エンド・オブ・ライフケアニーズと
在宅ケアマネジメントの実践
内 田 陽 子, 中 谷 久 恵, 島 内
節
要 旨 【背景・目的】 介護支援専門員が判断したエンド・オブ・ライフケアニーズと在宅ケアマネジメントの実践 状況を明らかにする. 【対象と方法】 対象は A 県の現任研修を受講した介護支援専門員のうち, 在宅にお ける終末期事例を受け持ち, 調査の協力が得られた 77人とした. 方法は, 終末期の各期別に介護支援専門員 が関わったかどうか, また, 各期の利用したサービス, ケアマネジメントニーズの必要性判断や実践の有無等 について構成されている質問紙による調査である. 【結 果】 介護支援専門員の事例への関わった割合は 小康期, 開始期, 臨死期の順で高く, ニーズの判断や実践の高かった項目は「ケア体制の確立」であった. 終 末期ケアのマネジメントの困難さについては, かなり困難を感じる者が半数以上を占めた. 【結 語】 これ らについての結果は, 介護支援専門員の年齢や経験年数, 資格によって差があり, 今後, ケアマネジメントに 対する質向上のための研修及びシステムの構築の必要性が明確になった. (Kitakanto Med J 2009;59:337∼344) キーワード:エンド・オブ・ライフケア, ケアマネジメント, 介護支援専門員, ニーズ .目 的 近年, 終末期における在宅ケアニーズは高まっている. 池田らの調査では終末期における在宅療養希望者は 58.8%と報告されている. これらのニーズの高まりを受 けて, 2006年度の介護保険法改正施行にて特定疾患に 「がん (医師が一般に認められている医学的知見に基づ き回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限 る )」が加わった. これにより, End-of-Life-Care(以下, 終末期ケア) に対するケアマネジメントの幅は広がり, 介護支援専門員が直接関わる事例も増加していくことが 予測される. また, 2008年度の診療報酬改定には訪問看 護ターミナル療養費の引き上げや 24時間対応体制加算 の新設等がなされ, わが国の施策は終末期の在宅ケアを 重視する方向に動いている. 従来, 終末期ケアに関するサービスの調整は主に医療 職である医師や看護師が担ってきた. しかしながら, 在 宅における終末期ケアについては医療サービスの他に介 護の方面からのサポートが必要となる. 斎田らは, 訪問 看護を利用した終末期ケアを必要とした事例 析をして いるが, 介護力の不足や病状の急変, 家族の看取りへの 不安等の理由で訪問看護に加えて他のサービスが導入さ れている状況を報告している. 終末期ケアを支えるケア マネジメントは, 特定疾患にがんが加わったことで介護 保険法によるサービスが利用できること, 末期の悪性腫 瘍の訪問看護や急性増悪などにより一時的に頻回の訪問 看護を行う必要がある場合は医療保険での訪問看護が優 先されることなど, 介護保険や医療保険等の制度をうま く活用することが求められる. また, 在宅での終末期を 区 する開始期, 小康期, 臨死期の各期では, 利用者・家 族からの緊急電話や訪問のニーズがあることを島内らは 述べている. したがって, 介護支援専門員は各期別の利 用者のニーズを的確に判断して, リアルタイムにサービ ス調整や直接の介入が求められる. しかしながら, 従来 から介護支援専門員の力量には個人差があること, 終末 期以外にもケアマネジメント業務遂行上の困難を抱えて 1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科 2 島私県出雲市塩冶町89-1 島根大学医学部保 学科 3 神奈川県小田原市城山1-2-25 国際福祉医療大学小田原保 医療学部看護学科 平成21年7月27日 受付 論文別刷請求先 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科 内田陽子おり, 介護保険利用者の多様なニーズに対応できるよう な実践に役立つ研修が義務付けられている. 介護支援専 門員にとって, 現段階で終末期ケアにおけるマネジメン トは難解であることが予測される. しかしながら, 終末 期ケアに関するケアマネジメントの研究はみられない. 今後は早急に在宅終末期ケアを支えるケアマネジメント の質向上にむけての課題や施策を講じる必要がある. これらの必要性を受けて, 本研究の目的を介護支援専 門員からみた終末期ケアニーズと在宅ケアマネジメント の実践状況を明らかにすることとした. これより, 今後, 在宅終末期ケアを支えるケアマネジメントの質向上にむ けての介護支援専門員及び看護師の課題及びシステム構 築について検討する. .