平成 13年 6月 (2001)〕
静岡県立大学看護学部
清 水
嘉 子
(Yoshiko Shimizu)
元常葉学園大学
増 田
末雄
(SueO Mashuda)
要 約 我 が国 に在住 す る外 国人 は年 々増加す る傾 向を示 し,全
国的 に検討 す ると静 岡県 には外国人 が 多 く在住 して い る。 そ こで,静
岡県浜松 市 にお け る在 日プ ラジル人 の母親 の育児 に関す る問題 を 明 らか にす るために浜松市 内の保育所 。託児所 に子供 を預 けてい る母親 141人 にポル トガル語 に よ るア ンケー ト調査 を依頼 した。 回答 の得 られ た65人の調査結果 を分析 した。日本 とプラジル との子育 ての違 いについて意識 し てい る ものが 65人 中49人(754%)お
り,子
育 てのつ らさにつ いて は 56人(861%)が
感 じて いた。育児 ス トレスと しては,40人
(61.5%)が
抱 えて い ることが明 らか にな った。特 に,在
日 年数が 5年 未満の母親 の育児 ス トレスが在 日年数 5年 以上 の母親 に比べて多 い ことが明 らか とな っ た。 一方,子
育 て に関す る不満 は65人中 21人(323%)と
少 な く日本 の治安 の良 さや,教
育 の施 設設備 や教科 に対す る良 い評価 が見 られていた。本研究 は在 日ブラ ジル人の子育ての実態を とら え る基礎 的調査 と して意義があると考え られた。I.緒
言 1990年 6月 の出入国管理 および難民認定法 (入 管法)の改正 に伴 って外 国籍 の2,3世
に も合法 的 な就労 の道 が開かれた。 これ までの単身型か ら家 族 を呼 び寄せ る形態 がおゝえ, また, 日本 のパ ブル 経 済 の破綻 で,長 期滞在 を余犠 な くされて い る°。 労働省 の推計 によれば 97年 末の外 国人労働者数 は不法就 労者 を含 め66万人 で,日本 の労働人 日の ほぼ1%に
相 当 して い る。 その大多数 は,土
日の 勤務 のみな らず時 間外勤務 が行 われて い るか。 外 国人労働者 の数 の増加 と共 に,外
国人労働者 の子供の教育 の問題が とりあげ られ るようにな り, 子供 が 日本 の学校 にいか に適応 す るのか,ま
た 日 本 に慣 れて い くことによ って帰 国後 の ブラジルで の教育 はどうなるのか とい う問題が生 まれている。 親 は仕事 で忙 し く,子
供 は 日本 の学校 につ いて 行 けず に,不
登校 とな る。 果 て は非行者 と して社 473 会的 な問題 を起 こす子供 た ちが後 を絶 たない。親 子 が,
日本 で共 に生 活 して い く上 での新 たな問題 が生 まれて い る。 その 中で,教
育 のあ り方 を巡 る取 り組 みが少 し ずつ行 わ れ始 め てお り,ブ
ラ ジル人学校 を創 り, どこの国で も生 活 して いけるグローバルな教育 を 目指す動 き も見 られて いる。 また学校 内では言葉 につ いて重 点 的 に指導す る教育 を組 み入 れた り, 地域 で もボ ラ ンテ ィアによる母 国語 の教育な ども 行 われてい る。 さ らに,乳
卸児期 を巡 る母子保健 問題 や子育 てへ の取 り組 みが始 め られ,5カ
国語 による子育 て相談 のパ ンフ レッ トを作成 し窓 口で 配布 した り,互
いの交流 を深めるための国際母子 港ゝれ あ い フ ェアな どを開催 して いる。 また,外
国 人 を受 け入 れて い る保育所 な どで外 国人 の子供の 保 育 検 討 な ど も少 しず つ で は あ るが行 われ て い ると2)。在 日 ブ ラ ジ ル 人 の 母 親 の 育 児 ス ト レ ス
全 国的 にみ る と ブラ ジル人 は在 日外 国人の中で 韓 国
,北
朝鮮,中
国 につ いで4番目に多 くな って い る°。1997年 文部省調査「 日本語教育が必要 な 外 国人児童生徒 の数」 によると静 岡県 はブラ ジル 人 が 1525人 で,愛
知県・ 神奈川県 につ いで,3番
目に多 く,児
童生徒 の在籍 す る学校数 も多 い。 自 動車 関連 な どの工業地帯 で ある静 岡県浜松地 区 に 日系 ブラ ジル人 が仕事 を求 めて 日本各地 か らや っ て きて お り,東
