• 検索結果がありません。

琉球列島の名称に関するメモ: 沖縄地域学リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "琉球列島の名称に関するメモ: 沖縄地域学リポジトリ"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

Author(s)

当山, 昌直

Citation

沖縄史料編集紀要 = BULLETIN OF THE

HISTORIOGRAPHICAL INSTITUTE(37): 59-68

Issue Date

2014-03-20

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/17444

(2)

琉球列島の名称に関するメモ

当山 昌直

はじめに

九州南端から台湾との間にある島々について、琉球、南島、琉球列島、南西諸島などと

色々な呼び方が存在している。「琉球」は古文書等にも記されており、もっとも古い呼び

方で、現在では色々な分野で使用されている。「南島」は歴史や民俗等の人文科学分野、

「琉

球列島」は自然科学分野の論文等、「南西諸島」は気象庁や海上保安庁などの国の機関で

使用されている。一方、天気予報等で知られるように、国の機関では「南西諸島」を使用

することが多く、その名称が沖縄においても一般化しつつある傾向が認められる。

本地域の名称については、利用する分野や場面において適宜変わることもあるとは思わ

れるが、その起源や歴史について理解することは有意義だと思われる。本稿では、自然科

学分野を中心に、琉球および「琉球列島」について、その起源や歴史について、その概要

を述べ「南西諸島」との相違点などを整理したい。

1.琉球と琉球列島

(1)前近代における琉球

史料および文献等の中に出てくる琉球の名称については、

「流求」「龍及国宇嶋」「大琉球」

「琉球国」「Lequeo」「Loo Choo」などさまざまな表記がある。

史料にみられる最も古いものとしては、隋の正史『隋書』629 年に「流求国」の記述がある。

この史料には、流求は船で5日かかるところにあり、4つか5つの地域に分かれ、それぞ

れに小王がいると記されている。続いて、1100 年頃の『古今華夷区域惣要図』の地図上

に「流求」の名称がみえ、また国内では 1305 年頃に作製された『日本図』には「龍及国

宇嶋」と記されている。李氏朝鮮においては 1402 年『混一疆理歴代国都之図』には「大

琉球」「琉球」の記述がみえる。1471 年『海東諸国紀』では「琉球國之圖」上に琉球国都

の文字がみえ、当時の琉球王国の版図であった奄美諸島や沖縄島周辺の島々が確認できる。

(3)

1536 年初刊(中国明代)の『皇明輿地之図』には「大琉球」と「小琉球」が記されており、

沖縄は大琉球を指すといわれている。続いて、1500 年代のヨーロッパの多くの地図には

琉球のことを「レキオ(lequeo, lequios)」と称し、地図上にも大きく示されている。

(1)

近世琉球末期、沖縄を訪れたペリーは 1856 年の遠征記

(2)

のなかで沖縄のことを「Lew

Chew」と地図上に記している。この他、新井白石は 1719 年『南島志』において、琉球

の地域を「南島」と称しており、古い呼び方の一つとされる。

(2)近代における琉球

近代以降、九州南端から台湾までの間に所在する島々については、具体的に範囲を示し

た名称が学術用語として用いられるようになった。これらの用語について、目崎(1983)

をもとに新たな資料を加えて整理してみたい。

大槻(1873)は、『琉球新誌』のなかではじめて地域区分を行い、「琉球諸島」の名称

を地図

(3)

で図示した(図1)。Naumann (1885)

(4)

は、『日本群島の構造と生成』のなかで

Liukiu Bogen(琉球弧)の名称を用いている。小藤(1897)は、地学雑誌のなかで論文『琉

球弧島の地質構造』を発表し、この中で和文として初めて「琉球弧」という名称を用いて

いる(図2)。日本地質学会長を歴任した脇水(1906)は、

『沖縄視察談』の中で「琉球列島」

の名称を用い、尖閣群島を列島の範中に入れたが、大東諸島はまだ入っていない。また先

島諸島をさらに細分して宮古群島と八重山群島に分けている(図3)。山崎・佐藤(1915)