方 法 1.対象 本研究の対象は平成 19 年 9 月に A 県で開催された介 護支援専門員現任研修 (6ヶ月以上の実務経験を有する 者が対象である) を受講した介護支援専門員 575人のう ち, 平成 18年 4月から平成 19 年 9 月までに在宅で終末 期をすごした事例を受け持った経験のある者で, かつ調 査の同意と協力が得られた介護支援専門員 77人とその 事例 134人とした. 2.調査内容と方法 方法は, ケアマネジメントの基本に関する研修会の終 了後に調査の目的, 方法を説明し, 介護支援専門員の同 意を得て, 自記式質問紙による方法で実施した. 質問紙 の主な項目は, ①介護支援専門員の背景, ②事例に対す るケアマネジメント実践状況, ③終末期におけるケアマ ネジメントに対する困難さの程度とした. ①介護支援専 門員の背景には, 年齢と性別, 資格, 介護支援専門員とし ての経験年数を尋ねた. ②事例に対するケアマネジメン ト実践状況に関する項目は, 受け持った終末期事例の数, 事例の背景 (性別・死亡時年齢),終末期各期 (開始期,小 康期, 臨死期) において介護支援専門員が関わったかど うか (関わりの有無), 利用したサービス, 緊急訪問の回 数, 死別後の家族への訪問回数, 看取りの場所, 終末期に おける各ケアマネジメントニーズについてである. 各 ニーズについては終末期において介護支援専門員が必要 性を判断していたかどうか, それに対して介護支援専門 員自身がそのニーズの援助を実践したかを尋ねた. 事例 については平成 18年 4月から平成 19 年 9 月まで受け 持った終末期事例に対して, 介護支援専門員が過去を振 り返って状況を想起し, 質問について回答してもらった. なお, 終末期における各期については島内ら の定義に 基づいた. つまり, 開始期とは在宅に移行しての 7日間 であり, 臨死期とは死の直前 7日間, 小康期はそれ以外 の期間とした. 各ニーズの内容については,先行研究 をもとに, 疼痛マネジメント (痛みの緩和, 副作用症状, 薬の不安や抵抗感の観察と援助)」, 疼痛以外の苦痛のマ ネジメント (疼痛以外の悪化症状, 床づれ予防, 怠感等 の観察と援助)」, 心理・精神的援助 (本人や家族の生活 の仕方, 治療やケアへの希望への援助)」, スピリチュア ルペインへの援助 (生きること, 存在していることの目 標への援助)」, デスマネジメント (本人や家族の死の受 容プロセスへの援助)」, 家族・親族との関係調整 (介護 力,介護体制,本人や家族・親族の関係調整)」, 喪失・悲 嘆・死別サポート (家族の予期悲嘆等の援助)」, 基本的 ニーズへの援助 (清潔や排泄・睡眠等の日常生活動作へ の援助)」, ケア体制の確立 (チームの構築と連携)」の 9 項目を設定した. なお, これらについては対象者の理解 を助けるために用語の説明を行うとともに, 調査票に簡 単に説明を加えた. ③終末期におけるケアマネジメント の困難さの程度は, ケアマネジメントについて困難さ を感じますか」の設問に対して, 全く感じない, あまり 感じない,やや感じる,かなり感じる」の回答を設け,1点 から 4点まで点数が高いほど困難さを強く感じている配 点にした. 3. 析方法 介護支援専門員の背景と終末期におけるケアマネジメ ント実践状況や困難さとの関連 析は,χ 検定,t検定を 行った. 統計ソフトは SPSSVer.15.0を 用した. 4.倫理的配慮 調査にあたっては研究の目的, 方法, まとめについて 文章と口頭にて説明を行い, 同意を得た. なお, 対象につ いての背景については個人が限定されないように終末期 事例においては性別と死亡時の年齢のみ, 介護支援専門 員についても職種, 年齢と性別, 経験年数のみの必要最 低限の項目に り, すべてのデータは番号に変換して 析を行った. 調査票は研究以外には 用せず, 鍵のかか る場所に保管した. .成 績 1.介護支援専門員の背景と終末期のケアマネジメント の困難の程度 対象の介護支援専門員77人の性別は女性59人 (76.6%), 男性13人 (16.9%) であり, 職種では看護師30人 (39.0%), 介護職員 25人 (32.5%),社会福祉士 9 人 (11.7%)の順で あった. 介護支援専門員の年齢平 は 43.2±8.5歳, 経験 年数は 3.7±2.6年であった. 介護支援専門員 77人が受 け持った終末期事例 134人のなかで, がん事例数の平
