• 検索結果がありません。

【翻訳】越境作家ザビーネ・ショルの掌編翻訳・解題

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "【翻訳】越境作家ザビーネ・ショルの掌編翻訳・解題"

Copied!
19
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)越 境 作 家 ザ ビー ネ ・シ ョル の 掌 編 翻 訳 ・解 題 Die transnationale. Schriftstellerin 解 題:土 Ubersetzung mit Anmerkungen. Sabine. Scholl. 屋 勝 彦 、翻 訳:竹. 内宏. von Hiroshi. Takeuchi. von Masahiko. Tsuchiya. オ ー ス トリア 人 女 性 作 家 の ザ ビー ネ ・シ ョル(1959年 生 ま れ)は 、 ドイ ツ語 圏 の 「 越境作 家」 の ひ と り と して認 め られ て い る。 この 場 合 の越 境 作 家 と は 、 母 語 以 外 の 言 語 で 書 く こ と に よ っ て母 語 の 歴 史 文 化 的 伝 統 の 上 に 築 かれ た 「 国 民文 学 」 の 規 範 か ら逃 れ る作 家 とい う意 味 で は な く、母 語 の 日常 的 使 用 か ら引 き離 され た 経 験 か ら母 語 を相 対 化 し異 化 す る よ うな経 験 を持 つ 作 家 、 あ る いは 「 国 民 文 学 」 に 属 しえ な い越 境 文 化 的 な 経 験 と視 点 を有 す る作 家 と い う意 味 で あ る。28歳 か ら2年 間 の ポル トガ ル ・リス ボ ン滞 在 や 、36歳 か らの4年 間 の シカ ゴ滞 在 と1年 間 の ニ ュー ヨー ク 滞 在 な どを含 め 、 ウ ィ ー ンや ベ ル リン を居 住 の 中心 に 据 え な が ら も、 さま ざ ま の 国 々 を渡 り歩 き活 動 して き た 経 歴 か ら も推 察 で き る よ うに 、 文 化 的 越 境 者 を 自認 す る シ ョル は 、 移 民 文 学 や 亡 命 者 文 学 あ る い は マ イ ノ リテ ィ 文 学 な ど越 境 的 な 文 学 者 へ の 強 い 関 心 を持 ち 続 け 、 イ ン ター カ ル チ ュ ラル な い し トラ ン ス カ ル チ ュ ラル な 諸 経 験 を 深 化 させ 、 モ ノ カル チ ャ ー と して の 静 態 的 、 均 質 的 な 文 化 概 念 を壊 す こ と に よ っ て 、 あ る い は モ ノカ ル チ ャ ー に 内在 す る 多 様 な異 文 化 混 成 状 況 に 向 き合 うこ と に よ っ て 、 オ ー ス ト リア や ドイ ツ とい う国 民 文 学 の伝 統 や 桎 桔 か ら逃 れ た コス モ ポ リタ ン な 地 平 を 開 示 して き た。 た と え ば 、 小 説 『マ リナ の 秘 密 の 手 記 』(ベ ル リ ン 出版 社2000 年 〉は 、 南 米 の植 民 地 主 義 の 歴 史 とシ カ ゴ の 多 文 化 主 義 的 状 況 を 跡 付 け な が ら、 そ の モ ン タ ー ジ ュ 的 な 手 法 や 変 転 す る複 眼 的 視 点 に よ り現 代 の ポ ス トモ ダ ン 文 学 を 体 現 す る作 品 と な っ て い る。 そ して 、 こ う した複 数 文 化 の媒 介 者 と して の 関 心 の あ り方 を 典 型 的 に 示 す 例 を 以 下 の 三 つ の エ ッ セ イ ・掌 編 に 確 認 す る こ とが で き る。 ま ず そ れ ぞ れ の テ ク ス トの 主題 と構 成 に つ い て若 干 の 解 説 を加 え た あ と、 翻 訳 に よ りシ ョル の越 境 的 な志 向 の一 端 を 紹 介 す る こ とに した い。 な お 、本 テ ー マ と深 く 関連 す る資 料 と して 、2004年 初 頭 に本 学 で 行 わ れ た シ ョル との イ ン タ ヴ ュー が あ り、 本 紀 要 の 前 号(第17号235ー248頁)に. 掲 載 され て い る。. エ ッセ イ 「ウ ィ ー ン 、 リス ボ ン 、 シ カ ゴ 、 ニ ュ ー ヨー ク 、 そ して ベ ル リン 」(2004年 講 演 会 で の 発 表)は 、 シ ョル の 異 種 混 合 主 義 的 な 立 場 を率 直 に 語 る テ ク ス トで あ り、 よそ 者 と して の 自己 意 識 が 文 学 的 想 像 力 を刺 激 す る とい う。 そ して ア メ リカ 合 衆 国 に お け る 「 坩 堝 」 神 話 を批 判 し、 溶 け合 わ ぬ 異 文 化 の 衝 突 か ら生 ま れ るハ イ ブ リッ トな 文 化 変 容 を 擁 護 して い る 。 た と え ば ヨー ロ ッパ の カ ト リシ ズ ム が メ キ シ コ の イ コ ン 文 化 に 流 入 し溶 解 ・変 容 して い く あ り方 を 自 己 の 文 学 活.

(2) 動 の源 泉 と して 再 発 見 す る。 さ らに 異 文 化 を認 め合 い 、衝 突 ・交 流 しな が ら、 そ れ ぞ れ の ア イ デ ン テ ィテ ィ を破 壊 す る こ とな く、 相 互 変 容 し、 共 存 的 な 「 統 合 」 に 向 か う歴 史 文 化 的 な越 境 的 位 相 を 諸 都 市 で の 異 文 化 経 験 か ら探 ろ う と して い る。 次 の掌編. 「ヨ ー ロ ッパ が の ぞ か せ る顔 」(1998年 ザ ル ツ ブ ル ク の 朗 読 会 で の 発 表)は 、 場 所 と. 言 葉 、 身 体 と色 彩 の 移 ろい と変 容 の認 識 と、 そ れ に 対 応 す る ア イ デ ンテ ィ テ ィの 揺 ら ぎ を扱 っ た 短 編 テ ク ス トで あ る。 冒頭 か ら映 像 的 な光 の 変 化 に 始 ま り、 ネ オ ンサ イ ン の 光 、 文 字 の 消 え た 店 の看 板 、 暗 い 家 の 窓 、 窓 か らせ り出す 身 体 と音 楽 、 直 接 的 な聴 覚 受 容 、 都 会 の 孤 立 感 、 寂 蓼 、 無 音 とい う個 々 の 言 葉 の 連 鎖 が 、 場 所 と身 体 性 と色 彩 の イ メー ジ 連 想 ・交 錯 を 生 み 出 して い る。 メ キ シ カ ン の 街 シ カ ゴ の 風 景 は 、 青 、 赤 、 緑 とい っ た 色 彩 感 覚(雑 居 的 視 覚)か ら、 呼 び 声 、 ロ笛 と い っ た 雑 駁 な聴 覚 へ 、 さ らに 文 字(視 覚)の 消 去 、 不 法 滞 在 者 の 消 失 か ら暗 黒 の 窓 へ と収 斂 し、 ウ ィ ー ン の 風 景 に 変 わ る と、 寂 蓼 感 か ら逃 れ よ う とす る移 民 た ち の 躍 動 的 な音 楽 と リズ ム が 、 窓 か ら直 接 語 り手 の 聴 覚 に入 り込 み 身 体 に 侵 入 す る。 さ らに 次 のベ ル リン の 風 景 で は 、 高 層 ビル か ら 見 下 ろす 人 間 の 媛 小 さ、 都 会 の 夜 の寂 蓼 感 、 窓 明 か り と無 音 の 世 界 へ と収 束 して い く。 雑 踏 的 な 色 彩 と音 響 の 流 れ が 、移 民 た ちの 自己 証 明 を 誇 示 す る符 牒 とな っ て 立 ち あ らわ れ 、 最 後 に都 会 の 寂 蓼 に飲 み 込 ま れ 消 え て い く とい うプ ロセ ス が み て とれ る。 次 に こ う した プ ロセ ス の 具 象 化 が さ らに 展 開 され て い く。 無 法 の都 市 シ カ ゴ か ら管 理 と統 制 の 行 き届 い た都 市 フ ラ ン ク フ ル トへ 語 り 手 は 到 着 す る。 こ こ か ら ドイ ツ語 とい う言 葉 へ の親 近 性 を感 じな が ら、 外 国 人 排 斥 や 管 理 と統 制 の 支 配 す る国 ドイ ツ を 再 認 識 す る。 次 の 場 面 は ま た シ カ ゴ の 下 町 に変 わ り、 語 り手 は 物 騒 な 通 り を 歩 き な が ら、 疎 外 され た 自 己証 明 を執 筆 に 求 め る。 シ カ ゴ の11月 、 ハ ロ ウ ィ ン の季 節 を語 りつ つ 、 仮 装 して 外 出 す る語 り手 は 自分 の ア イ デ ンテ ィテ ィ を揺 さぶ られ る。 「 無 の 中 か ら巨 大 な も の をつ く り出 す こ と」 が 得 意 だ とい う述 懐 は 、 作 家 活 動 を暗 示 す る。 場 所 と記 憶 の 関 係 に つ い て の 省 察 か ら、 ポ ル トガ ル で の記 憶 を た ど り、 「 熱 い 欲 望 」 とい う希 望 と 「よそ 者 で あ る こ と の恥 辱 」 とい う絶 望 、 希 望 を持 た ぬ こ との 無 欲 の 報 酬 につ い て 語 る。 さ ら に ま た シカ ゴの 場 面 と な り、 メ キ シ コ人 社 会 に お け る 白人 の よ そ 者 と して の 自 己意 識 、 外 国 語 と母 語 の 交 錯 ・衝 突 ・ず れ の認 識 、 ア イ デ ンテ ィ テ ィ のす り替 え と 日常 へ の 帰 還 が 語 られ る。 慣 れ 親 しん だ も のへ の 憧 憬 と現 実 の 裏 切 り とい う乖 離 の 感 情 が 、 ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 多 様 化 を 促 し、ぺ ル ソナ を装 う自 己像 を生 み 出 して い く。 テ ク ス トは 、 視 覚 的 な映 像 表 現 か ら、音 響 へ 、 さ らに 味 覚 表 現 へ と統 覚 的 な 退 行 感 覚 の 流 れ を 示 す が 、 これ は過 去 の 追 憶 とい う退 行 的 自 己像 と、 記 憶 を物 語 に変 容 す る こ とで現 実 を認 識 す る作 家 の ヴ ァー チ ャル 的 な 自己 像 を 同 時 に提 示 して い る。 エ ッセ イ 「亡 命 ー. 「 『苦 悩 』 の み が 残 り、 『故 郷 』 は は る か 」」 は 、 『マ ンハ ッタ ン 憧 憬 一 ニ ュ. ー ヨー ク 文 学 探 索 』(バ トモ ス 出 版2004年)に 掲 載 され た エ ッセ イ 集 の な か の一 章 で あ る。 こ の 本 は 、 ボ ー や メル ヴ ィル 、 ウ ィ ッ ・ トマ ン、 ドロ シー ・パ ー カ ー 、 トニ ・モ リ ソ ン、 ボ ー ル ドウ ィ ン 、 オ ー ス タ ー な どニ ュ ー ヨー クの 街 と関 わ っ た 作 家 た ち の 足 跡 を訪 ね な が ら、 文 学 的 磁 場 と して の.

