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ペレー人学校における学齢期の子どもへの日本語指導に関する一考察 ―音楽的な活動を通じて―

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Academic year: 2021

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(1)ペル−人学校における学齢期の子どもへの 日本語指導に関する一考察 −音楽的な活動を通じて−. 鈴木良子 ・ 結城. 恵 ・ 勝部. 群馬大学教育実践研究 第 26 号. 群馬大学教育学部. 297∼303 頁. 太. 別刷 2009. 附属教育臨床総合センター.

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(3) 297. 群馬大学教育実践研究 第 26 号 297 ~ 303 頁 2009. ペルー人学校における学齢期の子どもへの日本語指導に関する一考察 ―音楽的な活動を通じて― 鈴 木 良 子1) ・ 結 城. 恵2) ・ 勝 部. 太3). 1)伊勢崎市立境剛志小学校教諭 2)群馬大学附属学校教育臨床総合センター 3)群馬大学教育学部音楽教育講座 (2008 年 10 月 31 日受理). はじめに 日本に滞在する外国人は、平成2年の入管法改正の. の教育実習を終え、複数の学校でのインターンシップ を経験している。しかし、ペルー人学校で教育実践を. 施行により急増した。平成 19 年末の外国人登録者数. 行うという経験は、この学生の「教え方のあたりまえ」. は、2,152,973 人となり、過去最高を更新している。. や「教室ルールのあたりまえ」が次々と壊される経験. わが国の少子高齢化とグローバル化の進展は、 「多文化. となる。日本語を母語としない児童生徒に、日本語で. 社会」という現実を生み出した。そして、われわれは、. 授業を行うためには、おそらく、日本の学校以上に児. 生まれ育った文化や社会が異なる者同士で、 いかに 「共. 童生徒とのコミュニケーションに苦労をすることにな. 生」 するかという問いに改めて直面することになった。. るだろう。. 学校教育現場でも同じ課題に直面している。増加す. 本論文は、母語も教授学習過程のありようも異なる. る外国籍児童生徒への日本語指導、日本の学校文化へ. 学校で、子どもたちに音楽リズムをとおして日本語を. の適応指導、 学習指導の問題など課題が山積している。. 教えるという経験のプロセスを記述するものである。. これに対して、学校教育現場では、日本語を母語とし. そして、そのプロセスでの試行錯誤から導かれた、日. ない子どもに教科学習を効果的に行うためのJSL. 本語の学習指導のひとつのあり方を提示する。. (第二言語としての日本語学習)の開発、公立学校で 使用される教科書のポルトガル語訳など、大学等関係 機関との連携でさまざまな実践が展開している。 また、. 1.群馬県における多文化状況 群馬県の統計データによると平成 19 年末現在の外. 平成 20 年6月には、文部科学省から「外国籍児童生. 国人登録者数は、45,766 人で県全体の人口に占める割. 徒の教育のあり方検討会」報告書が提示され、公立学. 合は、2.27%である。市町村別の登録者では、伊勢崎. 校における外国籍児童生徒を巡る問題と対応の方向性. 市が最も多く 11,816 人で、太田市、大泉町、前橋市、. が具体的に示された(文部科学省 2008) 。. 高崎市と続く。中でも大泉町は、人口の 16.3%が外国. 上述した教育実践は、基本的に公立学校を対象とし、 人で全国の市町村の中でも非常に高い割合である。そ そこで学ぶ日本語を母語としない児童生徒を対象とす. のために、ブラジル人等のコミュニティが作られ、日. るものであった。本論文で紹介する教育実践は、ある. 本語が理解できなくても生活できる環境にある。また. ペルー人学校を対象とし、そこで学ぶ日本語を母語と. 伊勢崎市は、全国で最もペルー人の多い市である。外. しない外国籍の児童生徒を対象とするものである。さ. 国人の数は増える一方、 日本の人口は減少傾向にある。. らに、その教育実践は、教職を志す学生(以下、イン. このような状況を受け、今後外国人住民にかかわる課. ターンシップ生)が試行的に行った実践である。. 題は、近い将来において私たち日本人にとっても共通. このインターンシップ生は、日本の公立小中学校で. のものとなることが予想される。.

