公共部門における環境会計の展開 : オーストラリアの事例を中心として
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(2) 148 (148). 横浜経営研究 第24巻 第1・2号(2003). ドイツ,イギリス,日本などにおいて,ミクロ. これまでにわが国では,1999年に東京都水道. 領域での取り組みが散見される.こうした動向. 局が公共部門として初めて環境会計1青報を公表. は,公共部門における環境会計の今後の展開の. したのを皮切りに,13の自治体の水道局等,お. 兆候としてみることができる.. よび5つの県や市において環境会計が行われて. 公共部門の代表格である地方自治体(以下,. いる.自治体に限らず,日本政府の環境会計が. 自治体と記す)は,住民の福祉向上という重大. 経済企画庁(現 内閣府)によって,また,富. な任務を負っており,住民の福祉に直接的な影. 山県と北海道の一地域経済を会計実体とする環. 響を及ぼす環境問題については特別な配慮をす. 境会計が研究者の手によって試算されている.. る必要がある.このことは,わが国に限らず,. こうした実際の取り組みは,自治体の測定対. 本稿で取り上げるオーストラリアをはじめとす. 象とする範囲の違いから①庁舎管理型環境会計,. る諸外国においても同様である.自治体は,住. ②地域管理型環境会計および③庁舎管理・地域. 民の福祉向上を目的として,環境面での実績を. 管理統合型環境会計に大別される5).庁舎管理. 意味する環境パフォーマンスを行政区域におい. 型環境会計とは,「公共部門に属する組織の本. て向上させるための政策を立案し,それに基づ. 庁,支所および出張所などの庁舎を中心とした. く施策・事務事業を遂行している.こうした一. 環境保全活動に関わる環:境会計6)」を指し,現. 連の活動を環境行政と呼ぶならば,環:境会計は. 在のところ,水道局や下水道局といった公的事. 環境行政の運営に役立つ情報を提供する手段と. 業を含む部局によって行われている環境会計が. して位置づけられる必要がある.. この類型に相当する.また,地域管理型環境会. 本稿では,オーストラリアにおける公共部門. 計とは,公共部門の管轄する行政区域全体を対. の環境会計の取り組みを概観し,わが国の公共. 象とした環境会計を指す.さらに,庁舎管理・. 部門,特に自治体における環境会計の展開に資. 地域管理統合型環境会計は,上記の2つの類型. する有益な示唆を引き出すことを目的としてい. を統合したものを指し,横須賀市や岩手並等の. る.したがって,以下では,わが国の公共部門. 取り組みが該当する.例えば,自治体において. における環境会計の取り組みを類型化した上で,. 環境保全のために投入した資源を費用として計. オーストラリアの事例を紹介し,その役立ちと. 上し,その結果どして行政区域全体での効果を. 問題点を明らかにし,最後に,わが国の取り組. 物量や貨幣額で表示するものがある.. みへのフィードバックを試みたい.. 以前,筆者は,自治体における環境会計にお. 2.わが国公共部門の環境会計の諸類型. いて,地域管理型環境会計および庁舎管理地域 管理統合型環:境会計の重要性を指摘した7).な. わが国においては,1993年に国の環境基本法. ぜなら,行政区域の環境パフォーマンスの向上. が制定されて以来,多くの自治体において環境. を目的として行われる環境行政への資源のイン. 基本計画や率先行動計画が策定されており,そ. プットとそこから得られたアウトプット,およ. れらを達成するための具体的な行動計画もまた. びその結果であるアウトカムとを識別できる可. 策定され始めている.こうした動向を受け,わ. 能性があるのは地域管理の視点を有する環境会. が国の自治体による環境保護に向けた会計的対. 計だからである.したがって,次節では,地域. 応として環境会計が行われ始めている.ここで は,以下で考察するオーストラリア自治体の取 り組みを分析するために,まずわが国公共部門 における環境会計の類型を明らかにしておきた い.. 5)河野正男(2002)pp.123−149および(2003) pp.171−183.. 6)河野正男(2003)p.171. 7)大森明(2003).
(3) 公共部門における環境会計の展開(大森 明). (149) 149. 管理への役立ちを見据えたマクロ環境会計とそ. Economic Accounting:SEEA)や「環境勘定. の役立ちついて検証する.. を含む国民会計マトリックス」(National. 3.環境会計の政策意思決定への役立ち. Accounting Matrix including Environmental. Accounts:NAMEA)のように,上記類型を統. 自治体が行う環境行政は,行政区域内の環境. 合したシステムが提案され,各国や各自治体等. パフォーマンスの向上を目的として行われ,そ. で試算が行われていることから,環境勘定の作. の結果として住民の福祉に寄与することが求め. 成においてより包括的な情報を政策立案者に提. られる.したがって,自治体という一つの経済. 供することを指向してきていると考えられる.. 主体を会計実体とした庁舎管理型環境会計を追 及するだけでなく,環境行政の実施のために必. 特に,SEEAは,1992年に開催された国連環境 開発会議(通称,地球サミット)において採択. 要とされる政策立案に有用な情報を提供する枠. された『アジェンダ21』においてその開発と作. 組みとして地域管理に資する情報が必要となる.. 