(中央値) は一人あたり 1.5±1.9 人 (1.0人), 他疾患の事 例数は 0.8±1.6人 (0.0人) であった. 終末期のケアマネ ジメントの困難さの程度では, かなり感じる」43人 (55.8%), やや感じる」21人 (27.3%),あまり感じない 5 人 (6.5%) であった. 2.事例に対するケアマネジメントの実践状況 77人の介護支援専門員が受け持った事例 134人の性 別は男性 60人 (44.8%),女性 58人 (43.3%)であり,死亡 年齢の平 (中央値)は 77.5±13.3歳 (80.0歳)であった. 事例に対して, 終末期ケアの各期別に介護支援専門員の 関わりの有無を尋ねた結果,開始期で「関わった」と回答 した者の割合は 78.4%, 小康期では 81.3%, 臨死期では 56.7%であった.各期に利用されたサービス (利用した割 合) は開始期では, 福祉用具 50.7%, 訪問看護 46.3%, 訪 問診療 32.1%, 訪問介護 17.2%の順であり, 小康期では 福祉用具 50.7%, 訪問看護 47.8%, 訪問診療 34.3%と同 様の傾向であった. 臨死期においては訪問看護 42.5%, 福祉用具 41.8%の順であった (表 1). 介護支援専門員が ケアマネジメントニーズの必要性を判断した割合が最も 高かった項目は「ケア体制の確立」60.4%であり,ついで 「基本的ニーズへの援助」59.7%であった.ニーズに対し て援助の実践をしたと回答した者の割合 (以下, 実践率) が高かったものは, ケア体制の確立」, 家族・親族との 関係調整」の順であった. デスマネジメント」, スピリ チュアルペインへの援助」は両者ともに約 3割で低く, 無回答者も多かった (表 2).また,介護支援専門員の緊急 訪問回数の平 (中央値) は 2.0±2.1回 (2.0回), 死別後 の回数は 1.3±0.7回 (0.0回) であった. 134人の事例の 看 取 り 場 所 は 病 院 47.0%, 自 宅 41.0%, 施 設 10.4%で あった. 3.介護支援専門員の背景からみたケアマネジメントの 困難さや実践状況の比較 1)看護師とそれ以外の資格別にみた比較 看護師とそれ以外の資格別でケアマネジメントに対す る困難さの程度の得点を比較した結果, 看護師の資格を 持つ介護支援専門員では 3.23±0.83点, それ以外の資格 の介護支援専門員 3.60±0.53点であり, 後者のほうが得 点は有意に高かった (p<0.01).また,表 3に示したが,各 ニーズのなかの「心理・精神的援助」, デスマネジメン ト」や「喪失・悲嘆・死別サポート」については,看護師 の資格を持つ介護支援専門員のほうが実践率は有意に高 かった (p<0.05). 表1 各期別にみた事例に対する介護支援専門員の関わりの有無とサービスを利用した割合 (n=134) 項 目 開始期 n % 小康期 n % 臨死期 n % あ り 105 78.4 109 81.3 76 56.7 ケアマネの関わり な し 16 11.9 4 3.0 39 29.1 NA 13 9.7 21 15.7 19 14.2 福 祉 用 具 68 50.7 68 50.7 56 41.8 訪 問 看 護 62 46.3 64 47.8 57 42.5 訪 問 診 療 43 32.1 46 34.3 45 33.6 訪 問 介 護 23 17.2 28 20.9 16 11.9 利用したサービス 通 所 介 護 18 13.4 21 15.7 7 5.2 (複数回答) 訪 問 入 浴 16 11.9 25 18.7 6 4.5 住 宅 改 修 9 6.7 6 4.5 1 0.7 通 所 リ ハ 8 6.0 8 6.0 2 1.5 短 期 入 所 4 3.0 9 6.7 6 4.5 そ の 他 16 11.9 19 14.2 15 11.2 表2 介護支援専門員の終末期ケアマネジメントニーズの必要性判断と実践状況 (n=134) 各ニーズの項目 ニーズの必要性 判断した n % 判断しない n % 無回答 n % ニーズの実践 実践した n % 実践しない n % 無回答 n % ケア体制の確立 81 60.4 23 17.2 30 22.4 79 59.0 22 16.4 33 24.6 基本的ニーズへの援助 80 59.7 24 17.9 30 22.4 69 51.5 31 23.1 34 25.4 疼痛以外の苦痛マネジメント 78 58.2 28 20.9 28 