は、それぞれ地理学、地質学を専門としている。その著書『大日本地誌・第十巻』の中で

大隅諸島、土噶喇諸島、大島諸島、沖縄諸島、大東諸島、先島諸島、尖閣諸島の今日に近

い地域区分をほぼ確立し、これらの地域を「琉球列島」の名称でまとめている(図4)。

一方、「南西諸島」の名称については、上記のとおり、学術研究分野ではほとんど確認

されない(目崎,1983)。その起源については、明治 20 年前後の「海図」によるものと

考えられ、1932 年『台湾南西諸島水路誌』

(5)

によって一般化されたものと考えられている(目

崎,1983)。Hanzawa (1935) は『Topography and Geology of the Riukiu Islands』の中で琉

球列島と南西諸島

(6)

の違いを紹介しており、琉球列島は自然科学系の論文、南西諸島は海図

などに使われていることを触れている。

(1) この項目を書くにあたっては沖縄県文化振興会公文書管理部史料編集室編(2003)を参照した。 (2) Narrative of the Expedition of an American squadron to the China Seas and Japan, performed in the years 1852,

1953, and 1854 (3) 筆者が確認した本史料は図附とあったが、図が残っておらず、地図を確認することはできなかった。 (4) 原文を直接みることはできなかった。 (5) 原本を直接みることができなかったが、国立国会図書館において 1941 年刊行の『台湾南西諸島水路誌』 で確認することができた。 (6) 英名として Nansei shotô を用いている。

(4)

琉球諸島 南海諸島 (今日の大隅・𡈽噶剌諸島) 北部諸島(奄美諸島) 中部諸島(沖縄諸島) 南部諸島(先島諸島) 図1.大槻(1873)による分類(目崎, 1983を もとに作製) 琉球弧島 薩南諸島 川辺七島(土噶喇列島) 大島群島(諸島) 沖縄群島(諸島) 先島群島(諸島) 図2.小藤(1897)による分類(目崎, 1983を もとに作製) 琉球列島 大隅諸島 土噶喇諸島 大島諸島 沖縄諸島 大東諸島 先島諸島 尖閣諸島 図4.山崎・佐藤(1915)による分類(目崎, 1983をもとに作製) 南西諸島 薩南諸島 大隅諸島 吐噶喇列島 奄美諸島 沖縄諸島 琉球諸島 宮古列島 先島諸島 八重山列島 尖閣諸島 図5.国土地理院の区分(目崎, 1983をもとに作製) 南西諸島 (合意済) 薩南諸島 大隅群島 吐噶喇群島 奄美群島 [略] 沖縄群島 琉球諸島 慶良間列島 (合意済) 宮古列島 (合意済) 先島群島 (合意済)八重山列島 尖閣諸島 (合意済) 大東諸島 (合意済) 図6.海洋情報部と国土地理院との調整(安城・割田, 2009を もとに作製) 琉球列島 大隅諸島 (薩南諸島・薩隅諸島) 土噶喇七島(川辺七島) 大島諸島 沖縄諸島 先島諸島 宮古群島 八重山群島 尖閣群島(ピナクル群嶼) 図3.脇水(1906)による分類(目崎, 1983を もとに作製)

(5)

(3)官公庁における名称

教科書をはじめ、今日的に使用されている地域区分は国土地理院の名称が使われている。

国土地理院の区分は図5のとおりである。これらの図版には大東諸島が入っていない。安

城・割田(2009)によると、海洋情報部と国土地理院との間で諸島、群島、列島の統一

について調整が進められているとの報告がある。まだ調整中ではあるが、2009 年の段階

では図6のとおりとなっている。このように、官公庁で使用されている官制の名称につい

てもまだ統一されていないというのが実情といえよう。

2.琉球列島について

(1)両生爬虫類学文献からみた琉球列島

琉球および琉球列島に類する呼び方について、両生爬虫類学の分野から具体的な文献名

をあげて検討してみたい。対照とした文献は当山(1982)、当山(1985)、Akamata 事務

局編(1988)、当山(1995)に掲載されている約 1200 件の文献(1881 年から 1994 年まで)

のうち、論文、学術報告書などから、タイトルに琉球列島、琉球、もしくはそれを意味す

るような語彙(英文も含む)が含まれているのを選び出した。次に選び出した 58 件の文

献を発行年の順に以下のリストに示す。

リスト:タイトルに琉球列島、琉球、もしくはそれを意味する語彙を含む両生爬虫類関係の文献 Doederlein, L. (1881) Die Liu-Kiu Insel Amami Oshima. Mitth. Deutsch Ost-Asiens Ges., 3 (1880-1884): 140-156.