成が勧告されたことから,現在までに,多数の. 地域管理に役立つ情報としては,マクロ環境会. 国や地域においてその試算が行われている.. 計領域における環境勘定を考察することがカギ となる.したがって,以下では,当該領域にお. SEEAは,国連から1993年に公表された『国 民会計ハンドブック 環境・経済統合会計』に. いて,どのような環境会計システムまたは環境. おいて初めて提唱された.そこでは,SEEAは,. 勘定が,どのような政策意思決定に役立ちうる. 「経済活動によって生じた環境の変化を監視し,. かという点を整理しておく.なお,環境会計と. 経済面と環境面を統合した政策に向けた(デー. 環境勘定という用語は,「会計」が行為ないし. タ面での)基礎となること9)」を目的としてい. システムを指すのに対し,「勘定」は「会計」. る.このことは,従来のマクロ会計による情報. という行為の過程で作成される計算書を指すと. (国民所得勘定,投入産出表,資金循環勘定,. 捉えることができる.. 国際収支表および国民貸借対照表)が,経済構. マクロ環境会計の領域における環境勘定作成. 造と市場経済の発展を分析し,短期的・長期的. のアプローチの分類については,論者によって. 経済政策の立案に役立つことを目的としている. 多様であるが概ね,①(狭義の)自然資源勘定,. ため,環境問題を考慮した政策意思決定が行い. ②資源と汚染物質のフロー勘定,③環境支出勘. 得ないという状況を反映している10).すなわち,. 定,④環境変化の貨幣価値による評価,および. SEEAによるマクロ環境会計情報は,中央政府. ⑤国民経済計算の代替的集計値に類別される8).. と自治体の政策意思決定において活用すること. ①と②は物量単位,③∼⑤は貨幣単位によって. および政策の効果を測定することが期待されて. 測定される.表1は,これらの環境勘定の概要. いるのである.以上から,公共部門の環境会計. とその政策意思決定等への利用用途を一覧表に.. においては,行政区域の管理に役立つ情報の提. したものである.. 供が求められ,この理由から,地域管理型環境. 表1から分かるように,マクロ環境会計領域. 会計の有用性が指摘されうる.. において現在作成されている環境勘定は,それ. 本稿で考察の対象とするオーストラリアの自. ぞれ政策立案への利用が期待されている.ただ. 治体の環境会計は,国家政策立案を目的とした. し,現在では,「環境・経済統合会計」. 環境勘定の作成に向けてオーストラリア統計局. (System for Integrated Environmental and. 9)United Nations(1993)paragraph 73.. 8)環境庁環境勘定検討会(1998)p.5.. 10) Ibid., paragraph 70..
(4) 横浜経営研究 第24巻 第1・2号(2003). 150 (150). 表1 環境勘定の将来的・潜在的な利用用途 勘定のタイプ. 勘定の概要. 将来的または潜在的な利用用途. ①(狭義の)自然資. ・自然資源資産の価値組. a)資源管理 ・資源の物理的希少性や枯渇の評価(特定資源の戦略的な維持確保にか かる政策決定に際し重要な入力要素)自然資源資産の勝ち組み込み.. 源勘定(物量単位). み込み.. ④環境変化の貨幣価 値による評価(貨幣. ・自然資源の期首,期末. 単位). ・物量ベース/(可能な. ストック/フロー.. らば)貨幣ベース. ・資源枯渇の評価.. ・経験的な過剰採掘の証明.. ・財産保有制度,使用料制度などの各種政策的対応案の編出.. ・資源部門の経済的パフォーマンスの分析や政策策定・資源部門の生産 性評価.. ・持続的発展に向けた政策を評価する際の,国富の統計の尺度. ・自然資産と生産された資産のバランスで発展のあり方を模索.. b)環境劣化の影響評価 ・環境の質の劣化が経済に及ぼす効果を,これらの資源の損傷として評 価.. ・汚染物質の削減量・規制量の最適レベルを決定する際の入力情報.. ②資源及び汚染物質 のフロー勘定(物量. ・自然資源や汚染物質の. 単位). ・投入産出勘定を物量単. 物量フローを扱う. 位で記述したもの.. a)政策による負荷低減の予測 ・環境規制や環境税の適用(負担)範囲の評価. ・排出税の税率算定(勘定を用いた一般均衡モデルで概算税率の算:定) ・マクロ経済モデルとの連結による環境影響評価.. ・部門毎の利用効率の測定.単位GDPあたりの全体効率の産出. ・資源利用の有効1生を検証するモデルの構築.[例:エネルギー・アナ リシス]. ・貿易政策と特定貿易構造に関連した環境負荷との関係表示.. ③環境支出勘定(貨 幣単位). ・環境の保護や改善の為 の支出の詳細なデータ. ⑤代表的な国民経済 計算の集計値(貨幣. ・いわゆる 「グリーン GDP」. 単位). ・『資産』の概念拡張.. から成る.. 自然資源や環境を包含.. ・『国富』の評価方法の 拡張.非生物及び生物 資源ストックの価値を 含む(自然資産ストッ クの物量的変化問題と 自然資産の価値変化と の結合).. ・持続的発展の政策を最 も総合的に評価し得る 尺度.. (出所:環境庁環境勘定検討会(1998)p.11より加筆修正). ・貿易や開発政策による純便益の予測.最大便益を得るための政策調整. ・経済発展,産業政策,環境に及ぼし得る影響との関連づけ. ・環境保全に係る経済的負担やその効果の評価. ・環境規制や税に関する経費の部門別分布の推定,公平性の判断情報. ・汚染物質の単位当りの除去コスト算定. ・持続可能な発展への進展度合いを計る指標, ・政策が持続可能性に与える影響..
