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第2章 必修教科等の研究 02 社会科 「生徒自らが学び,高まり合う社会科学習」

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Academic year: 2021

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「生徒自らが学び,高まり合う社会科学習」

上田真也 1.研究仮説 新聞を活用する学習は,社会的事象に対する関心を 高め,自分なりに社会的事象を捉え,思考することを 促すことができると考える。また,自分なりに新聞を 通して知り得たこと,考えたことに対する意見を述べ ることで,自らの学びを高めることができるであろう。 NIE実践校として新聞を活用できる環境をうまく 利用し,生徒にとっても教師にとっても身近な新聞を 社会科学習に取り込むことで,社会的事象をより多面 的・多角的にとらえさせることができると考える。さ らに自分の考えや意見をレポートや新聞にする活動を 通して自らの学びを客観視でき,生徒間の交流にもつ なげやすいため,これまで重要視してきた生徒同士の 高まり合いが期待できるであろう。 2.これまでの実践 これまで地域教材を取り上げ,生徒同士の意見交流や 双方向的なやりとり及び学びの交流などを通して,生徒 自らの学びを生徒間で高め合う工夫を行ってきた。そう した流れの中で,今年度,NIEの実践校に認定される 機会を得て,教育に新聞を取り入れ活用するNIE実践 校としてその初年度を迎えることとなった。社会的事象 に対する関心が低くなりつつある昨今,社会的事象に対 する関心を高め,学ぼうとする意欲を持たせることは社 会科ならずとも重要であることは言うに及ばない。また, 学習指導要領において,中学校社会科の基本目標には, 「社会認識を深め,公民的資質の基礎を育成すること」 と明記されている。この「公民的資質の基礎」とは,国 際社会に生きる民主的,平和的国家・社会の形成者とし て,将来に向けて社会と主体的に関わり,よりよい社会 を構築していこうとする意欲・態度を身につけることで ある。生徒がこのような意欲・態度を身につけるた めに,社会科教育は,地理・歴史・公民各分野の学 習内容の特性から,自分たちが生きている社会との 関わりを考える場面を数多く設定することができる。 このような学習場面の設定を積み重ねていくことで, 社会的事象に興味・関心を持ち,多面的・多角的に 考察する力,物事を公正に判断する力を育成するこ とができ,自分の生き方やよりよい社会の創造につ なげていく力につながると考える。 これらを踏まえた上で,昨年度の研究における重 点課題は以下の三つであった。 ①生徒の意見や課題に対する成果をできるだけグ ループや全体の場で披露する。(発表) ②学んだ成果を生徒同士交流し合い,互いの良い 点や改善点を指摘し合う。(相互評価) ③交流の振り返りや自己分析(自己評価) しかし,生徒の意見が社会的事象とかけ離れた独 りよがりなものであったり,生徒同士の交流も形だ けのもの(相互評価が互いを気遣う賞賛だけに終わ ってしまう場合が多い)であったりしていたのでは, 高まり合いはおろか,自らの学びすら心許ない。こ れらの課題を改善するため,新聞の活用は有効であ ると考える。ただし,新聞は社会科としてこれまで の実践の中でもよく活用するツールとして登場して きた。社会科にとって新聞は身近なメディアとして 教材・資料として最適であったためだ。そこで今年 度は,特に社会科における新聞活用を教師自身がよ り意識し,生徒に対しても新聞にふれる機会を多く し,普段から新聞を身近なものとしてとらえさせる よう工夫をして本実践に当たった。 本論の要旨 社会科では,様々な視点から社会的事象をとらえさせ,生徒自らが思考し,正しい価値観を 形成した上で,公正な判断のもとによりよい社会の創造に向けた行動につなげていくことを目 標としている。 それらを踏まえ,本研究は昨年度まで,生徒自らが学び,高まり合えるような授業展開を意 識して進めてきた。特に生徒が,これまでの学習の中で培ってきた自分の経験や社会的事象に 対する見方をもとにじっくりと考え,判断し,自分の意見を大切にしながら,生徒同士で意見 を交流し合える場面を設定してきた。今年度はこれまでの展開をもとにしながら,NIE実践 校として新聞の活用を重視した。生徒たちは,新聞を活用することで,社会的事象に対する関 心を高め,社会的事象をより多面的・多角的にとらえ,自分の考えやものの見方を客観視する ことができた。 キーワード NIE 新聞 社会的事象に対する関心 客観視

