赤道海域及びコラル海における放射能の検索につい
て
著者
盛田 友弌, 源河 朝之
雑誌名
鹿児島大学水産学部紀要=Memoirs of Faculty of
Fisheries Kagoshima University
巻
4
ページ
151-156
別言語のタイトル
On the Inspection of Radioactivity in the
Equatorial Sea and the Coral Sea
第 Ⅲ 報 赤 道 海 域 及 び コ ラ ル 海 に お け る
放射能の検索について
盛 田 友 弐 ・ 斉 藤 要 ・ 源 河 朝 之 ⅢOnthelnspectionofRadioactivityintheEquatorial SeaandtheCoralSea TomokazuMORITA,KanameSAITOandTomoyukiGENKA 151 緒 言 1954年10月28日から翌年1月28日にわたり,本学実習船敬天丸(265.09屯,500 馬力)により,コラル海,ソロモン海域,赤道海域においてマグロ延縄操業の実習調査を 実施した.この際,採集した試料について放射能の検索を試みた.而して今回は船内設備 の不備と荒天多きため,計画的に充分な調査をなすことが出来なかったが,航海中船上に おいて,又帰学後実験室において蒐集し得た試料によって以下考察をなすことにした.特 に南太平洋方面の漁獲物,浮瀞生物,海水などについては,関心をもち放射能の検索をな したが,これらには全く検出されなかったので,ここにこれを報告する. 調 査 の 概 要 今次の調査における敬天丸の航跡及び操業海域は第13図のようである.航海に当っては放射能の汚染海域に関する水産庁の定めた指定海域註'(')を避けて,第'3図のようにその
西方の西カロリン群島近海を航行した.なお調査は北緯20度以南の海域において,荒天 時を除き毎日1回海洋観測とLarvanet,PIanktonnetの曳航などをなし,又漁場にお いてはマグロ延縄漁具による操業を実施した.このようにして蒐集した試料(漁獲物,浮 勝生物,漂流物,海水)について放射能の検索を試みた.その試料の採集位置は夫を第 13図に示すようであり,これらの放射能検索は,船上においてはSurveymeterを"使用 し,実験室では科研製32進型Radiationcounter(マイカー厚み2.9mg/cm2)を用 いて計測した. 漁 獲 物 の 放 射 能 今回のマグロ延細の操業海域は第’3図のようであり,この全海域にわたる’0ケ所で釣獲した魚類(2)(主としてマグロ類,カジキ類)27尾について放射能の検索を試みた.又こ
の検索に当っては,甲板上においてSurveymeterを.使用し,魚体の表面,鰭の基部, 鯛,腹腔,内臓などについて測定した.しかしSurveymeterの性能上詳細なCountの 註1.指定海域:次の各点を結ぶ海域である。 (1)21.-00'N,.152.-00'E(2)2.-00'N,152.-00'E (3)2.-00'N,175.-00'E (4)21.-00'N,175.-00'E この海域で航行又は操業した漁船は関係官庁に報告の義務を有し,入港地の指定を受ける.E 鹿児島大学例k産学部紀要第4巻 152
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〃 fishes・ planktonandfloatingmatter・ seawater. Foreclosedsea Collectingstaionof 〃 〃 N隆鰯
Fig.13MapshowingcourselineofKeitenMaru,fishinggroundsand collectingstationsofSample. −→:Courseline.⑯:Fishingground.
DesignatedseabyFisheriesAgency.14.8 66 110 28.5 106 55 60 33 45.5 23 22.5 22 102 26 29 13 42 17 32 42 28 89 26 169 48 15 Table21.Resultsofinspectiononrndioactivityofcatchingfishes ″″ワ堂″︽。″″4︽″5″︽b″再﹄″ ’8Q nコ Q︶ ″一助十 ″″″″ ″ 一*
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算出は困難であったので放射能の有無を十,−で示した.その結果は第21表のようで
ある.この表によればコラル海,ソロモン海域における漁獲物には放射能は全く検出されなか
った.又赤道方面の海域における釣獲魚にも殆ど検出されていないが,然し第21表のように1月8日,西カロリン群島近海の5..451N,143.‐22’E,即ち赤道流域(2)(3)
で釣獲された4尾の魚類(キハダ2尾,クロカジキ1尾,バシヨウカジキ1尾)には鯛,
腹腔,内臓において明らかに放射能(約50∼100C/、)が検知された.