(5) 公共部門における環境会計の展開(大森 明). (151) 151. (Australian Statistic Bureau:ABS)によって. ズを損なうことなく,現在世代のニーズを充足. 主導されているため,マクロ環境会計とミクロ. すること’2)」という定義と首尾一貫している.. 環境会計との架橋の役割を果たすことが期待さ. NSESDにおいては,この目的に沿う7つの基. れる.. 本方針を打ち出している(表2参照).この基 4.オーストラリアの公共部門. における環境会計の背景. 本方針を充足させるべく,連邦政府において, さまざまな政策が立案・実行されてきている.. その1つの流れとして,1992年にオーストラ. オーストラリア連邦政府(以下,連邦政府と. リア連邦議会に提出された両院決算委員会. 記す〉は,地球サミットでの持続可能な発展. (Joint Committee on Public Accounts:以下,. (Sustainable Development)に向けた国際的コ. JCPAと記す)による「連邦政府機i関および政. ンセンサスの形成を受け,同年に「生態的持続. 府公営企業の社会的責任」(Social. 可能な発展に向けた国家戦略」(NationaI. Responsibilities of Commonwealth Statutory. Strategy for Ecologically Sustainable Development,以下, NSESDと記す〉を叢平. Authorities and Government Business. した.NSESDは,「生態的持続可能な発展」を. 共部門に対して以下の事柄が要求されている13).. 「人類が依存している生態系が維持され,そし. ①自己の負う環境責任の全領域に関係する声. て現在及び将来にわたってクオリティ・オブ・. 明(statements)を年次報告書に含めるこ. ライフが高まるように,地域の資源を使用,保. と.. 全および増強することll)」と定義している.. ②現在の最良の実務を採用したかを示すこと.. NSESDは,国の発展に対して持続可能なアプ. ③主な環境影響をもたらすどの活動がモニタ. ローチを取るに際し,「オーストラリア,国際. 一されているかを示し,その方法と達成さ. 社会および生物圏に対する意思決定と行動にお. れた結果を報告すること.. いてより広範な経済的,社会的および環境的な. ④政府機関と政府公営企業は,政府機関の計. 含意を,それらを統合した形で考慮する必要が. 画立案過程に環境配慮を組み入れ,主要な. ある」および「その際に,短期的視点よりも長. 環境影響に関するモニタリング,監査およ. 期的視点を採用する必要がある」という2つの. び報告のための適切な計画システムを確立. 点を強調している.さらに,NSESDの目的と. すること.. 基本方針は表2のようにまとめられる.. 以上の4点から,オーストラリアにおける公. NSESDの目的は,持続可能な発展の定義と. 共部門は,自己の活動の経済的生態的影響を何. してしばしば引き合いに出される「環境と開発. らかの方法で識別し,それを適切に利害関係者. に関する世界委員会」による「将来世代のニー. たる住民および連邦政府に対して報告すること. Enterprises)という報告書がある.そこでは,公. が要求されていると解釈することができる.. 政府による当該規則は連邦機関に対するもの ll)Colnmonwealth Australia,!>α加ηα」5〃α∫68yプ∂r. EcoZo81cα」5嘘α1ηαわ16 Dεv810ρ膨瑚partl.当該資料は. オーストラリア環境局(Environment Australia)の次. であったが,その動向は州政府にも影響を及ぼ した.例えば,ニューサウスウェールズ州(以下,. のURLより入手.(http:〃www.ea.gov.au/esd/national/. NSW州と記す)の環境保護管理法(Protection. nsesd/strategy/intro.html)(平成15年5月2日現在).. of the Environment Administration Act l991). なお,NSESDに関する本文の記述は,当該URLより 入手した.. 12)World Commission on Environment and Development(1987)p.43.. 13)Joint Co㎜ittee on Public Accounts(1992).
(6) 152 (152). 横浜経営研究 第24巻 第1・2号(2003). 表2 NSESDの目的と基本方針 目 的. ・将来世代の福祉を保護する経済発展の道を辿ることによって,個人と地域社会の幸福と福祉を高めること, ・世代内および世代間の衡平を提供すること,. ・生物多様性を保護し,重要な生態系と生命維持システムを保持すること. 基本方針. ・意思決定プロセスは,長期的および短期的双方の経済,環境,社会および衡平の考慮を効果的に統合しな ければならない.. ・深刻または取り返しのつかない環境損傷の脅威にさらされているとき,環境破壊を防止する手段を引き伸 ばす理由として十分な科学的根拠の欠如をあげるべきではない. ・行動と政策の環境影響について,グローバルな視点が認識され考慮されるべきである.. ・環境保護の能力を増強しうる強力で,成長する,多様化した経済を開発する必要があることを認識すべき である.. ・環境に適合した方法で国際競争を保持し強化する必要性を認識すべきである.. ・改善された評価方法,価格設定方法およびインセンティブ機構などのコスト効率的で柔軟な政策用具が採 用されるべきである.. ・地域社会に影響を及ぼす諸問題に対してより広範な地域社会め参加を促すために,意思決定と行動が行わ れるべきである. (出所:http://www.ea.gov.au/esd/national/nsesd/strategy/intro.html). のセクション10において,地方自治体は,3年. が,後述するように,現状ではまだそれを取り. ごとに環:境状態(State of the Environment). 入れた自治体は少ない.また,同州の地方自治. の報告を行うことが義務づけられている.同法. 体法(Local Government Act l993 No.30)セ. では,環境状態報告の媒体として環境状態報告. クション428(2)においては,地方自治体に対. 書(State of the Environment Report:SoER). して年次報告書において財務諸表の作成・公表. があげられており,そこでは以下のような情報. を要求するとともに,行政区域の環境パフォー. を包含するよう求められている(同法セクショ. マンスデータを集約した環境状態の情報の掲載. ン10(3)).. を求めている.さらに,同州の環境保護局. ・主要な環境資源の現状の評価,環;境の動向の 検証,. ・自治体による施策・事業の検証と環境保護に 関連する民間部門の検証,. ・経済分析の傾向と環境保護のコストとベネフ ィットの検証,. (Environmental Protection Authority)では,. 民間部門に対して自己の環境パフォーマンスデ ータを集約した環境報告書の作成を奨励してい る14).. 連邦政府と州政府によるイニシアティブを受 け,環境報告,環境マネジメントおよび環境会. ・環境保護iに関する自己の責任を解除すること. 計がオーストラリアの公共部門において普及し. を目的とした将来の法制化や活動への一般的. はじめている.ここで,オーストラリアの公共. 意見,および. 部門におけるこうした領域に関わる若干の先行. ・環境教育プログラムのパフォーマンスについ. 研究について紹介しておこう.. ての声明.. 上記報告書においてコストとベネフィットに. 14)New South Wales Environmental Protection. 関わる情報の提供が含まれている点が興味深い. Authority (1997).
