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戦略的環境政策のタイミングゲーム分析

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(1)

戦略的環境政策のタイミングゲーム分析

著者

藤原 憲二

雑誌名

経済学論究

63

2

ページ

145-159

発行年

2009-09-15

URL

http://hdl.handle.net/10236/3319

(2)

戦略的環境政策の

タイミングゲーム分析

A Timing Game Model of Strategic

Environmental Policy

藤 原 憲 二  

This paper attempts to apply Hamilton and Slutsky’s (1990) extended game with observable delay to a two-country oligopolistic model with transboundary pollution to consider optimal timings of environmental policies between countries. We identify that the equilibrium timing is crucially affected by two parameters one of which measures the degree of transboundary pollution and the other of which gives marginal damage from pollution. Kenji Fujiwara   JEL:F12, F18 キーワード:国際貿易、環境政策、内生的タイミング

1 導入

標準的な2プレーヤーのクールノー・モデルやシュタッケルベルク・モデ ルではどのプレーヤーが先手に回るのか、後手に回るのか、あるいは同時に行 動するのかが外生的に与えられている。これに対してHamilton and Slutsky (1990) はプレーヤーが自分は先手を打つのか、後手に回るのかを内生的に決 める問題までを含めた拡張ゲーム(extended game)を考えそのゲームの部分 ゲーム完全均衡がクールノー(同時手番)になるのかシュタッケルベルク(逐 次手番)になるのかを明らかにした。この問題自体は彼らの前にも考えられて いたがHamilton and Slutsky (1990) の画期的な点は以上を知るには反応曲 線と等厚生曲線(複占モデルでいう等利潤曲線)の形が分かればよいというこ

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とを明らかにした点である。形式的にはタイミングがどのようになるのかを決 めるには、プレーヤー1が先手・プレーヤー2が後手、プレーヤー1が後手・ プレーヤー2が先手、両プレーヤー同じ手番という3つのパターンにおける 利得を計算してそれらを比較せねばならず、これには煩雑な計算が伴う。しか しHamilton and Slutsky (1990) はそうした煩雑な計算なしでタイミングを 見極めることができることを示した。

彼らのアイデアは産業組織論や貿易政策論に応用されSyropoulos (1994), Collie (1994), Toshimitsu (1997),利光(2000),大川(2000, 2002),大川・岡 村・多和田(2000), Ohkawa et al. (2002), Jinji (2004), Supasri and Tawada (2007)が代表例として挙げられる。また近時、筆者はFujiwara and Matsueda (2009a, 2009b)で「貿易と環境」の問題に応用する試みを行った。だがそこ で考えたモデルは次の点でHamilton and Slutsky (1990)とは違う。第1に 自国政府が取る選択肢は(1)自国企業に先手を取らせるか、(2)自国企業に 後手を取らせるか、(3)閉鎖経済を取るかの3つとする。第2に上述から分 かるようにタイミングを決める主体(政府)とそのタイミング下において競争

する主体(企業)とが違う。この2点によりタイミングの問題を扱ってはいる

もののHamilton and Slutsky (1990)が考えたものとは大きく乖離している。 また彼らの考えた反応曲線図による分析は我々のモデルではできないという技 術的な問題もある。

以上の点を補完すべく本稿ではHamilton and Slutsky (1990)の図による 手法を戦略的環境政策に応用する。ここで使うモデルの原型は環境経済学では よく知られた Kennedy (1994)のモデルの簡略版である。細部については彼 と違う点もあるが基本的なモデルの性質は彼と同じである。このモデルを援用 することで例えば「なぜ世界には環境政策に積極的にならない国があるのか」 といった問題にも合理的な説明を与えることができる。なお Hamilton and Slutsky (1990)のアイデアを戦略的環境政策に応用したものとして Barcena-Ruiz (2006)がある。彼もKennedy (1994)モデルを踏襲しているがそこでは 全く同じ2国を考えているのに対し、本稿は越境汚染の程度と限界汚染被害を 表すパラメータの2つが国ごとに違うという非対称な場合を考慮に入れている