京都 や群 馬県在住 の ブラジル人 を 数 で しの ぐ。特 に浜松市 は 日本 の市 町村 で ブラ ジ ル人 の住民数が最 も多 い。浜松市周辺 は,本
国ヘ の送金 に便利 な ブラジル銀行 の地方 出張所 が 日本 でただ 1カ 所 あ り, ブラ ジル食材店・ レス トラ ン, ポル トガル新 聞 な どが そ ろい生活 も便 利で あ る。 仲 間が多 く言葉 も通 じる土地 な ら何 とかな る とい うことで,集
ま って くるの だ と考え られ る。 その 多 くは会社 の提供す るアパ ー トや寮 に住 み,失
業 すれ ば収入 は途絶 え家 もな くな る事 もあ る。 一方,地
域 で はブラ ジル人 コ ミュニ テ ィーヘ の 対応 が迫 られて いる。異文化摩擦が地 域住民 との 間 で生 じて いるので あ る。 こ う した我が国における状況 を踏 まえて,浜
松 市 に在住 して い る在 日ブラ ジル人 の母親 の子育 て に関す る1)日本 とブ ラ ジル の子育 ての違 い,2)
日本 で の子育 て のつ らさや不満,子育 てへの期待,3)育
児 ス トレス とその文ヽす処 の問題 を明 らか に し, 異文 化社会 での子育 て に伴 う問題 につ いて検討 し た。 Ⅱ.研
究方法1.調
査 期間 平 成10年11月 ∼ 12月2.調
査対象 と方法 乳幼児期 にあ る子供 の子育 て を して い る在 日ブラ ジル人 の母親 (子供 を浜松市 内の公私立 の保育 園13ヵ所 また はブラジル人 の経 営す る託 児所3ヵ所 に預 けて い る母親)に
対 して 日本 で の子育 て に関す る内容 につ いて のア ンケー ト用紙 を作成 し調査 を行 った (表1)。 項 目につ い て は,ブ
ラ ジル人 の母親 ですで に幾つ かの調査 に 関わ った ことの あ る人 に内容 の確認 を依頼 し表現 上 の修正 を行 った。その上 で ポル トガル語 に直 し, 再度 同 じ人 に確 認 を依頼 した。3.調
査対象 の選択理 由(1)静
岡県 内で は浜松 に集 中 して在 日ブラ ジル人 表1在
日ブラジル人 の母親 の ア ンケー ト調査 1,お母 さんの年齢 と国籍 と職業 2.お子 さんの人数 3.お子 さんの年齢 と性別 4.日本 に来て何年 目ですか ? 5,一 緒 に暮 らしている人は誰ですか ?6ご
主人の年齢 と国籍 と職業 7.子 供 さん に話す ときは何語で話 しますか?子
供 さ んは何語 で話 しますか ? 8.日本 とブラジル との子育ての違 いはあ りますか ? はい いいえ それはどの ようなことですか ? 9,子 育てを していて,イ ライラ した リス トレスに感 じ ることはあ りますか ? それはどのようなことですか ? 10.日本で子育てを していて,自分 が体験 した最 も苦 しい,いやな,困った出来事 を書 いて下 さい。 この出来事 はどのように対処 しま しま したか ? その結果 は どうで したか? ■.日本で子育 てを していて,不満,期待,希望があ り ますか?そ
れは どのような ことですか ? 12.子育てで困 った ときは誰 に相談 しますか ? 13。その他何で も結構 ですので,気がついた ことがあ りま した ら,ご記入下 さい。 が生 活 して い ること(2)外
国人 の多 くは両親共 に働 いていることが多 くその多 くは,保
育所 または託 児所 に子 どもを預 けて い ること(3)就
労条件 によ って は公私立 の保育 園で は保育 時間 が間 に合 わず無認 可 の保育所 に頼 らざるを得 な い実状 が あ ること こ う した背景 をおぅまえて今 回,公
立私立 の保育 園 お よびブラ ジル人 の経営 して いる託児所 に子 ど もを預 けて い る母親 を対象 と した。4.回
収結 果 浜松市 内の公私立保育 園93人配布, 53人
回収 (回収率5699%)
浜松市 内の ブラ ジル人経営 の託 児所 48人 配布, 12人回収 (回収率2500%)
合 計 141人 配布,65人
回収 (回収率46.10%) 5。 分析方法 ポル トガル語 で記載 されて い る調査結果を 日本 語 に直 し,内容 を検討 し,項目ごとに整理 して い っ た。推計学的検討 はガ 検定 で行 った。 Ⅲ。 結 果1.対