(7) 公共部門における環境会計の展開(大森 明). (153) 153. まず,Gibson and Guthrie(1995)は, NSW州の公共部門の環境報告に関する実証研. ⑤リサイクル,浄化,環境政策,環境影響評. 究を行っている.そこでは,同州における20の. 練の領域のうち,教育・訓練に関するディ. 公共部門による年次報告書を標本として調査し,. スクロージャーが最も多かった.. そのうちの55%が何らかの環境ディスクロージ. 最後に,Frost and Seamer(2002)では,. ャーを行っていたが,その約半数は1ページ程 度のものであったという.また,36%が何らか. NSW州の137の公共部門に属する機関に質問状 を送り,35機関からの有効回答をもとに実証分. の財務情報を提供していた15).. 析が行われている.そこでの研究目的は,組織. また,Burritt and Welch(1997)では,オ. 内部の環境マネジメント実務の発展と年次報告. ーストラリア連邦政府機関の1984年から1993年. 書における環境ディスクロージャーの水準との. までの環境報告の実務に関する実証研究を行っ. 関連性を検証すること,および正当性のプロセ. ている.そこでは,年次報告書を作成している. スが,組織の政治的透明性によって影響された. 191の連邦政府機関のうち,1984年からユ993年. か否かを検証することであった.最初の研究目. までに年次報告書において環境ディスクロージ. 的については,スピアマンの順位相関係数を用. ャーを行っている60の機関を標本として実証分. いて分析が行われ,そこでは環境マネジメント. 析が行われている.彼らは,まずこれらの機関. の発達水準が年次報告書における環境ディスク. を予算配分機関(budget entities)と独立採算. ロージャーと有意に相関していたことが明らか. 機関(non−budget entities)に分類し,両者の. にされた.したがって,環境報告にあたっては,. 環境面でのアカウンタビリティの遂行状況の分. 内部管理システムの充実が必要であることが指. 析を試みている.10年間の年次報告書における. 摘される.しかし,環境会計実務と環境ディス. 環境ディスクロージャーの分析を通じて,以下. クロージャーとの関連性は見出されなかった.. の事柄が明らかにされた16).. 政治的透明性を通じて正当性のプロセスが影響. ①調査対象期間を通じて環境ディスクロージ. されることに関しては,政治的透明性を表す4. ャーの量が増大してきている.. つの代理変数(企業規模を表す総資産額,企業. ②1989年以降,予算配分機関のディスクロー. 規模を表す従業員数,環境影響度を表す環境敏. ジャー量の方が独立採算機関に比べて大き. 感性,および公共への資金の依存度から分類し. い.. た資金拠出源)を用いている.その結果,環境. ③外部ディスクロージャーに比べ内部ディス. 敏感性が高く資金拠出源が政府依存型であるほ. クロージャーが予算配分機関において増加. ど,年次報告書における環境ディスクロージャ. している.. ー水準が高いことが明らかになった.さらに,. ④独立採算機関のほうが,予算配分機関より. 環境敏感度が高く,企業規模が大きいところは,. も内部活動に関する環境情報をディスクロ. 環境マネジメントシステムが発達していること. ージャーしていないことは,環境問題が重. も実証された17).. 価,エネルギー,環境研究および教育・訓. 要性を増す一方で商業的圧力によってディ. 以上,簡単にオーストラリアの公共部門の環. スクロージャーが制約されていることを示. 境マネジメント,環境会計および環境報告に関. 唆している.. する先行研究を概観してきた.いずれも,近年 企業で行われている環境ディスクロージャーや. 15)Gibson and Guthrie (1995)pp.118−121.. 16)Burritt and Welch(1997)p.15.. 17)Frost and Seamer(2002)pp.l15−120..
(8) 154 (154). 横浜経営研究 第24巻 第1・2号(2003). 環境会計の水準には遠く及ばない.その理由は,. Local Government)プロジェクト19)を立ち上. 先行研究の調査対象期間がISOI4001が発行さ れる以前であり,また,国連やGRIなどの国際 機関による環境会計や環境報告の研究が進展す. げた.当該プロジェクトは,1995−96年度, 1998−99年度および1999−2000年度において実施. る以前であったことに起因している.したがっ. 類し,統合することにある.具体的には,ABS. て,これらの先行研究は,今のデータに基づい. によって当該プロジェクトが実施されたため,. された.その目的は,環境会計実務の展開を分. て再び行われる必要があると考えられる.. 以下では,ABSにおける公共部門の環境会計の. 以下では,これらの先行研究が対象とした期. 取り組みを中心に議論する.. 間以降の公共部門による取り組みを考察するこ. ABSでは,上記のNORGのプロジェクトを受 け,1990年中ごろから環境・自然資源調査 (Environment and Natural Resources. とから,オーストラリアにおける公共部門の環 境会計の進展状況を理解することができよう.. survey20))に着手した.この調査は,国連から. 5.オーストラリア国家地方政府局. 1993年に発表されたSEEAに沿って環境保護に. によるイニシアティブ. 関わる推計値を収集するというものであり,ま. 5.1 オーストラリア統計局による環境勘定作. 成の試み オーストラリアの公共部門における環境会計 を促す要因の一つとしてあげられるのが,オー. ストラリア国家地方政府局(Australia National Office of Local Government:NORG). が行っているイニシアティブである.. NORGは,連邦政府と地方政府間の緊密な連 携を図り,地方レベルで連邦政府の目的を遂行 する支援を行う連邦機関である.NORGはまた, 地方政府に関する独立した専門的諮問を連邦政 府に対して行う責任を有している18).. NORGでは,オーストラリア統計局(ABS),. 環境・文化遺産省(Department of Environment and Heritage),670の地方政府. およびコンサルタント会社のGreen Measures 社と協働して「地方自治体における環境会計フ. レームワークの適用」(Applying. た,そこで用いられる概念フレームワークは, 欧州統計局(Eurostat)から発表された「環境 に係わる経済情報収集に関する欧州連合体系」 (European Union’s European System for the. Collection of Economic Information on the. Environment:SERIEE)に基づくものである. 環境に関わる活動については,特にSERIEEに おいて提案されている分類,つまり「環境保護」. (environmental protection)と「自然資源使. 用・管理」(natural resources use and management)が用いられている. ここで,環境保護活動とは,「汚染やあらゆ る環境破壊の防止,削減および除去を目的とし たすべての行動および活動21)」であり,また,. 自然資源管理活動とは,水資源および,森林資 源,地下資源,エネルギー資源などのその他の 資源の管理,および環境保護支出勘定でカバー されなかった部分に対するリサイクルと修復活. Environmental Accounting Framework in. 動22)を指す.ABSは上記の分類に依拠して, 自治体および民間部門からこれらの活動に関わ. 18)オーストラリア国家地方政府局の次のURLよ. 20)Australian Bureau of Statistics(1999)p.77.な. り.http://www.nolg.gov.au/aboutus.htm(2003年5月4日. お,この調査は,自治体のみを対象としているので. 現在). はなく,一般産業部門も対象としている,. 19)当該プロジェクトの説明は,United Nations. 21)Statistical Office of the European Communities. Division for Sustainable Development(2002)pp.47−49. Eurostat (1994) p.30.. に基づく.. 22) Ibid., p.26..
