社会的空間の変容を捉えさせる小学校社会科授業開発研究
佐藤 克士,吉水 裕也
1 研究目的
本研究の目的は,現代社会を「 脱領域化と再領域化が同時進行した結果構築された社
会」と捉え,その特徴( 社会的空間の変容 )をスケールの重層性やスケール間の 相互関
係の視点から考察する小学校社会科第
3・4 学年地域学習の授業モデルを開発することで
ある。
2 研究方法
(1) 研究テーマに係わる先行研究(主に地理学・社会学)を整理する。
(2) (1)をもとに小学校社会科第 3・4 学年地域学習の特質と課題を整理する。
(3) (2)で整理した内容をもとに,社会的空間の変容を捉えさせる小学校社会科第 3・4 学
年地域学習の授業モデルを開発する。
3 研究内容
(1) 研究テーマに係わる先行研究の整理
現代社会 は,他地域(諸外国)との社会関係や相互関係が世界規模で強まることによ
って,社会的空間が絶えず創出・編成・再編成されている社会,すなわち「 脱領域化と
再領域化が同時進行した結果構築された社会」と捉えることができる。このような認識
は,例えば 地理学や社会学など,空間の変容や空間相互の関係性を扱う分野において,
空間を所与のものと捉えず,発生,変化したり,互いに影響を与えたりするものとして
捉 え る 研 究 に よ る 。 そ の 発 端 は
1980 年 以 降 , ハ ー ヴ ェ イ (Harvey,D.1999)や ソ ジ ャ
(Soja,E.2003)といったポストモダンの文化・社会地理学者が,空間は社会的構築物であ
り,かつ社会も空間的に構築されるとし,空間論的転回を提唱したことに確認すること
ができる。これらに関してルフェーブル
(Lefevle,E.2000)
は,こうした社会的空間の生産
を理解するために,
「空間的実践」,
「空間の表象」,
「表象の空間」という三つの空間の次
元を認識することを提唱している(ルフェーブル
,
2000)。「空間的実践」とは,「知覚され
る世界」,すなわち高速道路や家屋の配置などといったそれぞれの社会構成体を特徴づけ
る特定の場所や空間配置などの物質的な空間次元である。
「空間の表象」とは,知・記号・
コードといった空間の言説に関わる空間の秩序であり,意識的に操作される思考される
空間,すな わち都市計画や地図製作にあたって構想される空間である。そして「表象の
空間」とは,象徴・映像・イメージを介して直接「生きられる空間」,すなわち芸術家の
表現する空間でありユーザーが生きられる空間である。ルフェーブルは,この三つの次
元の空間が互いにズレ・拮抗を繰り返す三次元的な弁証法の関係をとりむすびながら社
会的空間を生産していると捉えた。このようなルフェーブルの議論は,今日,地理学や
社会学等をはじめとして人文・社会科学において議論を活性化させる契機となっている。
例えば,澤・南埜(2006)は,インドのバンガロール近郊農村を事例に,開発途上国の農
村というローカルな空間が,経済のグローバル化によってどのように 変容しているのか
を空間スケールの社会・経済システムとの相互作用という視点で明らかにしている。具
体的には,グローバル化よってローカル・スケールである農村領域がナショナル・スケ
ールやリージョナル・スケールなどの上位の空間スケールにより大きな影響が与えられ
ている一方で,ローカル・スケールである農村領域が,空間の上位スケールへの統合が
進むほど,統合された空間のなかでの生き残りのため個々のローカルな条件にあわせた
機能特化を 迫られている現実を明らかにしている。換言すれば,グローバル化によりロ
ーカルな存在である農村をローカルな文脈から引き離し,時空間の無限の広がりに再構
築するが(脱領域化),同時にその再構築 された社会関係が,ローカルな文脈を再度利用
したり,作り直されたりしていく過程(再領域化)でもあることを明らかにしている。
このように現代社会は,グローバリゼーションの進展に伴い ,様々なスケールの重層
的・階層的構造を呈しており,その特徴は関係的であり,脱領域化と再領域化を絶えず
繰り返す動的な現象と捉えることができる。ゆえに,社会認識形成を担う社会科教育で
は,ある事象の顕在を,空間の重層性・階層性を軸に, 空間の生成またはその変容過程
を関係的・動的に捉えさせる授業が求められる。以上を踏まえ,本研究では,これらの