(4) 298. 鈴木良子・結城 恵・勝部 太. 急増する外国人のなかで、近年、 「定住者」 「日本人. このような状況のなかで、群馬大学(以下、 「本学」. の配偶者」 「永住者」は増加している。外国人住民を日. と略記)の教育学部 4 年生が試行的に行った実践を以. 本の「生活者」としてとらえ、共に生きる住民ととら. 下に紹介する。なお、この学生は、文部科学省「特色. えるとき、最も重要になる課題のひとつが、コミュニ. ある大学教育支援プログラム」の一環として本学が平. ケーションの問題である。子どものコミュニケーショ. 成 17-20 年度の4年間の選定を得た「多文化共生社会. ン形成は、 学校教員が貢献できる重要なテーマである。. の構築に貢献する人材の育成」プログラムに参加して いる。本論文で紹介する教育実践は、このプログラム. 2.多文化状況のなかの子どもたち 群馬県では、公立学校に通う外国籍児童生徒は平成. のなかの、教育学部体験的科目「多文化共生教育実践 インターンシップ」で行われたものである。. 17 年に 1,800 人を超えた。また、全校生徒 600 名の うち100 名余りを外国籍児童が占めるという公立小学 校も現れている。これら児童生徒の日本語教育には課 題が山積している。. 3.問題設定 ペルー人学校には、 「音楽」の授業がない。音楽が 必修科目に位置づけられているわが国では、意外に感. 学校教育現場では、日本語指導を初期、中期、後期. じる。しかし、日本に3校あるペルー人学校でも、ペ. とカリキュラム内容を多様化し、 児童生徒の来日時期、. ルー本国においても、義務教育段階では「音楽」は必. 日本語レベル、学年、各学級の時間割などを配慮し、. 修科目ではない。. 児童生徒に合った学び易い環境と学習内容を提供して. しかし、E校の子どもたちは、リズムや音楽に親し. いる。しかし、ある学校では 1 学期に 50 人にものぼ. みを感じ、なかには、リズム感や音感に優れた者も確. るといわれる、転編入、帰国等、移動が激しい外国籍. 認された。その様子は、E校での観察期間中に、休み. 児童生徒の対応に追われ、安定した日本語教室の運営. 時間に「小さな世界」という習いたての歌を子どもた. が困難になっているのが現状である。. ちが口ずさみ、実習生に日本語で一緒に歌うようジェ. 公立学校に通わない子どもたちの多くは外国人学. スチャーで示した時に観察された。一緒に歌えない子. 校に通学している。 例えば、 ブラジル政府認可校では、. どもはドラムをたたく真似をして、リズムを叩いてア. 各学校が日本語教師を配置し日本語や日本文化を学ぶ. ンサンブルに参加していた。やがて、日本語でうたう. 時間を提供することを認可の必要要件としているが、. 実習生の歌に机をたたく音、黒板をたたく音、カスタ. ブラジル政府の認可をとっていない学校やペルー人学. ネットをたたく音など、子どもたちによる多様なリズ. 校では、日本語教育は必ずしも行われていない。日本. ムが加わっていった。. における 「生活者」 としての外国人ととらえるならば、. 学校では科目としての「音楽」がなく、音楽を組織. 日本語に触れ、学ぶ機会がないままに年月を重ねるこ. 的・体系的に学ぶ機会のない子どもたちであるが、子. とになる可能性が高い。外国人学校で日本語教育を実. どもたちの歌うメロディ-やリズム感がかなり正確で. 践することは、日本で生活する外国人の文字通り「生. あることには注目させられた。E校の子どもたちの学. 活者」として求められるコミュニケーション能力の向. 校以外の生活のどこかに、この子どもたちが音楽に親. 上を保障する意味で重要となる。. しむ場があることが推測された。そこで、われわれに. 一方、外国人学校で日本語を教えるという体験は、. とっては、意外にさえ思えた子どもの、抜群とも言え. 教育者にとっても、相手がどのような内容や局面に関. るリズム感、音感を検証しつつ、日本語教育に活かす. 心を持つ・持たないか、 どのような教え方がより効果的. 