高度IT人材育成の軌跡:7.高度IT人材育成のこれまでの総括と今後求められる人材に向けた政策の方向性について
6
0
0
全文
(2) 7 高度 IT 人材育成のこれまでの総括と今後求められる人材に向けた政策の方向性について. 25%. 2007年調査(N=357). 50%. 28.3%. 75%. 特集 高度IT人材育成の軌跡 ITトップガン構想から先導的ITスペシャリスト育成まで . 0%. 100%. 59.1%. 11.5%. 0.3%. 0.8% 2008年調査(N=549). 162.%. 59.4%. 2009年調査(N=621) 5.0%. 43.8%. 2010年調査(N=533) 5.4%. 43.5%. 17.1%. 35.7%. 2.6%. 4.7%. 13.0%. 39.2%. 2.4%. 10.1%. 1.7%. 大幅に不足している やや不足している 特に不足はない やや過剰である (削減や職種転換等が必要) 無回答 0% 2007年調査(N=357). 2008年調査(N=549). 25%. 50%. 23.5%. 75% 67.8%. 54.6%. 32.4%. 2009年調査(N=621). 25.9%. 58.6%. 2010年調査(N=533). 26.1%. 59.7%. 100% 8.4% 0.3%. 8.0%. 12.6%. 12.4%. 4.9%. 2.9%. 1.9%. 大幅に不足している やや不足している 特に過不足はない 無回答. 出典)IPA「IT人材白書2011」. 図 -1 人材の「量」(上の図)と「質」(下の図)に対する不足感. ームワーク」を策定するとともに,次世代に向けた. 少の一途をたどり,2008 年度では約 54 万人まで減. 情報処理技術者試験の改正である.2 つ目は,産学. 少した.改正後は,応募者数も回復し,2010 年度. としたクリエータ系人材の発掘,育成である.3 つ. の大きな要因としては,職業人として誰もが共通で. バルビジネスの環境の整備と国際的な協調関係の構. した「IT パスポート試験」を新たに創設し,広く国. 連携による実践的 IT 教育の展開と,若年層を対象. においては約 62 万人の応募者を記録している.そ. 目は,IT 産業のグローバル化に対応すべくグロー. 備えるべき IT に関する基礎的知識の習得を目的と. 築と拡大である (図 -2) .. 民全般に IT の知識習得を促した結果によるところ. 情報処理技術者試験は,1969 年度に「情報処理技. が大きい.また,共通キャリア・スキルフレームワ. 術者認定試験」が実施されて以来,今日までに延べ. ークに基づき情報処理技術者試験の知識項目を各ス. 1,600 万人が応募し,延べ 190 万人が合格している. キル標準と準拠させることによって,企業側にとっ. 2002 年度の約 80 万人という応募者数をピークに減. って必要となるスキルと紐付けることが容易になる. 我が国最大の国家試験であるが,改正前においては,. ても IT 技術者の能力評価において試験の合否をも. 情報処理 Vol.52 No.10 Oct. 2011. 1263.
(3) 特集 高度IT人材育成の軌跡 ITトップガン構想から先導的ITスペシャリスト育成まで . 図 -2 高度 IT 人材育成のための総合的な取組み. など情報処理技術者の活用局面の拡大が寄与したと 考えられる.なお,本フレームワークは,情報処理 学会が 2009 年 2 月に公表した「情報専門学科にお. 情報処理 技術者試験. IT スキル標準 (ITSS) 準拠. けるカリキュラム標準 J07」とも連動しており,我 が国における産学一貫の人材育成体系構築による成. 共通キャリア・ 参照 スキルフレームワーク (2008 年 10 月公開). 果も寄与していると考えられる (図 -3) .. 産学連携による高度 IT 人材育成基盤の 構築に向けて 産学連携による実践的 IT 教育システムの構築を. 情報システム ユーザー スキル標準 (UISS). 参照. 参照 連動. 組込み スキル標準 (ETSS). J07. 目指し,経済産業省は文部科学省と連携し「産学人 材育成パートナーシップ」を 2007 年 10 月に創設,. 図 -3 共通キャリア・スキルフレームワーク. 会」として始動した.本分科会は,産学の有識者に. ではなく,産学が協働で人材不足の解消に向けた各. よって構成されており,情報処理学会からも委員が. 種施策に取り組むための検討を行ってきた.. 推薦されている.これまでに,10 回の会合と 4 回. 2007 年度では,産学が共通で認識すべき IT 人材. 「情報処理分科 情報処理分野については同年 11 月に. のワーキンググループを開催し,産学人材育成パー. 像を定義し,シームレスな人材育成スキームの構築. トナーシップの本委員会へ 2 度の中間報告を行って. について検討を行った.たとえば,「若い世代に対. いる.この分科会では,IT 産業の実態を踏まえた. IT 人材に関する深刻な課題を浮き彫りにするだけ. 1264 情報処理 Vol.52 No.10 Oct. 2011. する情報産業の魅力,キャリアパスなどの提示が不 十分」,「実践的な教育の実施が不十分」,「能力の見.
