情報通信産業 の生 産性分析 と競争戦略
一NTT分
割 問題 の基礎 的考 察
富
田
輝
博
Productivity
Analysis
and
Competitive
Strategy
in
the
Telecommunication
Industry
Basic
Considerations
on Breakup
Problems
of
NTT
Teruhiro
Tomita
Summary
This paper analyses productivity and competitive starategy of the telecommunication industry in Japan and U. S. In section 1, I analyse and compare the productivity of NTT, TEPCO, SONY, and NINTENDO. I adopt labor, capital and total factor productivity analysis for that purpose using NIKKEI financial data. Further, I show the outline of divisional income statement of NTT in 1992, as NTT has showed it separately between long term distance and local phone division for the first time. In section 2, I consider the competitive strategy of the telecommunication industry of U. S. , because it has passed almost 10 years after the breakup of ATT and the evaluation on success or failure of the breakup is discussed actively both on theoretical and empirical basis in U. S. I think this analysis is usefull to consider the breakup problems of NTT in
1995. は じ め に 我 が 国 や 米 国 で は 、情 報 インフ ラス トラ ク チ ャ の構 築 が 生 産 性 を向 上 させ 、経 済 活 性 化 の 原動 力 で あ る とい う認 識 の も とに 、新 社 会 資本 の 整 備 や 情 報 ハ イウエイへ の 投 資 が 行 わ れ は じめ て い る。 本 稿 で は 、 情 報 イ ン フ ラ ス トラ クチ ャ の 一 端 を担 うNTTに 焦 点 を お い て 、 民 営 化 以 降 の 経 営 効 率 を評 価 す る と と もに 、今 後 の経 営 形 態 を考 察 す る素 材 を提 示 し た い。 NTTは 発 足 以 来5年 目の90年 に 、 経 営 を 見 直 し、 分 割 に つ い て 議 論 さ れ た が 、 時 期 早 尚 と い う こ とで95年 ま で見 送 り とな っ た。 分 割 が 望 ま しい の か 否 か 、望 ま しい とす れ ば ど の よ うな 形 態 が よ い の か 、 長 距 離 と市 内 通 信 と い う水 平 分 離 か 、JRや 電 力 の よ うに 地 域 分 割 か 、 輸 送 部 門 と 情 報 サ ー ビ ス 部 門 との垂 直分 離 が い い の か 、 とい っ た点 につ い て 評 価 しな くて は な らな い。 情 報 通 信 産 業 に 関 す る経 済 学 的研 究 は 米 国 に お いて 、 活 発 に行 われ 、 理 論 ・実 証 面 で膨 大 な蓄
積 が あ る。 しか し、 我 が 国 で は 、理 論 ・実 証 と も よ うや く本 格 的 研 究 が 始 ま っ た ばか りで あ る。 特 に、 実 証 分 析 は 極 め て少 な い 。 経 営 効 率 を問 題 とす る場 合 、 生 産 性 、 規 模 の 経 済 性 、 範 囲 の 経 済 性 とい っ た概 念 を我 が 国 の デ ー タ に あ て は め て 、 分 析 を積 み 上 げ て い くこ とが 重 要 で あ る。 第1節 で は 、 大 規 模 組 織 の経 営 非 効 率 の 問題 を、 生 産 性 分 析 に よ っ て検 証 す る。 生 産 性 分 析 の ため に 、 経 営 総 生 産 性 とい う概 念 を用 い る。 そ し て、 経 営 総 生 産 性 を推 定 し、 電 力 や 、 情 報 産 業 の生 産 性 と比 較 す る こ とに よ っ て、 どの 程 度 の 経 営 非 効 率 が あ るか を検 討 す る。 さ ら に、NTT は92年 度 に は じめ て 長 距 離 通 信 事 業 と地 域 通信 事 業 とい う二 つ の 事 業 部 別 の 収 支 を公 表 し た の で 、 そ の概 要 を紹 介 す る。 第2節 で は、ATT分 割 後10年 近 く経 過 し て い る米 国 情 報 通 信 産 業 の 競 争 戦 略 を分 析 す る こ と に よ っ て、NTT分 割 問 題 を検 討 す る素 材 を提 示 し た い 。分 割 に よ っ て 、 米 国 で は 、 長 距 離 通 信 市 場 と市 内通 信 市 場 の分 離 体 制 とな っ た が 、 本 当 に、 長 距 離 通 信 市 場 に競 争 が 起 こ り、 料 金 が 低 下 し、 サ ー ビス が 向上 した の か 、 ま た、 市 内 市 場 は地 域 電 話 会 社 の独 占的 市 場 に な っ た の か 、 に つ い て考 察 す る。 1NTTの 生 産性 分 析 と事 業 部別 収 支 1.1NTTの 生 産 性 分 析 NTTの 分 割 問題 を考 え る上 で 、NTTが 民 営 化 以 来 、 どの よ うな 経 営 効 率 をあ げ て き た の か を 見 る必 要 が あ る。 そ こで まず 、 労 働 生 産 性 、 資 本 生 産 性 の 指 標 を見 る こ とにす る。 以 下 で は 比 較 の た め に、 東 京 電 力 、 ソニ ー 、 任 天 堂 の3社 も取 り上 げ る こ とに す る。 こ れ らの 企 業 は 、 い ず れ も、 現 在 あ るい は近 い将 来 に お い て、 情 報 通 信 産 業 を担 い 、 互 い に競 合 す る か 、協 調 ・提 携 す る 関係 と な る 企 業 と考 え られ るか らで あ る。