(9) 公共部門における環境会計の展開(大森 明). (155) 155. る費用と収益の情報を収集し,統計的に集計を. づけ,自治体の環境勘定が,連邦政府,州政府. 行っている.元来,環境に関連する費用(支出). および自治体,さらにはその他自治体の環境管. を統計的に収集するシステムとしては,汚染防. 理に関心を有する人々の政策決定や意思決定に. 除支出(Pollution Abatement and Control. 有用であるとしている24).ABSが自治体から収. Expenditures:以下, PAC支出と記す)勘定. 集した情報に基づいて作成した国の環境勘定は,. があり,ABSは1990−91年度および1991−92年度. 環境保護勘定と自然資源勘定である.これは,. にかけて収集をした経験:がある.しかし,そこ. で集計されていた情報は公害への対応を主眼と. SERIEEにおいて両者の勘定の作成が推奨され ているためである.環境保護勘定は,上で定義. していたため,今回ABSが取り組んだSERIEE. した環境保護活動にかかわる費用と収益とを表. に依拠して収集した情報よりも限定的であった.. 示するものである.この活動は,環境保護活動. ABSは, SEEAとSERIEEに基づく環境会計. 分類(Classification of Environmental. を実践し,オーストラリアの環境保護勘定と自. Protection Activities:CEPA)に沿って,大. 然資源管理勘定を作成している.両者の相違は,. 気・気候の保護,廃水管理,廃棄物管理,地下. 前者が,損傷の生じたところの予防,削減また. 水と地表水の保護,騒音・振動除去,生物多様. は回復によって社会経済活動の有害な影響から. 性と景観の保護,放射能からの保護,研究・開発. 環境を保護するのに関連する活動に焦点を当て. およびその他の環境保護活動に細分化される25).. ている一方,後者が,住民への飲料水の提供と. ABSでは,これらに文化遺産の保護活動を加え,. いった社会経済目的で自然資源を使用・保全す. これらの活動に関連する経済取引を測定してい. ることに関連する活動を指す点にある.. る.具体的には,環境保護財・サービスの購. 特にABSが,地方自治体に対して環境保護費. 入・使用,環境保護財・サービスの供給,およ. 用と収益,および自然資源管理費用と収益に関. び環境保護財・サービスのための資金調達であ. するデータの提供を求めた点は興味深く,ヒれ. る.なお,SERIEEによれば,環境保護勘定は,. により,ABSは,一般政府部門の自治体の環境. 一般政府部門,産業部門および家計部門といっ. に関するデータを入手できたばかりでなく,自. た各経済単位によって環境保護のために配分さ. 治体にとっても行政区域の環境と自然資源管理. れた資源を描写するものである26).. の改善を支援する会計ツールの開発に寄与する. 他方,自然資源勘定は,SERIEEにおける. と考えている23).. 「自然資源使用・管理勘定」に相当し,水供給,. ABSでは,自治体のみならず民間部門からも,. 土地管理およびその他の資源管理という3つの. 環境保護費用と収益および自然資源管理費用と. カテゴリについて集計が行われている.. 収益に関するデータを収集し独自の環境勘定を. 表3に示した環境保護勘定と自然資源管理勘. 作成しているが,以下では,特に自治体の環境. 定の費用と収益の概要によれば,例えば,両活. 保護と自然資源管理に焦点をあてた環境勘定を. 動からの収益の大半が行政区域内において環:境. 検討する.. 保護目的で徴収する料金から構成されているこ と,その料金を源とする収益が年々増加してき. 5.2 オーストラリアにおける地方自治体の環. ていること,および当期費用の大半が運営費か. 境勘定 ABSは,自治体が国家の環境・自然資源管理. ら構成されることなどが明らかとなった.. にあたって重要な役割を担う主体であると位置. 24)ABS (2002)p. iv.. 25)Eurostat(1994)pp.72−73. 23)ABS (2002)p.28,. 26) Ibid., p.25..