(4) 7 高度 IT 人材育成のこれまでの総括と今後求められる人材に向けた政策の方向性について. カリキュラム,教育手法やレビューといったノウハ. レベル人材の正当な評価と優秀な人材の能力を発揮. ウなどを参考とした実践的な IT 教育プログラムが. できる処遇制度や企業文化の形成が必要」といった 課題が検討された.. 整備され,2011 年度には年間約 900 名の学生が実 践的な IT 教育を受けられることになり,また継続. 2008 年度においては,このような課題に対して,. 的な産学連携による教育推進体制が構築された.. 成強化・加速プログラム構想」が提唱された.本. 「ITSS」という), ある.これは,IT スキル標準(以下,. IT 人材育成を抜本的に強化するため,「IT 人材育. 2 つ目は,「IT 人材モデルキャリア開発計画」で. プログラムにおいて, 「モデルキャリア開発計画. 情報システムユーザースキル標準(以下,「UISS」と. , 「専門家コミュニティの形成」お (CDP)の策定」. いう)で示されている IT 技術者の専門職種ごとに. よび「教育目標,評価体制を明確にした,より高. 技術者個人のキャリアパスを調査し,職種ごとにモ. 度なインターンシップの拡大,教育現場における. デル化した上で,未来ある IT 技術者および学生に. Project Based Learning(PBL)の積極的な導入など, 実践的な教育のさらなる推進」などをそれぞれ検討 することとなった. 同年 12 月には,産学連携による高度 IT 人材育. 向けて情報発信を行う事業である.本事業において,. 2009 年度には ITSS の専門職種ごとに 90 名のキャ. リアパス事例,翌 2010 年度には UISS をベースに. 50 名のキャリアパス事例を策定した.また,キャ. 成を具体化し実行するフェーズへと移行すべく,産. リア事例調査を通じて得られた教育・育成に関する. 学人材育成パートナーシップ情報処理分科会の下に,. 気づきを取りまとめ,ITSS においては「人材育成ノ. 産学連携 IT 人材委育成実行ワーキンググループを. 設置した.本ワーキンググループでは, 「インター. 「企業の IS 戦略事例」 ウハウ集」,UISS においては,. などをとりまとめた.. ンシップのあり方」 「リカレント教育のあり方」, , 「教 員の能力強化に対する取組み」, 「教材・カリキュ. IT 人材育成に関する動き. ラムの作成」に対して,具体的なアクションを起こ すべく,産学の有識者がタスクフォースを設置し,. 2009 年 3 月までに事業計画書(案)を取りまとめた.. 本計画書は 2009 年 5 月に開催された情報処理分. 「IT 人材育成強化・加速プログラム構想」に基づ く IT 人材育成強化加速事業によって,産学連携に. よる実践的 IT 教育の実現に向けたプロセスや企業. 科会で承認され,経済産業省の「IT 人材育成強化加. が提供できる効果的な教材,カリキュラムなどのコ. 認された.. 実践的な IT 教育に資する教育プログラム開発につ. 速事業」として主に 2 つの事業を取り組むことが確. ンテンツ一覧などを整備したところである.さらに,. 「産学連携 IT 人材プラットフォーム構 1 つ目は,. いて,産学の有識者双方にノウハウが蓄積されてき. 築計画」である.本事業は,事業計画書(案)に基づ. ており,今後は産学の自発的な取組みによる波及が. き, 「実践的インターンシップモデル構築のための. 期待される.しかしながら,本取組みを通じて見え. 運用ルールや評価の整備」 , 「産業界出身教員の能力. てきた「新たな課題」も表面化してきている.. 強化に向けた研修制度の整備」 , 「産学マッチング体. 具体的には,「カリキュラム,教材開発やリエゾ. 制の構築を目指したプラットフォームの整備」,「リ. ンコーディネートなどに対する資金調達」,「企業か. カレント教育の実態調査」などに取り組んだ.本事. ら提供される教材を使った講義に関するノウハウの. 業の取組みを通して,2010 年度までに全国で 10 の. 伝承方法」,「産学連携教育プログラムに対する評価. 早稲田大学,中央大学,東洋大学,静岡大学,山口. 人材像の継続的な把握」などが挙げられる.. 大学 (公立はこだて未来大学,会津大学,筑波大学, 大学,愛媛大学,九州大学) で企業が提供する教材・. や意識」および「講師,教材および企業が求める IT 教育機関ごとに教育プログラムが異なるため,輩. 情報処理 Vol.52 No.10 Oct. 2011. 1265. 特集 高度IT人材育成の軌跡 ITトップガン構想から先導的ITスペシャリスト育成まで . える化ツールなどの客観的な手法を利用したトップ.