Boulenger, G. A. (1887) On a collection of reptiles and batrachians made by Mr. H. Pryer in the Loo Choo Islands. Proc. Zool. Soc. London, 1887: 146-150.

Fischer, J. G. (1888) Herpetologische Mitteilungen. III. Uber zwei von der Liukiu-Insel Okinawa stammende Schlamgen. Bericht fur das Jahr 1887, Naturhistorisches Museum zu Hamburg, 5: 18-22.

Boulenger, G. A. (1892) Descriptions of new reptiles and batrachians from the Loo Choo Islands. Ann. Mag. Nat. Hist., (6)10: 302-304.

Fritze, A. (1894) Die Fauna der Liu-Kiu-Insel Okinawa. Zool. Jahrb. Syst., 7: 852-926.

Boettger, O. (1895) Neue Frösche und Schlangen von den Liu-Kiu-Inseln. Berichte und mitteilungen der Offenbacher Vereinigung der Naturkunde, 33-6 (1895): 101-117.

Boettger, O. (1895) Neue Frösche und Schlangen von den Liukiu-Inseln. Zool. Anz., 18: 266-270.

Stejneger, L. (1901) Diagnoses of eight new batrachians and reptiles from the Riu Kiu Archipelago, Japan. Proc. biol. Soc. Wash., 14: 189-191.

Brown, A. E. (1902) A collection of reptiles and batrachians from Borneo and the Loo Choo Islands. Proc. Ac. Nat. Sci. Philadelphia, 1902: 175-186.

Stejneger, L. (1904) A new species of lizard from the Riu Kiu Archipelago, Japan. Smithsonian Misc. Coll. (Quart. Issue), 47(2): 294-295.

Stejneger, L. (1909) 琉球列島の陸蛇類.動物学雑誌, 21: 36-40.

Thompson, J. C. (1912) Prodrome of a description of a new genus of Ranidae from the Loo Choo Islands. Herpetological Notices, San Francisco, 1: 1-3.

Sternfeld, R. (1916) Reptilien und Amphibien aus Japan und von den Riu Kiu. S. B. Ges. naturf. Fr. Berlin, 5: 164-173. 永井亀彦(1928)南西諸島の動物分布.史蹟名勝天然記念物調査報告第4輯,pp.49-52. 鹿児島県 . Maki, M. (1930) A new banded gecko, Eublepharis orientalis, sp. nov. from Riu Kiu. Annot. Zool. Japon., 13(1): 9-11. 半沢正四郎(1933)琉球群島に於けるハブ飯匙倩の奇異なる分布と同群島地史との関係.地質雑 , 40: 323-325. Hanzawa, S. (1935) Topography and Geology of the Riukiu Islands. Sci. Rep. Tohoku I mp. Univ., 17: 1-61. 半沢正四郎(1935)琉球群島に於けるハブ ( 飯匙倩 ) の奇異なる分布と同群島地史との関係.日本生物地理学会

(6)

Maki, M. (1935) A new poisonous snake (Calliophis iwasakii) from Loo-Choo. Trans. nat. Hist. Soc. Formosa, 25(142): 216-219.

Gressitt, J. L. (1938) Some amphibians from Formosa and the Ryu Kyu Islands, with description of a new species. Proc. Biol. Soc. Washington, 51: 159-164.

Slater, J. A. (1946) Bionomic notes on some Reptiles from Okinawa Shima, Ryukyu Islands, Japan. Ann. Mag. nat Hist., [11], 13: 113-116.

Inger, R. F. (1947) Preliminay survey of the amphibians of the Riukiu Islands. Fieldiana :Zool., 32(5): 295-352. Slater, J. A. (1948) The incidence of poisonous snakes on Okinawa Shima (Ryukyu Islands). Copeia, 1948: 136. Inger, R. F. (1950) Distribution and speciation of the amphibians of the Riu Kiu Islands. Amer. Naturalist, 84: 95-115. Gloyd, H. K. (1955) A new crotalid snake from Kume Shima, Riu Kiu Islands. Bull. Chicago. Ac. Sci., 10: 123-134. Nakamura, K. & S. Ueno (1959) The geckos found in the limestone caves of the Ryu-Kyu Islands. Mem. Coll. Sci. Univ.

