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バブルの絶頂と崩壊

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Academic year: 2021

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バ ブ ル の 絶 頂 と崩 壊1)

「大 暴 落 は,深 刻 な 不 況 が 近 く に 迫 っ て い る こ と に 市 場 が 突 然 気 づ い た こ と か ら引 き 起 こ さ れ る と い う 人 も い る が,そ う で は な い 。 そ れ が 深 刻 な も の で あ ろ う が な か ろ う が 不 況 は 市 況 が 悪 化 し た 時 点 で 予 想 す る こ と は で き な い 。 … と い う の は,投 機 ブ ー ム の 本 質 は,い か な る も の で あ れ そ れ を 崩 壊 さ せ る こ と が で き る と い う と こ ろ に あ る か ら だ 。」 (J.K.Galbraith,TheGreatGrash1929,PenguinBooks,1992,p.113) は じめ に バ ブ ルの 過 熱 と と もに,金 融 市 場 が 対 外 的 及 び国 内 的 要 因か ら極 度 に逼 迫 した こ とは前 稿 で 述 べ た。 だが この よ う な状 況 で もなお バ ブル は持 続 して い た。 他 方,産 業 に よ って はバ ブル 崩 壊 以 前 に不 況 に突 入 す る とこ ろ も現 れ, ま たバ ブ ルの 背 後 で 在 庫 が 累 積 して い る こ とが 観 察 され て い た。 実 物 レベ ル で は既 に超 過 供 給 の 状 態 に な って い た と考 え られ る。 そ の よ う な状 況 の 変 化 が3月15日 の大 暴 落 を引 き起 こ した ので あ る。 本 稿 で は,バ ブ ル崩壊 直 前 の 1)「 銀行 通信 録』,「大 阪 銀 行 通 信 録』 及 び 「東 洋 経 済 新 報 』 は 復 刻 版 を参 照 した が, ペ ー ジ 数 は オ リジ ナ ル 版 の もの を表 記 して い る 。 これ まで の 一 連 の 論 考 と同 様,引 用 文 は 原 則 と して オ リ ジナ ル 表 記 で 行 い,年 号 は 元 号 を用 い て い る 。 た だ し本稿 が横 書 きで あ る こ と を考 慮 して,数 字 は オ リ ジ ナ ル が 漢 数 字 で あ っ て も算 用 数 字 で 表 記 した と ころ もあ る。 雑 誌 「ダイ ヤ モ ン ド』 の 正 式 名 称 は 「経 済 雑 誌 ダ イヤ モ ン ド』 で あ るが,本 稿 で は 「ダ イヤ モ ン ド』 と略 記 して い る 。 本 稿 で 頻 繁 に 引 用 され る 文 献 に つ い て は 次 の よ う に略 記 して い る。 高橋 亀 吉 「大 正 昭和 財 界 変 動 史』 上 巻,東 洋経 済 新 報社,昭 和29年 → 「財 界 変 動 史』 キ ー ワ ー ド:戦 後恐 慌,バ ブ ル 崩壊,臨 時 国 庫 証 券 金 融 政 策

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桃 山学 院大 学経 済経 営論 集 第53巻 第4号 実 物 市 場 の 状 況 を概 観 し,株 式 ・商 品 市 場 の バ ブル 崩 壊 直 前 に於 け る暴 落 状 況,そ して そ れ に続 く3月15日 の大 暴 落 とそ の原 因 さ らに そ の後 の金 融 市 場 につ い て 述 べ る。 バ ブルの絶頂 と実物市場の変調 『日本 銀 行 百 年 史 』 は,大 正9年2月 か ら3月 にか けて の 経 済 状 況 を次 の よ う に描 写 して い る。 「生 糸 相 場 は,輸 出引 き合 い が そ れ ほ ど で もなか っ た の に大 正9年1月 に は現 物 上 一 番4350円 を唱 え,『五 千 円 を 目標 と して 思 惑 熱 は凄 じ く空 人気 の沸 騰 驚 嘆 を禁 ぜ ざ ら しめ』 た。 綿 糸 相場(大 阪 三 品 市場 定 期 先 物 月 中平 均)も9年2月 に613円91銭,3 月 に628円37銭 と前 年 同 月 比2倍 近 い 高 値 を示 し,綿 糸 の 思惑 は 『二,三 月 に於 て 正 に其絶 頂 に達 した』。 株 式 市場 も空 前 の 活 況 を呈 し,「一 月遂 に東株 五 百 円の 大 関門 を突 破 す るの 気 勢 にて 狂 態 殆 ど窺 ひ知 る可 か ら ざる に至 』 り,「三 月 の 受 渡代 金 は約 一 億 円 に達 し』 た。事業の新設 ・拡張を計画す る者はいよい よ多 く,9年3月 の計 画 資 本 高 は前 年 同 月 の7.3倍 に上 る11億4849万 円 の 巨額 を算 した。 物 価 も騰 勢 を改 め なか っ た。 大 正3年7月 を100と す る卸 売 物 価 指 数 は9年3月 に は338(前 年 同月 比 59.0%高)に 達 した。 この よ う な 国内 物 価 の 高 騰 に加 え て消 費 力 の 増 大 や企 業 活 動 の 活 発化 に よ り,食 料 ・原 材 料 ・機 械 類 の 輸 入が 多 額 に上 っ た う え,思 惑 輸 入 も盛 ん に行 わ れ た ため 。9年3月 には1億3546万 円 とい う大 幅 な入 超 を見 る ことに な った 。」 (日本銀 行 百 年 史 編纂 委 員 会編 「日本銀 行 百年 史」 第2巻,日 本 銀行,昭 和58年,545 ペ ー ジ) こ こ に示 され て い る よ う に,大 正9年 に入 る と思 惑 取 引 は盛 ん とな り,そ れ につ られ て 物 価 も上 昇 をみ せ,バ ブ ル はい よい よそ の 絶 頂 期 を迎 え たの で あ る。 バ ブ ル は不 動 産 に も及 ん で い た。 『東 洋 経 済新 報 』 に よる と大 阪 で は特 に土 地 投 機 が 盛 んで,「 例 へ ば,住 宅彿 底 の折柄 とて,試 に或 る土 地 を トして敷 軒 の 貸 家 を新 築(其 家 は如 何 に割 高 で も忽 に して 借 手 が 付 く)す る と,其 邊 一 帯 の 土 地 は忽 に して 騰 貴 す る とい う有様 」 とな って い た2)。不 動 産 の供 給 の増

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加 が 不 動 産 価 格 を煽 る とい う,平 成 バ ブル で 私 た ちが 経 験 した よ う な こ とが 大 正 バ ブル で も起 こ って い たの で あ る。 土 地 バ ブル が 膨 張 す る と と もに土 地 会 社 も籏 生 した。 大 阪 で は大 正8年6月 まで に15社 しか な か っ た土 地会 社 は 大 正9年3月 上 旬 に は69社 に まで増 加 して い た3)。 投 機 熱 は ます ます 熾 烈 に な り,常 軌 を逸 した よ う な取 引 も現 れ て い た。 そ の 一 例 が 綿 糸 の 先 物 取 引 で あ っ た。 綿 糸 投 機 は1年 も し くはそ れ 以 上 の 先 物 に も及 び,そ の 取 引 高 は約200万 梱 に も達 して い た。 これ は この 当 時 の 綿 糸 生 産 高180∼190万 梱 を10∼20万 梱 も上 まわ る もの で あ っ た4>。つ ま り投 機 思 惑 取 引 が 生 産 高 を超 えて 行 われ て い たの で あ る。 1年 先 の 先 物 取 引 は 白 木 綿 つ ま り綿 布 で も行 わ れ て お り,大 正8年12月8 日時点 で,大 正9年1,2,3月 物2円30銭,4,5,6月 物2円8銭5厘,7,8,9 月 物2円3銭5厘,10,11,12月 物1円93銭5厘 とい う相 場 に な ってい だ)。 バ ブ ルの 過 熱 を背 景 に盛 ん に投 機 思 惑 取 引 が 行 われ て い た こ とが 分 か る。 で は実 需 は どの よ う に な って い たか とい う と,綿 糸 につ い て 『東 洋 経 済 新 報 」 は,「 輸 出 は 若 干 の増 加 を したが,相 場 に響 くほ どの もの で も ない。 内地 の 機 業 界 も依 然 と して 不 振 で,夏 物 の 契 約 もま た初 ま らぬ 有 様 で あ る。 米 綿 も保 合 で あ る。 何 虜 を見 て も,彼1を 尋 ね て も,綿 糸糸を騰 貴 せ しむ る よ う な, 需 給 關 係 の 一r化は見 當 らない 」 と述 べ,綿 糸 価 格 を上 昇 させ る よ う な需 給 関 係 の 変 化 は見 られ ず,大 正9年1月 に見 られ た定 期 綿 糸 価 格 の 上 昇 は 「一 種 の 策 略 か ら出 た投 機 相 場 」 で あ り,早 晩 崩 れ るで あ ろ う と予 想 した。 そ して 相 場 暴 落 の 原 因 は金 融 方 面 とな るが,そ の 時 期 につ い て は容 易 に予 測 す る こ とはで きない と しなが らも,「 今 度 の騰 貴 が 最 後 の騰 貴 で あ る こ とだ け は 間違 ない 」 と綿 糸 先 物相 場 が ピー クア ウ トした と主 張 した6)。また 同誌 は 3月13日 号 で,綿 糸 生 産 の増 加 の結 果,阪 神 綿 糸 在 庫 と くに太 番 手 の在 庫 が 2)「 大 阪 の 土 地 熱 」 「東 洋経 済 新 報』 大 正9年3月13日 号,9ペ ー ジ 。 3)「 土 地投 資 」 『中 央新 聞』 大 正9年3月17日 付 。 4)「 財 界 変 動 史』208ペ ー ジ 。 5)「 白 木 綿恢 復 難 」 「大 阪朝 日新 聞』 大 正8年12月9日 付 。 6)「 綿綜 の投 機 的 反 騰 」 「東 洋 経 済 新 報』 大 正9年2月21日 号,25-26ペ ー ジ 。