方法を探ることとした。. か、相手の視点から理解する契機となる。なぜなら、. ところで、 「日本語独特の発音の存在」は、外国人. 教える側と教わる側のマジョリティ・マイノリティ関. が日本語を学ぶときに障壁になることはさまざまな先. 係が逆転するからである。教える側には、日本語を母. 行研究によって指摘されている。われわれ日本語ネイ. 語としない多数の対象を相手に、いかに日本語への興. ティブが、英語のRとLの発音を区別して発音したり. 味・関心をひきつけ、理解しやすいように授業を構想. 聞き取ったりするのに困難を覚えるのと同様である。. し、展開するかが求められる。. 外国人にとって発音が難しいものの例として、川上.

(5) 299. ペル-人学校における学齢期の子どもへの日本語指導に関する一考察. (1984)は、 「長い音節(2拍分の音節)を十分長く発音す. (2)研究方法. ること」であり、その傾向は特に米国人に顕著である. 本研究は、調査者が教育実践をしながらその影響を. ことを示している。そのため、[コー・ト・オ・キ・タ](コ. 考察する、アクションリサーチである。アクションリ. ートを着た)と[コ・ト・オ・キー・タ](箏を聞いた)の. サーチとは、図1に示すように、ある仮説を実践する. 区別が全くできない、またはほとんどできないという. ことによりその効果を検証する手法で、その実践過程. 事態が起こることを指摘している。. で仮説をさらに精緻化しながら検証を繰り返す。. これまでの研究では、スペイン語圏の成人あるいは. 調査者は、2007 年 10 月初旬から、E校の訪問を開. 子どもたちが「日本語独特の発音の存在」に対してど. 始した。その訪問では、網羅的な観察を繰り返す過程. のような困難を抱えるのかについての知見はほとんど. で抽出された仮説は、 「E 校の子どもの日本語教育には、. 確認されなかった。そこで、本研究では、ペルー人学. リズム感と音感を活用した方法が有効なのではない. 校“E校”の子どもたちが、日本語をほとんど話さな. か」である。本調査では、子どものリズム感と音感を. いこと、リズム感と音感が相対的に優れているという. 用いる活動を日本語教育活動に組み込み、実践する。. 印象から、 「日本語独特の発音の存在」を楽しむ「こと. その過程で、 「日本語独特の発音の存在」に興味関心を. ばあそび」から導入をはかることにした。. 集める活動を組み込むことを通して、その効果の検証 を行い、仮説の再構築をおこなう。スペイン語圏の年. 4.研究方法. 少者に対する日本語教育について、ほとんど研究の蓄. (1)本調査研究の舞台E校. 積がない状況にあって、この螺旋教育のあり方を探る. 本研究の対象とした学校は、群馬県伊勢崎市内にあ. 上で有効であると考えられた。調査者は、E校での観. るペルー人学校E校である。E校は、1999 年に群馬県. 察・実践記録を詳細に記録し、その記録に顕現する特. 伊勢崎市に設立された。この学校は幼稚園生5名・小. 徴的な現象をキーワードに、分析、仮説の構築、検証、. 学生 12 名・中学生 11 名・高校生1名、合計 29 名が. 理論化をすすめた。. 在籍している(平成 19 年年 12 月末現在)。学校の設備 は、 1階に3教室、 2階に2教室の合計 5 教室がある。 広さは、1階は4畳が2部屋と8畳ほどの部屋、2階 検証. は8畳ほどの部屋が2部屋である。これらの教室は、 それぞれ、リクリエーションルーム、幼稚園クラス、 小学生クラス・中学生以上クラスというように使用さ. 仮説. れていた。複式学級による授業進行が通常であり、ひ とつの学年が指導を受けている間、その他の学年は反 復練習を行う「フィッチャ」と呼ばれるワークシート. 検証. に取り組むことになる。こうした環境と授業進行のな かで、子どもたちの雑談を耳にすることはなく、集中 して学習をしている様子がうかがえた。. 仮説. 授業科目は、小学生が言語・算数・理科・社会・体 育・芸術、中学生以上は国語・数学・理科・社会・体 育・芸術である。この芸術は主に美術として絵を描い ていた。このようにこの学校では、いわゆる「音楽」 という科目はない。強いて言えば、 「芸術」のなかに音. 図1 アクションリサーチの過程. 楽の活動が組み入れられることもあるが、年間に数回 といった程度である。授業科目ではなく、リクリエー ション活動の一環として、E校では、中学生以上の生 徒が土曜日にバンド練習をしている。. 5.アクションリサーチ 日本語指導に音楽的要素を取り入れるとして、その 要素となるのは、先行研究によれば「リズム」と「メ.