20.9 75 56.0 27 20.1 32 23.9 家族・親族との関係調整 73 54.5 30 22.4 31 23.1 77 57.5 19 14.2 38 28.4 心理・精神的援助 71 53.0 28 20.9 35 26.1 75 56.0 22 16.4 37 27.6 疼痛マネジメント 52 38.8 49 36.6 33 24.6 36 26.9 58 43.3 40 29.9 喪失・悲嘆・死別サポート 47 35.1 47 35.1 40 29.9 47 35.1 40 29.9 47 35.1 デスマネジメント 44 32.8 47 35.1 43 32.1 45 33.6 42 31.3 47 35.1 スピリチュアルペインへの援助 36 26.9 51 38.1 47 35.1 33 24.6 51 38.1 50 37.3
2)ニーズ必要性判断・実践の有無別にみた介護支援 専門員の年齢や経験年数の比較 小康期で介護支援専門員が関わった群は関わらない群 と比べ, 介護支援専門員の年齢や経験年数は有意に高 かった (p<0.05) (表 4). また, 臨死期で関わった群は経 験年数が高かった (p<0.05). しかし, 各ケアマネジメン トニーズの必要性判断と実践の有無別にみた 析では逆 の結果となった. すなわち, 基本的ニーズへの援助」, 喪失・悲嘆・死別サポート」, 家族・親族との関係調整」, スピリチュアルペイン」, 心理・精神的援助」, 疼痛以 表3 看護師とその他の資格をもつ介護支援専門員別にみた各ニーズ実践率の比較 (n=134) 各ニーズの項目 事例を受け持った介護支援専門員の資格 看護師 n n=67 % その他 n n=67 % χ 値 家族・親族との関係調整 46 68.7 31 46.3 1.926 心理・精神的援助 44 65.7 31 46.3 4.918 ケア体制の確立 42 62.7 37 55.2 0.244 疼痛以外の苦痛マネジメント 42 62.7 33 49.3 1.064 基本的ニーズへの援助 38 56.7 31 46.3 0.000 デスマネジメント 31 46.3 14 20.9 7.091 喪失・悲嘆・死別サポート 30 44.8 17 25.4 4.925 疼痛マネジメント 21 31.3 15 22.4 0.391 スピリチュアルペインへの援助 19 28.4 14 20.9 0.350 p<0.05, p<0.01 表4 各期での介護支援専門員の関わりの有無別にみた経験年数と年齢の比較 各 期 経験年数 関わりの有無 平 標準偏差 年齢 平 標準偏差 あり 3.6 2.4 43.9 7.8 開 始 期 なし 4.3 2.7 41.0 7.1 あり 4.0 2.6 43.3 7.5 小 康 期 なし 1.4 0.1 33.0 4.8 あり 4.4 2.6 43.9 7.7 臨 死 期 なし 3.1 2.3 42.3 7.7 p<0.05, p<0.01 表5 各ニーズの必要性判断と実践の有無別にみた経験年数と年齢の比較 項目 各ニーズの項目 実践の有無 年齢 平 標準偏差 経験年数 平 標準偏差 し た 42.6 7.7 3.5 2.5 基本的ニーズへの援助 しない 49.7 6.7 4.8 2.0 し た 42.6 8.0 − − 喪失・悲嘆・死別サポート しない 46.4 8.3 − − し た 43.0 6.8 − − 家族・親族との関係調整 しない 46.8 9.0 − − 判断 し た − − 3.0 2.1 スピリチュアルペイン しない − − 4.0 2.5 し た 42.8 7.5 3.3 2.3 心理・精神的援助 しない 47.3 8.2 4.8 2.3 し た 42.5 7.6 − − 疼痛以外の苦痛マネジメント しない 49.3 5.4 − − し た 42.5 6.7 − − ケア体制の確立 しない 48.4 7.8 − − し た 41.5 7.6 3.1 2.4 実践 基本的ニーズへの援助 しない 49.6 5.4 4.9 1.8 し た 43.3 8.8 − − 疼痛以外の苦痛マネジメント しない 47.1 4.9 − − ※独立した t検定 (有意な差が見られた項目のみ記載) p<0.05, p<0.01