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急 増 して い る と報 じた上 で 「出來 高 も在 荷 も増 加 して,し か も相 場 が 此 の 頃 滅 切 り高 くなつ て 來 たの は注 意 に値 す る」 と警 戒 を発 して い る7)。 前 稿 で 述 べ た よ う に,生 糸 もア メ リ カの 在 庫 が 積 み 上 が って い た こ とか ら 1月 下 旬 に最 高値 に達 した後,価 格 が下 落 し始 め る。輸 出額 も大 正9年2月,3 月 は1月 の 半 額 以 下 に激 減 して い た。 『東 洋 経 済 新 報 』 は(1)欧 米 間 の為 替 変動 が ア メ リカ の 欧州 向 け輸 出 を 阻 害 して い る こ と,(2)米 国の 金 融 緊 縮 に よ り思 惑 売 買 が 困 難 に な って い る こ と,(3)我 が 輸 出商 は これ を見 て引 き続 き買 い控 え をす る であ ろ う こ と,(4) 従 って 春 挽 糸 が 出 回 る につ れ て 横 浜 の 在 庫 は増 加 し,(5)地 方 筋 が 軟 化 して 売 り急 ぐよ う に なれ ば,売 り崩 しに よ り相 場 は下 落 し,こ れ まで 買 い 進 んで きた定 期 の 買 い 方 も窮 地 に陥 って 投 げ売 りをす る よ う に な る との 弱 気 筋 の 主 張 を紹 介 した。 しか し結 論 と して,同 誌 は買 い 手 は引 き続 き強 気 を崩 さ ない と予 想 し,「 一 月 中 の高 値 を以 つ て,大 天 井 を打 つ た もの と断 定 す るの は,柳 か 早 計 に失 しはす まい か 」 と生 糸 価 格 は先 行 きま だ値 上 が りす る と予 想 して い る8)。 だ が 実 際 に は,3月12日 に な る とそ れ まで3500∼3600円 を維 持 してい た生 糸 価 格 は3300円 台 に まで 下 落 し,そ れ に伴 っ て 羽二 重 価 格 も暴 落 した9)。 ま た 同誌 は,輸 入 増 と生 産 増 加 の 結 果 と して 倉 庫 在 荷 はか な り急 速 に増 加 して お り,そ の 例 と して 綿 糸,豆 類,小 麦 粉,米,砂 糖,海 産 物,綿 織 物, 毛 織 物,印 度 綿,毛 糸,麻 及 び麻 製 品,皮 革 及 び 同 製 品,洋 紙 肥 料,鉄 材, 雑 金 属 とい っ た商 品 を挙 げて い る。 そ して 「倉 庫 在 荷 に して 既 に さ うで あ る とす れ ば,卸 責 商 小 責 商 自身 の 倉 庫 に もま た堆 荷 が 案 外 多 い の で はあ る まい か 」 と述 べ,流 通 の 各 段 階 で 在 庫 が 急 増 して い るの で は ない か と推 定 して い る。 だが 在 庫 急 増 の 現 実 に直 面 して,こ れ が 仮 需 要 で あ り思 惑 す な わ ち投 機 の 結 果 で あ る と認 め はす る もの の,「 而 して此 の 思惑 は,昨 年 の初 夏 頃 か ら, 7)「 財 界概 観 」 『東 洋経 済新 報』 大 正9年3月13日 号,1ペ ー ジ 。 8)「 反動 後 の 生糸糸市 場 」 「東 洋 経 済 新 報』 大 正9年3月6日 号,7-8ペ ー ジ 。 9)「 北 国 新 聞 』 大 正9年3月13日 付 。

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ず つ と綾 い て 來 た」 と何 も特 記 す べ きこ とで は ない とす るの で あ る。 そ して そ の 思 惑 を支 えて きたの が 信 用 の 拡 大 で あ り,そ れ は ま だ続 く とす る。 そ の 根 拠 と して 同誌 が 挙 げ るの は,3月15日 に借 換 が 予定 され て い る 臨時 国庫 証 券1億 円で あ り,政 府 が 提 示 す る利 率 で は借 換 に応 ず る もの は少 な く, 多 くは現 金 償 還 され るで あ ろ う と同誌 は予 測 す る。 そ の 結 果 党 換 券 は増 発 され,信 用 の 拡 大 は続 く とい うの で あ る。 信 用 の 拡 大 は投 機 取 引 を支 え る こ とに な り,好 景 気 は持 続 す る こ とに な る。 だが 他 方 で 同誌 は 「景 氣 沸 騰 の 外 皮 の 内 に,旋 が て 之 れ を打 ち砕 くべ き種 子 が 既 に芽 を萌 き,か な り急 速 に成 育 しつ ・あ る こ とを獲 見 す る」 と述 べ, 反 動 の 兆 しが 見 え る とす る。 そ れ が 金 融 の 逼 迫 で あ る。 輸 入 代 金 支 払 い の た め に正 貨 が 減 少 して い る こ とか ら,や が て 日銀 は金 利 を引 き上 げ るの で は な い か とす るの で あ る。 ま た市 場 金 利 も上 昇 して お り,資 金調達 自体 も困難 に な って きて い る と同誌 は指 摘 す る。 そ の 一 例 と して 同誌 が 挙 げ るの は,業 績 良 好 で2割5分 の 配 当 を行 って い る紡 績会 社 が,思 惑 の ため 会社 と重 役 の 信 用 を使 い尽 くして しまい,2月 末の 支 払 い に窮 して,手 持 ち原 料 を転 売 した とい う例 で あ る。 つ ま り資 金 が 固 定 化 して しまい,必 要 な資 金 の 手 当 て が で きず,や む な く現 物 を処 分 しな けれ ば な らない 事 態 が 既 に発 生 して い たの で あ る。 これ を う けて 同誌 は今 後 正 貨 の 流 出が 顕 著 に な る と金 利 は さ らに騰 貴 し, 金 融 の 困 難 は普 遍 的 に な る。 そ の 時 に行 詰 りが 起 こ って,売 り惜 しん だ品, 買 い 占め た品 が 市 場 に氾 濫 す るで あ ろ う と不 況 の 到 来 を予 測 して い るが,そ れ で もそ の 行 詰 りが 起 こ るの は半 年 か 一 年 先 で あ り,短 期 的 に は この 好 景 気 は続 くと考 えて い た'°)。金 融 の逼 迫 につ い て は前稿 で述 べ た通 りで あ るが,同 誌 は この 影 響 が 出て くるの はか な り先 に な る と予 想 したの で あ る。 ま た一 部 の 製 造 業 で もバ ブ ル崩 壊 に先 だ って 製 品 価 格 の 暴 落 に直 面 した と こ ろが あ っ た。 そ の 代 表 例 が 羽 二 重 で あ る。 既 に述 べ た よ う に,生 糸 及 び絹 10)「 景 氣 沸 騰 の 眞 相 」 「東 洋 経 済 新 報 』 大 正9年3月13日 号,7-9ペ ー ジ 。

