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主体的に社会にかかわっていく力を育む授業の創造(1) -人間関係を形成する力の発達に焦点をあてて-

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Academic year: 2021

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(1)Title. 主体的に社会にかかわっていく力を育む授業の創造(1) −人間関係 を形成する力の発達に焦点をあてて−. Author(s). 松木, 貴司; 藤村, 敦; 伊東, 実; 駒野, 司; 和田, 悟; 松倉, 泰介; 白府, 士孝. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 61(1): 115-122. Issue Date. 2010-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2273. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第61巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.61,No.1. 平成22年8月 August,2010. 主体的に社会にかかわっていく力を育む授業の創造(1) 一人間関係を形成する力の発達に焦点をあてて−. 松木 貴司・藤村 敦*・伊東 実*・駒野 司*・和田 悟*・松倉 泰介*・自府 士孝*. 北海道教育大学函館枚 *北海道教育大学附属特別支援学枚. ClassesDesignedtoEnhancetheSocialSkills(1). −The DebateovertheDevelopmentofAbilitytoFormInterpersonalRelationships− MATSUKIKiyoshi,FUJIMURATsutomu*,ITOMinoru*,KOMANOTsukasa*. WADASatoru*,MATSUKURATaisuke*andSHIRAFUNoritaka* HakodateCampus,HokkaidoUniversityofEducation. *schoolforSpecialNeedsEducationattachedtoHokkaidoUniversityofEducation. 概 要 特別支援学校において,主体的に社会にかかわっていくための力を育成するために,どのような授業を行っ. ていくべきかについて検討を行った。主体的に社会にかかわっていく力を三項関係で捉えなおし,それに基 づいた授業像を仮定した。/ト学部∼高等部までの各学部で,仮定された授業像に沿った授業実践を行い,そ. の成果から発達に応じた授業のあり方を検討した。その結果,他者と物を共有する授業,協同して取り組む 授業,協調して取り組む授業の3授業像の妥当性が検証された。. ると説明したことである」とした。また,「それ 問題と目的. 近年,障がいを捉えるために,2001年にWHO. ぞれの要素(構成因子)間の因果関係を双方向的. にとらえる相互作用モデルとしたことも大きな特. で採択された「国際生活機能分類一国際障害分類. 徴である」とした。この考え方に従うと,障がい. 改訂版−(TCF)」(障害者福祉研究会,2002)が. とは,環境因子,個人因子などの要因により心身. 様々な分野で引用されている。於田(2008)は,そ. 機能,身体構造,活動,参加という生活機能に,. れまでの障がい観を概観し,「ICFの大きな特徴. 機能障がい,活動制限,参加制約という問題が生. は,環境因子と個人因子を導入し,生活機能の低. じた状態であると考えることができる。. 下(障害)は,それらの背景因子との関係で生じ. 特別支援学校に在籍する子どもたちは,様々な. 115.

