訪問看護ステーション未設置の自治体における在宅療養を可能にしている、医療・保健・福祉の連携
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(2) Ⅰ.研究の背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1.地域包括ケアシステムと訪問看護ステーションについて・・・・・・・・・・・1 2.北海道における訪問看護ステーション未設置の状況・・・・・・・・・・・・・1 3.本研究の意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 Ⅱ.本研究の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 Ⅲ.方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1.研究対象地域と研究対象者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 2.研究方法:半構成的面接調査. ICレコーダーによる録音と逐語録・・・・・・2. 1)データ収集内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 (1)事例について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 (2)分析方法:得られた内容を次の 2 つの視点で分析する・・・・・・・・・・・2 Ⅳ.調査概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 Ⅴ.結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 1.A 町. 人口およそ 3500 人. 高齢化率約 49%. 漁業を主要産業とする自治体 ・・・3. 1)A 氏(がん終末期)への在宅ケアについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 (1)A 氏の在宅療養を可能にしていた支援・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 (2)A 氏の在宅療養について支援できなかったこと・・・・・・・・・・・・・・・・4 2)B 氏(精神疾患)への在宅ケアについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 (1)B 氏の在宅療養を可能にしていた支援について・・・・・・・・・・・・・・・・4 (2)B 氏の在宅療養について支援できなかったこと・・・・・・・・・・・・・・・・5 3)A 町の地域包括ケアの状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 (1)調理師会の協力による配食サービスについて・・・・・・・・・・・・・・・・5 (2)A 町ならではの認知症の方への見守りについて・・・・・・・・・・・・・・・・5 (3)A 町での服薬支援について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 (4)受診の状況と受診介助について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 (5)関係機関・職種の連携について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 ➀病院の受診と服薬について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 ②退院時の連携に望むこと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 ③地域ケア会議について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 ④医療と生活の視点をもつ訪問看護ステーションの必要性について・・・・・・・・7.
(3) ⑤他の自治体の工夫を活かしたい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 ⑥住民の A 町に対する思いや生き方、価値観・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 2.B 町. 人口およそ 9000 人. 高齢化率約 38%、漁業を主要産業とする自治体 ・・・8. 1)在宅療養の状況と可能にしている状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 (1)在宅療養者の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 (2)在宅療養がかなわない方の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 2)一番近い訪問看護ステーションまでの距離と訪問看護の利用可能性について・・・8 3)この地域に欲しいサービスについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 (1)買い物と配食支援サービスについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 (2)通院支援サービスについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 4)地域包括ケアシステムについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 3.C 町 人口およそ 5000 人高齢化率約 40%、漁業及び農業を主要産業とする自治体・9 1)在宅療養の状況と可能にしている状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 (1)在宅療養者の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 ➀C 氏(脳梗塞後遺症 ②D 氏(がん終末期. 高齢者)の状況・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・10 一人暮らし高齢者)の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・10. (2)在宅療養がかなわない状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 2)一番近い訪問看護ステーションの自治体までの距離と利用可能性について・・・・10 3)この地域に欲しいサービスについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 ➀買い物と配食支援サービス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 ②通院支援サービス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 4)地域包括ケアシステムについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 4.D 町 人口およそ 4500 人. 高齢化率約 30%漁業及び農業を主要産業とする自治体・11. 1)在宅療養の状況と可能にしている状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 (1)在宅療養者の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 ➀E 氏(特定疾患. 高齢者)の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11.
(4) 2)在宅療養がかなわない状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 3)一番近い訪問看護ステーションの自治体までの距離と利用可能性について・・・・11 5.E 町. 人口およそ 3500 人. 高齢化率約 32%. 農業を主要産業とする自治体・・・・12. 1.在宅療養の状況と可能にしている状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 1)F 氏(甲状腺疾患. 高齢者)の在宅療養の状況について・・・・・・・・・・・・・12. (1)連絡帳による関係機関・関係職種の連携について・・・・・・・・・・・・・・12 (2)近隣に住む友人の支援について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 2)一番近い訪問看護ステーションの自治体までの距離と利用可能性について・・・・12 3)この地域に欲しいサービスについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 ➀訪問診療・往診及び訪問看護ステーションについて・・・・・・・・・・・・・・13 ②通院支援サービスについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 ③配食サービスについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 4)地域包括ケアシステムについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 (1)医療圏と住民が日常的に通院する医療圏が違うことについて・・・・・・・・13 (2)地域ケア会議について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 資料.
