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公益事業会社の利益調整に関する実証研究

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Academic year: 2021

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(1)公益事業会社の利益調整に関する実証研究 竹 内 徹 也. 1.はじめに. る.政府は参入・退出規制においては真の供 給コストの把握を求められるが,事業者側が. 本稿の目的は,国内の電力,ガス,鉄道の公. それらに関連する情報を正しく報告してくる. 益事業会社に関して,公共料金の決定に大きく. 保証は何もない.むしろ,事業者にとって有. 影響を与えると思われる事業利益について,い. 利な形での情報提供しか行われない,とみる. わゆる裁量的アクルーアルの調整により,利益. のが自然であろう.」. 調整(Earnings Management)が 行 わ れ て い. こ の 見解 を 裏付 け る よ う に,奥村(1998),. るかどうか,そしてその利益調整に公益事業会. 中條(1992)は,国内電力会社による利益調整. 社のどのような特性が影響を及ぼしているかに. の 存在 を 指摘 し て い る.ま た 大日方(2005a). ついて分析することである.. は鉄道会社について裁量的アクルーアルの存在. 公益事業は通常その利潤レベルが公共料金を. を確認しており,大日方(2005b)は特別法上. 決定する際の基礎となっている.2 節で述べる. の準備金の観点から電力,鉄道会社による利益. ように,電気,ガス,鉄道の公共料金は,適正. 調整の存在を指摘している.海外においては,. と考えられるコストを合計して算出した原価. Gill-de-Albornoz, Illueca(2005)が ス ペ イ ン の. に,一定の利潤を加えて算出されており,その. 電力会社による,料金改定を目的とした利益調. 決定方式はいわゆる総括原価方式と呼ばれてい. 整について報告している1).このように公益事. る.またガス,鉄道に関しても,料金の決定方. 業においては,公共料金の抑制等の政治的コス. 式は電気料金と同様の総括原価方式が取られて. ト回避を目的とした利益調整が行われている可. おり,この 3 業種に共通の料金決定メカニズム. 能性が高い.しかし公益事業会社の業種や特性. が存在する.. により,利益調整行動の存在に相違があるのか. このように公共料金が会計情報によって決定. どうかについてはあまり検証が行われてこな. されており,裁量的に調整が加えられることの. かった.. 多いアクルーアルが含まれることから,この 3. 本稿では,まず予備的解析として,電力,ガ. 業種に関して利益調整が行われている可能性が. ス,鉄道会社を含む公益事業会社について裁量. あると考えられる.例えば,公益事業の研究者. 的アクルーアルによる利益調整の有無及びその. である井口(1999, p. 58)は国内の公益事業に. 値を確認する.次に同じ公益事業会社でも全事. 適用されている総括原価方式について,次のよ. 業に占める公益事業の割合が少なくなれば利益. うに批判的な見解を示している. 「基本的に現行の規制方式は,事業者の 申告する経営データをもとに運用されてい. . 1)これらの先行研究については 3 節において 詳述する..

(2) 172 (694). 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 5 号(2011 年 1 月). 減少型の利益調整を行う程度が減少するのかど. 2 節では,日本における電力,ガス,鉄道の料. うかについて検証を行う.このような観点によ. 金決定方式について概観を行う.3 節において. る公益事業会社の利益調整についてはこれま. は,先行研究をレビューし,公益事業会社を中. でほとんど検証されていない.また,Gill-de-. 心とした,政治的コスト仮説について概観する.. Albornoz, Illueca(2005)と 同 じ 問題意識 に 基. 4 節においては,本稿のリサーチ・デザインを,. づき,公共料金の上昇期に利益減少型の利益調. サンプル,アクルーアルの定義式,裁量的アク. 整が行われているかどうかについて,3 業種の. ルーアルの予測モデル,仮説の設定と検証モデ. 公益事業会社について同時に検証する.日本企. ルなどに分けて説明を行う.5 節においては実. 業についてこのような検証を行った研究はほと. 証分析の結果と解釈を,記述統計量,各モデル. んど存在しない.さらに政治的コスト仮説にお. の推定と信頼性に分けて俯瞰する.6 節は,結. ける規模仮説が成立しているかどうかについて. 論および今後の展望である.. も同時に検証を行う. 本稿の分析により,以下のことが明らかに なった.まず,公益事業の割合が大きいほど,. 2.日本における電力,ガス,鉄道の料金決定 方式について. 利益減少型の利益調整が行われている,という. 日本における電気,ガス,鉄道料金の決定方. 事実が確認できた.これは公益事業の割合が大. 式は,料金値上げの場合基本的には政府による. きいほど政治的コストが大きいと考えられるこ. 認可制であり,場合により上限価格の認可制,. と,公益事業以外の事業分野においては株主の. 料金値下げの場合は,届出制となっている.. 期待に応えることが期待されていることから理. 電気,ガス,鉄道の公共料金は,適正と考え. 解可能な現象であるが, このような報告は日本,. られる費用を合計して算出した原価に,一定の. 海外問わず初めてのものであり,本研究の重要. 利潤を加えて算出されており,その決定方式は. な貢献である.次に,公共料金の上昇期に,公. いわゆる総括原価方式と呼ばれている.また,. 益事業会社が利益減少型の利益調整を行ってい. それぞれの産業においてヤードスティック査定. ることについては確認できなかった.むしろ利. と呼ばれる,効率化評価の仕組みが導入されて. 益増加型の利益調整を行っていることが明らか. いる.これは料金認可制が採られる中で,料金. になった.これは利益減少型の報告利益が行わ. 値上げの場合において,各社の効率化への取り. れているにしても,必ずしも公共料金の改定期. 組みを同じ尺度で相対評価を行い,事業におけ. に合わせて行われていないことを示している.. る効率性の高い部分について総括原価方式に用. また,規模の大きい企業ほど,利益減少型の利. いられる原価を減額するものである.この仕組. 益調整を行っていることは確認できなかった.. みにより,事業者間の効率化に向けた競争が促. 実際には,規模の大きい企業ほど,利益増加型. されている(内閣府政策統括官(経済財政運営. の利益調整を行っており, 政治的コスト仮説 (規. 担当)付物価担当編,2007).. 模仮説)とは反対の結論を示していた.ただし. しかし,総括原価方式は問題点を含んだ価格. 米国における研究でも,多くの研究が企業規模. 決定方式 で あ る.総括原価方式 に よって 公共. を代理変数とした政治的コスト仮説の存在を否. 料金が決定される場合,そのベースとなる財. 定している. また規模が大きい企業ほど利益. 務会計数値に関して規制当局と経営者間に情報. 増加型の利益調整を行うことを示した研究もあ. の非対称性があるために,経営者は会計数値を. り,本論文の結論はそれらの先行研究と整合的. 調整することにより料金の上昇または維持を図. であった.. るインセンティブを持つのである2).実際に奥. 本論文の以下の構成は次の通りである.まず. . 2)須田(1991, p. 346)参照..