1) 各 社 の 主 な 経 営 指 標 は表1、 生 産 性 指 標 は 表2と 図1に 、 生 産 性 の伸 び 率 は表3に 、NTTの 85年 を1と し た各 社 生 産 性 指 標 は表4と 図2に 示 して い る。 NTTは 、 民 営 化 一 期 目の1985年 度 は、 労 働 生 産 性 が 、1341万 円/人 で あ っ た が 、91年 度 に は 1823万 円/人 と、 年 平 均5.2%伸 び て い る。 これ に対 して 、 資 本 生 産 性 は 、85年 度 の0.199か ら91 年 度 に は0.188と 、 逆 に年 率1%の マ イ ナ ス 成 長 で あ る。 NTTは 、91年 度 の 売 上 高 が6兆 円 を 越 え、 経 常 利 益3500億 円 、 従 業 員25万 人 弱 とい う文 字 ど お りマ ン モ ス 企 業 だ 。85年 の売 上 高 が5兆 円、 従 業 員 数 が30万 人 で あ っ た こ とを考 え る と、 合 理 化 を 進 め て き た よ う に み え る。 し か し、 東 京 電 力 は39000人 の従 業 員 で 、4.6兆 円 の 売 上(91年 度)を 記 録 し て い る の で 、NTTは ま だ従 業 員 削 減 の余 地 が あ りそ うだ 。 任 天 堂 に い た っ て は 、 わず か812人 で 、5000億 円 の 売 上 と1560億 円 の 経 常 利 益 を あ げ て い る。 も っ と も、 任 天 堂 の 場 合 、 外 部 委 託 が 多 く、 契 約 関係 に あ る ソ フ トハ ウ ス は100社 を越 え る。 ま た 、 米 国 、 欧 州 任 天 堂 の社 員 は1900入 い る こ と を考 慮 して お か な くて は な ら な い。 付 加 価 値 で 計 っ た 労 働 生 産 性 は、 意 外 に も ソ ニ ー が 最 も低 い 。 東 京 電 力 は従 業 員 一 人 当 た り 5800万 円 と一 見 高 い が 、 こ れ は外 部 委 託 が 多 い た め だ。 例 えば 原 子 力発 電 所 で働 い て い る人 間 は 社 員 よ り、 下 請 け 、 孫 請 け の労 働 者 の 方 が は るか に 多 い。 任 天 堂 は従 業 員 一 人 当 た りで 見 る と、 2億3300万 円 と極 め て 高 い が、 上 記 の 理 由 で 割 り引 い て み な くて は な ら な い。 資 本 生 産 性 は 東 京 電 力 が 最 も低 く、 特 に 、91年 に は 更 に 悪 化 して い る こ とが 注 目 さ れ る。 NTTの85年 を基 準(1.0)と して 、 東 京 電 力 の 労 働 生 産 性 はNTTの4倍 な の に対 して 、 資 本 生
産 性 は わ ず か6割 しか あ げ て い な い。 ま た、 年 平 均 の 伸 び 率 で 見 る と、 ソニ ー の 一7.7%に 次 い で 一4.3%と い う大 き さだ 。 こ の 理 由 は 、 電 力 需 要 の伸 び に対 応 して 積 極 的 な設 備 投 資 を行 い、 そ れ が有 形 固定 資産 の 急 増 を もた ら した か らだ 。 特 に、 原 子 力 発 電 設 備 の 増 加 に伴 い 、 送 電 設 備 の遠 隔 地化 、 揚 水 発 電 所 の建 設 で 資 本 生 産 性 は低 下 して お り、 こ の傾 向 は今 後 加 速 され るだ ろ う。 以上 、 労 働 生 産 性 と資 本 生 産 性 の 両 面 か ら、 各 社 の生 産 性 を見 て きた 。 労 働 生 産 性 が 高 くて も、 資本 生 産 性 が 低 い 企 業 や そ の逆 の 企 業 もあ る。 そ こ で 、 これ ら を総 合 し た企 業 の生 産 性 は ど うか とい うの が 次 の視 点 だ 。 経 済 学 で は、 生 産 関 数 を使 って 、 次 の よ う な総 要 素 生産 性 を求 め る。今 、 記 号 を次 の よ うに定 め る。2) Y:産 出物(ア ウ トプ ッ ト) K:資 本(イ ン プ ッ ト) L:労 働(≧ ン プ ッ ト) Y=f(K,L)に お い て コブ ダ グ ラス 型 生 産 関 数 を想 定 す る と、 Y=xKaLR(1) ただ し、 α十β=1 で あ る。(1)式 よ り、(2)式 が 求 め られ る。 x=(Y/K)α(Y/L)β(2) 生 産 の理 論 で は、xは 技 術 進 歩 を表 す 指 標 で、 総 要 素 生 産 性 と呼 ば れ る。 こ こで は、xは 、 労 働 、 資 本 の 増 加 に よ らな い で企 業 の付 加 価 値 を増 加 させ る要 因 、 す な わ ち経 営効 率 の 指 標 を表 す も の と考 え る。xは 、 ブ ラ ッ ク ボ ッ クス と し て定 量 化 され に くい部 分 で あ る こ とか ら、 ラ イ ンベ ン シ ュ タ イ ン はx効 率 と よん で い る。 以 下 で は 経 営 総 生 産 性 と呼 ぶ こ と とす る。3) xは 、 労 働 生 産 性 と資 本 生 産 性 を、 αとβで 幾 何 平 均 す る こ とに よ っ て推 計 す る こ とが 出 来 る。 と こ ろ で、 αは 資 本 分 配 率 、 βは 労 働 分 配 率 を表 して い る。 労 働 分 配 率 の 最 も高 い企 業 は ソ ニ ー で、 最 も低 い の は任 天 堂 だ 。 ソ ニー は盛 田会 長 が 、 日本 の企 業 は 労 働 分 配率 が 外 国 企 業 と比べ て 低 い の で、 も っ と高 め る よ うに し な くて は い け な い 、 と雑 誌 に 書 い て論 争 を招 い た。4)NTTは 0.47と ソニ ー に次 ぐ高 さ だが 、 これ は 、 従 業 員 数 が 多 い こ と と、 平 均 年 齢 が41才 と高 く、 人 件 費 が か か っ て い る た め だ 。 東 京 電 力 が0.17と 低 い の は、 従 業 員 数 がNTTと 比 べ て少 な く、 平 均 年 齢 も36才 と若 い た め だ 。5) 経 営総 生産性 の比 較 (3)式 か ら推 定 した 経 営 総 生 産 性 の 最 も高 い 企 業 は、91年 度 で は、 任 天 堂 の5.1で あ り、 最 も低 い の は東 京 電 力 の0,36で あ る。 両 者 の 問 に は10倍 以上 の 開 きが あ る。