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<研究ノート> 生徒の「心に火をつける」探究活動について

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Academic year: 2021

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<研究ノート> 生徒の「心に火をつける」探究活動

について

著者

宮垣 覚

雑誌名

教職教育研究 : 教職教育研究センター紀要

25

ページ

115-117

発行年

2020-03-31

URL

http://hdl.handle.net/10236/00029224

(2)

生徒の「心に火をつける」探究活動について

― About the Research ActivityʠInstigating a Heartʡof the Student ―

宮 垣

⚑ はじめに 新学習指導要領が、小学校では2020年度から、中学校 では2021年度から全面実施され、高等学校では2022年か ら年次進行で実施される。その中で、主体的に学習に取 り組む態度や学びに向かう力を養うことが強調されてい るが、そのためには、授業や探究活動、部活動、学校行 事等あらゆる学校教育活動の中で、如何にʠ生徒の心に 火をつけるʡかがこれからの教師には求められている。 生徒は、心に火がつくとあとは主体的にどんどん取り組 んでいく。そこで、私が理科教員としての経験を生か し、校長個人として、実験を用いて生徒に刺激を与える 活動を報告する。 私は、ふたつの高校の校長を経験した。ひとつは理系 の生徒が少なく、学習に対してしっかりきっかけを作る ことが重要な学校、もうひとつは理系の生徒が多く、学 習意欲の高い学校である。しかし、私が行っている実験 は同じものだが、基礎的な学習の導入でも、スーパーサ イエンスハイスクールなどで取り組まれている課題研究 においても、生徒それぞれに興味・関心を与え、着火点 は違えども、ʠ心に火をつけるʡことができる。また、 幼児や小学生、中学生はもっと純粋な心で科学を感じら れると考え、科学の扉を開けるきっかけとなる様々な活 動もしてきた。それらも含め、今までの取組をまとめ報 告する。 ⚒ 取組の内容 ⑴ 学校における取組 (a)全校集会での講話 校長が直接生徒に対面できるのは、各学期の始・終業 式での講話である。学校や生徒の現状をもとに伝えたい ことを話すのだが、式自体が形骸化し、あまり生徒に伝 わっていないと感じていた。そこで、話の中に実験を盛 り込みインパクトを与えようと考え実践した。 先日行った全校集会では、「目にはみえないけれど、 大切なものがある。見えないけど大切なものを感じられ る心を磨き続けてほしい。」という話をした。その際に 『ゴムピタ君を使った大気圧の実験』2) を行った。25 cm 平方のゴム板に、鍋つまみを付けた「ゴムピタ君」を 使って、写真①のように木 製の椅子を持ち上げる。こ れは、空気は目には見えな いが存在し、その見えない 空気による大気圧によって 起こる現象である。 椅子を持ち上げると、生 徒から歓声が起こり、吸い ついているゴムピタ君に釘 付けになっていた。実験に よるインパクトは十分に与 えられたようである。そし て、いつも実験の最後に、「この理由等については校長 室で、ぜひディスカッションをしましょう。校長室で 待っています。」と伝えている。その後数名の生徒が、 校長室に来て大気圧について対話し、学びを深めた。し かしながら、校長室に行って校長と話をするということ は生徒にとってはハードルが高く、訪れる生徒は少な い。そこで、実験器具を校長室前に常設することにした。 (b)実験器具を常設 校長室前の廊下に、椅子を⚒脚(⚑脚は座台に割れ 目が入っている)置き、その上に「ゴムピタ君」を置い ておく。掲示版には「試してみよう! ゴムピタ君を 使って、⚒つの椅子それぞれ持ち上げてみよう!謎解き は、校長室で」と書き、⚑か月ほど置いてみた(写真②)。 ほぼ毎日、昼休みや放課後に椅子を持ち上げたり、落と したりする音が聞こえ、生徒たちが実際に手にとって試 したり、相談したりしている様子が伺えた。時間がある ときは、私が廊下に出て生徒と対話をした。生徒は、椅 子の一方が持ち上がらない理由を考え説明しあう。それ を、確かめるためもう一度実験をする。短時間ではある が、仮説→実験→検証、再考→実験を繰り返し、考える 方法も会得していく様子を見て、こういうことが大切だ と改めて感じることができた。 第⚒弾は「試してみよう! PART Ⅱバランスの不思 議」(写真③)。 絶妙なバランスを保ったワインボトルホルダーを置い ておいた。その不思議な光景に生徒は興味をもち、実際 に手に取って、理由を話し合っていた。今後も「Let’s try」を合言葉に取り組んでいきたい。 【T:】Edianserver /関西学院/教職教育研究/第25号/ 宮垣 覚