(6) 300. 鈴木良子・結城 恵・勝部 太. ロディー」である。まず、 「リズム」については、川上. 【結果】. (1984)は、日本語の音節の長さを教える方法と促音の 発音を教える方法として、リズム打ちが効果的である と 指 摘 し てい る 。「 メロ デ ィ ー 」に つ い て は、 Wallace(1994)が、 文の記憶はメロディーづけにより促 進されると報告している。松見・鈴木(2006)は、第二 言語の文の学習に対して、 Wallace(1994)の知見を検証 し、第二言語の場合は、メロディーがあってもなくて も結果に差はなかったという結論を導いている。 これに対して、筆者らは、松見・鈴木(2006)の検証 実験では実験参加者にとって未知のメロディーが使用. この実験は、リズムパターンの認識ができる(リズ. されており、その未知なメロディーをまず記憶しなく. ムパターンがたたける)子どもには、効果的だった。. てはならないことが、文の記憶という作業に対して障. しかし、リズムパターンが認識できない子ども(リズ. 害になったのではないかと推測した。そこで、本研究. ムパターンがたたけない)には、ほとんど効果が現れ. では、子どもたちとって未知のメロディーと既知のメ. なかった。また、リズムパターンが認識できない子ど. ロディーを併用することにより、その効果を検証する. もには、個別に支援が必要となった。. こととした。. 以上の結果から、個別に支援が必要な子どもたちに. そこで、日本語指導にリズムとメロディーを付加す. ついては、言葉の発音練習を繰り返しその定着を促し. ることの影響と、その効果的な方法を次の3つの実験. た。結果として、言葉が言えるようになると、リズム. により検証することとした。(1)促音に焦点をあてた実. もたたけるようになった。. 践「ロケット・かけっこ」 、(2) 音節の長さに焦点をあ てた実践「おばさん・おばあさん、おじさん・おじい. ②メロディーで教える. さん」 、(3)言葉の切れ目に焦点をあてた実践「早口言. 1.音まねをする。 “La”でドレ・ド. 葉」の3つの実験である。. 2.上記1でやった音真似にそって、ことばを発音 する。. 【実験1】 促音に焦点をあてた実践「ロケット・かけっこ」. 【結果】メロディーで教えた場合、11 名中 11 名全員. この実験は、①リズムで教える、②メロディーで教. が正しい発音で発音することができた。. える、の2種類で行った。 それぞれの実施手順と効果は以下の通りである。. 本実験からは、促音を E 校の子どもたちに教える場. ①リズムで教える. 合、リズムで教えるよりもメロディーで教えるほうが. 1.真似をさせて、単語のリズムをたたかせる。. 回答率は高いことがわかる。 リズムで教える場合には、. 例)ロケット ・・・・ タタッタ 2.ドラムをたたき、そのあと言葉を発音する。 例)ロケット タタッタ. ロケット. タタッタ (使用した単語). リズムパターンの理解に課題を抱える子どももおり、 個別の対応が必要となる。メロディーで教える方は、 全員が理解を示すなど、より効果的な手法であること が推測された。 【実験2】. あ.ロケット. 音節の長さに焦点をあてた実践「おばさん・おばあ. い.ロケットかけっこ. さん、おじさん・おじさん」. う.ロケットかけっこケチャップ. この実験についても、①リズムで教える、②メロデ. え.ロケットかけっこケチャップコケコッコー. ィーで教える、の2種類で行った。.

