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IRUCAA@TDC : 口腔アンチエイジングによる生体制御 : グループリーダーによる研究進捗状況中間報告 : (2)研究成果総括報告 プロジェクト7

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Academic year: 2021

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(1)Title. Author(s) Journal URL. 口腔アンチエイジングによる生体制御 : グループリーダ ーによる研究進捗状況中間報告 : (2)研究成果総括報 告 プロジェクト7 井上, 孝 歯科学報, 110(1): 34-49 http://hdl.handle.net/10130/1205. Right. Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/.

(2) 34. 東京歯科大学口腔科学研究センターワークショップ. ⑵研究進捗中間報告 プロジェクト7:. 積極的に予防するプラス医療であり,究極の予防医. 口腔アンチエイジングによる生体制御. 学と考えられる。老化の原因は,ホルモン低下,酸 化ストレス,免疫力低下により,細胞機能が低下す. −グループリーダーによる研究進捗状況中間. ることである。従来老化への対応として,栄養指. 報告−. 導,運動,ストレスケアなどが主体的予防法であっ プロジェクトコーディネーター:井上. 孝. たが,近年新たなアンチエイジングに対応する取り 組みが始まっている。口腔機能はこれらのアンチエ イジングに密接に関わるだけでなく,特有の防御機. 研究プロジェクトの目的・意義及び計画の概要 高齢化社会における健康推進には,多角的・多面. 構と修復機構を発達させた特異な場所でもある。こ. 的な研究を集約し臨床応用へ展開することがきわめ. の機能は口腔のみならず全身へも多大な影響を与え. て重要である。本学では,口腔機能から全身健康を. ることの知見も示してきた。. 達成させることを課題とし,その研究組織を構築し. 本プロジェクトでは,このような視点を基盤とし. てきた。すなわち,①口腔機能による生体制御機構. て,口腔内におけるアンチエイジングによる予防医. の解明および②口腔・顎顔面機能再構築のための高. 学を作りあげる生体制御医療を実現させることにあ. 機能素材の開発が平成8年度「私立大学ハイテク・. り次のようなものに焦点を絞り込んだ。. リサーチ・センター整備事業」として採択された。. HRC7−1: 基礎研究1. これを機に,口腔科学研究センター(口科研) を設置. HRC7−2: 基礎研究2. した。同研究センターにおいて,口腔健康の基盤と. HRC7−3: 口腔固有機能と細胞の活性化. なる新しいコンセプトを創り,同時に新たな高機能. HRC7−4: 口腔疾患予防. 素材の開発に関する研究を推進してきた。これらの. HRC7−5: 再生医療. プロジェクト研究は,③唾液による生体制御機構に. の5つの課題を軸とし,エイジングのメカニズム. 関する研究として継続採択され,様々な生理活性物. から個体の診断,それに基づく必要な治療の選択,. 質を含む唾液と生体制御機構に関して,多くの成果. そして口腔を基盤に全身の健康を考え,健康長寿の. を生み出すことができた。. 達成を目的とした。. 本プロジェクトでは,上記の研究成果を基盤とし て「口腔のアンチエイジング」という新しい観点か. 研究プロジェクトの進捗及び成果の概要. ら健康推進に寄与できることを,基礎研究を通して. 本プロジェクトを5つのグループに分け,研究を. 具体的に証明し,EBM につながる臨床応用への展. 遂行してきた結果,各方面からの知見を集約するこ. 開をはかることを目標とした。このプロジェクトを. とで,到達目標である,口腔アンチエイジングによ. 通じて口科研では,最先端の研究を世界に発信する. る生体制御の基盤ができたと考える。. と共に,口腔疾患の予防を含めた歯科臨床との架け. HRC7−1: 口腔諸組織の細胞を用いて,エイジ. 橋を築きながら,世界をリードする歯科医学の若手. ング関連マーカーを網羅的に解析することにより,. 研究者育成機関としての機能を活性化させるものと. エイジングマーカーの候補を得ることができた。. した。. HRC7−2: 唾液内のエイジング関連マーカーを 網羅的に解析することにより,非侵襲的に採取でき るエイジングマーカーの候補を得ることができた。. 口腔アンチエイジングによる生体制御 生理的な老化は進行が穏やかであるが,その過程. HRC7−3: 唾液腺の水分泌における細胞間・内. において病的な要素が加わると,老化が進む(病的. 経路を明らかにすることにより,エイジングに伴う. な老化) 。従来の医療は病的な老化を治療してきた. 口腔乾燥症への治療法確立につながる成果が得られ. のに対し,アンチエイジングは,この病的な老化を. た。. ― 34 ―.

(3) 歯科学報. Vol.110,No.1(2010). 35. HRC7−4: 口腔感染症と全身疾患の関係を明ら. cadherin や抗菌性を示す human beta defensin−1. かにすることで,口腔感染症の予防から全身の健康. が検出され,年齢の上昇とともに歯周疾患やカンジ. に寄与する可能性が示唆できた。. ダ症との関連性が示唆された。また,その高齢化と. HRC7−5: FACS を用いて口腔組織 SP 細胞の. 関連するカンジダ症などに対する新規な抗菌活性物. 分離を行い,失われた口腔組織再生のための基礎を. 質の検索として,アンチエイジング効果の示唆され. 確立した。. ているポリフェノールのうち,特にレスベラトロー ルの抗菌作用について検討を行った。プランクト. 進捗状況・研究成果等. ニック状態の細菌や真菌カンジダなどに対する作用. <現在までの進捗状況及び達成度>. に関して基礎データが得られている。レスベラト. HRC7−1: 本グループでは,主に3つの研究が. ロール作用時の形態変化や,バイオフィルム状態の. 進められている。1) アンチエイジングに関与する. 菌へのレスベラトロールの抗菌効果の評価が進行し. テロメア結合タンパク質の生理作用を明らかにし. ている。一方,口腔組織細胞群における加齢に伴う. た。具体的には,蛍光タンパク質を用いてテロメア. 遺伝子発現変化の解析としてまずラット切歯歯胚の. 結合タンパク質およびタンキラーゼの局在性を調. 1,8,10ヶ月齢において,マイクロアレイを用い. べ,骨芽細胞においてテロメア結合タンパク質は核. 発現遺伝子の網羅的解析が行われた。1ヶ月齢と比. 周辺に局在し,タンキラーゼは細胞質全体に散在し. 較し8ヶ月齢で715遺伝子,10ヶ月齢で1029遺伝子. ていることを明らかにした。2) 内軟骨性骨化に関. の発現が有意に変化し,これらの遺伝子中,コラー. 連する Ihh の作用についても明らかにした。Ihh が. ゲン線維代謝,石灰化,細胞分裂,細胞分化制御に. 下顎頭軟骨の内軟骨性骨化のみならず,顎関節円板. 関わる遺伝子の発現が変化していることが見出され. や関節腔の形成にも重要な役割を担い,Gli3はそ. た。ま た,ブ タ マ ラ ッ セ 上 皮 遺 残 由 来 細 胞 の. の過程で抑制的に作用していることを明らかにし. 3,11,17継代目を用い,マイクロアレイにて継代. た。3) 感覚神経線維あるいはその感覚神経終末の. 間による比較を行い,継代を重ねるごとに石灰化促. エイジングあるいは変性と再生の機序について明ら. 進能,抗細菌性,コラーゲン代謝能,細胞接着能に. かにした。下唇粘膜における感覚神経終末は3種類. 関連する mRNA 発現量が低下することが示唆され. の神経終末が分布するが,加齢にともない器官化し. た。. た感覚神経終末の形態は複雑に変化する傾向を示し. HRC7−3: 口腔組織は,口腔粘膜上皮におおわ. た。Encapsulated. corpuscles は速順応性応答を示. れ,唾液腺から分泌される唾液によって恒常性が維. すが,内棍内軸索が複雑になることから,刺激を受. 持されており,口腔上皮や唾液・唾液腺における生. 容する閾値に変化が生じているものと思われる。. 体防御機構を解明するとともに,これらを活性化し. HRC7−2: 本グループでは,唾液を検体とした. 治癒能力を高く維持していくことは,口腔のアンチ. エイジングマーカーの検出,口腔組織細胞群におけ. エイジングの基礎となる重要なポイントである。口. る加齢に伴う遺伝子発現変化の網羅的解析,新規な. 腔粘膜上皮について,口腔重層扁平上皮および歯肉. 抗菌活性物質の検索,エイジングによりマラッセ上. 付着上皮における透過性調節機構と接着機構に関与. 皮遺残細胞の機能は低下する,と題する研究が行わ. する因子の解明と活性化を検討すると共に,重層化. れた。唾液は非侵襲的かつ簡便に採取できる検体な. した口腔粘膜培養細胞のモデルを作製した。. ので,エイジングマーカーが見つかれば大変有用で. 歯肉切除後の再生付着上皮の歯面への再付着の過. ある。そこでマイクロアレイ解析を利用してエイジ. 程において,上皮結合織間の外側基底板における. ングマーカー候補遺伝子を検索した。20歳代男性3. Laminin‐1の発現に先立ち,伸展する再生上皮先端. 名(平均26. 7歳) と50歳代男性3名(平均53. 0歳) から. 部では,Laminin5のサブユニットの γ2鎖の強い. 唾液を採取し,RNA を抽出し,マイクロアレイ解. 発現と結合織側への分泌が起こること,再生上皮最. 析を行った。その結果,50歳代で低下したもので. 表層の細胞膜に,接着蛋白の Integrin α3,β4が. は,細胞接着に関連する laminin. 発現して,歯面への接着・遊走を誘導することが明. gamma2や E­. ― 35 ―.