NTTは1.6と 必 ず し も 高 くは な い が 、 東 京 電 力 よ りは高 い。 しか も注 目 に値 す る の は 、NTT以 外 の他 社 が 、85年 と比 べ て 軒 並 み 生 産 性 を落 と して い るの に、NTTの み 増 加 して い る点 だ 。 85年 のNTTの 値 を基 準(1.0)と して 、 他 社 と各 年 度 を比 較 す る と、 一 層 明 らか に な る。(表 4参 照)こ の よ う な差 異 の 生 じた 理 由 の 一 つ は、X非 効 率 が 考 え られ る。 つ ま り東 京 電 力 は独 占企 業 の た め 、 大 規 模 組 織 の 非 効 率 が 存 在 す るの で は な いか とい う こ とだ。NTTはNCCの 新 規 参 入 に よ り、 価 格 競 争 が起 り、 従 業 員 も削 減 し、 経 営 合 理 化 を推 進 して い る。 これ に対 し て 、 東 京 電 力 は競 争 が な い た め 、 高 い料 金 と低 い 生 産 性 と い う結 果 とな って い る。6)
表1各 社 経 営指標 (単位:10億 円 、 人) 会 社 名 ・年 売上高 経営利益 付加価値 人件 費 固定資産 従業員数 NTT85 5091.409 516.129 4076.791 1748.607 20464.185 303,951 NTT91 6056.049 352.850 4556.136 2144.657 24254.679 249,942 東 電85 4188.668 343.998 1952.380 287.554 11774.326 37,817 東 電91 4597.133 146.852 2247.507 376.714 17690.432 38,633 ソ ニ ー85 1036.196 36.449 180.156 97.406 229.340 15,538 ソ ニ ー91 1979.061 24.134 314..097 158.525 646.170 19,811 任天 堂85 117.787 38.482 50….-249 4:575 11:128 599 任 天堂91 507.500 156.247 188.992 6.163 41.857 812 表2各 社 生産 性指 標 会社名 年度 労 働 生 産i生 資 本 生産 性 労 働 分配率 経営総 生産 性 NTT85 13.413 0.199 0.429 1.212 NTT91 18.229 ..!.. 0.471 1.618 東 電85 51.627 0.166 0.147 0.386 東 電91 58.176 0.127 0.168 0.355 ソ ニ ー85 11.595 0.786 0:541 3.367 ソ ニ ー91 15.855 1 0.505 2.822 任 天堂85 ... 4.516 0.091 5.892 任 天堂91 232.749 4.515 0.033 5.135 表3各 社生 産性 の伸 び率 (%) 会社名 労 働生産性 資 本生産 性 経営総生産性 NTT91/85 5.246 一〇 .975 4.939 東 電91/85 2.010 一4 .342 一1.406 ソ ニ ー91/85 5.354 一7.688 一2.901 任 天 堂91/85 18.540 一〇 .001 一2.266 表4NTT85を 基 準 と し た 各 社 生 産 性 指 標 の 比 較 会社名 年度 労 働 生産性 資 本 生産 陛 労 働 分配率 経営総 生産 性 NTT85 1.000 1.000 1.000 1.000 NTT91 1.359 0.943 1.097 1.335 東 電85 3.849 0.832 0.343 0.319 東 電91 4.337 0.638 0.391 0.293 ソ ニ ー85 1 3.943 1.261 2.778 ソ ニ ー91 1.182 2.440 1.177 2.329 任 天堂85 6.254 22.667 0.212 4.862 任 天堂91 17.353 22.665 0.076 4.237
図1各 社 生産 性指 標
児 島NTT社 長 は 対 談 で 、合 理 化 と い うの は 決 して 人 貝 だ け の 問 題 で は な い が と断 っ た 上 で、93 年 に は23万 人 体 制 が 実 現 す る と述 べ て い る。 こ れ は ピー ク時 の 人 員 に 比 べ て10万 人 減 、NTTと な って か ら8万 人 減 とい う大 き な 削減 だ 。更 に 、96年に は20万 人体 制 に 持 っ て い く考 え だ0) 以 上 で 見 た よ うに 、 民 営 化 以 降、NTTは ま だ 不 十 分 と は い え、 経 営 効 率 をあ げ るべ く合 理 化 努 力 を して お り、 東 京 電 力 よ り高 い経 営 総 生 産 性 を示 して い る。 たん に規 模 が大 きす ぎ るか ら分 割 す べ きだ と い う議 論 は 成 り立 た な い。 技 術 進 歩 の 早 い 情 報 通 信 の分 野 に 関 して 、 技 術 的観 点 も 含 め て 分 割 が望 ま しい か ど うか 検 討 す る必 要 が あ ろ う。8) 1.292年 度NTTの 事 業 部 別 収 支 NTTは 、92年 度 に事 業 部 制 を導 入 して初 め て の 事 業 部 別 収 支 を、 最 近 公 表 した 。 事 業 部 制 は、 県 内 通 話 を 担 当す る地 域 通信 事 業 部 と県 間 通 話 を 担 当 す る長 距離 通 信 事 業 部 に分 け られ て い る。 地域 通 信 事 業 部 は、 全 国 を11の 地 域 に 区分 した もの で 、 各 地 域 通 信 事 業 部 を合 計 す る と、 売 上 高 は4兆9712億 円 、 経 常 損益 は1757億 円 の 赤 字 で あ る。 地 域 ご との 収 支 で は、 東 京 、 関 東 、 関 西 の3地 域 が 黒 字 で、 他 は す べ て赤 字 だ 。 特 に 、 九 州 、 東 北 、 中 国 は550∼750億 円 もの 赤 字 だ。 一 方 、 長 距 離 通 信 事 業 部 は 、 売 上 高 が1兆1317億 円 で 、 4547億 円 の経 常 黒 字 とな っ た 。 事 業 部 別 収 支 を公 表 した理 由 は 、NTT,NCCが 共 に 利 用 す るNTTの 地 域 通 信 部 門 の コス ト 構 造 を明 確 に して 、 事 業 者 間 接 続 料 金(ア ク セ ス ・チ ャー ジ)を 算 定 す る た め の 基 礎 デ ー タに す る こ とだ 。