(5) Ⅰ.研究の背景 1.地域包括ケアシステムと訪問看護ステーションについて 近年の一般急性期病院の平均在院日数は 9 日程度であり、在宅移行支援のニーズが高ま っている。このような状況の中、超高齢化・多死社会に備えた在宅ケア推進の方向性とし て「在宅医療・介護あんしん 2012」が、2013 年には“おおむね 30 分以内に必要なサービ スを提供する” 「地域医療ケアシステムの構築」が公示された。しかし、厚生労働省の調査 では、効果的な訪問看護サービスが提供できない地域が多数存在する事が報告されており 1). 、 「医療との連携強化」のうち「訪問看護」に注目すると、訪問看護事業所が「ない」自. 治体においては、30 分以内に看護サービスを提供することが難しく、国の施策とは相反す る現状があると考えられる。 2.北海道における訪問看護ステーション未設置の状況 北海道では、全 179 市町村のうち、訪問看護ステーションが設置されている自治体は 79 市町村のみで、設置されていない町村は 100 と、その数を上回っている。北海道の地方人 口は減少し、限界集落や離島の存在、冬季は寒冷積雪の影響もあり、訪問看護サービスが 効果的に提供できる状態とは言い難い。退院後の在宅療養生活において予測される困難さ を抱えたまま退院した患者・家族は退院後も自分達だけでは適切なサービスの利用ができ ない2)と報告されている。このような状況が介護を抱えた家族との共倒れ、虐待、孤独死 等を招くことも予測される(図1) 。訪問看護事業所が「ない」地域への在宅移行支援には 更なる複雑さや困難さを伴うことや、転院や施設移動を余儀なくされることが推測される。 3.本研究の意義 北海道内において訪問看護事業所が「ない」自治体において在宅療養を可能にしている 医療・介護・福祉の連携の実際について調査することは、地域の状況に応じた在宅移行支 援を考える上で意義があると考えられる。. 病. 訪問看護事業所がない地域の医療・介護・福祉の連携. 院. 病 家. 病院・施設 転院 施設入所 等. 訪問看護事業 所がない. 院 連携. 介護を抱えた 家族 孤独死・虐待等. Key機関. Key person. 訪問看護事業をカバーする 地域資源の顕在化. 地域・在宅. 地域・在宅. 図1. 図2 1.
(6) Ⅱ.本研究の目的 北海道内において訪問看護ステーションが未設置の自治体での、医療・介護・福祉の実 際について把握し、在宅療養を可能にしている医療・介護・福祉の連携の要素を明らかに する。 Ⅲ.方法 1.研究対象地域と研究対象者 研究対象地域は、北海道内の訪問看護ステーション未設置の自治体のうち、研究期間内 に調査を依頼し承諾が得られた地域とする。また研究対象者は、当該地域の保健師、介護 支援専門員とし、承諾が得られた人とした。 2.研究方法:半構成的面接調査. ICレコーダーによる録音と逐語録作成. 1)データ収集内容 (1)事例について ➀退院後、訪問看護が必要な対象者が、訪問看護ステーションをカバーする資源を利 用しながら在宅療養生活を送る事例を思い出しながら、以下について回答して頂く。 ・訪問看護ステーションがないことでの、在宅療養支援の工夫 ・在宅ケアチームと、それら資源の連携の様相 ・連携の key. person,. Key 機関. ・退院後に継続する医療・介護について医療機関から提供された情報と時期等 ②地域性について ・一番近い訪問看護ステーションまでの距離・時間 ・地域で工夫している支援 ・あれば良いと考えられるサービス等 (2)分析方法:得られた内容を次の 2 つの視点で分析する ➀事例について:事例の語りから、在宅療養を可能にしている医療・介護・福祉につい て要約し類似した内容のものに見出しをつけ、在宅療養を可能にしている要素を明ら かにする。また、図2を参照し、連携の様相を図示することにより可視化する。 ②地域性について:語りから、地域で工夫している支援や住民の価値観等について明ら かにする。 Ⅳ.調査概要 北海道内の訪問看護ステーション未設置自治体5箇所に調査が実施できた。当該自治体 において在宅ケアに携わる、保健師や介護支援専門員 10 名に半構造的面接調査を実施し た。 2.
(7) 調査をおこなった自治体と対象者の概要を表1に示す。 表1. 調査を行った自治体と対象者の概要. 自治体の特徴. 調査対象者. 過去の在宅療養が 可能だった事例. A町. 保健師 3 名. A 氏(がん終末期). 人口約 3,500 人. 介護支援専門員1名. B 氏(精神疾患). 保健師 1 名. 該当者なし. 保健師 1 名. C 氏(高齢・脳梗塞後遺症). 高齢化率約 49% 主要産業:漁業 B町 人口約 9,000 人 高齢化率約 38% 主要産業:漁業 C町 人口約 5,000 人. D 氏(高齢・がん終末期). 高齢化率約 40% 主要産業:漁業・農業 D町. 保健師 2 名. E 氏(高齢・特定疾患). E町. 保健師 1 名. F 氏(高齢・甲状腺疾患・独居). 人口約 3,500 人. 介護支援専門員 1 名. 人口約 4,500 人 高齢化率約 30% 主要産業:漁業・農業. 高齢化率約 32% 主要産業:農業 Ⅴ.結果 ご協力頂いた 10 名への半構造面接調査から得られた結果を以下に報告する。 1.A 町. 人口およそ 3500 人. 高齢化率約 49%. 漁業を主要産業とする自治体。. 1)A 氏(がん終末期)への在宅ケアについて 図1:A 氏の状況(少ない社会資源の中、島で終末期を過ごした事例)参照 (1)A 氏の在宅療養を可能にしていた支援 A 氏は、40 歳代の女性で小さい子供2人と両親の 5 人家族。A 島で生活を送っていた。 がんが発見された時はもう手だてがなく、2 人の子供と両親が暮らす「島に帰りたい」 「家 で最期を過ごしたい」と決めて家に帰ってきた。A 氏はインターネットで介護保険を調べ、. 3.