(4) 36. 東京歯科大学口腔科学研究センターワークショップ. らかとなった。また,ラットの口腔粘膜上皮では,. 中球からの MMP‐9遊離等によって免疫を攪乱し歯. Aquaporin のうち,Aquaglyceroporin の AQP3お. 周炎に関わることを明らかにした。さらに,本菌の. よび AQP9が細胞表面に発現しており,脂質の細. 臍帯静脈内皮細胞からの MCP‐1産生誘導が動脈硬. 胞間隙への輸送調節を担って透過性調節に関与して. 化症に関与する事を示唆した。. いる可能性があることが示唆されるとともに,タイ. 歯肉溝内バイオフィルム形成メカニズムでは,. ト結合関連蛋白の局在と透過性関門機構との関連に. Fusobacterium nucleatum と Porphyromonas gin-. ついても検討した。さらに,高浸透圧,低浸透圧状. givalis によるバイオフィルム形成の著明な上昇と. 態における細胞のボリュームの維持のメカニズムに. 細胞への侵入性の上昇を明らかにした。さらに,バ. ついては,細胞株を用いて形態学的・組織学的な解. イオフィルム形成による抗菌剤の効果の減少を明ら. 析をおこない,浸透圧変化に伴って Cl−チャネル. かにした。その形成阻害についてはクランベリー由. と TJ に相関がみられた。重層化した口腔粘膜培養. 来のポリフェノールが gingipain の活性抑制等を介. 細胞では,上皮層の成熟にともない,細胞間接着因. して P. gingivalis のバイオフィルム形成阻害を示す. 子と電気抵抗(TER) に相関を見いだした。また,. ことを明らかにした。また唾液中の自然免疫物質の. ラクトフェリン受容体の口腔由来細胞での発現とラ. シスタチンの定量により歯周病のリスク判定ができ. クトフェリンによる抗腫瘍効果および cell survival. る可能 性 を 示 し た。歯 周 病 ワ ク チ ン に つ い て は. に関する細胞内情報伝達系の活性化との間の関係に. gingipain に対する DNA vaccine を作製し,その経. ついても検討した。. 鼻免疫により P. gingivalis 感染による歯槽骨吸収を. 唾液と唾液腺については,細胞間・細胞内経路を. 阻止できることを示した。宿主応答については,ニ. 介した唾液蛋白質・水分泌機構と,これらの加齢に. コチンによる歯周病原菌に対する応答の変化および. 伴う変化と活性化,を目的として研究を行なってお. 胎生期での内毒素暴露による出生後の免疫応答のプ. り,タイト結合部から腺腔側膜直下のアクチン細胞. ロファイルの変化等を明らかにし,歯周病原菌が全. 骨格が分泌にともなって改変されて,タイト結合を. 身の免疫に及ぼす影響を明らかにした。誤嚥性肺炎. 介した水やイオン,低分子量の分子等の傍細胞輸送. の予防では,口腔ケアの指標を構築し,さらに口腔. 経路の透過性を増大させることが明らかとなった。. ケアによるインフルエンザ予防の可能性を明らかに. ま た,Aquaporin の 検 討 で は,AQP5の み な ら. した。. ず,AQP6が同様に分泌顆粒膜に存在することを. HRC7−5: 欠損あるいは機能が消失した口腔組. 明らかにし,AQP6がタイト結合部の細胞膜と分. 織を再生することは究極のアンチエイジングである. 泌顆粒膜で,水と陰イオンの輸送に密接に関与して. と言っても過言ではない。口腔にはさまざまな組織. いることを示した。さらに,マウス耳下腺から単離. が存在するが,既存の細胞レベルからの組織再生お. し た 腺 房 細 胞 で の whole−cell patch−clamp re-. よび幹細胞を利用しての組織再生を試みている。既. cording においても,唾液腺細胞には AQP6が発. 存細胞を用いる方法として,Simvastatin acid 溶液. 現し,その陰イオンコンダクタンスの透過性比率. (SVA) をシクロデキストリン溶液(CD,β 型) に添. は,NO3−>acetate−>Cl−>NO2−で あ る 事. 加し,pH を変化させて CD−SVA 溶液を調製し,. が明らかになった。. 徐放性を制御したシンバスタチンを Scaffold に担持. HRC7−4: 本プロジェクトでは口腔感染症の予. することにより,顎骨の早期再生が期待された。さ. 防によるエイジングの阻止を目的とした。歯周病原. らに,三次元的な培養を行うために,ラジアルフ. 性菌の定着と病原性についての解析では,歯周病原. ロー型のバイオリアクターを用い,直径18mm,高. 菌の定着は,混合歯列期に急速に上昇し,さらに,. さ10mm の collagen scaffold に骨芽細胞を均一に増. 親子,兄弟の間での感染の可能性が認められ,その. 殖させることに成功した。一方,幹細胞を用いた方. 感染の阻止を早い時期から行う必要があることを明. 法として,Side Population (SP) 細胞分離法を応用. ら か に し た。さ ら に Treponema denticola は,炎. し,EGFR からの情報が ABC トランスポーター発. 症性サイトカイン誘導と,補体の活性化を介した好. 現量を調節し SP 細胞または抗癌剤耐性癌幹細胞化. ― 36 ―.

(5) 歯科学報. Vol.110,No.1(2010). 37. させるメカニズムを解明した。また,間葉系組織幹. 液エイジングマーカーを同定し臨床応用につなげ. 細胞から間葉系細胞への分化誘導の仕組み,特に. る。. PPARγ の歯牙組織への分化における役割は miner-. HRC7−3: 解明できたものは正常唾液腺の水分. alization 促進に働いていることを発見し,歯根膜間. 泌の動態であり,エイジングした唾液腺の動態にま. 葉系幹細胞分化の仕組みを中心に転写因子の動態メ. で踏み込んでいない。エイジング動物を用いて実際. カニズムを解明中である。さらに SP 細胞を用い. に水分子の細胞間移動の活性化に関する検討を行. て,放射線治療や Sjogren 症候群,加齢変化により. う。. 唾液分泌量が減少した患者に対して,唾液腺組織の. HRC7−4: 口腔細菌が全身の免疫に及ぼすこと. 再生を試みている。また,歯髄内の若齢者と加齢者. が明らかとなったが,それを抑えるためのワクチン. の SP 細 胞 を 検 索 し,ABCG2,CyclinD2に お い. などの開発が要求される。ワクチンの開発を行うた. て高い遺伝子発現を示し,Nesitin,ALP において. めの実験を行う。. は低い遺伝子発現を示したことを突き止めた。口腔. HRC7−5: 口腔内諸組織の SP 細胞を分離する. および周囲にはさまざまな筋組織が存在するが,筋. ことには成功したが,その特徴が精査されていな. 衛星細胞の分化開始シグナルを追及するために,遺. い。また,再生医療への応用を検討する必要があ. 伝子学的に検討した結果,IGF‐1,HGF に代表さ. る。従来の幹細胞の同定法と比較しつつ,in vivo. れる成長因子だけではなく,その働きを制御するミ. 試験を実施する。. オスタチン,さらにはミオスタチンの発現を制御す る因子についての相互作用の一端が明らかとなっ. 研究成果の副次的効果. た。. HRC7−1: エイジングに関連する遺伝子を健康 管理に役立てる可能性がある。. 特に優れた研究成果. HRC7−2: 血液に変わる非侵襲性に採取できる. HRC7−1: 口腔諸組織の遺伝子解析を行い,エ. 唾液を用いて,エイジングの検査ができることは意. イジング関連マーカーを見出した。. 義深い。. HRC7−2: エイジングマーカーとしての唾液検. HRC7−3: 活性の落ちた唾液腺を再活性化させ. 査導入の可能性を示唆した。. ることにより,歯周組織を含めた口腔諸組織の活性. HRC7−3: 唾液分泌を活性化させるための,唾. および口腔感染予防に寄与し,アンチエイジング治. 液腺の水分泌における細胞間・内経路を明らかにし. 療として期待できる。. た。. HRC7−4: 口腔細菌 を コ ン ト ロ ー ル す る こ と. HRC7−4: 口腔細菌の全身の免疫に及ぼす影響. で,全身生体制御に寄与することが可能となる。. を明らかにした。. HRC7−5: 口腔組織に存在する幹細胞を分取す. HRC7−5: 口腔組織に存在する幹細胞(SP 細胞). ることにより,口腔再生細胞銀行を構築する。. を分離し,再生医療へ応用できることを示唆した。 今後の研究方針 問題点とその克服方法. HRC7−1: 紫外線により老化が促進されること. HRC7−1: エイジングに最も関与すると考えら. がいわれていることからビタミン D 受容体に注目. れている酸化ストレスと遺伝子の関係が解明されて. し,その生理活性および老化を促進する細胞内カス. いない。ストレス環境下における細胞・組織を用い. ケードを明らかにしていきたい。また顎関節の成長. て,エイジングに伴う酸化ストレス遺伝子の解析を. 発育における Ihh の機能および加齢的変化に伴う下. 行う。. 顎頭の形態変化における Ihh の役割を遺伝子レベル. HRC7−2: 唾液中と従来知られている血液中の. で明らかにしていく必要があると考えている。感覚. エイジングマーカーとの比較がなされていない。両. 神経終末あるいは感覚神経線維の変性と再生は本年. 者の相関関係を明らかにすることにより,有効な唾. 度から始められた研究であり,形態的観察も充分に. ― 37 ―.

