高耐久性・高安全性木製遊具部材の開発
8
0
0
全文
(2) 264. 矢田茂樹・井口厚志. 溝切り加工用のものは溝の幅と深さを12町mと20mmに設定し,加工後エッジを丸めた。 2.2.乾燥性 一般に屋外木製品にはあらかじめ防腐剤が加圧注入される。薬剤の注入性は木材の乾燥 度に依存する4)と言われており,部材を乾燥しやすい形状にすることば耐久性向上のため に重要である。そこで,前記の3群の試験片について室内放置による乾燥性を測定するこ とにした。まず試験片の木口をエポキシ樹脂でシールしたのち,相互に重ならないよう 18-22℃の実験室内に桟積し,. 6日間にわたって経時的に重量を測定した。. ・無処理. ●イ. ンサイジング ( 1cm間隔、深さ1cm ¢1.5Jm. 切. ●薄. ). り 加. エ. (幅12JMI.深さ20nJA). ◎ ㊨ ㊨ 図1試験片の種類と形状. 2.3.乾燥割れ 乾燥中に発生する割れは見栄えが悪いばかりでなく,安全上も好ましくない。そこで, 3群の試験片を実験室内で4カ月にわたって乾燥し,表面に現われた割れの長さ,・幅及び 発生個所の計測を行った。なお,測定時の含水率は約12%であった。 2.4.注水性 一般に屋外木製品には防腐剤が加圧注入されるが,その溶媒には水が多く使用される。 3群の試験片について水の注入性を比較することとした。注入条件は次の通りで. そこで,. ある。含水率11・7%まで乾燥した試験片(木口はシールしたまま)を注薬缶に入れ,前 排気: 700mmHg30分,加圧:. 10kgf/cDf30分,後排気:. 700mmHg20分の条件で20℃の 水を注入した.そして注入前後の質量差から注入量を求め,さらには一方の木口端から 10. cmの部分を切断して横断面における液体の分布状態を観察した。 5.ぷら下がり耐久時間. 2.. 木製遊器具の欠点の一つは太過ぎて子供の手でうまく握れないことにある。これに対す る対策として本実験では,小学校低学年児童7名を対象に予備的な実験をした上で,図1に 示すような溝切り加工材を用意した.そして溝切り加工の握り易さを測定する-づの方法 として,実際に子供たちにぶら下がってもらい耐えられる時間を測定することとした。人 数は4-14歳までの子ども14人で,無処理材と溝切り部材の両方にぶら下がってもらい, 耐久時間を測定した。なお,両者の間には1時間以上の休憩時間をおき,ぶら下がりの順.
(3) 265. 高耐久性・高安全性木製遊具部材の開発. 序も両者等しくなるよう配慮した。 2.6.滑り摩擦の測定 木製遊具は滑りやすいとされている。そこで溝切り丸材について動摩擦の測定を行い, 溝切り部の滑り抑制効果を調べることにした。その方法は次の通りである。まず丸材を木 工旋盤に取り付け子供用運動靴を水平に載せ,その上に20kgfの負荷を鉛直に与える.そ して丸材をゆっくり回転するとき発生する水平方向の力を動ひずみ計で測定した。. 一般. の遊器具には木材以外にも種々の材料が使われている。また,実際の場面では乾湿や土砂 の有無なども滑り易さに大きな影響を与えると予測される。そこで,ここでは実用的条件 下での各種材料の滑り性能を比較するため古/I,傾斜法によって静摩擦係数を測定した.倭 2.5kgfの負荷を与えた状態で測定した。靴底に付着さ. 用した靴は前述のものと同じとし,. せる砂やウッドチップは横浜市内の公園から採取した。. 3.実験結果及び考察 3.I.乾燥性 防腐剤の加圧注入の前処理として重要な初期乾燥性の測定結果を図2に示す。これを見 ると最初の3日間はほとんど差が認められないが,その後次第に差が顕著になっている。 そして6日間経過すると溝切り加工材は無処理剤に比較して1.4倍程度の乾燥促進効果が 認められる。これは溝切り加工によって蒸発表面積が増したためであろう。もっと深い溝 にすればより一層効果的であろうが,強度低下と子供の指づめ事故の危険が生じるので不 都合である。従来,木材保存業界では前乾燥の方法として主に自然乾燥法を採用して来た が,遊器具施設の製造から施工までの時間の短さを考えると,今後は人工乾燥法も考慮す べきであろう。. @ メ-ヽヽ. bD. こ2 噸. /. ′ ′. 令. ′ ′. 音 #. /. /. ・ン. l. 輔. ・L I.A. 2. 4 乾. 燥. 図2. 日. 数(日). 初期の乾燥経過. i.