(3) 公益事業会社の利益調整に関する実証研究(竹内). (695) 173. 村(1998)が日本の電力会社における電気料金. 私鉄には都心と地方の都市を結び,その間の. 誘導 を 目的 と す る 会計的利益調整 を,Gill-de-. 何もない原野や丘陵を開発して街をつくり,お. Albornoz, Illueca(2005)は ス ペ イ ン の 電力会. 客様を増やしてきたという生い立ちがありま. 社による,やはり電気料金誘導を目的とすると. す.この開発のノウハウが高度経済成長で含み. 思われる会計的利益調整を報告している.. 3) 益を生み,鉄道の赤字を埋めてきたわけです. 」. 前述のような料金決定方式に加え,電力,ガ. 小田急電鉄の当時の財務諸表によると鉄道部. ス事業においては,原油,LNG などの燃料価. 門は利益を出しており,鉄道部門が赤字に悩ん. 格の変化を早期に料金に反映させるための,燃. できたというのは言い過ぎであり,会社が公共. 料費調整制度(ガス事業においては原料費調整. 的な観点からあまり利益を出してこなかった点. 制度)が,1996 年に導入された.この制度は,. を強調するためのやや誇張した表現であるとは. 貿易統計に基づいた各燃料の価格を四半期ごと. 考えられるが,鉄道部門の利益は比較的薄く不. に料金に反映させる仕組みである.料金は貿易. 動産開発事業の方が全体の収益には貢献してい. 統計の 2 四半期遅れで反映されるが,± 5% 以. たことは確認できた.つまり,事業構成に占め. 内の小幅な変動は反映されず,また,+ 50%. る公益事業の割合が比較的小さかったため,利. 以上(ガスの場合は+ 60% 以上)の変動は反. 益のうち公益事業に依存する部分が小さく,利. 映されない.この総括原価方式の導入によって. 益調整により公共料金の誘導を行う必要性が. 電気料金,ガス料金は表面上,ほぼ一貫して低. 少なかったと考えられる.このように,電力,. 下してきたが,燃料費調整分を加えれば上昇し. ガス,鉄道の公益事業会社のうち,電力とガス. ていた時期も少なくない.したがって本稿の実. についてはほぼ公益事業専業の単一事業会社で. 証分析においては,各会社公表の料金変動率で. あるのに対し,鉄道については不動産をはじめ. はなく,これら公共料金の消費者物価指数変動. とする地域開発や小売など公益事業以外の様々. 率を公共料金の代理変数として分析を行うこと. な事業を行っている場合が多く,その割合は各. とする.. 企業によって大きく異なる4).したがって,鉄. 公益事業会社のうち,鉄道業の公共料金決定. 道業に属する企業については,前述のインタ. に関して,本研究におけるサンプル企業の一つ. ビューで確認できるように公益事業における公. である小田急電鉄の元社長,滝上隆司氏は,イ. 共料金の動向より株主に対する利益政策の方が. ンタビューの中で,次のように述べている.. より重要である可能性があり,その重要性の程. 「毎日お乗りになるお客様の立場,鉄道の. 度は公益事業の割合が小さいほど大きくなると. 公共性を考えれば,輸送力のための投資はせ ざるを得ません.そこで最小限の運賃改定は 3 ~ 4 年に一度は認めてもらってきました. しかし,原価をカバーする方式の運賃制度で は,減価償却費を超える投資は借入金に頼ら ざるを得ないことになります.加えて,イン フレ抑制を名目に政策的に値上げを抑えられ たことや,社会資本の整備という観点からの 財政面の措置が充分に講じられなかったこと などで,常に鉄道部門は赤字に悩んできまし た.しかし株式会社ですから配当をしなけれ ばなりません.. . 3)清水(1997) . 4)日本 の 電力・ガ ス 料金 と 鉄道料金 で は 海外 との比較において,鉄道料金の方が割安である. 表 1 にあるように,電気料金については,消費者 の標準的な使用に関して,ドイツを除き欧米各国 と比較して 10% から 30% 前後割高となっており, 都市ガス料金に関しては欧米各国比で,約 20% か ら 50% も割高である.ただし鉄道料金に関しては 国毎の格差が大きく,日本の運賃が特に高いとい う傾向は見られないようである.電気,ガス,鉄 道の各公共料金における内外価格差の一つの要因 と し て,利益調整 の 存在 が あ る 可能性 が あ る が, この点に関しては本稿では検証していない..

(4) 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 5 号(2011 年 1 月). 174 (696). 表 1 公共料金の内外価格差 日 本. アメリカ. イギリス. フランス. ドイツ. エネルギー. 電気(290 kwh 使用時). 100. 93. 80. 65. 都市ガス(55 万 kcal 使用時). 100. 60. 49. 63. 77. 上水道(20 立方平方メートル使用時). 100. 56. 118. 133. 193. 下水道(20 立方平方メートル使用時). 100. 122. 91. 168. 366. はがき. 100. 50. 92. 122. 108. 封書. 100. 49. 58. 76. 81. 市内通話. 100. 100. 300. 200. 156. 長距離通話. 100. 25. 43. 29. 29. 国際電話. 100. 20. 11. 42. 64. 公衆電話. 273. 郵 便 昼間3分. 通 信. 電 話. インターネット 国内航空 交 通. 鉄 道. 104. 100. 153. 180. 170. 携帯電話(月 300 分). 100. 50. 51. 79. 49. ADSL(8 M). 100. 84. 56. 108. 144. 最頻料金(400 km 換算). 100. 130. 39. 136. 119. 新幹線等(300 km 換算). 100. ─. 168. 56. 97. 特急(300 km 換算). 100. 140. ─. ─. 83. 普通(100 km 換算). 100. 70. 295. 98. 129. 100. 116. 336. 119. 97. バス(初乗り). 地下鉄(初乗り). 100. 93. 135. 95. 78. タクシー(昼間 5 km 走行). 100. 46. 66. 41. 76. (備考)1.平成 20 年内閣府委託調査.本調結果は,条件の設定や為替レートの変動等により影響を受けるものであり,ひ とつの指標としてとらえることが適当   2.日本は東京,アメリカはニューヨーク,イギリスはロンドン,フランスはパリ,ドイツはベルリンを対象   3.為替レートは “Main Economic Indicators”(OECD)の 2009 年 2 月値を採用.アメリカ:1ドル =92.83 円 イギリス:1ポンド =134.54 円,フランス,ドイツ:1ユーロ =119.01 円を上記のすべての料金に適用   4.国際電話については,日本着と日本発の値で比較 出所:消費者庁 2008 年内閣府委託調査より. 考えられる.このように,各企業の公益事業割. 文として,Gill-de-Albornoz, Illueca(2005)のス. 合と利益調整の関係を分析することにより,利. ペインの電力会社に関する論文がある.彼らは,. 益調整の方向性の違いを確認できると考えられ. いわゆる政治的コスト仮説がスペインの電力業. る.本稿ではこの点について実証研究の手法に. 界において成立しているかどうかについて検証. より明らかにしたい.公益事業会社に関するこ. するために,次のような実証分析を行った.ま. のような角度からの検証は日本内外問わずあま. ずスペインの 13 社の電力会社について 1991 年. り行われていない.. から 2001 年までの 10 年間の財務データを用い,. 3. 先行研究. Jones モデル,Jones CFO モデル,WCA CFO Jones モデルなどの OLS 時系列回帰分析を行う. 本稿の研究テーマは,二つに大別される.一. ことにより,裁量的アクルーアルの額を推定し,. つは公益事業割合と利益調整の関係に関する検. 各期の実際のアクルーアルから推定値を差し引. 証,もう一つは公共料金規制と利益調整の関係. いた値を裁量的アクルーアル金額として算出し. に関する検証である.. た.さらにこれら回帰モデルに電気料金の各年. 公共料金規制と利益調整の関係を検証した論. の変化率という項目を加えて,裁量的アクルー.