9) 92年 の事 業 部 別 収 支 は、NTTが これ まで 、 市 内 は赤 字 、 市 外 は黒 字 、 地 方 は 赤 字 、 中 央 は黒 字 とい っ て い た こ と、 つ ま り、 市 内 と市外 あ る い は 、 地 域 別 に分 割 ま た は分 離 す れ ば、 市 内 会 社 あ るい は、 地 方 会 社 は大 幅 な値 上 げ を し なけ れ ば経 営 が 成 り立 た な いか ら、分 割 し な い で1社 の ま まの 方 が い い こ とを、 裏 付 け よ う と して い る の だ 。 郵 政 省 主 催 に よ る 「事 業 者 間 接 続 料 金 に 関 す る研 究 会 」 で は 、 長 距 離 通 信 事 業 者 が ア クセ ス ・ チ ャー ジ と して 負 担 す べ きNTT地 域 通 信 事 業 部 の ネ ッ トワー クの コ ス トを、 ① 加 入 者 回 線 、 ② 県 内 通 話 網 、 ③ 公 衆 電 話 、 ④ 番 号 案 内 の4つ に分 類 して 、 い くつ か の選 択 肢 を整 理 し た。NTT は 、 この4つ の分 類 の そ れ ぞ れ の コス トを別 々 に 試 算 し、 ア クセ ス ・チ ャ ー ジに 積 み上 げ て い く。 た だ し、 今 回 の事 業 部 別 収 支 で は、 地 域 に よ っ て そ の 収 支 が 大 き く異 な るが 、 地 域 別 に 異 な る ア クセ ス ・チ ャ ー ジ額 を 設定 せ ず 、 全 国一 律 とす る考 えだ 。1°) 米 国 で は 、 収 入 に対 す る ア ク セ ス ・チ ャ ー ジ の ウ エ イ トは お よそ40%台 で あ る。ATTは 、 長 距 離 サ ー ビ ス 収 入 が1990年33727百 万 ドル に対 し て 、 ア ク セ ス ・チ ャー ジ は14036百 万 ドル と、 41.6%と な っ て い る。MCIは 収 入7680百 万 ドル 、 ア ク セ ス ・チ ャ ー ジ は3668百 万 ドル と、 47.8%、USス プ リン トは 収 入5065百 万 ドル 、 ア ク セ ス ・チ ャー ジ は2174百 万 ドル と、42.9%と な って い る。11) 93年10月 のNCCの エ ン ド ・エ ン ド料 金 の 導 入 、94年4月 の相 互 接 続 料 金 の 導 入 、 そ し て、95 年 の 電 話 料 金 制 度 の根 本 的 改 革 と、 今 後 の 方 向 を決 定 す る規 制 政 策 が 注 目 され る。
2米 国 情 報 通信 産 業の 競 争 戦 略 ATTは 、1982年 、 長 年 に わ た る 司法 省 との 争 い に決 着 をつ け た。 通 信 市 場 は 、7社 の 地 域 持 株 会 社(RHC,RegionalHoldingCompany)が 担 当 す る 地 域 通 信 市 場 と、 長 距 離 市 場 に分 け 、 新 生ATTは 長 距離 部 門の み を担 当 す る こ とに な り、84年1月1日 よ りス ター トと した 。 しか し、 技 術 の 進 歩 は速 く、 米 国 電 気 通 信 産 業 の競 争 状 況 は大 き く変 わ り、 将 来 よ り大 きな変 化 が 予 想 さ れ る。 米 国 で は 、 昨 年 来 、 情 報 通 信 産 業 の構 造 変 化 につ い て 注 目す べ き論 文 が 出 た。 一 つ は 米 国経 済 学 会 に お け るセ ッ シ ョン、 『ATT分 割 と電 気 通 信 規 制 の変 化 』 で の 報 告 論 文 だ 。 Taylor-Taylor(1993)は 、ATT分 割 後 、 長 距 離 通 信 市 場 に お け る競 争 の 出現 に よ っ て 、 料 金 が 下 が り、 需 要 が 増 大 した とい う見 解 に疑 問 を持 ち 、 実 証 的 分 析 に よ り、 こ の見 解 が 誤 りで あ る こ と を主 張 した 。ATT分 割 以 降 、ATTの シ ェ ア は84年 の84%か ら、91年 の63%へ と低 下 し、 料 金 は50%下 が り、 需 要 は2倍 に な っ た。 これ を見 れ ば 、 競 争 の圧 力 の ため と思 い が ちで あ る。 し か し、Taylorら は、 料 金 と需 要 に分 け て競 争 の影 響 を分 析 して 、 次 の よ うな結 論 を得 た。 料 金 の 影 響 に 関 して は、 長 距 離 料 金 は72-83年 で は 、 実 質 年 平 均 で2.7%の 低 下 に 対 して、84 -91年 の 聞 で は、 実 質 で 年 平 均8.2%下 が っ た。 しか し、 この 低 下 は、FCCの 規 制 政 策 の 変 更 と会 計 手 続 の 変 更 に よ る もの だ 。 こ れ まで 長 距離 事 業 者 が 支 払 っ て い た ア クセ ス ・チ ャー ジ の 一 部 は、 加 入 者 が 加 入 者 ア クセ ス ・チ ャー ジ と してRHCに 支 払 う こ と に な っ た。 会 計 手 続 の変 更 と合 わせ る と、 ア クセ ス ・チ ャー ジ は年 平 均93億 ドル も減 少 して い る。 ア クセ ス ・チ ャー ジ とい う 限 界 費 用 が 低 下 した た め 料 金 が 下 が っ た の で あ って 、 競 争 に よ り下 が っ た の で は な い。FCC は 、NCCに た い して ア クセ ス ・チ ャー ジ の割 引 を認 め る こ とに よ っ て優 遇 して い るの で 、 長 距 離 市 場 は、 非 対 称 的規 制 下 にお け る競 争 市 場 な の だ 。 次 に、 需要 に対 す る競 争 の 影 響 を見 よ う。 分 割 以 降 、 長 距離 需 要 は年 平 均11.8%伸 び て い る。 しか し、 これ は、 バ イ パ ス を考 慮 に 入 れ て い な い た め 実 際 よ り過 小 評 価 して い る。 分 割 前 の20年 間 は 、 年 平 均 需 要 の 成 長 率 は10.5%で あ っ た 。Taylorら は 、 成 長 率 の 変 化 は 、 新 サ ー ビ スや 広 告 、 消 費者 の 自覚 とい っ た要 因 に よ る も の で は な く、 価 格 、 所 得 、 人 口要 因 に よ る もの だ、 とい うこ と を次 の よ うな 需 要 モ デ ル に よ り分 析 した 。 長 距 離 市 場 需 要 モ デ ル の 推 定 結 果 InQ=-8.70+0.5651nQ(-1)-0.2721nP+0.4221nY+1.491nPOP (-1.