(5) 特集 高度IT人材育成の軌跡 ITトップガン構想から先導的ITスペシャリスト育成まで . 出される人材の IT に関するスキル,知識が異なり,. とりわけクラウドコンピューティングを基盤とした. そのために企業側が提供する教育プログラムのカス. 新サービスの推進,普及が期待されている.経済産. タマイズ方法,教育効果や評価なども異なってくる.. 業省では 2009 年 7 月より「クラウドコンピューテ. また,情報技術に関する技術進化は目覚ましく,新. ィングと日本の競争力に関する研究会」を発足させ,. しい技術テーマを追いかけた教材やカリキュラム改. 2010 年 8 月 16 日に報告書を公開した.. 変を教育界側から絶えず求められている.. 本報告書において,クラウドコンピューティング. これらの諸課題について,政府がすべて解決でき. 時代に合わせた人材育成について, 「1.クリエータ. るものではなく,産業界,教育界がそれぞれに求め られる金銭的・人材的・制度的な負担を共に甘受し ながら自立的に取り組んでいく必要がある. 2010 年 5 月 28 日に行われた内閣府行政刷新会議. およびベンチャー企業の育成支援」,「2.CIO,ビ. ジネスストラテジスト,中小企業などの育成支援」, 「3.システムアーキテクトやソフトウェアデベロッ. プメント,運用・保守技術者などの育成支援」,「4.. においても,IT 人材育成強化加速事業については,. クラウドコンピューティング関連技術の標準化を主. 抜本的な改善を行うよう指摘されている.具体的に. 導できる人材の育成支援」が示されている.ベンダ. は, 「1.日本全体に普及・横展開,自立できるよう. 側においては,「クラウドコンピューティングによ. 抜本的に改善すべき」, 「2.企業の高度人材が大学. って産み出される膨大なデータをマネジメントする. 教員として定着する仕組みがない以上,一過性に終. 技術者」,「高信頼かつ効率的に運用・保守を行う人. わる」 といった指摘がなされている.. 材」,「顧客のニーズに応じた最適なクラウドサービ. 「1.日本全体に普及・横展開,自立できるよう抜. スを提供できる人材」および「クラウドコンピューテ. 本的に改善すべき」という指摘については,産学連. ィング技術の標準化を先導する人材」の育成が示さ. 携による IT 人材教育そのものが黎明期であること. れている.ユーザ側においては,「情報システムを. を鑑みれば, 「産学連携 IT 人材プラットフォーム. コストセンタと見なすことなく,自社の生産性を最. 構築計画」事業で構築したプラットフォームを活用. 大限に向上させるためのツールとして捉え,最適な. した産学連携事例の拡大と波及について,産学官に. IT 投資を行う経営者,CIO,ビジネスストラテジ. よる連携をさらに進めていくこととしている(本指. ストといった人材」の育成が必要であることが示さ. 摘事項については,次項にて触れる).また,これ. れている.ベンダ・ユーザ双方において,進化する. らのノウハウや産学双方の調整などに関するリエゾ. 情報技術,サービスモデルを迅速に捉え,イノベー. ンコーディネータ的な機能についても民間団体等へ. ションを起こすことのできる人材の育成も重要であ. 移管していく体制を整備していく必要がある.. り,1 つのコアスキルを持ってプロフェッショナル. 「2.企業の高度人材が大学教員として定着する仕. を育成していた育成体系フレームから脱却し,複数. 組みがない以上,一過性に終わる」という指摘につ. のスキルを有した人材の育成体系フレームの策定が. いては,経済産業省として,最終的に産業界出身の. 求められているといえる.. 高度 IT 人材が教育界に教員として定着することは. 目指しておらず,産業界のニーズに沿った教育プロ. 高度 IT 人材育成政策の今後の展開. グラムの開発手法,教育手法などが教育界側に定着 し,学生がより実践的な IT 教育を受けられること. IT は,すでに社会インフラとして重要な地位を. を目指している.したがって,引き続き産学双方に. 確立している分野であるが,今後はクラウドコンピ. 対して,本事業で整備したプラットフォームのさら. ューティングを利用した「作る」から「使う」といった. なる情報発信能力を高めていくこととしている.. 流れに乗って,ネット上の仮想空間と現実世界とが. 情報技術はこの数年間で劇的な進化を見せており,. 一体化した新たなサービスや付加価値を生み出す. 1266 情報処理 Vol.52 No.10 Oct. 2011.