(5) 公益事業会社の利益調整に関する実証研究(竹内). (697) 175. アルと電気料金の変化率の関係を検証した.そ. 治的圧力を受けやすく,移転される富(政治的. の結果,裁量的アクルーアルと電気料金の変化. コスト)も大きいという仮定をおき,これを検. 率は反比例の関係にあり,その相関関係はすべ. 証したものがある.この仮説は政治的コスト仮. てのモデルにおいて 1% 有意水準で成立してい. 説の一部である規模仮説と呼ばれ,次のように. た.このように,スペインの電力会社は,電力. 言い換えることができる.. 料金が値上げされている時には人為的に会計利. 規模仮説:他の事情が等しければ,規模の大き. 益を減少させ,値下げ時にはそのような行動を. い会社の経営者ほど,当期から将来の期間に報. とらない傾向が見られることが,実証的に確認. 告利益を繰り延べる会計手続きを選択する傾向. されている.このことは,スペインの電力業界. がある.. において政治的コスト仮説が成立していること. 本稿は政治過程との関係が特に深い公益事業. を示している.ただしスペインの電力料金の決. 会社の利益調整について取り扱っているので,. 定方法は,政府と電力業界間の非公開の交渉に. 政治的コストに関する規模仮説についても検証. よっており,日本における総括原価方式を用い. を行う.. たより自動的な料金決定方式とは異なる点には. 公益事業会社そのものに関する研究ではない. 留意が必要である.. が,政府による規制と企業の報告利益の関係に. ここで政治的コスト仮説について確認してお. 関する研究としては,Jones(1991)が代表的. こう.政治的コスト仮説とは,1970 年代から. な研究の一つとしてあげられる.Jones は,米. 会計と政治過程の関係について研究が進められ. 国国内の製造業が,米国政府による外国企業に. る中で生み出された仮説であり,各企業が会社. 対する関税などの支援策を得るため,裁量的. の富の移転を最小限に留めるため,いいかえれ. アクルーアルなどを調整していることを実証し. ば政府による規制を回避したり,税金の支払い. た.裁量的アクルーアルの額を調べるため,後. を節約したりするために,その期において利益. 述の Jones モデルを考案した点で,他の研究の. 減少型の利益調整を行うという仮説である.ま. 先駆的な役割を果たした.Jones モデルから派. たこの移転される富こそが,政治的コストであ. 生して修正 Jones モデル,CFO Jones モデルな. る.利益減少型の利益調整の誘因としては,そ. ど,様々な改良型モデルが開発された.これら. のほかに,独占禁止法による規制回避,料金規. 検証モデルについては 4 節でさらに詳しく検討. 制 に よ る 消費者 へ の 利益移転回避,関税等 の. を加える.. 手段を用いた輸入規制による産業保護などが. さらにその他の政治的過程及び政治的コスト. 例として挙げられる.Watts and Zimmerman. 仮説に関連した先行研究を見ておこう.. (1986, Ch. 8)は,政府によって料金規制を課せ. Cahan(1992)は,1970 年から 1983 年に米国司. られている公益事業会社について,経営者は会. 法省若しくは FTC(Federal Trade Commission). 社にとって有利な料金に決定するような会計手. によって調査を受けた,反トラスト法に抵触. 続きを適用できるよう,報告利益を調整する,. し た 疑 い の あ る 企業 48 社 に つ い て,Hearly. あるいは会計基準設定機関にロビー活動を行う. (1985)の手法を用いて,裁量的アクルーアル. インセンティブを持つと説明している.本稿で. の金額について検証を行った.反トラスト法に. 取り上げた政府による公益事業に関する価格規. 関連した調査の時期と,その前後の時期の裁量. 制は政治的コスト仮説が成立する可能性がある. 的アクルーアルを調べたが,調査の時期は 1%. 典型的ケースである.. の有意水準で,裁量的アクルーアルが他の時期. 政治的コスト仮説の検証を行った先行研究の. より低く,政治的コスト仮説を裏付けていた.. 中には,小規模会社よりも大規模会社の方が政. ただしその研究対象は反トラスト法に抵触した.

(6) 176 (698). 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 5 号(2011 年 1 月). 企業という特殊な企業群であり,公益事業会社. て検証したものではないが,政治的要因により. 全般といった幅広いものではなかった.. 会計規則を変更して適用させた例であり,政府. Han and Wang( 1998)は,1990 年 の ペ ル. が政治的コストを減少させる利益調整を誘導し. シャ湾における湾岸戦争の際に,米国の石油関. た例である.. 連会社が,ガソリン等の突然の値上げに際して. 中條(1992)は,政治的コスト仮説が日本の. 批判を浴びて政治的に注目され,その利益水準. 電力業界において成り立っているかどうか検証. の上昇が政治的に問題視されるような状況に. するため電力会社 9 社を対象に,1979 年度か. 陥ったときに,利益減少型の利益調整を行った. ら 1991 年度の 13 会計年度について,技術的会. ことを実証的に検証したものである.検証は,. 計政策と実質的会計政策を識別したうえで,各. 米国における 12 月決算の 76 の石油関連会社を. 電力会社の採った会計政策を数える方法で会計. 対象に,裁量的アクルーアルを Jones モデルに. 政策の方向性を調べた.また政治的コスト仮説. よって推定することにより行われた.サンプル. における規模仮説についても Spearman の順. 期間は 1984 年から 1990 年の四半期毎(プール. 位和相関係数を調べることにより検証を行っ. データ)である.結果は,石油精製企業は 1990. た.その結果会計政策に関しては政治的コスト. 年の第 2 四半期及び第 3 四半期に,商品在庫会. 仮説が成り立っている可能性が高く,規模仮説. 計などを用いて利益減少型の利益調整を行って. については明確な結論が得られなかったとして. いるというものであった.この結論は米国の石. いる.中條の検証は,統計手法の観点では多少. 油関連企業において政治的コスト仮説が成り. 改善の余地はあるものの,政治的コスト仮説検. 立っていることを示していた. これら企業群も,. 証のもっとも初期の研究の一つであり,日本に. いわゆる公益事業会社という政府から直接厳し. おける政治的コスト仮説の検証に一定の成果を. い規制を受ける企業ではなかった.米国におい. あげている.. ては電力会社のような企業群も自由化されてい. 奥村(1998)は,電力企業が,負債比率が非. る度合いが高いため,日本のように政府の厳し. 常に高いことから債権者の要求投資収益率を下. い価格規制に縛られておらず,それがそのよう. げるため,また会計利益に基づく価格規制を回. な公益事業会社に関する利益調整研究が少ない. 避または緩和するため,アクルーアルを調整す. 理由だと考えられる.したがって公益事業会社. ることにより利益の平準化を行っているかどう. の利益調整に関する研究は,日本のような企業. かを調べた.1966 年から 1995 年の電力 9 社の. に対する政府規制の厳しい国に関するものの方. 財務データを基に Jones モデル及び修正 Jones. が,より政治的コスト仮説を検証するうえで適. モデルによって裁量的アクルーアルを算出し,. 切である可能性がある.. 高,中,低の 3 つの業績ポートフォリオについ. Skinner(2008)は,1990 年代以降の日本の. て平均値の差の検定と Wilcoxon 法を用いて検. 86(都市銀行,長信銀,地銀含む,データ期間. 定を行っている.結果は一部例外的な部分もあ. 1999 年から 2003 年の各年度)の銀行について,. るが,好業績期ほど利益を減らすマイナスの裁. 繰延税金資産の過大な計上や持合株式の益出し. 量的アクルーアルが存在し,利益平準化が行わ. 売却を使った,自己資本の人工的なかさ上げが. れていることが確認された.奥村の論文は裁量. 行われてきたことを,実証的に検証した.特に. 的アクルーアルの標準的手法である Jones モデ. 都市銀行においてその傾向が顕著で,その過程. ル及び修正 Jones モデルを用いており一定の確. に金融当局による誘導があったことを論証して. 度を持つものだと言えるが,電力会社の企業業. いる.これは政治的コスト仮説そのものについ. 績と利益調整の関係のみについて検証したもの.