(3) 多 様 な ニ ュ ー ヨー ク の 相 貌 を浮 か び 上 が らせ 、 さ ら に 亡命 作 家 た ちや 移 民 作 家 た ち の 生 き た 時 代 と現 在 の活 動 状 況 を詳 細 に描 き 出 した エ ッセ イ 集 で あ る。 と りわ けユ ダヤ 系 亡 命 作 家 た ち や ス ベ イ ン ・ハ ー レム に暮 らす ラテ ィ ー ノ作 家 た ち に 向 け られ る眼 差 しは 、 シ ョル 自身 の 越 境 性 と異 文 化 接 触 へ の 熱 い 想 い が 反 映 して い る。 多 士 済 々 の ユ ダ ヤ 系 ドイ ツ人 亡 命 作 家 た ち の 生 活 状 況 を 追 い な が ら、 異 郷 の 地 にお い て 異 な る 文 化 と言 語 の 狭 間 に 揺 さぶ られ 、 絶 望 と希 望 、 疎 外 と 同化 、 挫 折 と成 功 、 ノ ス タル ジ ー と嫌 悪 、 コ ミュ ー ン へ の 自 己 閉鎖 と離 脱 ・自己解 放 、 ユ ダ ヤ 的 伝 統 回 帰 と世 界 市 民 へ の 自覚 な ど、 両 極 に 振 り動 か され て い っ た 同 胞 作 家 た ち の 実 態 を活 写 して い る。 なお 、 最 後 に登 場 す るル ー ト ・ク リュ ー ガ ー の 作 品 『生 き つ づ け る』 は 、1997年 み す ず 書 房 か ら 鈴 木 仁 子 氏 に よ って 翻 訳 され て い る。 以 下 の翻 訳 は竹 内宏 に よ る も の で あ る。(土 屋). ウ ィ ー ン 、 リ ス ボ ン 、 シ カ ゴ 、 ニ ュ ー ヨー ク そ して ベ ル リ ン (住 む)場 所 が私 た ち の(心 の)あ. り方 を 変 え るか ど うか と尋 ね られ た ら私 は次 の よ うに答 え. るで し ょ う。 どの 土 地 に行 っ て も違 う種 類 の 抵 抗 感 が 生 じる の で す 、 と。 例 え ば私 が 、壁 の 崩 壊 後 に ポ ル トガ ル か らベ ル リン に 帰 っ て 来 た と き に 違 和 感 を感 じ苛 立 っ た の は 、 西 側. 「 世界」 の鈍. 感 さ、 つ ま りは 陶 酔 的 な 幸 福 感 が 支 配 し議 論 が行 な わ れ て は い る もの の 、 西 側 が 「 オ ッ シー(壁 い られ る旧東 ドイツ の人 々 の蔑 称: 訳者 」 を軽 蔑 し表 面 的 に しか 注 目 して い な 崩壊後用 い とい う こ とで した 。 仮 定 の話(も. し∼ だ っ た ら ど うだ ろ うか)が 今 や 現 実 に な っ た の です 。 硬 く 固 ま. っ て い た もの が 動 き 出 した の に 、 人 々 は 根 本 の と ころ で そ れ ま で と 同 じ よ うに や っ て い こ う と し た の で す 。 懐 疑 を抱 い た ま ま の ウ ィー ン は これ らの 問 題 を 直 接 的 に は ま だ 知 りま せ ん で した 、 も っ と も 、 ウ ィ ー ン は今 で は す で に 、 東 西 間 の 「リオ グ ラ ンデ 」 と呼 ば れ る こ とが あ りま す 。 こ こ (ウ ィー ン)で は私 は 後 に 、 偶 然 窓 の 外 を覗 く と き に は 何 度 も繰 り返 し出 会 わ な い で は い られ な い 、 向 か い の 家 か らの 難 民?、 外 来 客?、 労 働 者?の. 毎 日の視 線 を 煩 わ し く思 うこ とに な りま す 。. こ の視 線 は私 の お 向 か い さん に な っ た の で す が 、 そ れ は 私 が 選 ん だ も の で は な い の で す 。 彼 が な ぜ い つ も私 の 部 屋 の 中 を覗 き こ も うとす る の か を私 が 理 解 し よ う と して も 、 そ れ は 、 「 私 に は誰 と ど こで 出 会 うの か を選 択 す る権 利 が あ る はず だ!」. と さ さや き か け る感 情 を 抑 え る助 け に な る. わ け で は あ りませ ん 。 ウ ィー ン は一 そ して そ の よ うな とき 私 は ウ ィー ンそ の も の な の で す が 一 す で に 、 見 知 らぬ も の(異 分 子)に. 対 して 扉 を 閉 ざ して しま っ た の で す 。 こ こで 私 た ち は 、 人 間 は. 半 分 で も 自分 を 確 立す る た め に 、 他 人 とそ して 境 界 を どれ ほ ど必 要 とす る の か とい う こ と を思 い 出 し ま した 。 そ れ は 私 が 育 っ た 田舎 の 村 で 始 ま っ て い た こ とな ので す 。 そ こで は 人 々 は 、 他 に ど う しよ うも な い とき に は 、 差 異 を作 りだ す た め に ほ とん ど 目に 見 え な い もの を持 ち 出す も の で し た 。 悪口 を言 う楽 しみ!誰 か の 悪口 を 言 うこ とは 、 そ の 人 を 隔 離 し、 そ の 離 れ た と こ ろか ら眺 め 、 「 私 た ち」 の 仲 間 で は な い 人 間 と して 押 し退 け る こ とな の で す 。 そ の た め の パ ラ メ ー ター(決. 定. 的 要 素)は 何 で もい い の で す 。 こ うい う こ とが 至 る と こ ろ で 起 き て い る と、 私 は 知 っ て い ま す 。.

(4) 理 由づ け だ け が そ の都 度 、 歴 史 的 及 び 文 化 的 特 色 に 規 定 され て 、 異 な る の で す 。 自分 が よそ 者 だ と感 じた 経 験 を持 つ 人 、 あ るい は よそ 者 扱 い され た 経 験 を持 つ 人 は 、 常 に 自分 に しが み つ い て い る人 よ りも 、 異 な る もの を 良 く感 じ と る こ とが で き ま す 。 私 が 疎 外 や 異 化 に 興 味 を 持 っ た の は 、 外 国 で繰 り返 し外 国人 の 立場 を経 験 して 以 後 の こ とだ けで は あ りませ ん 。. 人 生 の経 歴 の こ うい っ た 折 れ 目か らは創 造 的 な エ ネ ル ギ ー を汲 み 出 す こ とが で きま す 。 そ れ に よ っ て 、 い つ も 「自分 自身 」 だ け に しが み つ い て い た と き に は ほ とん ど明 らか に な らな い 、 社 会 的 、 政 治 的 、 階 層 的 、 文 化 的 そ して 言 語 的 に 与 え られ た 条 件 が 明 らか に な る の です 。 けれ ど も こ れ は ま た 混 乱 の 原 因 に もな りえ ま す 。 な ぜ な ら、 橋 渡 しをす る こ との で き な い 違 い も か な り,あり、 矛 盾 の 多 くは 塊 の ま ま 残 り、 不 快 で 煩 わ しい もの だ か らで す 。 こ の こ とに つ い て ヴ ィ レ ム ・フル ツサ ー(Vilem  Flusser ア メ リカ の 社 会 学 者)は 移 民 に 関 す る 自著 の 中 で 次 の よ うに 言 っ て い ま す 。 「 習 慣 とい う毛 布 を 剥 が して み れ ば 何 か が 見 えて く る。 そ の と きす べ て が 異 常 で 奇 怪 な 、 こ と ば の 真 の意 味 で 〔ぎ ょ っ と させ る ent-setzlich〕(entsetzlich とは本来 、途 方も な いと こ ろに 移 す 、 の 意:訳 者)も の に な るの だ 」 。 こ とば を用 い て の仕 事 は 、 混 乱 の 中で な お 、 経 験 した も の を整 理 し、 文 学 と い う形 で よ り高 い レベ ル に 持 っ て 行 く最 善 の試 み な の で す 。. 私 の 関 心 を 引 く芸 術 に 関 わ る事 象 は 結 局 の と こ ろす べ て 、 一 見 す る と相 容 れ な い もの の橋 渡 し を し宥 和 させ る こ とに 関 わ っ て い る とい う考 え 、 そ れ は様 々 な 現 象 の 間 の亀 裂 や 破 れ 目の 中 か ら 緊 張 を 引 き 出す 異 種 交 配 物 を 扱 う仕 事 で あ る とい う考 え が 私 に 浮 か ん だ の は 、 ハ ン ブ ル ク在 住 の ,女 性 作 家 多 和 田葉 子 と彼 女 の 執 筆 手 法 に つ い て 話 した とき で した 。 自分 のパ ソ コ ン を 用 い て彼 女 は 、 自分 の 母 国 語 と ドイ ツ語 と の 間 、 つ ま り 日本 語 の 絵 文 字(表 意 文 字)と. ヨー ロ ッパ の 抽 象 的. な 表 音 文 字 を何 度 も往 復 す る の です 。 そ して こ の 絶 え 間 の な い 異 化 の 中 で 信 憑 性 は妨 げ られ て し ま い ます 。 そ こか ら生 ま れ る も の は ど こ か 、 な に か し ら中 間 的 な も の で あ りな が ら、破 綻 す る こ と も あ りま せ ん 。 しか し今 、 い くつ もの 文 化 が 一 緒 に な る な るな らば 、 そ れ は どの よ うな こ と に な る で し よ う。 境 界 を 区切 る こ とは避 け られ ま せ ん 。 そ れ は い つ で も 目 にす る こ とが で き る の で す 。 例 え ば シ カ ゴ です 。 異 分 子 へ の 不 安 は こ こ で は ヨー ロ ッパ とは違 う形 で現 わ れ ま す 。 ドイ ツ あ る い は フ ラ ン スや イ ギ リス で も 、 異 分 子 の 同 化 を 目標 に 厳 しい 努 力 が 続 け られ て い ま す 。 二 つ の 文 化 の は ざま に第 三 の レベ ル を 作 り出 す 余 地 は ほ とん どあ りま せ ん。 白人 に よ っ て 歴 史 の 経 過 の 中 で 引 き起 こ され た 、 原 住 民 、 ア フ リカ か ら拉 致 され た 黒 人 、 征 服 者 そ して 移 民 か ら生 ま れ た 複 雑 な 異 種 交 配(混 血)が 存 在 す るア メ リカ 大 陸 諸 国 に お い て は 、境 界 区分 は ヨー ロ ッパ の よ う に は 可 能 で は あ りま せ ん。 単 純 化 して 言 え ば 、 隔 離 とい うの は 否 定 され ます 。.