(4) 266. 矢田茂樹・井口厚志. 3.2.乾燥割れ 心持ち材を乾燥すると,表面と内部の含水率差による応力発生に加え,接線方向と半径 方向の収縮異方性に起因する引張応力が円周方向に発生するので干割れが発生する。この 割れはとげ・ささくれの原因となり,大きく割れるとその鋭いエッジで指を怪我すること もある。そこで,インサイジングや溝切り加工によって自由に収縮できるようにすれば収 縮応力が発生せず,その結果割れの発生が抑制されると考え,実験を行った。その結果を 表1に示す。まず,細かな割れを含めた干割れ総延長については個体間のばらつきが大き く一定の傾向は認められない。次に個々の試験片の表面に現われた干割れ最大幅について は,例外なく無処理材>インサイジング加工材>溝切り加工材の順になっている。無処理 材では割れ目の幅が最大9.4皿に達している。これでは指が割れ目に容易に入ってしまい, 指を少しずらせば鋭いエッジで指を切ることになるので極めて危険といえよう。 表1 丸太. スギ心持丸材の表面に表れた干割れ. A. (単位mm). B. 加工. 無処理. インサイジング 溝加工. 無処理. 試験片番号. A-2. All. B-3. A-3. 干割れ総延長. 982. 1104. 干割れ最大幅. 9.4. 6.4. 1206*. 1204・. 3.9. 8.4. C. インイサジング 溝加工 無処理 B-1 .B-2 527 5.・5. Cll. インサイジング 溝加工 C-3. C-2. 1325*. 4589. 1104. 4.5. 5.8. 8.4. 1689* .4.2. *. すべて溝の中. 図. 〆r. 一利れノ血. a-( 髪二/// 割れJrO. 図3. 薄切り加工材における乾燥割れの発生個所. 次に干割れの発生個所を見ると無処理材やインサイジング加工材では不特定の場所に現 れるが,溝切り加工材の場合,干割れは溝の最深部だけに限定されている(図3)。この 実験事実は遊器具部材の安全を考えるうえで重要である。なぜならば,溝の最深部のⅤ字 底に割れを生じても幅が狭く,しかも奥まった個所なので指先が接触する可能性はほとん どないからである。なお,溝切り加工はまだ干割れを生じていない未乾燥材に施してこそ 価値がある。.
