知識活動を構成する獲得・ 移転, 再 創造が どれになるのか 規定できず,簡単に議論は混乱 することになる・ フォーカスを 特定の JV にフ. フォーカス とす. る JV. を始点にして 知識の再創造を 考えてきた と言える. しかし知識の 再創造は自社のほか の JV や WO 子会社でも行われている・つまり 知識の再創造はフォーカスとする JV を始点と するだけではなく ,そこを終点とするものもあ. 学習パースペクティヴの. る .ほかの組織ユニットから 知識が入ってきて ,. その多くが明確にしていないポイントはここに. それが JV 内部の知識と 結合することになる・ まさに入ってくるこの 流れは, mV にとって自. あ る.. 社のグローバル・ネットワークからの 知識獲得. ィッ クス してこそ,国際マネジメントmV 論が. 展開できると 我々は考えている.実は ,知識・ 先行研究を見るとき. では,特定の組織ユニットにフォーカスを 固 定すると,グローバル な 問題が射程外に 飛び出 すのだろうか.そうではない.知識サークリン グ ・プロセスを 議論する限り ,. 36) Mudambi[2002l,P.4. を参照. ローカルな問題. と グローバル な 問題は密接にリンクしている.
(17) 国際マーケティンバ 図表 8. ,ジョイントベンチャー序論 (谷地腔安 ). グローバル・マッピンバとしての. ( 131 ) 17. 矢口調サークリング・プロセスとその 複雑性. 自社第三国法人. 一 Ⅰ 回 一 二 回 Ⅰ 二 再 創造. 再 創造. 自社本社. 再 創造. mV 法人. 回. /( Ⅰ 4% 早 ) 隻イ. パートナー. 白ネ土 I@. ⅠⅠ. 中国市場参入に 関する我々の 先行研究でも ,同 じように中国一国の 参入問題を検討した 帰結が, 日本企業のグローバル な 問題の発掘につながっ た 3". 分析のプロセスにおいて ,特定の国際JV. にフォーカスを 合わせても,知識活動を 見る限 り. , グローバル な 問題は自然に 射程に入ってく. I. 移転 ). 4.3. 人材べース視点の 知識サークリンバ・. プロセス 最後に,知識・ 学習パースペクティヴに 立っ. て国際マーケティンバ JV を見る場合, もう一 つ強調しておきたい 視点があ る.それは人材を べ ー スとする分析視点だ.. る・中国マーケティンバ mV に関する本研究も このようなボトムアップのアプローチをとり. 中国というローカルの 間題からグローバル な問. 題 へと視野を拡張していくことになる.. 3 ヵ谷地「 1999] 第 8 章および 結 章を参照.そこでは , これまでの海外マーケット 参入によって 得られた知 識が中国ビジネスに 利用されているケースは 少ない ことが明らかにされた. これは多国籍企業の 強みと して主張されてきたことへの 疑問につながる.理由. を考えたとき ,エクスパトリエートの 海外派遣政策 など,特定マーケットで 得られた知識をストックし ,. 利用していく 体制への疑問につながった. これは中 国ビジネスに 限った問題ではなく. ,. 日本企業のグロ. ーバル経営問題であ る.本研究は , この問題を Jv. いう視点から 詳しく検討する 試みと言える.. と.
(18) 18 ( 132 ). 横浜経営研究 図表 9. 第 23 巻. 第 4 号 (2003). 国際マーケティンバ」 V における知識サークリンバ・アクター. パートナー (現. 台り 士吉. JV 法人 ク亡. Ⅹ実線は自社にとっての 図表 2 が典型なように ,. 知識獲得フロ コ ,点線は同じく 移転フローを 示す. これまでの研究は ,. 企業あ るいは組織ユニットというレベルで. JV. 方式を捉えてきた.野中らによる 組織的知識 創. 誰の , 誰に よ る , 誰のためのものであ るのかが, い ま一 つ 見えてこないのであ る.. 造 モデルの議論からすると ,マクロ・レベルで. 「自社」の国際マーケティンバ JV マネジメ ント 論 構築を標 傍 する本研究は 知識サークリン. の アプローチであ る.我々が示した 図表 7 も そ. グ・プロセスに 対してこのポイントをはっきり. ぅ. であ る.. 確かにこのパースペクティヴは ,知識の獲得 や 移転プロセスにフォーカスを 合わせようと 意 回. されたものであ る. しかし知識の 獲得や移. 転 , 再 創造の主体はあ くまでも人材であ ること を 強調したい.. と意識したい・ 国際マーケティンバ JV では, この「 誰 」を規定しておくことが 特に重要なこ となのであ る.. 本研究における 知識サークリンバ・プロセス のアクターを 示したのが図表. 9. であ る.知識サ. まして,そこに 知識の結合がと. ークリング・プロセスに 関わる人材には ,基本 もなっていることを 思えば, この点は明らかで 的に二つの側面があ る.それは知識のセンダー あ ろ つ、 38. ( 送り手 ) とレセプター ( 受け手 ) であ る.関 にもかかわらず , この点をはっきり 意識して 連するすべての 人材には二つの 側面があ るが, 分析した研究は ,案外少ないのであ る.つまり, 自社の国際マーケティンバ JV マネジメント 論 先行研究の多くを 見ていると, どの組織ユニッ からすると,次のようなアクターを 考えること の話であ るのかは見えても ,議論がいったい ができるだろう. 一つはパートナ 一本社の JV 関連人材であ る・ ・. ト. 38) 知識を作り出し ,それを活用する 方法を考え る 主体を人材とする 視点は守 島 [2002]の主張をべ. ース としている. また, この視点は,個人のクローズド. な行為だけではなく ,異なる個人間の 相互作用によ って知識が組織的に 創造されると 解釈する組織的 知 識 創造モデルと 反するものではない. このアクターはもっぱら 知識のセンダーとなる.. 二つめは自社本国の JV 関連人材であ. る・ こ. の アクターは,本国や 第三国に関するマーケテ. ィング知識を 持っており,それをmV 法人の人 材に提供する・ 一方で, mV 法人の人材から 知.
