同時発表: 筑波研究学園都市記者会(資料配布) 1
NIMS コンファレンスにおける NIMS 賞授賞者について
平成20年4月22日
独立行政法人物質・材料研究機構
概 要
独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:岸輝雄(以下、NIMS))は、30 年以上の
歴史をもつ金属材料と無機材料に関する 2 つの国立研究所が合併し、材料研究のため
の日本最大の研究所として 2001 年に設立されました。第 1 期の 5 年を経て、2006 年
から第 2 期に入り、これを機に、4 年間にわたり材料科学・技術に関して討論して参
りました NIMS コンファレンスの内容を刷新いたしました。今年度は 7 月 14 日~16
日につくば国際会議場において開催されます。
昨年度からの NIMS コンファレンスの大きな特徴は、物質・材料に関わる科学・技
術において飛躍的な進歩を過去数年間に成し遂げた個人もしくはグループを厳正に
選考し、NIMS 賞を授与することにあります。本年度は「環境・エネルギー分野におけ
る材料科学・技術での最近の大きなブレークスルーを称える NIMS 賞(NIMS Award for
Recent Breakthroughs in Materials Science for Energy and Environment)」とい
うタイトルで、環境・エネルギー分野の研究業績が対象となっています。NIMS 賞の授
賞者は、世界各国の本分野におけるトップ科学者から推薦を受けた候補者から中立有
識者の委員会により選考されました。
NIMS コンファレンスにおいて授与される NIMS 賞を物質・材料科学研究に従事され
る研究者が是非獲得したいと励むにふさわしい権威ある国際賞に育てていくため、賞
として NIMS 由来の材料を用いて作製したメダルと共に副賞として任意団体「NIMS コ
ンファレンスを支援する会」のご好意の賞金 100 万円を授与します。別添に 2008 年
の NIMS 賞の授賞者のお名前、業績を記します。
2 2008 年 NIMS 賞授賞者 授賞者: アンソニー エバンス、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授 デビッド クラーク、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授 カルロス レビー、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授 業績タイトル: 熱遮蔽コーティングシステムに関する体系的研究 業績説明: 本授賞業績の根幹は、エンジンを 1700℃近い高温ガス中で動作させることの出来る技術を開発し、内 燃機関系の熱効率を大幅に改善しCO2の大幅削減を可能とする材料的基盤を作り上げたことである。 熱力学の基本法則からしても、発電用ガスタービンや航空機用ジェットエンジンといった内燃機関で は、燃焼温度が高くなる程、熱エネルギーを効率良く動力に変換できることは知られており、10%の熱 効率の改善は20%以上のCO2削減につながるとも言われている。そのため2000℃に迫る、より高い燃焼 ガス温度でエンジンが稼動することが望ましい。しかし多くの高温用材料の溶融点は千数百℃にしか及 ばず、現実のシステムでは燃焼温度を上げた設計を行うことは多くのリスクを伴ってきた。 授賞者の研究は、そのような高温用材料のひとつである超合金基材上に熱遮蔽コーティングを施すこ とで、部材としての耐熱性を著しく向上させ、熱効率に優れた高温燃焼システムを可能としたことであ る。また、この研究は耐熱温度だけでなく、厳しい高温熱サイクル(高温-常温の繰り返し)環境にお いても高い信頼性を確保する技術として安全・安心のもとで低環境負荷の社会基盤技術を形成していく 上で大きな役割を果たしている。 さらに、研究の手法として、これまで熱遮蔽コーティングの開発および利用は、経験的なノウハウに 基づいたアプローチに依存する傾向が強く、厳しい熱サイクルに伴う損傷や組織劣化の基礎的なメカニ ズムは注目されていなかったが、エバンス教授らのグループは、基礎研究に基づく国際的な巨大プロジ ェクトを立ち上げ、様々な分野の知識を集約して研究を推し進めてきたことも特筆される。 この中で、様々な損傷メカニズムの解明と理論モデルの構築(エバンス教授)、低熱伝導材料の理論的 探索、皮膜や界面部の物理現象解明(クラーク教授)、熱遮蔽コーティングのための新材料系開発と製膜 プロセスと組織の相関解明(レビ教授)を行った。広範囲な材料科学分野を高度に融合させ、実部材で 生じている複雑な現象を学問として完成させるとともに、その技術に基づいた指針を提案し、熱遮蔽コ ーティング材料の高性能化、長寿命化、高信頼性化に大きく貢献した。 これらの業績は、優れた論文として発表されただけではなく、実際のエンジンメーカーの技術者がエ ンジン材料の選択や、システムとしての信頼性を確保するために大いに役立っている。言い換えれば、 経験とノウハウから行われてきた熱遮蔽コーティングシステムの発展に明確な道筋をつけるとともに、 材料開発に学術的な知識を融合し、材料学の有効利用に大きく貢献してきた。今度は、温室効果ガスの 削減に直結するものとしてエンジンの高温化はますます注目される技術となる。 今後、さらなる燃焼温度の向上が予想される中、熱遮蔽コーティングの寄与はますます大きくなると 期待される。ここに、物質・材料研究機構は、NIMS コンファレンス開催の機会に、後世に熱遮蔽コー
3 ティング技術に大きなブレークスルーをもたらしたエバンス教授らの卓越した業績をNIMS 賞の授与に より称えるものである。