(7) 公益事業会社の利益調整に関する実証研究(竹内). (699) 177. である.. い企業に比べ構造がわかりにくく事業内容の透. 國村(1998)は,1992 年 ま で 存在 し た,銀. 明性が低いため,ステークホルダー間における. 行の配当性向は 40% を超えてはならないとす. 情報の非対称性が大きい.したがって投資家や. る大蔵省銀行局長通達を回避するために,銀行. 債権者にとって,非多角化企業に比べモニタリ. が行ったと考えられる利益調整について検証を. ングコストがより高くなる.このことが,経営. 行った.分析の方法は,まず国内の都市銀行,. 者にとって財務パフォーマンスをよりよく見せ. 長期信用銀行,信託銀行 21 行 を 対象 に,1981. るための利益調整を行う誘引となる.したがっ. 年から 1992 年の 12 会計年度について,裁量的. て事業割合が分散しているほど利益増加型の利. アクルーアルを Jones モデルによって推定し,. 益調整を行うという結論を,Rodriguez-Perez. これを従属変数として予想配当性向,資産運用. and van Hemmen(2010)は得ている.この結. 利益及び資産によって多重回帰分析を行った.. 論は後述の仮説 1 と整合的である.. 結果は操作前の利益水準が低く,予想配当性向 が 40% 以上で配当制限規準を満たしていない. 4.リサーチ・デザイン. 場合,裁量的 ア ク ルーア ル を 用 い た 利益調整. 4. 1 サンプル. が行われている,というものであった.これを. 主要な上場している電力会社,ガス会社,鉄. もって國村らは配当性向維持仮説の存在が検証. 道会社のうち,1990 年 3 月より 2008 年 3 月ま. されたとしている.國村らの研究は日本におけ. での年次データが揃う企業群を抽出した.この. る銀行の配当制限規準という日本に固有の規制. 結果選ばれた企業は電力 10 社,ガス 9 社,鉄. を巡り利益調整が行われていることを検証する. 道 13 社,計 32 社である.このデータについて. ことにより,日本の産業規制とそれに関わる利. 1990 年から 2008 年の 19 会計年度に関して検. 益調整というユニークな問題を明らかにした点. 証を行う.各項目のオブザベーション数は 608. で意義が大きいと言えるであろう.. となる.必要項目については,各年度の有価証. 公益事業割合と利益調整の関係について検証. 券報告書及び会社四季報から抽出した.. した研究はほとんど存在していない.唯一,大 日方(2005)が鉄道業における公共料金(運賃). 4. 2 アクルーアルの定義式. 規制方式の変化が,鉄道会社の会計行動にどの. 須田・首藤(2001)に則り,アクルーアルと. ような影響を与えたかについて検証し,利益の. 営業キャッシュフローを次のように定義した.. 年度間配分には影響がなかったが,セグメント 間では,運輸事業から非運輸事業に利益を振り. 総アクルーアル =(Δ流動資産-Δ現金預金). 替える費用配分の操作があり,その振替額は. -(Δ流動負債-Δ資金調達項目5)). value relevant であったという結論を得た.た. -(Δ貸倒引当金. だし公益事業割合と利益調整の直接的な関係は. +Δ賞与引当金・未払賞与. 検証されていない.. +Δその他の長期引当金+減価償却費). 事業割合,つまり多角化の程度と利益調整の. ただしΔは期中増減額を示す.. 関係についての先行研究は少ないが,規制産 業でない一般事業会社に関しては,RodriguezPerez and van Hemmen(2010)が次のような 結論を理論,実証の両面から導いている.一般 に,多角化した企業は,事業が多角化していな. . 5)須田・首藤(2001)によれば,Δ資産調達項 目 = Δ短期借入金 + Δ 1 年以内返済 の 社債 + Δ 1 年以内返済 の 長期借入金 + Δ コ マーシャル ペー パー..

(8) 178 (700). 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 5 号(2011 年 1 月). 表 2 基本項目の記述統計量 度数. 最小値. 最大値. 平均値. 総アクルーアル %. 608. -0.305. 0.049. -0.05842. 0.0335. 有形固定資産額 %. 608. 0.438. 5.495. 0.77429. 0.2313. 営業 CF %. 608. -0.053. 0.296. 0.06952. 0.0417. 608. -0.100. 0.187. 0.01205. 0.0287. 608. -0.134. 0.223. 0.01366. 0.0315. (Δ売上高-Δ売掛金)% Δ売上高 %. 標準偏差. { 注 1)変数の定義:総アクルーアル %=(Δ流動資産-Δ現金預金) -(Δ流動負債-Δ資金調達項目)-(Δ貸倒引当金+Δ賞与引 当金・未払賞与+Δその他の長期引当金+減価償却費)}/期首の総資産額;有形固定資産額 %= 有形固定資産額/期首の総資 { 産額;営業 CF% =[{当期利益-特別利益+特別損失}-総 ア ク ルーア ル]/期首 の 総資産額;(Δ売上高-Δ売掛金)%=(当 期売上高-前期売上高)-(当期売掛金―前期売掛金)}/期首の総資産額;Δ売上高 %=(当期売上高-前期売上高)/期首の総 資産額. 総アクルーアル = 非裁量的アクルーアル. (Rev)と 償却性固定資産(PPE)を 独立変数,. + 裁量的アクルーアル. 総アクルーアル(TA)を従属変数とする多重. 営業キャッシュフロー = 税引き後経常利益. 回帰を行う6).その際,各変数は各期 t の 1 期. -総アクルーアル. 前 の t-1 期 の 総資産 で 割って 標準化 を 行 う.. ただし税引後経常利益 = 当期利益. 下記(1)のモデルに基づき,OLS 回帰の手法. -特別利益+特別損失. を使ってα,β,γを推定する.このモデルか ら t 期の総アクルーアルを推定し,各企業 i の. 分散不均一性の問題を回避するため,上記式. アクルーアルの実額から総アクルーアルの推定. の両辺 を 期首 の 総資産額で割って標準化を行. 値を控除したものを,各企業 i の t 期の裁量的. い,その値を変数として利用する.各変数の記. アクルーアルとする.以下 2 番目から 4 番目ま. 述統計量が表 2 に示されている.. での各モデルについても同様のプロセスで各企 業 i の t 期の裁量的アクルーアルを算出する.. 4. 3 裁量アクルーアルの予測モデル. いいかえれば,裁量的アクルーアルは各期の各. 裁量的 ア ク ルーア ル 算出 の モ デ ル は Jones. 企業の誤差項ε i,t であると表現することもで. (1991)を嚆矢とし,その後実証研究において. きる.. 様々な改良が加えられてきた.本稿では,代 表的なモデルである Jones,修正 Jones,CFO. . Jones, CFO 修正 Jones モデルを利用して裁量. . 的アクルーアルの金額を算出する. 具体的には, TAi,t. サンプル企業の総アクルーアル(TA)を従属 Ai,tെ1 変数とし, モデルにより異なるが売上高(Rev) , 売上債権(Rec) ,償却性固定資産(PPE) ,営. TAi,t. Ai,tെ1. =ǩ+ Ǫ ൭. ǍRevi,t Ai,tെ1. PPEi,t ൱ +ǫቆ ቇ + ɂi,t Ai,tെ1 ⑴ .  ǍRevi,t PPEi,t =ǩ+ Ǫ ൭ ൱ +ǫቆ ቇ + ɂi,t Ai,tെ1 Ai,tെ1. 2 番目のモデルである修正 Jones モデルは,. 業 キャッシュフ ロー(CFO)な ど の 独立変数. Dechow et al.(1995)によって提案されたモ. によって,全期間のプールデータを対象に,ク. デルであり,Jones モデルと同様の手法を採る. ロスセクション多重回帰分析を行う.. が独立変数である売上高(Rev)の代わりに,. そ れ で は 各 モ デ ル を 細 か く 見 て み よ う. Jones(1991)モデルは,4 つのモデルの原型 である.当モデルは,各企業 i の t 期の売上高. (売上高(Rev)-売上債権(Rec))を利用する. . 6)ただしΔは期中増減額を示す..