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点で違う。この違いによってBarcena-Ruiz (2006)では現れなかった可能性

が新たに出てくることを示す。

本稿の構成は次の通りである。第2節では基本モデルを提示する。第3節 ではHamilton and Slutsky (1990) の図による分析を適用して、図解による

タイミングの決定を論じる。第4節では今後の課題と結論を述べる。

2 モデル

自国と外国からなる世界を考える。両国は2財を1要素から生産しており、 1単位のニュメレール財は1単位の要素から生産されるとすると要素価格は両 国で1となる。他方、非ニュメレール財は各国の独占企業によって生産され、 x単位生産するにはcx, c≥ 0単位の要素を投入しなければならないとする。 またこの非ニュメレール財を1単位生産すると同単位の汚染が排出され自国政 府(外国政府)はτ≥ 0 (τ∗≥ 0)の従量汚染税を課すものとする。 自国も外国も同じ代表的個人を考え、その効用関数はu = aC1− C12/2 + C2− sZ, a > c, s > 0で与えられるとする。ここでuは効用、Ci, i = 1, 2は 第1財(非ニュメレール財)と第2財(ニュメレール財)の消費量、Z は自 国に蔓延する汚染量である。第1財の相対価格をpとすると、効用最大化の 1階条件から第1財の需要関数はC1= a− pとなる。ここで自国・外国の財 市場は完全にひとつの世界市場に統合されているとすると世界市場における市 場均衡条件は次のようになる: 2C1 = 2(a− p) = x + x∗。ここでx (x∗)は 自国企業(外国企業)の供給量である。この式を pについて解くと国際市場 における逆需要関数が p = a− (x + x∗)/2と得られる。以上の諸仮定により 自国・外国企業の利潤は次のように定義できる1) 自国企業: „ a− c − τ −x + x 2 « x (1) 外国企業: „ a− c − τ∗−x + x 2 « x∗. (2) 1) Kennedy (1994) は各国の財市場が統合されない分断市場を仮定しているが、本稿の分析に関 してはどちらの仮定を使っても全く同じ結果になる。Barcena-Ruiz (2006) も統合市場を仮 定している。

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各国企業は国際市場でクールノー的に行動するとするとクールノー均衡におけ る供給量は次のようになる。 x = 2(a− c − 2τ + τ ) 3 , x =2(a− c + τ − 2τ∗) 3 . (3) ここで各国に存在する汚染量について次のように考える。外国の汚染のうち θ∈ [0, 1]の割合が自国に到達する。よって自国に蔓延する汚染量はZ = x+θx∗ と表すことができる。同様に外国に蔓延する汚染量はZ∗= θ∗x+x∗, θ∗∈ [0, 1] となる。以上の想定を基にすると自国の経済厚生は以下のように求められる。 U = CS + π + τ x− sZ =1 2 » 2(a− c) − τ − τ∗ 3 –2 + 2 „ a− c − 2τ + τ∗ 3 «2 +τ·2(a−c−2τ +τ ) 3 −s · 2(a−c−2τ +τ∗)+2θ(a−c+τ −2τ∗) 3 ≡ U(τ, τ∗). (4) ここでCS は消費者余剰、πは独占企業の利潤、τ x は汚染税収入、−sZは 汚染被害を表す2)。同様の操作を外国についても行うと外国の経済厚生は次の ように求められる3) U∗(τ, τ∗) = 1 2 » 2(a− c) − τ − τ∗ 3 –2 + 2 „ a− c + τ − 2τ∗ 3 «2 +τ∗·2(a− c + τ − 2τ ) 3 −s∗·2θ∗(a− c − 2τ + τ∗) + 2(a− c + τ − 2τ∗) 3 . (5)