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桃 山学 院大 学経 済経 営論 集 第53巻 第4号 製 品 はバ ブ ルの 絶頂 期 に価 格 下 落 と在 庫 増 に見 舞 われ て い た'1)。羽二 重 の価 格 は,1月21日 に百 匁36∼37円 の 高値 を付 けて 以 降 低 落 を続 け,3月1日 に は同26円 に まで下 が って い た'2)。そ れが バ ブル崩 壊 の 前 週 に はつ い に暴 落 し, 機 業 家 で は休 業 者 が続 出 し,同 盟休 機 を行 う とこ ろ も出 て い た'3)。例 え ば 金 沢 地 方 で は生 糸 価 格 下 落 に伴 う羽 二 重 価 格 の 下 落 に よ り,機 業 家 は生 産 調 整 の ため に3月2日 か ら10日 また は15日 まで 休 機 した14)。 『北 陸 毎 日新 聞 』 は景 気 の い い 時 に は1疋 につ い て14,5円 か ら20円 の 利 益 が あ っ たの に,今 で は アベ コベ に 同 じほ ど損 す る こ とに な り,県 下 の8割 が 休 業 して い る。 価 格 が 暴 落 した ため に,休 業 して 職 工 に7割 余 の 給 料 を払 って い た方 が よい とい う状 況 に な っ た と述 べ て い る'5)。機 業 はい うな らば ミク ロ経 済 学 で い う 閉鎖 点 近 くに まで 追 い つ め られ て い たの で あ る。 この よ う な 事 態 に直 面 して 銀 行 も担 保 貸 出 を警 戒 して い る と報 じ られ た16)。 大 正9年2月 の 金 沢 組 合 銀 行14行 の預 金総 額 は24,833,325円 に対 して 貸 出総 額 は32,885,268円 とな り預 貸 率 は132.4%に 達 した'7)。これ はそ れ だ け 貸 出資 金 が 固定 化 した こ と,即 ち不 良 債 権 化 して い る こ とを表 して い る。 この よ う にバ ブル 絶 頂 期 に,商 品 に よ って は価 格 暴 落 の ため 先 行 して 不 況 局 面 に入 って い る もの もあ っ たの で あ る。 この よ う にバ ブ ル崩 壊 の 予 兆 はす で に現 れ て お り,マ ス コ ミ もそ の 予 兆 を 認 識 して い たの だが,現 在 の 状 況 が 継 続 す る とい う現 状 維 持 の 見 方 が 依 然 強 か っ た こ とか ら,予 兆 を適 切 に評 価 す る こ とが で きず,そ れ が バ ブ ル崩 壊 に つ なが る との 判 断 を下 す こ とは なか っ たの で あ る。 11)拙 稿 「大 正9年1-2月 期 に お け る バ ブ ル 経 済 」(II)。 12)「 北 国 新 聞 』 大 正9年3月3日 付 。 13)「 羽 二 重益 不 況 」 「中外 商 業 新 報』 大 正9年3月16日 付 。 14)「 機業 引続 休 」 「北 陸 毎 日新 聞』 大 正9年3月15日 付 。 15)「 北 陸 毎 日新 聞 』 大 正9年3月16日 付 。 16)「 輸 出 羽 二 重休 場 」 「大 阪 毎 日新 聞』 大 正9年3月9日 付 。 17)「 大 阪 銀 行 通 信 録 』 第271号,大 正9年3月,銀 行 及 び 経 済 統 計 表20ペ ー ジ。

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大 反 動 の 兆 し この よ う に実 物 市 場 で もブ ー ム に陰 りが 見 えて い た。 在 庫 は増 加 し,羽 二 重 の よ う に生 産 制 限 を行 う とこ ろ もで て きた。 しか し人 々 は これ を もって バ ブ ル崩 壊 が 近 い とは考 え なか っ た。 ガ ル ブ レイス も述 べ て い る よ う に,バ ブ ル崩 壊 は崩 壊 した後 にそ の こ とが 判 明 す るの で あ り,バ ブ ル崩 壊 に直 面 した 時 にそ れ を認 識 す る こ とはで きない 。 そ れ はあ くまで も結 果 論 に過 ぎない 。 従 って,こ の 時 期 に人 々が バ ブル 崩 壊 を予 想 す る こ とはそ もそ も不 可 能 なの で あ る。 従 って 大 反 動 の 兆 し とは言 って もあ くまで も結 果 論 後 講 釈 に過 ぎ ない こ とに留 意 が 必 要 で あ る。 高 橋 亀 吉 は大 正7年 の 休 戦 後 の 不 況 の 際 に は人 々 は事 前 に これ を警 戒 して い たの に対 して,大 正9年3月15日 か ら始 まるバ ブル 崩壊,す なわ ち大 反 動 は予 想 外 の 突 発 事 件 で あ り,そ れ だ け に被 害 も甚 大 で あ っ た と述 べ て い る18)。 しか しバ ブ ル崩 壊 の 前 兆 が 全 くなか っ た わ けで は ない 。 前 節 で 述 べ た よ う に,実 際 に は,大 正9年 に入 って 市 場 は変 調 の 兆 しを見 せ て い た。 砂 糖 市 場 で は供 給 が 過 剰 気 味 とな り,先 物 ・現 物 と もに取 引 が 成 り立 た な くな って い た。 生 糸 定 期 市 場 で もニ ュ ー ヨー クで の 在 庫 が6万8千 俵 とふ く らんで い る ため,引 き合 い が な くな る とい う状 況 とな り,相 場 は下 落 の 様 相 を強 め て い た19)。他 方,綿 糸,米,株 式 は 依 然 高 値 を続 け て い た 。 高 橋 自身,3月15日 の株 式 市 場 暴 落 以 前 に そ の兆 候 は あ っ た こ と を認 め て い る。 そ のエ ピ ソー ドと して彼 は 内 田信 也 の例 を挙 げて い る2°)。内 田 は第一 次 大 戦 勃 発 時 に船 会 社 を設 立 して 大 成 功 を収 め,山 下 亀 三 郎,勝 田銀 次 郎 と と もに船 成 金 と して 名 を はせ た人 物 で あ るが,内 田 自身 そ の エ ピ ソー ドを次 の よ う に述 べ て い る。 18)「 財 界 変 動 史 』243-244ペ ー ジ 。 19)「 中 外 商 業 新 報 』 大 正9年3月1日 付 。 20)「 財 界 変 動 史 』206ペ ー ジ 。

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くマ マ  「大 正9年3月 は じめ,僕 は丁 度 上 京 中 だつ たが,か ね て規 交 の あつ た 興 銀f裁 土 方 久 徴 氏 を訪 う と,氏 が 「ど う も財 界 の 様 子 が 攣 だ よ,氣 をつ け な い とい け ませ んぜ 』 ぐママ ラ と注 意 し て くれ た。 そ こ を僻 して更 に前 月 の2月 に議會 を解 散 し,4月 の 総 選墨 を控 えて 多忙 中 の原 敬 首相 を訪 問 したが,原 首 相 か ら もまた 『ど うや ら経 濟 界 の様 子が お くママ   か し く な つ た よ,茂 木 総 兵 衛 君 な ど 山 本 達 雄 君 を 通 じて 前 か ら選 基 資 金 を 頼 ん で 置 い た の だ が,引 受 け て は く れ て い た も の ・,そ れ が ど う も 出 せ な く な つ た よ う だ か ら ね 』 と い う打 明 け 話 を 聞 い た 。 僕 は そ こ で こ れ は い か ん,來 る べ き もの が 遂 に や っ て 來 た と 畳 悟 し て,直 ち に 英 米,イ ン ドそ の 他 各 地 の 支 店 宛 に 『Panicwillbesoon,dispose offyourgoodsinyourhands(恐 慌 近 し,手 持 品 全 部 責 彿 え)』 と 電 命 し た 。」 (内 田 信 也 『風 雪 五 十 年 』 実 業 之 日 本 社,昭 和26年,30-31ペ ー ジ) 内 田が 売 り払 っ たの は,株 式 で は な く彼 の 商 事 会 社 が 保 有 して い た商 品 で あ り,彼 の 船 会 社 で あ る内 田汽 船 が 保有 してい た 船舶 で あ った 。彼 自 身,「 こ ん な次 第 で 内 田汽 船 の 第 一 次 欧 州 大 戦 結 末 時 にお け る締 め く ・ りは,大 成 功 を とげ た わ けで あ るが,山 下鞄 三 郎,勝 田銀 次 郎 君 な どはあ た ら機 を失 して, 莫 大 な借 金 を背 負 い 込 む こ とに なつ た」 と自 らの 先 見 の 明 を誇 ら しげ に述 べ て い る21)。 前 節 で 述 べ た よ う に,バ ブル 崩 壊 以 前 に商 品 に よ って は価 格 の 暴 落,生 産 不 振 の 局面 に入 って い た もの もあ っ た。 事 実,3月 中旬 か ら株 価 や商 品価格 の 下 落 は始 ま って い た。 東京 市 場 で は,株 価 は3月ll日 か ら3日 連 続 で暴 落 し て い る。 これ を受 けて3月15日 付 の 『中外 商業 新 報 』 は株 式 市 場 にお い て株 価 が 暴 落 し始 め た と伝 えて い る。 そ の 原 因 と して 同紙 は金 融 梗 塞 が 発 端 と し なが ら も,そ の 根 本 原 因 は買 い す ぎの 崇 りで あ る と して,今 回の 株 価 下 落 は 株 式 市 場 に於 け る調 整 局 面 を示 した もの で あ る と し,こ の 局 面 は しば ら く続 く と した22)。 『万 朝 報 』 もバ ブル 崩 壊 直 前 に先 行 きに対 して 警 戒 感 を示 して い た。 21)前 掲 同 書,32ペ ー ジ 。 22)「 株 式 界 反 動 來 」 「中外 商 業 新 報』 大 正9年3月15日 付 。