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-39- 3.NIEについて NIEとは,Newspaper in Education の略で,学校 などで新聞を教材として活用することである。193 0年代にアメリカで始まり,日本では,1985年に 静岡県で開かれた新聞大会で提唱されたのが始まりと されている。その目的は,教育界と新聞界が協力し, 社会性豊かな青少年の育成や活字文化と民主主義社会 の発展を目指すことである。 「教育に新聞を」を合い言葉に,NIEは現在,世 界60か国を超える国々で実施されている。日本でも, 日本新聞教育文化財団が,日刊新聞の発祥の地である 横浜市に日本新聞博物館とNIE全国センターを開設 し,全国規模でNIEを推進している。2006年現 在で,日本でのNIE推進校は490校を数えるまで となった。これは過去10年で,倍近く増えたことに なる。 滋賀県の場合,NIE推進協議会が京都新聞滋賀本 社内に設置され,毎年2か年計画で推進校の裾野を広 げている。また,NIEの実践として,新聞財団では 以下の取り組みなどを紹介している。 ・新聞から知っている文字を探し出す活動(小学校低 学年) ・新聞記事や広告を切り抜き,パンフレット「あこが れの海外旅行」を作って,地理の授業で使う活動(中 学校) ・各紙を1面から最終面まで精読して,最も興味をも った記事を選び,内容について論述する活動(中学校・ 高等学校) ・政治・経済・社会・文化・スポーツ・地域ニュース と各面にわたってクラス全員で考えてみたいテーマを 手分けして探し出し,ディベートの素材にする活動(小 学校・中学校・高等学校) ・生徒一人ひとりが作った理科に関する新聞の切り抜 きシートを集約して,現代版「理科百科事典」を作る 活動(高等学校) さらに,NIEでは,実践により身に付く力として 「閲読習慣」や「学習態度の変化」にも注目している。 日本新聞教育文化財団が2005年に実施した「第4 回NIE効果測定調査」(図1)によると,児童・生徒 の新聞を読む頻度がNIEを通じて校種を問わず拡大 している。また,NIEによって児童・生徒にどんな 変化がみられたかを教師にたずねたところ,約8割が 「新聞を進んで読むようになった」と回答している。 このほか,「記事について友人や家族と話すようになっ た」,「生き生きと学習する」,「自分で調べる態度が身 に付く」といった項目で,6割以上の教師が児童・生 徒の学習態度の変化を指摘しているという報告がなさ れている。 <図1> こうした実践の積み重ねが注目されはじめ,現在では, 実践校500校を目標に,同財団は全国規模の推進を展 開している。同財団では,毎年11月第1月曜日からの 1週間を「NIE週間」とし,今年度で4回目を迎える こととなった。 このようにNIEによる教育効果は各方面からも注 目されており,次世代を担う児童・生徒に必要な読解力 や「生きる力」の育成に寄与すると期待されている。今 回の改訂により,小中学校の新学習指導要領に新聞の活 用が盛り込まれたのもそうした背景によるものであろ う。 国際学力調査で世界トップ級であり,日本でも何かと 話題にされるフィンランドでは,NIEが40年以上に わたって実践されている。また,同国の実施率は87% (2007年調べ)にのぼり,その効果も実証されてい る。(図2) <図2> (読売新聞 2008/11/6 朝刊掲載記事より) 4.NIEの実践について 本年度より2カ年計画で,NIE推進校として実践す ることになった。社会科の授業の中ではこれまで新聞を 活用することは当然行ってきた。ただし,今回のように