象 の属性 対象 の属性 は表 2に 示す通 りだ った。平成 13年 6月 (2001)〕 475 表
2
対象 の属性 (人) 世帯構成 在 日年数 子供 の数 両親 の国籍 両親の職業 両親 の年齢 59 核家族 12 5年未満 36 1人 父 親 母 親 父 親 母 親 父 親 母 親 2世帯 44 5年以上 21 2人 ペ ル ー 20 製造業 11 26 20∼30潟監 母子家庭 3人 カナダ 12 サー ビス業 45 34 31∼ 40歳 4人 63 63 ブラジル 10 事 務 41歳以上 日本 12 10 専 門職 主 婦 その他 親 の年齢 では母親 で は20∼30歳代 が40%(26
人)を
占めてお り,父
親 では30∼40歳代 が69%
(45人)と
もっと も多 く全体 的 に高年齢 の親 が多 か った。 父親 の職業 で は製造業,サ
ー ビス業,専
門職 が 多 く見 られ全体 の75%(49人
)だ
った。 また母 親 で は製造業,専
門職,事
務職 の順で多 く見 られ て全体 の72%(47人
),他
に主 婦が9%(6人
)を
占めて いた。 国籍 につ いて は97%(63人
)が
ブ ラジルだ った。子供 の数 につ いて は,1人
が55%
(36人),2人
以上 が40%(26人
)と
な って いた。 在 日年 数 で は5年未 満 が18%(12人
),5年
以上 100,6 人 50% 数 は68%(44人
)と
な って いた。家族構成 では核 家族 が91%(59人
)と
な って いた。相談者 の人 数 で は1人が60%(39人
)で
,相
談相 手 と して もっと も多 いの はブラ ジル人 の友人38%(25人
), 夫22%(14人
), 日本人17%(■
人)と
な って お り,数
と して は少 な いが神 があげ られていた。 話 す言葉 につ いて はポル トガル語 (親38%29
人,子
42%27人
)が
もっとも多 く次 いで, 日本 語 とポル トガル語 の混合 (親28%18人
,子
28%
18人),日本語 (親17%■
人,子 28%18人
)と
な って いた。子供 は 日本語 を使 う傾 向がやや多 く み られて いた。 n=65□ 無回答
日 な し賜 あり
育 児 ス ト レ ス 子 育 て の 違 い つ ら い こ と 不 満 図1
子育 ての受 け止 め 19 0%表
3
子育 ての ス トレス そ の 他 刈写 す校 るの 不方 満針 `こ 日 本 の 文 化 の 適 応 帰 国 後 の 不 安 子 供 の 自 己 本 位 な 特 性 困 難 な 仕 事 と の 両 立 項 目 教育の ことを考えるととて も心配 にな ります。 ブラジルヘ戻 った ときのポル トガル語 の勉強で少 しイライラというか焦 りを感 じま す。 子供がブラジルヘ帰 ったとき,暮らし。教育・言葉の違いの受け止め方が,心配です。 子供が将来 ブラジルに帰 った とき,ブラ ジルの生活・ 習慣 になれ るか 自分 自身 コントロールをな くす ことがある。話 し合いで分か り合 う。子供達は外に 出ないで良 くテ レビを見ている。 頑固でわが ままな とき。小 さいので私 の言 っていることが分か らないか ら。 言 うことを聞かない(子供)の時,ス トレスになる。 健康状態が良 くない とき。学校 で少 し甘 やか されて,家で言 うことを聞かない とき。 子供は賢 くな り私には考え られないようなことをす ることがあるとき。 全て分か ることはとて も難 しいのでス トレス・ イライ ラがある。 遠 い国で仕事 はとて もきつ く,家では休 みたいだけでな にもできないが,子供 はわが ままを言 う。 仕事 が長 く,きつい時。 仕事時間が長いため気短にな りがちです。 暮 らしの リズムと子供 との時間が少ない。 コミュニケーションの時間が少ない。 時間がな さ過 ぎること。 毎 日が忙 しすぎるため,子供に必要なオ リエ ンテーションができない。 日本での一 日はとて も早 く,仕事 。家の繰 り返 し。 また仕事はきつ く,家族の時間が 少なすぎることが子供の教育に影響 している。 外国人 は仕事 を継続す るのが難 しいので,休んで学校 に行 けない。学校 と会社 の休 日も違 う。 疲れて帰宅後,家事を しなければな らな く,子供 との時間が もてない。