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青年期における心理的自立(IV) : 心理的自立の発達的変化

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(1)Title. 青年期における心理的自立(IV) : 心理的自立の発達的変化. Author(s). 高坂, 康雅; 戸田, 弘二. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 57(1): 135-142. Issue Date. 2006-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/418. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第57巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.57,No.1. 平成18年8月 August,2006. 青年期における心理的自立(Ⅳ) 一心理的自立の発達的変化−. 高坂 康雅・戸田 弘二*. 北海道教育大学岩見沢枚心理学研究室 *北海道教育大学札幌枚. PsychologicalJiriisuinAdolescence(Ⅳ) −DevelopmentalProcessofPsychologicalJiriisu−. KOSAKAYasumasaandTODAKoji* DepartmentofPsychology,IwamizawaCampus,HokkaidoUniversityofEducation. *sapporocampus. 概 要 本研究は,青年期における心理的自立の発達的変化について男女別に検討しようとするものである.中学 生・高校生・大学生・成人の計778名を対象に,高坂・戸田(2005)の心理的自立尺度と大野(1984)の充 実感尺度を実施した.まず心理的自立尺度の6下位尺度得点の変化を検討したところ,男子では年代間での 変化がみられなかったが,女子では多くの下位尺度得点が高校生から上昇に転じていた.また充実感との関 連では男女とも将来志向が充実感と強く関連していたが,男子では高校生で社会的視野や適切な対人関係が 強く関連し,女子では高校生で適切な対人関係から将来志向へと充実感と関連する心理的自立の要素の転換 が生じていた.以上より,男子の心理的自立は自分の生き方を主軸としたあり方をしているもののそれは大 学生までは上昇せず,一方,女子では高校生を転換点として他者との関わりを重視したあり方から生き方を 重視したあり方へと変化することが明らかとなった.. KeyWords:心理的自立 発達的変化 充実感. 135.

(3) 高坂 康雅・戸田 弘二. ていくという発達過程を示している.そこでは,. 問 題 青年期の心理発達を説明する上で重要な概念の. 乳児期ですでに獲得される身体的自立を除く5側 面がいずれも青年期から成人期の間で,消極的自. ひとつとして自立がある.しかし,従来の発達心. 立から積極的自立へと転換するとされている.ま. 理学では,自立概念は必ずしも明確に定義されて. た,福島(1992)は精神的自立(個の確立を重視. こなかった.これまで著者ら(高坂・戸田,2003. した自立)と社会的自立(個と個,また個と社会. ;高坂,2003;高坂・戸田,2005;高坂・戸田,. を重視した自立)の発達過程を実証的に検討して. 2006)は,多義的な自立概念のうち,青年期の心. いる.その結果,男子では,精神的自立において,. 理発達に注目するため,経済的自立(例えば,安. 中学から高校にかけてと大学から成人に向けて有. 定した収入がある)や社会的自立(例えば,結婚. 意な上昇傾向を示し,社会的自立においては,高. している,二十歳を超えている)と区別した心理. 校から大学,さらに成人にかけて上昇傾向が示さ. 的自立(PsychogicalJiritsu)について検討して. れた.一方,女子では,精神的自立・社会的自立. きた.ここで心理的自立とは「成人期において適. 両側面とも,中学から高校にかけては大きな変動. 応するために必要な心理・社会的な能力を有した. は見られず,大学生以降成人に向けての急激な上. 状態」(高坂,2003;高坂・戸田,2005)と定義. 昇が見られた,と報告している.このように,自. される.高坂・戸田(2003)は,自立に関する先. 立の発達は,自立の側面によって,また性別によっ. 行研究を概観し,この心理的自立概念を把握する. て異なることがわかる.そこで,本研究では,高. ために,行動・価値・情緒・認知の4つの概念的. 坂・戸田(2005)のPJS−2の6下位尺度得点に. 枠組を設定した.この4つの概念的枠組みに基づ. ついて,男女別に発達的変化を検討することを第. いて,高坂・戸田(2006)では,「価値判断・実行」. 1の目的とする.. 