(3) 桧木 貴司・藤村 敦・伊東 実・駒野. 司・和田 悟・桧倉 泰介・自府 士孝. 障がいを抱えている。障がいは個人因子だけでは. に社会にかかわっていく力と定義し,その発達を. なく,環境因子などにもより生活機能に問題が生. 明らかにしていくことを本研究の目的とした。. じたものであると考えると,子どもたちは様々な 困難があっても環境との相互作用の中で,主体的 に活動をしていくことができると考えられる。. 主体的に社会にかかわっていく力の発達 熊谷 (2006)は,子どもたちと環境とのかかわりを三 項関係で説明している。熊谷によると,三項の第. 従って,特別支援学校において指導を行っていく. 1項は「私」,第2項は「あなた」,第3項は「も. にあたっては,子どもたちの身の回りの環境を調. の,こと,ひと(彼,彼女)」であり,かかわり. 整していく必要がある。学校生括における身の回. の発達を三項の関係性で説明している。本研究で. りの環境には教室環境を含めた生活環境や活動の. は,この三項関係に基づき,主体的に社会にかか. 基盤となる学習環境などが存在する。これまで本. わることを,授業において主体的に,もの,こと,. 校では,子どもの身の回りの生活環境を構造化と. ひとにかかわることとした。. いう視点で整備し,保護者とミーティングを行い. 熊谷(2006)によると,この第3項の対象との. ながらその環境がどの場所でも同じになるよう配. かかわりは,ものから始まり,次第にことに発展. 慮してきた。また,学習環境においては,学習内. していくという。このことから,子どもたちが学. 容について,教育課程を再編成することで整えて. 校教育の12年間の中で,どのようにものとかかわ. きた。より一層子どもたちがこれらの環境と適切. り,他者とかかわっていくか,そして,そのかか. に相互作用していくには,子どもたちがこれらの. わりの発達を明確にしていくことが必要である。. 環境に主体的にかかわっていくための授業づくり. また,授業づくりにおいては,ものは教材・教具. が必要である。. であり,ひとは学習をともにする教師や友だちで. このような主体的に環境にかかわっていく授業. あると考えられる。本研究においては,このよう. づくりの必要性は,学校卒業後の子どもたちの動. なかかわりの発達を実践的に明らかにしていくこ. 向からも示唆される。真謝・平田(2000)は,特. とが必要である。. 別支援学校卒業後の生徒の動向を調査し,一度就. 授業における発達に応じた,子どもと「もの・. 職しても1年以内の間にすぐに離職してしまう傾. こと・ひと」とのかかわりを先行研究及び,本校. 向があることを見出した。また,本校においては,. の実態から想定した。特別支援学校には自閉症,. 職場において,卒業生が他者とのかかわりが不適. ダウン症などの様々な障がいの児童・生徒が在籍. 切であったり,新しい環境に馴染めなかったりす. している。発達に応じた子どもと「もの・こと・. ることから起こる問題についての相談が多いとい. ひと」とのかかわりを想定するにあたっては,様々. う実態もある。これらのことから,子どもたちが. な障がい種においても適用できなくてはいけな. 卒業後,活躍できる環境が少ないという実態は存. い。熊谷(2006)は,自閉症児の三項関係の発達. 在しているものの,その環境の中でうまくかかわ. 段階を健常児の発達と比較し,共通点を見出すこ. りをもてないという実態が明らかとなっている。. とで明らかにした。また,長崎(1993)は,ダウ. つまり,学校教育において環境と適切にかかわる. ン症児の相互的注視行為を健常児と比較し,その. 方法を身につけさせることが必要であることが示. 共通点を指摘している。それによると,ダウン症. 唆される。. 児は,健常児と共通の注視の構造をもつものの,. 以上のことから,授業を構成するには,子ども. その量的な側面,また,主導化の側面において異. たちの周りの環境を整備していくと同時に,新し. なっていることを指摘している。このことから,. い環境にも積極的にかかわっていくことのできる. ダウン症を始めとする様々な障がい種においても. 力を発達に応じて育てていく必要がある。このよ. 発達の基本的な段階は共通であることが示唆され. うな主体的に環境にかかわっていく力を,主体的. る。ただし,そこには長崎(1993)が言うように,. 116.