(6) 7 高度 IT 人材育成のこれまでの総括と今後求められる人材に向けた政策の方向性について. た 10 大学のようなマッチングモデル事例を拡大す. 育成に関して言えば,即効性が弱く,経営上の事業. るとともに,さらなる教育パターンの開発および地. 戦略を実現するためには時間を要するものであるが,. 域間連携ハブ組織の設置を支援する.. 将来に向けて着実な努力と取組みの積み重ねが必要. 2 つ目は,「次世代高度 IT 人材モデルキャリア開. であり,目指すべき人材像に従って進むことが重要 である.政府としても,新たなサービスを実現させ. 発計画」である.これは,情報サービスを活用して, 将来社会や新たな IT サービスを創造できる高度 IT. る高度人材の知識・スキルや技術変革が早い市場の. 人材像およびその育成フレームを策定するものであ. 動向を継続的に把握し,産業界,教育界と協力しな. る.具体的には,これまでに策定した IT 技術者の. がら支援するための基盤を構築し,情報技術戦略に. モデルキャリアパス事例などを参照しつつ,異分野. 基づく総合的な政策を展開していく必要がある.. 融合や先進ビジネスを担っている人材を調査・分析. 具体的には,既存制度のさらなる利活用,サービ. した上で IT サービス・ライフサイクルのフレーム. スの向上を目的として,共通キャリア・スキルフレ. ワークを整備する.. ームワークに基づく各スキル標準の有機的な活用モ. これらの事業を実施しその成果を踏まえつつ,共. デルを策定するとともに,情報処理技術者試験にお. 通キャリア・スキルフレームワークに基づく IT 人. いては国家試験として初めてコンピュータを使っ. 材像との関連性を示し,高等教育機関等における実. た受験(CBT:Computer Based Testing)を導入する.. 践的な IT 教育と企業における創造的 IT 人材育成. ームについても,参画する企業,教育機関を拡大す. 産業の振興」と同時並行で「IT そのものの振興」を図. また,これまでの産学連携による IT 人材育成スキ. るため,関連する産業団体,企業,教育機関が自ら. に向けた教育を加速させていく.このように,「IT. るべく産学官が共感し,共有すべき人材像のもとに. 連携しながら展開していく体制支援を行っていく.. 各種施策を有機的かつ効率的に展開することで,我. 2011 年度においては,これまでの取組みをさら. が国の産業振興に寄与して参りたいと考えている.. に加速させるべく「高度 IT 人材キャリア形成支援. 計画策定事業」において主に 2 つの事業を進めて いく.. 「実践的 IT 教育モデル拡大実証計画」 1 つ目は, である.これは,これまでの産学連携を推進するた. めに整備したプラットフォームを活用した実践的. IT 教育モデルを拡大するための実証事業として実. 特集 高度IT人材育成の軌跡 ITトップガン構想から先導的ITスペシャリスト育成まで . 「イノベーションの源泉」 となっていくだろう.人材. 参考文献 1) 産業構造審議会情報経済分科会情報サービス・ソフトウェア 小委員会人材育成ワーキンググループ報告書「高度 IT 人材の 育成をめざして」. 2)(独)情報処理推進機構「IT 人材白書 2011」. 3) 経済産業省「産業技術人材育成支援事業(IT 人材育成強化加速 事業)」報告書. 4) 経済産業省「クラウドコンピューティングと日本の競争力に関 する研究会」報告書. (2011 年 6 月 9 日受付). 施するものである.具体的には,これまでに整備し. 情報処理 Vol.52 No.10 Oct. 2011. 1267.
(7)
関連したドキュメント
スキルに国境がないIT系の職種にお いては、英語力のある人材とない人 材の差が大きいので、一定レベル以
Services 470 8 Facebook Technology 464 9 JPMorgan Chase Financials 375 10 Johnson & Johnson Health Care 344 順 位 企業名 産業 時価. 総額 1 Exxon Mobil Oil & Gas 337 2
(出典)※1 教育・人材育成 WG (第3回)今村委員提出資料 ※2 OriHime :株式会社「オリィ研究所」 HP より ※3 「つくば STEAM コンパス」 HP より ※4 「 STEAM
「技術力」と「人間力」を兼ね備えた人材育成に注力し、専門知識や技術の教育によりファシリ
8) 7)で求めた1人当たりの情報関連機器リース・レンタル料に、「平成7年産業連関表」の産業別常
その他 2.質の高い人材を確保するため.
他方、 2015 年度第 4 四半期進捗報告でお知らせしたとおり、原子力安全改革プラン(マネジ
さらに、93 部門産業連関表を使って、財ごとに、①県際流通財(移出率 50%以上、移 入率 50%以上) 、②高度移出財(移出率 50%以上、移入率