(10) 横浜経営研究 第24巻 第1・2号(2003). 156 (156). ,表3 自治体の環境保護勘定と自然資源管理勘定の収益と費用の概要 環境保護 自然資源管理 百万ドル 百万ドル ●● ● ●● ●● ●● ●● ● ● ● ●● ● ●● ●● ● ● ●● ● ●● ● ■● ●● ●●●● ● ● ●● ● ● ● o● ●● ● ● ●● ● ● ●● ● ●● ●● ●● ●●● ● ●● ●● ●● ●● ●. 1998−99 収益. 家計と産業からの料金 1,639 866 政府の資金提供 138 38 その他 37 63 合計 1β13 966 費用. 賃金・給料 380 399 運営費用 1,286 664 合計 1β65 1ρ63 資本的支出. 純取得 150 102 その他 311 166 合計 461 268 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●■●●●●●●●●●●●●o●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●o●. 1999−2000 収益. 家計と産業からの料金 1954 1,024 政府の資金提供 128 75 その他 192 180 合計 2,274 1,278 費用. 賃金・給料 399 475 運営費用 1,500 895 合計 1,899 1,370 資本的支出. 純取得 197 ★170 その他 410 283 合計 607 453 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●. 2000−Ol 収益. 家計と産業からの料金 1967 1,079 政府の資金提供 169 62 その他 191 197 合計 2,327 1β38 費用. 賃金・給料 401 491 運営費用 I l,474 910 合計 1,875 1,401 資本的支出. 純取得 195 99 その他 422 271. 合計 616 370 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●. ★推計値は25%から50%の問の相対的標準誤差を有しており,計算に用いられた. (a)調査の質問表設計の変更に起因して年度比較を行なうときは注意されたい. 注意:数値が四捨五入されたところは,合計値が食い違っている. (出所:Australia Bureau of Statistics(2002)p.11−12.).
(11) 公共部門における環境会計の展開(大森 明). (157) 157. 表4 オーストラリア自治体の環境保護費用・収益勘定(2000−01年) 環境保護(カテゴリ別)2000−01年. 生物 地下 文化 固形 その他 合計 多様性 廃水 資源 遺産 廃棄物 と保全 百万ドル百万ドル百万ドル百万ドル百万ドル百万ドル百万ドル ●● ● ●● ●●●● o ● ●● ● ●● ● ● ●● ● ● ● ● ● ● ●● ● ● ●● ● ● ●● ● ● ● ● ●● ● ●● ● ● ● ● ● ● ● ●● ● ● ● ■ ● ● ● ● ●● ● ● ● ●● ● ● ● ● ●● ● ●○. 収益. 家計と産業からの料金 政府の資金拠出 特定交付金 投資補助金 その他の収益. 856.5、 1,047.3. 18.7. 26.0 6.7. 28.0. 75.9 2.4. 5.0. 127.8 46.8. 7.5. 合計. 1,086.1 1,103.2. 59.2. 44. ★0.8. 39.2 1,966.8. 1.2. 3.8. ★7ユ 72.9. ★0ユ. 11.1. 1.9 96.4. ★1.3. ★4.9. ★2.6 190.9. 7.0. 20.6. 50.9 2,327.0. 4.7. 8.1. 費用. 賃金・給料 運営費用 契約業者 政府支払 原材料 その他の費用. 合計. 162.9 162.7 ★★41.3. 85.9 585.7. 34.2. 6.9 85.0. 4.3. 196.9 100.3. 17.6. 21.7 401.3. 7.9. 15.8 9.0 738.5. 3.1. 3.4 3.7 325.1. 一 ★★0.1 96.4. 2。8 10.1 313.9. 148.4 133.5. 15.9. 3.2. 601.0 1,067ユ. 113.3. 19.0. 130.4. 34ユ. 18.6. ★2.3. 7.2. 136.4. 37.4. 5.2. ★0.7. 20.5. 1.7 201.9. 179.8. 17.1. 4.3. 10.2. ★4.6. 3.5 219.6. 446.6. 88.6. 28.1. 13.2. 32.3. 7.3 616.1. 30.1 44.6 1,875.1. 資本的支出. 純取得 契約に基づく支払 自家建設 合計. ★2ユ 194.6. ● ● ●● ● ● ● ● ●● ● ●● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●● ● ●● ●● ● ●● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●● ● ■●●● ●●● ● ● ●. ★ ★★ (a). 推計値は25%から50%の問の相対的標準誤差を有しており,計算に用いられた。 推計値は,50%以上の相対的標準誤差を有しており,一般利用目的には不適切と考えられる. ゼロまたは四捨五入でゼロ(空欄のセルを含む) 数値が四捨五入されたところは,合計値が食い違っている,. (出所:Australia Bureau of Statistics(2002)p.11.). 次に,環境保護費用と収益の勘定について概. ように表されている.当該表によれば,自然資. 観する.表4は,自治体が行った環境保護活動 の分類とその費用・収益の内訳を一覧表にした. 源管理活動のうち水供給活動から大半の収益を 獲得していること,および土地管理に多くの運. ・ものである.この表によれば,環境保護活動の. 営費が発生していることが明らかとなる.. うち,廃水管理と固形廃棄物管理にかかわる料 金から多くの収益を獲得していることが明らか. ABSでは,さらに州ごとに上記のデータを細 分化した表も作成しており,この表によって,. になる一方で,両活動に対する日常的な管理の. 各州の環境保護活動と自然資源管理活動の特性. ための費用と,投資に関わる支出である資本的. が如実に明らかになる.また,自治体の規模を. 支出が大きな割合を占めていることがわかる.. 人ロで区分し,10,000人未満を「小規模自治体」,. この表から,自治体における活動の大半が,廃. 10,000人以上40,000人未満を「中規模自治体」,. 水管理と固形廃棄物管理にあるということがで. および40,000人以上を「大規模自治体」と呼び,. きる.. 当該分類に基づく勘定を作成している.自治体. また,自然資源管理活動については,表5の. の規模別の環境保護i活動勘定は表6,自然資源.