外の苦痛マネジメント」について, ニーズの必要性の判 断をした群はしない群に比べ介護支援専門員の年齢もし くは経験年数は有意に低く若い傾向にあった (p<0.05). また, ケア体制の確立」, 基本的ニーズへの援助」, 疼 痛以外の苦痛マネジメント」のニーズ援助の実践した群 もしない群に比べ同様の傾向にあった (p<0.01) (表 5). . 察 1.終末期全体を支える介護支援専門員と看護師との連 携 本研究では介護支援専門員が受け持った終末期ケア事 例の平 数は約 2名であり, 実際にマネジメントする機 会は非常に少ない状況にあった. これは, 平成 18年度の 介護保険改正から調査時期である平成 19 年 9 月までの 間が短期であり, 制度が定着していないことが影響して いるものと思われる. しかしながら, がん対策の制定や 診療報酬の改正により終末期ケアが推進されるなか, 今 後は終末期ケアマネジメントのニーズは高まり, 介護支 援専門員の介入機会は増えていくことが充 予想され る. 今回の調査では, 終末期でのケアマネジメントはか なり困難である」と回答した者が半数を超えたことから, 介護支援専門員自身に苦手意識があることがわかった. ケアマネジメントの質を高めるためには多くの課題があ ることが えられる. 介護支援専門員が関わった時期をみると, 小康期, 開 始期, 臨死期の順であった. この結果より, 介護支援専門 員による関わりは在宅に移行した早期の段階や死の直前 ではなく, 状態が比較的落ち着いた時に行われることが 多いことがわかる. 臨死期で関わりの割合が低いのは, 病状が悪化し, 在宅での療養が困難となり病院に入院と なることがあるため, 介護専門員関わりは少なくなるの ではないかと える. また, この時期では不確かな状況 に翻弄される家族の思いを察知したり, 家族の看取り方 に歩調を合わしたり, 意思表示できない本人の意思を推 し量り代理となって家族に働きかけたりするなどの訪問 看護師の役割が重要であるといわれている. 介護支援 専門員もこのような役割を担う場合もあるので, 訪問看 護師と連携しながら適切なケアマネジメントを行う必要 がある. 一方, 病院から在宅に移行する約 2ヶ月間で数々 の問題が生じるといわれている. 在宅開始期に介護支 援専門員の関わりが少ないのは, 入院中に主治医や看護 師等がその必要性を判断し, 患者や介護支援専門員に情 報提供することが不十 な状況があるのではないかと える. 福井は, 入院中末期がん患者の在宅療養移行を促 す看護師の要因について 析している. この研究では, チームケアの一環として, 患者のインフォームドコンセ ントを促すための情報提供を積極的に行っている看護師 が受け持ちである場合, 患者の在宅療養を促進すると述 べている. 終末期ケアに携わる看護師はつねに在宅療 養の可能性を見極め, 患者に情報提供し, 必要に応じて 介護支援専門員や訪問看護, かかりつけ医と連携してい くことが求められる. 2.終末期の各マネジメントニーズに対応すべき課題 ケアマネジメントニーズのなかで介護支援専門員の必 要性についての判断と実践で高かったものは「ケア体制 の確立」であり, 6割近くを占めた. 高室は, 介護支援専 門員は終末期ケアでは 24時間の見守り体制になりやす いので,訪問看護サービスを軸に「漏れ」のない体制づく りが求められると言っている. 介護支援専門員はケア 体制については関与しているものの, 反面, 他のニーズ に関しては非常に低い状況にあった. 特に「スピリチュ アルペイン」についてはニーズの必要性判断も実践率も 低かった. 現実には看護師でもスピリチュアルという言 葉に馴染みの少ない者が多いことから, 介護支援専門員 自身の理解も乏しい状況にあるといえる. 心理・精神的 援助」, デスマネジメント」や「喪失・悲嘆・死別サポー ト」に対するニーズの実践率をみると, 看護師の資格を 持つ介護支援専門員のほうが実践率は有意に高かった. これは, 看護師はその養成機関において終末期ケアにつ いての教育がなされているや介護支援専門員になるため に必要な 5年間の臨床経験のなかで死に遭遇する機会が 他の職種と比較して多いために, 看護師の資格を持つ介 護支援専門員は実践率が高いと推測する. これについて は推測の段階であり, 今後, 看護師の臨床経験の内容に ついて詳細な調査が必要である. 全体的にみて看護師の資格を持たない介護支援専門員 は多く, 一般的にみて福祉系の介護支援専門員は医療 サービス, 特に医師との連携が苦手であるといわれてい る. 従って病院看護師や訪問看護師が積極的に介護支 援専門員にニーズを導くアセスメントや実践方法につい て働きかけていく必要がある. 島内らの報告をみても, 我が国の訪問看護師の終末期各期でのニーズの必要性判 断についてはすべての項目で 47%を超えていた. 看護 師と介護支援専門員が連携し相乗効果を高めることで実 践力が高まることが期待できる. しかし, わが国の訪問 看護師であっても他国に比べるとニーズを判断する率は 低い状況にある. これよりニーズアセスメントと実践 については, 介護支援専門員だけでなく看護師に対して も研修が必要である. 3.ケアマネジメントの質向上のための施策 本研究では, 介護支援専門員の年齢が高い者のほうが 若い者より終末期の各期に関わった者の割合は高かった