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「大 引 立 會 禁 止 に就 ての 紛 擾 や 日銀 の 第 三 次 利 上説 及 び期 米 の暴 落 生 糸糸綿糸糸の不 況 な どに て,俄 然 氣崩 れ状 態 に陥 りた る株 式相 場 は,狼 狽 筋 の投 物 一 巡 と共 に,休 日 前 引 際 は梢 や 落 着模 様 を呈 した り,然 し貿 易 の逆 調,正 貨 の漸 減 資 金 の株 券 化,銀 塊 の 崩 落00米 財 界 の不 振 等,数 へ 來 れ ば,悲 観 材 料 尚 ほ 砂 か ら ざ るの み な らず,人 た と 氣 も是 迄 と違 ひ,高 値 は漸 く買 警 戒 の 風 情 なれ ば,縦 ひ今 後投 機 熱 の 飴 勢 を騙 つ て, 再 び 買 進 ま る ・場合 あ りとす る も,相 場 は最 早戻 責 の 時 期 に入 れ る もの ・如 し,左 れ ば買 方 た る もの 又 一 考 を要 す べ し」 (「目先 強 弱 如 何 」 「万 朝 報 』 大 正9年3月15日 付) こ こで は貿 易 の 逆 調 や 金 融 梗 塞 とい っ たマ ク ロ的 な経 済 状 況 の 変 化 に並 ん で 株 価 暴 落 の 原 因 と して 米 や 生 糸 とい っ た商 品 市 場 で の 暴 落 が 挙 げ られ て い る こ とに注 意 が 必 要 で あ る。 後 で 述べ る よう に3月15日 の株 価 大暴 落 は商 品 市 場 と連 動 した もの で あ っ た と考 え られ るか らで あ る。 例 え ば,堂 島市場 で は3月10日 に期 米 が 暴 落 して い る23)。期 米 は13日 に も 暴 落 した24)。 そ もそ も米 につ い て は大 正8年 の 産 米 は豊 作 で あ る こ とは既 に知 られ て い た。 しか しそ れ で も米 価 は上 昇 を続 けて い たの で あ る。 そ の 原 因 は農 家 の 主 要 生 産 物 で あ る米 と生 糸 の 価 格 が 暴 騰 し,農 家 所 得 が 増 加 した こ とか ら,農 家 は米 を売 り急 ぐ必 要 が な くな り,む しろ米 価 に対 して 先 高 感 を持 つ よ う に な って,米 の 売 り出 しを抑 制 した,つ ま り売 り惜 しみ を した こ とにあ る。 つ ま り投 機 思 惑 が 供 給 を抑 制 しそ れ が 米 価 高 騰 を引 き起 こ して い たの で あ る。 だが この よ う な不 自然 な状 況 はい つ まで も続 く訳 で は ない 。 い ず れ 農 家 が 保 有 す る米 は処 分 され ね ば な らない 。 処 分 す るの は もはや 時 間 の 問 題 とな って い た。 そ して この 時 期 に な る と農 家 は もはや 持 ち こ た え られ な くな って い た。 こ の 時 期 に な る と軟 質 米 が 変 質す る ため に売 り出 さ ざる を得 ない状 況 に な った 。 ま た春 を迎 え,肥 料 の 仕 入 れ な ど耕 作 の 準 備 の ため に も資 金 が 必 要 とな って 23)「 期米 暴 落 」 「大 阪 毎 日新 聞』 大 正9年3月11日 付 。 24)「 期 米 再暴 落 」 「大 阪 毎 日新 聞』 大 正9年3月14日 付 。

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桃 山学 院大 学経 済経 営論 集 第53巻 第4号 い た。 『中央 新 聞 』 は最 近 の 傾 向 と して,株 価 と米 価 が 連 動 す る よ う に な っ た, これ は農 家 が 株 に手 を 出す よ う に な っ た ため で,今 日,株 価 下 落 に よ り農 家 の 資 金 繰 りが 悪 くな っ たの と,米 の 変 質 期 が 近 づ い て きた こ とか ら,農 家 が 米 を手 放 す よ う に な り,そ の 結 果,米 の 価 格 も下 落 して い る と報 じて い る25)。 資 金 繰 りの 点 で 追 い つ め られ て い た農 家 は,こ れ まで に も郵 便 貯 金 を引 き 出 した り,地 租 を滞 納 まで して 資 金 の や り繰 りを付 けて い たの が,そ れ で も 持 ち こた え られ ず に米 を手 放 す よ うに な った の で あ る26)。さ ら には政 府 が保 有 す る外 米 の 払 下 も予 想 され た こ とが,米 価 の 下 落 に拍 車 をか け た27)。 同様 に綿 糸 や 生 糸 の 相 場 も下 落 し始 め て い た。 一 般 的 に は大 正 バ ブル の 崩 壊 つ ま り戦 後 恐 慌 は大 正9年3月15日 か ら始 まっ た と され るが,実 際 に はそ れ 以 前 か ら各 市 場 で 価 格 の 下 落 は始 ま って い たの で あ る。 バ ブ ル崩 壊 直 前 の3月13日 付 『中央 新 聞』 は,最 近 の 金融 梗 塞 と貿 易 赤 字 が 景 気 の 悪 化 につ なが る こ とを懸 念 し,「 市場 の景 氣 は漸 次悪 化 す べ く,現 に 最 近 株,米,綿 糸 市 場 が 不 味 の 成 行 を呈 せ るが 如 き,或 は 中旬 の 金 融 市 場 が コ ール3銭 を唱 ふ るが 如 き,何 れ も注 目に値 す る現 象 と謂 はね ば な らぬ 」 と して 景 気 の 先 行 きに警 戒 感 を示 して い る28)。 そ して バ ブ ル崩 壊 の3月15日 当 日に発 行 され た 『万 朝報 』 に は財 界 の破 綻 を予 期 す る よ う な社 説 が 掲 載 され て い る。 「財界 の前 途 には,恐 ろ しい 妖 雲 が漂 うて居 る,記 者 は 昨 年11月 本欄 で 『経 濟 界 の浮 うは 動』 と題 して,浮 ッ調 子 な財 界 の傾 向 を指摘 して早 晩 「恐慌 來 』 の 日あ る を豫 言 して も 置 い た が,此 の 日は刻 々 に近 づ い て,財 界破 綻 の 日は,既 う 目捷 の 問 に迫 つ て居 るや う な氣 が して な ら ない 。」 (「財 界 の 破 綻 期 」 「万 朝 報 』 大 正9年3月15日 付) 25)「 中央 新 聞 』 大 正9年3月15日 付 。 26)「 財 界 反動 の 第 一 犠牲 」 「京 都 日出 新 聞』 大 正9年3月18日 付 。 27)「 小 樽 新 聞 』 大 正9年3月12日 付 に,米 価 高 騰 に対 応 す るた め,政 府 が60万 石 保 有 して い る 保存 米 の うち10万 石 以 上 を払 い 下 げ る予 定 で あ る と報 道 され て い る。 28)「 財 界 警 戒 時期 」 「中 央新 聞』 大 正9年3月13日 付 。

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そ の 理 由 と して,同 紙 は現 在 の 好 況 の 原 因 は貿 易 黒 字 にあ っ たが,そ の 貿 易 の 赤 字 が 続 け ば好 況 の 原 因が 根 本 か ら覆 され るか らだ と述 べ て い る。 同紙 は破 綻 を避 け よ う とす る な らば 通 貨 の 縮 小 を図 って,物 価 を下 げ るべ きだ と した。 そ の ため に は 日銀 に よ る金 利 引 き上 げ を求 め た の で あ る。 だが この 時 点 で は既 に手 遅 れ とな って い た。 バ ブル崩壊 そ して15日 月 曜 日 の 株 式 市 場 は 東 株80円 以 上,大 株61円50銭 下 落 した の を は じめ,軒 並 み50∼60円 か ら80円 以 上 も下 落 し,ま さ に 恐 慌 相 場 と な っ た(表1)。15日 の 株 式 市 場 の 様 子 を 『中 外 商 業 新 報 』 は 次 の よ う に 報 じ て い る 。 「15日 の 場 面 は買 方 の 恐怖 的投 物 績 出 し,先 づ 東株 の 四五 十 圓 方暴 落 せ るに,益 々場 面 の 氣 配 を険 悪 な ら しめ,汽 船株 は割 合 下 げ 澁 りたれ ど も富士 紡 は十 五六 圓方 安 く殊 に鐘 紡 日清 紡 東 洋 紡 は何 れ も四 六十 圓方 の 滲落 を演 出 し,砂 糖 株 は下 げ の程 度 割合 激 しか らざ り しも尚 二三 十 圓方 激 落 し,又 前 來 増配 増 資 説 に て無 暗 に買 煽 られ たる端 株 も す は成行 の投 げ に封 し相 手 の少 き ま ・下 落 振 り も激 烈 に して 毛織 毛 斯 は四五 十 圓方 日活 製 麻 は 三 四十 圓 方 製氷 製 粉 石 油 の類 も三 五 十 方 の暴 落 を演 じ,其 他 一禮 に一 二 十 圓方 の 激 落 を告 げ て立 會 の 夜 に入 りた る杯 全 く日露 戦 後 の暴 落 時 代 に も見 ざ り し所 也 。」 (「定 期 一 齊 暴 落 」 「中外 商 業 新 報 』 大 正9年3月17日 付) ま さ に市 場 は 日露 戦 争 後 の 暴 落 以 来 の 暴 落 に直 面 したの で あ る。 株 価 が 暴 落 す る だ けで な く,取 引 高 も57万 株 を越 えて新 記 録 とな り,市 場 は正 に セ リ ング ク ラ イマ ックス 状 態 とな っ た。 暴 落 は株 式 市 場 だ けで な く,期 米 や 綿 糸 市 場 に も波 及 し,市 場 は転 機 を迎 え た。 東 京 株 式 市 場 の う ち定 期 市 場 は,株 価 暴 落 に よ って 生 じた追 証6千 数 百 万 円の 徴 収 の ため,16,17日 を 臨時 休 業 した。 株 式 の 現 物 市場 も以 下 の記 事 に 見 る よ う に,16日 の午 後 に な っ て立 ち会 い を 中止 して い る。