(6) 38. 東京歯科大学口腔科学研究センターワークショップ. できていない状態である。機能的な研究はこれから. 脈硬化等の慢性疾患の予防への応用の可能性を含ん. の段階であり研究の継続が必要である。. でいる。以上の解析結果をもとに,さらに実用性の. HRC7−2: 口腔アンチエイジングの達成には,. ある予防手段へと発展させるためには,細胞の活性. エイジングの分子メカニズムの理解は必須である。. 化および再生を研究する他部門との共同で研究を継. このグループで行われている研究の多くはマイクロ. 続していくことが必須である。. アレイを用い遺伝子の網羅的解析が現在までの行わ. HRC7−5: 加齢に伴う口腔組織機能障害,ある. れ,唾液のエイジングマーカーの候補や,口腔組織. いは口腔組織に対する障害によりの欠損した場合,. のエイジングと関連する遺伝子の候補が見いだされ. 患者の QOL の低下は避けられないものである。機. てきた。今後はそれらを real−time PCR やタンパ. 能障害や欠損による口腔機能の逸脱を再生すること. クレベルで検証してゆく必要がある。また,抗菌作. によって口腔アンチエイジングの達成が働くと考え. 用は口腔バイオフィルムという特異な条件下で評価. る。現在,さまざまな口腔機能逸脱に対して研究が. されるべきであるがその比較条件としてのプランク. 報告されてきているが,中でも幹細胞を用いた組織. トニック状態における評価が必要であった。また,. 再生や三次元培養技術は将来的な口腔再生研究にな. 新たなマーカー候補やエイジング関連遺伝子,新規. くてはならないものである。. な抗菌活性物質などをターゲットとした研究遂行へ 今後期待される研究成果. の発展性もある。 HRC7−3: 口腔アンチエイジングを達成するた. 研究成果を基盤として「口腔のアンチエイジン. めに,口腔粘膜と唾液・唾液腺に焦点を当てて,生. グ」という新しい観点から健康推進に寄与できるこ. 体防御機構の活性化をめざして研究を行なっている. とを,基礎研究を通して具体的に証明し,EBM に. が,口腔粘膜重層扁平上皮の透過性関門機構と透過. つながる臨床応用への展開をはかることになる。こ. 性調節のメカニズムを明らかにするとともに,口腔. のプロジェクトを通じて口腔アンチエイジングの考. 粘膜上皮および付着上皮の創傷治癒における接着機. え方を世界に発信すると共に,口腔疾患の予防を含. 構を解明することは,口腔アンチエイジングのみな. めた歯科臨床との架け橋を築きながら,世界をリー. らず,口腔粘膜疾患や歯周疾患の治療においても重. ドする歯科医学の若手研究者を育成する機関として. 要な示唆を与えるものとなる。さらに,口腔内環境. 機能することが期待できる。. を維持し恒常性を保つために唾液分泌機構の解明と そのコントロールにより,う蝕や歯周疾患の予防の. プロジェクトの評価体制(自己評価・外部評価を含. みならず口腔粘膜上皮を活性化させ,口腔粘膜疾患. む。 ) 採択後,プロジェクトを5つのグループに分け,. の予防や治癒にもつながると考えている。 HRC7−4: 本プロジェクトにより,口腔のバイ. リーダーを配備し,グループ毎による進捗状況の報. オフィルムの形成メカニズムさらにバイオフィルム. 告を義務づけた。また,毎月1度,プログレスレ. としての病原性を明らかにすることができた。これ. ポートを設け,グループ毎に発表を行わせた。さら. らの口腔感染症の原因となるバイオフィルムの構成. に,リーダーについては毎週1度のリーダー会議に. と病原性の生物学的コントロールについての解析を. て,運営会議を行った。年に1度はワークショップ. もとに,歯周炎に対するワクチン,誤嚥性肺炎オー. を行い,内部,外部評価者による評価を受けてい. ラルケアによる予防とさらにインフルエンザ感染の. る。さらに,内部・外部学会で発表することでも評. コントロールの可能性についても明らかにした。さ. 価を受けている。. らに,宿主の免疫応答についての解析から,歯周病 原菌による免疫の攪乱作用を歯周局所と全身に対す. 研究施設・設備等. るものに関して解明した。免疫を介した全身への作. 本研究を遂行するために導入した研究装置:. 用は,歯周病原菌の全身疾患への関与についてのメ. ベンチトップ型セルソーター,BD FACSAria. カニズム解明の重要な key であり,それによる動 ― 38 ―.

(7) 歯科学報. Vol.110,No.1(2010). 39. 遺伝子的網羅研究(松江真理子) などの研究が進めら. 研究成果の公開状況 シンポジウム・学会等の実施・予定状況,イン. れている。この中からテロメア結合タンパクの生理. ターネットでの公開状況等. 機能の検討について記すことにする。. <既に実施しているもの>. 緒. 1)第283∼286回東京歯科大学学会(学内学会). 年に20%に達した。2020年には25%,すなわち国民. 2)第5回日本再生歯科医学会(主催:東京歯科大. の4人に一人は高齢者という,かつてどの国も経験. 学 HRC7). 言:日本において65歳以上の高齢者人口は2006. しなかった高齢社会を迎えることが予測されてい. 3)平成18年度および19年度東京歯科大学口腔科学. る。アンチエイジングの研究意義は,健康に老い, 充実した人生を送って天寿を全うする,いわゆる. 研究センター公開ワークショップ 4)第287∼290回東京歯科大学学会(学内学会). QOL の向上を目指して学際的に研究することと思. 5)第2回日本口腔検査学会(理事長:研究代表者). える。このためには,高齢者のみを対象とするので はなく,生体に起こる,生物学的な現象を解析する. 平成21年10月広島にて開催 6)平成20年度,21年度,22年度東京歯科大学口腔. ことが必要である。 そこで我々は,加齢・老化の細胞内シグナルを明. 科学研究センター公開ワークショップ 7)東京歯科大学創立120周年記念国際シンポジウ. らかにすることとした。ヒトの正常体細胞の分裂は. ム. 無限ではなく,50∼70回しか分裂できない。この原. インターネットによる公開. 因はテロメアの短縮にある。テロメアは染色体の末. ホームページの拡充. 端にある保護構造であり,5’ −TTAGGG−3’ の. 8)その他公開状況. 繰り返し配列からなる DNA により構成され,DNA. 東京歯科大学ホームページ内口腔科学研究セン. ダメージ,染色体融合,染色体の不安定化を起こす. ターサイトにて,HRC7の内容を公開. ような染色体末端の露出を防いでいる1−3)。このテ. 研究成果発表会,学会,ワークショップなどの動. ロメアの長さを短縮するタンパク質としてテロメア. 画配信,外国語による配信. 結合因子(Telomere repeating factor:TRF) が,長 さを維持する酵素としてテロメラーゼが知られてい る。. 1.基礎研究グループⅠ グループリーダー:田. 電位依存性カルシウムチャネル(VDCC) は,膜タ 雅和. はじめに:hrc7基礎研究グループ1では,細胞内 シグナルから中枢神経系あるいは口腔に関連する組 織細胞の加齢・変性・再生など幅広い研究がなされ ている。主なテーマと研究代表者は次の通りであ る。テロメア結合タンパクの生理機能(遠藤隆行) , 末梢神経損傷による変性と再生(佐々木研一) ,骨創 傷治癒各期におけるインプラントの適応(佐藤大 輔) ,顎関節の形態形成におけるヘッジホッフの役 割(澁川義宏) ,脳機能の加齢変化(新谷益朗) ,歯科. 図1. 麻酔時の幼弱歯髄への影響(泉水祥江) ,口腔粘膜上 皮の感覚神経終末の加齢における動態(田崎雅和) , 義歯床下粘膜の変化(鶴岡守人) ,歯牙発生における 歯小嚢の骨吸収機序(福原郁子) ,加齢に伴う歯髄の ― 39 ―. テロメアの伸張に関する細胞内および細胞膜タンパク のシグナル経路 AT1 receptor : アンギオテンシンⅡ 受容体,NGF receptor : 神経成長因子受容体,VDCC : 電位依存性カルシウムチャネル,G­protein : グアノシ ン3リン酸結合タンパク,PLC : ホスフォリパーゼ C, PKC : タンパクキナーゼ C, Src kinase : Src チロシンキ ナーゼ,MAPK : ミトゲン活性型タンパクキナーゼ, TRF : テロメア結合タンパク.