(5) 267. 高耐久性・高安全性木製遊具部材の開発 3.. 3∴液体注入性 水の注入結果を表2に示す。まず注入量は各個体とも例外なく溝切り加工材>インサイ. ジング加工材>無処理材となっており、処理の効果がはっきりと認められる。とくに溝切. り加工すると無処理材の1.5倍以上の注入量が得られる。次に断面における液体の分布に っいて観察すると,いずれも浸透は辺材部にはぼ限定されている。そして3群の中ではイ ンサイジング加工材が最も均一に液体が分布しており,無処理材と溝切り加工材において は不均一に分布している。とくに無処理材では表面から3皿皿程度しか分布していない個所 も認められる。今回の加圧注入は各群による浸透性の差異を調べることが日向なので、商 業的な加圧注入よりも加圧時間がかなり短くなっている。この結果を見るとスギ材への液 体浸透が著しく不均⊥に進行することば明白なので,実用的な注入条件は十分な予備的検 討を行ってから設定する必要があろう。 表2. 無 注 入 量 (kg/n3). 処 A-3*. スギ丸材への液体注入量及び分布. 理 412T・;. インサイジング A-2. 447. 清. 切. り 加. A-1. 583. 工. {. 良-2. 271. 良-1. 396. a-3. 487. C-1. 316. Cづ. 361. C-2. 469. 平均. 333. 平均. 401. 平均. 513. 分 布 状 態. *. 3.. :試験片番号(A,B,Cの3本のスギから各々3個の試験片を採取し、 各群に割り付け). 4.ぷら下がり耐久時間 遊器具で遊んでいて緊急事態が発生した時,とっさに部材を手でしっかり握ることがで. きれば墜落・転落事故は減少するものと期待される。木製部材は太過ぎて子供の手でうま く握れないと指摘されていることもあり、溝切り加工による握り難さの改善効果をぶら下 がり耐久時間で評価することにした。測定の様子を写真1に,結果を表3に示す。耐久時 間には著しい個人差が認められるものの,溝切り加工材の耐久時間は無処理材より常に長 くなっており,平均3.6倍であった。これは緊急時に手の指が溝に掛かりさえすれば体勢 を建て直すだけの時間的ゆとりが生れることを意味しており,安全上有意義といえよう。 もちろん,転落事故だけを取り上げても多種の状況がありうることから,この一種類の処.
(6) 268. 矢田茂樹・井口厚志. 置だけで転落事故を防止できるわけではない。部材としては,従来の丸材よりも握り易く なったと理解すべきであろう。. 写真1ぶら下がり耐久試験の一例. 表3. a.:正面,. b.:平面. ぶら下がり耐久時間. ぶら下がり耐久時間(see). 比. No.. 年齢. 1. 4. 2. 5. 3. 5. 男. 3.34. 15.90. 4.76. 4. 6. 女. 7.88. 21.20. 2.69. 5. 6. 女. 60.91. 85.00. 1.40. 6. 7. 女. 25.00. 59.60. 2.38. 7. 7. 女. ll.75. 87.30. 7.43. 8. 7. 女. 39.40. 65.31. 1.66. 9. 7.. 女. 23.16. 71.15. 3.07. 10. 8. 19.80. 29.60. 1.49. ll. 9. 女 女. 16.20. 72.30. 4.46. 12. ll. 女. 4.25. 20.40. 4.80. 13. 14. 62.75. 2.27. 14. 14. 15.02・. 1.52. 性別. a.無処理材 男 女. .男 男. 10.00. 15.75. 27.59. 9+92. b.溝加工材 52.85・ 103.30. b/a 5.29 6.56. 平均3.56.
(7) 高耐久性・高安全性木製遊具部材の開発. 269. 3.5.滑り摩擦 木製遊器具の欠点の一つとして水に濡れた時の滑り易さがある。そこで溝切り加工によ る運動靴の湿潤時滑り摩擦の変化を調べた(図4)。この図を見ると通常の表面に比較し て溝切り部は摩擦力が2割以上大きくなっている。この程度の差で滑り事放が防止される. と時論することばできない。足掛かりができて,若干滑りにくくなる程度と判断すべきで あろう。. 次に各種遊器具材料の静摩擦係数を表4に示す。これを見ると湿潤時を含め木材が他材 料に比較してとくに滑りやすいとは結論できない。靴底または部材表面が砂や泥で汚れて いるか否かが決定的な要因である。とくに泥汚れの場合,・含水率が128%のとき極めて滑 りやすくなる。砂も滑りやすい。結局,靴底の滑りやすさば遊器具の材料や構造よりも, むしろ周囲のグランドカバー材料によって決められる。一般に遊器具の周辺には砂場があ る。砂場がなくても地表面には砂がまかれていることが多い。この砂は雨天後の湿潤時に 靴底に付着して遊器具に運ばれるので,滑りやすさの点で極めて危険な状況が生れる。衰 4の最下段のチップとは木を砕いて作成した細長いやや扇平な小片で,公園のグランドカ バーに最近使われるようになった衝撃吸収材である。これは砂のような転がり摩擦を生じ にくいので,静摩擦係数がかなり大きい。したがって土砂よりも滑りにくく,安全性が高 い。遊器具及び周辺部の床面の構造は安全上極めて重要であり5),周辺部はこの例のよう に滑りにくく,しかも衝撃吸収性の良い材料でカバーすべきであろう。. 15 ′ ̄■ヽ. -. bD .i: ヽ■■■■′. 馬10. # 5 @. -. 40. 20 時. 図4. 60. 間(see). 溝切り加工材上の運動靴の滑り摩擦 ピークが溝切り部.