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桃 山学 院大 学経 済経 営論 集 第53巻 第4号 「16日 定 期 休 會 中の 現 物氣 配 は一 派 の庭 分 物 や 氣 配 に雷 同す る 責物 杯 にて 益 々 人氣 を 動 揺 せ しめ,其 結 果 市 場 の 秩 序 を混 乱 す る嫌 ひ あ り と し,現 物 業 者 は16日 午後2時 頃 申 し合 せ て 現 物 取 引 を一 時 休 止 す る事 とせ り。而 して17日 の休 會 中 も市場 内 の現 物 取 引 は休 止 す る に内 定 せ り。」 (「株 式 現 物 休 止 」 「中外 商 業 新 報 』 大 正9年3月18日 付) 大 阪 で は追 証1700万 円 が全 部納 入 され た こ とか ら16日 は立 ち会 い を行 っ たが,後 場 は臨 時 休 業 とな っ た。 また東 京 期 米 市場 も米 価 暴 落 の た め16日 の 途 中で 立 会 停 止 に な って い る。 『万 朝 報 』 は3月16日 付 の 夕刊 つ ま り15日 発 売 の 夕 刊 で 株 式 や 商 品 市 場 で の 暴 落 を報 じ,こ の暴 落 に よ り追敷 即 敷5000万 円が 発生 し,こ れ を銀 行 か ら調 達 す る ため に市 場 は 翌 日休 会 す る で あ ろ う と した。 そ の 後 同紙 は16日 付 の 朝 刊 で 即 追 敷 は計1億 円 に達 した と報 じて い る。 人 々 は 日露 戦 争 後 の 恐 慌 よ り も惨 め な状 況 に な るの で は ない か と恐 怖 した。 『時 事 新 報 』 は株 価 暴 落 が買 いす ぎの反 動 にあ る と しなが ら も,「端 株 中 に は讃 振 金 の 三 四 倍 程 も一 氣 に暴 落 せ るあ りて,不 穏 な る商 状 を現 は した る に 拘 らず,之 れ に封 し取 引 所 が 何 等 の 施 策 な く立 會 を績 行 せ る は少 し く無 謀 な り との 非 難 も少 か らざ り き」 と述 べ,異 常 な株 価 下 落 に対 して 取 引 を続 行 し た取 引 所 の 判 断 は適 切 で なか っ た と して い る29)。 29)「 株 大 混 齪 」 『時 事新 報』 大 正9年3月16日 付 。

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表1大 正9年3月15日 前 後の株価 と商 品価格 3月1日 高 値 東 株 新545.0 日 本 郵 船299.5 鐘 紡 新544.9 3月13日 大 引 484.0 200.9 519.2 3月15日 大 引 399.9 192.1 455.0 3月17日 395.0 193.9 454.8 東 京 期 米 取 引52.19 大 阪 三 品 綿 糸649.1 横 浜 生 糸346。7 (「財 界 変 動 史 』246ペ ー ジ) 50.28 633.5 330.1 48.36 614.0 313.8 48.35 621.5 319.7 この暴 落 に狼 狽 した のか,16日 付 の 『中央 新 聞』 は,「 目先 き買方 の利 喰買 退 きに依 つ て 縦 令 多 少 の 引 返 しあ り とす る も,戻 り値 に は地 方 筋 よ り邊 れ 馳 せ の 投 げ物 も尚 ほ殺 到 す べ く庭 分 費 り も現 は るべ けれ ば 到 底 此 儘 眞 の 挽 同 を見 ん こ と甚 だ困 難 と看 倣 され居 る」 と非 常 に悲 観 的 な見 方 を述べ たが3°),ま さ にそ の 通 りの 展 開 とな る。 す で に市 場 間の 連 関 を報 じてい た 同紙 は17日 に は綿 糸市 場 の暴 落 が他 の市 場 に与 え る影 響 を憂 慮 して い た。 「唯 最 も憂 ふ べ き は綿 糸 の前 途 如 何 で あ る。 當 業者 は何 れ も高値 の先 約 取 引 を締 結 し 居 れ ば 綿 糸 の 一 度暴 落 に次 ぐ暴 落 を以 てせ ば,績 々地 方機 業家 に破綻 者 現 出すべ く, 之 が 財 界 に及 ぼす 影 響 は又 株 式 に打 撃 を與 ふ る こ と大 な るべ く,又 生 糸 は15日200 圓 の暴 落 を告 げ た るが 尚暴 落 を重 ね る に於 て は之 亦株 界 に波 動 を與 へ る事 とな るべ く, 定 期 市 場 が17日 如 何 な る成 行 を呈 す るか 頗 る興 味 が あ る」 (「三 定 期 市 場 観 」 「中央 新 聞 』 大 正9年3月17日 付) この よ う に 同紙 は株 ・米 ・綿 糸 ・生 糸 の 諸 相 場 に密 接 な連 関 が あ り,一 つ の 市 場 の 暴 落 が 他 の 市 場 に波 及 す る こ とを懸 念 して い たの で あ る。 この 株 式 30)「 中 央 新 聞』 大 正9年3月16日 付 。

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桃 山学 院大 学経 済経 営論 集 第53巻 第4号 市 場 と商 品 市 場 の 連 関 につ い て は,後 日,高 橋 亀 吉 も指 摘 して い る。 「当 時株 式 投 資 は,商 品投 機 に従 属 す る資 金 融通 手 段 とな っ て いた こ とで あ る。即 ち, 有 力 な 商人 達 は主 力 を商 品思 惑 に集 中 して,余 力 を株 式 に用 い,金 融 の逼 迫 その他 で, 資 金 的 必要 を生 じた場 合 に は,株 式 を投 げ て 資金 を得,以 て商 品 を維 持 す る立 場 にあ っ た。 例 え ば3月15日 の 株 式 崩 落 は,綿 糸,期 米 の買 方 が,株 式 を投 げ た こ とが 動 因 だ と見 られ てい た。 しか して,こ の事 実 は また,4月7日 以 降 の株 式 再 崩 落 の 中心 原 因で あ っ た」 (「財 界 変 動 史 』255ペ ー ジ) 高 橋 は当 時 の 投 機 の 中心 は商 品 市 場 で あ り,株 式 市 場 は商 品 投 機 の 資 金 調 達 の 場 とな って お り,3月15日 の株 価 暴 落 は,綿 糸 や 期米 の買 方 が 資金 調 達 の ため に株 を投 げ売 り した こ とが 原 因で あ る と見 て い た。 だが この 株 式 市 場 の 暴 落 は他 の 商 品 市 場 に も拡 大 して い く。 株 価 暴 落 は生 糸 市 場 に も影 響 を与 え た。 生 糸 価 格 は1月 の 最 高 値 か ら下 落 を続 け て い たが,3月15日 に は定期 先 物 が20円 下 落 して313円80銭 とな り, 現 物 は250円 下 落 して3450円 とな っ た。 現物 価 格 は1月 の最 高値 か ら約1050 円の 下 落 とな っ た。 大 阪 で は株 式 や 商 品市 場 は15日,16日 と開 かれ て い たが,暴 落 に見 舞 われ た。 そ の ため17日 に は東 京 とな らび大 阪 の株 式 市 場 は休場 とい う こ とに な っ た。 もっ と も米 や 綿 糸 とい っ た商 品 市 場 は開 か れ て い る。 そ の 後 株 価 はや や 戻 した もの の,22日 か らは再 び下 落 し,時 と して反 発 は す る もの の,下 落 傾 向 は変 わ らなか っ た。 諸 相 場 の 暴 落 は,相 場 に手 を染 め て い た農 家 に打 撃 を与 え,米 の 品 質 も変 化 す る時 期 と重 な って,米 価 格 が 下 落 して い る に も拘 わ らず,東 北 北 陸 各 方 面 か らの 米 の 積 み 出 しが 増 加 して 各 地 の 駅 に は扱 い きれ ない ほ ど米 俵 が 集 ま って い る と報 じ られ た31)。 31)「 国 民 新 聞』 大 正9年3月30日 付 。

