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タブレット端末を用いた議論の合意形成支援システムの開発

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Academic year: 2021

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タブレット端末を用いた議論の合意形成支援システムの開発

A tool based on tablet terminals for decision-making

桐木平龍之介

1

嶋田和孝

1

Giuseppe Carenini

2

1

九州工業大学情報工学部 知能情報工学科

1

Department of Artificial Intelligence, Kyushu Institute of Technology

2

ブリティシュコロンビア大学

2

University of British Columbia

Abstract: Problem-based learning (PBL) is one of the most important learning approaches in recent years. In PBL, participants in a group discuss collaboratively to solve a problem and to make a decision through a conversation. In this paper, we propose a tool for supporting consensus-building on multi party conversations. We call it ”Discussion Map”. It consists of nodes and links between them. We divide the nodes into two types; alternatives and criteria. Each criterion contains the importance value. Each link between nodes also contains the importance value. We evaluate the effectiveness of the discussion map system experimentally.

1

はじめに

近年,PBL に代表されるような問題解決型の教育の 重要性が増している [1].このような学習環境下では, 一般にブレインストリーミングのように多くのアイデ アを出し,その出されたアイデアから最終的な結論を 形成する必要がある.しかしながら,参加者だけでは, 話の内容が中々まとまらない場合や,議論自体が盛り 上がらない場合が多く存在する.円滑で効率的な対話 や議論を行うためには,適切な議事進行などを行える ファシリテーターが必要であるが,PBL 環境下ですべ てのグループにそのような人員を割り当てることは困 難である. 本研究の最終的な目的は,様々な技術を利用して,マ ルチモーダル的に対話や議論を理解・管理することで, 効率的な議論を支援するシステムを構築することであ る.図 1 に最終的なシステムのイメージを示す.提案 するシステムでは,画像から得られる参加者の行動 [2] や音声などから得られる対話の内容 [3] を利用して,対 話の場の状態を推定する.さらに,タブレット端末を 用いて,議論の状態を把握し,その内容に基づいて,議 論を円滑に進めるための情報をフィードバックする枠 組みの構築を目指す. 本論文では,このシステムの中で,特にタブレット 端末を利用して議論の合意形成を支援するシステムに ついて考察する.議論の管理には,高木らの議論マッ 連絡先:九州工業大学 情報工学部 先端情報工学専攻        〒 820-8502 福岡県飯塚市川津 680-4        E-mail: r [email protected] マイクや 全方位カメラ 頭上カメラ タブレット端末 タブレット端末の役割 1.共有情報と個人の意 見を同時管理 2.対話を円滑に進める ためのフィードバック 図 1: 最終的なシステムのイメージ プシステム [4] を使用する.このシステムは,議論に おける話題やキーワードをノード,ノードの関係をリ ンクとするグラフ構造を構築することで,議論状態や 参加者の意図及び理解状況の可視化・整理が可能とな る.システムの最終的な目的は,議論マップの構築に よって得られる情報から,合意形成の支援を行うこと である. 合意の形成を目指す議論は,複数個の選択肢に対し て様々な観点から評価し,最終的に参加者の合意であ る一つを選択するというのが一般的な流れである.高 木らの議論マップシステムでは,理解度の推定に重点 を置いているため,議論マップ中のノードは明確な役 割を持っていない.しかし,合意形成支援に重点を置 けば,ノードの役割 (選択肢や評価基準) やその重要性 人工知能学会研究会資料 SIG-ALST-B502-08 − 35 −

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などを付与できる構造が望ましい. よって今回は,高木らの議論マップを拡張し議論の 合意形成支援が行える構造にする.拡張としては,ノー ドを選択肢と評価基準の 2 種類に分け,リンクは選択 肢と評価基準間でのみ可能とし,選択肢に対する評価 基準についての評価値を持つようにする.参加者は,議 論中に出た選択肢やその評価基準を議論マップに追加 していき,評価値をつける.拡張した議論マップを用 いて,複数人による議論を行い,操作性や合意される 事項と参加者の評価傾向の関係について調査を行う.

2

関連研究

議論マップのように,グラフ構造を利用して教育支 援を行う枠組みとして Kit-Build 概念マップがある [5]. しかし,これは学習者の理解度を測る枠組みであり,対 話の状態を把握しようとする本研究の目的とは異なる. タブレット端末を用いた議論支援として,桂らのツー ルがある [6].このツールは,ある議題に対して意見を 交わす中で,論証ダイアログを用いることにより,議 題が正しいか否かを客観的に求めることが可能となる. 桂らのツールでは,論理的に正しいか否かの2値に収 束させるのに対し,本研究の目的は参加者の意見を集 約して複数の候補から正解のない一つの解を導くとこ ろにある.この点が,桂らと異なる点である. 複数の評価基準から総合的な評価を得るためのツー ルとしては,Bautista らの ValueCharts [7] や,Gratzl らの LineUp [8] がある.このツールは,選択肢に対して 複数の評価基準を設け,その評価と重要度を基に,もっ とも評価の高い選択肢を視覚的に見つけることが可能 である.これらのツールはある程度評価基準が定まっ た場合に特に有効である.一方,本研究では選択肢や 評価基準を議論の中から見つけるという,可視化ツー ルの前段階の部分に重点を置いている.