ものの, 逆に年齢が若く経験の少ない若い介護支援専門 員の方がニーズの必要性判断や実践率が高かった. これ は, 終末期でのケアマネジメントが始まったばかりでま だ現場に定着していない状況があり, 経験年数があって もニーズに対応するには困難な状況があるといえる. ま た, 近年になって終末期が議論されるようになり, 若い 介護支援専門員はホスピスやスピリチュアルケアなどの ニーズについて知識をもち理解を得る機会があるといえ る. 終末期にある事例のケアマネジメントニーズアセス メント・介入については, 経験年数も 慮した研修が必 要である. 本調査では年齢について調査したが, それだ けでは 察するうえで限界があり, 今後は介護支援専門 員の研修状況や自身の死生観等の調査が求められる. 終 末期ケアにおいては, ケア提供者の価値観 (人間観, 看護 観, 倫理観, 死生観等) やスピリチュアリティが関連する ことが明らかにされている. スピリチュアリティケ アについて, 田内らは, 経験を積むことにより自己に対 する意味感や価値観が高まり, 自身のスピリチュアリ ティを高め, スピリチュアリティケアをより積極的に実 践できるようになる」 と報告している. 研修において は, ただ経験を積むだけでなく, 価値観等を深めていく ような工夫をする必要があるといえる. 結果にも述べたように, 介護支援専門員の緊急訪問回 数は 1事例あたり約 2回であった. 島内ら の訪問看護 師を対象にした調査では終末期における緊急訪問は約 3 回であることが報告されているが, 介護支援専門員の場 合は明らかにされていない. 本研究では終末期ケアマネ ジメントにおいて介護支援専門員による緊急訪問も必要 であることがわかる. 終末期における訪問看護の緊急時 対応には家族もニーズを持っており, それに対して高い 評価をしているという報告があるが, 介護支援専門員 に対しても家族からのニーズに応じることができる体制 を整える必要がある. 2009 年の介護報酬改定では, ケア マネジメントを行う際に認知症高齢者や独居高齢者への 支援等に加算が評価されるようになったが, 終末期に おいては特に定められていない. 終末期を支える介護支 援専門員は, 緊急ニーズに応えるための正確な判断力と 他機関との連携が求められる. 終末期ケアを在宅に普及 していくには, 介護支援専門員の教育とそれを評価する 制度が必要である. 終末期のケアマネジメントは介護支援専門員が所属す る機関 (居宅支援事業所等) だけでは充 に対応できる とはいえない. 英国では, 緊急電話の中央集約システム や看護師によるトリアージの導入が行われている. さら に在宅ホスピスが進んだ国として有名なオーストラリア では, ケアマネジメントの発想による支援が多様な職種 によって提供されている. つまり, 現在では各ニーズに 対して, 多職種の専門家やボランティアが家族や友人と ともにチームアプローチをしていくことの重要性が指摘 されている. 我が国でも終末期事例が緊急で入院でき る病院やショートステイ, デイケアの受け入れが 24時 間可能である地域のホスピスや緩和ケア病棟との協働, 訪問看護ステーションの集約化 など, 在宅での終末期 ケア全体を支えるシステム構築も求められるであろう. そのために, 医療保険と介護保険などの法改正にあたっ て, それぞれの法枠組みを超えて, これらのことを視野 に入れた改革が求められる. 4. 本研究の限界性と課題 本研究は終末期ケアマネジメントの実践状況を調査し た先駆的な研究ではあったが, 介護支援専門員の事例に 対する振り返りによる意識調査であり, データの信頼性 が充 でない点があった. また, 本研究は概要をつかむ 調査であり詳細な事項まで調査はできず, 研究の限界が あった. 今後は介護保険や医療保険制度別のサービス利 用を含む事例の詳細な前向きな調査が必要である. 謝 辞 本研究をまとめるにあたり, 調査にてご協力いただき ました A 県の介護支援専門員, 利用者の方々, 研修後に 調査の機会を提供していただきました研修企画の職員の 方に深く感謝いたします. なお, 本研究は日本ケアマネ ジメント学会第 8回研究大会で発表したものを一部修正 したものである. 