中小企業の街・東大阪工業の活力再生への道 -- マングローブの林 --
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(2) 第 45 巻. 第1号. を吸収させようとした。 黒松教授は,「産地としての生き残り」を図ろうとする動きのなか にある問題点として,「産業の空洞化」によって, 伝統産業として発達させてきた地域内分 業の崩壊の可能性を警告していた。 産地をタマゴにたとえれば, 当時の産業の空洞化現象は内側(労働力過剰型から不足型 へ) から殻を割る動きの存在を指摘したものであったが, 現在の産業空洞化現象は外側 (円高とグロ ー バル化) から殻を破ろうとする力が強調されるのである。 教授が指摘した 「地域内分業の崩壊」が日本経済の高度成長プロセスの一 端を示す現象を意味するとすれ ば, 現在のそれは日本経済の円高• 高コスト化に伴う国際分業の深化―生産拠点の海外 シフトと開発輸人の進展—を示す構造的問題である。 それも相反する二面性が現在指摘 されている。 すなわち, 輸出のための国内生産が海外生産に代替されるとともに, 国内品 に対する輸入品の国内市場での競争力が高まり, 国内生産が輸入に代替される結果とし て, 比較劣位の産業が生き残りをかけて生産拠点の海外シフトを展開させる場合, 比較優 位の産業が主体となる, 産業構造の高度化への変化が日本経済の内容となる。 しかし日本 の比較優位にある代表的輸出産業(自動車, 家庭電化製品等) が高コスト化を回避して円 高メリット追求のさらなるチャンスとして生産拠点の海外シフトを展開させる場合, 比較 劣位の産業が主体となる, 産業構造の脆弱化への変化が日本経済の内容となる。 (清成忠 男•橋本寿朗編著『日本型産業集積の未来像』日本経済新聞社, 1997年参照)。 もっとも,「産業空洞化」 なる用語を今日的用語としたのは京都の西陣機業ではなくて, アメリカ経済である。 1970年代のアメリカにおいて, ビック. ・. ビジネスの多国籍企業化が. 世界におけるアメリカ経済の地位の低下につながる根拠としての「増大する対外投資問 題」と海外への生産•ンフトによる「失業問題」を生起させ, 資本の論理と国家の利益=「国 益」 の間に埋めることのできない構造的問題があることを示したのである (R. ・. ギルビン. 著•山崎清訳『多国籍企業没落論』ダイヤモンド社, 1977年参照)。 そして, 今や日本経済 においても, 円高を契機とする海外直接投資の増大と逆輸入品の増加によって, 国内の生 産の縮小と雇用の低下が中小企業や地域経済の在り方に大きな影響を及ぽすことが真剣に 議論されているのである。 そして, 近年には, バ プル経済以降の不況が追い討ちとなって, 中小企業問題がますます深刻化し, 地域経済の活力の低下が明確になっている。 1997年 4 月に策定された「地域産業集積活性化法」は, 地方の中小産地の活性化を目的 に1992年に施行された「中小企業集積活性化法」の延長線上にある臨時措置法であるが, その目的とするところは, 大都市圏に集積する中小工業を再び都市再生の担い手として支 援するものである。 そこには,. バ. プル崩壊後の円高経済に直面して比較優位を失った産業 -174(174)-.