Kyoto, (B), 26(1): 45-52, pl. 1.

高良鉄夫(1962)琉球列島における陸棲蛇類の研究.琉球大学農家政工学部学術報告 , 9: 1-202.

Okada. Y. & T. Matui (1964) Rhacophorus iriomotensis n. sp. A new species of Rhacophorus from Iriomate, Ryukyu Islands. Act. Herp. Japon, 1(1): 1-2.

Kuramoto, M. (1965) A Record of Phacophorus leucomystax from the Ryukyu Islands. Bull. Fukuoka Gakuge. Univ. Pt. Ⅲ , 15: 59-61.

Johnson, C. R. (1969) Herpetofauna of Okinawa, Ryu kyu Islands. Herpetologica 25(3): 206-210.

Johnson, C. R. (1972) Notes on the Herpetofauna of Kume-jima and O-jima, Ryu kyu Islands. Atoll Res. Bull., (162): 7-8. Kuramoto, M. (1972) Karyotypec of the six species of frogs (genus Rana) endemic to the Ryukyu Islands. Caryologia, 25(4):

547-559.

Kuramoto, M. (1973) The Amphibians of Iriomote of the Ryukyu Islands: Ecological and Zoogeographical Notes. Bull. Fukuoka Univ. Educ., Pt. Ⅲ . 22. : 139-151.

Kuramoto, M. (1974) Experimental Hybridization between the Brown Frogs of Taiwan, the Ryukyu Islands and Japan. Copeia, 1974(4): 815-822. 倉本満(1979)琉球諸島のカエル類の分布と隔離.爬虫両棲類学雑誌 , 8(1): 8-21. 宇都宮妙子・宇都宮泰明・又吉盛建(1979)南西諸島におけるイボイモリの分布について〔講演要旨〕.動物学 雑誌 , 88: 662. 池原貞雄(1981)琉球列島久米島における土地利用形態の変化による脊椎動物数種の分布域の変動.琉球列 島における島嶼生態系とその人為的変革Ⅱ , 文部省特別研究「環境科学」研究報告集B 113, pp.161-172.

Matsui M. & T. Matsui (1982) Hyla hallowelli recorded from Iriomotejima, Yaeyama group, Ryukyu Archipelago. Jpn. J. Herp., 9(3): 79-86.

Seto, T., Y. Utsunomiya & T. Utsunomiya (1982) Karyotypes and banding patterns of Tylototriton andersoni Boulenger, a newt endemic to the Ryukyu Islands. Jpn. J. Genet., 57: 527-534.

当山昌直(1982)琉球列島両生爬虫類文献目録(暫定).沖縄県立博物館紀要 , 8: 55-88.

Toyama, M. (1983) Taxonomic reassignment of the colubrid snake, Opheodrys kikuzatoi, from Kume-jima Island, Ryukyu Archipelago. Jpn. J. Herp., 10(2): 33-38.

Matsui, M. & H. Ota (1984) Parameters of fecundity in Microhyla ornata from the Yaeyama group of the Ryukyu Archipelago. Jpn. J. Herp., 10(3): 73-79.

高橋寛(1984)琉球列島におけるウミヘビ類の頻度.The Snake, 16: 71-74.

宇都宮妙子・宇都宮泰明(1984)南西諸島のカエルの卵および幼生について.広島大学生物生産学部紀要 , 22(2): 255-270.

Kuramoto, M. (1985) A new frog (genus Rana) from the Yaeyama group of the Ryukyu Islands. Herpetologica, 4(2): 150-158.

Ota, H., H. Takahashi & N. Kamezaki (1985) On the specimens of Yellow lipped sea krait Laticauda colubrina from the Yaeyama Group, Ryukyu Archipelago. The Snake, 17: 156-159.

Tanaka, S. (1985) Brief observations on the body temperature of juveniles of the frog Rana limnocharis limnocharis in the Tokashiki-jima Island of the Ryukyu Archipelago. Jpn. J. Herp., 11(1): 33-35.