(7) ペル-人学校における学齢期の子どもへの日本語指導に関する一考察. それぞれの実施手順と効果は以下の通りである。. 301. きるか。 7.おばさん・おばあさん・おじさん・おじいさん. ①リズムで教える 1.Obasan とローマ字で書かれた文字が読める. の 4 枚のカードのうち一枚を提示し、正しく発 音できるか。 【結果】メロディーをつけて教えた場合、8 名中 7 名. か。 2.おばさん・おばあさんの絵カードを見せ、ど. が正しく区別して、発音することができた。. ちらが Obasan(おばさん)かがわかるか。 3.おばさん・おばあさんにリズムをつけて練習. 以上の結果から、E 校で音節の長さを教えるときに. したのち、出されたカードがおばさんかおば. は、リズムもメロディーも効果的であり、9割近い子. あさんか判別し、正しく発音できるか。. どもたちが音節の長さの違いを識別できることが判明. (使用したリズム). した。. おばさん タンタンタン おばあさん タターンタタ 4.Ojisan が読めるか。 5.おじさん・おじいさんの絵カードを見せ、ど ちらが Ojisan(おじさん)かがわかるか。 6.おじさん・おじいさんにリズム(手順3に同じ) をつけて練習したのち、出されたカードがお じさんかおじいさんか判別し、正しく発音で きるか。 7.おばさん・おばあさん・おじさん・おじいさ んの 4 枚のカードのうち一枚を提示し、正し く発音できるか。 【結果】長音の長さを区別する場合、リズムを使って 教えると 12 名中 11 名が正しく区別して、発音するこ とができた。 ②メロディーで教える 1.Obasan とローマ字で書かれた文字が読める か。 2.おばさん・おばあさんの絵カードを見せ、どち らが Obasan(おばさん)かがわかるか。. ところで、リズムで教えた場合に失敗してしまった 1人は何が原因で間違えてしまったのか。その1人に ついては、正しいカードを選んではいるものの、発音. 3.おばさん・おばあさんにメロディーをつけて練. を間違えてしまう。そこで、発音練習を繰り返し練習. 習したのち、出されたカードがおばさんかおば. させてみた。次に、その発音練習に馴れた頃に、発音. あさんか判別し、正しく発音できるか。. に重ねてリズムをとらせてみると、正しく区別して言. (使用したメロディー) ドレド、 ドミーレド. えるようになった。このことから、発音がうまくいか. 4.Ojisan が読めるか. ない子どもに対しては、先に発音指導を行い、リズム. 5.おじさん・おじいさんの絵カードを見せ、どち. で定着させる方が効果的であると推測された。. らが Ojisan(おじさん)かがわかるか。. 同様に、メロディーをつけて教えた場合に失敗して. 6.おじさん・おじいさんにメロディー(手順 3 に. しまった1人については、発音練習を繰り返したこと. 同じ)をつけて練習したのち、出されたカードが. で正しく言えるようになった。このことから、事前に. おじさんかおじいさんか判別し、正しく発音で. 発音練習を繰り返しておくことが、メロディーによる.