(4) 主体的に社会にかかわっていく力を育む授業の創造(1). 各側面において異なる傾向を示すこともある。こ. るという指摘もある。高山・辻(2003)は,自閉. のことから,子どもたちの発達は量的・質的な違. 症幼児と母親のやり取りの観察から,情緒的なや. いや障がい種に応じた特性はあるものの,基本的. り取りから,模倣を介したやり取りに変化して. には,三項関係で捉えることが可能であると考え. いったという事例を紹介している。また,辻・高. られる。. 山(2004)は,母親と子どもとのシャボン玉遊び. 以上のことから,様々な発達研究などをもとに,. において,ストローの存在が模倣を生んでいると. 主体的に社会にかかわっていく力の発達を,三項. いう事実を報告している。このことから,授業を. 関係の考え方を用いて以下のように想定した。. 行うにあたっては,情動の共有が重要であり,そ. 子どもと「もの」とのかかわり 主体的に社会 にかかわっていく力の発達を想定するにあたり, まずは三項関係の成立過程について考察する。. 三項関係は,乳児期に母子間で成立する人間関. の際には情動を共有するための「もの」のT夫も 重要であることが示唆される。. 以上のことから,三項関係を成立させる段階に おいては,かかわるものを工夫すると同時に,共. 係の第一歩である。やまだ(1987)によると,「私一. 同注意を促し,情動の共有を図るような授業が望. 他者」の二項関係が生後0∼4ケ月に形成され,. ましい。. 「私−もの・こと」の二項関係は生後5∼9ケ月. 子どもと「ひと」とのかかわり 三項関係が成. に形成,生後9∼14ケ月に2つの二項関係が結合. 立し,ものなどとかかわりをもつようになると,. して「私−もの・こと一他者」の三項関係が成立す. 子どもたちは友だちなどの他者とかかわりをもつ. る。また,この第3項の対象とのかかわりは,も. ようになる。岩田(2001)は5歳になった健常児. のから始まり,次第にことに発展していく(熊谷,. の子どもたちが「私たち」を意識した行動をする. 2006)。このことから考えると,授業を行うにあ. ようになることを明らかにした。また,佐々木. たっては,二項関係を成立させるための工夫をす. (1996)は,小学生の児童を対象とした事例を. ると同時に,子どもと「もの」とのかかわりを工. もとに,支援のあり方を考察し,情動的なやり取. 夫し,「こと」とのかかわりへと移行しやすくし. りだけではなく,共同活動の際にテーマを共通さ. ていくことが必要である。. せることが重要であることを示唆している。これ. 三項関係を成立させるためには,共同注意とい. らのことから,他者とかかわりをもとうとする段. う行為が大きな役割を果たしていることが,これ. 階の子どもたちには,共同活動を組むなどをしな. までの先行研究で明らかにされている。長崎・中. がら,その中で,自分の役割を意識すると同時に,. 村・吉井・若井(2009)は,共同注意とは,複数. 他者も意識するような授業が必要である。. の人が同時に同じ対象(もの・こと)に注意を向. また,「私たち」を意識するようになるためには,. けている状態のことであると定義している。また,. 他者を意識するよう促すだけでは不十分であり,. 生後9ケ月には乳児の視線とその対象に大人が合. 他者を意識する段階から,私たちを意識する段階. わせることによって成り立つ「支えられた共同注. に移行するには,他者を認めるなどの行為などが. 意」が成立し,9ケ月以降は大人の働きかけによっ. 存在しなくてはいけないと考えられる。. て子どもが大人の視線を追従する「受動的な共同. 以上のことから,友だちとかかわりをもつ段階. 注意」,その後,子ども自ら大人の注意を操作し. においては,意図的に他者を意識したり,認め合っ. て共同注意を作り上げる「能動的な共同注意」が. たりできるような授業が望ましい。. 見られるようになるとその発達過程を説明してい. 子どもと「集団」とのかかわり 人間関係がさ. る。このことから,授業を行うにあたっては,こ. らに広がるようになると,集団の規模が拡大し,. のような共同注意を促すことが重要である。. 知らない他者が存在するようになり,その中で思. また,共同注意と同様に情動の共有が重要であ. うようにコミュニケーションが図れないことが多. 117.