発想を小学校社会科第
3・4 学年地域学習に取り入れ,授業開発を行っていく。
(2) 小学校社会科第 3・4 学年地域学習の特質と課題
平成
20 年版小学校学習指導要領解説社会編 (文部科学省,2008)では,地域学習の内容
について「 地域の産業や消費生活の様子 ,人々の健康な生活や良好な生活環境及び安全
を守るための諸活動について理解できるようにし ,地域社会の一員としての自覚をもつ
ようにする。」と述べられている。具体的には,「 地域の人々の生産活動や販売活動の様
子には特色があることや ,県(都,道,府)内には特色ある産業があること 」等につい
て理解を深めることが求められている。また,これらの学習を通して, 地域社会の特色
やよさへの理解に基づいて ,自分たちの住んでいる地域社会に対する誇りと愛情を育て
るようにすること(態度目標)が最終的な目標として示されている。
このような目標を踏まえ,準拠版教科書(北俊夫ほか,2014)では,宮城県仙台市を事例
に地域の存在する農家または工場 の仕事を ,見学や調べ学習 を通して理解する内容構成
となっている。具体的に小単元「農業の仕事」では,「農家では,まがりねぎをおいしく
つくるために,どのような仕事をしているのでしょうか。」という学習問題のもと,①ね
ぎの栽培方法,②ねぎづくりの工夫,③ねぎの 出荷・流通 について学習する構成となっ
ている。このような学習の特質は,農業または工場に従事する人々の行為(「工夫や努力」)
と仕事の事実(内容)を, 共感的に理解することを通して, 地域の人々の生産活動や販
売活動の様子の特色を表面的に理解させようとする点に見出すことができる。
一方,このような学習を「社会的空間の変容」という視点から分析すれば,以下の2点
が課題として指摘できる。
第一に,社会は様々な空間スケールの相互作用に成立しているが ,教科書では空間ス
ケールの相互作用やその重層性を捉えさせる展開となっていない点である。具体 的には,
ある事例地のねぎ栽培もグローバル,ナショナル,リージョ ナル,または「空間的実践」,
「空間の表象」,「表象の空間」 等,様々な 空間スケールの相互に 影響し合いながら成立
している 現実を捉えさせる構成となっていないのである。 ゆえに事象を 網羅的・ 表面的
に理解することに留まっている。これらの課題を克服するためには, 例えば農家の仕事
の背後に潜む要因やその意味を 科学的に把握したり,異なる空間スケールから捉え直し
たりする学習を意図的に組込むことが有効であろう。
第二に, 取り上げられている事例地の空間が所与のものとして静態的に取り上げられ
ている点である。我々が生きる社会 的空間は,絶えず他次元の空間スケールの影響を受
けながら脱領域化したり再領域化したり動態的に変容している。例えば ,澤・南埜(2006)
のバンガロール近郊農村の事例がそうであったように ,現代における 社会的空間は,上
位スケールへの統合が進むほど,統合された空間のなかでの生き残りのため個々のロー
カルな条件にあわせた機能特化を迫られている。こ のような状況は何も インドの 農業に
限ったことではない。むしろ,グローバル化が進展する現代社会においては ,我が国の
どの産業分野でも同様の事態に遭遇している はずである。しかし ,準拠版教科書ではこ
のような空間の動態的な変容を 捉えさせる展開となっておらず, 空間(事例地) が所与
のものとして静態的に取り上げられている 。これらの課題を克服するためには, 例えば
地域住民として生きられる社会的空間(「表象の空間」)を「空間的実践」,
「空間の表象」
の空間次元から捉えさせたり,地域社会(ローカル)の事象をナショナルやグローバル ・
スケール といった広い空間スケールから捉え直させたりする学習を意図的に組込む こと
が有効であろう。その際,同時に空間が 形成される過程(空間的プロセス) を時間軸や
その他社会諸科学の視点等から多面的・多角的に 考察するよう留意したい。 なお,この
よ う に 空 間 の 変 容 や 空 間 相 互 の 関 係 性 の 理 解 を 目 指 す 授 業 構 成 に 関 わ る 発 想 は , 吉 水
(2011)や,地理教育先進国である英国地理教育における単元事例案