(8) 東京歯科大学口腔科学研究センターワークショップ. 40. ンパクの一つで,細胞の生存,神経細胞の可塑性に. ター事業による研究費の補助を受けた。. 関することが知られていた。1996年 に,Thibault. 文 献 1)Counter, CM, Avilion, AA, LeFeuvre, CE, Stewart, NG, Greider, CW, Harley, CB, Bacchetti, S : Telomere shortening associated with chromosome instability is arrested in immortal cells which express telomerase activity ; EMBO J 11,1921∼1929,1992. 2)Blasco, MA, Lee, HW, Hande, MP, Samper, E, Lansdorp, PM, De Pinho, RA, Greider, CW : Telomere shortening and tumor formation by mouse cells lacking telomerase RNA ; Cell 91,25∼34,1997. 3)Hande, MP, Samper, E, Lansdorp, P, Blasco, MA : Telomere length dynamics and chromosomal instability in cells derived from telomerase null mice ; J Cell Biol 144,589∼601,1999. 4)Thibault, O, Landfield, PW : Increase in single L­type calcium channels in hippocampal neurons during aging ; Science 272,1017∼1020,1996. 5)Verkhratsky, A, Toescu, EC : Calcium and neuronal ageing ; Trends Neurosci 21,2∼7,1998. 6)Li, H, Pinto, AR, Duan, W, Li, J, Toh, BH, Liu, JP : Telomerase down­regulation does not mediate PC12 pheochromocytoma cell differentiation induced by NGF, but requires MAP kinase signaling ; J Neurochem 95,891∼ 901,2005. 7)Endoh, T : Involvement of Src tyrosine kinase and mitogen­activated protein kinase in the facilitation of calcium channels in rat nucleus of the tractus solitarius by angiotensin Ⅱ ; J Physiol 568,851∼865,2005. 8)Endoh, T, Sato, D, Wada, Y, Ishihara, K, Hashimoto, S, Yoshinari, M, Matsuzaka, K, Tazaki, M, Inoue, T : Nerve growth factor and brain­derived neurotrophic factor attenuate angiotensin­Ⅱ­induced facilitation of calcium channels in acutely dissociated nucleus tractus solitarii neurons of the rat ; Arch Oral Biol 53,1192∼1201,2008. 9)Zheng, K, Kuteeva, E, Xia, S, Bartfai, T, Hokfelt, T, Xu, ZQ : Age­related impairments of synaptic plasticity in the lateral perforant path input to the dentate gyrus of galanin overexpressing mice ; Neuropeptides 39,259∼ 267,2005. 10)Endoh, T, Sato, D, Wada, Y, Shibukawa, Y, Ishihara, K, Hashimoto, S, Yoshinari, M, Matsuzaka, K, Tazaki, M, Inoue, T : Galanin inhibits calcium channels via Gαi­protein mediated by GalR1 in rat nucleus tractus solitarius ; Brain Res 1229,37∼46,2008.. 4). らは VDCC が加齢に関与することを報告した 。こ の報告を皮切りに,骨,神経において,生体内のカ ルシウム調節およびカルシウム関連システムと加齢 との研究が盛んに行われるようになった5)。 ま た,2005年 に Li ら に よ っ て,神 経 成 長 因 子 (Nerve growth factor : NGF)が テ ロ メ ラ ー ゼ の down−regulation を引き起こし,その細胞内シグ ナルにおいて,ミトゲン活性型タンパクキナーゼ (mitogen­activated protein kinas : MAPK) を用い ることが報告された6)。 そ こ で 今 回 我 々 は,テ ロ メ ア と NGF お よ び VDCC の関連シグナルを明らかにしたため,ここ に報告する。 研究方法:VDCC の活性化状態を検索する方法と して,全細胞膜記録型パッチクランプ法を適用し た。摘出した脳幹孤束核細胞に,先端2∼3Ω の ガラス管電極を高抵抗で接着させ,細胞内電位を固 定することにより,膜を流れるイオン電流を計測し た。 結果および考察:膜7回貫通型受容体として,アン ギオテンシンⅡの受容体(AT1受容体) とガラニン 受容体の細胞内シグナルを調べたところ,AT1受 容体は MAPK を用いていた7)。そこで,NGF を投 与したところ,この MAPK シグナルが阻害され, さらに VDCC を促進する作用がみられた。この結 果を Archives of Oral Biology 誌に報告した8)。 ガラニンは,海馬において,老化によるシナプス 可塑性に関与することが知られ,加齢による記憶障 害やアルツハイマー病の治療に用いられている9)。 我々はガラニンが VDCC を抑制することを Brain Research 誌に報告した10)。 結. 論:NGF は AT1受容体の細胞内シグナルで. 2.基礎研究グループⅡ. ある MAPK シグナルに対して阻害作用を有してい た。さら に NGF は VDCC を 促 進 し た。こ れ ら の. グループリーダー:佐藤. 裕. データにより,NGF が老化を促進する可能性が考 えられる。. 昨年度の本ワークショップでは「唾液を検体とし. また,ガラニンは逆に VDCC を抑制する作用を. たエイジングマーカーの検出」という課題で村松よ. 有していた。. り報告があった。また,本年度の日本歯科医学会総. 謝. 辞:この研究は東京歯科大学口腔科学研究セン. 会 に て,本 グ ル ー プ の メ ン バ ー(松 江,柴 山,根. ター HRC7の文部科学省ハイテク リ サ ー チ セ ン. 津,茂木,井本) による簡単なポスター発表があっ. ― 40 ―.