(8) 居宅支援事業者の元を訪ね介護保険の申請を行った。「痛くても自分が動きやすいように」 と、ベッドと杖を申請した。離島のため、申請した福祉用具が届くまでには 10 日間から 2 週間ほどかかる。そのため、介護支援専門員は予備として保管してあったベッドを A 氏に 貸し出した。A 氏が亡くなった後、A 氏の母親より「娘は新しいベッドの寝心地が良いと 喜んでいた」と教えて貰うことができた。介護支援専門員は「最期の 3~4 日間だけでも、 せめて寝心地の良いベッドに寝て貰えることができ本当に良かった。」と語られた。 A 氏はがんの終末期で痛みがあり訪問診療と訪問看護を希望し国保病院からの定期的 な訪問診療と訪問看護を週1回受けることができた。しかし、予定外の往診を受けること はできず訪問診療時以外の疼痛については伝えることができなかった。A 氏が家で倒れて いるところを発見された時にはおそらく亡くなっていたことが考えられるが、死亡診断の ために救急車で病院に搬送され死亡が確認された。 (2)A 氏の在宅療養について支援できなかったこと A 氏は疼痛があり、定期以外の往診や訪問看護を希望したが、受けることはできなかっ た。また、家族が望むような看取りには至らなかった。医師は島に 3 名しかおらず、病院 や診療所での診察の他、定期的な訪問診療により受診できない住民の健康を守っている。 そのため、予定以外往診等の要請には医師も看護師も動けない状況がある。しかし、主治 医は A 氏への訪問診療を増やすことを検討し始めていた。医療の必要な方への訪問診療や 往診、訪問看護により、がんの終末期にある方への体調管理や疼痛緩和、そして家族への 看護を提供することができたなら、島で最期を迎えたい願いを叶えられる方も増えるので はないだろうか。 2)B 氏(精神疾患)への在宅ケアについて 図2:B 氏の状況(配食サービスの利用から連絡がつながり命を救った事例)参照 (1)B 氏の在宅療養を可能にしていた支援について B 氏は、若いころから躁鬱病を繰り返していたが、介護保険を申請できる年齢にまで この島で生活することができていた。今回は介護支援専門員が介護保険の申請を考えてい た矢先に、B 氏が自宅で転倒し動けなくなっているところを配食サービス担当者により発 見され通報に至った。地元に残っていた息子の同級生が窓から入り鍵を開け、近隣住民、 介護支援専門員、保健師、警察、消防、皆で協力して町の病院に救急搬送した。大腿骨骨 折のため、大きな病院で手術をする必要性があり息子が住む遠方の病院に転院 することになった。B 氏はそれ以来島に帰ることはなかった。 精神の方は、昔から保健師が担当という文化があり、近隣やサービス担当者から、何か あったら連絡を受け支援につなげている。保健師は精神疾患を抱えながら療養する方が、 不安定な状態にある時に限らず見守り支援を行っている。急変時でも保健師のもつネット ワークにより、息子との連絡を取り支援につなげることができた。 4.
(9) (2)B 氏の在宅療養について支援できなかったこと B 氏は島外の病院への受診が徐々にできなくなっていった。疾患の特性から、人付き合 いも親戚づきあいも疎遠になり地域でも孤立していくなかで、自分の力で生活することも 難しくなり少しずつ少しずつ体調が悪くなっていった。保健師の訪問や見守り支援が介護 保険サービスに繋がるまでの間、医療と生活の両方を看ることができる訪問看護ステーシ ョンがこの島にあれば、精神の方をこんな悪い状態で島から送り出すこともなかったので はないかと悔やまれた。孤立しやすい精神の方には医療だけでなく、生活についてもサポ ートしていけるような地元での支援体制の充実が求められる。 3)A 町の地域包括ケアの状況 図3:島の地域包括ケアの状況. 参照. (1)調理師会の協力による配食サービスについて B 氏の異常を発見した配食サービスは、介護保険をきっかけに当時の担当者と町の飲食 店が加入している調理師会が協力して発足した配食サービスである。今は高齢化と病気に より 3 軒だけが残っている。A 町の配食サービスは栄養を届ける目的の他、それ以上に見 守りや安否確認という大きな役割を担っている。1 食 350 円の配食サービスは、地域住民 にとっては高価なものであると同時に、家以外の料理を食べるという習慣がない島民には 馴染みが薄く、利用に繋がらないことが多い。しかし、どうしても、配食サービスによる 見守りや安否確認が必要な方に対しては、介護支援専門員が、何度も何度もお願してお願 して、ようやく利用して貰っている。B 氏の配食サービス担当者による異常の発見は、こ のようにして、ぎりぎりの所で、何とか支援が繋がっていたことによるものである。 (2)A 町ならではの認知症の方への見守りについて A 町では地区ごとに認知症サポート研修会を行い、見守りネットワークの啓発を行った ことにより、地区、町内会、部落の強みを活かした見守りができている。住民同士、その 人を知っているからこそ、その人が通る道、順番、時間、何周するかを分かっており、町 内会と商店街が見守りチームをつくっている。遠くに行きそうになったら安全な場所に連 れ戻す、いなくなったらみんなで探す。顔写真付きの情報を警察や消防士に配り、帰れな くなる前に探して協力して貰う。町の催し物などで、気持ちが高ぶるような時は町内会で 様子を見に行く、近所の人が安否を心配して介護支援専門員に連絡をくれる。その人を地 域のみんながわかっているので、徘徊があっても島に住める。しかし、一人暮らしの不安 や、家族との近居・同居を求めて島から出ていくことも最近は多い。家族との絆が強く島 から出るのは仕方ない。しかし、認知症や障がいがあっても、最期までこの島に居たいと 願う人の選択肢が少ないのも事実である。安心してこの島で暮らせるような選択肢が必要 であると考えている。 5.