(9) 公益事業会社の利益調整に関する実証研究(竹内). (701) 179. その理論的根拠は,利益調整が売上高の計上時. 4. 4 仮説の設定. 期の操作を通じて行われている可能性があり,. 公益事業会社にとって,全事業構成に占める. 売上債権の調整はすべて裁量的な調整であると. 公益事業の売上高の割合が小さければ,株主を. みなして,その分を売上高から控除することに. はじめとするステークホルダーからの要請によ. より売上高を正常化する,というものである.. り,より大きな利益をあげるインセンティブの. 数式で表現すると次のようになる.. 方が,公益事業における公共料金の上限料金を 下げないインセンティブより大きいかもしれな. い.また,一般的に,多角化企業は経営者の下, PPEi,t ൱ + ǫቆ ቇ各事業部門が売上高や会計利益などの業績に関 + ɂi,t (2) Ai,t െ1 Ai,tെ1 Ai,tെ1 する部門間競争を行っており,この点からも利  ⑵ 益を増加させるインセンティブが存在すること ǍRevi,t െ ǍRec PPE i,t i,t ൱ + ǫቆ ቇ + ɂi,t (2) が予想される.このことを仮説として提示する Ai,tെ1 Ai,tെ1 と次のようになる. ǍRevi,t PPEi,t ǍCFi,t TAi,t ǩ+のǪモ൭ デ ル は,Subramanyam(1996) ൱ +ǫ ቆ ቇ + Ǭ൭ ൱仮説 + ɂi,t1 公益事業会社は,全事業における公益 (3) 3=番目 Ai,t െ1 Ai,tെ1 Ai,tെ1 Ai,tെ1 による CFO(営業キャッシュフロー)Jones モ 事業の割合が大きいほど,利益減少型の利益調 evi,t PPEi,t ǍCFi,t Jones モデルに営業キャッ デルである.これは 整を行う7). ൱ +ǫ ቆ ቇ + Ǭ൭ ൱ + ɂi,t (3) Ai,tെ1 ロー(CFO, Ai,tെ1下記 の 式 で は CF)を 加 え シュフ 2 節でも触れたように,公益事業を行う企業 i,tെ1 Dechow(1994) は,一般に公共料金の上限料金に関して規制を ǍRevi,t െ が指摘したアクルー PPEi,t ǍCFi,t ǍReci,t TAたもので, i,t ǍRev PPE TA െ ǍRec = ǩ+ Ǫ ൭ ൱ + ǫ ቆ ቇ + Ǭi,t൭ ൱ + ɂi,t (4) i,t i,t i,t アルと営業キャッシュフローが逆相関となって 課せられており,仕組上,会計的利益が多いほ = ǩ+ Ǫ ൭ ൱ + ǫ ቆ ቇ +i,tെ1 ɂi,t (2) Ai,t െ1 Ai,tെ1 Ai,tെ1 A A A A i,t െ1 i,tെ1 i,tെ1 いる事実を取り入れたものである.数式で表現 ど上限料金は低く設定される傾向がある.こ PPEi,t ǍCFPPE i,t െ ǍRec i,t i,t すると次のようになる. れら企業が公共料金の据え置き,または値下 ǍRev Aev i,t i,t ቆെ ǍRec i,t Ǭ ൭ i,t i,t ൱ +ǫ ቇ+ (4) = ǩ+ Ǫ ൭ ൱ + ǫ ቆ ൱ +ቇɂ+ ɂi,t (2) Ai,tെ1 A A げを避けるため,会計的利益を低めに計上でき i,tെ1 i,tെ1 Ai,tെ1 Ai,tെ1 െ1 るように誘導することは充分に考えられる.奥 ǍRevi,t PPEi,t ǍCFi,t TAi,t = ǩ+ Ǫ ൭ ൱ +ǫ ቆ ቇ + Ǭ ൭ 村(1998)にあるように,好業績期ほど会計的 ൱ + ɂi,t (3) Ai,t െ1 Ai,tെ1 Ai,tെ1 Ai,tെ1 利益を低めに計上することは先行研究によって  ⑶ ǍRevi,t ǍCF PPEi,t െ ǍReci,t  i,tTAi,t ǍRev PPE i,t i,t = ǩ+ Ǫ ൭ ൱ + ǫ ቆ も検証されており,好業績期には利益減少型の ቇ + ɂi,t (2) = ǩ+ Ǫ ൭ ൱ + ǫ ቆ ቇ + Ǭ ൭ ൱ + ɂ (3) i,t Ai,t െ1 AA Ai,tെ1 i,tെ1 Ai,tെ1 Ai,tെ1 利益調整が行われている可能性がある.また, i,tെ1 ǍRevi,t െ ǍReci,t PPEi,t Gill-de-Albornoz, Illueca( 2005)は,電気料金 Ǫ൭ ൱ + ǫ ቆ ǍRevቇi,t+ ɂെi,t ǍReci,t PPEi,t(2) ǍCFi,t TAi,t Ai,tെ1 Ai,tെ1 4 番目 = のǩ+ モデ 採用 など公共料金の値上げ期には政治的コストを下 Ǫル൭は,Kasznik(1999)が ൱ +ǫ ቆ ቇ+Ǭ൭ ൱ + ɂi,t (4) Ai,t െ1 Ai,tെ1 Ai,tെ1 Ai,tെ1 し た も の で,CFO Jones モ デ ル と 修正 Jones げるために利益減少型の利益調整が行われ,料 PPEi,tǍCF ǍCFi,t TAi,t െ ǍRec ǍRevi,t PPE ǍRev モデルの長所を取ったものである.すなわち 金が変わらないか下げられている時期には利益 i,t = ǩ+ Ǫ ൭ i,t i,t i,t ൭ ൱ + ǫ ቆ ቇ + Ǭ (3) =ǩ+ Ǫ ൭ A ൱ A+ǫ ቆ ቇ +AǬ ൭ ൱+ ɂi,t ൱ + ɂi,t (4) Ai,tെ1 i,t െ1 i,tെ1 i,tെ1 A A A CFO Jones の代わりに, 調整が行われていないことを,スペインの電力 i,tെ1 モデルの売上高(Rev) i,tെ1 i,tെ1 ǍRevi,t PPE(Rev) ǍCFi,t (Rec))を利用する. i,t (売上高 -売上債権 企業について確認している.これを仮説として ൱ +ǫ ቆ ቇ + Ǭ൭ ൱ + ɂi,t (3) Ai,tെ1 Ai,tെ1 Ai,tെ1 提示すると次のようになる. 仮説 2 公益事業会社は,公共料金が上昇傾向 ǍRevi,t െ ǍReci,t PPEi,t ǍCFi,t TAi,t =ǩ+ Ǫ ൭ ൱ +ǫ ቆ ቇ+Ǭ൭ ൱ + ɂi,t (4) Ai,t െ1 Ai,tെ1 Ai,tെ1 Ai,tെ1  ⑷ 7)本仮説が正しいことが検証できれば,企業 ǍRevi,t െ ǍReci,t PPEi,t ǍCFi,t の事業セグメントにおける公益事業分野が利益減 ൱ +ǫ ቆ ቇ+Ǭ൭ ൱ + ɂi,t (4) 少型利益調整の原因であると考えられるため,こ Ai,tെ1 Ai,tെ1 Ai,tെ1. TAi,t. ǍRevi,t =ǩ+ Ǫ ൭. െ ǍReci,t. れらの公益事業会社において政治的コスト仮説が 成立していることが確認できる..