当山昌直(1985)琉球の両生類・爬虫類-現状と問題-.南西諸島とその自然保護そのⅡ,pp.54-72.世界野 生生物基金日本委員会,東京.

当山昌直(1985)琉球列島の両生類・爬虫類に関する文献目録.南西諸島とその自然保護そのⅡ,pp.153-199. 世界野生生物基金日本委員会,東京 .

Kamezaki, N. (1986) Notes on the nesting of the sea turtles in the Yaeyama Group, Ryukyu Archipelago. Jpn. J. Herp., 11(3): 152-155.

Ota, H. (1986) A review of reptiles and amphibians of the Amami Group, Ryukyu Archipelago. Mem. Fac. Sci. Kyoto Univ., (Ser. Biol.), 11: 57-71.

Ota, H., E. Sakihara & H. Shimamura (1986) A case of abnormal colour pattern in the Sakishima Oriental King Snake

Dinodon rufozonatus walli from Haterumajima Island of the Yaeyama Group, Ryukyu Archipelago. Biol. Mag.

Okinawa, 24: 17-20.

(7)

Yaeyama Group, Ryukyu Archipelago. Jpn. J. Herpetol., 13(2): 40-43.

Utsunomiya, T. (1989) Five endemic frog species of the Ryukyu Archipelago. Current Herpetology in East Asia, pp.199-204. Ernst, Carl H. (1990) A new species of Cuora (Reptilia: Testudines: Emydidae) from the Ryukyu Islands. Proc. Biol. Soc.

Wash., 103(1): 26-34.

Kohno, H. & H. Ota (1991) Reptiles in a seabird colony: Herpetofauna of Nakanokamishima Island of the Yaeyama Group, Ryukyu Archipelago. Island Studies in Okinawa, (9): 73-89.

当山昌直・太田英利(1991)琉球列島の両生・爬虫類.南西諸島における野生生物の種の保存に不可欠な諸条 件に関する研究,pp.233-254.環境庁自然保護局.

Grismer, L. L., H. Ota & S. Tanaka (1994) Phylogeny, Classification, and Biogeography of Goniurosaurus kuroiwae (Squamata: Eublepharidae) from the Ryukyu Archipelago, Japan, with Description of a New Subspecies. Zoological Science, 11: 319-335.

リストにみられるように最も古い文献は Doederlein (1881)

(7)

である。ドイツ語で「Liu-Kiu

Insel」とあるが琉球または琉球列島と訳される。次に古いのが Boulenger (1887) の英語

名「Loo Choo Islands」がみられる。

Stejneger (1901) においてはじめて「Riu Kiu Archipelago」の名称がみられるのが注

目される。両生爬虫類学の文献タイトルにおいて最初にみられた「Archipelago」である。

そして Stejneger (1909) では動物学会誌に「琉球列島」の名称を使用している。これが、

文献タイトルにおける最も古い「琉球列島」ということになる。Stejneger は、日本の両

生爬虫類学の基礎を築く大著 (Stejneger, 1907) を記した研究者であり、その著作の中でも

日本全域をほぼ網羅していることもあって名称等についてもよく理解していたことと思わ

れる。そのような意味で、彼が使用した名称として注目される。

永井(1928)において初めて「南西諸島」が出て来る。トカラ列島を中心に奄美大島

までを範疇に入れた内容であり、現在の「南西諸島」の対象地域とは別と考えられる。

半沢(1933)において初めて「琉球群島」が出て来る。彼は Hanzawa (1935) におい

て「Riukiu Islands」を用いているので、「琉球群島」と「Riukiu Islands」は同意語と考え

られる。群島と諸島との違いは、前の項でも述べたように海洋情報部と国土地理院とで用

語が異なっていたことにも起因していると思われ、基本的には同義語と考えられる。また、

半沢(1933)、Hanzawa (1935)、半沢(1935)は、本来は地質学分野の文献ではあるが、

地史とハブの分布とを研究した内容も含まれており、両生爬虫類学研究分野でも重要視さ

れている文献でもある。この中でも Hanzawa (1935) は、尖閣諸島と大東諸島を除く種子

島から与那国島までのほとんどの島々を対象としており、タイトルを基にした両生爬虫類

学の文献リスト中では、初めて琉球列島(琉球群島)の具体的な対象地域を示した文献と

いえる。

高良(1962)は、尖閣諸島、大東諸島を含んだ、種子島から与那国島までの地域を研

究した論文で、タイトルに「琉球列島」を使用した初めての文献である。島々の記載や分

(7) 直接内容はみていない。

(8)