「自己統制・客観視」「現在把握・将来志向」「適. また,自立に関する性差については,その発達. 切な対人関係」「社会的知識・視野」という5つ. 的変化だけでなく,望ましい自立のあり方にもみ. の下位尺度を持つ心理的自立尺度(Psychological. られる可能性がある.渡遽(1992)は,自立への. Jiritsu Scale;PJS)を作成し,さらに高坂・戸. 意欲について,男子は親からの離脱・経済的内容. 田(2005)では,5下位尺度に「責任」という下 位尺度を加えた心理的自立尺度第2版 (PsychologicalJiriisuScaleVersion2;PJS−2) を再構成した. ところで,これまでの著者らの研究では,主に. (例えば,親にあれこれ言われずに行動する,親 から早く経済的に独立したい)を強く求めている. のに対し,女子は社会的内容(例えば,社会の中 で果たすべき役割の獲得)を求めていることを明 らかにし,目指す自立の内容が男女で異なること. 大学生を調査対象としてきたが,心理的自立は大. を示唆している.また,福島(1992)では,精神. 学生の時期に突然獲得されるものではなく,それ. 的自立は男子の方が,社会的自立は女子の方がど. 以前の時期から徐々に獲得されるものであろう.. の年代においても高いことを示している.さらに,. 渡遽(1990)は,自立を身体・行動・認知・情緒・. 高坂・戸田(2005)では,PJSの下位尺度のうち,. 価値・経済の6側面に分け,また「他者の介助・. 価値判断・実行と社会的視野は女子よりも男子の. 介入・支配・監督からの離脱」を意味する消極的. 方が有意に高い得点を示している.. 自立と「自己判断・自己決定・自己統制に基づき,. このように,従来の実証的自立研究において,. 時間的展望をもって主体的に自己自身の力でやる. 望ましい自立のあり方に男女差があることが示唆. こと」である積極的自立という2種類を設定して. されてはいるが,いずれもが男女における得点差. いる.そして,6つの側面においてそれぞれが消. について得られた結果からの言及であり,他の適. 極的自立を獲得し,さらに積極的自立へと変わっ. 応に関する指標との関連から得られたものではな. 136.

(4) 青年期における心理的自立(Ⅳ). い.そこで,本研究では,PJS−2と他の適応指. 生289名(男子149名,女子140名),札幌市内の公. 標との関連から,各年代の男女において望ましい. 立高校の2年生218名(男子105名,女子113名),. 自立のあり方を検討することを第2の目的とす. 札幌市内および岩見沢市内の国立大学に通う大学. る.. 生172名(男子80名,女子92名),北海道内の成人 本研究では,適応指標として,充実感を取り上. 99名(男子33名,女子66名)の計778名(男子367. げる.大野(1984)は,充実感を「青年が健康な. 名,女子411名)に質問紙調査を行った.大学生. 自我同一性を統合していく過程で感じられる自己. の年齢幅は18∼26歳,平均年齢は20.3歳(標準偏. 肯定的な感情」と定義し,充実感の生活気分とし. 差1.1)であり,成人の年齢幅は22∼31歳,平均. ての側面を示す第1因子「充実感気分一過屈・空. 年齢は25.8歳(標準偏差2.0)であった.. 虚因子」と,充実感を構成し影響を及ぼすと仮定. 質問紙構成 質問紙は中学生用・高校生用・大学. される3因子(第2因子「自信一甘え・自信のな. 生用・成人用を作成した.いずれの質問紙も内容. さ因子」,第3因子「連帯一孤立因子」,第4因子. は同じであり,フェース項目だけが異なっていた.. 「信頼・時間的展望一不信・時間的展望の拡散因 子」)からなる充実感尺度を作成している.充実. (手心理的自立尺度(PJS−2):高坂・戸田 (2005)のPJS−2を用いた.この尺度は6下位. 感尺度の第2因子から第4因子とPJSの下位尺. 尺度24項目からなるが,項目数が少ない下位尺度. 度と比べると,充実感尺度の第2因子は,人に甘. もあるため,さらに8項目を増やし,計32項目と. えることなく自分一人で判断や実行をし,それに. した.回答は,「非常にあてはまる」(7点),「あ. 対し自信と責任を持つことを表しており,PIS. てはまる」(6点),「ややあてはまる」(5点),「ど. の“価値判断・実行’’および“責任’’と対応して. ちらともいえない」(4点),「あまりあてはまら. いる.第3因子は,周りの人との付き合いに対す. ない」(3点),「あてはまらない」(2点),「全ど. る自信のなさと,そこから生じる孤独感や焦燥感. あてはまらない」(1点)の7件法で求めた.. を表している.これは,PJS−2の“適切な対人. (卦充実感尺度:大野(1984)の充実感尺度のう. 関係’’や“自己統制’’ができないことによるもの. ち,「充実感気分一過屈・空虚感」の11項目を用. と捉えることができる. .また,第4因子は,社会. いた.