引 用 文 献 1. 池田千代子.平成 14年度終末期医療に関する調査結果の 概要について. 現在医療 2004; 36: 73-78. 2. 厚生統計協会編 : 国民衛生の動向. 東京 : 厚生統計協会, 2006; 53(9): 221. 3. 大道千秋. 2008年度診療報酬改定の解説とポイント. 訪 問看護と介護 2008; 13(6): 464-465. 4. 斎田綾子, 山路 子, 棚橋さつきら. 在宅ターミナル者の サービス調整と訪問看護師の役割.第 12回日本在宅ケア 学会学術集会講演集 2008: 67. 5. 濱口恵子, 小迫富美恵, 坂下智珠子ら. がん患者の在宅療 養サポートブック. 東京 : 日本看護協会出版会, 2007: 306-310. 6. 島内 節,鈴木琴江.在宅高齢者の終末期ケアにおける経 過時期別にみた緊急ニーズ.日本看護科学学会誌 2008; 28(3): 24-33. 7. 佐光恵子,内藤和美.介護支援専門員のケアマネジメント 業務遂行上の困難と研修ニーズ. ケアマネジメント学 2007; 6: 44-54. 8. 島内 節, 薬袋淳子. 在宅エンド・オブ・ライフケア (終 末期ケア) ―利用者のアウトカムと専門職の実践力を高
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End of Life Care Needs and Home Care M anagement
Yoko Uchida,
Hisae Nakatani
and Setsu Shimanouchi
1 School of Health Science, Faculty of Medicine, Gunma University 2 School of Nursing, Department of Science Medicine, Shimane University
3 School of Nursing and Rehabilitation, International University of Health and Welfare, Odawara
Objectives: The purpose of this study was to identify needs in care management for end of life care patients from care managers perspective, and practice of home care management. M ethods: Subjects were 77 care managers for the home care patients who were trained in A prefecture and agreed to participate in the survey. The questionnaire examined the care managers involvement in end of life care, use of service,understanding of care management needs,and intervention by end of life stage. Results: As a result,intervention by the care manager occurred most frequently in the stable stage followed by the introductory and clinical death stages. Establishing a care system was highest in understanding the need and its implementation. More than half of the care managers reported difficulties in end of life care management. Conclusion : These results differ by age, experience year and occupation of the care manager,thus a new system is needed for training and improving quality in care management.(Kitakanto Med J 2009;59:337∼344)