(10) (3)A 町での服薬支援について A 町での服薬支援は受診に同行したホームヘルパーと介護支援専門員の連携により行わ れている。80 歳、90 歳代の高齢者は飲食と内服が整うと病状が落ち着き悪化しない。そ うすることで、長年住み慣れた家に少しでも長く居ることができる。しかし、高齢になる と自分の病気や薬についての理解が難しく、正確に服薬できない方が多くなる。 そのため、 ホームヘルパーが受診に同行し、病気の説明や服薬について医師から指導を受ける。家に 本人を送り、医師からの話や薬の飲み方を再度伝え、その人が飲みやすいような薬の管理 を行う。その後、介護支援専門員に受診時の情報や服薬管理について伝える。介護支援専 門員はその人が、正しく薬を飲むことができているか確認の訪問を行う。しかし、毎回、 認知症の方が正確に服薬できているか飲み込むところまでは確認できないことが課題だと 話された。本来であれば薬剤師による訪問などがあり服薬管理ができることが望ましい。 あるいは訪問看護による服薬支援があれば正しい服薬ができ病状が安定すると同時に、ヘ ルパーや介護支援専門員は本来の業務に携わることができると考えられる。 (4)受診の状況と受診介助について A 町では急性期の治療や専門的な治療が必要な場合は、船や飛行機に乗り専門医の居る 町へ移動し受診する。受診には 2 泊 3 日を要し、受診する本人も介助者も高齢であること が多く大変である。また、医師の説明も理解しにくいことがあり、介護支援専門員はサポ ートの必要性を感じているが支援することができないジレンマがある。 町内の病院への受診はバスで通院する方が多い。しかし、バスのステップが高く昇降に 介助を要することや、家からバスの通り道まで杖をついての移動は困難な方が多い。その ためホームヘルパーが受診介助を行っている。病院の診療時間に合わせたバスの運行や、 家の近くまで送迎できるような工夫を望んでいる。そのような支援があれば、ホームヘル パーは本来の業務に時間を費やすことができるのではないだろうか。 (5)関係機関・職種の連携について ➀病院の受診と服薬について A 町は陸続きにないため、 「他の町に人には笑われるくらい少ないけど、物理的に島内で 完結しないといけない状況」である。受診にはヘルパーの同行支援が欠かせない現状があ る。家からバス停までの移動、バスの昇降介助、医師の説明や薬の飲み方を本人にわかり やすく伝える。これらの情報を介護支援専門員に伝え、介護支援専門員も必要に応じて訪 問する。このように介護支援専門員とヘルパーは日常の連携の柱となっている。 ②退院時の連携に望むこと 町内外の医療機関との情報交換が容易であると、受診や退院支援が円滑に行われ、本人 6.
(11) や家族との具体的な相談や準備ができる。どこからも退院の連絡がなく自宅退院した場合、 何とか過ごせる方もいるが、過ごせない場合は町立病院に入院して、その状況がわかる方 もいる。退院前に島内外の病院から情報提供がある場合は、対象者に合わせた準備を行う ことができる。病院で患者や家族とどのような話をしているのかについての情報は、その 後の関わり方に重要な情報と考えられるため連絡をして欲しいと考えている。どこかに連 絡をしてもらえれば担当者同士で連絡を取り合えるため、65 歳以上・65 歳以下、病状等 に関わらず、とにかく連絡をして貰えることが支援に繋がっていく。 町外の病院を退院し町の病院を経由して自宅に帰ることは、本人にとっては安心につな がることが多い。何かあったら陸続きの病院で診てもらえるからである。陸続きの病院で あれば、近隣住民のお見舞いもあり、本人の自信回復や退院後の療養環境を整える時間に 活かすこともできる。 ③地域ケア会議について 地域ケア会議は月 2 回開催し情報の共有を行っている。事例検討は個別に行うことが多 い。しかし、役場も民間も、箱ものも、人手もすべて不足しており、慢性的な人手不足に よりサービス従事者にとっては心理的負担が多い現状にあるのではないか。町の良さは沢 山あるが、それだけでは生活ができないと資格をとった若い人は島を出て行ってしまう。 島には子供を預ける保育所がない等、仕事と子育ての両立が難しい環境にある。サービス 提供者自身の生活が守られない状況で他の人の生活を守ることができるのかと不安になる。 働きやすい環境づくりも求められていると感じている。 ④医療と生活の視点をもつ訪問看護ステーションの必要性について ヒト、モノ、カネ、全てが少ない状況ではあるが、訪問看護ステーションの看護師によ る支援があれば住民の選択肢の幅が広がると考える。医療と生活の両方を支援できるサー ビスが提供されることで、最期まで住み慣れた家で過ごす住民が増えると、住民の気持ち も変わるのではないかと思われる。 ⑤他の自治体の工夫を活かしたい 人口が減少するなか、高齢化が進み働く世代が居ない状況で工夫しながらなんとか支え 合っている状況である。自治体の状況に合わせてサービスを作り上げることには困難さが ある。医療圏を越えて協力し合うことが物理的に難しい同じような自治体がどのように地 域包括ケアシステムに向けて工夫しているのかの情報が欲しい。 ⑥住民の A 町に対する思いや生き方、価値観 住民には、何かあっても仕方がない、諦めないと生きていけないという離島で漁師町特 有の住民気質がある。病気に成っても仕方がない、海が荒れたら対岸に行きたくても動け ない。諦めることをしないとこの島では生きられない。良く言えば心が広い。元気な時は 7.