(8) 302. 鈴木良子・結城 恵・勝部 太. 指導をより効果的にすることが推測された。. 【結果】上記7については、実験参加者 11 人中、全 員が「言葉の切れ目がわからなかった」と回答した。. 【実験3】 言葉の切れ目に焦点をあてた実践「早口言葉」 この実験では、まず①スペイン語の早口言葉、次に ②日本語の早口言葉に挑戦してもらった。母語での早 口言葉のつまずきと、日本語での早口言葉のつまずき にどのような違いが現れるのか、その違いが、日本語 教育指導にどのような示唆を与えるのかを探るためで ある。. 「日本語の発音しにくい音にひっかかる」や「言葉 の切れ目がわからない」というのは、いかにも日本語 に慣れていないために起こる、日本語の早口言葉に特. ①スペイン語の早口言葉. 徴的なつまずきであると推測される。そのため、この. トレス トリステス ティグレス トラガーバン トリーゴ デ ウン. 2つの点を克服させるには、リズムやメロディーによ. Tres tristes t i g r e s tragaban t r i g o de un. る学習より、日本語の発音と意味の学習が不可欠とな. トリガール. ると考えられる。. t r i g a l.. 以上のことから、メロディーとリズムとは適宜組み. 【結果】実験参加者 11 人中、完璧に言えた子どもは. 合わせることは日本語学習に効果がある。しかし、単. 2人、ひとつ以上の単語をとばして言えた子どもは8. 語から文の学習に移行する場合、不可欠な言葉のまと. 人(例えば、de や un をとばす) 、単語をいい間違え. まりと意味の理解を促すには、そのまとまりごとの発. た子どもは1人(tigres→trigres)だった。. 音練習を行い、 意味を加えていく作業が不可欠になる、 ということが推測された。. ②日本語の早口言葉 1.お綾や親にお謝り。お綾やお湯屋へ行くと八百 屋へお言い。 2.蛙ぴょこぴょこ3ぴょこぴょこ、合わせてぴょ こぴょこ6ぴょこぴょこ. 6.結論 以上の3つの実験から次のような仮説を導き出す ことができる。音楽的要素であるメロディーやリズム を組み合わせる手法は、日本語教育にある一定の効果. 3.生麦生米生卵、子卵大卵大卵子卵。. を生み出す。本調査研究で実施した3つの実験、すな. 4.スモモも桃も桃のうち、桃もスモモも桃のうち. わち、(1)促音に焦点をあてた実践「ロケット・かけっ. 5.この竹垣に竹立てかけたかったのは竹立てかけ. こ」 、(2)音節の長さに焦点をあてた実践「おばさん・. たかったから竹立てかけたのです。. おばあさん、おじさん・おじいさん」 、(3)言葉の切れ. 6.魔術師骨折今手術中. 目に焦点をあてた実践「早口言葉」は、子どもたちの. 7.ウラニワニハニワニワニハニワニワトリガイル. 日本語に対する関心を高めた。導入部分でこうした日. (裏庭には二羽庭には二羽鶏がいる). 本語のもつリズム感や音感に馴染ませておくことは、. 【結果】上記1~6についての子どもたちの反応は表. その後の日本語学習のなかでより複雑になる日本語の. 1のとおりである。. リズム、 音の高低に注意を向けさせることにつながる。. 表 1. 日本語の早口言葉実験 1. また、本研究の知見は、日本語を母語としない子ど もたちにとって、発音しにくい促音と認識しにくい音 節の長さについては、リズムやメロディーなどの音楽 的要素を組み込むことが効果的であり、リズムよりメ ロディーの方がさらに効果的であることを示すことが できた。 一方で、早口言葉の実験に示されたように、メロデ.