回答は,「あてはまる」(5点),「ややあて. 生活の中で自己の存在を肯定的に捉え,将来に対. はまる」(4点),「どちらともいえない」(3点),. する目標・希望を持つことを表しており,PJS−. 「あまりあてはまらない」(2点),「あてはまら. 2の“将来志向’’と対応している.生活感情とし. ての充実感を構成・説明するとされている因子が. ない」(1点)の,5件法で求めた.. ③フェース項目:中学生用・高校生用では性別. PJS−2の下位尺度と対応・関連していると思わ. を,大学生用では性別と年齢,学年をたずねた.. れることから,心理的自立という観点から充実感. また,成人用では,年齢,性別,職業,結婚経験,. を捉えることも可能であろう.. 子どもの有無をたずねた.. 以上より,本研究では,PJS−2の下位尺度得. 調査時期・実施方法 調査は2003年10月から12月. 点の発達的変化と,各年代における下位尺度得点. にかけて行われた.中学生・高校生には,学級担. と充実感得点との関連という2つの視点から,心. 任あるいは担当教師がホームルームや授業中にク. 理的自立獲得過程における男女の違いを検討す. ラス単位で実施した.大学生には,著者が授業中. る.. に集団で実施した.成人については,第一著者が 個別に依頼し,郵送にて配布・回収した.成人に おける回収率は75.2%であった. 方 法. 調査対象者 札幌市内の2つの公立中学校の2年. 137.

(5) 高坂 康雅・戸田 弘二. して最小2乗法・prOmaX回転による因子分析を 結 果. 行った.項目の取捨選択を行い,最終的にTable lに示す30項目が残された.この6因子は順に,. 各尺度得点の作成. PJS−2の因子構造を確認するために,中学生・. 高坂・戸田(2005)の「将来志向」,「適切な対人. 高校生・大学生・成人の回答を含めて,最小2乗. 関係」,「価値判断・実行」,「責任」,「社会的視野」,. 法による因子分析を行ったところ,6因子構造が. 「自己統制」に対応していた.因子間相関は. 適切であると判断されたため,因子数を6に指定. Tablel下段に示すように,.118∼.647とかなり. Tablel心理的自立尺度の因子分析結果(promax回転後) FI F2 F3 F4 F5 F6. 項 目 内 容. 自分が将来何をしたいのかについて考えをもっている. .930. .012. −.048 −.055. 自分の将来の目標をしっかりと持っている. .912. .000. −.026 −.069. .007. −.011. .025. −.019. −.036. .027. .039. −.019. 自分のこれからの生き方に明確な計画がある. .833. −.002. 将来のことをよく考えている. .827. −.011. これから自分がどのように生きていくか決めている. .819. .027. .036. .000. −.034. .028. 将来に対する見通し・考えをもって生活している. .810. −.014. .014. .117. −.007. .013. .050. −.016. .034 −.041 −.021 .068. 他人の気持ちを思いやることができる. −.006. .803. −.142. 相手の気持ちを察して,適切な対応ができる. −.054. .797. .078. .080 −.009. .021 −.021. .015. .016. 相手の人の立場を考え,讃することができる. .041 .794. 周りの人とよい関係を維持することができる. .023. .602. .081 .004 −.053. .085. .023. .535. .056. .053−.061. .032. 周りの人と協力して物事に取り組むことができる. −.097. .005. 自分一人で物事を決めることができる. −.088 .017 .762 .004 .002 −.062. 自分のことは自分で判断することができる. −.018 −.013 .714 .046−.016 .039. 周りの人の意見に流されずに行動したり考えたりすることができる −.004 −.210 .685 .082. .001. .179. 自分の意見をはっきりと言うことができる. .053 .098 .664 .027.022 −.223. 自分が正しいと思った道を突き進むことができる. −.028 −.022 .154 .048 .575 .025. 責任ある行動がとれる. .008. 責任感がある. .062. −.009. 自分の決めたことには責任がもてる. .008. .013. 自分の言ったことに責任をもつことができる. −.046. .830. −.046. −.024. −.021 .050. .796. .001. .083. −.067. −.042. .052. .674−.033. .052. −.463 −.095. .063. .161 .733 .114. −.017. 