(12) 家に居たいと願っても、最期は町の病院か特養で過ごす方が多い。家に居たいと思っても 病院に連れていかれる。本人も家族もそういうものだ、仕方がないと諦める。そんな考え のパターンができている。町外の病院に入院した人々は、 「島に帰りたい」と話され、島に 対する気持ちが強い。島にはにおいがある。海、土、風、空、空気、家族、友達がある。 「陸続きの病院じゃないと家族や友達に会えない」 「家でなくていい、島に帰りたい」自分 の老方について口にする人は少ないが、島に帰る、それが島民の生き方であり人生なんだ と感じる。島で生きる権利があると同じように、死ぬ権利もある。 (都会の様に支援が受け られなくても)自分らしく島で死ぬことも、その人の権利なんじゃないかと・・・ふと思 うことがある。 2.B 町. 人口およそ 9000 人. 高齢化率約 38%、漁業を主要産業とする自治体。. □一番近いステーションがある自治体との距離と時間:120 キロ、2 時間 30 分。 □町立病院 1 か所、病院から月 1 回程度の訪問診療と訪問看護を行っている。 □訪問介護事業所が 1 か所。 1)在宅療養の状況と可能にしている状況 (1)在宅療養者の状況 対象者は高齢者の寝たきり状態で家族と同居されている方が多い。町立病院からの訪問 診療と訪問看護による支援で療養生活を継続されている。訪問診療と訪問看護の頻度は月 1 回程度で、病状の観察、膀胱留置カテーテルや褥創の処置などが行われている。ホーム ヘルパーは日中のみ利用することが可能で、急変時や看取りには救急車を利用している。 (2)在宅療養がかなわない方の状況 がん終末期にある方の「最期に家に帰りたい」がかなわない。成人期~壮年期にある方 が、町外の病院で手術や化学療法などを受けた後、最期の時間を「家で過ごしたい」と願 い、入院先病院から在宅移行についての問い合わせが増えている。しかし、退院後も医療 の必要性が高く、要介護4~5、独居の方が多い状況である。しかし、なんとか願いを叶 えたいと調整している間に亡くなってしまい、家で最期を迎えられた方はいない。せめて、 地元に帰りたいと転院し間もなく亡くなった方がいる。 2)一番近い訪問看護ステーションまでの距離と訪問看護の利用可能性について 一番近い訪問看護ステーションからの距離は 120 キロ、およそ 2 時間半離れている。近 隣の訪問看護ステーションから 1 時間くらいの所にある町では、訪問看護を利用したこと があると聞いたことがある。しかし、多くても月 2 回程度で回数が増えると厳しく冬季は 利用できない。そのような状況の中で、ここまで訪問看護ステーションをお願いするのは 難しいと考えている。. 8.
(13) 3)この地域に欲しいサービスについて この地域に欲しいサービスとしては、第一に訪問看護ステーションである。その他、買 い物、配食、通院の支援を行えるサービスが必要であると考えている。 (1)買い物と配食支援サービスについて 町の地形は国道に沿った細長く海と山に囲まれていることから、高齢の方は家からバス 停までの移動が困難な状況にある。スーパーは離れた町の中心にあり、買い物に不自由を 感じている高齢者が多い。高齢になるにつれ食事を作るのが億劫になり易い。軽度の認知 症の方も増えているため、遠方に住む子供さんから「配色サービスはないのですか?」と いう問い合わせがある。食事の偏りや低栄養状態から健康状態も良くない。経済的にも厳 しい方が多いので、なるべくお金がかからない配食や食事の支援が必要である。 (2)通院支援サービスについて 買い物が困難な理由と同様に、バスや車を利用できない方は通院にも困難を生じている。 病院で通院送迎バスを出しているが、国道のバス停やポイントで停まるため、そこから更 に家まで移動するのが大変な方が多い状況にある。そのため、乗り降りしやすく、使いや すい移動手段や通院の支援が必要であると考えている。 4)地域包括ケアシステムについて 地域包括ケアシステムを自治体ごとに工夫するといわれても正直工夫の余地がない。お 金も人もないなかで、どうやって工夫すればよいのかわからない。ほんとうに、こういう 小さい地域のことを知っている人が考えたのだろうかと思う。がんの人の最期の望みも、 高齢者の当たり前の生活も支援するのが厳しい現状のなかで・・・。住民の考えとしては、 介護保険料を支払っているのだから、サービスを受けたいと考えている。自助、共助とい うような考えよりも、行政からサービスを受けたいと思っている人が多い。自分たちで助 け合うような考えにはなかなか発展しにくい状況である。子供のころから、自助、共助の 考えについて、当たり前と育った世代の方々ではないので、自治体からの支援はできない となると、 「ポンと捨てられちゃった感」を感じる方が多い。支援を考えるのは行政で、住 民がサービスを受けるのは当たり前と考える方が多いように思うが、今後は住民への啓発 も必要になると考えている。 3.C 町. 人口およそ 5000 人. 高齢化率約 40%、漁業及び農業を主要産業とする自治体。. □一番近いステーションがある自治体との距離と時間:70 キロ、早くても 60 分。 □国保病院 1 か所、病院から月 2 回程度の訪問診療と訪問看護を行っている。 □訪問介護事業所 1 か所、通所介護 1 か所、通所リハビリ 1 か所、特別養護老人ホーム 1 か所、老人保健施設 1 か所、地域密着型グループホーム 1 か所。民間病院によるグループ ホーム 1 か所。町営住宅の上階は高齢者専用の住居となっている。 9.