$4)(4.99)(-3.61)(1.87)(1.76) R2=0.998 た だ し 、Q=長 距 離 市 場 需 要 、P=価 格 、Y=所 得 、POP=人 口 で あ る 。 推 定 結 果 よ り、 長 期 価 格 弾 力 性 は 一 〇.63、 長 期 所 得 弾 力 性 は0.97と な る 。 この モ デ ル を用 い る と、 1972-82年 の 需 要 成 長 率 の 理 論 値 は6.58%な の に た い し て 、 実 際 の 伸 び 率 は8.92%で あ っ た 。 理 論 モ デ ル で 説 明 で き な い 要 因 の 成 長 率 は2.34%だ 。 同 様 に 、1984-91年 の 理 論 値 は 年 平 均 10.79%、 実 績 値 は11.81%、 乖 離 は1.02%で あ る 。 し た が っ て 、1984-91年 に お け る 非 説 明 要 因 に よ る 成 長 率 の 差 は 、 分 割 以 前 よ り1.33%小 さ い 。 バ イ パ ス 需 要 に よ る修 正 を 行 う と 、1984-91 年 は0.23%非 説 明 要 因 に よ る 成 長 率 が 少 な い 。 し た が っ て 、 競 争 要 因 に よ っ て 需 要 が 増 加 し た の で は な く、 価 格 、 所 得 、 人 口 と い う 説 明 要 因 で 増 加 し た と考 え ら れ る 。 以 上 見 た よ う に 、 料 金 へ の 影 響 は 、 規 制 と会 計 手 続 の 変 更 に よ る も の で あ り、 需 要 へ の 影 響 は
所 得 、 価 格 、 人 口要 因 に よ る もの で、 い ず れ も競 争 に よ る影 響 は 少 な い。 第2に 注 目 す べ き論 文 は 、Huber,Kellogg,Thorne(1993)の3氏 に よ る"TheGeodesic NetworkII"で 、 そ の 副 題 が 示 す よ うに 、 電 話 産 業 の 競 争 に関 す る最 新 の報 告 書 だ 。 しか も、 そ の 内容 は 、 従 来 の 見 解 と180度 異 に す る もの だ 。 彼 らの主 張 は 次 の通 り。 「『市 内 市 場 は 自然 独 占、 長 距 離 市 場 は 競 争 』 とい うATT分 割 の根 拠 は、 全 く誤 りで あ る。 現 実 は 、 市 内 市 場 が 競 争 で、 長 距 離 市場 が 自然 独 占 で あ る。 修 正 同 意 審 決(MFJ)の 作 成 に 携 わ っ た 関 係 者 が 、 無 線 通 信 と光 フ ァ イ バ ー の 役 割 に 対 す る判 断 を誤 っ た 」、 とい うの が 、 同 報 告 の エ ッセ ン ス だ 。 そ の 理 由 は 、 現 実 に は、 市 内 通 信 は 、 電 話 会 社 の ほ か 、 競 争 ア ク セ ス事 業 者 、 CATV事 業 者 、 無 線 通 信 事 業 者 な ど に よ る競 争 市 場 に な りつ つ あ る。 つ ま り、 市 内 電 話 は も は や 『ボ トル ネ ッ ク』 で な くな りつ つ あ る とい うわ け だ 。12) CAP,CATV事 業 者 、 無 線 通 信 事 業 者 は 、 地 域 電 話 会 社 の 市 内 回線 網 を通 さず に 、 専 用 線 で ユ ー ザ と長 距 離 電 話 回線 と を接 続 す る こ と(こ れ をバ イパ ス とい う)に よ って 、 ア クセ ス ・チ ャ ー ジ を払 わ な くて 済 む。 バ イパ ス が 増 加 す るか 否 か は 、 ア ク セ ス ・チ ャー ジの 水 準 に も依 存 す る。 ATTの ア ク セ ス ・チ ャ ー ジ の支 払 額 、 売 り上 げ に 占め るア クセ ス ・チ ャー ジ割 合 は 表5の よ う に な っ て い る。13) 表5ATTの 長 距 離 通 信 収 入 に 占 め る ア ク セ ス ・チ ャー ジ の 比 率 年 ATTの 長 距離 通 信収 入(M$) アクセ ス ・チ ャー ジ(M$) ア クセ ス ・チャー ジ の 比 率(%) ・ ・. 34935 20633 59 1985 36770 21521 59 1986 36514 19593 54 19s7 35219 17611 50 ... 35407 16764 47 1989 34549 16764 47 1990 33880 12201 36 1991 34384 会計手続変更 出 所:Huber(1993) ア クセ ス ・チ ャ ー ジ比 率 は84年 の59%か ら36%へ と年 々 減 少 して お り、 バ イパ ス 説 を裏 付 け て い る。 我 が 国 の場 合 、 ア クセ ス ・チ ャー ジは ま だ決 ま っ て い な い が 、 足 回 り料 金 は一 通 話 あ た り 35∼38円 だ 。14) CAPは 、1984年 に は 存 在 す ら し て お らず 、87年 に も小 規 模 で あ っ た。 しか し、91年 に は約30 社 が40以 上 の都 市 で 事 業 を行 い 、 さ らに 、 全 国 の 主 要 都 市 で光 フ ァ イバ ー 網 の導 入 を進 め て い る。 CAPが91年 に 敷 設 した 光 フ ァ イ バ ー の 距 離 は 、90年 の ほ ぼ2倍 、88年 の ほ ぼ10倍 に 達 して い る。 CAPの 最 も重 要 な 商 売 は 、 既 存 の 通 信 事 業 者 へ 相 互 接 続 を提 供 す る こ とで あ る。CAPは ユ ー ザ ヘ サ ー ビ ス を 直 接 売 り込 む 必 要 は な い 。 長 距 離 通 信 事 業 者 が 、 自社 の 長 距 離 サ ー ビ ス をCAPの 提 供 す るア クセ ス 回線 へ 接 続 して くれ るか らだ。 92年 末 、ATTは 、 米 国一 の セ ル ラー 通 信 事 業 者 、 マ ッ コー ・セ ル ラ ー 通 信 社 の株 式33%を 買