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-40- 複数の新聞社を一度に取り上げられる環境のもとでは なかったため,授業者が購読している新聞か,所属校が 契約している新聞に限られていた。そうした部分で,N IEの取り組みでは7つの新聞社と契約を交わし,毎日 新鮮なニュースを学校や生徒に届けられる環境を整え ることができる。今回のNIE実践で本校が契約した新 聞社は以下の通りである。 ・京都新聞社 ・中日新聞社 ・朝日新聞社 ・読売新聞社 ・毎日新聞社 ・日本経済新聞社 ・産経新聞社 NIEの実践を始めるにあたっては,いくつかの諸準 備をした後,始めることとした。 [新聞棚の設置] これは,毎日7種類の新聞が朝・夕配達されるため, 新聞社ごとに仕分けをし,生徒や教師がいつでも閲覧で きる状態にしておく必要があるため,職員室前に新聞を 置く棚を用意した。これにより,新聞に関心のある生徒 やこれを機会に新聞の関心を持った生徒が休み時間等 を利用して閲覧することができる。 [全校生徒への啓発] 社会科の授業の中だけでなく,各学級担任より学級用 に準備した啓発文書を教室掲示し,NIEの存在をアピ ールした。今回は,実践の初年度でもあるため,学校と してNIEの取り組みを推進していくというスタンス を取り,気軽に新聞に触れてもらうことをねらいとして 行った。 [アンケート調査] 本年度は,1年生の地理的分野と3年生の社会科の授 業を受け持っているため,それぞれの授業で,生徒に対 してアンケート調査を実施した。これは,NIEを始め るにあたり,新聞に対して意識を高めることをねらいと したが,生徒の実態把握もかねて,各家庭での新聞購読 状況の把握を図った。アンケートの項目と結果は次の通 りである。 ① あなたの家では,新聞を購読していますか? 【は い】107名(3年)/112名(1年) 【いいえ】7名(3年)/6名(1年) ② 購読している新聞名は? 今回NIEで契約している7社以外では,朝日小学 生新聞が挙がっていた。 ③ あなたは新聞を読んでいますか? 【毎日読む】38名(3年)/41名(1年) 【ときどき読む】60名(3年)/65名(1年) ④ 新聞のどの面を読みますか? 主な回答としては,テレビ欄やスポーツ欄の他に,1 面や滋賀県の地域版といった回答も多かった。 このように学年による差は特に感じられなかった。た だ,これまでに社会科では試験内容に時事問題を一部出 題しているため,意識して新聞を読もうとする素地はす でにできているのかもしれない。 今回,NIEの実践により閲覧コーナーを作ったこと で,生徒の中にはこれまで以上に新聞に関心を寄せる者 が増えた。休み時間ごとに,職員室前の閲覧コーナーで 新聞を広げて各紙読み比べをしたり,ある出来事につい て互いに話題にしてみたりする姿が見られた。NIEに よってそうしたきっかけ作りはできたと考えられる。な かでも関心の高い生徒は,毎朝新聞が届くのを心待ちに し,各紙の一面記事を見比べたりする姿が見られた。 5.NIEの活用(実践事例) ①主題(単元,題材) 都道府県の調査~東京都~ ②主題によせて(単元設定の理由,題材観) 地理的分野の内容(2)地域の規模に応じた調査・イ 都道府県では,「47都道府県の中から幾つかの都道府県 を取り上げ,地理的事象を見いだして追究し,地域的特 色をとらえさせるとともに,都道府県規模の地域的特色 をとらえる視点や方法を身に付けさせる。」とある。本単 元はそのひとつとして日本の首都・東京を取り上げるこ ととした。 現在,東京都は日本の首都として,また,世界の大都 市のひとつとして,その存在価値が内外から認められて いる。東京都は,明治に入った1868年に江戸から東 京に名称を改め,日本の首都としての機能を果たしてき た。特に,東京都の都心には,日本の中枢機能である国 会議事堂やおもな中央官庁,最高裁判所などが設置され ており,日本の政治の中心としての働きを担っている。 また,銀行の本店や東京証券取引所,大きな企業の本社 や外資系の企業も数多くあり,経済分野においても日本 の中心となっている。さらに近年は,都心の一極集中を 分散させる目的で,新宿駅周辺の新都心周辺をはじめ, 池袋,渋谷などを副都心とした計画的な都心の役割分散 が見られ,東京都の中で首都としての機能を整備・拡充 してきている。ほかにも,テレビ,新聞,出版社など, 各種メディアの重要な情報発信地としての役割や百貨店 をはじめとした商業施設の集中によるファッションなど の文化的流行の最新発信地としての役割を担っており, 日本はもとより外国からも数多くの人々が集まるように なっている。 交通面においても東京都は日本の交通網の中心地とし て発達してきた。鉄道・高速道路をはじめ,航空路線も