3 タイミングの決定

前節で提示したモデルを使って本節では各国政府が先手に回るのか、後手に 回るのかを考える。数学的にはこの問題は次のように解くことができる。(1) 自国が先手・外国が後手、(2)自国が後手・外国が先手、(3)両国が同時手番 2) 汚染被害は線形を仮定する。この仮定を緩めると分析は格段に複雑になる。実際 Barcena-Ruiz (2006) は 2 次の被害関数を仮定しているが計算は極めて煩雑となっている。 3) 自国と外国の違いは θ, θ∗と s, s∗のみであるとする。

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の3ケースにおけるτ, τ∗ を求め、それらを(4), (5) に代入して各ケースに

おける自国と外国の利得(厚生)を出す。そしてそれらを利得行列にしてどの ケースが部分ゲーム完全均衡になるのかを決める。しかしこの計算には非常な 煩雑さが伴う。Hamilton and Slutsky (1990)はこの分析上の煩雑さを図を使 うことで解消した。それによるとタイミングを決めるのは反応曲線が右下りか 右上りか(戦略的代替か戦略的補完か)と等厚生曲線の形状だけである。 ここで準備として各国の反応曲線が右下り・右上りのどちらになるのかを明 らかにする。自国の厚生最大化の1階条件は次のようになる4) ∂U (τ, τ∗) ∂τ ≡ Uτ= −4(a − c) − 7τ − τ∗+ 6s(2− θ) 9 = 0. ここから自国政府の反応関数は明示的に求められ次のようになる。 τ = −τ − 4(a − c) + 6s(2 − θ) 7 . (6) ここから明らかに自国政府の反応曲線は右下り(戦略的代替)であることが分 かる。同じ計算を外国政府についても行うと外国政府の反応関数は次の通り求 められる。 τ∗= −τ − 4(a − c) + 6s (2− θ) 7 . (7) (6), (7)から両国の反応曲線は右下がりで、かつτ− τ∗平面上で自国政府の 反応曲線が外国政府のそれよりもきつい傾きを持つ(図1参照)5) 反応曲線図が図1のようになることでタイミングの決定について可能性を かなり絞り込める。なおこの図は各国の汚染からの被害がsZ, s∗Z∗と線形で 与えられていることに決定的に依存しており、これを2次sZ2/2, s∗Z∗2/2の ようにすると各国の反応曲線が右上りになる場合が出てきてケース分けが格段 に増える。 次に我々が知る必要があるのは等厚生曲線の形状に関してである。具体的に 4) 2 階条件が満たされていることに注意せよ。 5) ここでは τ, τ∗ともに非負であることを保証するために s と s∗、θ と θ∗はあまり乖離してお らず、かつ s, s∗が充分大きいとする。さもなければどちらか一方、または両国が補助金(負の 税)を課す可能性が出てくる。極端な場合として s = s∗, θ = θを仮定すれば、この τ, τ 対する非負条件は 3s(2− θ) − 2(a − c) > 0 で与えられる。

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τ∗

τ O

Home’s reaction curve

Foreign’s reaction curve

図1: 反応曲線 は自国の等厚生曲線は上に凸(逆U字)か下に凸(U字)のどちらになるの かが問題となる6)。自国の等厚生曲線の傾きは dU = Uτdτ + Uτ∗dτ∗= 0よ りdτ∗/dτ =−Uτ/Uτ∗ によって与えられる。ここで の符号は厚生最大化 の2階条件、またはUτ τ < 0であることから、反応曲線上で0、反応曲線よ りも左側(右側)で正(負)である。よって自国の等厚生曲線の形状を決定付 けるのはUτ∗ である。そこでこれを求めると次のようになる。 Uτ∗ =4(a− c) − τ + 5τ − 6s(1 − 2θ) 9 . このうち4(a− c) − τ + 5τ∗= (a− c − 2τ + τ∗) + [3(a− c) + τ + 4τ∗]とな り、(3)で求められた自国のクールノー均衡における生産量が正であるために はa− c − 2τ + τ∗> 0でなければならない。よって4(a− c) − τ + 5τ∗> 0 が従う。だが一般にUτ∗ の符号は正にも負にもなり得る。そこで次の補題を 援用する。 6) この点に関して Barcena-Ruiz (2006) の分析には不完全さが残る。既述の通り、彼は我々よ りも複雑な 2 次の被害関数を仮定しており、この時にも自国の等厚生曲線は上に凸にも下に凸 にもなり得る。だが彼は自国の等厚生曲線が下に凸になるケースしか扱っていない。