責任ある立場には立ちたくない. .001 .001 −.110. 世界や社会の出来事についてよく知っている. .038. −.023. .066. −.067. .850. −.004. 世間の情勢に詳しい. .039. −.020. .120. −.043. .779. −.002. 社会の出来事には関心がない. .034. −.029. .117. −.069. −.694. −.032. 社会の出来事は自分には関係ないと思う. .049. −.098. .074. −.141. −.452. −.051. .101 .276. −.033. −.022. −.707. .191 .153. −.104. −.016. .655. −.102. −.033. .635. .250. .013. −.043. .111 .507. つい感情にまかせて行動してしまう. −.012. 状況にあわせて感情を適切にコントロールすることができる. −.012. 悲しみ,怒りなどの感情を自分で落ち着かせることができる. .030. .106. .046. −.142. 一時の感情に左右されない 常に落ちついている. −.071. α係数. −.012. .105. .054. .510. .941 .844 .825 .859 .795 .753 FI F2. 因子間相関 Fl F2 F3 F4 F5. 138. .086. F3. F4. F5. .239. F6 .492 .381. .370. .296. .534. .296. .647. .378 .357. .118. .421 .369 .377. .238.

(6) 青年期における心理的自立(Ⅳ). め,分析は男女別に行うこととした.. 弱いから比較的強い正の相関が見られた.. 各因子に負荷の高い項目の内的一貫性を確認す. まず,男子について,各年代の平均得点を. るために,逆転項目への回答を修正した上で. Table2に,6下位尺度得点の推移をFigurelに. Cronbachのα係数を算出した(Tablel中段).. 示した.これらをみると,どの下位尺度得点も,. その結果,.753∼.941といずれも十分な信頼性が. 中学生から大学生の間では大きな変化は見られ. 確認されたことから,各因子に絶対値.40以上の. ず,成人になりわずかに上昇しているように見え. 負荷をもつ項目の平均値を算出し,これを下位尺. る.下位尺度得点発達的変化を検討するため,年. 度得点とした(以後,それぞれ将来志向得点,適. 代を要因として6下位尺度得点について分散分析. 切な対人関係得点,価値判断・実行得点,責任得. を行ったところ,すべての下位尺度得点で有意な. 点,社会的視野得点,自己統制得点と呼ぶ).. 主効果はみられなかった.. 次に,充実感尺度の11項目についてα係数を. 次に,女子について,各年代の平均得点を. 算出したところ,.914と十分な信頼性が確認され. Table3に,6下位尺度得点の推移をFigure2に. たため,11項目の平均値を算出し,充実感得点と. 示した.これらをみると,女子では,価値判断・. した.. 実行得点,適切な対人関係得点,責任得点では,. 中学生・高校生とあまり変化がなく,大学生・成 人になるにつれて上昇していることがわかる.ま. 心理的自立の発達的変化. 本研究では,男女それぞれにおける心理的自立. た,自己統制得点と社会的視野得点は高校生で低 下したのち上昇し,将来志向得点は中学生から高. の発達的変化を明らかにするのが目的であるた. Table2 PJS−2の下位尺度得点の分散分析(男子) 中学生. 高校生. 大学生. 149名. 105名. 80名. 成人 33名. 分散分析. 将来志向. 4.45(0.12). 4.48(0.14). 4.41(0.16). 4.66(0.25). n.s.. 適切な対人関係. 4.99(0.08). 5.01(0.09). 4.92(0.10). 5.13(0.16). n.s.. 価値判断・実行. 4.82(0.09). 4.77(0.11). 4.70(0.12). 5.02(0.19). n.s.. 責任. 4.26(0.09). 4.35(0.11). 4.53(0.12). 4.74(0.19). n.s.. 社会的視野. 4.54(0.09). 4.42(0.11). 4.52(0.13). 4.96(0.02). n.s.. 白己統制. 4.46(0.06). 4.39(0.08). 4.52(0.09). 4.55(0.13). n.s.. ÷将来志向. ÷将来志向. −t一適切な対人関係. −t一連切な対人関係. −▲一価値判断・実行. −▲一価値判断・実行. ÷責任. −■←暮任. ÷社会的視野. ÷社会的視野. −●一自己統制. −■一自己統制. 中学生高校生大学生成人. Figurel心理的白立の発達的変化(男子). 中学生高校生大学生成人 Figure2 心理的白立の発達的変化(女了). 139.