(5) 桧木 貴司・藤村 敦・伊東 実・駒野. くなる。また学校卒業後,社会に出て行く際には,. 司・和田 悟・桧倉 泰介・自府 士孝. 実践1 「もの」とのかかわりを工夫した授業. 新たな環境に適応できる生活や作業のスキルの獲. 先に述べたように,三項関係を成立させる段階に. 得と同時に,自分に求められていることや場を理. おいては,かかわるものを工夫すると同時に,共. 解した言動等,他者の立場や感情の理解が必要に. 同注意を促し,情動の共有を図るような授業が望. なってくる。以上のことから,人間関係がさらに. ましいと考えられた。そこで,小学部において,. 広がってくる段階においては,適切な意思の伝達. 以下のような手続きにより授業を行った。. 方法を身に付けるとともに,相手の意図や場の状. 1)手続き. 況を読み取ることができるような授業が望まし. (手単元名 郵便遊びをしよう. い。. ②単元目標. ・郵便車を押したり,郵便車が到着したりす ることを教師と一緒に楽しむ。. 本研究では,以上のように,子どもとものがか かわる段階,子どもと友人がかかわる段階,子ど. もが集団とかかわる段階の3つに分け,授業像を. ・動く郵便車に注目する。 (卦対象児童 小学部1年生2名,3年生が1名,. 想定した。このような授業像を基盤として,授業. 4年生1名,計4名。自閉症,知的障がい,ダウ. 実践を行った。. ン症の児童で構成されていた。 (彰児童の実態 コミュニケーションの様子として. 方 法. は身振りで伝えたり,単語や2語から3語の文章 で自分の要求などを伝えたりする様子が見られ る。人形やおもちゃなどを使ったままごと遊びや,. 対象児. 北海道教育大学附属特別支援学校小学部∼高等. 単純な操作をして遊ぶゲームを楽しむことがで. 部の3∼7名で構成される小集団グループ(9グ. き,うれしいときや楽しいときには笑うなどの表. ループ)で授業実践を行った。. 情や言葉で表現できる児童が多い。しかし,自分. 実践期間. の伝えたい事柄を相手に十分に伝えられず,あき. 2009年5月∼2010年2月に実践した。. らめてしまったり,いらいらしたりする場面があ. る。休み時間や遊びの時間などでは,遊具や好き. 手続き 先に述べた授業像をもとに,授業案を作成し,. なおもちゃで遊んだり,読書をしたりして過ごせ. 各学部で想定された授業像に沿ったものであるか. るが,友だちと一緒または交互に遊ぶ場面は少な. について吟味を行った。授業実践後,各学部で授. い。. 業における子どもの姿を交流し,子どもが主体的. (彰指導計画 Tablelのように授業の単元及び指. に「もの・こと・ひと」にかかわっているかどう. 導計画を作成した。郵便車の模型を作成し,その. かについて考察を行った。授業はすべて自立活動. 郵便車に自分の書いた手紙を載せ,郵便車を相手. の時間における指導の中で行い,ねらいも自立活. のところへ届けるという活動を行った。その郵便. 動のねらいとした。. 車への興味や関心を高めることで,教師と子ども. 授業実践. 想定された3授業像の実践例(3例)を以下に. Tablel/ト学部の授業(郵便遊びをしよう)の 単元計画 授. 業. 示す。以下に示す記録は,実践のもとになった指. 郵便遊びを知ろう. 導案,及び授業後にまとめられた授業記録をもと. 手紙を出そう. にまとめ直したものである。. 友だちに返事を出そう. 118. 名. 授業時間.