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補題1. 図2を参照せよ。(θ, s)が図の斜線部にあるとUτ∗< 0である。 証明. まず1− 2θ < 0またはθ > 1/2であると上で求めたUτ∗ は必ず正に なる。他方、θ < 1/2の場合には次の関係が成り立つ。 Uτ∗ > 0 ⇐⇒ 4(a− c) − τ + 5τ∗− 6s(1 − 2θ) > 0 ⇐⇒ s <4(a− c) − τ + 5τ 6(1− 2θ) . この最後の不等式を図解したのが図2である。図2の右上りの曲線はUτ∗= 0 なる(θ, s)の軌跡を示す。この曲線よりも下(上)に(θ, s)が来ればUτ∗> 0 (Uτ∗ < 0)となる。証了. なお外国の等厚生曲線についても同様の事が成り立ち、図2と全く同じも のを使って外国の等厚生曲線の形状を決めることができる。当面は自国の等 厚生曲線の形状に集中する。今、(θ, s)が図2の斜線部に入っているとすると s θ O Uτ∗< 0 Uτ∗> 0 4(a−c)−τ+5τ∗ 6 1 2 1 図2: Uτ∗ の符号

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Uτ∗ < 0である。よって自国の反応曲線より左側では次式が成り立つ。 dτ∗ ˛ ˛ ˛ ˛ dU =0 = −Uτ Uτ∗ = −(+) (−) > 0. 他方、自国の反応曲線の右側では次式が成り立つ。 dτ∗ ˛ ˛ ˛ ˛ dU =0 = −Uτ Uτ∗ = −(−) (−) < 0. これは自国の等厚生曲線が逆U字になることを意味する。そしてその逆U字 の下側にいくほど自国の厚生は大きくなる。なぜなら逆U字の下側にいくほ どτ∗が小さくなりUτ∗ < 0が満たされている現行の下では自国の厚生が高 まるからである。以上の情報をまとめたものが図3である。 U↑

Home’s reaction curve

図3: 自国の等厚生曲線の形状(Uτ∗ < 0の時) これで我々は各国の等厚生曲線の形状に関して必要な情報を得た。それに応 じて次の4つの可能性が現れる。(1)(s, θ), (s∗, θ∗)が図2の斜線部に入る、 (2)(s, θ)は斜線部に入るが、(s∗, θ∗)は入らない、(3)(s, θ)は入らないが、 (s∗, θ∗)は入る、(4)(s, θ), (s∗, θ∗)ともに入らない。以上を図解したのが図4 から図7である。 これらの図を使うと部分ゲーム完全均衡がナッシュ解になるのか、シュタッ

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図4: ケース(1)

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図6: ケース(3)

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ケルベルク解になるのかを決めることができる。そこで次の Hamilton and Slutsky (1990)の定理を再録する7)

定理1.(Hamilton and Slutsky, 1990, p. 38, Theorem V.) In any duopoly game, whether symmetric or asymmetric, in which each firm chooses a single variable and a unique equilibrium exists on the interior of the action spaces:

(A) if both reaction functions have slopes of the same sign, then either (i) neither reaction function intersects the Pareto superior set relative to the simultaneous move equilibrium, so the unique equilibrium of this extended game is the simultaneous move equilibrium or (ii) both reaction functions enter the Pareto superior set, so this extended game has multiple equilibria.