(5) 私 が ウ ィー ンで 手 を つ け た こ とが 、 私 の シ カ ゴ滞 在 に よ っ て 偶 然 に 続 行 され る こ とに な りま し た。 そ の 際 私 の 関 心 を と りわ け 、 ア メ リカ 合 衆 国 と メ キ シ コ との あ い だ の軋 礫 に 満 ち 問題 の 多 い 境 界 文 化 に 向 け た の で す 。 こ の 関係 が軋 礫 に 満 ち 問題 が 多 い の は と りわ け 、 い わ ゆ る 第 一 世 界ー ア メ リカ合 衆 国 をそ もそ も こ こ に加 え る こ とが で き る と して です が 一 の 中 の 第 三 世 界 の存 在 を 指 し示 して い る か らで す 。 そ の植 民 時 代 以 前 の歴 史 の 文 化 的 ル ー ツ を求 め て ゆ く と、 メ キ シ コ 系 な い し は ラ テ ン系 マ イ ノ リテ ィ に お い て は 、 古 い神 話 、 例 え ば ア メ リカ=イ ン デ ィア ン の 神 話 を 再 検 証 す る こ と が い や 増 しに 必 要 とな る の で す 。 これ らの 神 話 は 現 代 の文 脈 で再 活 性 化 され 一 種 の 文 化 的 リサ イ ク リン グ に よ っ て ア イ デ ン テ ィ テ ィの 発 見 に貢 献 す る こ とに な る で し ょ う。 た び た び 引 き合 い に 出 され る 「 坩 堝/メ ル テ ィ ン グ ポ ッ ト」 は 拒 否 され ます 。 違 い は 溶 け 合 わ され よ う と は しま せ ん 。 正 反 対 の 性 質 の 混 合 、 も っ とは っ き り言 え ば 、 混 合 主 義 が 、 ア ウ トサ イ ダー 及 び マ イ ノ リテ ィ に周 辺 現 象 と解 釈 され て き た彼 らの伝 統 を 保 持 す る こ と を 可 能 にす る の で す 。. 現 在 私 が 住 ん で い る町 で あ る ベ ル リ ン で は 、 す べ て の 家 々 が 同 じ高 さ で 、 一 緒 に な っ て 空 との 境 界 を築 い て い ます 。 路 上 、 そ して 地 下 鉄 で ドイ ツ 語 が私 の 耳 に 入 りま す 。 ま れ に ロ シ ア 語 、 ポ ー ラ ン ド語. 、 ク ロ ア チ ア語 が 、 時 々 トル コ語 、 ア ラ ビ ア語 が 聞 こ え ま す 。. シカ ーゴ が ど のく らい 恋 しい か い、 と夢 の 中 で あ る友 人 が 私 に 尋 ね ま した 。 「シ カ ゴ は ど うだ い」と 「 そ こ が 恋 しい か い 」 との 混 合 が移 行 状 態 を物 語 っ て い ま す 。 私 は 完 全 にそ こ に い るわ け で もな い し、 完 全 に そ こか ら離 れ た わ け で も あ りませ ん 。 シ カ ゴ で 私 は 、 第 一 世 界 と第 三 世 界 との 重 な り合 い の 中 で感 じた 初 期 の 違 和 感 の 後 、 私 の 生 活 を あ らた め て 組 み 立 て 直 す こ とが で き て い ま した 。 私 の ヨー ロ ッパ 的 部 分 は ポ ー ラ ン ドの 惣 菜 店 の 臭 い と 味 の 中 に相 応 しい 対 象 を 見 出 し、 オ ー ス ト リア に しろ ポ ル トガ ル に しろ カ トリ ッ ク の 国 々 の刻 印 を 受 け た 私 の 美 的 感 覚 は 、 メ キ シ コ の イ コ ン(聖 画 像)の 大 衆 性 と情 念 に 自 ら の 姿 を 認 め る こ とが で き ま した 。 私 が 教 え て い た ポ ル トガ ル の 大 学 の 、 河口 に位 置 し霧 に 湿 っ た キ ャ ン パ ス に は 、 ミ シガ ン湖 畔 の 地 形 が ほ ぼ 対 応 して い ま した。 ニ ュ ー ヨー クの 速 い テ ン ポ の 生 活 で そ の あ と私 は 、 い わ ゆ る 民 族 的 多 様 性 を 目の 当 た りに して しば しば懐 疑 の 念 も浮 か び ま した。 とい うの も 、 地 下 鉄 の 通 路 で あ る 場 所 で は ア ン デ ス 生 ま れ の イ ンデ ィ オ 音 楽 を 聞 き 、 次 の 場 所 で は チ ェ コ 人 のハ ー モ ニ カ 奏 者 を、 さ らに そ の 次 の 場 所 で は 、 ジ ャ ズ の 大 御 所 「Take  5」 の 曲 を何 とか 音 に し よ う とす る ス テ ィ ー ル ドラ ム奏 者 を 聞 く とい うこ とは 、 何 を 意 味す る の だ ろ うか と思 うか らです 。. しか しな が ら、様 々 な 文 化 の 共 生 の 中 に 違 い を認 め る の か そ れ と も共 通 性 を 見 出す の か は 、 そ の 人 が決 め る こ とな の で す 。 共 通 性 は 、 最 低 限 の 同等 性 が 生 み 出 され て初 め て 目に 見 え る もの に な る の で す 。 そ して も しか した らこ の こ とが 、黒 人 作 家 の ジ ェ イ ム ズ ・ボ ー ル ドウ ィ ンが そ の ヨ.

(6) 一 ロ ッパ 滞 在 の あ と明 言 して い る通 り、 なぜ ヨー ロ ッパ は解 決 策 一 つ 分 だ け ア メ リカ に 先 ん じる こ とは な く、 問 題 一 つ 分 ア メ リカ に遅 れ を と っ て い る の か 、 そ の 理 由 な の か も しれ ま せ ん。 そ し て 、 世 界 の よ り貧 しい 地 域 か ら西 側 世 界 へ とお し寄 せ る移 民 の 統 合 の 必 要 性 が ます ま す 緊急 の も の に な っ て い る とい う彼 の 見 解 は 、 ア メ リカ に も ヨー ロ ッパ に も同 じ よ うに 当 て は ま る の で す 。 「 西 側 世 界 が 、 つ ま りは 西 側 世 界 の 人 間 の こ とだ が 、 これ を達 成 で き な けれ ば 、私 た ち に は も は や 未 来 は な い 。 な ぜ な ら ば 、 今 や 何 世 紀 もの 暗 黒 と抑 圧 の時 代 の 中 か ら外 に 出 て く る人 々 は 、 二 度 と そ こに 戻 ろ うな ど とい う意 志 は 持 た な い か らで あ る」。 ヨー ロ ッパ が の ぞ か せ る顔 ビニ ー ル シ ー トの後 ろ で は 夜 に な る と青 み が か っ た 光 が 点 る 、光 の しみ が 、 位 置 をず ら しな が ら、 再 び 立 ち 上 が り、 間 隔 の パ ター ン を 変 え 、 映 す 影 も変 化 す る。 下 の 歩 道 で 誰 か が 叫 び 声 を 上 げ る と き、 男 た ち は シー トをは ね の け る 、 上 の 方 の 風 雨 に さ ら さ れ た 赤 い 色 の 店 看 板 に は 、 「THE LE DER  STORE」 、Aが. 消 え て しま っ て い る。 ガ ラ ス の入 っ て. い な い 窓 の 上 方 に は 緑 色 の 飾 り模 様 。 暖 か な うち は 、 季 節 労働 者 で あ る わ が メ キ シ コ人 の 隣 人 た ち が 毎 日姿 を見 せ る、 そ して彼 らも 、 私 が 玄 関 ドア を 開 け て 出 る と、 私 を 見 て口 笛 を吹 く。11月 中旬 の 初 霜 と とも に 、 不 法 滞 在 者 た ち は 姿 を 消 す 。 南 に帰 る の だ 。 荒 れ 果 て た 家 の 窓 は み な 暗 い ま ま だ 。Aが. 欠 け て い る、 相 変 わ ら. ず。 ウ ィー ン で は 向 い の 家 の難 民 た ち が 窓 に ガ ラ ス は 入 れ た もの の 、 彼 らは 寂 し さの あ ま り窓 を 引 き 開 け 、 窓 の 穴 か ら上 体 を 乗 り出 して ボ リュ ー ム を 上 げ た 音 楽 に合 わ せ て 身 体 を揺 す る。 彼 らは テ ー ブ ル に 上 体 を もた せ か け た 私 を 、横 にず れ た そ の顔 を 見 た 、 そ して彼 らの リズ ム と歌 声 が遮 る もの も な く私 の 耳 に突 き刺 さ る。 バ ル カ ンの 地 は ほ ん の 数 メ ー トル 目 をや っ た 通 りの 向 うま で の 距 離 しか な い。 一 方 ベ ル リン で は 、 隣 人 た ちは 私 の 鉛 筆 の 先 端 く らい の 大 き さで しか ない 、 時 に は 両 方 の腕 が だ ら りと、 手 が 、 煙 草 を持 っ て 喫 っ て い る。 待 降節 の カ レ ン ダ ー が 彼 ら の家 だ っ た 、 夜 が 近 づ く と灯 りが 点 滅 す る。 接 触 は 何 も な い 、 こ と ば も 、 何 の 音 も 聞 こ え な い 。. シ カ ゴ か らや っ て 来 て 、 私 は フ ラ ン ク フル トに着 陸 す る、 こ とば が 急 に これ ほ ど近 く感 じる 、 一 語 一 語 が は っ き り と、 そ して 路 面 電 車 の停 留 所 で は(パ. トカ ー の)青 色 警 告 灯 が 軌 道 を横 切 り、. 二 人 の警 官 が 獲 物 を誇 る、 ア ラブ 系 の 顔 、 そ の 男 は ゆ っ く り歩 く、 身 体 を ま っ す ぐ立 て て 、 警 官 は 不 安 を 見 せ る、 ま る で 全 く抵 抗 しな い 男 を逃 が して しま う こ とが あ るか の よ うに。 男 は煙 草 に 火 を つ け る、 待 つ 覚 悟 を して 。 辺 り一 面 を 見 て も男 の 犯 罪 の痕 跡 は 見 え な い 、 被 害 者 も い な けれ ば 、 目撃 者 もい な い。 そ れ か ら人 員 増 強 、 警 察 だ 、 今 や5人 に な っ た 、 動 か な い外 国 人 を見 張 る.