― 115 ― ① 全校集会

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⑵ 青少年のための科学の祭典ひょうご大会3)での取組 この大会は、阪神淡路大震災からの復興の思いも込め て1996年から毎年開催されている。この取組は、「わが 国の人々の生活は、科学技術に支えられています。環境 を守り潤いのある豊かな自然の中で暮らしていくために も、科学技術は必要です。しかし、ここ30年ぐらい前か ら、若い世代の自然科学と科学技術に対する興味や関心 の低下が進んでいるとの懸念が指摘されています。21世 紀になり自然科学および科学技術は猛烈な速さで進展し ています。青少年が、自然科学の真の面白さ楽しさを体 得し、未来への大きな夢を育むことができる環境をつく ることは、国をあげて取り組まねばならない最も重要な 課題のひとつです。」という目的のもと行われている。 当初、神戸市立青少年科学館で始まり、現在では県下各 地に広まっている。その中で、教員や高校生・地域の有 志が、ブース形式で観察・実験やサイエンスショーを地 域の子供たちの為に実施している。第⚑回から開催に 関っているが、理科・自然科学教育の本質である小・中・ 高校において、日々行われている系統的な教育との連携 を意識しながら取り組んでいる。会場には、小学生とそ の保護者、中学生、高校生とあらゆる世代が参加してお り、それぞれの発達段階における学習内容も考慮して実 施している。 (a)浮沈子を使った実験 浮沈子とは、パスカルの原理とアルキメデスの原理を 使った科学実験器具で、簡単に自作できる魚型しょうゆ 入れにナットをつけた浮沈 子4)(写真④)などがよく 知られている。その浮沈子 を教材とし、小・中・高等 学校の学習内容を押さえた 上で、個人の資質・能力等 に応じて、科学的な見方や 考え方を養い、科学的に探 究する能力と態度を育てる 実験を行った。 小・中・高等学校の理科等における、水圧と浮力に関 する学習内容を表⚑にまとめた。 ⚑)小学生低学年以下のこどもに対して 浮沈子を思い通りに上下させて、「なぜ?」という思 いを感じさせる。こども自身が浮沈子を指でさしながら 上下させる。それに合わせて、ペットボトルを持ってい る者が力を加えたり、ゆるめたりしながら浮沈子を上下 させると、子どもの驚きがより大きくなる。 ⚒)小学校中学年から高学年に対して 目 盛 り 付 き 試 験 管 を 使って、浮沈子を作る(写 真⑤)。 魚型しょうゆ入れ浮沈 子で遊んだ後、目盛り付 き試験管の浮沈子を用い て、力が加わると試験管 内の空気の体積が小さく なることを示し、このこ とが魚型しょうゆ入れ浮 沈 子 で も 同 じ こ と が 起 こっていることを観察さ 【T:】Edianserver /関西学院/教職教育研究/第25号/ 宮垣 覚

― 116 ― 表⚑ 浮力に関係する校種における学習内容5) 教科 学習内容 小 学 校 生活科 身近にある物を使ったりするなどの活 動を通して、遊びや遊びに使う物を工 夫してつくること。 理科 ⚓学年 物は、形が変わっても重さは変わらな いこと。物は、体積が同じでも重さは 違うことがあること。 理科 ⚔学年 空気と水の性質 体積や圧し返す力の変化に着目して, それらと圧す力とを関係付けて調べ る。水は圧し縮められないこと。 中 学 校 理科 第⚑分野 ⚓学年 水中にある物体には、あらゆる向きか ら圧力が働くこと。その結果を水の重 さと関連付けること。物体に働く水圧 と浮力との定性的な関係にも触れるこ と。合力や分力の規則性を理解するこ と。 高 等 学 校 物理 基礎 様々な力・力のつり合い 物体に接して働く力として浮力、関連 して圧力を扱う。 物体に働く力のつり合いを理解するこ と。 ② ゴムピタ君 ③ バランスの不思議 ④ 自作の浮沈子 ⑤ 目盛り付き試験管浮沈子