ここでPareto superior set(パレート優越集合)とは反応曲線の交点より も両プレーヤーの厚生が共に上がるような領域で図4から図7では斜線部で 示している。この定理で重要なのはこの集合に入る反応曲線の本数によってタ イミングが決まるということである。上の定理の(i)によると斜線部に反応曲 線が入らないならば部分ゲーム完全均衡は同時手番になり、(ii)によると斜線 部に反応曲線が2本入ると複数の(逐次手番)均衡になる。以上を我々の図4 から図7に関連させると次の定理を得る。 定理2.(s, θ), (s∗, θ∗)の両ペアが図2の斜線部に入るか、入らないかのいず れかであるとすると、定理1の(i)に該当するため同時手番が部分ゲーム完全 均衡となる。 つまり各国の越境汚染の度合いと汚染被害がかなり似通っていると部分ゲー 7) (B) では反応曲線の傾きがプレーヤーによって違う場合に触れているが我々の問題には関係な いので省略する。

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ム完全均衡は同時手番となる。例えばアメリカとカナダ、あるいはドイツとフ ランスのように隣接する2国は概ねこのケースに該当するとみてよいだろう。 定理2はこのような国同士の場合には両国は同時に環境政策を実施すると予測 する。 他方、2国の間で越境汚染と汚染被害に大きな非対称性がある時には違った 結果となる。 定理3.(s, θ), (s∗, θ∗)のうち一方のペアは図2の斜線部に入るが、他方は入 らないとすると、定理1の(ii)に該当するため複数の逐次手番が部分ゲーム 完全均衡となる。 例えば日本のように環境への関心が強い国はsが充分大きいから図2の斜 線部に入るだろう。他方発展途上国は往々にして環境保護よりも自国の経済発 展を優先させる傾向にあるため、s∗は比較的小さいと考えられる。もし両国 で同程度の越境汚染θ≈ θ∗であってもこのような場合には定理3が該当し逐 次手番が均衡となる。ただしこの定理からだけではどちらの国が実際に先手に なるかは確定できない。 なお興味深い点として逐次手番が部分ゲーム完全均衡になる時には次の結 果も分かる。 定理4. 逐次手番が部分ゲーム完全均衡になると、必ず後手に回る国の方が 高い厚生を得る。 証明. 図8を参照せよ。ここではケース(2)を再録している。今、自国が先 手・外国が後手を選んだとする。すると自国の厚生は同時手番時はUN だっ たが先手に回ることでULに上昇している。他方、後手に回った外国の厚生は U∗F となり、これは同時手番時のU∗N よりも、また外国自身が先手に回った 時のU∗Lよりも高くなっている。従って後手に回る国の方が先手に回る国よ りも大きな利益を得ている。証了.

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U∗N U∗L U∗F UN UL 図8: 厚生比較 なお注意しなければならないのは、この結果から「各国は後手に回る誘引を 持つ」とは判断できないということである。図8からいえるのはどちらの国が 実際に先手に回るかは分からないが、一方が先手・他方が後手になることで両 国共に同時手番時よりも得をするということだけである。 最後に注目すべき点としてもし両国の越境汚染の程度が非常に大きくθ, θ∗> 1/2であればケース(4)しか現れない。つまり地球規模の環境破壊(地球温 暖化、オゾン層の破壊など)を考えるとθ = θ∗= 1となるからこの場合には ケース(4)である両国が同時手番で汚染税を決めるというタイミングのみが 現れる8)

4 結論

本稿ではHamilton and Slutsky (1990)の内生的タイミングゲームのひと

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つを使い、越境汚染に苦しむ2国がどのようなタイミングで環境政策を実施 するのかを分析した。我々の証明した定理は一貫してモデルの過度な単純さや 関数形の特定化に依存している。今後はより一般的なモデルを考え、煩雑でも より多くのケースを考える必要がある。特に2次の被害関数を仮定していな がら、自国の等厚生曲線が下に凸の場合しかカバーしていないBarcena-Ruiz (2006)を補完することは重要な仕事であろう。 参考文献

[1] Barcena-Ruiz, J. C. (2006), ‘Environmental taxes and first-mover advan-tages,’ Environmental and Resource Economics, 35, 19-39.