(10) 180 (702). 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 5 号(2011 年 1 月). にある時期ほど, 利益減少型の利益調整を行う.. いるより,モデル全体のあてはまりが改善する. また,政治的コストを相対的に多く負担する. ことを確認している.. 企業について,政治コストの代理変数として企 業規模を利用した研究が日米で行われてきた (Wong,1988;Scott,1991;中條,1992 な ど) .. 5.実証分析の結果と解釈 5. 1 記述統計量. 企業と政府の契約関係から発生するコストとし. 表 2 は,全サンプル企業における,Jones, 修. ては税金コストと規制コストが考えられるが,. 正 Jones, CFO Jones, CFO 修正 Jones の各モデ. 8). ここでは規制コストが問題となる .ここで,. ルにおける従属変数及び独立変数の記述統計量. 次のような政治的コスト仮説を設定することが. である.サンプルは全 32 企業の,1990 年から. できる.. 2008 年までの 19 年を範囲とする全 608 オブザ. 仮説 3 (政治コストが大きい)公益事業を主. ベーションである.. に行う企業は,企業規模が大きいほど,利益減. 他の公益事業会社を扱った論文と同様,総ア. 少型の利益調整を行う.. クルーアルの合計額は,巨額の償却費用を含む. これら 3 つの仮説について検証するために 4. 5. ため,負値となっている.また売上高と売掛金. の検証モデルを設定した.. は,共 に 期間 を 通 じ て 増加傾向 に あ り,営業 キャッシュフローも同様である.有形固定資産. 4. 5 仮説の検証モデル. は平均で総資産の 77% を占めており,これら. 4. 3 で設定した各モデルにより算出した(裁. 産業の装置産業的な性格を表している.. 量的アクルーアル/期首の総資産)を従属変数 とし,1)各企業における全事業に占める公益. 5. 2 各モデルの推定と信頼性. 事業の割合(= 仮説 1 の代理変数)2)電気,ガ. はじめに,4 節で述べた,Jones, 修正 Jones,. ス,鉄道の各公共料金の変化率(= 仮説 2 の代. CFO Jones, CFO 修正 Jones の 各 モ デ ル の 推. 理変数)3)各企業 の 総資産額(= 仮説 3 の 代. 定を行った.その結果が表 3 及び表 4 である.. 理変数)の 3 変数を独立変数とした回帰式を使. 総アクルーアルは,固定資産償却額が大きいた. い,最小 2 乗法を使った重回帰分析を行う.回. めに平均値が負値となっている.これは巨額の. 帰式を数式で表現すると次のようになる.. 設備投資を必要とするこれら公益事業会社の特 徴といえる.ここで各モデルについて詳しく見.   裁量的アクルーアル =α+β(公益事業 %). てみよう.表 3 にあるように,Jones モデルに. +γ(Δ Tariff)+δLN(総資産金額)+εi,t. おいては,売上高の変化率,償却性有形固定資 産額,共に係数は負値となり,これらの変数は. ただし,裁量的アクルーアル %= 裁量的アクルー. 総アクルーアルに反比例している.有意水準に. アル i,t/総資産金額 i,t-1 , Δ Tariff= 各公共料金に. ついては,すべての独立変数が 1% 水準で有意. 関 す る 消費者物価指数 の 年間変化率,総資産金額. で,係数の信頼度は高かった.自由度修正済決. = 総資産の金額 i,t. 定係数の値は 0.134 であった.修正 Jones モデ. 総資産金額については,企業間の差が大きい. ルにおいては,すべての独立変数の係数は負値. ので, 変分を割合にするために自然対数を取る.. で,すべて 1% 水準で有意で係数の信頼度はあ. この方が,結果として総資産金額そのものを用. る程度高かった.自由度修正済決定係数の値は. . 8)政治的コストが税金コストと規制コストに 分けられる点に関しては,Scott(1991)参照.. 0.136 であった.CFO Jones モデルにおいては, やはりすべての説明変数の係数は負値で,有意 度については,すべての独立変数について 1%.

(11) 公益事業会社の利益調整に関する実証研究(竹内). (703) 181. 表 3 裁量的アクルーアル算出モデルの OLS 推定結果 有形固定 モデル. 定数. Δ売上高 %. (Δ売ーΔ掛)%. Δ営業 CF%. 資産額 %. Jones. -0.021**. -0.180**. -0.045**. (t 値). -4.746. -4.478. -8.227. 修正 Jones. -0.021**. -0.206**. -0.045**. (t 値). -4.819. -4.662. -8.157. CFO Jones. -0.026**. -0.154**. -0.166**. -0.038**. (t 値). -6.260. -4.088. -9.550. -7.340. CFO 修正 Jones. -0.026**. -0.177**. -0.165**. -0.038**. (t 値). -6.327. -4.273. -9.543. -7.278. Adj. R2. F値. D-W 比. 0.134. 47.941**. 1.457. 0.136. 48.885**. 1.457. 0.246. 67.130**. 1.422. 0.248. 67.798**. 1.423. **有意水準 1% 以下 *有意水準 5% 以下 { 注 1)変数の定義:総アクルーアル %=(Δ流動資産-Δ現金預金) - (Δ流動負債-Δ資金調達項目)- (Δ貸倒引当金+Δ賞与 引当金・未払賞与+Δ そ の 他 の 長期引当金+減価償却費)}/期首 の 総資産額;有形固定資産額 %=有形固定資産額/期首 の総資産額;営業 CF%=[{当期利益-特別利益+特別損失 }-総アクルーアル]/期首の総資産額;(Δ売-Δ掛)% =(Δ { 売上高-Δ売掛金)%=(当期売上高-前期売上高) -(当期売掛金-前期売掛金)}/ 期首 の 総資産額;Δ売上高 %=(当期 売上高-前期売上高)/期首の総資産額;Adj.R2= 自由度修正済決定係数;D-W 比;ダービン・ワトソン比 注 2)定数以外の独立変数の値は上段が標準化係数,下段が t 値. 表 4 裁量的アクルーアル推定値・記述統計量 度数. 最小値. 最大値. 平均値. 標準偏差. Jones. 608. -0.109. 修正 Jones. 608. -0.158. 0.190. 0.00849. 0.0369. 0.104. -0.00009. CFO Jones. 608. 0.0310. -0.120. 0.106. 0.01065. CFO 修正 Jones. 608. 0.0261. -0.123. 0.107. 0.01061. 0.0261. 注 1)各重回帰モデルにより推定した,総資産に対する割合で示した裁量的アク ルーアルの値.. 水準で有意であり,係数の信頼度は高いといえ. ル中最も当てはまりがよかった.このように,. る.自由度修正済決定係数の値は 0.246 で前述. 本稿においては,すべての角度から CFO 修正. の 2 モデルより当てはまりがよかった.CFO. Jones モデルが統計学的に最も説明力が高く,. 修正 Jones モデルに関しては,やはりすべての. 独立変数の中では営業キャッシュフローの説明. 独立変数の係数は負値である.. 力が際立っていた.. 各独立変数 の 有意水準 に 関 し て は,す べ て の 独立変数 に 関 し て 1% 水準 で 有意 と なって おり,分散分析を見ると,F 値 =67.79 と高く,. 5. 3 裁量的アクルーアルを従属変数とした重 回帰分析. モ デ ル 自体 も 1% 水準 で 有意 で あった.ま た. 5. 1 のモデルによって求めた総アクルーアル. 自由度修正済決定係数の値は 0.248 と,全モデ. と各企業 i の t 期のアクルーアルの差を,各企.