(3) 中小企業の街•東大阪工業の活力再生への道(衣本) 分野の海外移転が進むなかで, それらの活動を支えてきたサポ ー ティング ・ インダスト リ ー としての中小工業の存在がこのままでは否定されるのではないかという危機感があ ". る。 もしそのような事態が進行するなら, 確実に, 戦後の経済発展を支えた モノづくり. ”. 基盤の衰退が決定づけられ, 産業の空洞化が深刻化し, 都市や地域に活力が失われる。 ". ". ”. ”. これまでの モノづくり に対する中小企業政策は, モノづくり の環境変化に対する 新しさが追い求められた。 たとえば, 研究開発やソフトウエア開発などの創造的活動が現 在の工業生産において重要性を増していくとの認識に立って, リサ ー チコア事業 (1986年 施行) や「頭脳立地法」(1988年施行)以後, 創造的中小企業の登場に期待が集まった。 し かし, 頭脳は東京, 手足は地方という東京一極集中体制に変化がなく, 地方の加工型産業 集積地では, 思うような脱皮が果たせないで, 現在では産業空洞化問題に直面している地 域が多いのも事実である。 現在でも創造的中小企業への期待は変わりなく,「中小企業創造活動促進法」が1995年に 制定された。 しかし, 以前に比べて, 大きく変化しているのは地域における産業集積への 政策的配慮である。 戦後一 貰して崩されることのなかった政府主導型あるいは横並び型の 全国画ー的な政策の弊害が指摘され, その打破が,. バ プル崩壊後の金融システムや官僚制. 度の改革問題と重なりあって, 強調されるようになった。 地域の特性を生かした「モノづ くり」を無視した政府主導型あるいは横並び型行政の反省の上に立って, 十分な政策的対 応が検討されはじめた。 上記の「地域産業集積活性化法」の目新しさは「モノづくり日本」 の再評価を全国画ー的な業種別視点の強調ではなくて,「地域主導型」の政策的掘り下げの なかで追究し, 地域の個性に根差した「地場の利益」の有効活用法を確立することにある。 言い換えれば,「基盤技術をもつ中小企業の集積度の高い都市を指定し,共同研究や人材育 成, 賃貸工場建設などインフラ整備や新商品開発のための税制, 融資など産業振輿策を支 援する」方法そのものは目新しくもない政策内容といえるが, 次のような特徴において集 積の再活性化に役立つ新しさとの認識を示している。すなわち,「全国横並びの制度を条件 付きで地域に押し付ける従来の支援策とちがい, 地域側から手を挙げ, 中小企業をどう生 かすか, どんな町にするのかといった ビジョ ンを提示するのがポイントだ」(産経新聞, 1997年4月27日付) という。 さて, 1987年の「第四次全国総合開発計画」において 「地域アイデンティティ」 なる表 現が用いられ,「地域個性の存在感」を強調するようになったが, 我々はこれまで各種の産 業政策の策定において地域の 「個性」 が見落されがちなことに不満があった。 中小企業の モノづくりに果たす役割が大きい下請制度は全国のどこにおいても同じ機能や型だけで存 -175(175)-.
(4) 第45 巻. 第1号. 在しているものではない。 地域ごとに展開する下請制度の在り方は, 風土や歴史に培われ た地域の個性を反映させて, 差異があるのが通常である。 工業生産の「一般性」に注目することは社会科学として当然であるといえるが,「地域の 個性的差異」は無視して良いというものではない。 外科医の話しを思い出す。 身体の部分 には血管が数多く通っていることは学習で理解しているが, 個人個人によってそれが浅 かったり, 深く走っていたりする。 それがわかるようになるのは数多くの手術を経験しな ければならない。 「差異」を理解することも医学である。 同じ事であるが, 我々の視点もま た地域や都市に集積する中小工業の機能や役割がどのような 「地場」 の個性を反映させた 活力として存在しているのかを見極めることである。 言いかえれば,「地域産業集積活性化 法」の登場の背景に, 地域の「個性」を重視した政策的支援の必要性を求める世論がある。 しかし, そのような法律が作られたら, 地域の 「個性」 を反映させた産業集積上のすべ ての問題が解決されたわけではない。 なによりも重要なことは, そのような法律が効果的 に運用される地域産業政策の在り方を地域の行政が認識することである。 したがって,「地 域産業集積活性化法」 を効率のある中小企業政策の切り札にするためには, 何を考え, 何 をするかを「地場」 から発信する必要がある。 そこでその第 一歩として, 以下において, 東大阪工業の再生に対する地域の個性を前提にした政策的視点を私見的に探ってみよう。. 2.. 東大阪の工業集積と経営環境の特色. 全国的にみて. 都市での工業立地が難しくなってきている現在でも, いわゆるサポ ー ティングインダストリ ーとして工場総数は約9,000を数え, 貸工場も2,000を超え. 全国一 の工場密度を維持している。 東大阪という土地柄は, 電動機が登場する前の明治から大正 期には. 工業動力としての水車 一台が田畑―町歩に匹敵すると言われた地域で. モノづく りに対する起業意欲が古くから旺盛なところであった。 生駒山の水系にあったかっての水 車 工場はなくなったが. いまも脈々とモノづくりへの起業意識が受け継がれている。 多く の地場産業が形成されていること, 細分化した浪密な地域内分業が発達していること. さ らには貸工場を梃にした各種工業のインキュ. ベ ー ショ. ン機能が旺盛であること等はその一. 端を証明している。 しかも. これまでに幾度となく経験した不況に対する抵抗力の強さに. ". 河内のど根性. ”. 論が登場したこともしばしばである。 そこには. 工業を生業とする人々の人間臭さが強く 住民意識に投影され. これまでの町づくりを支えてきた。 たとえば. 不況が長引き, きび -176 (176)-.
