• 検索結果がありません。

〈博物館秋季企画展 仏教の歴史とアジアの文化〉重要文化財『春記』と紙背聖教 ─平安貴族の生活と信仰─

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "〈博物館秋季企画展 仏教の歴史とアジアの文化〉重要文化財『春記』と紙背聖教 ─平安貴族の生活と信仰─"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

大谷大学図書館・博物館報(第26号) ( 19 )  2008年度の本学博物館秋季企画展(会期: 9月9日~27日)は、「重要文化財『春記』と 紙背聖教─平安貴族の生活と信仰─」と題す る、平安時代の貴族 藤原資房(1007~57)の 日記『春記』とその紙背に記された真言密教 に関する聖教についての展観であった。本学 所蔵の『春記』(1巻)には、記主の藤原資房 が蔵人頭の要職にあった長久2年(1042)2 月の条文が記されており、後朱雀天皇の北野 社への行幸や、仏師定朝への船の龍頭の製作 依頼、政治家・学者として著名であった藤原 公任の死去に関する記事など重要な記述が多 いことで知られている。また同時に本文の裏 側(紙背)に記された聖教も重要なもので、 近年の研究により、この聖教が真言宗の学僧 として著名な寛有の『顕密立教差別記』であ ることが判明し、その内容から、当時の真言 宗の教学理解や天台宗との交流の姿などを詳 しく知ることが可能となった。さらに注目さ れるのは、本学所蔵本『春記』とともに東寺 に伝来した宮内庁書陵部所蔵本『春記』(8 巻)と京都国立博物館所蔵本『春記』(3巻) のすべてに、本学所蔵本と同様に寛有の著述 を主とする真言密教に関する聖教が記されて いる点である。紙背の聖教は、本文が筆写さ れてからそれほど時間を置かずに写されてお り、本文・紙背ともに平安時代末期の筆写に かかるものとみなされる。一連の日記の写本 に、このように同じ系統の聖教がまとまって 記される例は他に知られておらず、これらの 事実は、東寺伝来の『春記』の成立事情や、 当時の日記と聖教の関係など、重要な問題を 考える鍵となるものとみなされる。  こうした興味深い事実を多く含む『春記』 写本の内容と諸課題を共有し考察することを 目指して、企画展会期中の9月13日には、関 連したシンポジウムが開催された。  当日パネリストとし て参加いただいたの は、京都国立博物館学芸課企画室研究員の羽 田聡氏、大阪大谷大学教授の宇都宮啓吾氏、 種智院大学学長の頼富本宏氏であった。  まず羽田氏は、「『春記』のさまざ まな写 本」と題する講演で、『春記』の諸写本を紹介 された上で、東寺本『春記』の紙背に聖教が 記されている点を重視され、本文と紙背の関 係を考察することの重要性を指摘された。続 いて宇都宮氏は、「『春記』紙背に記された読 み方の作法」と題して、当時の仏教各宗派に おけるヲコト点使用のルールを紹介され、本 学所蔵本のそれが、真言宗の仁和寺を中心と する当時の先進的な教学グループが使用した 円堂点であることを指摘された。また氏は、 当時の仁和寺の教学圏に属する僧侶たちと為 政者である後白河院との関係についても言及 され、彼ら僧侶が貴族社会で活動する際に知 識の共有を必要としていた点から、『春記』 本文が書写された理由についても発言され た。最後に頼富氏は、「『春記』の紙背に書か れた密教の教え─著者・寛有の仏教史上の位 置─」と題する講演で、紙背聖教の著者寛有 の著述に見られる教学的な特徴や、寛有の真 言法流の中での位置づけについて述べられ、 特に後白河院の皇子である仁和寺の守覚法親 王の弟子たちとの関係に注目された。  引き続き行なわれたデ ィスカッシ ョン で も、3氏の講演を受けて活発な質疑応答がな

重要文化財『春記』と紙背聖教

─平安貴族の生活と信仰─

〈博物館秋季企画展 仏教の歴史とアジアの文化〉 准教授

 東 舘 紹 見

(日本仏教史〈古代・中世〉)

(2)

( 20 ) 大谷大学図書館・博物館報(第26号) された。中でも、本文が現わす貴族の世界と 紙背が示す仏教教学の世界をつなぐ接点とし て、寺院を中心とする人々の交流が改めてク ローズアップされてきたことは、今回の企画 展ならびにシンポジウムの大きな収穫であっ たといえるであろう。  歴史学・国語学・仏教学という異なる分野 の交流による研究の成果が公開され、参観・ 来会された諸氏と共有できたことは大きな喜 びであり、今後、一層の研究の深まりが期待 された有意義な展観・シン ポジ ウムであっ た。 シンポジウム風景

参照

関連したドキュメント

幕末維新期、幕府軍制の一環としてオランダ・ベルギーなどの工業技術に立脚して大砲製造・火薬

(2001) Elemental distribution: Overview.. In, Encyclopedia of Ocean

ローマ日本文化会館 The Japan Cultural Institute in Rome The Japan Foundation ケルン日本文化会館 The Japan Cultural Institute in Cologne The Japan Foundation

アクアワールド茨城県大洗水族館 www.aquaworld-oarai.com #博物館 #水族館 #海洋生物 #講座 #ガイド #バックヤードツアー. 赤穂市立海洋科学館

6月1日 無料 1,984 2,000

学年 海洋教育充当科目・配分時数 学習内容 一年 生活科 8 時間 海辺の季節変化 二年 生活科 35 時間 海の生き物の飼育.. 水族館をつくろう 三年

うみ博メイン会場に加え、日本郵船歴史博物館、日本郵船氷川丸、帆船日本丸・横浜みなと博物館、三

間的な報告としてモノグラフを出版する。化石の分野は,ロシア・沿海州のア