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せる。時間があれば、実際に魚型しょうゆ入れにナット をとりつけ浮沈子を作らせる。その際、中に入れる水の 量で沈み方が異なることを体感させる。 ⚓)中学生に対して ペットボトルを押すと 魚型しょうゆ入れの浮沈 子がどう変化するのかパ スカルの原理で説明でき るようになる。魚型しょ うゆ入れ浮沈子を⚒個入 れ(写 真 ⑥)そ れ ぞ れ の 浮沈子の沈め方などを工 夫する。 ⚔)高校生以上に対して 高校生になれば、定量的にも考えさせることができ る6)。目盛り付き試験管の浮沈子を水中で静止させたと きの力のつり合いについて説明させ、そのときの試験管 内の空気の体積を測る。次に試験管を取り出し質量を測 定する。さらに、試験管の体積を考慮しないとうまく説 明できないが、どのように試験管の体積を測定するかも 考えさせる。 ⚕)課題研究への発展 〇ガリレオ温度計(写真⑦) インテリアとしても用い られる熱膨張を利用したお しゃれな温度計である。温 度によって液体の比重が変 化する。その変化の大きさ は、物質によって異なるの でその差を利用して温度を 知ることができる。 この温度計を作成してみ てもよい。 〇ペットボトル等に入れ る周りの液体の濃度の 違いによっても浮沈子の浮き沈みは変わる。 このことを使って周りの溶液の濃度の差を、浮沈子を 用いて視覚的に表すことを用いた課題研究の事例もあ る7) ⚓ おわりに 高校において全校集会等で実験をする場合、講話の内 容に合った実験である必要がある。そして、体育館のス テージ上の実験が一番後ろの生徒にまで見えるような大 きな動きのある実験であることが望ましい。しかし、そ のような都合のよい実験がいくらでもあるわけではな い。手元で行う小さな動きの実験でも、放送部員にビデ オ撮影をしてもらい、プロジェクターでスクリーンに拡 大して投影するなどの工夫している。生徒たちは、毎回 の実験を楽しみにしており、廊下で会うと実験の話をし てくる生徒も増えてきた。少しでも興味を持ってくれた ことをうれしく思う。 また、校長室前の実験器具には、生徒だけでなく、多 くの教職員も興味・関心を持ち、実際に手に取って試し ながら、その理由について私との会話も弾んでいる。 新学習指導要領では、「何ができるようになるか」を 明確にし、主体的、対話的で深い学びを進めることにな るが、生徒を如何に、授業に、課題研究に、部活動に、 学校行事に熱中させるかだと考える。 生徒は深く考えることが苦手で、効率や印象だけで新 たなことに取り組みたがらない傾向がある。だが、常に 知的好奇心を持ち続け、さまざまなことを経験すること で、わからないことがわかるようになるだけでなく、見 えないものを見ようとする力ʠ想像力ʡも身につく。ま た、新しい出来事を予測するためにも様々な経験がとて も大切となる。 好奇心をもち、明るい将来を創造していく生徒たちを 育成するために、生徒に「あれ?」、「なぜ?」を与え続 けていこうと考えている。 【参考文献】 1)文部科学省 小学校学習指導要領(平成29年告示) 中学校学習指導要領(平成29年告示) 高等学校学習指導要領(平成30年告示) 2)石井登志夫(2000)「大気圧実感ゴムピタくんを使った授 業」(物理教育48-⚑)pp. 60-62 3)青少年のための科学の祭典2019 ひょうご⚕会場大会 (第25回)開催要綱(2019) 4)森井清博共著,滝川ほか(1998)「たのしくわかる物理実 験事典」(東京書籍)pp. 126-127 5)文部科学省 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 6)森井清博(2000)「浮力の授業の効果的な展開について」 (物理教育48-⚒)pp. 145-146 7)大久保賢斗,床鍋陽紀,高津舞衣(2019)「溶液の混合状 態を可視化する」(第36回高等学校・中学校化学研究発 表会) (みやがき さとる・兵庫県立宝塚北高等学校校長) 【T:】Edianserver /関西学院/教職教育研究/第25号/ 宮垣 覚

― 117 ― ⑥ 浮沈子⚒個入り ⑦ ガリレオの温度計

参照

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