(14) 1)在宅療養の状況と可能にしている状況 (1)在宅療養者の状況 ➀80 歳代の高齢者 脳梗塞後遺症、要介護4で全介助、3 年前より自宅療養をしている。介護者は 40 歳代の 孫であるが他者との関わりが難しい疾患を抱えており、居宅サービスとしては病院からの 訪問看護のみが受け入れられている。 高血圧、糖尿病があり、訪問看護による病状の観察や血糖コントロール、月 1 回の受診 は病院の送迎バスを利用している。その他のサービスとして通所サービスを週 2 回、通所 リハビリを週 1 回、通所介護を週 1 回利用している。訪問と通所サービスは日中のみ利用 することが可能で、急変時には救急車を利用している。 ②がん終末期. 一人暮らし高齢者. 病名と予後告知を受け、 「最期の自分の後始末をしたい」という望みをかなえるために自 宅に退院した。入院していた病院と併設の訪問看護ステーションが連携し、1時間離れた 訪問看護を受けながら痛みを管理し、亡くなるまでのおよそ 3 週間の間、自分の人生の最 期を家で過ごすことができた。 (2)在宅療養がかなわない状況 医療の必要性が高く、24 時間訪問看護が必要な方が在宅に戻る場合の対応は難しい。 2)一番近い訪問看護ステーションの自治体までの距離と利用可能性について 一番近い訪問看護ステーションからの距離は 70 キロ、およそ 1 時間離れている。長期 に渡る頻回の訪問を受けるのは難しい。 3)この地域に欲しいサービスについて この地域に欲しいサービスとしては、訪問看護ステーションの他、買い物、調理、掃除、 訪問入浴サービス、通院支援が必要と考えている。 ➀買い物と配食支援サービス 要支援1・2、要介護1になると、買い物、調理、掃除ができなくなり生活援助が必要 になる。スーパーまでの移動、買い物と調理に不自由を感じている高齢者が多いため、買 い物や調理または配食サービス、掃除などの日常生活における支援が必要である。 ②通院支援サービス 現在、町内の医療機関を巡回する送迎バスがあり、運転手さんが足元危ない方の介助も 支援してくれている。しかし、大きい道路のみ巡回しており、家から杖をついて歩いてく るのは大変である。病院で、そのような通院バスを出してはいるが、国道のバス停やポイ ントで停まるため、そこから更に移動するのが大変な方な現状にある。乗り降りしやすく、 10.
(15) 家がある奥の方まで送り迎えしてくれる様な、利用しやすい移動手段や通院の支援を必要 としている。同様に、バスや車での移動手段を持たない場合は買い物にも困難を生じてい る。通院と買い物の移動手段についての検討が望まれている。また、調理や掃除について の支援は介護保険を利用することもできるが、対象にならない方にも何らかの支援があれ ば良いのにと感じている。 4)地域包括ケアシステムについて 病院や各事業所は自治体の職員で構成されているため、連携については気軽に電話で話 しができる関係がある。また、関連機関との場所も近いので直接行って話ができる環境が あり日常的に顔の見える連携を行っている。地域ケア会議や事例検討会も開催し、担当者 同士で個別に支援について話をすることができている。 町外病院と町立病院とは、医師の紹介状を貰うことで連携することができる。月 1 回の 訪問診療と訪問看護、緊急時には町立病院で対応することができている。居宅系のサービ スも一通りある。今後は認知症高齢者の見守りシステムを考えていく予定がある。 4.D 町. 人口およそ 4500 人. 高齢化率約 30%漁業及び農業を主要産業とする自治体。. □一番近いステーションがある自治体との距離と時間:30 キロ、およそ 30 分。 □診療所 2 か所、訪問診療や訪問看護はない。 1)在宅療養の状況と可能にしている状況 (1)在宅療養者の状況 ➀70 歳代の高齢者 特定疾患、要介護4。徐々に進行する疾患である。通院が可能な時は車で 1 時間ほどの 専門病院に通院していたが、最近は隣町からの訪問診療を受けている。また、隣接する町 の訪問看護ステーションから月に 1~2 回の訪問看護を受けている。今後、医療の必要性 が高くなった場合に在宅療養を継続できるかどうかわからない状況にある。 2)在宅療養がかなわない状況 医療の必要性が高く、24 時間訪問看護が必要な方が在宅に戻る場合の対応は難しい。 3)一番近い訪問看護ステーションの自治体までの距離と利用可能性について 一番近い訪問看護ステーションからの距離は 30 キロ、およそ 30 分離れている。長年訪 問看護ステーションを利用している方については継続訪問しているが、新規の利用者につ いての受け入れはできない状況にある。. 11.