収 す る計 画 を発 表 し た。 こ の 計 画 が 実 現 す れ ば 、ATTは マ ッ コー の 広 範 囲 な移 動 体 通 信 網 を通 じて 、地 域 電 話 会 社 の 回 線 をバ イ パ スす る可 能 性 が 高 ま る。ATTは す で に 、CATV会 社 、CAPを 通 じてバ イ パ ス し て お り、マ ッコー が 加 わ れ ば 、地 域 電 話 会 社 に と り最 も手 強 い競 争相 手 に な る。 ATTの ア レ ン会 長 は 、1992年 度 の 年 次 報 告 書 で、 次 の よ う に語 っ て い る。 「私 達 は、 既 に 高 度 な競 争 状 態 に あ る長 距離 市場 で は 、 不 必要 な法 的 規 制 を撤 廃 す よ う に働 きか け て ゆ きます 。 そ し て 、 ベ ル系 地 域 電 話 会 社 が 長 距 離 市 場 や 通 信 機 器 製 造 に 参 入 す るの を許 す の とひ きか え に、 市 内 電 話 サ ー ビス に お け る競 争 を条 件 とす る法 案 を支 持 し ます 。」15) 市 内競 争 の 抑 制 を 目的 と した 規 制 と して 、 最 も顕 著 な例 は、1984年 全 国 ケ ー ブ ル 法 だ 。 同法 は 、 電 話 会 社 がCATV事 業 に 参 入 す る の を規 制 した もの だ。 しか し、 最 近 、 通 信 と放 送 の 融 合 は 急 速 に 進 展 し、事 実 上 、 電 話会 社 の 参 入 が 始 ま っ て お り、 規 制 の撤 廃 ま た は 改正 が行 われ る もの と 思 わ れ る。 例 えば 、USウ エ ス トとタ イ ム ・ワー ナ ー(CATV)と の 提 携 な どだ 。 これ に対 して 、 長 距離 市 場 で は、 光 通 信 シ ス テ ム の 急 速 な 技術 進 歩 に よ っ て 、 その 伝 送 容 量 が 4年 毎 に10倍 に増 え て き た 。 こ の た め 大 手3社(ATT、MCI、USSPRINT)の 光 フ ァ イバ ー 設備 だ け で も設 備 過 剰 に な って い る。 ま た、 こ れ らの 光 通 信 シス テム の コス トは 、 ほ とん どが 設 備 費 、 つ ま り固定 費 で あ り、 限 界 費 用 は ゼ ロ に近 い 。 したが って 、 長 距離 通 信 市 場 は現 在 で は 、 自然 独 占が 成 立 い て い る。 そ れ を規 制 の 力 で、ATTは コス ト以 上 の 高 い料 金 をつ け 、NCCに シ ェア を譲 り、 経 営 を救 っ て 、 い わ ば 『疑 似 競 争 状 態 』 を作 っ て い るの だ。 料 金 規 制 で は 、 従 来 、 報 酬 率 規 制 が 取 られ て きた が 、1989年 よ り、 価 格 上 限規 制(pricecap) に変 更 さ れ た 。 しか し、 実 際 は、 価 格 上 限 よ りむ しろ価 格 下 限 で あ り、 熾 烈 な ロ ビー 活 動 や 訴 訟 に よ っ て 、ATTに 料 金 値 下 げ で は な く、 逆 に 値 上 げ を させ て い る。 州 際 加 入 者 ア クセ ス ・チ ャ ー ジ は 当 初 、 月 当た り1ド ル であ ったが、徐 々 に値 上 げ され、現在3.5ド ル となってその分 長距 離 通 信 事 業 者 は負 担 を軽 減 され た。 ま た 、1984年 か ら92年 の 間 に 、 事 業 者 ア ク セ ス ・チ ャ ー ジ は合 計 で100億 ドル 値 下 げ が あ っ た に もか か わ らず 、ATT料 金 は82億 ドル しか 下 げ ず 、ATTは 大 きな 利 益 を得 た。(表6参 照) 表6ア ク セ ス ・チ ャー ジ値 下 げ に 伴 うATT料 金 の 値 下 げ (単 位:100万 ドル) 年 ア ク セ ス ・チ ャ ー ジ の 値 下 げ ATT料 金 の値 下 げ 1984 1400 1400 1985 1408 854 1986 1975 1797 1987 2458 2363 1988 772 570 1989 776 785 1990 867 459 1991 154 5 1992 191 0 合計 10001 8223 出 所:Huber(1993)
しか し、 規 制 が 完 全 に 撤 廃 さ れ れ ば 、MCIと い え ど も倒 産 しか ね な い 。 そ こで 、 最 近 、MCI は 英 国 電 気 通 信 公 社(BritishTelecom)と 提 携 関 係 を 結 ん だ。 そ の 内 容 は 、 ①BTがMCIの 20%を43億 ドル で取 得 す る、 ② 両 社 に よ る合 弁 事 業 を10億 ドル で 設 立 し、 多 国籍 企 業 を対 象 とす る グ ロ ー バ ル ・サ ー ビ ス 提 供 を進 め る、 とい う も の だ 。 こ の 発 表 の 直 前 、ATTは 、 ワー ル ドソ ー ス ・プ ロ ジ ェ ク トを発 表 し、 世 界 的規 模 で の事 業 展 開 に欧 州 の パ ー トナ ー を募 る こ と を明 らか に した ば か りで あ る。MCIとBTの 動 き は 明 らか に 、ATTを 意 識 した もの だ。 世 界4位 のBTと 6位 のMCIが 提 携 す れ ば 、2位 とな り、 世 界 市 場 をめ ぐっ て 、 今 後 、1位 のATTと の 競 争 は 激 化 す る こ とが 予 想 さ れ る。16) む すび 情 報 通 信 産 業 は 、 今 、 大 きな変 革 の うね りの 中 に 身 を委 ね て い る。 ク リン トン米 大 統 領 は、93 年2月 に、 全 米 情 報 イ ン フ ラ ス トラ クチ ュ ア の 設備 を促 進 す る 『情 報 スー パ ー ハ イ ウ ェ イ』 構 想 を打 ち 出 し た。 こ れ を受 け て、 将 来 の 広 帯 域 イ ン フ ラ ス トラ クチ ュ ア構 築 に 向 け て 、 電 話 会 社 お よび ケー ブ ル テ レ ビ事 業 者 に よ る動 きが ます ま す 活 発 化 して い る。 ベ ル電 話会 社 は、 多額 の イ ン フ ラ投 資 を約 束 す る代 りに 、修 正 同 意 審 決 で 定 め られ て い る機 器 製 造 お よ びLATA間 通 信 サ ー ビ スへ の参 入 禁 止 解 除 、 ケー ブ ル テ レ ビ事 業 との 兼 営 を禁 止 して い る ケー ブ ル 通 信 政 策 法 の 改 正 を政 府 に要 望 した。 タ イ ム ・ワ ー ナ ー と い うCATV会 社 は、 向 こ う数 年 間 で50億 ドル投 資 し、 光 フ ァ イ バ ー を敷 設 して、 娯 楽 を 目的 に した スー パ ー ハ イ ウ エ イ を構 築 す る構 想 を持 っ て い る。 そ して、ATTが 開 発 した 「GCNS-2000」 とい うATM(非 同 期 伝 送 モ ー ド)技 術 を採 用 す るこ とに した。