布情報なども含まれており、両生爬虫類学研究史の中でも重要な著作となっている。

倉本(1979)において初めて「琉球諸島」

(8)

が出て来る。論文の内容をみると「ここでは、

南西諸島のうち大隅諸島を除く島々、すなわち渡瀨線(トカラ海峡)以南の島々を琉球諸

島と呼ぶことにする」としている。トカラ海峡以南地域の扱いについては、当山(1985)

にもみられ、ここでは暫定的に「琉球」と称している。また、Kuramoto (1965) 以降の論

文に見られるように、英文のタイトルとして「Ryukyu Islands」としているが、上記の和

文の内容において、「南西諸島」としている。

宇都宮ほか(1979)は、現行の「南西諸島」の範疇に近い意味で、今回の対象範囲内

においてはタイトルに使用された最初の事例になるかもしれない。しかし、Utsunomiya

(1989) の論文では英文で「Ryukyu Islands」が使用されており、使い分けている形跡が認

められる。

当山・太田(1991)は、文献タイトルが「琉球列島」になっているが、本のタイトルは「南

西諸島」である。当時の環境庁の刊行物ではあるが、当山(1985)の世界野生生物基金

日本委員会の刊行物にもみられるように、「南西諸島」が広く使用されているのがわかる。

当時の執筆者であった筆者は、事業名と論文タイトルとで「南西諸島」と「琉球列島」と

で異なってもかまわないとのことであったので、表記のとおりの論文タイトルになった。

以上、両生爬虫類学文献のリストに基づいて、タイトルに付された「琉球列島」

「琉球」

「南

西諸島」などの名称について検討してきた。大部分が英文の論文になっており、多くの論

文において「Ryukyu Islands」もしくはそれに類する「Riu Kiu」「Loo Choo」が使用され

ていることがわかる。反面、和文タイトルの中では、「琉球列島」が多いが、論文の性格

上和文自体が少ないので全体的な事例からみると群を抜いて多いとはいえない。ただ、和

文では「南西諸島」とし、英文では「Ryukyu Islands」を使用している例もある。また、

「南

西諸島」を意味する「Nansei Shoto

(9)

」という論文タイトルは確認されなかった。

いずれにせよ、九州南端から台湾までの間に所在する地域の名称については、尖閣諸島

や大東諸島の扱い等で時代により変化があり、明確な統一は無いというのが現状かも知れ

ない。

(2)琉球列島と南西諸島について

九州南端から台湾との間に所在する島々の名称については、学術分野と官制とで使用さ

れている名称が歴史的にも異なる面がある。学術分野についてみると、尖閣諸島と大東諸

島の取扱方に違いがあり、①尖閣と大東諸島を含まない「琉球列島」と②それらを含む「琉

(8) 英文タイトルは「Ryukyu Islands」となっている。 (9) 当山(1985)、当山・太田(1991)の掲載紙の英文タイトルは「Nansei Shoto」を用いている。

(9)

球列島」の二つの見方が存在する。①については、開発されて間もないころの戦前の硏究

事例が多く、別名として「琉球弧」とも呼ばれることもあった。一方②については、戦後

の比較的新しい事例が多く、硏究の進展により対象域が広がったことも関係しているかも

しれない。

昨今の硏究分野では①や②の用例が混在し、また「南西諸島」を用いる研究者も多い。「列

島」を辞書でひくと「並び続いている島々」とあり、①を用いる根拠にもなっている。ま

た、②を用いるのは Hanzawa (1935) でも述べているように、「南西諸島」は官制の用語

であることから、それと同じ範囲を示す学術用として自然科学分野の論文では「琉球列島」

を用いている傾向があるものと考えられる。

しかしながら、

「琉球列島」が学術用とはいっても、国土地理院で用いている「南西諸島」

は無視できない状態にあり、また学術用としての「琉球列島」も①と②とが混在している

のも事実である。一方、英語で表記する場合は、「南西諸島(Nansei Shoto

(10)