(7) ため。 そ れ か ら栄 養 も服 装 も良 い人 た ち の 世 界 に 飛 び 込 む 、 ブ レー ツ ェ ル ス タ ン ドと コー ヒー シ ョ ッ プ 、 肉屋 が 並 ぶ 世 界 、 番 号 別 に 重 量 を測 り、 若 い トル コ人 が ブ ドウ を安 売 りす る フル ー ツ ス タ ン ドの 世 界 、 自然 食 品 の 店 、 不 安 や 便 秘 、 イ ン ポ テ ン ツ の 治 療 薬 を備 え た 薬 局 の あ る世 界 へ 。 私 は 堀 り進 む よ うに歩 く 、 並 木 道 沿 い に 、 丹 念 に刈 り込 ま れ 手 入 れ され て い て 、行 き た い と こ ろ に私 を運 ん で くれ る 市 電 の よ うに機 能 す る。 私 は 外 へ と押 し進 み 、 青 色 警 告 灯 が 平 らな 歩 道 を照 らす 、 穴 も な く、 ゴ ミ も落 ち て い な い 、 し か し老 女 が 一 人 横 た わ っ て い る、 路 上 に 、 パ ー マ を か け 、 うす 茶 色 の 上 着 、 青 い トレパ ン 、 た だ 身 じろ ぎ も しな い。 は ね られ た ん だ 、 と、 そ の 前 に 二 列 で 立 っ て い る 野 次 馬 た ち が 言 う。 私 は先 に進 み 、 磁 気 テ ー プ の つ い た カ ー ドを機 械 に通 す と突 然 女 た ち に 取 り囲 まれ る、 女 た ち億 ピ ン ・ス トライ プや ツー ピー ス 、 で き る だ け体 に ぴ っ た り した もの を着 て 、 鋪 装 した 広 場 を 急 い で 横 切 っ て行 く 、 そ こ に は 巨 大 な本 が 、 ひ ょっ と した ら箱 か も知 れ な い が 、 落 ち て 来 た 。 そ の片 隅 は落 ち窪 み 、 私 は そ こ へ と進 ん で 行 く。. 私 が 疲 れ た とき は 、 モ ー ド雑 誌 で 興 味 を持 っ て 眺 め る洋 服 を着 て い る よ うだ 。 決 して そ ん な服 は 着 な い だ ろ う、 そ れ は わ か って い る の だ が 、 そ れ で も そ の 瞬 間 は 、 そ れ を着 て い る と思 い 込 む の だ 、 そ して 私 の 目は 輪 郭 を な ぞ り、 色 を思 い 浮 か べ 、 ス タイ ル を 当 て は め て み る、 最 後 に は決 して 自分 の も の で は な い 髪 型 や 表 情 ま で 。 そ れ で もや は り私 は そ れ を 身 につ けて い る の だ 、 誓 っ て もい い 、 そ して 全 く同 じ よ うに 私 は シ カ ゴの 傷 ん だ 歩 道 を歩 く、 深 い 割 れ 目は迂 回 し、 た っ ぷ ゲ. ラ. ゲ. ラ. り と散 ら ば る割 れ た 瓶 の か け らを 飛 び 越 え 、 「白人 女 、 白人 女 」 と囁 い て い る フ ー ドを か ぶ っ た メ キ シ コ 人 の顔 を避 け 、 扉 に 鍵 の か か っ たバ ー を通 り過 ぎ 、 南 西 部 風 カ ウ ボ ー イ ブ ー ツや夕 日 を プ リ ン ト した フ リン ジ の シ ャ ツ を 満 載 した商 店 、 ギ ャ ン グ と ドラ ッ グ 禁 止 の 立 て看 板 を 通 り過 ぎ、 二 週 間 前 に発 砲 沙 汰 が あ っ た 木 の 屋 根 の フ ァー ス トフ ー ド店 を 通 り過 ぎ る 、 死 者 が 一 人 出 た 、 そ して 私 は 郵 便 局 の と こ ろ ま で 辿 り着 い た 、 そ の 両 開 き ドア が 開 く、 自動 で 、 そ して 私 は他 の 人 に 続 い て 中 に入 る。 誓 っ て もい い が 、 この 区 間 を お よそ10分 で 歩 い て 来 た の は 私 自身 な の だ 。 しか し、 私 の 言 うこ とを信 じ、 そ れ を私 の た め に 証 明 して くれ る者 は 、 ど こ に い る の だ 。 全 く 同 じよ うに 私 は ウ ィ ー ン に も 、 あ る い は 考 え の 中 に も い る こ とが で き る。 事 実 な の は 、 私 の 身 体 が も の を 書 い て い る とい うこ とだ 、 だ が 何 を 。. 私 た ち は仮 装 す る 必 要 な どな い 、 現 実 は 十 分 に お ぞ ま しい。 怪 物 に な るた め に 仮 面 が 必 要 とい うこ と も な い 、 と新 聞 に 書 い て あ る。 そ して 鳥 た ち 、 木 の 葉 が 水 に 向 か っ て 落 ち 、湖 は 波 とな っ て岸 辺 に 打 ち 寄 せ 、 冷 た い 風 が な め ら か な 水 面 を 掻 き 立 て る 、 光 だ け が暖 か さ を与 え、 水 辺 を く.

(8) っ き り と際 立 た せ 、 最 後 に は 太 陽 が 家 々 の 間 に 姿 を見 せ 、 次 々 と現 われ る影 た ち を寒 さ の 中 に 置 き 去 りに す る 、11月 で 、 私 の新 聞 か らハ ロ ウ ィ ン用 品 の カ タ ログ が 落 ち る。 しわ だ ら け の手 の 形 を して 血 の 色 の 雫 を滴 らせ た蝋 燭 、傷 に貼 るテ ー プ 、 銃 創 、 ナ イ フ に よ る傷 跡 、 空 気 を入 れ て 膨 らませ る蝙蝠 の 羽 根 、 フ ラ ン ケ ン シ ュ タイ ン用 の メ イ クセ ッ ト、 お 化 け の マ ス クが 入 っ た ゴ ミ袋 、 蛍 光 色 の骸 骨 、蜘 蛛 の指 輪 、99セ ン トの 値 段 が つ い た髑髏 の 形 の ボ ー ル ぺ ン。 私 は そ の 世 界 に 飛 び 込 む 、 十 本 の指 に つ け 爪 をつ け、 頭 に は カ ツ ラ を つ け た と こ ろ を 思 い描 い て み る が 、 そ れ は 私 の 姿 を際 立 た せ 引 き さ ら う、 私 は 幽 霊 ど も を 追 い 払 うた め に こ の ア イ デ ンテ ィテ ィ の ゲ ー ム で 自 分 を 際 立 たせ る 、奴 らは新 しい もの の妨 げ に な る の だ 。 変 身 の あ と私 は 再 び 仕 事 に 取 りか か る 、 家 か ら出 て 、 麦 わ ら玉 、 そ れ か ら前 庭 や ベ ン チ に置 か れ た カ ボ チ ャ の 塊 と調 子 を合 わせ る。 こ こ シ カ ゴで は 、 死 体 は 埋 葬 す る代 りに 家 の 前 に 置 く。 彼 らが そ の 場 所 を 占 め て い る 問 、 だ ん だ ん寒 くな っ て い き 、 す で に私 の 足 の 指 は 凍 え て い る、 そ して そ の 後 ク リス マ ス が 近 づ き 、 商 店 が 、鹿 が 、樫 の 木 が、 トナ カ イ が 、橇 が 、 天 使 が 今 や 家 々 の 前 に 並 び 立 つ 、 そ の 間 骸 骨 は 休 ん で い る 、 来 年 に な っ て 、 面 白半 分 に甦 る ま で 。. 無 の 中か ら、 巨大 な も の を考 え 出 す こ と 、 この 点 で は 私 は前 か らず っ と優 れ て い た 。 人 々 は 目 の 前 に 白い プ ラ スチ ッ ク の コ ップ を 差 し出 して い る 、 蓋 をつ け て 、 ど っ ち を 向 い て もそ の 印 象 を ぬ ぐい 去 る こ と は で きな い 、 こ うす れ ば彼 らの 内 側 が こぼ れ 出 す こ とは な い。 さ て こ こ で 、 こ の 土 地 の 散 漫 さに つ い て 、 私 の 考 え を ま とめ よ うか 。 私 が 知 りた い の は 、 ど うして 記 憶 が あ る場 所 に 来 る と 口を 開 け 、 さま ざ ま な も の に 自分 を縛 り付 け るの か 、 ま た 別 の 場 所 で は金 輪 際 開 か れ る こ とは な い の か 、 後 か らや っ て 来 る も の に 対 して 、 とい うこ とだ 。 私 は どの よ うに あ の 町 を 思 い 出 せ ば ば い い だ ろ う、 私 が住 ん で い た ポル トガル の わ が 町 を 、 そ れ は今 で は違 う姿 で 存 在 して い る とい うの に。 私 が歩 い た通 りは 、 今 日で は も う通 りで は な くな っ て い る 、私 が 買 い 物 を した 商 店 は廃 業 して い た 、 ボ ー トは 新 しい も の に 替 り、 私 の家 は 広 場 で い ち ば ん 高 い 建 物 で は な く な っ て い る とい うの に。 現 実 を手 中 に して い るの は誰 な の だ 。 出 て 行 っ た者 か 、 そ れ と も残 っ た 者 か。 そ して 、 再 び リス ボ ン に 降 り立 っ て み る と突 然 記 憶 が 開 け る。 「田舎 の 」 とか 「の ん び り した 」、 「 美 しい 」 とい っ た こ と ば が 再 び 意 味 を持 つ 。 そ れ らは 単 な る 決 り文 句 に成 り果 て て い た 、 ど う とい うこ と もな い 会 話 の 中 で 。 しか し突 然 、 そ れ らは物 凄 い ス ピー ドで 満 た され る。 耳 な れ な い こ とば の 端 々 が 、 た め らい が ち に 、 しか し必 要 な も の と して 、 や っ て 来 る。 この 町 で は ま だ 、 見 る とい うこ とが 行 な わ れ る 、 「 凝 視 Starren」 と シ カ ゴで な ら言 うだ ろ う、 ウ ィー ン な ら 「 見つ め る Glotzen」 だ。 閉 ま っ て い る窓口 の 前 で 立 ち尽 くす 、 中 で は係 員 が コー ヒー を飲 み 煙 草 をす い な が ら談 笑 して い る。 私 が こ こ で暮 ら して い た こ ろ も全 く 同 じだ っ た 、 そ して 今 も全 く変 らな い 。 そ して、 私 に 数 々 の 華 や か な 瞬 間や 光 あ ふ れ る 時 、 熱 い 欲 望 の 記 憶 を語 っ て くれ た 思 い 出 が 、 そ の 前 に 起 こ っ.