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バ ブル崩壊直後の金融市場 す で に 日銀 の 貸 出が 厳 重 に な って い る こ とは前 稿 で触 れ たが,3月15日 の 金 融 市 場 は更 に引 き締 ま って い た。 くママ ラ 「定 期 市 場 崩 落 を始 め一 般 財 界 の 前 途 愈 々樂 観 を免 れ ざ るの象 徴 顯 著 とな れ る こ と と て 金 融 市 場 は更 に強 調 を示 現 せ り。 即 ち15日 市 中市 況 は コー ル 日歩 午 前 午後 を通 じ て3銭 乃 至3銭1厘 の取 引 行 は れ,而 も取 手 のみ 多 くして 出手 極 め て 少 く無 條 件普 通 物 其 他殆 ど取 引 な く,又 割 引 日歩 も普 通 最低2銭6厘 乃 至7厘 唱 へ と幾 分 引 締 の商 状 を呈 せ り。 而 して 先行 も公 債 償 還金 の或 は市場 を潤 す もの あ るべ きが,夫 とて期待 極 め て 少 か るべ き を以 て 強 調 は依 然 持 績 せ らるべ し。 尚13日 日銀 帳 尻 は貸 出 高前 日に 比 し72萬 飴 圓 を減 少 せ る外 預 金 の 引 出 あ り,R換 券 は350絵 萬 圓 を増 加 して11億 8724萬 鯨 圓 と な り,同 時 に限 外 獲 行 は350鯨 萬 圓増 の1億3280鯨 萬 圓 と なれ り。」 (「金 融 更 に強 調 」 「中外 商 業 新 報 』 大 正9年3月17日 付) 株 価 ・商 品 価 格 の 暴 落 に よ り証 拠 金 の 積 み 増 しを求 め られ た人 々 は な りふ り構 わず 資 金 の 調 達 に走 っ た の であ る。 これ に対 して 資金 の 出 し手 は少 な く, 限 外 発 行 に よ り党 換 券 は増 加 したが,そ の 増 加 率 は わず か0.3%で しか なか っ た。 そ の ため 金 融 は梗 塞 した ま ま とな り,臨 時 国 庫 証 券 の 現 金 償 還 もそ れ ほ どの 金 融 緩 和 効 果 を持 た ない だ ろ う と予 想 され て い た。 そ れ で も 『中外 商 業 新 報 』 は,3月18日 に社 説 と して株 式 暴 落 を論 じてい る 中で 「今 日の 封 外 貿 易 の 逆 調,金 融 の 強 調 等 は,果 して 株 式 市 場 に恐 慌 的 状 態 を惹 起 せ しめ た る人 氣 作 用 の 合 理 的 根 擦 を有 す るか 」 と述 べ,貿 易 赤 字 や 金 融 逼 迫 が 株 式 市 場 の 下 落 を引 き起 こ した とす る説 明 に対 して 疑 問 を投 げ か けて い る。 つ ま り貿 易 赤 字 や 金 融 逼 迫 は株 式 市 場 の 暴 落 を引 き起 こす ほ ど 深 刻 な状 態 に は ない と同紙 は主 張 したの で あ る32)。こ こに もこれ まで のバ ブ ル の 幻 影 を引 きず り現 状 が 見 え ない 状 況 が 現 れ て い る。 32)「 財 界 の状 勢 」 「中外 商業 新 報』 大 正9年3月18日 付 。

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桃 山学 院大 学経 済経 営論 集 第53巻 第4号 他 方,『 門 司新 報 』 は暴 落 直後 に株 価 下 落 の 原 因 と して, (1)日 本 銀 行 の 貸 出引 締 の 態 度 (2)財 界 の 拡 大 と物 価 騰 貴 (3)中 央 資 金 の 地 方 移 動 (4)事 業 勃 興 に よ る資 金 の 減 少 を挙 げ,特 に 日本 銀 行 の 貸 出態 度 が 厳 し くな って い る こ とが 銀行 の資 金 欠 乏 の原 因 なの だ と した33)。バ ブル 崩壊 の原 因 につ い て は後 に取 り上 げ る。 他方,市 場 暴 落 の翌 日16日 の 日銀貸 出は,前 日比860万9千 円増 の5億lll7 万7千 円,覚 換 券 発 行 額 も467万7千 円増 のll億9202万1千 円 とな り,制 限 外 発 行 額 も517万9千 円増 の1億3806万4千 円 と資 金供 給 をや や増 や して い る。 そ の ため コ ー ル金 利 は16日 午 前 中の 最 高3銭1厘5毛 か ら2銭7∼8 厘 に まで や や 低 下 した。 しか しバ ブ ル崩 壊 後,市 中銀 行 は一 層 貸 出 を制 限 す る よ う に な っ た。 例 え ば,京 都 組 合 銀 行 で はバ ブル 崩 壊 後,手 形 取 引 を制 限 す る と と もに貸 出金 利 を引 き上 げて い る。 「京 都 組 合 銀 行 は本 春 來 貸 出 に封 して は手 心 を加 へ 投 機 抑 制 の態 度 を採 り來 れ る と織 物 商 が從 來 の三 ヶ月又 は半 期 の 長期 取 引 を慶 止 し月末 決 算 に改 善 せ る よ り各 地 方 に向 け長期 掛 金 にて 取 引せ る各 商 店 は融 通 資 金 の 圓滑 を訣 くに 至 り,商 品 殊 に織 物 類 は氣 迷 ひの 姿 に て早 晩 商況 悪 化 の 形 勢 に あ る よ り,組 合 銀 行 は 更 に貸 出制 限 の基 に出づ べ く3月19日 臨 時 絡 會 を 開 き,同 所 手形 と して 取 引 し來 れ る大 阪東 京 の 雨 手形 を 同19 日 よ り腹 止 して 他所 手 形 と看倣 す と共 に 日歩2銭8厘 を2銭9厘 又 同 地手 形 日歩2銭 7厘 を2銭8厘 に又3月22日 よ り貸 出 日歩2銭7厘 を2銭9厘 に引 上 げ た り」 (「大 阪 銀 行 通 信 録 』 第271号,大 正9年3月,84ペ ー ジ) 銀 行 の 貸 出態 度 が 厳 格 に な っ た こ とは次 の 『大 阪 毎 日新 聞 』 の 記 事 で も明 らか で あ る。 33)「 財 界 逆轄 の 兆象 」 「門 司 新 報』 大 正9年3月17日 付 。

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「最 近 新 設 増 資 會 社 の株 金 梯 込 の 激 増 した るた め株 金 の 彿 込 み に差 支 へ,資 金 の貸 出 を銀行 に仰 ぐもの 影 し く増 加 した る等 一 般 の 資金 需 要 激 増 一方 と なれ り。然 るに之 れ と正 反封 に各 銀 行 の手 許 資 金 激 減 し,預 金 亦 一 向増 加 の模 様 な きた め 銀行 の貸 出態 度 益 々強硬 とな り,資 金 貸 付 日歩 の如 き一 流 手 形 に封 して は2銭5,6厘 見 當 に て貸 出 し 居 れ る も,憺 保付 割引 手 形 又 は 一般 貸 付 け に至 りて は,今 や 日歩3銭 見當 の高利 にあ ら ざれ ば容 易 に貸 出 にKぜ ず 」 (「長 期 金 融 益 困難 」 「大 阪 毎 日新 聞 』 大 正9年3月26日 付) そ れ で な くて も,投 機 に 手 を 出 し た 人 た ち は 追 加 担 保 の 提 供 を 求 め られ, 手 許 の 資 金 繰 り は い よ い よ 苦 し く,投 げ 売 り を 余 儀 な く さ れ た の で あ る 。 金 融 梗 塞 の 指 標 と して,手 形 交 換 高 を み る と,大 正9年3月 上 半 期 は21億 2000万 円 だ っ た も の が,同 下 半 期 に は20億1500万 円 に,さ ら に4月 上 半 期 に は17億9400万 円 と急 減 して い る34)。 表II東 京 組 合 銀 行 各 種 残 高 3月20日 貸 付 金908,797 当 座 貸 越167,085 割 引 手 形650,177 4月17日 877,706 197,440 622,171 (出 所:「ダ イヤ モ ンド』大 正9年5月1日 号,61ペ ー ジ) (千 円) 増 減(▲ は 減 少) X31,091 30,355 ×28,006 表Hを 見 て も,東 京 組 合 銀 行 の 貸 付 金 と割 引 手 形 は減 少 し,当 座 貸 越 は増 加 して い る。 これ は当 座 貸 越 は銀 行 側 と して も拒 否 しづ らい もの で あ るの に 対 し,貸 付 と手 形 割 引 に対 して 銀 行 側 が 消 極 的 に な っ た こ とを示 して い る。 そ の 結 果,資 金 の 借 り手 は借 入 や 手 形 割 引 の 代 わ りに当 座 借 越 で 資 金 をつ な い だの で あ る。 34)「 金 融 梗 塞 の 實 勢 」 「ダ イ ヤ モ ン ド』 大 正9年5月1日 号,61ペ ー ジ 。