3

議論マップシステム

本研究で提案する議論マップシステムでは,議論中 に出た選択肢とその評価基準をそれぞれノードとして 議論マップ上に配置し,関連付けをして評価値の入力 を行うことによって,議論を整理する.

3.1

先行研究の議論マップエディタ

高木らの議論マップエディタでは,複数の概念とそ れらの関係から構成される議論マップを作成すること で,議論状態や参加者の意図及び理解状況の可視化・整 理を行う.参加者自身が議論中のキーワード抽出を行 い,ノードとして議論マップに配置し,他のノードとリ ンクすることで議論をグラフとして構造化する.また, リンク情報は共有されないため,参加者それぞれの考 えを議論マップ上に他の参加者に見られることなく展 開することができ,参加者全員が異なった議論マップ を構築する.ノードには公開・非公開機能があり,参加 者それぞれの考えを自分の議論マップに組み込むこと で,場全体で議論されているトピックを把握しつつ,自 分の考えを一つの議論マップで表現することができる.

3.2

本研究における議論マップエディタ

高木らの議論マップが保持する情報は,議論中のキー ワード (ノード) とそれらの関係 (リンク) のみである. これは,議論のための電子的なノートとしては十分か もしれない.一方で,合意形成の過程では,選択肢と 評価基準の区別や,それらに対しての重要性や重みを 付与したくなる場面は多くあるだろう.すなわち,合 意形成支援には,このようなノードやリンクに対する 付加的な情報が不可欠である. このような考え方に基づき,本研究では高木らの議 論マップに以下の拡張を行う. • ノードの区別と重要度の付与 ノードを選択肢と評価基準の 2 種類に分ける.ま た,評価基準ノードには重要度を持たせること で,合意を形成する際の評価の優先度を決めるこ とが可能となる. • リンクの条件と評価値の保持 リンクは,選択肢ノードと評価基準ノードの間で のみ行い,評価値を持たせる.これにより,リン クを繋ぐことが評価を行うことになり,視覚的に も理解しやすくなる. slim rails 敷居 ドキュメント数 -++ ++ H M 図 2: 議論マップの例 − 36 −

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図 2 に,提案する議論マップエディタを用いて「Web サービスのフレームワーク比較」に関する議論マップ を構築した例を示す. 選択肢は青色のノードで示し,評価基準は緑色のノー ドで示す.図 2 では,「slim」と「rails」が選択肢ノード で,「敷居」と「ドキュメント数」が評価基準ノードを意 味している.図中で評価基準ノード上にある薄緑の円 が,評価基準の重要度を示す.H (High), M (Middle), L (Low)の三段階で,評価基準の優先度を決める1. リンクには,++ から−− まで 5 段階の評価値を持 たせる.評価値は,リンク線上の茶色の円で示す.リン クと評価値は共有されないため,各参加者が議論マッ プをどのように構築し,どのような評価をつけるかは 自由である.図 2 の例では,ある参加者が「slim」は 重要度の高い「敷居」に関して高い評価 (++) をつけ ていることを意味している.

4

実験

拡張した議論マップを用いて 4 人での議論を行った. 本節ではその内容と結果について説明する.

4.1

実験内容

本実験では,「子供に習い事をさせるなら何がいいか」 というテーマで議論を行う.4 人は互いに向き合うよう に位置し,各自手元にタブレット端末を配置する.参 加者はタブレット端末で議論マップを構築する.参加 者は議論後,選択肢の中から最終的な合意事項として 一つを選択する. 本システムは構築された議論マップの情報を基に参 加者の評価値をシステムが理解・統合し,その結果の フィードバックによって,合意形成を支援することを 最終的な目的としている.そこで,その理解・統合手 法を検討するために,参加者の評価のつけ方について 考察する. また,実験後に機能や操作性に関するアンケートを とり,議論マップの操作が議論の進行の妨げとならな いかなどを調査する.