(16) 5.E 町. 人口およそ 3500 人. 高齢化率約 32%. 農業を主要産業とする自治体。. □一番近いステーションがある自治体との距離と時間:約 20 キロ、20 分。 □クリニック2か所、の訪問診療や訪問看護はない。 □訪問介護事業所が 1 か所。 1.在宅療養の状況と可能にしている状況 1)F 氏の在宅療養の状況について (1)連絡帳による関係機関・関係職種の連携について 対象者は独居の高齢者、甲状腺の疾患と抑うつ傾向により複数の病院に通院している。 失語症もあり、受診時に体調をうまく伝えられず、風邪症状がないにもかかわらず複数病 院から風邪薬が処方されていた。また、服用しなければいけない甲状腺の薬が手元にない 状況であった。体調が思わしくなく、不安も強く、定期受診以外の受診や救急車による受 診をしていた。退職した保健師が嘱託で生活支援員として訪問する中でそのような状況を 把握した。介護支援専門員の発案により連絡帳を作成し、複数の医療機関と地域の介護支 援専門員、ヘルパ―、生活指導員が連絡帳を共有することで、情報が正確に伝わり内服管 理もできるようになり病状も安定した。 (2)近隣に住む友人の支援について F 氏の在宅療養を支えている友人 G 氏の活躍がある。F 氏が元気な時は、G 氏を車に乗 せて買い物や遠方での用事を手伝っていた。F 氏は不安になると G 氏に電話をしたり、薬 の飲み方なども聞いている。G 氏はおかずや野菜、漬物などを差し入れたり、身の回りの お手伝いをしている。しかし、G 氏に頼ることも多くなるにつれ、G 氏は疲れてしまい責 任を負いきれない気持ちになり息子さんに直接連絡をすることもある。また、F 氏と同じ 診療所に通っていることから、診療所の看護師に G 氏の話をするような場面が生じてい る。G 氏には医療や介護以外の支援が必要な方であり G 氏が行っているような支援につい ても考えていく必要がある。また、今後は G 氏への支援も必要になってくると考えられる。 2)一番近い訪問看護ステーションの自治体までの距離と利用可能性について 一番近い訪問看護ステーションは隣接した自治体にあり、夏であれば市街地まで 25 分 くらいの所にある。冬は吹雪の状況により所要時間が変わる。この自治体に訪問看護ステ ーションがないため、訪問看護ステーションに気軽に依頼しようという意識は少ない。高 齢でがんの方が退院してきた時、訪問看護ステーションの利用を検討したが、急に体力が 低下し、介護保険の申請などの準備が間に合わず入院してしまった方がいた。今まで訪問 看護ステーションを利用した方は認知症による服薬管理目的が殆どで、ここ数年で数名く らいの利用であった。 この自治体に訪問看護がないということで、入院先の病院担当者も、 自宅には帰れないと思ってしまうのではないか。病院から何度か「訪問看護ステーション ありますか?」と問い合わせがあり、隣に訪問看護ステーションがあることを情報提供す 12.
(17) る。状況が合えば病院か訪問看護ステーションから連絡がくると思いながら待っている。 3)この地域に欲しいサービスについて この地域に欲しいサービスとしては、訪問看護ステーションの他、通院支援、配食サー ビスが必要と考えている。 ➀訪問診療・往診及び訪問看護ステーションについて 終末期を在宅で過ごしたいと考える方に協力してくれる医師と看護師が必要である。以 前、医療処置が必要な方の訪問診療をお願いしたが、PTCD チューブへの対応は抜けた時 の事を考えると対応が難しいと断られてしまった。入院していた病院に相談し、少し離れ た地域で看取りをしてくれる医師を探してもらい対応して貰ったことがあった。看取りを 含め訪問診療や往診をしてくれる医師、そして訪問看護ステーションの看護師が本当に必 要だと感じている。 ②通院支援サービスについて 自治体の中であれば、訪問介護で通院同乗による支援を行っている。専門医への受診は 自治体を出る必要があるが公共交通機関がないため、家族かタクシーの利用になる。家族 が支援する予定の方も、家族の都合が急に悪くなり、急遽ヘルパーさんを利用したことが あった。介護保険サービスが使えることを機に家族の関わりが少なくなってしまった方も いる。例えば、医療機関とタクシーが契約し日にち限定通院ワゴンなどがあればと思う。 眼科送迎バスとか、泌尿器科送迎バスとか・・・。高齢者の足になるような送迎サービス が必要である。 ③配食サービスについて 凄く塩分を控える必要のある高齢者が多いのに、ご飯と漬物ばかり食べて、だんだん皆 そっちに傾いていく。配食サービスの業者さんによっては、地域で 20 軒以上などの制限 があり、この自治体ではそれだけの軒数が集まらない可能性がある。この地域では配食サ ービス 1 食に 500 円を支払う習慣はないが、バランスの良い栄養を考えると配食サービス が必要である。介護保険サービスでまかないきれない隙間を生活支援事業で行っている。 日常のちよっとした支援が生活を支えている。 4)地域包括ケアシステムについて (1)医療圏と住民が日常的に通院する医療圏が違うことについて 急性期治療と専門的な治療は自治体を出て受診している。住民が日常的に受診している のは地理的に通いやすい近隣の自治体にある医療機関である。しかし、緊急時は日常的に 通院している医療圏とは別の医療圏の病院に搬送されてしまう。かかりつけ医はこっち、 緊急時はあっち・・・と、本人に不安が生じる。また、残された家族が高齢者や認知症を 13.
(18) 患っている場合は入院している先の医療機関に行くことができない場合も多い。行政単位、 管内での対応に留まらない、その地域や住民の状態にあった、その人を中心としたオリジ ナルでオーダーメイドのチームや連携の輪があってもいいのではないか。そこに必要な医 療や看護が、少ない人のためであっても、どうやったらここに届くのか、考えていくよう なことがこの先大事になってくるのではないか。 (2)地域ケア会議について 地域ケア会議は便利の言い名前で、何でもできそうな会義だけど、ややもすると“包括 がやる会義”になってしまう。自治体の責任で会議して策を練るという柱をしっかりさせ ると、包括も動きやすいと思う。ヒト、モノ、カネ等、どれも今はきつきつで、どこも動 けないという困難さを感じている。子育て支援と同様に地域包括ケアをどうするのか、健 康寿命をどう伸ばすのかについての議論が今後必要である。 文献 1)平成 20 年度 厚生労働 訪問看護事業所数の減少要因の分析及び対応のありかたに関する調査研究 事業 研究報告書 2)森山美知子:入院期間の短縮化および患者家族のQOL向上に関する専門的援助の研究-退院患者の 分析から.病院管理, 33(1),27-37,1996.. まとめ ➀北海道内の訪問看護ステーション未設置自治体5箇所に調査が実施することができた。 当該自治体において在宅ケアに携わる、保健師や介護支援専門員 10 名に半構成面接調 査を行った。 ②5自治体のうち 4 自治体については在宅療養を可能にしている事例が語られた。 ③在宅療養を可能にしていた自治体においては、本人から表出された意思を尊重した、自 助・公助・共助・商助による様々な連携の様相がみられた。 ④訪問看護ステーションがない自治体の地域包括ケアの現状は、資源の乏しいなかでもお 互いが支えあい工夫しているシステムがあった。 ⑤地域包括ケアシステムの構築についての様々な課題に対して、他の同様な地域での工夫 を知り当該の自治体に生かす機会を得たいと考えていた。 おわりに 本研究は. 2014 年度前期「在宅医療助成」公益財団法人勇美記念財団の助成により行う. ことができた研究調査である。. 14.
