対話接客プラットフォーム「
AI Messenger」の紹介
Introduction of dialogue platform “AI Messenger”
川端 貴幸 横道 稔 石川 大輔
Takayuki Kawabata, Minoru Yokomichi, and Daisuke Ishikawa
株式会社サイバーエージェント
CyberAgent, Inc.
Abstract: We have developed a dialogue platform “AI Messenger”. This platform is a feature that allows
a hybrid response by chat bot and operators. Chat bot has a function , such as FAQ response, dialogue
search, recomendation and chat.
はじめに
近年,企業とユーザの新しいコミュニケーション
として,チャット上での接客が増加している.チャ
ットは,メールと電話の中間に位置するコミュニケ
ーションツールであり,若い世代を中心にコミュニ
ケーション手段のメインとなりつつある.また,自
然言語処理の分野へも深層学習の応用が進んだこと
により,雑談を行うチャットボットなどが盛り上が
りをみせている.このような背景の元,チャット上
でチャットボットによる接客を行う実サービスが急
増している.例えば,アスクルは,同社が運営する
EC サイトの問い合わせにおいてチャットボットを
導入することで,省人化効果は 6.5 人分となったと
試算している.また,チャットボットの導入により,
オペレーターの時間が創出され,より丁寧なサポー
トが求めれる問い合わせの対応にオペレーターが注
力できるようになり,顧客満足度の向上にも繋がっ
ているという.
今後もこのような,チャット上でのチャットボッ
トによる接客サービスは増加し,ニーズは拡大して
いくと考えられる.そのため,このようなシステム
を短時間で構築できるようなサービスが望まれてい
る.
AI Messenger はこのような要望に応えるためのプ
ロダクトであり,チャット上での接客を実現するた
めのプラットフォームである.
AI Messenger
AI Messenger は対話接客プラットフォームであり,
その大きな特徴の一つは,チャットボットによる自
動応答と,オペレーターによる有人応答のハイブリ
ッド構成となっていることである.これは,エンド
ユーザである顧客にとって,チャット上での対話接
客が,自身が抱えている課題を最短で解決する手段
になっている必要があり,ここを第一に考えて,対
話接客システムを構築しなければ,ユーザにとって
は興味本位で終わってしまい一過性のサービスとな
ってしまう可能性が高いからである.
そこでAI Messenger では,チャットボットが初期
に提供する機能を次の4つとし,それ以上の複雑な
対応については専門的な知識を持ったオペレーター
により有人対応を行う対話接客システムを構築する.
l FAQ 応答
l 対話検索
l レコメンデーション
l 挨拶・雑談
企業はAI Messenger を導入することで,事前準備
なしに,チャットボットによる上記機能や,専門の
オペレーターによる対応を可能とするチャットサー
ビスを提供できる.また,チャットを提供するチャ
ネルとしては,PC やスマートフォンの Web browser,
Facebook メッセンジャー,Line に対応している.
続いて,チャットボットが提供する上記4つの機
能について簡単に説明する.
FAQ 応答
多くの企業では,問い合わせのうち実に半数近く
は,FAQ により回答が可能なものとなっています.
「FAQ 応答」では,事前に Question と Answer の組
をシステムへ登録しておくことで,ユーザからの質
問に対して,最も適切な回答をチャットボットが自
動で応答するものである.どのように適切な回答を
選択するかなど詳細については後述する.
これにより,企業にとってはより複雑な接客にオ
ペレーターを回すことができ,ユーザにとっても回
答が即時に得られるという利点があり,オペレータ
ーよりもチャットボットの方が優位なことの一つで
ある.
人工知能学会研究会資料
SIG-SLUD-B505-16
― 59 ―
対話検索
対話を通じてユーザの検索ニーズを理解して,ニ
ーズに合致する情報をユーザへ提示する機能である.
ユーザが発話した自然文から検索条件を自動的に抽
出したり,必要に応じて追加の検索条件をユーザに
質問したりするような対話制御技術が主に使われる.
レコメンデーション
対話の中でユーザの趣味嗜好を理解し,ユーザの
代わりにお薦めのアイテムを探してくるコンシェル
ジェのようなサービスを最終的には目指している.
当初は,類似アイテムの検索や,ユーザから明示的
な好みのフィードバックを受け取ることで動作する
レコメンデーション機能を実現する.
挨拶・雑談
挨拶や雑談をする機能は,チャット上の接客体験
を提供する上で必須ではないが,持続的なサービス
を目指す上で欠かすことはできないものである.先
行研究により,雑談は他のタスクの達成率をあげる
効果があることが知られている.
なお,現時点では「対話検索」や「レコメンデーシ
ョン」については研究開発中である.そのため,本
稿では「FAQ 応答」の手法について簡単に説明し,
その簡易評価について示す.
図
1 チャットボットの動作例
「FAQ 応答」の詳細
ユーザから質問が入力されると,事前に登録され
たFAQ リスト(Question と Answer の組のリスト)
のQuestion 文と,ユーザが入力した質問文の間の類
似度を計算する.類似度については後述.求めた類
似度を降順に並べ,応答閾値を超えるQuestion があ
れば,もっとも類似度の高い Question に対応する
Answer を図1右上のようにチャットボットの応答
として返答する.もし,応答閾値未満,サジェスト
閾値以上のQuestion があれば,それらの Question を,
図1 左下のようにボタン UI として提示する.サジェ
スト閾値を超えるQuestion がない場合には,図 1 右
下のようにオペレータへの誘導を促すような流れに
している.応答閾値やサジェスト閾値は,パラメー
タであり,現在は人手で調整している.
類似の尺度としては,意味的な近さと表記上の近
さを組み合わせたものを用いている.
意味的な近さは,事前に学習した単語の分散表現を
用いて,文を文ベクトルに変換し,コサイン類似度
を用いて計算している.これにより,「商品が故障し
た」と「品物が壊れた」という,単語ベースでは一
致しない二つの文の間でも,高い類似度を得ること
が可能になる.
また,表記上の近さについては,暫定的にPython
のライブラリであるdifflib を用いて,文字列の類似
度を計算している.これにより,表記ゆれや誤字・
脱字,また,多少の略語については吸収可能である.
最終的には,意味的な近さと表記上の近さを組み
合わせ,よりロバストな類似度として利用している.
本類似度の評価実験を行い,意味的な近さのみを使
うより,表記上の近さを組み合わせる方が,正解率
が10%以上向上した.
おわりに
本稿では,チャット上での企業とユーザの新たな
接客を実現するAI Messenger という対話接客プラッ
トフォームを紹介した.AI Messenger では,FAQ 自
動応答や対話検索をなどを可能とするチャットボッ
トと,より複雑な接客を行うオペレータとをシーム
レスに切り替えるハイブリッド構成である.これに
より,ユーザが抱える課題を最短で解決するユーザ
体験の提供を目指している.現在,導入が進んでい
る業種としては,商品比較メディア,中古買取,化
粧品のEC,製薬,自動車販売など多岐に渡る.
今後の展望としては,人と人の接客における対話
データを溜めていき,より賢い接客が可能な対話シ
ステム実現のための研究開発を推進していきたい.
― 60 ―