(12) 横浜経営研究 第24巻 第1・2号(2003). 158 (158). 表5 オーストラリア自治体の自然資源管理費用・収益勘定(2000−01年) 自然資源管理(カテゴリ別)2000−01年. 水供給土地管理 その他 合計 百万ドル百万ドル 百万ドル 百万ドル ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● o ● ● ● ● ● ●. 収益. 家計と産業からの料金 政府の資金拠出 特定交付金 投資補助金 その他の収益. 合計. 890.4 151.1 ★37.7 1,079.2. 9.8 ★38.0. 137.0 1,075ユ. 5.4 2.1 17.2 5.3 1,1 44.4. 56.3 ★3.9 197.3 218.1 ★44.8 1,338.0. 費用. 賃金・給料 運営費用 契約業者 政府支払 原材料 その他の費用. 127.0 347.4. 合計. 48.8 65.O. 17.0 491.4. 197.3 ★★15.4 261.5 ★★ 2.9 ★★ 0.5 68.5. 197.3. 142.7 ★169 356.9. 125.2. 83.4 14.2 222.9. 563.3. 773,8 64.0 1,401.1. 資本的支出. 純取得 契約に基づく支払 自家建設 合計. 45.5. 52.1 ★1.7 99.3. 105.3. 42.0 ★★0.5 147.8. 569 207.7. 65.5 0.4 122.8. 159.6 2.6 369.9. ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●. ★ 推計値は25%から50%の問の相対的標準誤差を有しており,計算に用いら. れた. ★★ 推計値は,50%以上の相対的標準誤差を有しており,一般利用目的には不. 適切と考えられる. (a) 数値が四捨五入されたところは,合計値が食い違っている. (出所:Australia Bureau of Statistics(2002)p.19.). 管理活動は表7のように表される.. 大きい自治体が自然資源管理収益の大半を占め. 表6から,規模の大きい自治体ほど環境保護 活動に関連する費用と収益が多いという事実が. たことがわかる.また,中小規模の自治体の費. 用の大半が水供給活動に由来する反面,大規模. 明らかになるが,これは,大規模自治体がABS. 自治体は土地管理活動に多くの費用を発生させ. の調査対象とした人口の75%を占めるという. ている.. 実態を反映したものといえる.表6の数字を人. さらに,ABSでは,環境保護活動と自然資源 管理活動に対する政府からの補助金交付とその. 口1人あたりの数字に置き換えると,上記の結 果とは逆に,小規模の自治体ほど環境保護活動. 使途についての情報も提供している.こうした. に関する費用が発生している.ABSによれば, これは,小規模の自治体が,廃水管理と水供給. 情報により,連邦政府,州政府および自治体と. 活動に多くの責任を有しているためと分析して. らかにされる.. いる27).表6と同様に,表7によれば,規模の 27) ABS (2002)pp.9−10.. いう三者間を流れる環:境関連の資金フローが明.
(13) 公共部門における環境会計の展開(大森 明). (159) 159. 表6 環境保護活動の収益と費用(規模別) 環境保護i(自治体の規模別)2000−01年. 固形 廃水. 廃棄物. 生物 多様性. 文化 遺産. 地下 資源. と保全. その他. 合計. ● ● ● ● ● ● ● ● ● ○ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● o ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●. 収 益 小規模 中規模 大規模 合計. ★10.4. na. na. ★★6.4. 135.1. 193.4 195.5. 10.1. O.4. 9.2. ★2.4. 411.0. 858.2 824ユ. 38.7. 6.6. 11.4. 42.0. 1,780.9. 59.2. 7.0. 20.6. 50.9. 2,327.0. 51.7 66.6. 1,103.2 1,086.1. ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●. 費 用. 小規模 中規模 大規模 合計. 60.4. 48.2. 15.6. na. na. 7.4. 131.6. 206.8. 127.2. ★★19.8. 3.6. 7.6. 3.7. 369,2. 799.9. 425.0. 77.9. 15.4. 22.5. 335. 1,374.2. 1,067.1. 601.0. 113.3. 19.0. 30.1. 44.6. 1,875.1. ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ○ ● ● ■ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●. 資本的支出 小規模 中規模 大規模 合計. ★6.7. ★15.8. ★★3.9. ロ . na. ★★0.2. ★25.6. 61.3. ★2.6. ★2.3. ★9.8. ★0.1. 101.7. 56.3. 369.2. 21.5. 1α9. 22.5. 7.1. 487.5. 88.6. 446.6. 28ユ. 13.2. 32.3. 7.3. 616.1. ★26.6. ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● o ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● o ● ● ● ● ● ● ● ● ●. ★ . ★★ (a). 推計値は25%から50%の間の相対的標準誤差を有しており,計算に用いられた. 非表示 推計値は,50%以上の相対的標準誤差を有しており,一般利用目的には不適切と考えられる. 小規模自治体は人口1万人未満,中規模は1万人から39,999人,大規模は4万人以上.. (出所:Australia Bureau of Statistics(2002)p.13.). 6.オーストラリアにおける地方 自治体の環境会計の実践. るが,特にNORGのプロジェクトに参画した自 治体は,これらの情報を自己の環境政策の立案. ABSも指摘しているとおり,NORGのイニシ. や管理に役立てようとしている.以下では,こ. アティブは,国家の環境勘定作成のためだけに 行われているわけではない.むしろ,自治体ま. れらの自治体のうち,‘情報が入手できた6つの 自治体の中で特筆すべき2つの自治体について. たは州政府の環境政策の立案にあたって有用な. 取り上げたい.. 情報を提供するものとして環境会計が重要であ ると考えている.したがって,前節で議論した. 6.1 ユーロボダラ・シャイア・カウンシルの. マクロレベルの環境会計は,そのデータ収集過. 環境会計の取り組み. 程において自治体や州政府といったミクロレベ.. ユ一包ボダラ・シャイア・カウンシル(以下,. ルの経済主体にとっても有用な情報を提供する. ABSプロジェクトを受けて,自治体が独自に環. ユーロボダラと記す)は,オーストラリアの NSW州にある人口約31,000人を擁する中規模自 治体であり,観光,森林伐採,漁業およびリゾ. 境会計情報を収集しそれを活用しているという. ートを主要産業としている28).ユーロボダラで. 事例を中心に検:討したい.. は,ABSプロジェクトに参加し,上述した. と思われる.そこで,本節では,上で概説した. 自治体は,ABSに対して環境保護と自然資源 管理のための費用と収益を定期的に報告してい. 28) Eurobodalla Shire Counci1 (2001)p.10..