(7) 高坂 康雅・戸田 弘二. Table3 PJS−2の下位尺度得点の分散分析(女子) 高校生. 大学生. 140名. 113名. 92名. 成人. 分散分析. 66名. 4. 適切な対人関係. 5.03(0.77). 5.01(0.09). 5.14(0.10). 5.33(0.11). 3. 5. 0. 8. 3. 5. 価値判断・実行. 4.61(0.09). 4.55(0.10). 4.76(0.11). 5.06(0.14). 3. 責任. 4.41(0.09). 4.36(0.10). 4.74(0.11). 5.05(0.13). 社会的視野. 4.43(0.10). 4.21(0.11). 4.34(0.19). 4.72(0.14). 自己統制. 4.50(0.07). 4.31(0.07). 4.35(0.08). 4.52(0.09). 中<成 †. 5. *. 1. 5.96(0.18). 5. 4.61(0.15). 2. 3. 4.78(0.13). 多重比較. *. 4.38(0.12). 3. 2. 将来志向. 中,高<成. *. * *. 中学生. 中,高<成;高<大. *. 高<成 n.s.. ***p<.001;*p<.05;†p<.10. 校生で上昇しているが,大学生で一度低下し,成. 点を示した(MSe=1.03).社会的視野得点では,. 人で再度上昇している.全体的には男子に比べ,. 高校生よりも成人の方が高い得点だった(Mse=. 右肩上がりであるようだ.男子同様,分散分析を. 1.20).. 行ったところ,自己統制得点では有意な主効果は 見られなかったが,将来志向得点(F=3.23,p. 心理的自立と充実感との関連. PJS−2の下位尺度得点を独立変数に,充実感. <.05),価値判断・実行得点(F=3.50,p<.05), 責任得点(F=8.35,p<.001),社会的視野得. 得点を従属変数として,各年代の男女別に重回帰. 点(F=3.15,p<.05)で有意な主効果がみら. 分析を行った結果が,Table4である. まず男子について,中学生では,将来志向が充. れた.適切な対人関係得点は有意傾向がみられた (F=2.45,p<.10).有意な主効果がみられた. 実感に有意な正の影響力を示した(β=.200,p. 4下位尺度得点について多重比較(Tukey法). <.05).高校生になると,適切な対人関係(β=. を行ったところ,将来志向得点では,中学生より. .264,p<.05)と社会的視野(β=.325,p<.01). も成人の方が得点が高く(Mse=1.90),価値判. が充実感に対し有意な止の影響力を示し,大学生. 断・実行得点では,中学生,高校生よりも成人の. では,将来志向が有意な正の影響力を示した(β. 方が有意に高い得点であった(Mse=1.18).責. =.264,p<.05).成人では,下位尺度得点の. 任得点では,中学生と高校生よりも成人の方が得. いずれもが充実感に対して有意な影響力を示さな. 点が高く,また高校生よりも大学生の方が高い得. かった.. Table4 心理的自立と充実感の垂回帰分析 男. 子. 女. 中学生 高校生 大学生 成 人. 中学生 高校生 大学生 成 人 将来志向. .264*. 適切な対人関係. 子. .212*. .264*. .310**. .421***. .464***. _357**. 価値判断・実行 責任. .198†. 社会的視野. −.260** .325**. .271†. .171I. 自己統制 垂相関係数(R). .437***. .459**. .468**. ns. .439***. .510***. .478**. .648***. ***p<.001;**p<.01;*p<.05;†p<.10. 140.