(19) 資料 図1 図2 図3.
(20) ケアマネジャー. 島外の病院. 島内の病院. ・確定診断・病名の告知 「手だてのない状態」. ・島外の病院からの 連絡がなかった. 在宅医療. 福祉機器の申請. ・医師3名 ・病気の発見 ・診療所の訪問診療 ・医師と看護師の同時 訪問 ・予定された週1回 ・点滴. 看取りについて悩む ベッドが届くまで 町の予備のベッド の貸し出し 介護保険を利用して 申請したベッドで 最期の3~4日過ご すことができた。 寝心地がよかった。. 対応できるかど うか説明が 不十分. 医師 看護師. 今の体制では、 在宅医療ニー ズに柔軟な対 応ができない. 予定外の訪問 は受けられない (医師・看護師). 保健師 看取りについて痛々しさを感 じている。訴える場がない。 あきらめている. ・本人がサービスの情報を ネットで検索 ・痛くても自分で動けるよう に杖とベッドを申請したい. ヘルパー. 子どもたちと過ごしたい。 家に帰りたい. 本人・家族. がん終末期 子供と両親の住む家で 最期を過ごすことができた. 図1 :A氏の状況(少ない社会資源の中、島で終末期を過ごした事例). 現在ある社 会資源 現在で きてい ること. 考え・ 思い 困難・ 不足 なこと.
(21) 島外の病院 保健師. 異常の連絡. ケアマネジャー. 通院できな くなり 状態悪化 異常の連絡. 消防 異常の連絡 配食サービスを利用 するようお願いし、よう やく何とかつながった. 医療と生活 支援が届 かず状態 が悪化. ・精神疾患の人の対応は保 健師が行うという文化がある ・近隣やサービス提供者が 保健師に連絡・通報してくれ る ・不安な時に限らず見守り支 援をする ・様々なネットワークにより 家族とも連絡をとっている. 警察 救急車 出動 異常の連絡. 付き合が なく疎遠. 配食サービス 見守り・栄養提供. 倒れていると ころ(異常) を発見. ヘルパー. 地域住民 本人・家族. 息子の同級生. 家にかけつけて、窓から 入って鍵を開けた. 躁うつ病(長年) 介護保険申請年齢まで暮らす ことができた 骨折で息子の住む町の病院 で手術. 図2 :B氏の状況(配食サービスの利用から連絡がつながり命を救った事例). 現在ある社 会資源 現在で きてい ること. 考え・ 思い 困難・ 不足 なこと.
(22) 医療 服薬管理. 看護師. ・病院にて薬剤が処方・調剤・提供. 保健師 ・服薬管理・指導が 実施できない ・服薬指導が受けられない ・地域の薬剤師が不足. 島にいたい。 島の空気・風・におい・空・海・ 土・自然・人を感じていたい。. 食事. 高齢者の特性 ・一食350円 が高額で払えない ・他者の食事は食べ ない食習慣. 生活支援 ・ 介護. 在宅医療. 病院からの ・定期的な訪問診療 ・定期的な訪問看護 (1/w程度). 専門医療 専門的治療は ・島外の医療機関 ・2泊以上必要 ・船・飛行機で移動. 本人・家族 住民. 住まい. ・調理師会の配食サービス ・食堂 3軒 見守りを目的にし た食事の場の提供. ・町立病院 ・ヘルパーによる通院の 移動・受診介助. ・臨時の往診なし ・訪問看護ステ -ションなし. ケアマネジャー. ヘルパー. 日常の受診. 医師. 元気な間は家に いたい。 病気になったら、 町内の病院 ↓ 町内の施設 という流れで住 まいを変えても いい。 島にいられれば よい。. 消防署. 認知症高齢者の 見守り ・自由に地域を歩くことができる・見守られている ・町内会・商店街の見守りチームがある ・住民が、認知症高齢者のことを十分に把握してい る ・住民が皆で、高齢者に声かけする・探す ・ケアマネジャーが認知症サポーター養成 を開き、各地区にて啓発活動. 警察官. 図3 :島の地域包括ケアの状況. 介護予防. (安全). 困難・ 不足.
(23) 公益財団法人. 在宅医療助成. 勇美記念財団. 2014 年度(前期)一般公募「在宅医療研究への助成」 テーマ 「訪問看護ステーション未設置の自治体における 在宅療養を可能にしている. 医療・保健・福祉の連携」. 報告日:2015 年 9 月 30 日. 連絡先:川添恵理子 北海道医療大学看護福祉学部 〒061-0293. 地域保健看護学講座. 北海道石狩郡当別町金沢 1757 Phone:0133-23-1211. E-mail:[email protected].
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