USウ エ ス ト(地 域 電 話 会 社)は 、 自 らISDN投 資 を行 わ ず に、 タ イ ム ・ワー ナ ー に 出資 す る こ とに決 定 し た。 こ れ は次 世 代 通 信 イ ン フ ラ ス トラ ク チ ュ ア の 主 役 は 電 話 会 社 で は な く、CATV会 社 と な る こ と を読 ん で い るの だ 。 一 方、IBMもATM技 術 を核 に 、 伝 送 速 度 が現 在 の お よ そ 千倍 とい う次 世 代 通 信 網 を実 現 す る と うた い、 それ に 向 け てATMの 関 連 製 品 、 ソ フ ト群 を積 極 的 に供 給 す る とい う決 定 を した。 今 後 、 米 国 の 情 報 通 信 産 業 は、 長 距 離 市 場 事 業 者 と市 内市 場 事 業 者 との相 互 乗 り入 れ 、 通 信 産 業 と機 器 製 造 業 との 垂 直 的 統 合 、 通 信 とコ ン ピュ ー タの 融 合 、 通 信 と放 送 の 融 合 が 推 進 され る。 そ うなれ ば 、 情 報 通 信 産 業 の 産 業 組 織 は 一 変 す る。 我 が 国 に お い て も、 この よ うな情 報 通 信 産 業 の 潮 流 に沿 っ て 、 将 来 の あ るべ き姿 お よび 規 制 政 策 を 明確 に す る 必 要 が あ る。NTTの 分 割 問題 は そ の 第 一 の 関 門 だ 。 さ らに 、 光 フ ァ イ バ ー が21 世 紀 を担 う重 要 な イ ン フ ラ ス トラ ク チ ャ だ と し て も、 通 信 会 社 、 電 力 会 社 、CATVの3者 間 の 投 資 調 整 が 、 国 民経 済 的 観 点 か ら重 要 とな る。 国 民 的P論 を引 き起 こ す た め に も、 郵 政 省 は、 従 来 の よ うな密 室 審 議 をす るの で は な く、 オー プ ン に して 国 民 の 意 見 に 耳 を傾 け 、 各 種 デ ー タ も公 開 して 、21世 紀 の 情 報 イ ン フ ラ ス トラ クチ ュ ア構 築 に 向 け て 推 進 す べ き と考 え る。 料 金 に 関 す る経 済 学 的議 論 をす る場 合 、 限 界 費 用 と価 格 弾 力 性 が キー ワー ドとな る。 独 占的 企 業 に お け る ラム ゼ ー 料 金 理 論 は その 典 型 で あ る。 ラ ム ゼ ー 料 金 は 、 限 界 費 用 か ら価 格 弾 力 性 だ け 乖離 させ る こ と に よ っ て収 支 バ ラ ン ス を取 りなが ら、 資 源 配 分 効 率 を達 成 し よ う とい うセ カ ン ド ベ ス トの 考 え 方 だ 。 米 国 で は 、 数 多 くの実 証分 析 が行 わ れ て い るが 、 わが 国 で は 、 生 産 性 分 析 に
関 して 鬼 木(1993)が あ る程 度 だ。 松 浦(1992)は 、 「限 界 費 用 や 価 格 弾 力 性 の 推 計 が 政 策 上 き わ め て 重 要 で あ る」 こ と を認 識 し な が ら も、 自 ら は仮 想 値 に 基 い て 、 市 内 通 信 の 収 益 率 を 試 算 して い る にす ぎな い 。 そ し て、 「料 金 を改 定 し よ う とす る企 業 は、 必 ず そ の 限 界 費用 と価 格 弾 力 性 を設 定 して い る はず で あ る。 問 題 は そ の 情 報 が 正 し く(少 な く と も規 制 当 局 に)開 示 され て い る か 否 か で あ る 」、 と述 べ て い るが 、 筆 者 は、 これ ま で通 信 事 業 者 が 料 金 算 定 に 当 っ て 限 界 費 用 や 、価 格 弾 力 性 を推 定 した とい う話 を 聞 い た こ とが な い。 も し松 浦 の 言 う とお りな らば 、 規 制 当局 は 情 報 を 開示 させ 、 是 非 、 そ れ に基 ず い て経 済 学 的 議 論 を進 め るべ きだ と思 う。 注 1)吉 田(1992)に よ れ ば、 「次 世 代 フ ォ ー ラ ム 」 と い う情 報 通 信 分 野 に 関 す る研 究 会 の 主 要 メ ンバ ー は、NTT、 日本 興 業 銀 行 、 東 京 電 力 、 関 西 電 力 、 ト ヨ タ 自動 車 、 新 日本 製 鉄 とな って い る。 東 京 電 力 は 、NTTに 次 ぐ通 信 設 備 を 持 つ 企 業 で あ り、 地 域 系 の 東 京 通 信 ネ ッ トワ ー ク (TTnet、 社 長 藤 森 元 東 京 電 力 副社 長)、 自動 車 ・携 帯 電 話 の 日本 移 動 通 信 、 ポ ケ ッ トベ ル の 東 京 テ レ メ ッ セ ー ジ な どに 出 資 し、 役 員 を送 り込 ん で 情 報 通 信 産 業 に も経 営 多角 化 して い る。 TTnetは 、 設 立 当初 、NTTの 真 藤 社 長(当 時)を し て、 「最 も手 強 い相 手 が 登 場 した 」 と言 わ しめ た会 社 だ 。 米 国 で は 、 電 力 会 社 がCATV事 業 も経 営 して い るケ ー ス は 多 数 あ る。 ソニ ー と任 天 堂 を取 り上 げ た の は、 これ か らの 情 報 産 業 は た ん に 、 ハ ー ド面 に強 い だ け で な く、 ソ フ ト面 の 開 発 力 も要 求 され る。 そ こ で 、 そ の代 表 的 企 業 で あ る と同 時 に 、 比 較 され る こ との 多 い こ の2社 を追 加 した 。 任 天 堂 山 内社 長 は 、 日経 ビ ジネ ス編 集 長 との イ ン タ ビュ で、 ソ ニー や 松 下 の ゲ ー ム 市 場 へ の 新 規 参 入 に た い して 、 次 の よ うに 語 っ て い る。 「ユ ー ザ ー は エ ン ター テ イ メ ン ト分 野 にハ ー ドの性 能 を求 め て は い ませ ん 。 時代 の最 先 端 を行 く高 性 能 か つ 大容 量 の機 器 よ り も、 面 白 く感 動 で き る ソ フ トを欲 しが るの で す 。 決 め 手 は ゲー ム 情 報 で あ り、 それ が 任 天 堂 ソ フ ト化 路 線 とい うわ け で す 」。(『日経 ビ ジ ネ ス 』1992年6月1日 号) ソ ニー が 米 コ ロ ン ビ ア ピ ク チ ャ(現 ソ ニ ー ピ ク チ ャ ー ズ エ ン タ テ イ メ ン ト)を 、松 下 がMCA を91年 に相 次 い で買 収 した 。 コ ン ピ ュ ー タ メー カ と して 、 ハ ー ドが 強 くて も、 ソ フ トが 充 実 して い な い と製 品 は売 れ な い とい う こ と を認 識 し て い るか ら だ。 