(8) 青年期における心理的自立(Ⅳ). 女子について,中学生では,適切な対人関係が. という課題を受け入れやすい.しかし,受け入れ. 充実感に対し有意な正の影響力を示した(β=. やすさと実際に自立することは異なる問題であ. .310,p<.01)が,高校生になると適切な対人. り,本研究の結果から,男子は中学生から大学生. 関係(β=.357,p<.01)だけでなく将来志向(β. の間では心理的自立の程度はほとんど変わらず,. =.212,p<.05)も有意な正の影響力を示し,. 成人になりわずかに上昇し始めるようである.未. さらに大学生・成人になると将来志向だけが有意. だ男性原理優位な社会において,男子は強い困難. な正の影響力を示した(順に,β=.421,p<.001. を感じることなく適応することができる一方,学. ;β=.464,p<.001).また,責任は大学生で. 校時代には心理的自立を獲得するような問題を感. は負の影響力を持っていた(β=−.260,p<.05). じる機会が少ないため,なかなか上昇することが. が,成人になると正の影響力を持つ傾向が見られ. ないのかもしれない.. た(β=.271,p<.10).. 一方,女子にとって“自立する’’という課題は. 葛藤を生むものである.女子の大学進学率が上昇 し,社会参加要請も高まる一方,「従順な」,「謙 考 察 心理的自立の発達的変化の検討. 本研究は,青年期における心理的自立獲得過程 の男女の違いを検討しようとしたものである.. 本研究の第1の目的は,青年期における心理的. 虚な」,「依存的な」など,女子に求められる役割. 期待も未だ存在する(湯川,1990).このような 相対立する社会的要請や期待の間で,いかに自立 するかが青年期の女子にとって問題となる.池田 (1994)も,「女子が大人の女になるのも,とく. 自立の発達的変化を検討することであった.その. にそれまで受験戦争の激しい競争原理に沿って,. 結果,まず,男子では,PJS−2の下位尺度得点. 社会参加を目指して頑張ってきたような女子に. すべてにおいて,どの年代でも大きな変化がみら. とっては,その男性原理と大人の女になっていく. れず,分散分析においても有意な主効果は見られ. という女性原理とをどこかで折り合いをつけ,『統. なかった.それに対し,女子では,分散分析の結. 合』する方向を見出さなければならないから,こ. 果,将来志向得点,価値判断・実行得点,責任得. れも難しい課題になる」と述べている.本研究で. 点,社会的視野得点において,年代の有意な主効. 調査対象とした大学生女子は,大学に進学し,卒. 果が見られ,年代が上がるにつれ,これらの得点. 業後は社会参加をしようとしていると想定され. も上昇していた.また,得点の推移をみても,将. る.このような女子は,高校生以前までに社会か. 来志向得点以外は,高校生で最低点となり,大学. ら求められていた“女らしぎ’だけではなく,男. 生・成人と得点が上昇している.これらのことか. 子と同じように社会参加するために,自立しよう. ら,男子は年代による得点の変動が小さいのに対. とするであろう.そのため,多くの下位尺度得点. し,女子では年代を経るにしたがって得点が概ね. が,高校生と大学生の間で,上昇に転じていると. 上昇しており,高校生が得点上昇の転換期となっ. 考えられる.. ていると言えよう.女子におけるこのような変化. このように,“自立する’’という課題がそもそ. は,福島(1992)で得られた結果とほぼ一致して. も性役割期待における男性的な課題であることか. いる.. ら,男子と女子では心理的自立が異なった発達的 「『自己確立』とか『自立』という青年期の課. 題は本来,男性にとって問題となる主題である」. 変化を示しているものと思われる.. 本研究の第2の目的は,充実感を適応指標とし. と池田(1994)は述べている.男子にとって,“自. て,各年代の男女において望ましい自立のあり方. 立する’’という課題は,青年期に入った時から,. の検討することであった.その結果,男子も女子. 求められている課題であり,男子は,“自立する’’. も,充実感に強く影響していたのは,将来志向で. 141.