以上の結果から見れば,今回調査した漁場においては放射能で著しく汚染されたマグ
ロ,カジキ類は釣獲されなかったと云える. * Radioactivity Body weignt (kg) Fishingstation Kindoffish No.|Date RfC L副t、|Long. Surveymeter,Distance:10cm, :50∼100Counts. 一盛田友式,斉藤要,源河朝之一第Ⅲ報赤道海域及びコラル海における放射能の検索について153
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鹿 児 島 大 学 水 産 学 部 紀 要 第 4 巻″23456789加〃皿皿過必
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8.-00'N Lat.|Long, 浮 勝 生 物 と 漂 流 物 の 放 射 能浮潜生物と漂流物(主として軽石)とは航海中にLarvanet(口径1.5m)を時速約2
浬で15分間曳航して採集したものである.これらの試料の放射能の検索は帰学後,実験
室において計測した.即ち実験室では浮瀞生物及び漂流物を乾燥粉末となし,500mg当
りのCountを1cmの距離で測定し,その結果を夫交第22,第23表に示した. Table22.Resultsofinspectiononradioactivityofplankton inspectiononradioactivityこれらの表によれば, matter・ 南緯のソロモン南部海域 Table23.Resultsof offloating *Distance:1cm *測された.これら浮瀞生物,漂流物の放射性物質は汚染された海水より摂収或は吸着した
ものと考えられる・即ちカロリソ群島附近の赤道海域(北緯10.−00'∼2.-30’,東径
Collectingstation C/500mg (Dry matter〕 No.|Date Principalspeciesofpiankton789024030571
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1 Iま全く認められなかつ Pumice-stone、 た.然し北緯の赤道附近Pipofcoco,nut.の海域で採集した浮瀞生
Pumice-stone・ 物には明らかに放射能が 検出され,又同海域にお 〃 ける軽石やノ;耶子の種子に も相当数のCountが計1
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*Distance:1cm 〃 1955 Jan、111″″皿
1954 Nov、6 〃 station Long. 147.-35'E111
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十一十一十一十一十一十一十一十一十一十一十一十一十一十一十一十一2323233233222232
−1 cOp幼o"α,sagjがα,A"カノケ幼oaa,sαノカα C⑳幼oda,Sag伽α,CO”'0"”Ra〃oノαγjα,Mjノsjs saノカα,c助幼o伽,Mysjs,A”カノケノカoαα, s幼加ノzOp〃orag Sわんo"0力加γαe,αg"。'肋ノ"α,C肋幼”α,Sag伽a sag州α,A柳p腕力”α,sαノカα,cQpgp0da,E”ノケα"sja A碗カル幼”α,sagj"α,cQp幼”a sαノカα,E幼〃α"sja,c助幼0αα,sag伽α A"'〃幼oda,sj'加ノzOp〃0γαg,E幼加"sjacea, Sagjがα SαノPα,other E”ノクα"sja,ハfysjs,S幼ノケo"oP"0γα9,sαg伽α 〃egaノopa,E幼"α"sja,cOpgpoaa,sαノカα,sagjがα CO'幼”α,Sαノカα,Sagjがα,Cオg"op肋γα,FjsノケScαノe E幼〃α"sja,Sagjがα,CO力幼0αα,Sαノヵα E"力加"szacga,s幼〃0"助力oノ'αe,αg"幼〃oγαe, cop幼oda ag"助〃orα,sαノヵα,E幼ルα灘sja,s〃p〃0"0カノセoγαe co〆podα,sagjがα,c”po"”,Raaj0ノαγjα,sαノヵα}
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辺Ⅳ姐躯別”肥46肥
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141.-301∼147.-401の海面:北赤道流南部,赤道反流,南赤道流北部にわたる)(2)(3)
における浮瀧生物及び漂流物は多少にか>わらず明らかに放射能で汚染されていたが,し かしソロモン群島より南方の海域では放射能は全を検出されなかった. 海 水 の 放 射 能 海水については,採水の都合で塩分検定用のものと同時に採水封蝋し,帰学後実験室に おいてその放射能の検索をなした.而して実験室では,鉄明舞沈澱法即ち海水1立に鉄明 馨液(Fe、10mg/L),塩化バリウム液 (Ba、10mg/L)を各袖pえ,加温した後, アンモニアをフェノールフタレンで桃色とな るまで加え,放置後において折出した赤褐色 の沈澱を滴別し,乾燥後に約1cmの距離で放射能のCountを測定した?)その結果は