(14) 横浜経営研究 第24巻 第1・2号(2003). 160 (160). 表7 自然資源管理活動の収益と費用(規模別) 土地 その他 合計 水供給 管理 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●. 収 益 ノ」、規模 125.7 6.2 ★12.1 143.9. 中規模 202、4 23.7 ★24.4 250.6. 大規模 747.0 188.3 8.3 943.5 合計 1,075.1 218.1 44.8 1,338.0 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●. 費 用 小規模 73.6 52.5 ★16.3 142.4 中規模 143.3 142.2 30.2 315.7. 大規模 346.4 579.1 17.5 943.0 合計 563.3 773.8 64.0 1,401.1 ● ● ● ● ● o ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●. 資本的支出 小規模 ★41.2 ★10.6 ‘★0.2 ★52.1. 中規模 63.5 21.3 ★1.6 86,3. 大規模 .103.0 127.7 0.8 231.5 合言十 207.7 159.6 2.6 369.9 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● o ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ■ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●. ★. 推計値は25%から50%の間の相対的標準誤差を有しており,計算. . 非表示. に用いられた.. ★★. 推計値は,50%以上の相対的標準誤差を有しており,一般利用目 的には不適切と考えられる.. (a). 小規模自治体は人口1万人未満,中規模は1万人から39,999人,大 規模は4万人以上.. (出所:Australia Bureau of Statistics,(2002)p.21.). CEPAに基づく分類にしたがって環境に関連す. は,NSW州と行政区域内の住民であることか. る費用と収益を測定した.ユーロボダラが当該. ら,彼らの.環境配慮意識の向上に資するために. プロジェクトに参加した理由として,①持続可. 環境会計によつで情報提供を行うべきであると. 能な地域社会を生み出すための誓約を実行する. いう目的意識もまた,当該プロジェクトへの参. ため,②より良い統治に資する誓約を実行する. 加ないし環境会計実施の要因になったと考えら. ため,③環境保護サービスの供給者であること,. れる.. ④リーダーシップを発揮し,行政区域内の環境. ユーロボダラが纏めた環境会計情報は表8に. 改善に努めること,および⑤規制当局から課さ. 集約される.この表は,基本的にCEPAに基づ. れた基準遵守のコストを相殺する内部的なベネ. いて環境関連の諸活動を分類した上で,運営費. フィットを発見すること,をあげている29).特. 用と収益とを対照表示し,その差額を明らかに. に,ユーロボダラにとって,主要な利害関係者. している点で特徴がみられる.この計算書によ って,ユーロボダラの環境関連活動の重点施策 が判明するとともに,当該活動への資源配分の. 29)Osborn, Dick(2001a)p,13.なお, Eurobodalla. 用と収益を明らかにすることを目的として環境会計. 状況もまた明らかとなる.表8は,環境保護活 動に関連するフロー情報が集約されているが,. に取り組んでいるとしている.. 特に廃水管理と水資源保護,および一般廃棄物. Shire Council(2001)p.53では,環境状態に対する費.
(15) 公共部門における環境会計の展開(大森 明). (161) 161. 表8 ユーロボダラ・シャイア・カウンシルにおける環境保護サービスの費用・収益(1997−1998年) 機能または活動. 収 益 収益 区分合計. 運営費用 費用 区分合計. サービスの純コスト 純コスト 区分合計. 管理(分類されない). 企業支援 エンジニアリングと作業 その他の支援サービス. 2,007. 2ρ07. 1,100. 1,100. 0 0. 3,107. 無害廃棄物管理 処理,保管,処分 廃棄物保管所管理 廃棄物のフローの管理 リサイクル 屑管理 公衆教育 管理 その他. 1,468. 1,153. 315. 236. 652. 一416 0 0. 52 0. 87 38. 263 194 4. 35 162 76 35. 一263. 一159 158. 76 35 308. 土壌と地下水 侵食,塩度,地下水面上昇の統制 土壌の汚染除去 地下水の保護 浸出液の統制と監視. 76. 1,805. 1,881. 生物多様性と景観 原生林,動物,植生の保護 生態系の保護 保護地域における土壌劣化からの保護 外来種の管理 火災統制一公有地. 3,107. 57. 461. 一153. 56. 1. 0 0 2. 2. 59. 1. 58. (出所:Osborn, Dick(2001a)p.21). 管理にかかわる資産の数量と金額について管理. ストックおよび人的資本ストックに関する. する一覧表も作成している.これによってスト. 報告書によって,財務諸表を補足すること.. ック情報が加わり,限定的とはいえ,フローと. ②建設資本ストックの管理と取替に関する報. ストックとの双方にかかわる情報が提供される. 告が行われること.. ことになる30).. ③こうした報告が管理料金の設定に結びつく. ユーロボダラでは,後述するような発生主義. こと.. 会計の導入と環境会計の導入によって,以下の. ④自然資本ストックの管理と使用の行動を変. ような効果を想定している31).. 化させること.. ①行政区域内の自然資本ストック,建設資本. ⑤料金設定基準と収益増加をもたらすこと.. ⑥持続可能な発展に不可欠なより良い,統合 された意思決定へと導くこと. 30)ストックに関してはまだ詳細な情報が入手で きていないため,詳細な検討は別の機会に譲りたい. 31)Osborn, Dick(2001a)p.23.. 想定される効果は,いずれもユーロボダラの 政策と直接関わってくるが,ここで試算された.
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