(
“Schemes of work”
)
(DfES,2007)
及び地理テキストブック(
Waugh,D.Bushell,T.2006
)から得た。
以上を踏まえ,社会的空間の変容を捉えさせる 小学校社会科第3・4学年地域学習の授業
モデルを開発していく。
(3) 授業モデルの開発
① 単元名「わたしたちのくらしと仕事-梨農家ではたらく人々(茨城県筑西市)」
② 単元目標(知識目標)
第
1 次: [産地形成に関わる空間的プロセスの把握]茨城県筑西市は,全国有数の梨
生産地の栽培が盛んである。梨栽培地としての筑西市が自然環境の適合 ,先人
(西村七郎平ら)の貢献,自治体による振興,市場での高評価を背景に実現し
ていることを地理(自然)的,歴史的,経済的視点から理解する。
【空間的プロセス,異なったスケール間との関係性 ,ローカル】
第 2 次: [苦労・工夫の背後に潜む意味や理由の科学的把握]筑西市の梨農家は,収
益を継続的・安定的に得るために ,収穫時期の異なる品種(ハウス栽培も含む)
を複数栽培したり,害虫や病気から梨を守るために定期的に消毒したりするな
ど様々な工夫を戦略的に実施していることを地理(自然)的,経済的,社会的
視点から理解する。
【異なったスケール間との関係性, ナショナル,ローカル】
第
3 次: [空間編成の動態的(再領域化・脱領域化)把握]筑西市の梨農家が直面し
ている問題を踏まえ,稲城市(東京都)や世羅町(広島県),下妻市(茨城県)
等 の 先 進 的 事 例 を も と に グ ロ ー バ ル 社 会 で の 生 き 残 る た め の 将 来 の 解 決 策 を
政治的,経済的,社会的から考察することができる。
【空間的プロセス,異なったスケール間との関係性,グローバル,ナショナル,ローカル】
③ 展開(全 10 時間)
次
小 単 元
学 習 内 容
○ 主 な 問 い
■ 獲 得 さ せ た い 知 識 【 ※ 視 点 】
→ 予 想 さ れ る 児 童 の 反 応
・ 資 料
1 筑 西 市 で 梨 栽 培 が 盛 ん な 理 由 (4 時 間 ) [ 産 地 形 成 に 関 わ る 空 間 的 プ ロ セ ス の 把 握 ] 1. 茨 城 県 筑 西 市 で 栽 培 し て い る 農 作 物 を 知 る 。 2. 学 習 問 題 を 把 握 す る 。 3. 学 習 問 題 に 対 し て 予 想 を 立 て る 。 4. 予 想 し た こ と を 発 表 す る 。 ○ 筑 西 市 に は 田 や 畑 が 多 い が ,ど の よ う な 作 物 を 栽 培 し て い る の だ ろ う か 。 ○ 市 の 特 産 物 と し て 指 定 さ れ て い る 農 産 物 は 何 で す か 。 ○ 学 習 問 題 に 対 す る 予 想 を ノ ー ト に 書 き な さ い 。 ○ ノ ー ト に 書 い た 予 想 を 発 表 し ま し ょ う 。 ※ 予 想 を 全 体 で 検 討 し ,仮 説 化 す る 。 → 小 麦 , ト マ ト , ピ ー マ ン , キ ク な ど → 米( コ シ ヒ カ リ ), そ ば , 梨 , 小 玉 ス イ カ な ど ■ 梨 は , 国 内 有 数 の 作 付 面 積 を 誇 る 大 生 産 地 で あ る ( 茨 城 県 第1 位 )。 → 仮 説 1… 筑 西 市 は 梨 づ く り に 適 し た 環 境 だ か ら か な 。 → 仮 説 2… 筑 西 市 で は 昔 か ら 梨 づ く り が 盛 ん だ っ た か ら か な 。 → 仮 説 3… 筑 西 市 の 梨 は 他 の 地 域 の 梨 と 比 べ 高 値 で 売 る か ら か な 。 ・ 農 林 水 産 省 HP 茨 城 県 筑 西 市 基 本 デ ー タ「 農 畜 産 物 の 生 産 状 況 」 ・筑 西 市HP( 農 作 物 ) 5. 仮 説 1 に 関 し て 資 料 を も と に 検 証 す る 。 ( 空 間 的 プ ロ セ ス , ○ 仮 説1 に つ い て 資 料 を も と に 調 べ な さ い 。 【 ※ 地 理 ( 自 然 ) 的 視 点 】 ・社 会 科 副 読 本 改 訂 委 員 会 編(2013)『 わ た し た ち の 【 学 習 問 題 】 ど う し て , 筑 西 市 で は 梨 栽 培 が 盛 ん な の だ ろ う か 。副 読 本 』 6. 仮 説 2 に 関 し て 観 光 協 会 の 方 の 話 を も と に 検 証 す る 。 ( 空 間 的 プ ロ セ ス , ロ ー カ ル ) ○ 仮 説2 に つ い て ,筑 西 市 観 光 協 会 の 方 に イ ン タ ビ ュ ー し て 調 べ よ う 。