第24表のようである. この表によれば,南緯のソロモン南部海域 及びコラル海における各点で採集した海水中 には放射能は全く認められなかった.而し北 緯の赤道海域におけるNo.1,2,18の各点 で採集した試料には幾分放射能があるように 思はれるが,この位のCountではその有無 の断定は不可能である. Table24.Resultsofinspectionon radicactivityofseaWater.却却却却却劫却却劫却却却却劃却却却却却却
32101102210211011211
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13∼Nov、15 1 7 ∼ 〃 1 9 Dec、11 2 1 ∼ 〃 2 4 25∼Dec、6 1 3 ∼ 〃 1 9 2 2 ∼ 〃 2 3 1 3 ∼ 〃 5 8 ∼ 〃 1 0 Collectingstation * No.IDate Count243262133
1ABCDEFGHI
Lat.|Long. 〃 〃 Dec. 〃 1955 Jan. 〃38,賂
36誕即〃〃〃〃〃〃〃″″〃〃″唖〃〃弱諏″″〃
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Total 〃 そのま>持ち帰りその一部を調査試料とした.なお″″″″″″″″″″〃N″〃〃ノノノノノノノノノノノノノ
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盛田友式,斉藤要,源河朝之一第Ⅲ部赤道海域及びコラル海における放射能の検索について155 1954 Nov. 〃 Table25.Timesoffishingby tunalong−Iine *Distance:1cm 漁 具 の 放 射 能 マグロ延縄漁具の放射能による汚染に ついては船上において,Surveymeter では計測困難であったので,帰学後実験 室で調べた.又この漁具(綿糸11匁,コ ールタール染)は毎日約300鉢を使用 し,操業終了後は洗練することなく,そ Eishing ground Date156 鹿 児 島 大 学 水 産 学 部 紀 要 第 4 巻 各漁場における操業の回数は第25表のようであり,即ち漁具の使用回数は総計36回で ある.殊に前記のように浮勝生物,漂流物などに放射能が検出された海域即ちH,Iの漁 場では操業の最後において,計6回漁具を使用している.これらの漁具については充分日 乾した後,放射能の検索を試ふた.その結果,漁具には全々放射能は検出されなかった. 即ち西クロリン群島近海におけるこの程度の操業では,漁具は放射能により容易に汚染さ れなかったものと考えられる. 訓 結 ぴ 以上のように今回の調査は南洋の西カロリン群島近海(赤道海域)を経てオーストラリ ア東方の海域にわたり試料を蒐集し,これらについて放射能の検索をしたのである. この結果によれば,ソロモン群島の南方海域における漁獲物,浮勝生物,海水などには 全く放射能は検出されていないしかし赤道海域(主として赤道反流域)における調査で は,海水及び漁獲物の一部に幾分放射能があるように思われるが,判然としない然るに 同海域で採集した浮瀧生物及び漂流物(軽石,郁子の種子)には明らかに放射能が検出さ れている. 即ちこの事実によれば,水爆実験後,半年を経過した現在でもビキニ島より西方へかな りの距離(1,000∼1,500哩)にある西カロリン群島方面の海域で放射能がなお検出され ていることは,半減期の長い放射性物質の存在することを意味し,海洋並びに水産生物に 与えた影響の大きなことが准察される. 終りに臨承本稿について御校閲を賜った本学の金森教授並びに本調査に御協力下さった 敬天丸の森無線局長,航海士各位及び玉利,鮫島両教官に対して深甚の謝意を表する次第 である. Resume Inthispaperwedealtwiththeinspectionofradioactivityonthefishes, planktons,floatingmattersandseawaterobtainedfromtheEquatorialseaand theCoralseaduringthetermfromDecember(1954)toJanuary(1954). IntheEquatorialsea,theplankton,floatingmaterandsomeoffishwere contaminatedbyradioaCtivity,buttheradioactivityonthesamplesobtained fromsouthernseaofSolomonlslands,theCoralSea,andonthetunalong−line thatwasused36timesatallfishinggroundsduringthisvoyage,washardly recognized. (1) (2) (3) (4) 文 一 献 鮪漁業研究会:原子爆弾と、まぐろ漁業鮪漁業No.7〔1954) 中村広司:鮪漁業と其の漁場(1951) 宇田道隆:ビキニ近海の海況と漁場の汚染科学vol、24No.12〔1954) 三宅泰雄:講演(於鹿児島市)10月(1954)