)」と「琉球列

島(Ryukyu Islands)」とではだいぶ異なっており、違う地域のようにもみえる。これま

での歴史や研究論文が示すように、外国における名称は「琉球」で通っていることもあり、

和文で「南西諸島」を使用していても英文では「Ryukyu Islands」を使用している事例もある。

このようなことから「南西諸島」は国内向きの名称といえるかもしれない。

このような中、太田(2012)は琉球列島の生物地理を研究した成果をまとめた論文の

中で九州南端から台湾までの間に所在する島々で、尖閣諸島と大東諸島を除いた、いわゆ

る弧状の島々を「琉球列島」とし、尖閣諸島と大東諸島を含めた島々を「南西諸島」とし

てまとめている。この地域区分により、これまでの矛盾点なども整理することができ、一

般向けにも利用しやすいかたちとなっている。太田(2012)やこれまでの研究論文等を

参考に、筆者の方で地域区分を整理したのを図7に示す。また、図7に示した北琉球、中

琉球、南琉球の区分については、小西(1965)は当該地域を東北琉球、中部琉球、西南

琉球と称している。また、生物分野においては下謝名(1970)が小西(1965)に基づい

た名称を使用している。木崎(1985)には、その研究史の一端が記されており、北琉球、

中琉球、南琉球の範囲を示しているが、大東諸島、尖閣諸島はそれぞれ中琉球、南琉球に

含まれている。生物分野では、生物地理学的な特性を基に図7にみるような区分がされて

おり

(11)

、大東諸島と尖閣諸島はこれらの区分外になっている。

(10) 小西(1965)は英文タイトルに Ryukyu Islands (Nansei-shoto) を用いている。

(10)

3.琉球諸島について

一般的に使用されている南西諸島の島々のうち、沖縄県の島々を「琉球諸島」と呼んで

いる(国土地理院の地図など)。その範囲が示すように、これは行政区分で仕切られた官

制の名称といえる。そのため、与論島と沖縄島との間については、屋久島と奄美大島との

間、沖縄島と宮古島との間にみられる地質学的または生物地理学的な特性の差異に比較し

て、その境界はそれほど重要とはいえない位置にある。したがって、行政区分によってグ

ループ分けした島域の名称は、自然科学分野ではあまりなじめない名称といえるかもし

れない。むしろ、自然科学分野では尖閣諸島と大東島を含めた島々を「琉球諸島(英語

名:Ryukyu Archipelago

(12)

)」、尖閣諸島と大東諸島を含めない島々を「琉球列島(英語名:

Ryukyu Islands)」とした方がよいかもしれない(図7参照)。ただし、名称については、

(12) 尖閣諸島を対象とした報告例として、Ota (2004) は尖閣諸島を Ryukyu Archipelago に含めている。

琉球諸島 Ryukyu Archipelago 〈南西諸島〉 大隅諸島 黒島、竹島、硫黄島、屋久島、種子島、口之永良部島 琉 球 トカラ列島 口之島、中之島、諏訪瀬島、平島、悪石島 小宝島、宝島 中 琉 球 奄美諸島 喜界島、奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、徳之島、黄鳥島)、沖永良部島、与論島 (硫 琉球列島 沖縄島、伊平屋島、野甫島、伊是名島、伊江島、瀬底島、 水納島、屋我地島、古宇利島、粟国島、久米島、渡名喜島、 伊計島、宮城島、平安座島、浜比嘉島、津堅島、久高島 Ryukyu Islands 沖縄諸島 慶良間諸島 座間味島、阿嘉島、慶留間島、(外地島、屋嘉比島、久場島)、渡嘉敷島、前島 南 琉 球 宮古諸島 宮古島、大神島、池間島、伊良部島、下地島、来間島、多良間島、水納島 先島諸島 八重山諸島 石垣島、西表島、由布島、鳩間島、小浜島、嘉弥真島、竹富島、黒島、新城島、波照間 島、与那国島 尖閣諸島 (魚釣島、久場島、大正島、北小島、南小島) 大東諸島 北大東島、南大東島、(沖大東島) 図7.自然科学系(特に生物)における使用、または使用が考えられる名称や地域区分 ※( )内は主な無人島を示す。硫黄鳥島については、行政区分では沖縄県であるが、自然地理的な位置として 奄美諸島に含めた。また、有人島でも小さな島については省略したのもある。