又子供 を し か って しま うときがある。後で後悔す る。 仕事疲れでス トレスがあるため教育・家庭に影響があると思 う。 仕事で疲れているとき 内 容 夫 と別れた こと。 娘 は 日本の学校 によ く慣れたためス トレスにな るまで にはな らない。学校では子供 たちに薄着 でいさせ るため とて も心配 です。 学校で は寒 いのに薄着 でよ く風邪 を引 く。 人種差別が あると聞いたことがあ ります。そのために も小学校 に入 るな ら日本 の保 育 園か ら日本 の習慣・ 文化を覚え させれば,先生や 日本 の子供たちか ら人種差別 は されないだ ろう。子供 につ らい思 いは させた くない。 まだ 日本 の文化を知 らないので,いろい ろ気を使 ってや りますので,それで疲れてい ます。 私 は 日本語 の読み書 きがで きないため,子供 たちの助 けにな らない。 ブラジルヘ戻 ったとき 日本 の学年 どお りに入れた ら 日本の教育はプラジルと比較にならないほど良いので,子供達に必要ですが,帰国 し たとき,母国の言葉が話せないのが心配です。 1 1 2 各例数 1 2 2 1 1 1 2 合計例数 5 7 9 15平成 13年 6月 (2001)〕 2.日本 とブラ ジルの子育 ての違 い 日本 とプ ラ ジル の子育 て の違 い は
753%(49
人)が
感 じて いた (図1)。 内容 と して は教育 に対 す る もの と,愛
情表現 の仕方 につ いて あげ られて いた。特 に教育 に対す る ものでは,好
意 的評価 と して 日本 の教育 は良 い,す
べてがそ ろってい るな どの意 見 が全体 の17人と多 くな って お り,厳
し い,冷
たい,時
間や行事 が多 いな どの意見 は 5人 とな って いた。愛情表現 では冷 たい感 じがす る, 愛情 の表現 が少 な い と感 じてい る人 が3人いた。3.子
育 てでの辛 い こと,不
満,期
待 子育 ての受 け止 め方で は86.1%(56人
)が
つ ら い と答えていた (図1)。 文化言葉 へ の道応,社
会生活上 の困難,差
別 や 孤独感 な どが あげ られて いた。 日本 の文化 や言葉 への適応 (45人)で
は習慣,食
べ物,考
え方,読
み書 き,話 ,コ
ミュニケー シ ョン,仲
間 には入 れ ない,集
ま る場所 がないな どとな ってお り異文化 での生 活 での とま どいや寂 しさ,意
思疎通 の困難 さな どが含 まれて いるこ とがわか った。社会生活 上 の困 った こ とと して (11人),保
育 園の手続 き や園 との連絡,国
民保 険 の加入 を巡 る問題 が あげ られて いた。3件と少 な いが ブラジル人 に対 す る 人種差 別 を感 じる人がいた。 子育 てでの不満 につ いて は,32.3%(21人 )が
あ る,254%(23人
)が
な い と答 え て いた (図 1)。 無 回答が 19人(29.2%)と
他 の質 問項 目に比 べて多か った。不満 として受 け止 めていた ものは, 子供 との時間や ブ ラジル に帰 ってか らの こと,子
供 の 自己本位 な特性 や社 会生活上 の不満 が あげ ら れて いた。不満が ない もの は,そ
の理 由と して 日 本 の治安 の良 さや教育 の良 さにつ いてあげていた。 子育 てへ の期待 では,行
政 への改善 を希望 す る もの(7人 ),ポ ル トガル語 の学校 や科 目が ほ しい, 学校方針 に対 して, 日本 人 との交流 や ブラ ジル人 同士 の交流,雇
用者側 の理解 な どが あげ られ て い た。保育 園や幼稚 園の質 や保育時間,入
園の手続 きに関す る もの,相
談室 の開設 や,病
院の対応 な どが実 際生 活 して い く上 での改善項 目と してあげ られて いた。学校方針 に対 しては,寒
い とき に半 袖,半
ズボ ンに着替え るとい うことに対す る不満 や給食 を食 べ ることがあ げ られて いた。 また, こ 477 う した社会 で子供 が育 つ ことで, 自分 の子供 も日 本人 の よ うにな って い くことへ の心配 が あげ られ ていた。 また,仕
事 に追 われた生 活 の中で, ブラ ジル人 同士 の交流 ももてずにいること,