(9) 歯科学報. Vol.110,No.1(2010). 41. た。そこで今回は片倉らによる「唾液による口腔癌. ラーゼ1メッセージが亢進していることが確認され. のスクリーニング検査−プロテオームによるバイオ. た(図3) 。以上のことから口腔癌患者の唾液中に多. マーカの解析」についての最近のデータを報告し,. く検出されたエノラーゼタンパク質は口腔癌組織に. そのあと筆者によるミュータンスレンサ球菌の1口. 由来することが強く示唆され,有力な唾液のバイオ. 腔での永続性についてのデータを簡単に報告する。. マーカーであることが示された。そして,表面を抗. 片倉らは簡便に行える口腔癌のスクリーニング検. エノラーゼ抗体で処理したフローセルを持つマイク. 査並びに早期診断を目的に,唾液を用いた腫瘍マー. ロ流体デバイスを構築することで,多数の唾液検体. カーの検索を行ってきた。これまでに口腔癌患者の. をスクリーニングするが可能となる。また,この方. 唾液で IL−6や IL−1α が高値であることを報告. 法は共同研究者である村松が検索を進めているエイ. してきたが1),今回は解糖系酵素であるエノラーゼ. ジングマーカーのマイクロ流体デバイス化にも即応. 1がこの目的で有力な唾液のバイオマーカーである. 用可能である。. 2). ことを見いだした 。口腔癌患者の術前と術後の全. ミュータンスレンサ球菌とう蝕に関する研究は,. 唾液(図1) あるいは患者と健常者の全唾液を2次元. その対象が殆ど若齢者に限られ,高齢者を対象とし. 電気泳動にかけ,両者で発現量の比較を行ったとこ. た研究は殆ど行われていない3)。またミュータンス. ろ,全ての症例で術後の全唾液と健常者の全唾液で. レンサ球菌の保有に関しても同様である。ミュータ. 顕著に減少しているいくつかのタンパク質スポット. ンスレンサ球菌は生後19ヶ月から31ヶ月の間に感染. を検出した。そしてそれらのタンパク質を同定した. するといわれている4)。そして感染した株はおそら. ところ,その一つとしてエノラーゼ1が同定され. く生涯(全歯を喪失するまで) その口腔に定着すると. た。そこでこのエノラーゼ1に焦点を絞り,同一患. 考えられている。しかし,そのデータはない。本学. 者の口腔扁平上皮癌組織と健常部上皮それぞれを,. では微生物学実習で以前から学生が自らのミュータ. エノラーゼ1を用いた免疫組織化学染色を施し,そ. ンスレンサ球菌を検出する実習を行っており,1970. の染色スコアーを比較したところ,p<0. 05で健常. 年代のある年に検出された菌株が多数凍結保存され. 組織より口腔扁平上皮癌組織でそのスコアーが高値. ている。そこで,この保存菌株の子孫株が30年後の. であることが確認された(図2) 。また同様に両組織. 現在同一人口腔に定着し続けているかどうか検出を. より抽出した mRNA 量をリアルタイム PCR で増. 試みた。今回は MS 寒天平板上のコロニー形態で. 幅し比較したところ,口腔扁平上皮癌組織でエノ. S. mutans と判別のつく S. sobrinus を選んだ。被験. 図1. 口腔癌患者の手術前・後の全唾液のプロテオームの比較 ― 41 ―.

(10) 42. 図2. 東京歯科大学口腔科学研究センターワークショップ. 口腔扁平上皮癌組織と健常部上皮との,エノラーゼ1 免疫組織化学染色スコアーの比較 図4. 者唾液を Dentocult SM に採取後,一部を MSB 寒. と 今 回 採 取 し た5株(124R 凍 結 保 存 株(OM124d) の制限酵素 SmaI と XhoI による切断パ 2,124d1−4) ターンの比較. 天平板培地に展開し,S. sobrinus 様コロニーを6つ 採取した。予備実験からこのうち5株が S. sobrinus 文 献 1)片倉 朗,神山 勲,高木 亮他:口腔癌患者と健常者 における唾液中サイトカインの比較。頭頸部癌 32:45− 50.2006. 2)片倉 朗,作間 巧,菅原圭亮他:唾液による口腔癌の スクリーニング検査?プロテオームによるバイオマーカの 解析−。頭頸部癌34:503−507.2008. 3)OGAWA, T., IKEBE, K., MATSUDA K.­I. et. al. : Association of salivary mutans streptococci with DMFT index in elderly,(The 86th General Session & Exhibition of the International Association for Dental Research, Tronto, Canada, July 2−5, http : //iadr. confex. com/iadr/2008 Toronto/techprogram/abstract_105594.htm) . 4)Caufield PW, Cutter GR, Dasanayake AP. : Initial acquisition of mutans streptococci by infants : evidence for a discrete window of infectivity. J Dent Res. 72⑴:37−45 1993. 5)Sato, Y. unpublished results.. と推定 さ れ た の で,こ れ ら の 株 に つ い て パ ル ス フィールドゲル電気泳動によるゲノムレベルの制限 酵素切断パターンと gtfI, pag, dblA 遺伝子の高変異 領域の塩基配列(株間で90%から98%の一致率) を凍 結保存株のそれらと比較した。凍結保存株(OM124 d) と 今 回 採 取 し た5株(124R2,124d1−4) の SmaI と XhoI による切断パターンは図4に示され るように一致しており,それらは同一株ではない 6715株のそれらと明らかに異なっていた。また,3 つの高変異領域の塩基配列も保存株と今回分離5株 で100%一致した。また以前に行った S. mutans に おける検出例5)と合わせ,ミュータンスレンサ球菌 は口腔に定着後,30年以上にわたり同一口腔内に定 着し続けることが明らかになった。. 3.細胞組織活性グループ グループリーダー:橋本貞充 今回のシンポジウムでは,HRC7−3 エイジン グに対する口腔固有機能と細胞の活性化グループか らは,口腔粘膜上皮に関する2つの研究について報 告した。 口腔組織は,口腔粘膜上皮におおわれ,唾液腺か ら分泌される唾液によって恒常性が維持されてお 図3. 同一患者の癌組織と健常組織におけるエノラーゼ1 メッセージの比較. り,口腔上皮や唾液・唾液腺における生体防御機構 を解明するとともに,これらを活性化し治癒能力を. ― 42 ―.

(11) 歯科学報. Vol.110,No.1(2010). 43. 高く維持していくことは,口腔のアンチエイジング. 質の細胞間隙への輸送調節を担って透過性調節に関. の基礎となる重要なポイントである。. 与している可能性があることが示唆されたととも. 口腔粘膜上皮について,口腔重層扁平上皮および 歯肉付着上皮における透過性調節機構と接着機構に. に,タイト結合関連蛋白の局在と透過性関門機構と の関連についても検討している。 ウサギの口腔粘膜から口腔上皮細胞を分離し,重. 関与する因子の解明と活性化を検討すると共に,重. 層化させた口腔粘膜培養細胞モデルでは,経日的な. 層化した口腔粘膜培養細胞のモデルを作成した。 ラット臼歯部の歯肉切除後の再生付着上皮の歯面. 上皮層の成熟にともない,細胞間接着装置の増加と. への再付着の過程においては,創傷部に再生する口. 電気抵抗(TER) 値の増大に明らかな相関を見いだ. 腔上皮の上皮結合組織間の基底膜において,基底膜. した。. の重要な構成要素である細胞外マ ト リ ッ ク ス の. さらに,高浸透圧,低浸透圧状態における細胞の. laminin1(図1) の発現に先立ち,伸展する再生上. ボリュームの維持のメカニズムについては,細胞株. 皮先端部では,laminin5のサブユニットの γ2 鎖(図. を用いて形態学的・組織学的な解析をおこない,浸. 2) の強い発現と結合織側への分泌が起こること,. 透圧変化に伴って Cl−チャネルと TJ に相関がみら. 再生口腔上皮最表層の細胞膜に,接着 蛋 白 の in-. れた。. tegrin. α3,β4 が発現して,歯面への接着・遊走を 1, 2). 誘導することが明らかとなった. また,ラクトフェリン受容体の口腔由来細胞での 発現とラクトフェリンによる抗腫瘍効果および cell. 。. また,ラットの口腔粘膜上皮では,水チャンネル の aquaporin (AQP) ファミリーのうち,脂質透過に. survival に関する細胞内情報伝達系の活性化との間 の関係についても検討した。. も 関 わ る aquaglyceroporin の AQP3お よ び AQP. 今回のシンポジウムで発表を行なった以外の研究. 9が有棘細胞層上部で細胞表面に発現しており,脂. 成果として,唾液と唾液腺については,細胞間・細. Fig.1. Immunofluorescence localization of laminin1. Immunolocalizatoin of laminin and integrin in gingivectomy. Masaoka et al. 図1. Laminin1は,無処置の付着上皮では,結合織側の外側基底板にはみられるが,エナメル側の内側基 底板には認められず(a) ,歯肉切除後の口腔上皮の再生に遅れて,再生上皮と結合組織の間の基底膜に 発現する(b−f) 。Masaoka T. et. al. J Periodont Res,44⑷,489−495,2009. ― 43 ―.