(6) 主体的に社会にかかわっていく力を育む授業の創造(1). が郵便車に対して共同注意を向け,その際に情動. な授業が大切であることが示唆された。. の共有が図れると考えた。 (参支援の方針 子どもたちがかかわる教材(郵便. 実践2 「ひと」とのかかわりを工夫した授業. 車)に対する興味や関心を高めるために,手紙に. 三項関係が成立した段階においては,他者とどの. 貼るキャラクターシールには,児童が共に好きな. ようにかかわっていくかが課題となる。この段階. アニメキャラクターを使用し,手紙をもらう児童. においては,意図的に他者を意識したり,認め合っ. も,手紙を作って渡す児童も楽しめるようにした。. たりできるような授業が望ましいと考えられた。. また,郵便車が動いてくる様子を教師が児童の目. そこで,中学部で以下のような手続きにより授業. 線で見て,動いてくる様子を伝えることによって,. を行った。. 児童と一緒に楽しい気持ちをもてるようにした。. 1)手続き. また,郵便車には出発させる児童の写真をはり,. (手単元名 2人でタッグゲームをしよう. ∼つくりあげよう2人のタワー∼. 郵便車を運転している雰囲気を出すことで,手紙 を受け取る児童,郵便車を出発させる児童の関心 を引き付けるようにした。. 郵便車へ共同注意を促すために,個の実態に応 じて,郵便車が視野に入るように教材を設置した り,児童の視線に合わせて,指差し等の提示の仕 方をしたりするなど支援の工夫を行った。 また,情動の共有を図るために,子どもの表情. や行動に合わせて言葉がけを工夫したり,身振り などで個に応じた共感の仕方を工夫したりした。. 2)結果(児童の変容) 児童は回数を重ねるご. (卦単元目標. ・ タッグチームの友だちの動きを意識するこ とができる。. 順番に役割を交代しながら,ゲームを進め ることができる。. 他者と適切にかかわって,紙コップの貸し 借りをすることができる。. ・ モデル図と同じコップタワーを作ることが できる。. (卦対象生徒 中学部1年生1名,2年生が2名,. とに郵便車に注目する場面が多くなってきた。児. 3年生1名,計4名。自閉症,知的障がいの生徒. 童が郵便車に注目するようになることによって,. で構成されていた。. 教師と児童が共に手紙が配達される様子や郵便車. (彰生徒の実態 生徒は,意図的に設定された場面. が来る様子を一緒に見ることができるようになっ. では,簡単な言葉で自分の要求を伝えたり,報告. た。また,郵便車が進んでいったり到着したりし. したりすることができる。しかし,日常的な生活. たときに,近くにいる教師の顔を見る児童や,言. 場面においては,相手を意識せず. 葉でうれしい気持ちを伝える児童が出てきたこと. わりが多く,相手や周りのペースに合わせて行動. から,少しずつではあるが,情動の共有を図るこ. することが苦手でもある。. とができてきたのではないかと考えられる。. (彰指導計画 Table2のように授業の指導計画を. 3)考察 授業を行った結果,子どもと教師が一. 作成した。4色の紙コップを用意し,それを与え. 緒に教材に注目したり,子どもからの感情の表出. られたモデル凶と同じように積んでいくという活. と見られるものが確認されたりした。また,小学. 動を行った。その際,2名のチームでの対戦とし,. 部における他の2授業においても類似した結果が. 自分の手持ちの色は1色とした。このようにする. 見られた。. ことで,他者との紙コップのやり取りの必要性を. 以上のことから,授業においてもの,すなわち. ,一方的なかか. つくった。このようなゲームの設定の工夫などで,. 教材を工夫したり,共同注意を促したり,情動の. 他者を意識したり,認め合ったりすることをね. 共有を図ったりする授業は有効であると考えられ. らった。. た。このことから,他者とものを共有できるよう. 119.