【 ※
歴 史 的 視 点 】 ・筑 西 市 観 光 協 会 観 光 課 職 員 7. 仮 説 3 に 関 し て 資 料 を も と に 検 証 す る 。 ( 空 間 的 プ ロ セ ス , 異 な っ た ス ケ ー ル と の 関 係 性 ,ロ ー カ ル ) ○ 仮 説3 に つ い て ,資 料 や イ ン タ ー ネ ッ ト で 調 べ て み よ う 。筑 西 市 の 梨 と 他 の 地 域 の 梨 の 価 格 を 調 べ て 見 よ う 。 ○ 筑 西 市 で は ど の よ う な 品 種 の 梨 を 栽 培 し て い る の だ ろ う か 。 ○ 茨 城( 筑 西 )産 の 梨 の 値 段 と 他 の 産 地 の 梨 の 値 段 を 比 べ て み よ う 。 ○ 最 も 高 値 で 取 引 さ れ て い る 品 種 は 何 だ ろ う か 。 【 ※ 経 済 的 視 点 】 ■ 筑 西 市 で は ,「 幸 水 」,「 豊 水 」,「 あ か づ き 」,*「 新 高 」, *「 に っ こ り 」, * 「 恵 水 」 等 の 品 種 を 栽 培 し て い る 。 *は 県 オ リ ジ ナ ル 品 種 ■ 地 元 ス ー パ ー で , 茨 城 産 の 「 幸 水 」 は 398 円 , 他 産 地 の 「 幸 水 」 は 198 円 で 販 売 さ れ て い た 。 【 ※ 経 済 的 視 点 】 ■「 新 高 」( 贈 答 用 )…1 玉( 9L)2500 円 。 【 ※ 経 済 的 視 点 】 ・ 筑 西 市HP ・ス ー パ ー の チ ラ シ ・ 楽 天 「 新 高 」 2 梨 農 家 を 見 学 し て - 梨 農 家 の 仕 事 と 工 夫 - (3 時 間 ) [ 苦 労・工 夫 の 背 後 に 潜 む 意 味 や 理 由 の 科 学 的 把 握 ] 1. 前 時 の 学 習 を 振 り 返 る 。 2. 筑 西 市 の 梨 農 家 に 見 学 に 行 く こ と を 踏 ま え ,質 問 事 項 を 考 え る 。 3. 各 自 が 考 え た 質 問 を 発 表 す る 。 ○ 前 回 ま で の 学 習 を 振 り 返 り ま し ょ う 。 ○ 筑 西 市 の 梨 は ど の よ う に 栽 培 さ れ て い る の だ ろ う か 。梨 を 栽 培 し て い るA さ ん の 農 園 に 見 学 に 行 こ う 。 見 学 し た 際 に ,農 家 の 方 に 聞 い て み た い こ と を ノ ー ト に 書 き な さ い 。 ■ 省 略 ・ 筑 西 市HP 4. 梨 農 家 の A さ ん の 農 園 に 見 学 に 行 く 。そ し て ,梨 の 栽 培 方 法 及 び 事 前 に 考 え て き た 質 問 を 聞 く 。ま た ,A さ ん が し て い る 工 夫 や 努 力 の 意 味 や 理 由 に つ い て さ ら に 質 問 し ,理 解 を 深 め る 。 ( 異 な っ た ス ケ ー ル と の 関 係 性 ,ナ シ ョ ナ ル ,ロ ー カ ル ) ○ 梨 の 栽 培 方 法 と そ の 他 そ れ ぞ れ が 考 え た 質 問 に つ い て 聞 い て み ま し ょ う 。 → ど の よ う な 品 種 の 梨 を 栽 培 し て い る の で す か 。 → ど う し て , こ の 地 域 で は 「 幸 水 」を た く さ ん 栽 培 し て い る の で す か 。 → ど う し て ,複 数 の 品 種 の 梨 を 栽 培 し て い る の で す か 。 ■ 梨 栽 培 は ,10 月 下 旬 か ら 11 月 中 旬 ま で に 行 わ れ る 元 肥 ( 寒 肥 ) か ら 始 ま る 。 