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-41- 東京国際(羽田)空港を中心にその路線を広げてきた。 自然の様子を見ても,東京都は神奈川県・千葉県・埼玉 県・群馬県・栃木県・茨城県とともに関東地方を構成し, 利根川や日本一の広さを持つ関東平野を有し,畑作を中 心とした野菜生産や畜産の発展に努めてきた。以上のこ とからも東京都を都道府県の調査で取り上げることは, 必然的と言わざるを得ない。 そのような東京都であるから,授業で取り上げる要素 は数多くあると考えられるが,ここでは東京都の土地利 用に注目させたい。面積の上では香川県・大阪府につい で3番目に小さいこの土地に,どのような特色が見いだ せるかを探る調査活動型の学習としたい。以上のことが らを踏まえた上で,土地利用に関して「自然」,「交通」, 「住宅地」,「市街地」の四つの項目に分けてそれぞれの 特色を土地利用がわかる地勢図を用いて調査活動を行い, それらを地図に表し,交流を通して,東京都の土地利用 に関する全体像をつかむ学びへと発展させていきたいと 考える。さらに,学習の最終課題として,東京都に関す る新聞作りを通して,新聞を活用するNIEの実践も図 りたい。 ③学習目標 (1)東京都の土地利用の特徴や中枢機能を持つ首都 としての役割に興味・関心をもつ。 【関心・意欲・態度】 (2)東京都の土地利用を多面的・多角的に捉え,首 都としての機能は果たす東京都を意識した上で, 土地利用の結びつきを自分なりに見いだす。 【思考・判断】 (3)地図や統計資料を活用し,調査した内容を地図 に示し,学んだことを新聞として効果的にまとめ る。 【技能・表現】 (4)東京都の土地利用の特徴や首都として中枢機能 を果たす東京都の地理的特色を理解する。 【知識・理解】 ④学習計画(全11時間) 第 1次 東京都はどんなところ? /1時間 第 2次 土地利用を調べよう① /1時間 第 3次 土地利用を調べよう② /1時間 第 4次 土地利用図を作成しよう① /1時間 第 5次 土地利用図を作成しよう② /1時間 第 6次 土地利用図で交流 /1時間 第 7次 まとめ /1時間 第 8次 NIE・新聞作りについて /1時間 第 9次 新聞作り /2時間 第10次 新聞交流会 /1時間 6.成果と課題 地図を利用した活動はこれまでも数多く授業の中で 取り入れ,実践してきた。その際,地図から読み取れる 情報を地図記号や等高線,土地利用分布などから捉え, 地図を基にした土地の概観把握や地理的特色及び地域 的特徴を教師と生徒間で交流してきた。今回は,土地利 用に着目すると同時に,東京都の土地利用を「自然」, 「交通」,「住宅地」,「市街地」の四項目に分けて分析す る活動を取り入れた。また,4人グループを作り,4人 のうち一人ひとりが違う項目を担当し,その項目だけに 着目した土地利用図を作成するようにした。こうするこ とで東京都の土地に関して,ある項目を特徴的に浮かび 上がらせることができた。また,土地利用図を白地図に 描き,さらにそれを基にOHPシートを用いて書き写し, 4人がそれぞれ作成したOHPシートを重ね合わせる 中で,東京都の土地利用を多面的・多角的に捉える活動 とし,4人グループ内でお互いの交流を図ることができ た。そうすることで,個々の特色を一度捉えた上で,別 の土地利用とのつながりや関連を考えることができる。 このような活動を通して,自分たちが表現した地図を用 いて,最終的に自分なりに東京都の土地利用に関する概 要を把握することができた。また,概要把握から東京都 の土地利用そのものの特色に気づくことができた。 さらに,今回取り上げた東京都の学習を新聞という形 に表し,学んだことを自分なりにフィードバックさせな がら,発信させる活動につなげることができた。NIE の推進校ということからも各社新聞が容易に手に入り, 家庭で新聞を購読していない生徒にも実際に手に取っ てじっくり見てみることができた。本物の新聞を用いて 新聞作りの基礎・基本を学び,自分なりに学んだ成果を 形にする。このような活動を通して,新聞に対する興 味・関心を高めるだけでなく,新聞を通して,社会的事 象に対する関心をも高められると考える。さらに,自分 で新聞を読み,自分の学びを新聞の記事という形で表現 することで自分のものの見方や考え方を客観視できる と考える。以上の点からも新聞の活用は,その学習効果 が期待できるものである。 今回のような活動は,個々の課題に対して,一方的な 活動にさせないためにも課題に対する自分なりの振り 返りと生徒間の成果物の交流が必須である。その際,課 題となるのが活動時間の確保と交流時間の確保である。 今回は,授業時間のバランスなどにより宿題となる部分 もあり,学習活動の見取りという点では十分でない部分 もあった。また,成果物の交流も4人グループが限界で, それ以上の広がりを見せる展開まで至らなかった。これ らは今後,改善の余地があろう。

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