(12) 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 5 号(2011 年 1 月). 182 (704). 業 i の各期 t の裁量的アクルーアルとして求め. 道の 3 業種の公益事業会社について成り立って. たが,この裁量的アクルーアルを従属変数,電. いると考えられる,ひとつの証左である.この. 力,ガス,鉄道の各公共料金の変化率,各企業. ような報告は日本,海外問わずはじめてのもの. における全事業に占める公益事業の割合,各企. であり,本稿の重要な貢献である.この現象の. 9). 業の総資産額の 3 変数 を独立変数として重回. 理由としては株主をはじめとするステークホル. 帰分析を行った結果が表 6 である.. ダーからの要請により,より大きな利益をあげ. まず,モデルの妥当性を見ていこう.各モ. るインセンティブの方が,公益事業における公. デ ル の 決定係数 を み る と , Jones, 修正 Jones,. 共料金の上限料金を下げないインセンティブよ. CFO Jones, CFO 修正 Jones モ デ ル に お い て. り大きいことが考えられる.また,一般的に,. それぞれ 0.096, 0.133, 0.121, 0.121 であり,修正. 多角化企業は経営者の下,各事業部門が売上高. Jones モデルが最もあてはまりがよいが,いず. や会計利益などの業績に関する部門間競争を. れもそれほど高いとは言えない数字と考えら. 行っており,この点からも利益を増加させるイ. れる.ただしすべてのモデルについて,分散. ンセンティブが存在する可能性がある.一般に,. 分析 の 結果,F 値 は,Jones, 修正 Jones, CFO. 情報の非対称性により生じる,管理部門の重複. Jones, CFO 修正 Jones モデルにおいてそれぞ. などの非効率性により,多角化企業には企業価. れ 34.3, 42.8, 40.6, 40.6 であり,いずれも 1% 水. 値が減少する diversification discount が存在す. 準で有意であり,多重回帰モデルの説明力自体. るといわれており,多角化を行うことにより企. は常に高かった.また, どのモデルにおいても,. 業価値が減少するとする論文は多く存在する11).. 10). 各変数の相関係数はあまり高くなく,VIF. は. しかしながら公益事業における政治的コスト仮. 1 前後で,多重共線性の問題はないと考えられ. 説の観点からは多角化は企業サービスの利用者. る.不均一分散 に 関 し て は,Durbin-Watson. にとってはメリットがある可能性がある.. の検定によれば,どのモデルも 2 からそれほど. 次に,すべてのモデルにおいて,仮説 2 の代. 離れてはいないので問題になるほどではない.. 理変数 で あ る 公共料金変化率(Tariff Δ)の 係. 4 つのモデルいずれに関しても,そのモデル. 数は 1% 水準で有意であったが,符号は正値で. によって算出した裁量的アクルーアル総額を従. あり,仮説 2 を否定する結果が得られた.スペ. 属変数とする重回帰分析について, 係数の符号,. イン電力会社に関する Gill-de-Albornoz, Illueca. 有意水準共に共通性が高かったので,4 モデル. (2005)の検証結果とは異なり,各公益事業会. について同時に論ずることにする.まず,仮説. 社が必ずしも公共料金の改定にあわせて,利益. 1 の代理変数である,全売上高に占める公益事. 減少型の利益調整を行っているわけではないこ. 業の割合(公益事業 %)についてみると,4 つ. とが確認できた.むしろ公共料金の上昇期には. のモデルにおいていずれも係数の符号は負値で. 利益増加型の利益調整が行われているようであ. あり,1% 水準で有意であった.これは,公益. る.前述したように,スペインの電力会社の場. 事業 の 割合 が 高 い企業ほど,利益減少型の利. 合,電気料金は政府と電力業界間の非公開の政. 益調整を行っているということであり,国内に. 治的交渉によって決定されている.これは電力. おいて,政治的コスト仮説が,電力,ガス,鉄. 料金が総括原価方式とヤードスティック査定に よって,ある程度自動的に決定される日本の方. . 9)これら独立変数の記述統計量は表 5 参照. 10)Variance Inflation Factors(分散拡大要因) の 略.多重共線性 の 検出 に 用 い ら れ る.例 え ば VIF>10 の場合多重共線性が強く疑われる.. . 11)代表的な論文に,Berger and Ofek(1995) , Lins and Servaes(1999) ,Denis et al.(2002) , Fauver et al.(2004)などがある..

(13) 公益事業会社の利益調整に関する実証研究(竹内). (705) 183. 表 5 独立変数の記述統計量 度数. 最小値. 最大値. 平均値. 標準偏差. 公益事業 %. 608. 13.00%. 100.00%. 80.6349%. 0.2322. LN(総資産金額). 608. 9.3208. 16.4950. 13.441. 1.7501. Tariff Δ. 608. -4.4. 6.800. 0.573. 2.218. 注 1)独立変数の定義:公益事業 % = 全売上高に占める公益事業会社の売上高の パーセ ン テージ;LN(総資産金額)= 総資産金額 の 自然対数;Δ Tariff= 公共料金の年間変化率(パーセント). 表 6 裁量的アクルーアルを説明変数とした OLS 重回帰分析推定結果 モデル Jones (t 値). 定数. 公益事業 %. Tariff Δ. LN(総資産金額). -.05123**. -.00025**. .00453**. .00574**. -4.316. -4.120. 7.021. 7.069. Adj. R2. F値. .142. D-W 比. 34.385** . 1.674 . 修正 Jones. -.04913**. -.00035**. .00242**. .00565**. (t 値). -5.004. -7.034. 4.537. 8.413. CFO Jones. -.03140**. -.00028**. .00201**. .00473**. (t 値). -3.789. -6.678. 4.456. 8.343. -.03105**. -.00028**. .00196**. .00473**. -3.748. -6.757. 4.354. 8.333. CFO 修正 Jones (t 値). . .171. 42.801**. 1.653. .164. .164. 40.614**. 1.631. 40.665**. 1.633. . **有意水準 1% 以下 *有意水準 5% 以下 注 1)変数の定義:公益事業 %: 全売上高に占める公益事業会社の売上高のパーセンテージ;LN(総資産金額)= 総資産金額 の自然対数;Tariff Δ : 公共料金の年間変化率(パーセント); Adj. R2= 自由度修正済決定係数;D-W 比=ダービン・ ワトソン比 注 2)定数以外の独立変数の値は上段が標準化係数,下段が t 値.. 式とは大きく異なる,スペインの例では,報告. 変数 と し て,売上高 や,(公益事業割合 x 売上. 利益を減少させることにより,政府との直接の. 高)などを用いて再検証したが結果は同じで. 交渉の際有利になる材料をもたらすことができ. あった.これは,規模の大きい企業ほど,利益. るのに対し,日本の場合,スペインのケースに. 増加型の利益調整を行っているということであ. 比べ,公共料金の改定に合わせて利益調整を行. り,政治的コスト仮説(規模仮説)とは反対の. う意味が少ないために,そのような形では利益. 結論を示唆している.ただし米国における研究. 調整が行われていない可能性が高い.ただしこ. でも,Wong(1988),Scott(1991)をはじめと. の点に関しては更に調査,検証が必要である.. する多くの研究が企業規模を代理変数とした政. 仮説 3 の代理変数である総資産合計額の係数. 治的コスト仮説の存在を否定しており,その点. については,1% 水準で有意であったが,符号. は当研究と共通の結果となっている.また,規. は仮説と逆の正値であった. 企業規模の代理. 模 の 大 き い 企業 ほ ど,利益増加型 の 利益調整.