(5) 中小企業の街• 東大阪工業の活力再生への道(衣本) しい場合, 景気が回復するまで, 一時的に工場をたたんで, 熟練した機械加工技術を頼り に流れ戦人として仕事のありそうなところを全国渡り歩く工場主もいる。また, 必要とあ れば, 採算を度外視した設備投資を試みる工場主も多いのである一その埋め合わせが長時 間労働や生活の切り詰めであるとしても。それだけではない。 鉄工所のおかみさんのサイ フの中身と買い方が, 地元の市場や商店の営業成績に反映され, 日常的な景気判断の話題 にもなったし, 経験と勘が物を言う小零細工場の街, あかちゃけたバラックの工場から受 けるイメ ー ジとはかけ離れた, 各種ロ ボットの普及率の高さに驚かされることもある。こ の街は高度成長時代から. ". どぶ板的なバイタリティ ー. ”. に溢れているとも言われてきた。. 1968年当時, 工場総数の約20%にすぎなかった 1-3 人規模という最零細層は1974年に は38.3%となり, そして1993年には44.7%と工場総数の約半分近くまで拡大し, 4-9 人 規模層を加えれば, 8 割が小零細工場(1-9人規模)で占められているのである。この層 に全従業者数の32.7%に当たる28,161人が働き, 全製品出荷額の17.3%を占めている。 言 い換えれば, 残りの 2 割の中小工業 (10人規模以上) が製品出荷総額の83%, 全従業者数 の67%を実現しているわけである。この 2 割のなかには活力旺盛な企業もある。ロ プテ ッ クスや朝日ナショナル照明等のような株式上場を果たした企業や, ヤマナカゴ ー キン, 三 容真空工業やタカコ精機等のように, 独自技術による製品の市場占有率が40%以上(全国 シェア) の企業は約60社もあリ, 地域の活力を中堅企業への成長という形において具現し ているのである。そして市場ニーズ即応型製品化や他では真似のできないモノづくり技術 を武器にした元気な企業は市域全体で113社(商工会議所調ぺ), 概算では約200社程度存在 する。 さて, 1974年の8,369工場は1983年には初めて 1 万の大台を超えて10,033 工場となった ももの, 工場総数そのものはプラザ合意後の円高経済への突人とともに変化が見られ始め た。 即ち, 1985年には, 再び l 万を割り込み9,933工場, そして1993年には9,348工場とな り, 以後も減少傾向となって, 最近の数字は8,930工場 (1995年)である。今や, 東大阪工 業の生産活動は確実に低下している。工業活力の低下は都市の在り方をも変える。工場跡 地がマンションやス ー パーになれば, 近接の既存工場とのトラ プルもさらに強まり, 工場 の市外流出圧力は高まる一方である。 雇用の減少も加わって. 地域経済を支えてきた消費 購買力にもかげりがみられ, 進出してきたス ー パ ー や小売り. 公設市場等の商業活動の伸 び悩みの原因にもなる。また市税の減収にもなり, 行政サ ー ビスにも影響を与えることに なる。東大阪の都市活力の源泉は工業にあるといっても言い過ぎではない。それだけに. 工業の再生策はこれまでになく重要度を増している。その場合. 東大阪工業の今後にとっ -177(177)-.