(9) た こ とを 再 び 覆 い 隠 した。 そ れ は 、 よそ 者 で あ る こ との 恥 辱 、 意 味 の な い 待 ち 時 間 と無 駄 な努 力 だ。 何 も望 ん で は い け な い の だ 、 望 ま な い と き だ け 、何 か が 起 き る こ とが 可 能 に な る。 私 は こ の メ ッセ ー ジ を 飲 み 込 み 、腰 を 下 ろす 。 一 時 間 後 、 彼 らは 窓口 を 開 け る。 よ うや く私 は 到 着 した の だ 、 こ こ に。. 私 が シカ ゴで い つ も の 通 りを 歩 く と、 白人 に は 出会 わ な い。 私 は 例 外 だ 。 黒 人 の 買 い 物 客 と店 員 、 褐 色 の メ キ シ コ女 性 、 髪 は 長 く、 白 い ア ノ ラ ック を 着 て い る 、 ブ ー ツ を履 い た 年 配 の ラ テ ン 系 男 性 、 ウエ ス タ ンハ ッ トを か ぶ っ て い る 、 時 折 、 藤 色 に染 め てパ ー マ を か け た ポ ー ラ ン ドの 女 た ち。 彼 女 ら は少 な くな った 。 私 が バ ス に 、 地 下 鉄 に乗 る 時 、 そ れ が 私 の 人 種 の 場 所 で は あ り得 な い こ とを 知 っ て い る。 公 共 交 通 機 関 を使 う者 は 敗 北 者 に違 い な い ヽ と、 他 の乗 客 た ち の頭 の 中 の 入 念 に仕 分 けす るカ ー ス ト制 度 が 考 え る 。 白人 な ら車 く らい は 買 え る は ず だ。 私 は座 席 の い ち ば ん 手 前 の 隅 に 立 つ 、 そ こ は ア ン グ ロサ ク ソ ン 系 の た め の もの だ 。 黒 人 や メ キ シ コ 人 の た め の場 所 か ら は相 変 わ らず 遠 く離 れ て い る。 ラ テ ン系 とス ぺ イ ン語 を 話 そ う と して も 、 彼 らは ほ とん ど信 用 せ ず 、 英 語 で 答 え る 、 な ぜ な ら私 の 容 貌 は 、 こ こ の ス ぺ イ ン語 を 話 す 人 間 が 持 っ て い る は ず の容 貌 と は違 うか らだ 。 ア ン グ ロサ ク ソ ン 系 は スぺ イ ン語 を話 さな い 、 ア ン グ ロ サ ク ソ ン系 の スぺ イ ン語 は大 学 の 教 室 用 か ヨー ロ ッパ や 南 米 へ の旅 行 用 だ 。 路 上 用 、 自 国用 で は ない。. そ して そ の とき こ とば は傾 き 、 私 は 目の 前 に あ る も の を変 え る可 能 性(の 小 さ さ)に 愕 然 とす る、 自分 自身 の 中 か ら記 憶 を紡 ぎ だ し、 そ れ を物 語 に包 ん で 目 の前 に 据 え て い る 自分 の 姿 を 見 つ め て い る。 そ して 一 方 の こ とば に ま だ 住 ん で い る と い うの に 、 も う一 方 の こ とば が 横 か ら私 の 中 に 押 し入 っ て 来 る 、 ドイ ツ語 は 掘 り崩 され 、 語 り出 しの こ とば は英 語 で 出 て 来 る が 、 二 三 の 単 語 が 出 て こ な い とす ぐ に ま た 押 し戻 され て しま う。 あ る い は 、 思 考 が 表 面 を 滑 っ て行 く、 ひ と りで に 、 こ とば が 考 え る よ う命 じ る ま ま に 。 私 は 何 も手 を加 えず 、 「suffer」 とい う語 で 「Leiden」に つ い て の 知 識 を裏 切 る 自分 を 眺 め て い る。 本 当 は あ り も しな い 英 語 の 一 方 向 性 を 敢 え て 鵜 呑 み に し、 一 方 で は ドイ ツ語 の 「Leiden」の 多 義 性 に戦 い て い る。 た や す くで き て しま う裏 切 りだ 。 しか し ウ ィー ン に い た と した ら ど うな る だ ろ う。 私 の 部 屋 の 窓 の 前 の難 民 が 住 む 家 は 取 り壊 さ れ 、 土 地 は 空 い た ま ま だ 、 時 折 私 は この 住 居 の蔵 書 や 、 夢 で知 って い る もの 、 た い て い は食 べ 物 だ が 、 こ こ に は な い 色 々 な も の が 恋 し くな る。 た だ 私 が そ こ に 帰 っ た 時 、 着 い て み る と、 そ うい っ た もの は 決 して 、 私 の想 像 力 が こ こで そ う主 張 す る ほ ど美 味 し くな い の だ 。 私 は 以 前 そ うだ っ た よ り もそ れ らを美 味 し く して しま うの だ 、 そ して これ が 理 由 な の だ 。 つ ま り、 こ こ に 来 て 以 来 私 は 別 の も の に慣 れ て しま っ て 、 ウ ィー ン に 帰 っ て も 、 以 前 の 味 覚 の 中 に は も う入 り込 む こ とが で き な い 、 だ か ら慣 れ 親 しん だ も の を 期 待 す る気 持 ち に 裏 切 られ る の だ 。 長 い 不 在 の 後 で は刺 激.

(10) 抑 制 機 能 が もは や 十 分 に は働 か ず 、 全 く知 りた い とは 思 わ な い あ ら ゆ る もの 、 再 び 感 じた い と は 思 わ な い も の が す べ て 、 な だ れ 込 ん で 来 る の だ 。 そ れ は記 憶 の 中 に 押 し込 め られ て い て 、 今 や そ の 美 しい イ メ ー ジ が 躍 り出 る の だ 。 イ メ ー ジ の 中 の ゼ ン メ ル 丸 パ ン は 口の 中 で ぼ ろ ぼ ろ と味 気 な く崩 れ 、 イ メ ー ジ の 中の 公 園 は 老 女 と鳩 に よっ て もは や 輝 き を失 っ て い る、 そ して 私 は 大 急 ぎ で 引 っ 込 む の だ 。 こ とば!テ. ン ポ!人. と人 の 距 離!二. 三 日 して よ うや く私 に 微 笑 み が 戻 り、 町 は 再. び 扱 い 易 い もの に な って い る 、 大 ま か に 言 っ て だ が。 細 か い と ころ で は 私 は も は や 慣 れ 親 しん だ とこ ろ に い るわ け で は な い しそ れ を望 む こ と も な い 、 つ ま り、 そ れ に は 時 間 が か か りす ぎ る の だ 。 しか た な く私 は 自分 の 存 在 を ごま か し、 別 の 自分 を 差 し出 す 、 日々 の 生 活 の た め に。. 亡 命―. 「 『苦 悩 』 の み が 残 り 、 『故 郷 』 は 遥 か 」. ユ ダヤ 人 難 民 に と っ て ニ ュー ヨー ク は 安 全 な滞 在 地 で は あ っ た が 、 そ れ が 故 郷 に な る こ とは 稀 だ っ た 、 な ぜ な ら、 彼 らは 失 わ れ た故 国 の記 憶 を 忘 れ る こ とが で き な か った か らで あ る。 そ の 上 彼 ら は ニ ュ ー ヨー ク で 常 に歓 迎 され た わ けで は な い 。 「 移 民 の 町 とは 、 地 元 民 が移 民 た ち を 腕 の 長 さの 分 だ け体 か ら遠 ざ けて お くこ と を心 得 て い る町 で あ る」 と、 ル ー ト ・ク リュー ガ ー が 難 民 の 出 発 点 の 状 況 を 簡 潔 に 説 明 して い る。. こ とば の 問題. 経 済 的 困 窮 と 自分 の 職 業 の 続 行 が で き な い こ と に加 え て 、 異 国 の こ とば が 、 と. りわ け 作 家 や 知 識 人 、役 者 に と っ て 特 別 な 問 題 と な っ た。 マ ー シ ャ ・カ レ コが こ の転 換 の 困 難 さ を あ る 詩 の 中 で 皮 肉 を こ め て 叙 述 し て い る。 「 我 々 の よ う な 者 が ゼ ・レ ン グ ヴ ィ ッ チse lengvitsch(こ のこ とば=英語 の こと: 訳者) を 話 す と き/そ れ は 綱 渡 りの よ うな も の だ/文 の 構 造 は ぐ らつ き 、 文 法 は び っ こ を ひ く/た とえ ば テ ィ ・エ ー チ ti-ehtsch(th)が うま くで き る よ うな こ とが あれ ば/そ れ は お 祝 い をす る理 由 に な る 」 。 マ ー シ ャ ・カ レ コ は 、 は じめ か ら亡命 者 の 子 ども と して 、 ロ シ ア 人 の父 とオ ー ス トリア 人 の 母 の 間 に ガ リチ ア で 生 まれ た が 、 そ の詩 作 品 に よ っ てベ ル リ ンで よ うや く名 を あ げ た ば か りの 頃 に、 そ の 著 書 は 早 く も禁 書 と され 焚 書 に か け られ て しま った 。 そ の あ と彼 女 は ニ ュ ー ヨー ク に逃 亡 し、 と りわ け彼 女 の 息 子 の た め に 、 典 型 的 な 亡命 者 地 区 に居 を構 え る こ とを避 け た に も か か わ らず 、 異 国 へ の 同 化 は ま ま な らな か っ た。 英 語 は彼 女 の 詩 作 品 の 中で と こ ろ ど こ ろ欠 片 と して 、 た い て い は ドイ ツ語 の 表 現 との 比 較 の 中 で 現 われ る だ け で あ る。 故 郷 の こ とば は 、他 の 多 くの 亡命 者 に とっ て と 同様 、 彼 女 に とっ て 唯 一 の 古 里 とな り、 適 応 の 試 み は こ と ご と く喪 失 の 痛 み を背 負 わ さ れ て い た 、 こ の こ と を カ レコ は 「 小 さな 違 い 」 とい う詩 の 中 で 簡 潔 に 要 約 し て い る。 「グ ッ ドウ ィ ル 氏 Mr.Goodwill(善意. の人 、 の意味 が あ る: 訳者)に/あ. 〈 確 か に 同 じだ 、/私 がLandの たGedichtの. 代 りにpoemと. 代 りにlandと 言 っ て も./確. る ドイ ツ か ら の 亡 命 者 が 言 っ た/. 言 い 、/Heimatの. つ も りでhomelandと. か に 、 私 は とて もhappyだ:/だ. 言 い/ま. け ど もglucklich.