4.2

実験結果と考察

今回の議論の結論としては,「サッカー」が選ばれた. 図 3 に,実験によって構築された議論マップを示す. 1議論マップは高木らのポリシーと同じく,ノードのみが共有で リンク関係などは参加者間で共有しない.拡張した点も同様で,重 要度や後述される評価値も参加者ごとに異なるものであり,共有さ れないことに注意. まず,議論の結論である「サッカー」のノードを見る と,どの参加者も「サッカー」に対してなんらかの評 価基準について高い評価をつけていた.また,その評 価基準は他の選択肢の評価も行っており,重要度が高 いものが多かった.たとえば,参加者 D の議論マップ では,評価基準「協調性」が高い重要度を持ち,すべて の選択肢にリンクが貼られている.このことから,合 意を得られる選択肢は,重要度の高い評価基準から高 い評価をつけられており,さらにその評価基準は他の 選択肢に対しても評価を行っているものと考えられる. 次に,「陸上」のノードに焦点を当てる.図 3 で,参 加者 A,C,D は,「精神力」または「コスト」の項目 に対して高い評価をつけている.しかし,参加者 B だ け評価を行っていない.よって,合意を得られない選 択肢は,たとえ高い評価を付けられたとしても,全員 の評価が得られていないと考えられる. 参加者へのアンケートでは,以下のような感想が得 られた. • 評価方法が + と − で評価しやすいと感じた. • 操作のシンプルさが良かった. • 評価基準があることで,議論の持って行く方向を 考えることができた. • 評価の点について,議論されてないなと気付きや すくなった. • 議論中に手を動かすのがなかなかできなかった. • リンクが重なり合って見にくくなった. アンケート結果から,機能,操作性に関しては,よ い印象をうけた.ノードの追加,リンクに多少の時間 は要するものの,議論の進行を大きく妨げることはな かった.

5

おわりに

本研究では,円滑に議論を進めるためのシステム構 築の一環として,タブレット端末を利用した議論の合意 形成を支援するシステムの構築を目標としている.本 論文では,そのための議論マップシステムの拡張と有 効性の検証を行った.結果として,合意する選択肢に 対する有効な知見が得られた.また,操作性について は大きな問題はなかった. 今後は,構築された議論マップを基に参加者全員の 評価値を理解・統合する機能を追加し,実際に合意形 成を支援する枠組みを構築する予定である. − 37 −

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サッカー ピアノ 水泳 陸上 応用性 協調性 コスト 精神力 ++ ++ ++ --M M M H 参加者 A 応用性 協調性 コスト 精神力 ++ -+ ++ M H M M サッカー ピアノ 陸上 水泳 参加者 B サッカー サッカー ピアノ 陸上 水泳 ++ + --+ M M 応用性 協調性 コスト 精神力 M M 参加者 C サッカー ピアノ 陸上 水泳 ++ ++ ++ ++ + -+ + 0 0 M M H H 応用性 協調性 コスト 精神力 参加者 D 図 3: 実験により得られた議論マップ

参考文献

[1] 三宅 由美子,酒森 潔:高度専門職人材の育成を 目的とした PBL 型教育 (<特集>プロジェクトマ ネジメント教育),プロジェクトマネジメント学会 誌, Vol.16, No.2, pp.25-26 (2014) [2] 小松 和朗,嶋田 和孝,遠藤 勉:話者の頭部及び 姿勢変化に着目した複数人対話分析,火の国情報 シンポジウム 2013, B-5-1 (2013) [3] 嶋田 和孝, 楠本 章裕, 横山 貴彦, 遠藤 勉:複数 人談話における笑いの情報を考慮した盛り上がり 判定,電子情報通信学会, NLC 研究会, VOl. 112, No. 110, NLC2012-7, pp.25-30 (2012)

[4] Hironobu Takagi and Kazutaka Shimada : Un-derstanding Level Estimation Using Discussion Maps for Supporting Consensus-building,

Proce-dia Computer Science, Vol.35, pp.786-793 (2014)

[5] 吉田 完,仁野 由彬,杉原 康太:Kit-Build マップ による伝達内容に対する理解の形成的評価,人工 知能学会全国大会論文集,Vol.27,pp.1-4 (2013) [6] 桂 祐樹,岡田 将吾,新田 克己:論証ダイアグラ ムを用いた動的議論支援ツールの提案,人工知能 学会全国大会論文集,Vol.29,pp.1-4 (2015) [7] Jeanette Bautista and Giuseppe Carenini:An

In-tegrated Task-Based Framework for the Design and Evaluation of Visualizations to Support Pref-erential Choice,Proceedings of AVI’06,pp.217-224 (2006)

[8] Samuel Gratzl, Alexander Lex, Nils Gehlen-borg, Hanspeter Pfister and Marc Streit: LineUp: Visual Analysis of Multi-Attribute Rankings,IEEE Transactions on

Visualiza-tion and Computer Graphics,Vol.19,No.12, pp.2277-2286 (2013)

参照

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