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桃 山学 院大 学経 済経 営論 集 第53巻 第4号 銀 行 は準 備 金 を積 増 した こ とか ら,短 期 金 融 市 場 に は資 金 を 出す よ う に な っ たが,長 期 貸 し出 しに は応 じなか っ た。 そ の ため 『ダ イヤ モ ン ド』5月21 日号 に よ る と,コ ール 金 利 は低 下 して 翌 日払 い1銭 前 後,交 換 後 で は7,8厘 まで に な る一 方,割 引 日歩 は商 業 手 形 最 低2銭9厘,普 通3銭1,2厘 と高 止 ま り した ま まで あ っ た。 さ らに下 旬 に な る と,23日 に借 換 臨 時 国庫 証 券 の 第二 回払 込(50円)が あ り,為 替 銀 行 も資 金 を吸 収 しよ う と した ほか,株 式 の受 け渡 し代 金9727万 円, 納 税 資 金6300万 円,年 度替 わ りの 国庫 金 取 扱 銀 行 検 査 用 見 せ 金3000万 円 と 巨 額 の 資 金 需 要 が 一 度 に発 生 した。 他 方,正 貨 は急 激 に減 少 した。3月31日 時 点 の 正貨 保 有 額 は18億7400万 円で,3月15日 か ら4300万 円 も減 少 した35)。 これ に対 して 日本 銀 行 は貸 し出 しを増 加 させ た。 そ の 結 果3月 末 の 一 般 貸 出高 は6億7662万8千 円 に 達 し,党 換 券発 行 高 は13億6805万6千 円,制 限 外 発 行 高 も3億2730万8千 円 とな っ た 。 これ は3月16日 に比 べ て,貸 出高 は1億6545万1千 円,見 換 券発 行 高 は1億7603万5千 円,制 限 外 発 行 高 は 1億8924万4千 円 そ れ ぞ れ増 加 して い る。 とこ ろが 『東 京 日 日新 聞 』 は これ が 日銀 の 放 漫 貸 付 の 結 果 で あ る と して 日 銀 を批 判 した。 「通 貨 膨 脹 の 弊 は今 更 言 はず,當 局 者 も亦 悟 る とこ ろあ りて,通 貨 牧 縮 に つ き不 断 の 注 意 を怠 らず と稻 し,又 ス タ ンプ付 手 形 責 出 は穏 健 な る通 貨牧 縮 の 妙 策 な りと激賞 し なが ら,割 引 率 を低 位 に置 きて 其 引上 げ を許 さ"る 爲,其 責行 は小 額 に止 りて通貨 牧 縮 に幾何 の致 果 な きは事 實 な り。當 局 者 は投 機 熱 の熾 盛 な る を恐 れ,日 銀 當 局 者 に 旨 を含 め て,投 機 熱 資金 の貸 出 につ き銀 行 業 者 に警 告 を與 へ なが ら,日 銀 は手 形 の割 引 を放 漫 に して,其 金 額 今 や2億9000万 圓 に上 れ る も,之 を獣過 して 顧 み ざるが 如 き は何 の 意 な るや,吾 輩 實 に之 を解 す る に苦 しむ な り。 唯,當 局 者 に して,投 機 市場 の 頓 挫 に 驚 き,通 貨 牧縮 は思 ひ も寄 らず,成 行 に放 任 せ ん の み と言 は ゾ,吾 輩 復何 をか 35)「 東 京 日 日新 聞』 大 正9年4月8日 付 。

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言 はん 。」 (「党 換 券 膨 張 の 原 因」 「東 京 日 日新 聞 』 大 正9年4月2日 付) 確 か に この 批 判 はバ ブル 過 熱 期 に対 して は当 て は ま る。 だが す で にバ ブル が 崩 壊 して,株 式 ・商 品 市 場 で の 暴 落 が 止 ま らない なか,金 融 逼 迫 は改 善 さ れ ず,コ ール 翌 日払 い は3銭3厘 に まで 上 昇 したが,出 し手 は少 ない とい う 状 況 に な って い た36)。従 って,も しこれ 以 上 日銀 の貸 出態 度 が厳 し くなれ ば, 相 場 の 暴 落 は よ り激 しい もの に な り,経 済 は大 混 乱 に陥 っ た と考 え られ る。 確 か に 日銀 の 金 融 政 策 が 不 十 分 で あ っ た こ とは確 か で あ り,そ れ が バ ブ ル の 原 因 に な っ た と考 え られ るが,バ ブ ル崩 壊 後 の 貸 出 につ い て 非 難 す るの は 当 た らない 。 む しろ 日銀 の 貸 出政 策 は不 十 分 で あ っ た とす ら言 え る。 経 済 の 悪 化 の 主 原 因 を金 融 の 梗 塞 に求 め た もの と して,大 阪 商 業 会 議 所 が 4月16日 に政 府 に提 出 した意 見 書 が あ る。 そ の 内容 は次 の よう な もの で あ っ た。 「我 が 経 済 界 は最 近 急 転 直 下 の勢 を もつ て悪 化 し,各 種 定 期 市場 は混 乱 し,内 に在 つ て は 金融 急 激 に梗 塞 の結 果,一 般商 取 引 に甚 だ し き支 障 を来 た し,外 に対 しては為 替 資 金 欠 乏 の為,輸 出入 貿 易 は著 しい不 振 に陥 り,今 や 財 界 は暗 雲 を もつ て蔽 はる ・に 至 れ り。之 が 主 因 は金 融 の緊 縮 急激 に して そ の程 度 甚 だ し きに過 ぎた る に あ り,若 し 此 の 儘 に放 任 す るに於 て は確 実 な る事 業 界 に も破 綻 者 続 出 し延 て金 融 業者 に も危険 を 及 ぼ し,一 般 経 済 界 に一 大 恐 慌 を惹 起 す るの お そ れあ り。依 て此 際 政 府 に於 て適 当 な る応 急 策 を講 ぜ られ ん こ と を希 ふ 。」 (伊東 俊 雄 編 「大 阪 商 工 会 議 所75年 史 』 大 阪 商 工 会 議 所,昭 和30年,130ペ ー ジ) 意 見 書 は経 済 状 況 悪 化 の 原 因 を金 融 の 急 激 な緊 縮 にあ る と した。 そ の 意 味 で,バ ブ ル崩 壊 後 日銀 の とっ た救 済 策 は機 動 的 で は な く,不 十 分 な もの で あ っ た とい う こ とに な る。 36)「 銀 行 通 信 録 』 第69巻 第414号,大 正9年4月20日,3-4ペ ー ジ 。

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桃 山学 院大 学経 済経 営論 集 第53巻 第4号 臨時国庫証券借換 バ ブ ル崩 壊 後 の 金 融 市 場 を考 え る上 で 見 逃 せ ない ポ イ ン トに臨 時 国 庫 証 券 の 借換 えが あ る。大 正8年9月17日 に借 り換 え られ た 臨時 国庫 証 券 が3月16 日に償 還 期 限 を迎 え る こ とか ら,政 府 は2月26日 に シ ンジ ケ ー ト銀行 を招 い て 借 換 条 件 の 協 議 を行 っ た。 そ の 結 果,従 来 の 割 引 方 式 で は な く利 付 方 式 に す る こ と,利 回 りを乗 換 年6分9厘 余,現 金 応 募 年6分8厘 余 と し,利 払 い も従 来 の 年2回 か ら4回 にす る こ とに決 定 した37)。 政 府 は2月27日 付 の 官報 で,臨 時 国庫 証 券(る 号)1億 円発 行 を告 示 した。 この 償 還 期 限 は大 正13年3月1日,利 率 年5分,発 行 価格 現 金 応 募94円50 銭,乗 換 応 募94円,利 子 支 払 期3月,6月,9月,12月 の各1日,初 期 利 子 1円6銭 と し,申 込 期 間3月10日 よ り同12日 まで,16日 に募 入 決 定,払 込 期 日は第1回3月16日5円(証 拠 金振 替),第2回3月23日50円,第3回 4月5日39円50銭 で あ った 。 この利 回 りは現 金 応 募 で6分8厘 余,乗 換 応 募 で6分9厘 余 で 乗 換 前 の6分5厘7毛 よ り も有 利 とな って い た38)。 『中央 新 聞 』 は この 臨 時 国庫 証 券借 換 発 行 につ い て,「 右 割 引 國庫 言登券 は大 部 分 市 場 に消 化 せ られ て るの で 乗 換 希 望 者 甚 だ多 く,又 都 鄙 諸 銀 行 共 財 界 の 將 來 に備 ふ る爲 め 増 資 其 他 に依 りて 得 た る資 金 にて 所 有 公 債 を増 加 せ ん とす る一 般 の 傾 向 あ り。 之 等 の 向 よ り もN募 砂 か らず 。 期 日前 豫 め 申込 み た る高 既 に1億 圓 を超 過 した」 と売 行 良 好 で あ る と述 べ て い る39)。 これ に対 して 『東 洋 経 済 新 報 』 は次 の よ う に コ メ ン トして い る。 「斯 くの 如 く新 言登券 は,奮 言登券 に比 す れ ば利 廻 りの鮎 に於 て 若干 放 資 家 の利 益 と な る 計 算 な れ ど,然 し乍 ら,此 の 謂 ふ に足 ら ざ る利益 の爲 め に 四 ヶ年 に亘 る 長期 讃 券 に果 37)「 時 事 新 報 』 大 正9年2月27日 付 。 38)「 銀 行 通 信 録 』 第69巻 第413号,大 正9年3月20日,6-7ペ ー ジ 。 39)「1億 圓 公債 好 景 氣 」 『中 央新 聞』 大 正9年3月10日 付 。 同 内容 の 記 事 が 同 日付 の 『時 事 新 報』 に も見 られ る 。