以 降 , 剪 定 → 誘 引 → 摘 蕾 ・ 摘 花 → 受 粉 → 摘 果 → 収 穫 → 選 果 の 順 で 栽 培 さ れ る 。【 栽 培 方 法 】 ■A さ ん の 農 園 で は 「 幸 水 」,「 豊 水 」, 「 新 高 」,「 新 興 」 の 4 種 類 の 梨 を 栽 培 し て い る 。 こ の 地 域 の 農 園 で は 栽 培 面 積 の 50%以 上 で 「 幸 水 」 を 栽 培 し て い る 。【 ① 】 ■ 「 幸 水 」 を た く さ ん 栽 培 す る の は , 市 場 で の 知 名 度 が 高 く 価 格 が 安 定 し て い る か ら で あ る 。 【 ※ 経 済 的 視 点 , 社 会 的 視 点 】 ■ 梨 は 品 種 に よ っ て 収 穫 時 期 が 異 な り , 種 類 の 異 な る 品 種 を 複 数 栽 培 す る こ と に よ り 収 穫 量 と 収 入 を 安 定 さ せ る こ と が で き る 。 ま た , 同 時 に 労 ・梨 の 農 事 暦(1 年 間 の 主 な 作 業 ) ・聞 き 取 り に よ る 調 査 ・ 梨 の 農 事 暦 ( 品 種 と 収 穫 時 期 ) ■ 筑 西 市 で 梨 栽 培 が 盛 ん な 理 由 は , 梨 栽 培 の 適 正 環 境 で あ る 年 平 均 気 温 が 12~ 16℃ , 年 間 降 水 量 が 1,200~ 2,000mm の 条 件 に 該 当 す る 環 境 で あ り , 昼 夜 の 寒 暖 差 が 大 き い 自 然 条 件 で あ る こ と が 関 係 し て い る 。ま た ,こ の 地 域 は 台 地 が 多 く や せ た 土 地 が 多 い た め , 穀 物 や イ モ 類 , 野 菜 類 な ど の 栽 培 に 適 さ な い こ と や ,1960 年 以 降 , 梨 栽 培 が 積 極 的 に 自 治 体 に よ っ て 振 興 さ れ た こ と( 農 業 構 造 改 善 事 業 に よ る 共 同 防 除 の 実 施 … 労 働 時 間 の 短 縮 , 省 力 化 ) , 梨 栽 培 の 収 益 性 の 高 さ へ の 注 目 な ど も 要 因 と し て 挙 げ ら れ る 。 ■ 茨 城 県 産 の 梨 は ,市 場 で 他 の 産 地 の も の と 比 べ 比 べ て 高 値 で 取 引 さ れ て い る 中 で も 贈 答 用 の 「 新 高 」 は , 最 高 級 の ブ ラ ン ド 梨 と し て 高 い 評 価 を 得 て お り , 1 玉 ( 9L) 2500 円 以 上 で 販 売 さ れ て い る 。 ■ 筑 西 市 で は ,1859年 ( 安 政 6年 ) 旅 人 宿 を 経 営 し て い た 西 村 七 郎 平 が 人 々 の 暮 ら し を 向 上 さ せ る た め に 特 産 物 と な る 換 金 作 物 の 開 発 ・ 普 及 を 考 え , 梨 栽 培 を 行 っ た こ と に よ っ て 栽 培 が 始 ま っ た 。 も と も と は 水 稲 栽 培 や 養 蚕 が 生 業 の 中 心 で 立 地 上 ( 台 地 ) , 水 田 を 所 有 す る 農 家 が 少 な く , 多 く の 農 家 は 収 入 に 恵 ま れ な か っ た 。 し か し , 梨 栽 培 が 行 わ れ る よ う に な り ,貴 重 な 収 入 源 が 確 保 で き る よ う に な る に 従 い ,梨 を 栽 培 す る 農 家 が 増 え , 梨 は こ の 地 域 の 特 産 物 と な っ て い っ た 。 ■ 明 治 時 代 以 降 は ,自 治 体 に よ り 梨 栽 培 が 振 興 さ れ て き た 。1960 年 代 以 降 に 梨 生 産 が 拡 充 さ れ , そ の 後 も 水 田 の 果 樹 転 作 な ど に よ り , 順 調 に 栽 培 面 積 を 拡 大 し , 全 国 を 代 表 す る 梨 産 地 と し て の 地 位 を 維 持 し て い る 。 ① ど の よ う な 品 種 の 梨 を 栽 培 し て い る の だ ろ う 。 ② 1 年 で 一 番 忙 し い 時 期 は い つ 頃 だ ろ う 。 ③ 美 味 し い 梨 を 作 る た め に 工 夫 し て い る こ と は ど ん な こ と だ ろ う 。 ④ 梨 を 収 穫 し た 後 , ど こ に 出 荷 し て い る の だ ろ う 。 等5. 梨 農 家 の 仕 事 と 工 夫 に つ い て 分 か っ た こ と や 気 づ い た こ と を ノ ー ト に ま と め る 。 → ど う し て ,露 地 栽 培 し て い る 梨 の 他 に ハ ウ ス 栽 培 し て い る 梨 が あ る の で す か 。 →1 年 で 一 番 忙 し い 時 期 は い つ 頃 で す か 。 → そ の 忙 し さ を ど の よ う に し て ,乗 り 切 っ て い る の で す か 。 → 梨 栽 培 で 工 夫 し て い る こ と は ど ん な こ と で す か 。 → 梨 を 収 穫 し た 後 ,ど こ に 出 荷 し て い る の で す か 。 → ど う し て ,収 穫 し た ほ と ん ど の 梨 を 農 協 や 市 場 に 出 荷 す る の で す か 。 ○ 梨 農 家 の A さ ん の 農 園 を 見 学 し て 分 か っ た こ と や 気 づ い た こ と を ノ ー ト に ま と め な さ い 。 ■ ハ ウ ス 栽 培 し て い る 梨 は 「 幸 水 」 で あ る 。「 幸 水 」は 市 場 で の 知 名 度 が 高 く 価 格 が 安 定 し て い る 。ま た ,「 幸 梨 」 は 加 湿 に よ り 収 穫 時 期 を 早 め る こ と が で き , 高 価 販 売 や 露 地 栽 培 の 梨 と の 労 働 力 を 分 散 す る こ と が 可 能 に な る か ら で あ る 。 【 ※ 経 済 的 視 点 , 社 会 的 視 点 】 ■7 月 中 旬 ~ 10 月 中 旬 の 収 穫 ・ 出 荷 時 期 が 最 も 忙 し い 時 期 で あ る 。【 ④ 】 ■ 家 族 ・ 親 戚 の 他 に 臨 時 労 働 者 を 雇 っ て 忙 し さ を 乗 り 切 っ て い る 。 ■ 安 定 し た 収 穫 量 と 品 質 を 維 持 す る た め に 4 月 ~ 10 月 に か け て 15 回 程 度 の 消 毒 作 業 を 行 う 。 ま た , 梨 を 生 の ま ま 食 べ ら れ る よ う に , 独 自 配 合 の 堆 肥 や 有 機 物 肥 料 等 を 使 っ た 土 づ く り や , 減 農 薬 栽 培 な ど , 味 や 安 全 の 追 求 に こ だ わ っ て 作 っ て い る 。 等 【 ③ 】 ■ 収 穫 し た 梨 の ほ と ん ど を 農 協 や 市 場 に 出 荷 し , 一 部 を 宅 配 や 直 売 所 で 販 売 す る 。【 ④ 】 ■ 筑 西 市 は 東 京 ・ 横 浜 ・ 埼 玉 等 の 都 市 部 の 大 消 費 地 に 近 接 し て い る 一 方 , 産 地 自 体 が 主 要 幹 線 道 路 や 観 光 地 か ら 遠 く , 直 売 に 向 い て い な い か ら で あ る 。 【 ※ 地 理( 自 然 )的 視 点 ,経 済 的 視 点 , 社 会 的 視 点 】 ・東 京 都 中 央 卸 売 市 場 に お け る 茨 城 産 梨 (「 幸 水 」) の 月 別 入 荷 量 と 価 格 ・聞 き 取 り に よ る 調 査 ・関 東 地 方 の 地 図 ( 縮 尺 1/100,000)
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梨 農 家 が 直 面 す る 課 題 と 解 決 策 (3 時 間 ) [ 空 間 編 成 の 動 態 的( 脱 領 域 化・再 領 域 化 ) 把 握 ] 1. 前 時 の 学 習 を 振 り 返 え る 。 2. 筑 西 市 に お け る 梨 の 品 種 別 栽 培 面 積 と 出 荷 量 の 推 移 を 見 て , 1990 年 以 降 , 栽 培 面 積 及 び 出 荷 量 が 減 少 し て い る こ と を 読 み 取 る 。 ( 空 間 的 プ ロ セ ス , ロ ー カ ル ) 3. 