(11) か とい う とそ うで は な い 〉」。 しか し女 優 で 歌 手 の ロ ッテ ・レニ ャ は 、 ニ ュ ー ヨー ク で 第 二 の 成 功 を お さめ る こ と が で き 、 自 分 の 拙 い 英 語 の 欠 点 を 自 ら意 識 して プ ラ ス に 変 え て み せ た 。 「 だ っ て ア メ リカ で は誰 も本 当 に 英 語 を しゃべ っ て な ん か い な い 、 だ か ら も と も と訛 りは そ ん な に 目立 た な い 。 そ れ に 舞 台 の 上 で は 、 少 しば か り訛 りの あ る方 が ア メ リカ 人 に は魅 力 的 に 聞 こ え る く らい だ か ら」 。. 適 応 の 問 題  しか しな が ら こ とば だ け で な く 、 見 知 らぬ 環 境 、 文 化 的 な 相 違 とア メ リカ 流 の付 き合 い 方 も ま た 、 新 参 者 に は 苦 労 の も と と な る。 到 着 直後 はマ ンハ ッ タ ン の ス カ イ ラ イ ン(高層 群 の上 に覗く 空: 訳 者)が 威 圧 的 に 感 じ られ 描 写 され る。 摩 天 楼 は 暗 くて 否 定 的 な メ 建築 タフ ァ ー とな り、 通 りは 人 間 の 残 酷 さに 満 ち て い る よ うに 見 え る、 例 え ば ロー ゼ ・ア ウス レン ダ ー の詩 「ク レー ン 」 の よ うに 。 「 盲 目 の ネ オ ン の 眼 で/お 前 を ブ ロー ドウェ イ が 見 つ め て い る/二 人 の 使 徒 が/福 音 を わ め き散 らす/音 も な くク レー ンが/教 会 を蝶 番 か ら外 す 」 最 初 の 頃 の圧 迫 感 と並 ん で も ち ろ ん 、 よ うや くナ チ の迫 害 か らの 安 全 を保 障 して くれ た 環 境 に 対 す る感 謝 の念 も しば しば 環 われ る。 マ ー シ ャ ・カ レコ が 言 っ て い る よ うな 初 期 の 気 持 ちの 高 揚 で あ る。 「 最 初 の 数 年 間 、 私 た ち と こ の 町 と の 関 係 は 新 婚 ほや ほや の 男 と愛 す る花 嫁 の よ うな も の だ っ た。 す べ て が新 し くて 美 し く 、 そ れ ゆ え に(た だ そ れ だ け の 理 由で の こ とが 多 か った)魅 惑 的 だ っ た 。」. 成 功 し た女 流 作 家. 成 功 した女 性 作 家 の ヴ ィ ッキ イ ・バ ウム は 、 彼 女 の ア メ リカ の 出版 者 で あ. り代 理 人 、 ま た 作 家 仲 間 で も あ る シ ン ク レア ー ・ル ー イ ス に迎 え られ て 、 ま だ 移 住 は全 く考 え て い な か っ た彼 女 の 最 初 の 滞 在 で は 、 「 か つ て 見 た こ と もな い ニ ュ ー ヨー ク とい う舞 台 」 を楽 しん だ。 あ る ドイ ツ レス トラ ン に 入 っ た と き の こ と を彼 女 は 皮 肉 を こ め て 書 い て い る。 「レス トラ ン ・ル ンぺ ル マ イ ヤ ー に入 っ た と き私 は 最 初 、 シ ェ ー ン ブ ル ン動 物 園(ク. ィ ー ンに あ る: 訳者)の. オ ウ ム の檻 に入 り込 ん だ よ うな感 じが した。 ル ン ぺ ル マ イ ヤ ー は 女 た ち も し くは 淑 女 た ちー 金 と 閑 暇 が 女 を淑 女 に変 え る と して の こ とだ が一 の排 他 的 な 社 交 場 だ っ た 。 店 中 に 甲高 くて 騒 々 しい オ ウム の 鳴 き声 と け ば け ば しい 色 で溢 れ て い た 」。 彼 女 の 自叙 伝 『す べ て が 全 く違 っ て い た 』 の 中 で は 、 ア メ リカ の 女 性 に 対 す る彼 女 の論 評 は 酷 評 に 近 い もの に な る。 美 的 感 覚 の違 い に ヴ ィ ッ キ イ ・バ ウム は 最 初 か ら苦 労 した よ うだ 。 彼 女 の ヨー ロ ッパ 的 刻 印 を受 けた 洗 練 の感 覚 は ニ ュー ヨー クで は 違 う受 け止 め 方 を され た 。 彼 女 の 到 着 を報 じる 新 聞 は バ ウ ム の 姿 を、 「 典 型 的 な ドイ ツ の主 婦 」 と描 写 した と伝 え られ る 。 「 地 味 な 色 合 い で 、 大 き な足 に 底 の 平 らな 靴 を 履 い て い る 」、 これ に 対 して ニ ュ ー ヨー ク の 淑 女 は カ ラ フ ル で 高 い ヒー ル が 好 み だ っ た。 ヴ ィ ッキ イ ・バ ウ ム は 飲 み 込 み が 早 く 、 と りわ け メ イ ク の 女 性 に 濃 い 眉 を 細 い 弓 形 に刈 りそ ろ え て も ら うこ とに よ っ て 、 自分 の 容 貌 を ア メ リカ 風 に変 え た。 バ ウム が た い へ ん 苦 労 した の は 、 大 量 の ア ル コー ル 摂 取 と、.

(12) パ ー テ ィ な どで普 通 に行 な われ 、 服 装 の 決 ま りご とや 結 婚 生 活 の 問 題 に 関 す る会 話 に 自分 を 追 い や っ て しま う、 男 と女 の仕 切 り分 け だ っ た。. 女 性 哲 学 者  自分 の職 業 を も はや 続 け る こ とが で き な か っ た 他 の 多 くの 難 民 よ り も は る か に恵 ま れ た地 位 に 、 い く らか 苦 労 した後 到 達 した の が 、 哲 学 者 ハ ンナ ・ア ー レン トで あ る。 ア ー レン トは 夫 の ハ イ ン リ ヒ ・ブ リュ ヒ ャ ー と と も に1941年 に 二 ュー ヨー ク に 渡 り、50年 代 以 降 ウェ ス ト サ イ ドの リヴ ァー サ イ ド ・ ドラ イ ヴ370、 他 の ドイ ツ語 系 難 民 た ち の近 く で 暮 ら した 。 生 活 費 を 切 り詰 め る た め 又 貸 しの 下 宿 人 ま で 置 い て い た ア ー レ ン トの 薄 暗 い住 居 か ら は 、 ク ラ ク フ ピ ア ノ 工 場 の 看 板 と 当 時 は 酷 い 状 態 に あ っ た 公 園 が 見 え た 。 こ の 女 性 哲 学 者 は 、 ア ウ フ バ ウ誌 (Aufbau)と. 雑 誌 ユ ダ ヤ 社 会 学 報(Jewish  Social  Studies)に 原 稿 を 書 き 、 講 師 と して 社 会 研 究新. 学 校(New  School  for  Social  Research)で. 教 え て い た。 ニ ュ ー ヨー カ ー 誌 の 依 頼 で彼 女 は ア ドル フ. ・ア イ ヒマ ン裁 判 傍 聴 の た め イ ス ラ エ ル に 渡 っ た 。 彼 女 の レポ ー ト 「 イ ェ ル サ レム の ア イ ヒマ ン」 は知 識 人 の 間 で セ ン セ ー シ ョン を 呼 ん だ。 ア イ ヒマ ン とい う現 象 を説 明 す るた め彼 女 が 発 見 した 「 悪 の 陳 腐 さ」 とい う概 念 は そ の 後 、 一 般 的 な 語 法 に 取 り入 れ うれ る こ とに な っ た。 この 哲 学 者 が この 時 代 の 多 くの ア メ リカ の 作 家 に影 響 を 与 え た理 由 は これ だ け で は な い 。 ニ ュ ー ヨー ク ・タイ ム ズ の編 集 者 ア ナ トー ル ・ブ ロヤ ー ドは 、 ドイ ツ か らの 亡 命 者 の 存 在 が ニ ュー ヨー ク の 精 神 生 活 に与 え る影 響 を次 の よ うに描 写 して い る。 「 私 た ち は ドイ ツ の 教 授 た ち に感 嘆 した 。 私 た ち は フ ァシ ズ ム に 対 す る戦 い に 勝 利 した の だ が 、 今 度 は彼 らの 力 を借 りて 文 化 と人 間 の 心 に 潜 む 闇 の 力 のす べ て に 打 ち勝 つ の だ 」。60年 代 にハ ン ナ ・ア ー レ ン トの 近 く に住 ん で い た ウー ヴ ェ ・ ヨー ン ゾ ン は彼 女 と親 交 を結 び 、彼 女 を 自分 の 小 説 『記 念 日』 の ア ドヴ ァ イ ザ ー と して 迎 え入 れ る こ とま で 考 えて い た とい う。. フ ィー ア テ ル ー 家. ハ ンナ ・ア ー レ ン トの 近 く 、84番 通 り西346に は 、1942年 に ベ ル トル ト ・. フ ィー ア テ ル が ア パ ー トを借 りた 。 この 作 家 は30年 代 、 パ ラマ ウ ン ト映 画 と の 台 本 契 約 の た め に 家 族 を伴 っ て 当初3年. 間 の 予 定 で 、ハ リ ウ ッ ドにや って 来 た の だ。 後 に と りわ け 彼 の妻 ザ ル カ が. 台 本 作 者 と して 映 画 業 界 で 成 功 し、 一 方 ベ ル トル トは作 家 の 仕 事 と芝 居 の 演 出 の 方 に集 中 して い っ た 。 この 作 家 は しば ら くニ ュ ー ヨー ク に 暮 らす とい う こ とを何 度 も繰 り返 し、 そ こで 彼 は1945 年 に ブ レ ヒ トの 「 第 三 帝 国 の 恐 怖 と悲 惨 」 を演 出 した が 、 残 念 な が ら成 功 とは 言 え な か っ た。 ザ ル カ ・フ ィー ア テ ル は 本 来 女 優 だ っ た が 、 家 計 と3人 の 息 子 の 養 育 費 をや りく り し時 に は 夫 ベ ル トル トを支 え る役 回 りで あ った た め 、 生 活 の 必 要 と偶 然 か ら英 語 で執 筆 す る シナ リオ ラ イ ター に なった。 ザ ル カ ・フ ィ ー ア テ ル の 場 合 と同 じ く、 家 族 を養 っ て い た の は ドイ ツ か らの知 識 人 層 難 民 の 女 性 で あ る こ と が 多 か っ た が 、 そ れ は彼 女 た ち が ど うや ら、 自 らの ス テ イ タス 以 下 の 仕 事 をす る こ.

(13) と に あ ま り と ま ど い を 見 せ ず 、 外 国 語 で 活 動 す る こ と を ほ と ん ど厭 わ な か っ た か ら で あ ろ う。 そ れ を 示 す 例 と し て ベ ル ト トル トの 二 番 目 の 妻 で あ る エ リー ザ べ ト ・ノ イ マ ン=フ ィ ー ア テ ル は 、 医 師 の 助 手 と し て の 彼 女 の 生 存 を か け た 日 々 を 次 の こ と ば で 語 っ て い る 。 「白 衣 を 着 て い る と き 私 は 、 役 を 演 じ て い る の だ と思 う こ と に し て い た 」。. マ ン姉弟. ドイ ツ 人 亡 命 者 に と っ て の 重 要 な 関 連 人 物 が 、 エ ー リ カ と ク ラ ウ ス の マ ン 姉 弟 だ っ. た 。 エ ー リ カ は ミ ッ ドタ ウ ン の グ ラ ン ドセ ン トラ ル 駅 近 く の42番 通 り東122に ル に 、1936年. に は も う自分 の 劇 場. 「胡 椒 引 き Pfeffermuhle」. あ るチ ェ イ ン ・ビ. を開 設 して い た が 、 そ こ で は シ ャ ン. ソ ン と 寸 劇 が ドイ ツ 語 と英 語 翻 訳 で 上 演 され た 。 も っ と も 客 の 入 り は ほ ど ほ ど だ っ た と 、 弟 の ク ラ ウ ス が 回 想 し て い る 。 こ の 姉 弟 は 他 の 多 く の 難 民 と 同 様 、40番 通 り東118の. ホ テ ル ・ベ ッ ドフ. ォ ー ド に 住 ん で い た が 、 こ こ で 二 人 は ドイ ツ か ら の 亡 命 に 関 す る 委 託 作 品 を 執 筆 し て い た 。 「ホ テ ル ・ベ ッ ドフ ォ ー ドは 、 町 の 真 ん 中 に 位 置 し て い る 。 商 店 で に ぎ わ う レ キ シ ン トン ・ア ヴ ェ ニ ュ ー と フ ァ ッ シ ョナ ブ ル な パ ー ク ・ア ヴ ェ ニ ュ ー に は さ ま れ た 、 比 較 的 静 か な40番 通 り は 、 運 命 を 共 に す る 人 々一で ひ し め い て い て 、 昔 の チ ュ ー リ ヒ や パ リ の ど こ そ こ の カ フ ェ の よ う だ っ た 。 (…)我. 々 が 『生 へ の 脱 出Escape. to Life』 で 描 い て い る 人 物 の 輪 は 常 に 拡 大 し て い る 。 オ ー ス. ト リ ア か ら 後 発 隊 が 来 る と い う。 誰 も が 自 分 な り の 恐 ろ し い 物 語 を 持 っ て 来 る の だ っ た 」。 ア ウ フバ ウ誌. オ ス カ ー ・マ リー ア ・グ ラ ー フ 、 ネ リ ・ザ ッ ク ス 、 トー マ ス ・マ ン 、 リ オ ン ・. フ ォ イ ヒ ト ヴ ァ ン ガ ー 、 フ ラ ン ツ ・ヴ ェ ル フ ェ ル 、 マ ー シ ャ ・カ レ コ 、 ア レ ク サ ン ダ ー ・グ ラ ー ナ ハ 、 ハ ン ス ・ザ ー ル 、 ア ル フ レー ト ・ボ ル ガ ー と い っ た 、 多 く の ドイ ツ 語 で 書 き 続 け る 亡 命 作 家 た ち は 、 少 な く と も 週 刊 誌 ア ウ フ バ ウ に 発 表 の 場 を 持 っ て い た が 、 こ の 週 刊 誌 は1934年. に初 め. て 、 「ニ ュ ー ヨ ー ク ・ ドイ ッ ユ ダ ヤ 人 ク ラ ブ の 広 報 誌 」 と し て 刊 行 され た も の だ っ た 。 こ の 誌 は 文 学 の 出 版 機 構 と し て の 役 割 を 果 た し て い た ば か りで は な く 、 日 々 の 様 々 な 問 題 に つ い て の 支 援 を果 た そ う と も して い た 。 戦 後 、 ほ とん どの 移 民 が 異 国 で の生 活 に適 応 した 後 、 ア ウフ バ ウは 友 人 や 親 類 た ち の 捜 索 を容 易 にす るた め に強 制 収 容 所 の 犠 牲 者 と生 存 者 に 関す る情 報 を公 開 した 。 今 日 で は ア ウ フ バ ウ誌 は 読 者 数 の 減 少 の た め に 一 ドイ ツ 系 ユ ダ ヤ 人 の 亡 命 者 一 世 は も は や ほ と ん ど こ の 世 を 去 り 、 そ の 子 供 た ち は 大 部 分 が 同 化 し て い る 一 隔 週 で し か 刊 行 さ れ て い な い 。2002年 5月 に こ の 誌 は 、 サ ブ タ イ トル に. 「大 西 洋 横 断 の ユ ダ ヤ 誌(Transatlantic. Jewish. Paper)」. を掲 げ 、. 根 本 的 な 刷 新 を 行 な っ た 。 半 数 は 英 語 、 半 数 は ドイ ツ 語 で 執 筆 さ れ る 記 事 で は 、 政 治 、 ユ ダ ヤ 人 の 生 活 、 ユ ダ ヤ の 歴 史 、 文 化 及 び ア メ リカ に お け る ドイ ツ=ユ ダ ヤ の 遺 産 が 紹 介 さ れ る こ と に な っ て い る 。 継 続 し て 行 な わ れ る ドイ ツ と ア メ リカ の 関 係 に 関 す る 議 論 の た め に も 、 イ ン タ ー ネ ッ トで も 閲 覧 可 能 な こ の 雑 誌 は 一 読 に 値 す る 。. 嫌疑 を 呼 ぶ 共 感. 出 版 業 者 の ヴ ィ ー ラ ン ト ・ヘ ル ツ フ ェ ル デ は 、 そ の ニ ュ ー ヨ ー ク 滞 在 の 初.