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して 放 資 す る もの が あ ら うか 。 前 同募 集 の 際 に は責 行 き甚 だ不 良 に して4000萬 圓 は 日銀 の背 負 ひ込 み とな り,其 の 後,日 銀 に於 て も該 謹 券 の 市場 散 布 に付 き努 力 す る庭 が あ つ たが,そ れ に して も,其 の 市 場 責 行 きは7000萬 圓前 後 で あ らう。 而 して今 日 は 日銀 金 利 が2銭2厘,8分3毛 にて,市 場 金 利 は3銭 近 くの 有様 な るが,斯 か る金 融 市 場 の大 勢 よ り謂へ ば,現 金f募 と合せ て,此 の7000萬 圓 が果 して乗替 へ 得 らる ・ や 否 や さへ 疑 はれ る 。尤 も政 府 と して は此 の 募債 は,新 年 度募 債 の 試 金石 ともな る も の 故,大 に努 力 す る で あ ら うが,さ りとて 之 れ にf募 す る もの あ らば,そ は採 算 を無 視 した 一 種 の 慈 善 家 で な けれ ば な らぬ 。」 (「財 界 概 観 」 「東 洋 経 済 新 報 』 大 正9年3月6日 号,2ペ ー ジ) つ ま り合 理 的 な投 資 家 は,市 場 金 利 を大 き く下 回 る証 券 の 乗 換 に応 じない し,現 金 応 募 も しない だ ろ う とい うの で あ る。 『中央 新 聞』 に よれ ば 建 物 器 械 業 に対 す る定 期 貸 の 利 率 が8.5∼9%に な っ て お り,2月 に募 集 した興 業 銀 行 債 券500万 円の 利 率 が7%で 辛 う じて そ の 募 集 額 に達 した とい う状 況 で あ り4°),募集 環 境 と して は 決 して 有 利 とは 言 えな い 状 況 で あ った 。 そ こで 『東 洋 経 済 新 報 』 は この ほ とん どが 現 金 償 還 され る と予 想 し,こ れ に よ り金 融 が 緩 和 され て 好 景 気 が 持 続 す る と した こ とは既 に述 べ た通 りで あ る。 結 局,臨 時 国庫 証 券借 換 え1億 円 の応 募 高 は乗 換 応 募5098万 円,現 金 応 募 5642万 円 の合 計1億740万 円 で か ろ う じて募 集 額 を超 えた ものの 現 金応 募 の 中 に 日本 銀 行 引 き受 け分2000万 円が 含 まれ て お り,実 質 的 に は募 集額 に達 し なか っ た41)。乗換 応 募 が 半 額 しか なか った こ とは,そ れ だ け手 許 が逼 迫 してい た こ とを意 味 して い る。 この第 一 回払 込 は発 行 当 日の3月16日 で あ っ た。 も っ と も払 込 金 額 は5円 で あ り,し か も保 証 金 振 替 で あ る ため,実 際 の 払 込 は なか っ た。 だが 同 日に1000万 円 の 国債 償 還金 が 市 場 に流 入 して 金融 市 場 はや や緩 和 状 況 とな っ た。 40)「 工 業 資 金 繁1亡 」 「中 央 新 聞 』 大 正9年3月10日 付 。 41)「 銀 行 通 信 録 』 第69巻 第414号,大 正9年4月20日,1-2ペ ー ジ 。

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桃 山学 院大 学経 済経 営論 集 第53巻 第4号 「金 融 市 場 は先 行 も依 然 強 調 を持 績 さ るべ き情 勢 な るが16日 は國 債 償 還 金約1000萬 圓 内外 は市 場 を潤 せ る こ と ・て 市況 は小 緩 み を示 現 せ り。即 ち 同 日 は割 引 日歩 に於 て つ よ は普 通最 底2銭6厘 乃 至2銭7厘 唱 へ にて 強保 合 の 商 調 な るが コー ル 日歩 は午 前 中の 3銭 乃 至3銭1厘5毛 唱へ よ り交 換 後 資金 に梢 絵裕 を生 じ,相 場 も3銭 よ り2銭9厘 と な り,稀 に は2銭7,8厘 の 取 引 を見 た り。」 (「金 融 市 場 小 緩 」 「中外 商 業 新 報 』 大 正9年3月18日 付) もっ と もこの 現金 償 還 に よる金 融緩 和 の効 果 は一 時 的 な もの に と どま った42)。 後 知 恵 で はあ るが,こ の 時 点 で 既 に臨 時 国 庫 証 券 の 役 割 は終 わ って い たの で あ るか ら,こ の 国庫 証 券 を借 り換 えず,全 額 償 還 す れ ばバ ブル 崩 壊 の 影 響 を 幾 分 で も緩 和 す る こ とが で きたか も知 れ ない 。 小括 大 正9年3月 に はバ ブル はい よい よ熾 烈 を極 め る よ う に な って お り,綿 糸 投 機 の よ う に常 軌 を逸 した取 引 す ら行 われ る よ う に な って い た。 他 方,現 物 市 場 で は在 庫 が 堆 積 し,産 業 に よ って は羽 二 重 の よ う に明 らか に超 過 供 給 状 態 とな り生 産 制 限 が 行 われ る よ う な所 も出て い た。 他 方 で,前 稿 で 述 べ た よ う に金 融 市 場 は対 外 要 因 と国 内 要 因の 双 方 か ら引 き締 ま り,資 金 需 要 に十 分 応 え る こ とが で きない よ う な状 況 に な って い た。 この ため3月 中旬 に な る と短 期 金 利 が さ らに上 昇 す る と と もに,資 金 の 出 し 手 が い な くな る とい う事 態 に な る。 これ に対 して 日銀 は資 金 を供 給 す る どこ ろか 逆 に資 金 を吸 収 した ため にい よい よ資 金 繰 りが 困 難 に な っ た。 これ まで 投 機 の 中心 とな っ て いた 農村 も資 金 の 逼 迫 に見 舞 わ れ る と とも に, 米 の 売 り惜 しみ の 物 理 的 限 界 が 近 づ い て きた こ とか ら,商 品 市 場 で まず 暴 落 が 始 ま り,商 品 市 場 で の 資 金 の 手 当 て に迫 られ た 農 家 が 資 金 調 達 の ため に株 式 市 場 で 株 の 投 げ売 りをす る よ う にな っ た。 これ が3月15日 の株価 暴 落 を引 42)「 銀 行 通 信 録 』 第69巻 第414号,大 正9年4月20日,2ペ ー ジ 。

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き起 こ した と考 え られ る。 そ して この 株 価 暴 落 が 逆 に商 品 市 場 で の 暴 落 を引 き起 こ し,諸 市 場 は連 鎖 的 な暴 落 に見 舞 われ たの で あ っ た。 バ ブ ル崩 壊 後,日 銀 は資 金 供 給 を増 や し,ま た国 債 の 償 還 金 も市 場 に流 入 す るの で あ るが バ ブル 崩 壊 を喰 い 止 め る に は不 十 分 で あ っ た。 だが 多 くの 人 々 は株 価 や 商 品 価 格 の 暴 落 に直 面 して も,こ れ は単 な る調 整 局 面 に過 ぎず, い ず れ は価 格 は元 に戻 るの で は ない か と期 待 して い た。 だが 事 態 の 進 行 と と もに人 々 は事 態 の 深 刻 さ を認 識 す る よ う に な る。 3月15日 に始 まるバ ブ ル崩 壊 を 『東 京 株 式 取 引 所 五 十 年 史』 は次 の よ うに 述 べ て い る。 「然 る に9年3月 に入 る や,同3日 を絶 頂 と して漸 く大 反 動 來 の危 機 を孕 み,同 月15 日,遂 に急 韓 直 下,第 一 次 の 暴 落 あ り。 次 で4月7日,第 二 次 の暴 落 に會 した るが, 爾 次 共 に市 場 を休 止 して專 ら整 理 に努 め た る結 果,辛 う じて4月13日,開 市 の運 び に至 り しも,翌14日,復 も第 三 次 暴 落 を演 じ,弦 に数 年 間,好 景 氣 に齪 醇 した り し 人 氣 全 く破 れ,市 場 は混 簡L状態 に韓 落 す る の已 む な きに至 れ り。 爾 來,5月14日 に 至 る まで,市 場 の 全部 を休 止 して,建 玉 整 理 に從 事 した る が 幾 多 の 難 關 に逢 着 して 苦 心 努 力,漸 く之 を打 開 して市 場 救 濟 を完 了 した り。」 (平賀 義 典 編 「東 京 株 式 取 引 所 五 十 年 史 』 東 京 株 式 取 引 所,昭 和3年,378ペ ー ジ) この よ う に3月15日 の暴 落 は,以 後2ヵ 月 に わ た る市場 混 乱 の 幕 開 け に過 ぎなか っ た。 これ らの 株 価 ・商 品 価 格 の 暴 落 は,銀 行 の 破 綻 や 市 場 機 能 の 喪 失 とい っ た人 々の 予 想 も しない 結 果 を もた らす こ とに な る。 (も ちつ き ・か ず ひ ご/経 済 学 部 教 授/2011年12月9日 受 理)

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桃 山学 院大 学経 済経 営論 集 第53巻 第4号

ThePeakandCollapseoftheTaishoBubble

MOCHIZUKIKazuhiko Thepanicinthestockmarketbeganon15thMarch1920.Buttherewas somesymptomsofit.Forinstance,thepriceofsilkwaspeakedoutinJanu-ary,andthetexileindustryfacedasevereexcesssupplyinFebruary.The commoditieswerepiledupinthewarehouseaswellasthedistributioninven-tort'.Butnobodyexpectedthepanictocomesoon. Atlastfarmerswhoheldthericeandwaitedforthepriceriseofitbegan toselltheirricebecausethequalityofricegotworseandtheyneededmoney tobuyfertiliserforplowing.Buttheycouldnotborrowmoneyfrombanks whichsufferedfromlackofliquiditysothattheysoldstocksformoney. Thefallofstockandcommoditypricesbegantranquillypriortothepanic. Andoncethepanictookplaceinthestockmarketthenitspreadoutcommod-itymarketsbecausetheyhadacloselinkage.Peopleatspeculationneeded moneyforasecuritybythegreatfallofthemarket.Themoneydemand soaredandtheBOJTendedmoneytothebanksinlargescale,buttheBOJ failedtocalmthepanic.Andredeemingthegovernmentbondhardlycontrib-utedtoeasethemoneymarket. Retrospectively,thepanicofthemarketswasaheraldofthegeneralde-pressionfordecades.

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