(12) 東京歯科大学口腔科学研究センターワークショップ. 44. Fig.2. Immunofluorescence localization of laminin γ2 . Immunolocalizatoin of laminin and integrin in gingivectomy. Masaoka et al. 図2:Laminin5サブユニットの γ2 鎖は,無処置の付着上皮の結合織側の外側基底板とともに,内側基底 板にも明瞭にみられ(a) ,細胞接着に強く関与しているのがわかる。歯肉切除後の口腔上皮再生に先立 ち,先端部で結合織側に分泌されるとともに(b−d) ,初期の再生付着上皮の内側基底板に線状に発現 しているのが認められる(e−f) 。Masaoka T. et. al. J Periodont Res,44⑷,489−495,2009.. 胞内経路を介した唾液蛋白質・水分泌機構と,これ. と細胞の活性化グループでは,口腔アンチエイジン. らの加齢に伴う変化と活性化について研究を行なっ. グを達成するために,口腔粘膜と唾液・唾液腺に焦. ており,タイト結合部から腺腔側膜直下のアクチン. 点を当てて,生体防御機構の活性化をめざして研究. 細胞骨格が分泌にともなって改変されて,タイト結. を行なっているが,口腔粘膜重層扁平上皮の透過性. 合を介した水やイオン,低分子量の分子等の傍細胞. 関門機構と透過性調節のメカニズムを明らかにする. 輸送経路の透過性を増大させることが明らかとなっ. とともに,口腔粘膜上皮および付着上皮の創傷治癒. た。. における接着機構を解明することは,口腔アンチエ. また,唾液腺腺房細胞における水チャンネルの. イジングのみならず,口腔粘膜疾患や歯周疾患の治. aquaporin (AQP) の検討では,AQP5のみならず,. 療においても重要な示唆を与えるものとなる。さら. AQP6が同様に分泌顆粒膜に存在することを明ら. に,口腔内環境を維持し恒常性を保つために唾液分. かにし,AQP6がタイト結合部の細胞膜と分泌顆. 泌機構の解明とそのコントロールにより,う蝕や歯. 粒膜で,水と陰イオンの輸送に密接に関与している. 周疾患の予防のみならず口腔粘膜上皮を活性化さ. 3, 4). ことを示した. せ,口腔粘膜疾患の予防や治癒にもつながると考え. 。. さらに,マウス耳下腺から単離した腺房細胞での. ている。. whole-cell patch-clamp recording においても,唾 液腺細胞には AQP6が発現し,その陰イオンコン ダクタンスの透過性比率は,NO3−>acetate−>Cl− >NO2− である事が明らかになった。 HRC7−3. エイジングに対する口腔固有機能 ― 44 ―. 文 献 1)Masaoka T., Hashimoto S., Kinumatsu T., Muramatsu T., Jung H­S., Yamada S., Shimono M. Immunolocalization of laminin and integrin in regenerating junctional epithelium of mice after gingivectomy, J Periodont Res, 44⑷,489−495,2009. 2)Kinumatsu, T., Hashimoto, S., Muramatsu, T., Sasaki,.

(13) 歯科学報. Vol.110,No.1(2010). H., Jung, H., Yamada, S., Shimono, M. : Involvement of laminin and integrins in adhesion and migration of junctional epithelium cells, J Periodontal Res 44⑴,13∼ 20,2009. 3)Matsuki­Fukushima, M., Hashimoto, S., Shimono, M., Fujita­Yoshigaki, J., Sugiya, H. : Presence and localization of aquaporin­6 in rat parotid acinar cells, Cell Tissue Res 332⑴,73∼80,2008. 4)Sugiya, H., Matsuki­Fukushima, M., Hashimoto, S. : Role of Aquaporins and Regulation of Secretory Vesicle Volume in Cell Secretion, J Cell Mol Med 12 (5A) ,1486 ∼1494,2008.. 45. 歯周病原菌の細胞への侵入について明らかにする ためにその細胞侵入性について解析を行った。T. denticola ATCC35405株の口腔粘膜上皮細胞への侵 入を共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析すると,T. denticola が細胞内に侵入している像が認められた。 この作用はヒト臍帯静脈内皮細胞に対しても同様に 認められた。菌体を3H によりラベルし,antibiotics protection assay を行った結果も細胞内に侵入して いることを示唆する結果が得られた。本菌は表層に major outer sheath protein (Msp) とプロリルフェ ニルアラニン特異的プロテアーゼ,dentilisin,を. 4.口腔疾患予防グループ. 持ち,これらは本菌の病原性の中心的役割を果たし グループリーダー:石原和幸. ている。これらの欠損株を作成し細胞侵入実験を行 うと,侵入性は,dentilisin の欠損により著明に低. 近年歯周炎は口腔内のみならず,動脈硬化,糖尿. 下し,Msp の欠損によってはあまり影響を受けな. 病,誤嚥性肺炎等の全身疾患にも影響を与えること. かった。侵入性の低下は,dentilisin の阻害薬であ. 1). が明らかにされつつある 。歯周炎の発症と進行に. る phenylmethylsulfonyl fluoride によっても阻害さ. は,グラム陰性桿菌群とスピロヘータが重要な役割. れた。これらの結果から本菌の細胞侵入には表層の. 2). を果たしている 。これらの細菌は,歯肉から血液. denitlisin が重要な役割を果たすと考えられた。T.. 中に入り一過性の菌血症を起こすため,それが全身. denticola の侵入への細胞骨格の作用を明らかにする. の健康にも影響を 与 え る 可 能 性 を 持 つ。Tonetti. 目的で,細胞を metabollic inhibitor によって処理. 3). ら は,徹底的な歯周炎の治療によって動脈の弾性. した後,T. denticola の侵入を解析した。本菌の細. が改善したことを報告している。我々も以前,心冠. 胞侵入はプロテインキナーゼの阻害剤であるスタウ. 状動脈のバイパス手術を行った患者の心冠状動脈の. ロスポリンよって阻害された。これらの結果は,本. サンプルを対象として歯周病原菌の検出を行い,. 菌の侵入に protein kinase による細胞内シグナリン. Porphyromonas gingivalis, Treponema denticola, Ag-. グが関わっている可能性が考えられた。. gregatibacter actinomycetemcomitans,Campylobacter. デンタルプラークバイオフィルムはつねに複合菌. rectus, Tannerella forsythia が歯周炎局所とともに心. 種によって形成されている。この構成菌種の間で何. 冠状動脈サンプルから検出され,歯周病の症状が重. らかの相互作用があることが考えられる。多数の細. 4). 篤な群の方が高いことを明らかにしている 。動脈. 菌がバイオフィルムを形成するとオートインデュー. 硬化の発症機序には動脈壁のマクロファージの浸潤. サーを用いてコミュニケーションを取っていること. が重要な役割を果たすことを考えるとこれらの歯周. が報告されている6)。デンタルプラークバイオフィ. 病原菌の血管壁への作用は動脈硬化形成のプロセス. ルム形成のメカニズムとそれによる病原性の変化を. に何らかの役割を果たすことが考えられる。P. gin-. 明らかにする目的で複数菌種によるバイオフィルム. givalis, T. forsythia といった歯周病原菌は,乳歯列. 形成促進作用について解析を行った。根尖性歯周組. 期には検出頻度が非常に低く,混合歯列期からその. 織炎から分離された細菌を用いて,バイオフィルム. 5). 検出頻度が上昇していく 。この定着時期の遅さは. 形成に変化が認められる菌種の組み合わせを解析し. これらの病原体の感染予防が可能であることを示し. たところ,Fusobacterium nucleatum と P.. ている。HRC7−4のグループでは,歯周病原性. の間で著明なバイオフィルム形成の相乗作用を認め. 細菌の感染をコントロールすることによりこのよう. 7) た(図1) 。その作用は2菌種を0. 45μm のフィル. な口腔細菌の全身への影響による aging を防ぐこと. ターによって分離した状態で共培養を行っても認め. を目的としている。. られた。この結果は,何らかの可溶性物質によって ― 45 ―. gingivalis.