(14) 184 (706). 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 5 号(2011 年 1 月). を行っているということについては,いくつ. いることがわかる.. かの 先行研究 が 実証的な報告を行っている.. この追加検証により,電力,ガス会社単独で. Barton and Simko(2002)は,企業規模が大き. は係数の信頼度がやや低く,3 業種を同時に検. いほどアナリストの利益予想に応えるために,. 証したことで,ある程度モデルの信頼度が確保. 利益増加型の利益調整を行うことを報告してい. されたことが確認できた.公益事業会社という. る.ま た,Nelson et al.( 2002)は,外 部 監 査. 広い括りで対象企業を選択したことで,重回帰. 人が,顧客企業の規模が大きいほど,利益調整. モデルにおける回帰係数の信頼度を向上させる. に対して修正を要求しない傾向があることを実. ことができている.. 証的に示している. 規模仮説が成立することは確認できなかった. 6.結論及び今後の展望. が,本研究によって,公益事業の割合という別. 本稿では,日本の電力,ガス,鉄道の公益事. の代理変数により,日本において政治的コスト. 業会社について,政治的コスト仮説が成立して. 仮説が成立していることが確認できたといえ. いるかどうかについて調査を行った.その結果,. る.. 公益事業の割合が大きいほど,利益減少型の利 益調整が行われている,という事実が確認でき. 5. 4 追加的検証. た.これは公益事業の割合が大きいほど政治的. 5. 3 の裁量的アクルーアルを独立変数とする. コストが大きいと考えられること,公益事業以. 重回帰分析は,同じ公益事業セクターの会社で. 外の事業分野においては株主の期待に応えるこ. あるとはいえ,3 産業を同時に分析したため,. とが期待されていること,一般的に多角化企業. このことが結果に影響を与えた可能性がある.. は経営者の下,各事業部門が売上高や会計利益. この影響を確認するため,本節では,電力,ガ. などの業績に関する部門間競争を行っており,. ス,鉄道 の 3 産業 を ダ ミー変数 と し て 重回帰. 各部門は利益を増加させるインセンティブが存. 分析の独立変数とし,追加的に OLS 重回帰分. 在することなどから理解できる結果であるが,. 析を行った.回帰式は以下のとおりである.. このような報告は初めてのものである.この検 証により,国内において,政治的コスト仮説. 裁量的アクルーアル %=α0 +β0(公益事業 %). が,電力,ガス,鉄道の 3 業種の公益事業会社.   +β1(Δ Tariff)+β2 LN(総資産額). について成り立っていることが確認できた.次.   +β3 IN1+β4 IN2 +εi,t. に,公共料金の上昇期には,利益減少型の利益. . 調整を行っていることについては確認できず,. ただし IN1 は電力業に関連したダミー変数. むしろ利益増加型の利益調整を行っていること. で,電力会社であれば 1, それ以外は 0 である.. が明らかになった.これは利益減少型の報告利. IN2 は鉄道業であれば 1, それ以外は 0 である.. 益が行われているにしても,必ずしも公共料金. 裁量的アクルーアルについては,説明力が最も. の改定期に合わせて行われていないことを示し. 高かった修正 Jones モデルによる値を使った.. ている.公益事業割合が大きい企業ほど利益減. その結果が表 7 である.鉄道業に属する企業の. 少型の利益調整を行っているという事実と併せ. ダミー変数の係数は 1% 水準で有意だが,電力,. れば,公共料金の改定時期を意識せずに利益減. ガス会社は P 値 9.8% 程度で,信頼度はそれほ. 少型の利益調整が行われている可能性が高いこ. ど高くはない.また,鉄道会社は係数の符号が. とが確認できた.. 正であるのに対し,電力及びガス会社は係数の. また規模の大きい公益事業会社ほど利益減少. 符号が負で,利益減少型の利益調整が行われて. 型の利益調整を行っていることは確認できな.

(15) 公益事業会社の利益調整に関する実証研究(竹内). (707) 185. 表 7 裁量的アクル―アルを独立変数とした OLS 重回帰分析推定結果(産業ダミー) モデル. 定数. 公共事業%. Tariff Δ. LN(総資 産) . 修正 Jones (t 値). IN 1 . IN 2. Adj R2. F 値. . . . -0.075 **. 0.022**. 0.131. 0.265**. -0.085. 0.373**. -5.839. 3.556. 0.453. 6.068. -1.656. 6.604. 0.263 44.363**. D-W 値 1.836. **有意水準 1% 以下 *有意水準 5% 以下 注 1)変数の定義:公益事業 % =全売上高に占める公益事業会社の売上高のパーセンテージ;LN(総資産金額)= 総資産金額の 自然対数;Tariff Δ = 公共料金の年間変化率(パーセント);IN1= 電力業であれば 1,それ以外は 0;IN2= 鉄道業であれば 1,それ以外は 0;Adj.R2= 自由度修正済決定係数;D-W 比=ダービン・ワトソン比 注 2)定数以外の独立変数の値は上段が標準化係数,下段が t 値. . かった.む し ろ 企業規模が大きいほど利益増 加型の利益調整を行う傾向があることが確認さ れた.これは,一般的な規模仮説が,規模の大 きい企業ほど利益減少型の利益調整の存在を指 摘していることを考えると,逆の結論となっ て い る.こ の 点 に よ り,Wong(1988) ,Scott. (1991)などの米国の研究において規模仮説が 否定されているのと同様の結論が,日本の公益 事業会社においても確認できた,といっても問 題はないであろう.また,規模が大きい企業ほ ど利益増加型の利益調整を行う傾向があること は,Barton and Simko( 2002)や Nelson et al. (2002)の報告と整合的な結論であり,その理 由として,企業規模が大きいほど,アナリスト の利益予想に合致した利益をあげる圧力が高ま ることや外部監査人が利益調整を許容する傾向 があることが考えられる.ただしこの点に関し ては更に調査を行う必要がある. 今後は,当研究で調査の対象とした企業群以 外の企業にも政治的コスト仮説が成立している かどうかという点や,政治的コスト仮説の成り 立つ産業や企業における特徴といった点に関し ても更に検証を行ってみたい.日本では,例え ば米国に比べ政府による企業活動への規制が大 きいが,そのために一般にはそれほど規制が厳 しくないと思われる産業についても政治的コス ト仮説が成立している可能性がある.そのよう な点についても調査を行いたい.. 参考文献 浅野信博[1999] 「資本市場 に お け る 会計発生高 の ミ ス プ ラ イ シ ン グ に つ い て」 『会計』第 160 巻 第 1 号,pp. 80─95. 東海幹夫,井口典夫,浅沼美忠,野村宗訓[1999] 『公益事業の評価と展望』日本評論社 岡 田 克 彦,山 崎 尚 司[2008]「上 場 変 更 企 業 Managers Opportunism の 検 証 裁 量 的 会 計発生高 と Post-Listing Return 」 『現代 ファ イナンス』第 23 号,pp. 109─130. 奥村雅史[1998] 「電力企業 に お け る 報告利益管 理」 『会計』第 152 巻第 2 号,pp. 23─32. 大 日 方 隆[2005a]「セ グ メ ン ト 情 報 の Value Relevance ─鉄道業のケース」経済学論集第 71 巻第 2 号,pp. 2─57. 大日方隆[2005b] 「特別法上 の 準備金 の Value Relevance 」東京大学 COE も の づ く り 研究 センター Discussion Paper MMRC-J-131 桑原秀史[2008 ] 『公共料金 の 経済学:規制改革 と競争政策』有斐閣 須田一幸[2001] 『財務会計の機能─理論と実証』 白桃書房 須田一幸,首藤昭信[2001] 「経営者 の 利益予測 と 裁量的会計行動」 『産業経理』第 61 巻第 2 号,pp. 46─56. 清水龍瑩[1997] 「社長 お よ び 各界 リーダーの イ ンタビュー・サーベイ(25) 」 『三田商学研究』 第 40 巻第 3 号,pp. 46─56. 國村道男,加藤千雄,吉田靖[1998] 「邦銀 の 配 当制限基準 と 決算対策」 『会計』第 154 巻第 3 号・4 号,pp. 130─143,pp. 119─129 中條祐介[1992] 「電力業界にみる政治的コスト 回避の会計政策」 『産業経理』第 52 巻第 2 号 , pp. 134─143. 内閣府政策統括官(経済財政運営担当)付物価担 当編[2007] 『公共料金 ハ ン ド ブック 2007 』 内閣府政策統括官(経済財政運営担当)付物 価担当.

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