(6) 第 45 巻 第 1号. て, 上記の「 8割」と「2割」の二つの規模層は, いずれの存在にも軽重の判断を許さな い頂みがあるといわねばならない。 もっとも, その在り方は両者では大きな質的差異がある。 工場総数の2割を占める上位 の規模層でも, 質的には, 上記の200社の元気な中小工業 (10人規模以下の企業もあるが) と, この200社以外の約1,600社の中小工業に別けて考える必要がある。 前者は経営的自立 性が高いが故に, 経営環境の変化を能動的, 積極的なインパクトととらえ, 新たなビジネ ス. ・. チャンスの到来と考える経営戦略を全面に押し出し,「オンリー. ・. ワンとしての将来. 市場の確保」を目的にした企業活力の創出を海外進出や新事業への参入, 新製品の開発に 求める。 そこにある技術特性は他社が真似することができない特殊技術である場合が多い のである。 それに対して, 約1,600社ある工場の多くは成長力においては200社には及ばないが, 比 較的大きな部品生産の下請業者である場合が多く, 東大阪工業の地域内分業の重要な結接 点にある機能を担当し, 圧倒的多数を占める小零細工場群の組織的利用をも効果的に運営 できる能力を持っている。 このような工場群の存在が大きな ロ ットの仕事から小さな ロ ッ トの仕事に至る多様な受注能力をもった集積効果を地域に根づかせてきた。 それだけにこ れらの中小工業の多くが環境変化に対応できずに終われば, 地域産業の空洞化は致命的な 状況に陥ることになる。 過剰な雇用や生産設備のスリム化による規模の縮小から脱下請化 にいたる経営努力は, 個々の企業の枠を超えた東大阪工業の在り方や将来を左右する事柄 なのである。 サポ ー ティングインダストリ. ー. としての存在感を確保するためには, 今, な. によりも政策的支援が必要なグル ー プであるといえる。 それらの技術特性は長い年月のエ 業集積の形成過程で蓄積されてきたコア. ・. テクノ. ロ ジ ー であり, ロ ー テク技術からハイテ. ク技術にいたる幅のある加工技術と専門化の裾野をもっている。 これら両者に対して,圧倒的多数を占める「8割集団」としての小零細工場群の場合, 下 請の末端に位置する工場群であるだけに, 経営環境の変化は「生き残り」を賭けた, 受動 的, 消極的な対応となりえる。 例えば, 最近の下請の末端では, 為替レ ー トの上下に生死 を感じているというが, それも発注元のコストダウンの要請が対応能力の限界を超えたも のであり, 場合によっては, 部品生産の内製化や採算割れ事業の整理. ・. 縮小, 海外への委. 託生産や生産工場の移転を理由に, それまでの下請業者への注文が途絶えるからである。 しかも円高が始まった当初は海外への生産拠点のシフトは主に大企業の組立工場であり, そこでの組立部品の多くは国内からの持ち出しであって下請企業への発注は維持された が, 現在の大企業を中心とする生産拠点のシフトは海外での部品生産体制の確立による完 -178 ( 178)-.
(7) 中小企業の街• 東大阪工業の活力再生への道(衣本) 成品の日本への逆輸入を実現するにある。 下請に発注する企業が少なくなるだけでなく, ". 完成品生産にかかわる部品市場そのものが円高や安い労働力を武器にした 外国製品. ”. の. 国内流入により潰されそうになっている。 その技術特性は雑多な機械• 金属製品の部品加 工や組立にかかわる熟練技術であり, 峨人芸といえる経験と勘がものをいう側面が強く, face to face の「無理がいえる」・ 「無理が聞ける」という地域内分業の基盤技術を支える 要素技術である。 要するに, 産業の空洞化に直面している東大阪の工業集積は単一の手法で処理するもの ではなくて, 少なくとも三つの異なったグル ー プ, ナ ー 型グル ー プ, 1,600社のキャッチ. ・. 即ち, 200社からなるフロ ント. ・. ラン. アップ志向型グル ー プ, その他残りの生き残り志向. 型グル ー プ, という経営体質に注目した, きめの細かい対策が必要なのである。. 3.. マングロ ー プの林と地域活力の再生策. 海岸に繁茂しているマングロ. ー. プ(ヤエヤマヒル ギ) の林は自己の種の保存と勢力拡大. のために重い種子と軽い種子, そしてその中間の種子という三種類の重さの種子を生み分 けているという。 重い種子は海水に流され難く. 母木の根元に落ち. 母木と同じ環境で発 芽する。 最も軽い種子は引き潮に乗って遠くに流されて. 母木とは全く異なった環境で発 芽し, 勢力拡大の布石となる。 中間の種子はその両者をつなぎ. これらの繰り返しが長い 年月をかけて. 点と線を面的広がりに変化させるのである。 三種類の重さの種子はいずれ もがマングロ ー プの林を維持するためには必要なのである。 東大阪のように. 金属 ・ 機械 を中心に高度に集積した中小企業の街はマングロ 環境を打破するカ ーフロ ント. ・. ー. プの賢さを見習うべきである。 既存の. ランナ ー 型企業(軽い種子) の存在を識別し. それを有効. に利用することが重要である。 そして 「地域」を引っ張るフロ ント. ・. ランナ ー 型企業を手. 本とするキャッチ ・ アップ志向型企業(中間の種子) の組織化を通じて. フロ ント ・ ラン ナ ー とキャッチ ・ アップ志向型企業の双方の活力をリンケ ー ジし, これまで受け継いでき た地域特性を維持するカー生き残り志向型企業(軍い種子) の再編成に役立てることが必 要なのである。 技術構造的にいえば, 軽い種子の技術特性は 「特殊技術」 であり. 重い種 子は 「基盤技術を支える要素技術」となる。 そして中間の種子は関氏が強調される 「基盤 技術」に相当する(関満博著『空洞化を超えて』日本経済新聞社, 1997年参照)。 中小企業白書(平成 8 年版) も. 図lに示されるように, コア ・ テクノロ ジ ー を有する 「コ ー ディネ ー ト企業」によるネットワ. ー. クの新展開が重要であると指摘している。 要する. -179 (179)-.