(14) 期 、 ド キ ュ メ ン タ リ ー 映 画 の 編 集 者 兼 シ ナ リ オ 作 家 と し て 活 動 し て お り、 彼 の 妻 は 子 守 女 と ドー ナ ツ 店 の 従 業 員 だ っ た が 、 ヴ ィ ー ラ ン トが つ い に は ブ ロ ー ド ウ ェ イ23番 通 りの フ ラ テ ィ ロ ン ・ビ ル の 向 い に絵 葉 書店 を構 え、 この店 を彼 は )と. 「七 つ の 海 の 本 と 切 手 の 店 」(Seven Seas Books. &. 名 付 け て 、 書 店 と し て も 使 お う と し た 。 エ ル ン ス ト ・プ ロ ッ ホ 、 ベ ル トル ト ・ Stamps Store. ブ レ ヒ ト、 フ ェ ル デ ィ ナ ン ト ・ブ ル ッ ク ナ ー 、 ア ル フ レ ー ト ・デ ー ブ リー ン 、 リ オ ン ・フ ォ イ ヒ ト ヴ ァ ン ガ ー 、 オ ス カ ー ・マ リー ア ・グ ラ ー フ 、 ハ イ ン リ ヒ ・マ ン 、 ベ ル トホ ル ト ・フ ィ ー ア テ ル と い っ た オ ー ス ト リ ア 及 び ドイ ツ の 作 家 た ち と 協 力 し て 、 ヘ ル ツ フ ェ ル デ は こ の 直 後 亡 命 作 家 の 出 版 社 オ ー ロ ラ(Aurora)を. 設 立 した 。 書 店 は 事 務 所 と して 使 わ れ た が 、 この 作 家 た ち は 左 翼. 思 想 に 共 感 を 抱 く 外 国 人 と し て 、 反 共 体 制 に と っ て 不 審 人 物 で あ っ た た め 、 常 にFBI情 の 監 視 が つ い て い た 。 こ の 出 版 社 が1949年. 報部員. 、 ニ ュ ー ヨー ク を 去 っ て 東 ベ ル リ ン に 向 っ た と き 、 ヴ. ィ ー ラ ン トの 息 子 は 、 出 版 業 の 代 り に 今 や 靴 修 理 店 が 開 店 し た と 、 痛 み を こ め て 語 っ て い る 。 シュタ  ジ. 「FBIの. 書 類 と、 数 十 年 後 に 私 が 見 る こ との で き たStasi(秘密. 警 察 の よ うな 東ドイツ国 家保. 安部 の組織: 訳者) の 書 類 の 中 で だ け 、 「 七 つ の海 の 本 と切 手 の 店 」 は 永 遠 の命 を得 た 。 ア メ リ カ の 国 家 保 安 部 も共 産 主 義 体 制 の 国 家 保 安 部 も(も っ と も 後 者 は 後 か ら振 り返 っ て の こ と だ が)、 我 々 が この 書 店 で 生 計 を 立 て る こ とが で きて い た な ど とい うこ とは 疑 問視 して い た 、 そ れ ゆ え に 、 この 店 が そ れ ぞ れ の 〈 敵 〉 に とっ て 初 動 機 関 の 役 割 を果 た して い た に 違 い な い とい う疑 念 を 抱 い た の だ 」。. 亡命 地 図  ニ ュ ー ヨー ク にお け る ドイ ツ 亡命 者 の 最 も重 要 な記 録 者 の 一 人 と して 、1941年 にニ ュ ー ヨー ク に や っ て 来 た 作 家 のハ ン ス ・ザ ー ル の 名 を挙 げ な け れ ば な らな い 。 「 私 は リ ヴ ァー サ イ ド ドラ イ ヴ に あ る家 具 付 き の 部 屋 に 住 ん で い た が 、 そ こ に は 私 の ベ ッ ドの他 に椅 子 が 一 つ とテ ー ブ ル が 一 つ 置 か れ て い た 。 食 事 は ア ル コー ル ラ ンプ の 上 で 作 っ た 。 私 の窓 か らは ハ ドソ ン川 に 浮 か ぶ 曳航 され るは し け と島 を一 周 す る鈍 重 な観 光 汽 船 、 そ れ に 沿 岸 警 備 の モ ー タ ー ボ ー トが 見 え た 。 夜 に な る と私 た ち は 角 の ドラ ッグ ス トア に集 ま り、 〈 新 しい 世 界 〉 に 関す る経 験 を 交 換 し あ っ た。 チ ャ ップ リ ンの 『独 裁 者 』 は 期 待 は ず れ だ っ た とか 、 あ る ユ ダ ヤ 人 委 員 会 が 日 当 を払 っ て くれ るだ とか 、 だ れ そ れ が 大 学 に ドイ ツ語 教 師 の職 を得 て 、 学 生 た ち が 自分 の拙 い 英 語 に 文 句 を言 わ な い こ とを不 思 議 が っ て い るだ とか 」。 ハ ン ス ・ザ ー ル は 戦 時 中 す ぐに 、 押 収 され た ドイ ツ 語 の 文 書 を ア メ リカ 空 軍 の た め に翻 訳 す る 職 を 得 た。 彼 の 回想 録 『亡 命 の 中 の 亡命 生 活 』 の 中 で 、 ザ 一ル は ニ ュー ヨー ク にお け る ドイ ツ人 の集 合 場 所 を基 に して 地 図 を描 い て い る が 、 そ れ は ドイ ツ 人 難 民 の た め の ち ょ っ と した ウェ ス ト サ イ ドの タ ウン ガ イ ドの よ うに 読 め る も の だ っ た。 ザ ー ル が 特 に 取 り上 げ て い る の は 、 ドイ ツ語 の ウ ム ラ ウ トを ア メ リカ 製 の タイ プ ライ タ ー に組 み 込 む 注 文 が で き る、 ア ム ス テ ル ダ ム ・ア ヴェ ニ ュー に あ る タイ プ ライ タ ー 店 チ ャ ー ル ズ ・オ ス ナ ー と、 ユ ダ ヤ 教 区 が ハ ンナ ・ア ー レ ン トとジ.