(9) 高坂 康雅・戸田 弘二. あった.しかし,男子では,高校生において,社. ているように,男性的な概念であることは否定で. 会的視野や適切な対人関係が充実感と関連を示. きない.そして,自立の獲得にはおおいに性役割. し,将来志向は関連を示さなかった.中学生にお. が関わっている(福島,1993).そのため,男子. ける将来志向と大学生における将来志向では,そ. では社会に適応しやすいがゆえに心理的自立を獲. の質が異なる可能性がある.中学生では「こうな. 得する機会がなく,いつまでも中学生と同程度の. りたい」という理想であり,大学生では「こうな. ままであり,女子では,“女性らしぎ’と“男性. るんだ」という確信である.その間である高校生. 的な自立’’の折り合い・統合が求められ,高校生. は,中学生で抱いた理想が現実的に可能かどうか. を大きな転換期として,心理的自立獲得への取り. 問い直しがされる時期である.そのため,高校生. 組みがなされるようになるのだろう.. では,理想と現実の違いを検討する社会的視野の 高さが,充実感を高めているのであろう.高校生 引用文献. の時期に,じっくりと自分の進路・生き方を再検 討し,大学生となって,具体的な将来志向をもて るようになると考えられる.いずれにしても,男. 子にとって重要なことは,自分がどう生きるかを 主軸として心理的自立を獲得していくことであろ. 福島朋子(1992).思春期から成人にわたる心理的自立一 自立尺度の作成及び発達的検討一 発達研究,8,67− 87. 福島朋子(1993).自立に関する概念的考察一青年・成人 及び女性を中心として一 発達研究,9,73−85. 池田豊應(1994).青年の自立と家族 久世敏雄(編)現. う.. それに対し,女子では,中学生と高校生で,適 切な対人関係が充実感と関連していたが,高校生 を転機に,大学生・成人では,将来志向が充実感. と関連を示した.この女子における充実感との関 連の発達的変化は,アイデンティティ研究を参考 にすると理解できる.自立概念と同じく,アイデ ンティティ概念も「男子青年像を前碇として論じ られている」という批判を受けている(渡遽,1995). ように,男性的な概念である.そのため,1970年 代から女性のアイデンティティ形成の研究が積極 的になされるようになり,男性では,アイデンティ. ティ確立後に親密性のテーマが問題になるのに対 し,女性では,親密な関係をもつことでアイデン. ティティがより確かなものとなることが指摘され ている(Josselson,1973).つまり,女子にとっ て,心理的自立の下位概念のうち,最初に問題と なるのは,適切な対人関係であり,これがある程 度獲得されてはじめて,男子と同じく,将来志向. 代青年の心理と病理 福村出版 pp.83−94.. Josselson,R.(1973).Psychodynamicaspectsofidentity. formationincollegewomenJournalofyouthand 〟doJg∫Cg〃Cゼ,2,3−52. 高坂康雅(2003).青年の心理的自立と家族機能との関連 日本青年心理学会第11回大会発表論文集,44−47. 高坂康雅・戸田弘二(2003).青年期における心理的自立 (Ⅰ)−「心理的自立」概念の検討一 北海道教育大 学附属教育実践総合センター紀要,4,135−144. 高坂康雅・戸田弘二(2005).青年期における心理的自立 (Ⅲ)一昔年の心理的自立に及ぼす家族機能の影響一 北海道教育大学紀要(教育科学編),55(2),77−85. 高坂康雅・戸田弘二(2006).青年期における心理的自立 (Ⅱ)一心理的自立尺度の作成一 北海道教育人学紀 要(教育科学編),56(2),17−30. 大野 久(1984).現代青年の充実感に関する一研究一現. 代青年の心情モデルについての検討一 散育心理学研 究,32,100−109. 渡遵恵子(1990).自立の概念化の試み R本女子大学紀 要(人間社会学部),1,189−206. 渡遵恵子(1992).自立と自己の性の受容(2)一性差の 検討一 日本女子大学紀要(人間社会学部),3,1−14. 渡遵恵子(1995).自立再考 相木恵子・高橋恵子(編). 獲得に取り組むことができるようになると考えら. 発達心理学とフェミニズム ミネルヴァ書房 pp.77−. れる.高校生の時期はちょうどその転換期であり,. 101.. 適切な対人関係と将来志向の両方が充実感と関連 していたのであろう. このように,心理的自立は,従来から指摘され. 142. (高坂 康雅 筑波大学大学院生) (戸田 弘二 札幌校教授).

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参照

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