(8) 270. 矢田茂樹・井口厚志 表4. 遊具用各種材料の静まさつ係数 (子供用運動靴,荷量2.5kgf,. スギ板目 (繊維直角方向). ステンt,ス鋼 ・アルミニウム板 (SUS430平滑鏡面) (平滑面). ( )の内の数値は標準偏差). アクリル樹脂板 (平滑鏡面). 備考. 乾燥. 1.46(0.032). 1.6以上. 1.6以上. 1.6以上. 湿潤. 1.37(0.015). 1.42(0.050). 1,28(0.005). 1.59. 材料表面上に散水. 砂(大). 0.34(0.042). 0.29(0.010). 0,32(0.032). 0.27(0.012). 粒径1.0-2.Omm. 砂(小). 0.3.4(P.020). 0・芦6(0・008) 0.36(0.034). 0.37(0.014). 粒径0.25-1.07nm. 泥A. 0.51(0.012). 0.30(0.011). 0.32(0、013). 含水率155.5%. B. 0.14(0.019). 0.094(0.013). C. 0.36(O.013). oL.19(0.015). 0..70.(0.133). 0.43(0.027). チップ. 0.36(0.0341). 含水率127.6% 含水率106.4%. 以上,その耐久性と安全性不足が指摘されているスギ丸材製遊器具の水平部材について, ①易乾燥性, ②干割れ抑制, ③易注入性, ④手がかり・足がかりの付与をねらいとした溝. 切り加工を行い,その効果を夷験した結果,一定の成果を得た。今後の展開のためにはさ らに実際の遊器具上で試験を行い,耐久性及び安全性を実地に確認する必要があろう。安 全性については構造上の問題も大きいので,それらも含めて実地試験を行う予定である。 謝. 辞. 本研究は(財)日本住宅・木材技術センターの1990年度建造物適用技術推進事業の一環とし て行ったものである。ここに記して謝意を表する。. 1)矢田茂樹:木材保存, 2)環境緑化新聞 3)例えば読売新聞,. 17,. 第174号,. 150-158(1991) 1990年5月15日. 1990年5月9日朝刊「家庭とくらし+潤. 4)雨宮昭二:木材保存学,. 197-198(1982)日本木材保存協会編,. 5)深沢重幸監修,福岡孝純訳:安全な遊び場と遊具,. 25-31,. 文教出版 55-57(1991)鹿島出版会.
(9)
関連したドキュメント
回転に対応したアプリを表示中に本機の向きを変えると、 が表 示されます。 をタップすると、縦画面/横画面に切り替わりま
実習と共に教材教具論のような実践的分野の重要性は高い。教材開発という実践的な形で、教員養
タービンブレード側ファツリー部 は、運転時の熱応力及び過給機の 回転による遠心力により経年的な
耐震性及び津波対策 作業性を確保するうえで必要な耐震機能を有するとともに,津波の遡上高さを
充電器内のAC系統部と高電圧部を共通設計,車両とのイ
補助 83 号線、補助 85 号線の整備を進めるとともに、沿道建築物の不燃化を促進
タービンブレード側ファツリー部 は、運転時の熱応力及び過給機の 回転による遠心力により経年的な
当面の施策としては、最新のICT技術の導入による設備保全の高度化、生産性倍増に向けたカイゼン活動の全