(14) 東京歯科大学口腔科学研究センターワークショップ. 46. Clin. Microbiol.42:1313−1315. 5)Kobayashi N, Ishihara K, Sugihara N, Kusumoto M, Yakushiji M, Okuda K (2008) Colonization pattern of periodontal bacteria in Japanese children and their mothers. J. Periodontal Res. 43:156−161. 6)Waters CM Bassler BL(2005) Quorum sensing : cell­to ­cell communication in bacteria. Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 21:319−346. 7)Saito Y, Fujii R, Nakagawa K­I, Okuda K, Ishihara K (2008) Stimulation of Fusobacterium nucleatum biofilm formation by Porphyromonas gingivalis. Oral Microbiol. Immunol. 23:1−6.. 5.再生医療グループ グループリーダー:松坂賢一 図1. 緒. 言:幹細胞は自己複製能および多分化能を有す. バイオフィルム形成促進が起こっていることを示唆. る細胞とされている。幹細胞は胚性幹細胞と組織幹. している。さらにこの2菌種の混合感染による動脈. 細胞に分類され,全身各組織に存在する幹細胞は後. 内皮細胞侵入性の変化について解析を加えた。これ. 者の組織幹細胞に分類される。骨髄では表面マー. らの2菌種をヒト動脈内皮細胞に共感染すると P.. カーを用いた組織幹細胞の分離が確立されている. gingialis ATCC33277単体の場合に比べ F.. nuclea-. が1),多くの組織幹細胞においては特異的な表面. tum TDC100を共感染させたときの方が細胞への侵. マーカーが存在せず,分離が困難であった。しかし. 入性が上昇していた。この結果は,複数の P. gin-. な が ら,Goodell ら は1996年,DNA 結 合 色 素 で あ. givalis と F. nucleatum の株によって認められた。こ. る Hoechst33342を用いて Fluorescence. の 協 力 作 用 は,F. nucleatum の 混 合 感 染 が P.. Cell Sorter (FACS)で解析することより,表面マー. ginigvalis の冠動脈への作用を増強していることを. カーを用いない幹細胞分離法を発表した2)。そし. 示唆している。. て,FACS が2007年7月に口腔科学研究センターへ. Activated. これらのメカニズムを基に歯周病原菌のバイオ. 導入されてから,様々な研究が行われてきた。矢島. フィルム形成とそれに伴う病原性の変化を明らかに. らはヒト由来口腔扁平上皮細胞株 Ho−1−N−1. し,心冠状動脈疾患等の予防によるアンチエイジン. から SP 細胞を分離し,Ho−1−N−1の SP 細胞. グへと展開していきたい。. が抗癌剤耐性に関与している可能性を示した3)。ま. 文 献 1)Seymour GJ, Ford PJ, Cullinan MP, Leishman S, Yamazaki K (2007) Relationship between periodontal infections and systemic disease. Clin. Microbiol. Infect. 13 Suppl 4:3−10. 2)Holt SC Ebersole JL (2005) Porphyromonas gingivalis, Treponema denticola, and Tannerella forsythia : the“red complex” , a prototype polybacterial pathogenic consortium in periodontitis. Periodontol 2000 38:72−122. 3)Tonetti MS, D Aiuto F, Nibali L, Donald A, Storry C, Parkar M, Suvan J, Hingorani AD, Vallance P, Deanfield ( J 2007) Treatment of periodontitis and endothelial function. N. Engl. J. Med.356:911−920. 4)Ishihara K, Nabuchi A, Ito R, Miyachi K, Kuramitsu HK, Okuda K (2004) Correlation between detection rates of periodontopathic bacterial DNA in carotid coronary stenotic artery plaque and in dental plaque samples. J.. た,われわれは,若齢および加齢ラット切歯歯髄よ り得られた細胞から SP 細胞を分離し,SP 細胞の 割合は加齢と共に減少し,mRNA の発現が ABCG 2,CyclinD2においては SP 細胞において高く, Nestin,ALP においては低いことを報告した4)。今 回,第2報として細胞周期調節因子象牙芽細胞への 分化に着目し,分離した SP 細胞が mRNA レベル でどのような特性を有しているのかを検索した。 材料および方法: 1.細胞懸濁液の作製 歯髄は Sprague−Dawley (SD)系ラットの上下顎 切歯より採取し,若齢群として5週齢,100g のも. ― 46 ―.

(15) 歯科学報. Vol.110,No.1(2010). 47. のを,加齢群として68週齢,850g のものを使用し. を示した。p16および p57においても同様に MP 細. た。まず,頚椎脱臼により安楽死させ,上下顎切歯. 胞において高い発現がみられた。p16は若齢群の MP. を抜歯した。次に,実体顕微鏡下において歯胚を完. 細胞群が約2倍高かったが,加齢群においては有意. 全に除去するために根尖部2mm の位置で No. 11メ. 差が認められなかった。p57は若齢群の MP 細胞群. スを用いて,硬組織を含めて切断した。さらに切歯. が約5倍,加齢群が約4倍高い mRNA 発現がみら. を長軸方向に割断し,採取した歯髄を Collagenase. れ た。ま た,p16の SP 細 胞 に お け る 発 現 比 較 で. −Dispase−PBS 酵素液(Collagenase3mg/ml,Dis-. は,若齢群に比べて加齢群が約3倍高い発現がみら. pase4mg/ml,GIBCO) を用いて37℃60分間振盪し. れた。. 歯髄由来細胞を単離した。. 考. 2.Hoechst 染色および FACS 解析. 骨マトリックス蛋白で骨芽細胞および象牙芽細胞に. 察:OCN はビタミン K 依存性,非コラーゲン. 前述の細胞を2%Fetal calf serum, 10mM HEPES. 発現し,骨原性細胞の石灰化マーカーでもある5)。. buffer (GIBCO) , 1%Penicillin/Streptomicin (GIBCO). DSPP は DSP と DPP が連結タ ン パ ク で 結 合 し た. を添加した Hanks’Ballnced salt solution (HBSS,. 92. 6kDa の象牙質関連蛋白である6)。OCN,DSPP. SIGMA) にて1×106cells/ml の細胞濃度になるよう. は象牙芽細胞および細胞稠密層に局在することが知. に懸濁した。こうして得られて細胞懸濁液に5μg/. られている7)。今回の結果より SP 細胞は,MP 細. ml の Hoechst33342 (SIGMA) を 添 加 し,さ ら に. 胞と比較して象牙芽細胞および骨芽細胞への分化が. Verapamil (最終濃度50μM,SIGMA) の添加,非添. 低く,より未熟な細胞である可能性が示唆された。. 加群に分けて37℃90分間インキュベートを行った。. また,DSPP においては SP 細胞群,MP 細胞群と. その後細胞の生存度を確認するために2μg/ml の. もに若齢群より加齢群のほうが高いことから,加齢. Propidium iodide(PI,SIGMA) を 添 加 し た。染 色. に伴い二次象牙質の形成が遅延し,歯髄の修復力の. TM. 後,FACS Aria (Becton Dickinson) を用いて解析. 低下を及ぼす可能性が考えられた。. と分離を行った。Optical filters には450/40および. 今回実験に使用したラットやマウスなどの齧歯類. 660/20の band pass filter を使用した。SP 細胞およ. の体細胞はテロメラーゼが高発現しているため,細. び SP 細胞以外である Main population (MP) 細胞を. 胞分裂によるテロメア長の短小化はヒトより起こら. 4. ない8)。しかしながら,齧歯類の体細胞も細胞老化. 約8×10 個づつ分離,採取した。 3.定量的 RT−PCR. が起きるのはテロメア長の短小化以外に CDK イン Ⓡ. 分離した細胞の Total RNA を RNeasy plus mi-. ヒビターである p16などが関与しているためといわ. cro kit (QIAGEN) を用いて抽出し,cDNA を Quan-. れている9)。CDK インヒビターは CDK または Cy-. tiTectⓇ Reverse Transcription Kit (QIAGEN) を用. clin−CDK 複合体に直接結合し,細胞周期の進行に. Ⓡ. いて合成した。定量的 RT−PCR は TaqMan probe. 抑制的に働く分子群である。p16は CDK4と結合. (Applied Biosystems) を用いて,Osteocalcin (OCN) ,. し,その機能を阻害する遺伝子として単離・同定さ. Dentin sialophosphoprotein (DSPP) , p16および p57. れた10)。細胞老化は培養細胞だけでなく生体内でも. の mRNA の発現を検索した。若齢群,加齢群とも. 起こる現象であり,老化マウス,ラットの臓器にお. に MP 細胞における mRNA 発現量を1とし,その 相対値で SP 細胞における mRNA 発現量を検索し た。使用したプライマーを(table.1) に示す。内部. Gene. Assay ID. Product size. 標準遺伝子として β−actin を使用した。. ●. OCN. Rn00566386_g1. 104bp. 結. ●. DSPP. Rn02132391_s1. 68bp. においては有意差はみられなかったものの若齢群,. ● p1 6Ink4a. Rn00580664_m1. 78bp. 加齢群ともに MP 細胞のほうが高い発現傾向を示. ●. p57Kip2. Rn00711097_m1. 70bp. した。また,DSPP においては SP 細胞群,MP 細. ●. β−actin. Rn01768120_m1. 63bp. 果:定量的 RT−PCR 法の結果,OCN,DSPP. 胞群ともに若齢群より加齢群のほうが高い発現傾向 ― 47 ―. Table.1. TaqManⓇprobe for RT−PCR.