学 習 問 題 を 把 握 す る 。 4. 学 習 問 題 に 対 し て 予 想 を 立 て る 。 5. 資 料 を も と に , 検 証 す る 。 ( ナ シ ョ ナ ル ) ○ 前 回 ,A さ ん の 梨 農 園 を 見 学 し て わ か っ た こ と・気 付 い た こ と を 発 表 し ま し ょ う 。 ○ こ の グ ラ フ か ら ど の よ う な こ と が 読 み 取 れ ま す か 。 ○ 学 習 問 題 に 対 す る 予 想 を ノ ー ト に 書 き な さ い 。 ○ 配 付 す る 資 料 を も と に 予 想 し た こ と が 正 し か っ た か 確 か め な さ い 。 ■ 省 略 →1990 年 以 降 ,全 体 的 に 梨 の 栽 培 面 積 が 減 っ て い る 。 → 栽 培 面 積 に 関 し て ,1975 年 に は 最 も 多 か っ た「 長 十 郎 」が1995 年 に 無 く な り , そ れ 代 わ り に 「 幸 水 」 と 「 豊 水 」 が た く さ ん 作 ら れ る よ う に な っ た 。 → 出 荷 量 は 急 激 に 増 加 し た り , 減 少 し た り し て い る 年 が あ る が , 全 体 的 に 減 少 し て い る 。 → 農 家 の 仕 事 が 大 変 だ か ら で は な い か な 。 → 農 業 を し よ う と い う 若 者 が 減 っ た か ら で は な い か な 。 ■ 農 業 就 業 人 口 と 農 業 戸 数 は , 年 々 減 少 し て い る 。 ま た , 平 均 年 齢 は 高 齢 化 が 進 ん で い る 。 そ の 背 景 に は 後 継 者 不 足 ( 農 業 を 職 業 と し て 選 択 す る 人 の 減 少 し た こ と ),重 労 働 で 得 ら れ る 農 業 収 入 と 農 業 以 外 で 得 ら れ る 収 入 と の 差 が 埋 ま ら な い か ら で あ る 。 【 ※ 社 会 的 視 点 】 ・筑 西 市 に お け る 梨 の 品 種 別 栽 培 面 積 と 出 荷 量 の 推 移 ・農 業 就 業 人 口 と 平 均 年 齢 の 推 移( 農 業 セ ン サ ス ) ・農 家 戸 数 の 推 移( 農 業 セ ン サ ス ) ・ 生 源 寺 眞 一 (2011) 『 日 本 農 業 の 真 実 』 6. 農 業 就 業 者 人 口 が 減 少 及 び 高 齢 化 に よ る 筑 西 市 の 梨 栽 培 の 帰 結 を 考 え る 。 ( 異 な っ た ス ケ ー ル と の 関 係 性 ,ナ シ ョ ナ ル ,ロ ー カ ル ) 7. 栽 培 面 積 や 出 荷 量 の 減 少 の 中 で , ○ こ の ま ま 農 業 就 業 者 人 口 が 減 少 し , 高 齢 化 が 進 め ば ,筑 西 市 の 梨 は ど う な る だ ろ う か 。 ○ こ の よ う な 状 況 を 克 服 す る た め に ,稲 城 市( 東 京 都 ) → さ ら に 梨 の 栽 培 面 積 と 出 荷 量 が 減 少 し 続 け る 。 ■ 稲 城 市 ( 東 京 都 ) で は , ブ ラ ン ド 戦 略 と し て 高 品 質 生 産 を 行 う た め の 徹 ・ 宮 地 忠 幸 (2006)「 改 正 【 学 習 問 題 】 ど う し て , 筑 西 市 で は1990 年 以 降 , 梨 の 栽 培 面 積 と 出 荷 量 が 減 少 し て い る の だ ろ う か 。を 目 指 し て 取 り 組 ん で い る 地 域 の 事 例 を 理 解 す る 。 ( 異 な っ た ス ケ ー ル と の 関 係 性 ,グ ロ ー バ ル ,ナ シ ョ ナ ル , ロ ー カ ル ) 8. 他 地 域 で 行 っ て い る 先 進 的 な 事 例 の 理 由 に つ い て 考 え る 。 ( 異 な っ た ス ケ ー ル と の 関 係 性 ,グ ロ ー バ ル ,ナ シ ョ ナ ル , ロ ー カ ル ) 市( 茨 城 県 )で は 様 々 な 工 夫 を し て い ま す 。 