(8) 第45 巻. コ ー デ ィ ネ ー ト企業 に お け る 企業間ネ ッ トワ ー ク の概念図. 図1 [従来のバタ. 第1号. ー. う. [斬 し い パ タ ー ン]. ン]. ----. -----ー_—--- � l. 社. こ : ャネ之t?.:::ク. コ ーデ ィ ネ ー ト. 、. ヽ ヽ, ”. ネ ッ ト ワー ク. 出典 『中小企業白書 (平成 8 年版)』 371 頁 よ り 引 用. に, 東大阪 の中小零細工場の集積に対しては. 現在. そ の 経営体質や活躍する経営環境に は大きな差異が あ り , こ れまでのような. "一. 律 の 救済, 一部の 選別. ”. といった 中小企業政. 策 の対象として処理される こ とには問題が ある。 少なくとも, 個々の条件と役割を明確に し た 三つ の 政策対象として の アイ デンティティを確立し. それを地域産業政策的にコ ー デ ィ ネ ー トする こ とが望まれる。 そ の ための地方行政や商工会議所の役割が貢要になる。 さて. 「マングロ ー プの種子」 を運ぶ潮流は, 東大阪工業 の21世紀へのテ ー マづく り の観 点からいえば. ど の ような潮流が妥 当であ ろうか。 技術革新. 国際化. 情報化, 高齢化, 環境問題といった潮流が常識的に考えられる。 国際化は, 生産拠点 の海外移転や海外生産 品 の逆輸入を盛んにして, 東大阪工業のモノづく り に携わってき た 多くの中小企業が 「国 際的分業」 の生産ラ イ ンに参加する こ とができずに. 「地場」の産業空洞化を受け人れる こ とになるかもしれない。 逆に, 情報化は産業の頭脳部分の立地を促進し. 知的生産に対応 し た 研究所やソフト ウ エア業が新 たに誕生するとともに. 企業間から都市間. さらには海 外へとネットワ. ー. クを広げ, いわゆる「世界最適調達」 機能に依存する加工基地化する機. 会を大きくし, 新しい能力をもった 新産業や新企業の 登場の機会を多くするが, いずれの 場合も, 産地として培われてき た face to face の基盤技術の集積メリ ットが東大阪工業 から失われ, 地域密着型 の都市機能を支えていた 部分の活力を殺 ぐ こ とにな り . 必ずしも 東大阪工業の全体として の 「地場の繁栄」 を約束するとはいえないのである。 要するに. 技術革新, 国際化. 情報化. 高齢化. 環境問題といった潮流はト ー タルとしての 日 本経済 -180 (180)-.