2)筆 者 は 以 前 、 トラ ン ス ロ グ 生 産 関数 を 用 い て、 計 量 経 済 学 的 手 法 に よ り、 電 気 事 業 の総 要 素 生 産 性 を 求 め た。 富 田(1990)参 照 。NTTの 生 産 性 に つ い て は、 鬼 木(1993)参 照 。 コブ ダ グ ラ ス型 生 産 関 数 に よ る生 産 性 の測 定 は 経 済 学 の分 野 で は数 多 くな され て い るが 、 最 近 の計 測例 で は 、 経 済 白書 平 成5年 版 に 、 産 業 別 の 総 要 素 生 産 性 の 計 測 が 出 て い る。 また 、伊 丹(1982)に お い て 、 日米 企 業 の経 営 生 産 性 比 較 が行 わ れ て い るが 、 本 節 の分 析 手 法 は 同 書 に 負 っ て い る。 3)x効 率 に つ い て は 、Leibenstein(1966)参 照 。 4)盛 田 昭 夫 「『日本 型 経 営 』 が 危 な い」 『文 芸 春 秋 』92年2月 号 5)デ ー タ の 作 成 は次 の よ う に行 っ た 。 付 加 価 値:経 常 利 益 、 人 件 費 、 金 融 費 用 、 賃 借 料 、減 価 償 却 費 の 合 計 額 人 件 費:製 造 費用 中 の 労務 費 、 販 売 一 般 管 理 費 中 の役 員 給 料 ・手 当 、 従 業 員 給料 ・手 当 の合 計 額 有 形 固定 資産 取 得 原価:有 形 固定 資産 簿 価 、 減 価 償 却 累 計 額 の合 計 額 付 加 価 値 、 人 件 費 お よび 固 定 資 産 デ ー タ は 実 質 化 が 望 ま し い が 、 当 該 期 間 の物 価 上 昇 が わ ず か
(卸 売 物 価 は 下 落)の た め 今 回 は 行 わ な か っ た 。 以 上 の 財 務 デ ー タ は 、 明 治 大 学 情 報 科 学 セ ン タ ー 所 蔵 の 日経 財 務 デ ー タ(単 独 決 算)を 利 用 させ て い た だ い た 。 同 デ ー タ に つ い て は 二 宮(1991)参 照 。 6)室 田(1993)は 、 電 気 事 業 の 独 占 の 弊 害 を分 析 し、 電 力 自 由 化 を 訴 え て い る 。 7)田 中 洋 之 助 氏 と の 対 談 、 毎 日新 聞93年3月16日 。 8)鬼 木 ・オ ー ム ・ス テ ィ ブ ン ソ ン(1993)に よ る と、NTTの 総 要 素 生 産 性 は 、1980=1.00と し て 、1985=1.32、1991=1.44と い う 計 測 結 果 が 得 ら れ て い る 。た だ し 、デ ー タ の 実 質 化 に つ い て は ま っ た く述 べ ら れ て い な い の で 、 ど の よ う に 行 っ た か は 不 明 で あ る 。 『日 本 の 電 気 通 信 』p180。 9)NCC=NewCommonCarrier、 新 規 参 入 の 通 信 事 業 者 、 長 距 離 系 で は 第 二 電 電(大 株 主 京 セ ラ)、 日本 テ レ コ ム(同 東 日本 、 西 日本 、 東 海 の 各 旅 客 鉄 道)、 日 本 高 速 通 信(同 ト ヨ タ 自 動 車 、 道 路 施 設 協 会)の3社 。 10)『 日 経 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 』1993.7.19、p31。 11)『 情 報 通 信 ハ ン ド ブ ッ ク92年 版 』p126。 12)競 争 ア ク セ ス 事 業 者 、CompetitiveAccessProvider,CAPと 略 す 。 13)Huber(1993)参 照 。 14)奥 野 ・三 輪(1993)は 、 「バ イ パ ス を 通 じ た 代 替 的 な 手 段 の 発 展 が 、 既 存 の 市 内 回 線 業 者 の 自 然 独 占性 に た い す る 有 力 な 牽 制 手 段 と な る こ と は 期 待 し に くい 」、 と 従 来 の 見 解 を 繰 り返 し て い る 。 『日本 の 電 気 通 信 』、 第4章 、p114。 15)「ATT年 次 報 告 書 」1993年2月9日 。 16)"FinacialTimes"1993.6.30 参考 文献 Leibenstein,H."AllocativeEfficiencuvs.X-Efficiency;"AmericanEconomicReview, June1966,pp.392-415 Hausman,J.,Tardiff,T.andBelinfante,A."TheEffectsoftheBreakupofAT&Ton Telephone.PenetrationintheUnitedStates,"AmericanEconomicReview,May1993, pp178-184 Huber,P.,Kellog,M.andThorne,J."TheGeodesicNetworkII,-1993Reporton CompetitionintheTelephoneIndustry-,"(谷 田 敏 一 訳 「ジ オ デ シ ッ ク ・ ネ ッ ト ワ ー ク II」 『海 外 電 気 通 信 』1993年6、7月 号) Taylor,W.,andTaylor,L."PostdivestitureLong-DistanceCompetitionintheUnited States,"AmericanEconomicReview,May1993,pp185-190 伊 丹 敬 之 『日 本 的 経 営 を 越 え て 』 東 洋 経 済 新 報 社 、1982 奥 野 正 寛 ・鈴 村 興 太 郎 ・南 部 鶴 彦 編 『日 本 の 電 気 通 信 』、 日 本 経 済 新 聞 社 、1993 鬼 木 甫 、T・ オ ー ム 、R・ ス テ ィ ー ブ ン ソ ン 「民 営 化 でNTTの 生 産 性 は 上 昇 し た か 」、 奥 野 ・鈴 村 ・南 部(1993)第6章 経 済 企 画 庁 『平 成5年 版 経 済 白 書 』、 大 蔵 省 印 刷 局 、1993 関 秀 夫 「米 国 の 市 内 ・市 外 電 話 分 離 体 制 」、 『エ コ ノ ミ ス ト 』1993.8.3 富 田 輝 博 「電 気 事 業 の 生 産 性 分 析 」 文 教 大 学 情 報 学 部 紀 要 『情 報 研 究 』11号 、1990
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