(11)

それぞれの名称がすでに定着しているところもあり、混乱を避ける意味でも、今回は提言

だけにとどめておきたい。

まとめ

これまで自然科学分野において、曖昧に使用されていた「琉球列島」

「南西諸島」について、

その歴史を踏まえて、他の名称と比較しながら述べてきた。名称については、どのような

経緯で定義されたのか不明な部分も多く資料も少ない。しかし、「琉球列島」や「南西諸

島」の用語を使用するにあたっては(少なくとも研究論文等)、名称の歴史や定義について、

その概要を知った上で使用した方がよいと思われる。本稿がその一助になれば幸いである。

文献

Akamata 事務局編(1988)琉球列島の両生爬虫類に関する文献Ⅲ.Akamata (5): 23-38. 安城たつひこ・割田育生(2009)我が国の広域な地名及びその範囲についての調査研究.海洋情報 部技報 27: 9-17. 木崎甲子郎(1985)はじめに─琉球列島地質研究小史─.琉球弧の地質誌,pp.5-10.沖縄タイムス社. 小西健二(1965)琉球列島(南西諸島)の構造区分.地質学雑誌, 71(840): 437-457. 小藤文次郎(1897)琉球弧島の地質構造.地質学雑誌,5(49): 1-12. 目崎茂和(1983)南島・琉球弧の地名と地域.南島の地名第1集,pp.19-25. 南島地名研究センター. 沖縄県文化振興会公文書管理部史料編集室編(2003)沖縄県史ビジュアル版 12 古地図にみる琉球. 沖縄県教育委員会.72pp. 太田英利(1994)琉球列島産陸生脊椎動物の生物地理学的特性.復帰 20 周年記念沖縄研究国際シ ンポジウム 沖縄文化の源流を探る──環太平洋地域の中の沖縄──,pp.460-464. Ota, H. (2004) Notes on Reproduction and Variation in the Blue-tailed Lizard, Eumeces elegans (Reptilia:

Scincidae), on Kita-kojima Island of the Senkaku Group, Ryukyu Archipelago. Current Herpetology 23(1): 37-41.

太田英利(2012)琉球列島を中心とした南西諸島における陸生生物の分布と古地理─これまでの流 れと今後の方向性─.月刊地球,34(7): 427-436.

大槻文彦(1873)琉球新誌 図附.

下謝名松栄(1970)動物の地理的分布をどう指導したらよいか.沖生教研会誌,(4): 38-68. Stejneger, L. (1907) Herpetology of Japan and adjacent territory. Bull. U.S. Nat. Mus., 58: 1-557. 当山昌直(1982)琉球列島両生爬虫類文献目録(暫定).沖縄県立博物館紀要 , 8: 55-88. 当山昌直(1985)琉球列島の両生類・爬虫類に関する文献目録.南西諸島とその自然保護そのⅡ, pp.153-199.世界野生生物基金日本委員会,東京 . 当山昌直(1995)琉球列島の両生爬虫類に関する文献Ⅴ.Akamata (12): 6-18. 山崎直方・佐藤伝蔵(1915)大日本地誌第十巻 琉球及台湾.博文館.592pp. 脇水鉄五郎(1906)沖縄視察談.地学雑誌,18: 647-825.

参照

関連したドキュメント

[r]

83 鹿児島市 鹿児島市 母子保健課 ○ ○

[r]

( WINDS : Wideband InterNetworking engineering test and Demonstration Satellite )..

(以下、福島第一北放水口付近)と、福島第一敷地沖合 15km 及び福島第二 敷地沖合

㻝㻤㻥㻣 㻝㻤㻥㻤 㻝㻤㻥㻥 㻝㻥㻜㻜 㻝㻥㻜㻝 㻝㻥㻜㻞 㻝㻥㻜㻟 㻝㻥㻜㻠 㻝㻥㻜㻡 㻝㻥㻜㻢

安全第一 福島第一安全第一 福島第一 安全 第一 福島第一. 安全第一 福島第一安全第一

安全第一 福島第一安全第一 福島第一 福島第一 安全 第一. 安全第一 福島第一安全第一