(9) 中小企業 の 街 • 東大阪工業の活力再生へ の道 (衣本). を考える場合は軽甫の判断が付け難い重要な要因であるが, すでに明確な個性をもった存 在としての東大阪経済の場合, それらを政策課頗として並列的に取り扱うことには無理が ある。 むしろある程度の政策的判断に差があってよい。 言い換えれば, アメ リ カのシ リ コンバレ ー のような繁栄が産業集積地の数だけの変貌劇 として日本の各地に展開するとは考えられない。 多くの既存の工業集積地の脱皮は単なる 模倣の言葉選 びに終わってはいけない。 東大阪という個性をもった工業集積地を問題にす る場合, どのような産業集積地にも当てはまるような役割や機能の羅列に終始するのでは なくて, それよりも,「地場」の特色を弱めることなく, あるいは 「モノづくり」の東大阪 工業的伝統を失うことなく, 21 世紀の東大阪工業を成り立たせるための地道な脱皮の方法 を見出だすべきである。 ”. その意味から, 東大阪工業に期待する "21世紀のテ ー マ ”. いう潮流に洗われるマングロ ー プの林. は東大阪工業が. ". 高齢社会と. になることである。 先日の WHO の報告によれ. ば, 21世紀の地球は確実に「高齢社会型地球」 となっている。 しかも, 高齢社会に対応し たイン フ ラ 整備や生活商品の開発はわが国でも, また世界的にみても, これからである。 多種多様な加工技術を蓄積している東大阪工業の特色を生かす方法として, 高齢社会に対 応した 「モノづくり」 に特化した地域産業の集積地になることは一つの選択として有効で ある。 なぜならば, 情報機器の場合は先端技術の進歩を製品化にどう取り込むかが問題で あるのに対して, 高齢社会に対応した「モノづくり」 は, 人間の愛情をどう製品化するか が問題であって, ロ ー テ ク 産業とハ イテ ク 産業の共同制作が可能である部分が多く, 異業 種交流や融合化を通じて, face to face の加工集積メ リ ット が発揮されやすい。 東大阪工 業での対応はこれまでの集積された技術と経験の延長線上における問題であって, 場合に よっては, 加工型集積としての地場の「まるごと」の有効利用を可能し, 人間味のある「モ ノづくり」の産地ならではの製品開発やソ フ ト開発が期待されるであろう。その意味から, 高齢化対応型コア. ・. テ ク ノロジ ー を有する 「コ ー デ ィ ネ ー ト企業」 によるネット ワ. ー. クの. 形成が東大阪工業にもとめられる。 私は,「地域産業集積活性化法」を契機に, 東大阪工業を高齢社会用機器の生産基地化す る 「マングロ ー プ方式」 の産業振興 ビジョ ンづくりを提案したいのである。 高齢社会は人 間が中心の社会であらねばならない。 東大阪工業が得意とするモノづくりは, 先端技術産 業の様に, ス ク ラ ップ ・ アン ド. ・. ビ ル ド の激しい科学技術上の競争が存在価値を決定する. 生産活動ではなくて, 長い産業活動のなかで蓄積されて技術の流れに適応しながら発展し ". ”. ". てきた中小工業の集団であり, 人間的ぬくもり を生かす経験やコ ツ がものをいう 物づ - 1 8 1 ( 1 8 1 )-.
(10) 第45巻 第 1 号 ”. く り. の要素が大 き い 生産活動で あ る 。 そ れ だ け に, 高齢社会 に お い て の そ れ ぞ れ の テ. マに も とづく ,. そ れ ぞ れ の 役 ど こ ろ を 心得た コ. ー. ディ ネ. ー. ー. ト 企業 の 多元的組み合わ せ に よ. り , 世 界 に 向 か っ て, 提案 で き る 高齢化商品 を 作 り 出 す共同作業 の 街へ と 変身す れ ば 良 い 。 そ の 時, 長 い 伝統 に 培 わ れ た 「 モ ノ づ く り 」 を 生活 と し て き た 東大阪工業 の 集積 と ネ ッ ト ワ. ー. ク は 2 1 世紀 に な っ て も 受 け 継 が れ る の で は な い だ ろ う か。. 参. 考. 文. 献. 1). 東大阪商工会議所 『東大阪地域経済 白書』 各年度版. 2). 同上. 3). 東大阪市 『住工混在地域 に お け る 産業振典方策 に 関 す る 調査報告書」 平成 7 年. 『東大阪市 に お け る 下請企業動向調査J 各年版. 4). 同上. 5). 東大阪市 ・ 東大阪商工会議所 『東大阪工業の国際化 に 関 す る 調査』 平成 8 年. 『住工混在地域の 整備方策 に 関 す る 調査報告書」 平成 7 年. 6). 同上. 7). 東大阪商工会議所 『「 モ ノ づ く り の街」 東大阪を支え る 活気あ る 産業集積の構築ーー地域の新産. 『東大阪市 に お け る 中堅 • 中小製造業の経営意識調査』 平成 9 年. 業創造 と そ の 支援一」 平成10年. - 1 82 ( 1 82 )-.
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