(15) 一 ク フ リ ー ト ・ク ラ カ ウ ア ー に 別 れ を 告 げ た ウ ェ ス トサ イ ド葬 儀 会 館 で あ る. 。一 方、マ ックス ・. ラ イ ン ハ ル ト と イ ゴ ー ル ・ス トラ ヴ ィ ン ス キ ー の よ う な 本 当 に 成 功 し た 亡 命 者 た ち の 葬 儀 は 、 ア ッパ ー ・イ ー ス トサ イ ドで 行 な わ れ た 。 亡 命 の 研 究 者 に 対 し て ハ ン ス ・ザ ー ル が 薦 め て い る の は リ ヴ ァ ー サ イ ド ・ ドラ イ ヴ の 調 査 で 、 「72番通 り西 と100番 通 りの 間 、 そ こ で 私 た ち は 夜 、 対 岸 に ニ ュ ー ジ ャ ー ジ ー の 灯 り が と も っ た 頃 に 集 ま っ た 。(…)こ. こ で ハ ン ナ ・ア ー レ ン トが 悪 の 陳 腐. さ に つ い て 書 き 、 ヘ ル マ ン ・ブ ロ ッ ホ が 彼 の 『ヴ ェ ル ギ リ ウ ス の 死 』 を 書 き 上 げ た の だ 。 こ こ で カ ー ル ・ア ウ グ ス ト ・ヴ ィ ッ トフ ォ ー ゲ ル が 、 ノ ル ベ ル ト ・ ミ ュ ー レ ン 、 ハ イ ン ツ ・ぺ ヒ タ ー 、 オ ッ トー ・フ ェ ー デ ル 、 ヘ ル マ ン ・ボ ル ビ ャ ル トが 疑 念 を 抱 き 、 さ ら に は 絶 望 し た の だ 」。 演 劇 作 者 ソ ー ン トン ・ワ イ ル ダ ー の た め の 翻 訳 作 業 を 通 じて 、 国 外 移 住 し た ヨ ー ロ ッパ 人 で あ る ハ ン ス ・ザ ー ル と、 ベ ル リ ン で 暮 ら し た こ と が あ る ア メ リカ 人 の 作 家 と の 間 に 、 緊 密 な 協 力 関 係 が 生 ま れ た 。 協 力 し て 二 人 は 、 国 民 性 と 性 格 、 気 質 の 違 い を 浮 き 彫 りに し よ う と し 、 注 目す べ き 成 果 に 到 達 し た が 、 そ れ は 現 在 で も な お 有 効 性 を 失 っ て い な い 。 ハ ン ス ・ザ ー ル は そ れ を 、 も う一 人 の ヨー ロ ッパ 的 刻 印 を 受 け た ア メ リカ 女 性 で あ る ガ ー トル ー ド ・ス タ イ ン の 名 文 句 に 託 し て 短 評 し て い る 。 「ア メ リ カ 人 に と っ て 量 と は1プ は 、250で. あ っ た り6789で. ラ ス1プ. ラ ス1で. あ る。 ヨー ロ ッパ 人 に と っ て そ れ. あ っ た りす る 」。. 50年 代 半 ば に ハ ン ス ・ザ ー ル は ウ ェ ス トエ ン ド ・ア ヴ ェ ニ ュ ー800の. ア パ ー トに 引 っ 越 し た が 、. 彼 は こ の ビル の 屋 上 で の 散 歩 を 試 み た 。 と い う の も 、 そ こ は ヨ ー ロ ッパ に よ り 近 い か ら で あ り 、 そ こ で 彼 は あ る 意 味 で 全 体 を 見 渡 し な が ら ドイ ツ の 亡 命 の 歴 史 を 概 観 す る こ と が で き る か ら で あ る 。 「こ こ で 、 最 初 の ピ ル グ リ ム た ち が ア メ リカ に 渡 っ た 同 じ名 前 の 船 に 倣 っ て 名 付 け られ た ホ テ ル ・メ イ フ ラ ワ ー で 、 ・ ・… ・こ こ で エ ル ン ス ト ・ トラ ー が ドア ノ ブ に 掛 け た 紐 で 首 を 吊 っ た … … そ して そ こ で 、 ハ ド ソ ン 川 を 上 っ た と こ ろ の ヨ ン カ ー ズ で 、 エ ル ヴ ィ ン ・ピ ス カ ー トル と彼 の 美 し い 妻 が ヨー ロ ッパ か ら逃 れ て き た 名 士 た ち を も て な し た の だ 一 例 え ば フ ェ ル ナ ン ・レ ジ ェ 、 ヴ ァ ル タ ー ・グ ロ ー ピ ウ ス 、 ミー ス ・フ ァ ン ・デ ル ・ロ ー エ … … 忘 れ て な ら な い の は カ ー ネ ギ ー ホ ー ル で 、 そ こ で は ブ ラ ー ム ス の2番. と. 〈 大 地 の 歌 〉 と の 間 の 休 憩 時 間 に 、20年 代 の ベ ル リ ン フ ィ. ル で 以 上 に ドイ ツ 語 が 話 さ れ た 。(…)ア. メ リ カ は ヒ ッ トラ ー へ の 抵 抗 か ら文 化 国 家 に な り、 ニ. ュ ー ヨ ー ク は そ の 中 心 都 市 と な っ た 。 今 や ア メ リ カ は 再 び ア メ リ カ 人 の も の だ 」。 古 い 世 代 の 亡 命 者 が ど ん ど ん 死 ん で 行 く よ う に な っ て 、1989年. に ハ ン ス ・ザ ー ル は ドイ ツ に 帰 還 し た 。. 亡 霊 た ち  ニ ュ ー ヨ ー ク で の 耐 え ら れ な い 亡 命 生 活 か ら の 唯 一 の 逃 げ 道 と し て の 死 に つ い て 書 い て い る の が 、 ヒ ル デ ・シ ュ ピー ル の 小 説. 『リ ザ の 部 屋 』 で あ る 。 主 人 公 の リ ザ は ホ ー ム シ ッ ク. の あ ま り リ ヴ ァ ー サ イ ド ド ラ イ ヴ76に あ る 彼 女 の 部 屋 か ら ほ と ん ど 出 な い で 、 そ こ で 昔 の 良 か っ た 時 代 の 記 憶 の 中 か ら 自分 の 世 界 を 造 り上 げ る 。 亡 命 者 た ち は 午 後 を 、 そ こ で は す べ て が 昔 と 同 じ よ う に 見 え る カ フ ェ ・モ ー ツ ァ ル トで 過 ご す こ と を 好 む 。 「ウ ェ イ タ ー は ピ ア ニ ス トの よ う な.

(16) 髪 型 で 、 勘 定 を求 め る とす ぐに とん で 来 る 、 コー ヒー は故 郷 と同 じ味 が し生 ク リー ム もつ け られ た 、 ドー ボ ス トル テ も 、 ウ ィー ン式 レ シ ピの サ ッハ ー トル テ も あ っ た 。 そ の 向 うに 町 の 景 観 が 姿 を消 す プ リー ツ の あ る綿 紗 の カ ー テ ン の 下 で しば ら く座 っ て い る と、 客 は ま るで 時 間 が10∼15年 も逆 戻 り して 、 外 に は 路 面 電 車 が チ ン チ ン と走 り、彼 らの 愛 す る町 の モ ル タル の 家 が 立 っ て い る か の よ うな 錯 覚 に 身 を ま か せ る の だ っ た 」 。 オ ー ス トリア 人 の ヒル デ ・シ ュ ピー ル は ナ チ ス の 時 代 を ロ ン ドン で 過 ご した が 、 『リザ の 部 屋 』 で は40年 代 の 亡 命 者 の 境 遇 を 、 す ぐに も ニ ュー ヨー ク で の 新 生 活 に適 応 す る 覚 悟 の で き て い る若 い 東 欧移 民 の 女 性 の 視 点 か ら描 い て い る。 ノ ス タル デ カダン ス. ジ ー に か られ た 麻 薬 中 毒 の 亡 命 女 性 の 小 間 使 い と し て 彼 女 は 、 古 き ヨ ー ロ ッ パ の 退 廃 を 表 現 す る役 回 りな の だ 。 こ の若 い 移 民 女 性 に と っ て は マ ン ハ ッタ ン の 空 は 無 限 で あ るが 、 年 配 の 亡命 者 た ち は こ れ に 反 し 「亡 霊 で あ りア ウ トサ イ ダ ー 、 過 去 に 囚 わ れ た 者 た ち 」 で あ る 。 リ ザ の 死 後 、 彼 女 は(死. ん だ)女. 主 人 の ア メ リカ 人 の 夫 と 結 婚 し 、 ヨ ー ロ ッ パ の 悪 夢 は 葬 ら れ る 。. ドイ ツ 系 ユ ダ ヤ の 残 滓  作 家 の ゾ ー マ ・モ ル ゲ ン シ ュ テ ル ン は ニ ュ ー ヨー ク で の ホ テ ル 生 活 を お く っ て い た が 、 彼 に つ い て 、 生 涯 を 共 に し た 友 人 の ヨ ー ゼ フ ・ロ ー トが 次 の よ う に 言 っ て い る 。 「ゾ ー マ は す べ て の も の に 自分 な りの ユ ダ ヤ 流 解 釈 を 施 した 。 ゾ ー マ は 彼 の ル ー ツ を 身 に ま と っ て 、 靴 の 中 に 入 れ て い た 。 ゾ ー マ の 身 に は 何 ご と も 起 こ り得 な い の だ っ た 」。 こ の こ と ば に 従 え ば 、 ゾ ー マ ・モ ル ゲ ン シ ュ テ ル ン は ニ ュ ー ヨ ー ク で ウ ィ ー ン の 友 人 た ち と の コ ン タ ク トは あ っ た に し て も 、 新 し い 町 で 亡 命 者 の 仲 間 内 だ け の 活 動 を し て い た の で は な さ そ うで あ る 。 ユ ダ ヤ 人 の 共 同 体 の 中 に い ら れ る 限 り 、 彼 は ニ ュ ー ヨ ー ク を 故 郷 の よ う に 感 じ て い た 。 ア ッパ ー ・ ウ ェ ス ト サ イ ドの い く つ も の 居 酒 屋 で 、 ま た 、 ア ッ パ ー ・イ ー ス トサ イ ドの ドイ ツ 人 地 区 ヨ ー ク ヴ ィ ル で 、 そ れ は 十 分 可 能 で あ っ た 。 し か し今 日 で は 、 ドイ ツ 系 ユ ダ ヤ 人 の 生 活 の 痕 跡 で さ え 、 セ ン トラ ル パ ー ク の 両 側 で は 町 の 景 観 か ら消 え て し ま っ て い る 。 マ リ ー ・ロ ー ゼ ン ベ ル ク は1939年. に ブ ロ ー ド ウ ェ イ1841に. あ る彼 女 の 居 間 で 書 店 を始 め 、 そ こ. が トー マ ス ・マ ン 、 リオ ン ・フ ォ イ ヒ トヴ ァ ン ガ ー や フ ラ ン ツ ・ヴ ェ ル フ ェ ル な ど の ドイ ツ 人 亡 命 者 た ち に と って 重 要 な活 動 開 始 の 場 の 一 つ とな っ た。 そ れ は 後 に は 、 作 者 のサ イ ン が 見 つ か る こ と さ え あ る ドイ ツ 語 書 籍 の 第 一 版 の 蒐 集 家 た ち に と っ て の 、 と っ て お き の ヒ ン トに な っ た 。 今 日 で は セ ン トラ ル パ ー ク を 一 望 す る こ と が で き る 高 価 な マ ン シ ョ ン 群 が 林 立 す る 喧 噪 に 満 ち た コ ロ ン ブ ス ・サ ー ク ル で は 、 終 い に は 家 賃 が 高 く な り す ぎ て 書 店 を 維 持 す る こ と が で き な く な っ た 。 そ れ 以 降 ドイ ツ 語 書 籍 は ニ ュ ー ヨ ー ク で は 、 今 で は 世 を 去 っ た マ リー ・ロ ー ゼ ン ベ ル ク の 共 同 経 営 者 の 一 人 に 電 話 で 注 文 す る こ と しか で き な く な っ た 。 72番 通 り西141に. あ る ウ ィ ー ン の カ フ ェ の 雰 囲 気 を た た え た 有 名 な カ フ ェ ・エ ク レ ア は1995年. に 閉 鎖 さ れ た 。 今 日 そ こ に あ る の は ドー ナ ツ の チ ェ ー ン 店 ク リ ス ピ ー ・ク レ ー ム の 店 で あ り、 上 の 階 に は ア メ リ カ 軍 へ の 入 隊 募 集 事 務 所 が 入 っ て い る 。 ヴ ォ ル フ ガ ン グ ・ケ ッ ぺ ン が1959年. に訪.

参照

関連したドキュメント

長尾氏は『通俗三国志』の訳文について、俗語をどのように訳しているか

長尾氏は『通俗三国志』の訳文について、俗語をどのように訳しているか

②上記以外の言語からの翻訳 ⇒ 各言語 200 語当たり 3,500 円上限 (1 字当たり 17.5

[r]

 学部生の頃、教育実習で当時東京で唯一手話を幼児期から用いていたろう学校に配

 学部生の頃、教育実習で当時東京で唯一手話を幼児期から用いていたろう学校に配

1 7) 『パスカル伝承』Jean Mesnard, La Tradition pascalienne, dans Pascal, Œuvres complètes, Paris, Desclée de Brouwer,

協力: 株式会社 ワコールアートセンター/日本映像翻訳アカデミー(R):English Clock/有限会社