(16) 48. 東京歯科大学口腔科学研究センターワークショップ. いて p16の発現が高いと報告されている11)。さ ら に,幹細胞も細胞老化により分裂寿命が存在し,p 16が加齢により発現が高くなり,自己複製能を低下 させている12)。また,マウス骨髄 SP 細胞において も加齢群に p16の発現が認められている13)。また, 本研究では,p16の SP 細胞における発現は加齢群 のほうが高い発現を示し,他臓器組織と同様の結果 となった。これらのことより,SP 細胞も加齢変化 を生じ,加齢変化が細胞増殖に対して抑制的に働い ている可能性が示唆された。 造血幹細胞は細胞周期の GO/G1に存在し,休眠 期にあるといわれている14)。骨髄や角膜輪部上皮の. control causing specific inhibition of cyclin D/CDK4.Nature. 1993 Dec 16;366 (6456) :704−7. 11) Beausejour CM et al. Balancing regeneration and can(7110) :404−5. cer. Nature 2006 Sep 28;443 12) Park IK et al. Bmi­1 is required for maintenance of adult self­renewing haematopoietic stem cells. Nature. 2003 May 15;423 (6937) :302−5. 13) Pearce DJ et al. Age­dependent increase in side population distribution within hematopoiesis : implications for our understanding of the mechanism of aging. Stem Cells. 2007 Apr;25⑷:828−35. 14) Uchida N et al. The unexpected G0/G1 cell cycle status of mobilized hematopoietic stem cells from peripheral blood. Blood. 1997 Jan 15;89⑵:465−72. 15) Umemoto T et al. p57Kip2 is expressed in quiescent mouse bone marrow side population cells. Biochem Biophys Res Commun. 2005 Nov 11;337⑴:14−21.. SP 細胞においても同様の報告がされており15),こ の細胞増殖の停止に p57が深く関わっている可能性 が示唆されている。若齢群および加齢群において. 総 括. MP 細胞の方が p57の高い発現を示したのは,増殖 の停止している象牙芽細胞を多く含み,歯髄は象牙. プロジェクト副コーディネーター:吉成正雄. 質に取り囲まれ代謝が低下しているためと思われる。 今後は,SP 細胞の in vivo における働きを明らか. 口腔科学研究センター(口科研) は,平成8年度に. にしたいと考えている。. 東京歯科大学は文部省(現文部科学省) の「私立大学. 文 献 1)Osawa M. et al. Long­term lymphohematopoietic reconstitution by a single CD34­low/negative hematopoietic stem cell. Science. 1996, 273 (5272) :242−5. 2)Goodell MA. et al. Isolation and functional properties of murine hematopoietic stem cells that are replicating in vivo. J Exp Med. 1996,183⑷:1797−806. 3)Yajima T, Ochiai H, Uchiyama T, Takano N, Shibahara T, Azuma T. : Resistance to cytotoxic chemotherapy­induced apoptosis in side population cells of human oral squamous cell carcinoma cell line Ho−1−N−1.Int J Oncol, 35:273−280,2009. 4)監物 真:若年および加齢ラット歯髄 SP 細胞の分離. 歯科学報,109:39−41,2009. 5)Camarda AJ et al. Immunocytochemical localization of gamma­carboxyglutamic acid­containing proteins (osteocalcin) in rat bone and dentin. Calcif Tissue Int. 1987 Jun;40⑹:349−55. 6)MacDougall M et al. Dentin phosphoprotein and dentin sialoprotein are cleavage products expressed from a single transcript coded by a gene on human chromosome 4.Dentin phosphoprotein DNA sequence determination. J Biol Chem. 1997 Jan 10;272⑵:835−42. 7)Nanci A. et al, 2008 Dentin­pulp Complex. Ten Cate’ s Oral Histology, 7th Edn, p.191−238. 8)Sherr CJ et al. Cellular senescence : mitotic clock or culture shock?Cell. 2000 Aug 18;102⑷:407−10. 9)Kiyono T et al. Both Rb/p16INK4a inactivation and telomerase activity are required to immortalize human epithelial cells. Nature. 1998 Nov5;396 (6706) :84−8. 10) Serrano M et al. A new regulatory motif in cell­cycle. ハイテク・リサーチ・センター(HRC) 整備事業」 の対象施設に歯科大学として初めて選定され,この 整備事業の中核をなす研究拠点として開設された。 この HRC 研究は,現在までに6つの研究プロジェ クト(各研究期間5年)が行われ,hrc7は7番目の プロジェクト研究として現在遂行中である。この HRC 整備事業は,昨年から「私立大学学術研究高 度化推進事業」に包含されたことから,今年度から 口科研・戦略的研究組織・プロジェクト研究部・ hrc7「口腔アンチエイジングによる生体制御」と して研究を展開している(図1) 。 プロジェクト研究部は時限付きの研究組織である が,口科研・戦略的研究組織にはその他に「コア研 究部」がある。コア研究部は本学の重点研究を行う 部として策定され,現在「口腔インプラント学研究 部門」と「分子再生研究部門」がある(図1,2) 。 口科研では,国際競争が激化するこれからの知識 基盤社会にあって,講座単独による研究で世界的な 競争には打ち勝つことが困難である現状をふまえ, ①口科研内に研究拠点を設け,講座単独による研究 を超えた総合的・集約的な研究活動を推進する,② 継続研究が可能な若手研究者を育成する,③競争的. ― 48 ―.

(17) 歯科学報. Vol.110,No.1(2010). 49. ᚢ⇛⊛⎇ⓥ⚵❱. 䉮. 䉝. ⎇ A ⎇ ⓥ ㇱ 㐷. ⓥ. ㇱ. B ⎇ ⓥ ㇱ 㐷. C ⎇ ⓥ ㇱ 㐷. 図1. 口腔科学研究センター(口科研) 組織図. ᜬ ㄟ ⎇ ⓥ. 7. 図2. ⻠ ᐳ ⎇ ⓥ 2. hrc. ⻠ ᐳ ⎇ ⓥ 1. 䊒 䊨 䉳 䉢 䉪 䊃 ⎇ ⓥ ㇱ 䋨⑳┙ᄢቇᚢ⇛⊛⎇ⓥ 䋨X┹੎⊛⾗㊄䋩 ၮ⋚ᒻᚑᡰេ੐ᬺ 䋩. 口腔科学研究センター (口科研) における戦略的研究組織. た「唾液研究」などを指す。口科研では,これには 留まらず,講座研究や持込研究を包含したコア研究. 資金を獲得することにより研究の競争力強化を図. も視野に入れている(図2) 。同時に,口腔科学研究. る,④学内に留まらず国内外に門戸を広げる,など. センターで研究を推進する「口科研・研究員」も募. の具体的目標を掲げている。このような口科研研究. 集する予定である。 これらの研究を保証するためには,競争的資金を. により,例として図2に示すような分野融合型研究. 積極的に獲得する必要があり,私立大学戦略的研究. から臨床応用へ発展する研究が期待できる。 口科研では,上記目標をより強力に推進するため. 基盤形成支援事業へは,例えば「口腔からの呼吸器. に,新たなコア研究部・研究部門を募集する計画が. 感染症予防」などのタイトルで応募を検討してい. ある。これは例えば HRC として研究が行われてい. る。さらには,グローバル COE プログラム,戦略 的創造研究推進事業(CREST,さきがけ) ,NEDO (新エネルギー・産業技術総合開発機構) などへの応. ຏว. 募も行わねばならない。. හᤨ⩄㊀. ਄ㇱ᭴ㅧ. ⥃ᐥ⎇ⓥ ᚮૺ. 研究の概要を解説したが,最後に第8回日本再生医. ᄬᢌኻಣ. ᬌᩏ. Ў᣼ᗡӳ‫׹‬ᄂᆮ. Translational Research. ⇇㕙෻ᔕ. ၮ␆⎇ⓥ. ౣ↢. 療学会(平成21年3月5日) 特別講演で山中伸弥教授 ᐮ࠿ࣖဇ ᇤʗႎ᝻᣿ྒࢽ. ᧚ᢱ. ⚦⩶೙ᓮ 䊒䊨䊁䉥 䊚䉪䉴. 以上,hrc7研究を始めとしたこれからの口科研. 䊥䊊䊎䊥 䊁䊷䉲䊢䊮. ჷႎᝠငӕࢽ. ໜᶧ. 䊜䉦䊆䉦䊦 䉴䊃䊧䉴. 図3. 分野融合型研究から臨床応用へ (例:口腔インプラント). が述べた「分野融合型研究」について紹介する。「グ ラッドストーン疾患研究所の新しい施設では,1年 間の情報を1週間で得ることができる。それは,研 究員が研究スペースを常にシェアしており,常に顔 を会わせている分野融合型研究を展開しているから である。iPS 細胞のための中核組織の建物は,ぜひ こういう構造にしたい。 」. ― 49 ―.

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