[2] Collie, D. R. (1994), ‘Endogenous timing in trade policy games: should governments use countervailing duties?,’ Weltwirtschaftliches Archiv, 130, 191-209.

[3] Fujiwara, K. and N. Matsueda (2009a), ‘Effects of transboundary pollu-tion on the mode of internapollu-tional trade of a polluting good,’ Review of

International Economics, forthcoming.

[4] Fujiwara, K. and N. Matsueda (2009b), ‘An endogenous timing analy-sis of international duopoly with transboundary stock pollution,’ Kwansei Gakuin University, Discussion Paper Series, No. 31.

[5] Hamilton, J. H. and S. M. Slutsky (1990), ‘Endogenous timing in duopoly games: Stackelberg or Cournot equilibria,’ Games and Economic Behavior, 2, 29-46.

[6] Jinji, N. (2004), ‘Endogenous timing in a vertically differentiated duopoly with quantity competition,’ Hitotsubashi Journal of Economics, 45, 119-127.

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[8] Supasri, Y. and M. Tawada (2007), ‘Endogenous timing in a strategic trade policy game: a two-country oligopoly model with multiple firms,’ Review

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[9] Syropoulos, C. (1994), ‘Endogenous timing in games of commercial policy,’

Canadian Journal of Economics, 27, 847-864.

[10] Toshimitsu, T. (1997), ‘On the endogenous timing in trade policy game: a general case,’ Kwansei Gakuin University, Discussion Paper Series, No. 20. [11] 大川隆夫 (2000), 「R&D 投資のインセンティブとタイミング」,『立命館経済 学』, 49, 55-64. [12] 大川隆夫・岡村誠・多和田眞 (2000), 「3 国モデルにおける戦略的貿易政策の再 解釈」, 『立命館経済学』, 49, 1-12. [13] 大川隆夫 (2002), 「競争政策と関税政策」, 『立命館経済学』, 50, 53-58. [14] 利光強 (2000), 「最適貿易政策とタイミング−対抗措置関税政策は最適なタイミ ングか?」, 『現代貿易政策の経済分析』所収, 有斐閣.

図 1: 反応曲線 は自国の等厚生曲線は上に凸(逆 U 字)か下に凸( U 字)のどちらになるの かが問題となる 6) 。自国の等厚生曲線の傾きは dU = U τ dτ + U τ ∗ dτ ∗ = 0 よ り dτ ∗ /dτ = − U τ /U τ ∗ によって与えられる。ここで U τ の符号は厚生最大化 の 2 階条件、または U τ τ &lt; 0 であることから、反応曲線上で 0 、反応曲線よ りも左側(右側)で正(負)である。よって自国の等厚生曲線の形状を決定付 けるのは U τ ∗ で
図 3: 自国の等厚生曲線の形状( U τ ∗ &lt; 0 の時) これで我々は各国の等厚生曲線の形状に関して必要な情報を得た。それに応 じて次の 4 つの可能性が現れる。 ( 1 ) (s, θ), (s ∗ , θ ∗ ) が図 2 の斜線部に入る、 ( 2 ) (s, θ) は斜線部に入るが、 (s ∗ , θ ∗ ) は入らない、 ( 3 ) (s, θ) は入らないが、 (s ∗ , θ ∗ ) は入る、 ( 4 ) (s, θ), (s ∗ , θ ∗ ) ともに入らない。以上を図解したのが図
図 4: ケース( 1 )
図 6: ケース( 3 )

参照

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