(19) 国際マーケティンバ・ジョイントベンチャー. ( 133 ) 19. 序論 (谷地腔安 ). 識を得て, この JV 法人の戦略策定やマネジメ. うに四つの役割を 持っている. しかし自社の. ントに利用したり ,ほかの事業や]V マネジメ ントの戦略策定に 利用したりすることが 想定さ. 国際マーケティンバ JV マネジメント 論 構築を. ーとレセプターという 二つの役割を 持っている. 目指す本研究では ,パートナ一の本社から知識 を受け取ったり ,その知識や自分自身が持って いる知識を自社に 発信するという 二つの役割に. のであ る.. フォーカスを 絞ることにしたい.. れる.つまり , この人材は知識に 関してセンダ. ここまでは先行研究でも 意識されてきたこと. 最後に,図表 g は JV 法人が現地の 一般従業. であ る.だが,図表 9 が明らかにしていること. 員から構成されていることを 示している. これ. は, mV 法人にパートナーや 自社から派遣され. はあ たりまえのことであ ろう. しかし. てきたマネジャーが い ることであ る.彼らはふ. は彼らも自社に 対する知識のセンダー. つう. 「エクスパトリエート. (exp 酊na tes) 」と 亡. ここで と. レセプ. タ一 という二つの 役割を持つことに 注目する.. 特に注目する. なぜなら,エクスパトリエート もセンダーとレセプターという 二つの役割を 持 っているが,その 相手に二種類のアクターがい るからだ.つまり ,四つの役割を持っているこ. 前線の営業マンやマーケティンバ 企画を担当す る一般従業員もパートナーから 派遣されること があ る.彼らも現地のマーケティンバに 関する 知識を持ち, さらに日々の 業務のなかで 蓄積し ていく. これが自社の 人材に対するインプット. とになるのであ る.. となる.逆に , 自社の人材が 現地の従業員に 知. 呼ばれる.本研究はこの ェ クスパトリ エートに. まず, レセプターとしての 役割を見ていくと ,. 識を提供することも 考えられる.. 自社から派遣したエクスパトリエートは ,出向 というかたちで mV 法人に常駐 し パートナ一 の人材から現地でのマーケティンバに 関する知. プターという 役割を持っており ,その間の知識. 識を得る. また,すでに述べた よう に,本社の. の流れには図表 9 に描かれているような 複数の. 人材からも本国や 第三国でのマーケティンバに 関する知識を 得る. これらと自分が 持っている. フロー・パスがあ ることがわかる. に人材をべ. 知識とを結合してマネジメントを 行うのであ. したものにほかならない.そして ,. る. ". 次に,センダーとしては, 自分の知識を 本 社の人材やパートナ 一の人材に提供するという 役割を持っている.. このように,知識サークリンバに 関わる アク タ一 を識別すると ,それぞれがセンダーとレセ. ー. これはまさ. スに知識の移転,獲得の 実相を示 このことは. mV 法人と本社の 人材間で双方向の 矢口調フロー が存在していることも 示している. このような 相互作用を通じて JV をめぐる矢口調が 本社を含. つまり, 自社の ェ クスパトリ エートは 本社の. 人材とパートナ 一の人材という 二種類のアクタ 一に対してレセプター. と センダ一になっている. という複合的な 役割を持った 存在なのであ る。". パートナーから 派遣されてきた 人材もエクス パトリ エート であ り,基本的には 自社と同じよ. 40) JV において, ェ クスパトリ エート の役割とし て知識のレセプターを 重視しているのは Lyles=Salk [1996 片 Tsan 引 20021 であ り,センダーとしての 役割 を重視しているのは Makin0. 二. DeIi0 Ⅱ 1997] であ る・だ. が, これらの研究は ,それぞれについて 二種類の相 手がいることまでは 明確に認識していなかったと 言 える . しかも,彼はすでに 本国, ひいては他国でマ. ントではなく ,直接ユーザーや流通業者を訪問し 交渉をまとめるといった 営業業務を行うこともあ る. ーケティンバ・マネジメントや 業務を経験している かもしれない.すると ,その経験をレセプターとし て得た知識と 結合したり,彼自身が 発信 源 としてセ ンダーとなることが 考えられる. このように,知識. だろう.その場合にも,パートナーや 本社の人材か. からすると, ェ クスパトリ エート 0 位置づけはひじ. 39) また, 自社の ェ クスパトリ エートが マネジメ. ら知識を得て 利用することが 想定される.. よ. うに重要なものであ ることが見えてくる.
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