そ れ ぞ れ ,ど の よ う な 取 り 組 み を し て い る の か 見 て み ま し ょ う 。 ○ ど う し て ,稲 城 市 や 世 羅 市 で は ブ ラ ン ド 化 を 目 指 し て い る の だ ろ う か 。 ○ ど う し て ,世 羅 市 や 下 妻 市 で は ,第6 次 産 業 化 を 目 指 し て い る の だ ろ う か 。 に お け る 厳 し い 検 査 基 準 の 設 定 , 農 協 に よ る チ ラ シ や 新 聞 折 り 込 み 広 告 の 作 成 ・ 配 付 と い っ た 広 報 活 動 を 通 じ て , 稲 城 産 の 梨 に 付 加 価 値 を つ け た 販 売 を 行 っ て い る 。 【 ※ 経 済 的 視 点 , 社 会 的 視 点 】 ■ 世 羅 町 ( 広 島 県 ) で は , 生 産 者 ・ 自 治 体・農 協 の 連 携 に よ る「 世 羅 高 原6 次 産 業 ネ ッ ト ワ ー ク 」 を 設 立 す る こ と を 通 し て , 地 域 産 品 ・ 加 工 品 の 開 発 や 新 事 業 の 創 出 な ど 農 業 振 興 に 取 り 組 ん で い る 。 【 ※ 政 治 的 視 点 , 社 会 的 視 点 】 ■ 下 妻 市 ( 茨 城 県 ) で は , 地 元 の 下 妻 甘 熟 梨 を リ キ ュ ー ル や 梨 ジ ャ ム , 大 福 餅 へ と 加 工 ・ 販 売 し た り ( 第 6 次 産 業 化 ),ア ジ ア の 富 裕 層 を 対 象 に 高 級 梨 と し て 輸 入 し た り す る こ と を 通 し て 販 路 の 拡 大 に 取 り 組 ん で い る 。 【 ※ 政 治 的 視 点 , 経 済 的 視 点 】 ■ ブ ラ ン ド 化 を 目 指 す の は , 商 品 価 値 を 高 め , 確 実 に 利 益 を 上 げ る た め 。 【 ※ 経 済 的 視 点 】 ■ 第 6 次 産 業 化 の 利 点 は , ① 農 産 物 を そ の ま ま で は な く 調 理 ・ 加 工 ・ パ ッ ケ ー ジ 化 し て 販 売 す る の で 市 場 の 卸 価 格 に 左 右 さ れ る こ と な く , 安 定 し た 利 益 が 得 ら れ る 。 ② 他 の 産 地 の 同 じ 農 産 物 と 差 別 化 ( 付 加 価 値 ) を 図 る こ と で , 高 値 で 取 引 さ れ る 。 ③ 加 工 か ら 販 売 に 至 る 中 間 コ ス ト を 削 減 す る こ と が で き , 利 益 を 増 大 さ せ る こ と が で き る 。 ④ 法 律 上 の 特 別 措 置 や 自 治 体 か ら 様 々 な 援 助 が 得 ら れ る 等 が 挙 げ ら れ る 。 農 家 は こ れ ら の 利 益 を 享 受 す る た め に 6 次 産 業 化 を 目 指 し て い る 。 【 ※ 政 治 的 視 点 , 経 済 的 視 点 , 社 会 的 視 点 】 度 下 に お け る 都 市 農 業 の 動 態 ― 東 京 都 を 事 例 と し て ― 」 ・ 世 羅 町HP ・ 平 成 23 年 度 地 域 活 性 化 ガ イ ド ブ ッ ク ・NHK「“ 甘 熟 梨 ”で 販 路 の 拡 大 め ざ す 」 2013 年 10 月 4 日 放 映 ・ 上 田 祥 子 編 (2013)『 農 業 ビ ジ ネ ス マ ガ ジ ン 』 Vol.3, イ カ ロ ス 出 版. 9. 今 後 , 筑 西 市 の 梨 栽 培 を 継 続 的・安 定 的 に 行 っ て い く た め の 方 策 に つ い て 先 進 的 な 事 例 先 行 事 例 を も と に 考 え る 。 [ 未 来 予 測・価 値 判 断 ] ○ 今 後 ,筑 西 市 の 梨 栽 培 が 生 き 残 っ て い く た め に は ,ど の よ う な 取 り 組 み を 行 っ て い け ば よ い の だ ろ う か 。 稲 城 市( 東 京 都 )や 世 羅 町 ( 広 島 県 ), 下 妻 市 ( 茨 城 県 )の 取 り 組 み を 参 考 に し て 自 分 の 考 え を ノ ー ト に 書 き な さ い 。 ■ 省 略