(7) 桧木 貴司・藤村 敦・伊東 実・駒野 Table 2 中学部の授業(2人でタッグゲームを しよう)の単元計画. 授. 業. 名. 司・和田 悟・桧倉 泰介・自府 士孝. 以上のことから,三項関係が成立した段階にお いては,意図的に他者を意識したり,認め合った. 授業時間. コップタワーのルールを知ろう コップの貸し借りをしよう① (2色の紙コップ). 2時間. 2時間. 難しいモデル凶に挑戦. 台詞カードなしでコップの貸し借り をしよう 自分たちのモデル図をつくろう. まり,この段階においては,他者と協同して取り 組んでいくような授業を工夫して設定していくこ とが重要であることが示唆された。. コップの貸し借りをしよう② (4色の紙コップ). りできるような授業が望ましいと考えられた。つ. 4時間. 4時間. 4時間. 4時間. 実践3 「集団」とのかかわりを工夫した授業 人間関係が広がるようになるにつれて,大規模 な集団を意識するようになり,集団とのかかわり が課題となってくる。この段階においては,適切. (参支援の方針 自他を意識するために,紙コップ. な意思の伝達方法を身に付けるとともに,相手の. を借りる役,貸す役,コップを積む役,待つ役な. 意図を読み取ることができるための授業が有効で. どの状況を設定した。また,自他を認め合うこと. あると考えられた。そこで,高等部で以下のよう. ができるよう,コップを借りる役と貸す役の間で,. な手続きにより授業を行った。. 交渉を通して役割の交代をする状況を設定した。. 1)手続き. 単元の後半には,白紙のモデル図に好きな色を塗 り,自分たちのチームのタワー完成予想図を作る ことで,自分たちの作戦を立てられるようにした。 作戦を立てる中で,相手の作戦を認めながら,チー ムを意識できるようにした。. 2)結果(生徒の変容) ゲームを繰り返してい くうちに,自分から友だちに,「貸してください」, 「どうぞ」と言う様子が見られるようになった。. また,コップタワー完成時に,友だちと一緒に 「せ−の」と言葉がけをして完成の報告をする様. (手単元名 みんなで演じてみよう (卦単元目標. ・今ここにいない第三者の心情を推測するこ とができる。. ・ 自分や仲間のがんばりを認めて,その気持 ちを相手に伝えることができる。. (卦対象生徒 高等部1年生1名,2年生が3名, 3年生1名,計5名。自閉症,知的障がい, ADHDの生徒で構成されていた。 (彰生徒の実態 言語指示を理解することができ,. 子も見られるようになった。これらのことから,. 言語でのやりとりも概ね可能である。しかし,他. 他者を意識している様子が見られるようになった. 者と適切な言葉や行動でかかわったり,他者の意. と考えられた。さらに,チームでタワーができた. 図を十分にくみ取ったりすることについて難しさ. 時に,喜び合う姿などが見られ,互いに認め合う. が見られた。. 様子が確認された。. (彰指導計画 Table3のように授業の指導計画を. 3)考察 授業を行った結果,上記のように友だ. 作成した。「泣いた赤鬼」という絵本を教材とし,. ちに主体的にかかわっていく様子が見られるよう. そこに登場する赤鬼の気持ちを予想する活動を. になったり,チームを意識している様子も見られ. 行った。このような,第三者の心情を読み取る活. るようになったりした。岩田(2001)も,発達に. 動を通して,相手の意図を読み取ることをねらっ. 伴い「私たち」を意識した行動をするようになる. た。また,読み取った心情を基にして寸劇を行っ. ことを示している。本授業の子どもたちも,チー. た。寸劇を互いに評価する活動を通して,適切な. ムを意識しており,同じ段階にいるものと考えら. 意思の伝達方法を身に付けることをねらった。. れる。また,中学部の他の2授業においても類似. (参支援の方針 教材中に登場する赤鬼の気持ちを. した結果が得られた。. 類推しやすいよう,状況や台詞などの情報に加え. 120.