(9) 303. ペル-人学校における学齢期の子どもへの日本語指導に関する一考察. ィーとリズムを適宜組み合わせることは日本語学習に. 杉藤美代子 1984 「日本語の音節(拍)にはどういう日本語. 効果がある。しかし、単語から文の学習に移行する場. らしさがあるか(ことばの謎)-(現代語音声・音韻のなぞ)」. 合、 不可欠な言葉のまとまりと意味の理解を促すには、. 『国文学. そのまとまりごとの発音練習を行い、意味を加えてい. 32~39 頁. 解釈と教材の研究』学灯社. Vol.29 No.6. 土岐 哲 1995 「日本語のリズムに関わる基礎的考察とそ. く作業が不可欠になる、ということが推測された。 本研究では、日本語を母語としない子どもたちが、. の応用」 『阪大日本語研究』大阪大学 Vol.7 83~94 頁. 自分たちの母語にない発音やリズム等に戸惑いなく馴. 中小路駿逸 2006 「日本語のリズムについて」 『追手門学院. 染めるようにするひとつの試案を実験的に行った。今. 大学文学部紀要』追手門学院大学文学部 通号 42 234~. 後は量的に検証することで、ここで得られた仮説の検. 220 頁. 証を進めていく必要があるが、今後の課題としたい。 また、本研究では、メロディーづけとリズムうちが日 本語学習を効果的に支援するツールになりうることは. 『言語』大修館書店 藤田竜生 1999 「日本語のリズム論」 通号 331 116~121 頁 松見紀男・鈴木五月 2006 「第二言語の文記憶におけるメ. 確認できたが、いつ、どの段階で、あるいは、どのよ. ロディー呈示の効果」 『広島大学大学院教育学研究科紀要.. うな学習内容でメロディーやリズムを日本語学習に導. 第二部,文化教育開発関連領域』広島大学大学院教育学研. 入すべきか等については、今後の実践の積み重ねの中. 究科 No.55 225~231 頁 松本ミサヲ・平尾 恵 1990 「民族と音楽能力:音楽教育. で明らかにしていきたい。. の基礎として」 『兵庫教育大学研究紀要.第2分冊,言語 系教育・社会系教育・芸術系教育』兵庫教育大学 151~162. 参考文献. 頁 小熊利江 2001 「日本語学習者の長音の産出に関する習得. 結城 恵 1998 「教授・学習の集団的文脈 目に見える集. 研究-長音位置の要因による難易度と習得順序」 『日本語. 団と目に見えない集団」 『教育のエスノグラフィー 学校. 教育』日本語教育学会 110~117 頁. 現場のいま』志水宏吉・編著 嵯峨野書院 第5章 124. 大高博美 1999 「日本語のリズムと歌謡曲におけるテンポ の変遷(特集 日本語のスピード-一体どこまで速くなる のか)」 『言語』大修館書店 通号 336 57~60 頁. ~147 頁 結城 恵 2007 文部科学省「特色ある大学教育支援プログ ラム事例集」345〜351 頁より・一部修正. 川上 蓁 1961 「日本語の発音と歌」 『言語生活』筑摩書 房 通号 113. 結城 恵 2007 「第 3 章 学齢期の子どもが通う南米系外 国人学校」平成 18 年度文部科学省 「外国人教育に関す. 川上 蓁 1984 「リズム型の認識と日本語教育」 『音声学 会会報』日本音声学会 通号 175 7~9頁. る調査研究」委託研究報告書 『外国人労働者の子女の教 育に関する調査研究(3) 日系外国人児童生徒を対象とす. 河野俊之 1995 「日本語のリズムとその教育の一試行」 『総 合文化研究所紀要』同志社女子大学 Vol.12 103~115 頁. る「学校」の現状と課題に関する調査研究』19~31頁 渡邊一夫・田中秦二 1998 「音楽と日本語教育」 『弘前大. 佐藤郁哉 2006 『フィールドワーク増訂版 書を持って街. 学教育学部教科教育研究紀要』弘前大学 61~68 頁. へでよう』新曜社. (すずき りょうこ・ゆうき めぐみ・かつべ ふとる).

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