(8) 主体的に社会にかかわっていく力を育む授業の創造(1). Table 3 高等部の授業(みんなで演じてみよう) の単元計画 授. 業. 名. 総合考察 授業時間. 「泣いた赤鬼」の物語を読んでみよ つ. 1時間. 想定された発達に応じた3つの授業像が適切で あるかについて授業実践を行った。小学部の3授 業では,三項関係を形成している段階の児童を対. 第1場面から,立て札を壊している 赤鬼の気持ちを考えよう. 1時間. 第2場面から,青鬼の計画を聞いた 赤鬼の気持ちを考えよう. 1時間. 第3場面から,去っていく青鬼を見 送る赤鬼の気持ちを考えて演じよう. 1時間. 第4場面から,青鬼の手紙を読んだ 赤鬼の気持ちを考えて演じよう. 1時間. 象として授業実践が行われた。これらの実践から は,他者とものを共有する授業が重要であること が示唆されたと同時に,その際には共同注意を促 したり,子どもと情動を共有したりすることが重 要であることが示された。中学部の3授業では,. 人間関係が広がっていく段階の生徒を対象として 授業実践が行われた。これらの実践からは,他者. て,心情の種類をカードにし,視覚的に理解でき. と協同して取り組む授業が重要であることが示唆. るよう配慮した。また,選んだ心情のカードを友. されたと同時に,他者を意識するよう促したり,. だちと比較する活動を設定し,場面にあった感情. 認め合うことを促したりすることが重要であるこ. について深く考えるよう促した。また,寸劇を評. とが示された。高等部の3授業では,人間関係が. 価する活動を行うにあたっては,称賛しているこ. さらに広がってくる段階の生徒を対象として授業. とが相手に伝わりやすいよう,ポイントシールの. 実践が行われた。これらの実践からは,他者と協. やりとりを行うとともに,称賛の仕方についての. 調して活動する授業が重要であることが示唆され. 指導を行った。. たと同時に,他者との適切な伝達方法を身に付け. 2)結果(生徒の変容) カードを使用すること. ることを促したり,相手の意図を読み取ることを. で,自信をもって赤鬼の感情を表現したり,子ど. 促したりする授業が重要であることが示された。. もによっては寸劇の際,感情にあった表現を行っ. 熊谷(2006)は,自閉症児の三項関係の発達段. たりすることができるようになってきた。また,. 階を4段階にまとめている。コミュニケーション. 寸劇の評価の場面では,称賛の内容を自分なりに. の方法に注目すると,第Ⅰ段階はわたす・もら. 考えたり,自分から,「いいねえ」などと場を与. う・みせる・指差すなどの行為が中心であり,第. えられなくても発言したりする様子が見られた。. Ⅲ段階は,物や場所を示す段階であるという。ま. 3)考察 授業を行った結果,第三者の気持ちを. た,第Ⅲ段階ではゲームや役割についてのルール. 考えたり,他者を自分なりの表現で称賛したりす. を理解するようになり,第Ⅳ段階では,物語など. る姿が見られるようになった。高等部で行われた. を通して第三者に感情移入したり,経験を照合・. 他の2授業においても類似した結果が見られた。. 反省してルール化していくことができるように. 以上のことから,人間関係がさらに広がってく. なったりするという。このことから,支援にあたっ. る段階においては,適切な意思の伝達方法を身に. ては,第Ⅰ∼Ⅲ段階においては,ものとの関係の. 付けるとともに,相手の意図を読み取ることがで. もち方を工夫する必要があるし,第Ⅲ段階におい. きるための授業が有効であると考えられた。この. ては,他者とのかかわりの中で生じるルールなど. ことから,この段階においては,相手の意図を読. の体験的な理解を支援していく必要がある。また,. み取るなどの活動を通して,相手と協調していく. 第Ⅳ段階においては,他者の感情を考えるなどと. ことのできる授業が重要であることが示唆され. いった他者との関係を直接支援していく必要があ. た。. る。このように考えると,小学部の研究で主に明 らかとなった他者とものを共有する授業は熊谷の. 121.

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Table 3 高等部の授業(みんなで演じてみよう)   の単元計画   総合考察   想定された発達に応じた3つの授業像が適切で   あるかについて授業実践を行った。小学部の3授   業では,三項関係を形成している段階の児童を対   象として授業実践が行われた。これらの実践から   は,他者とものを共有する授業が重要であること   が示唆されたと同時に,その際には共同注意を促   したり,子どもと情動を共有したりすることが重   要であることが示された。中学部の3授業では,   人間関係が広がっていく段階

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