日本人 と どのよ うに交流 を持 つ ことがで き るのか につ いて 心配 して い るこ とがわか った。雇用者 に対 しては, 子供 を持つ親 と しての人権 の確保 の配慮 を期待す るものがあ った。4.在
日ブラ ジル人 の子育 て ス トレス とその対処 育児 ス トレス につ いて は61.5%(40人 )が
あ る,246%(16人
)は
ない と答 えていた。9人は 無 回答 だ った (図1)。 具体的 な項 目と しては,困
難 な仕事 との両立 につ いてあげて お り(15人),つ いで子供の 自己本位 な特性 (9人),帰
国後 の不安 (7人), 日本 の文 化 へ の適応 (5人),学
校方針 に 対す る不 満 (2人)が
あげ られ て いた。 詳 しい内 容 につ いて は表 3に 示 す通 りだ った。 育児 ス トレスヘ の対処 では, 日本語 の勉強 (24 人),人
の助 け (10人), 日本 人 との交 流 (5人) な どが多 く用 い られて お り,数
は少 ないが気持 ち や見方 を変 えた り,現
実逃避 す る事 で乗 り越 えて いること力式わか った。5.育
児 ス トレスの有無 と母親 の年齢,在
日年数, 子供 の数,話
す言 葉 との関係 対象65人中9人の無 国答者 を除いた56人の ス トレスの有無 か らみて み ると,図
2に み られ るよ うに在 日年数 が5年未満 の人 は5年以上 の人 と比 較 して ス トレスの あ った人が,有
意(/検
定 にお いてP<0,005)│こ
多 くな って いた。 有意差 は認 め られなか ったが母親 の年齢,子
供 の数,母
親 の話 す言葉 と育児 ス トレス との関係 は 図 3∼ 5に 見 られ るよ うな結果 にな った。 母 親 の年 齢 で は31歳以上 の年 齢 の高 い母親 よ り,20歳
代 の母親 の方 が育児 ス トレスが多 い傾 向 にあ った。 普段 ポル トガル語 を話す母親 は 日本語 や 日本語 とポル トガル語 の混合 で話す母親 よ りも育児 ス ト レスが多 い傾 向 にあ った。 子供 の数 で は,2人
以上 の母親 の方 が 1人 の母 親 よ り育 児 ス トレスが多 い傾 向 にあ った。 Ⅳ.考
察1.子
育 ての違 い につ いて12** 庁 16
□在日年数
5年未満
賜 在 日年数5年以上 勿 勿吻
n=56 n=56 人 数 人 15 育児 ス トレスあ り 育児 ス トレスな し**P>0005
図2
在 日年数 と育児 ス トレス 25 n=56 人 15 数 10 育児ス トレスあ り 育児ス トレスな し 図4
子供 の数 と育児 ス トレス 今 回 の在 日ブ ラ ジル人 に対 す る調査結 果 か ら, 子育 て の違 い と して,学
校教育 に対す る ものや子 供 へ の愛情表現 な どが あげ られていた。教育 の違 いは あ る と しなが らも,教
育│こ対 して は好意 的 に 評価 していた。 ブラ ジル と日本 の教育 を比較 した 場 合,我
が国 にお ける情操教育 を含 めたカ リキ ュ ラムの内容 や施設設備 に対す る満足 と考 え られ た。 愛情 表現 につ いては感情 や思 いを行動 で示す文化 を持 った国 と 日本 の よ うに こう した ものを心 の奥 に秘 めて押 さえ る ことを美徳 と し,察
す る国 との 文化 との違 いが根底 にあ ると考 え られ た。 十 対 象 を就学前 の子供 を持 つ母親 に したに も関わ らず上 の子供 が,学
校 に上 が ってい ることな どか ら,学
校 に対す る問題 が あげ られて いた。 こう し た事柄 は母親 にとって大 きな問題 とな っているこ 数 10 0 育児 ス トレスあ り 育児 ス トレスな し 図3
母親 の年齢 と育児 ス トレス n‐56 人 15 ポル トガ■ 日本語
□混合
6 6 F ¬ 4 「―――コ 巾 日 数 10 育児ス トレスあり 育児ス トレスな し 図5
話す言葉 と育児 ス トレス とが伺 われ る。 ブラジル人 の母親 は保育所 や託児 所 に子供 を預 けてお り,子
育 ての違 いにつ いての 問題 が もっと提起 され るか と予想 して いたが,少
なか った。対象 が小 さい ことか ら,子
供 自身 の声 とな って親 に届 いて いない ことや,施
設 での子供 の生活 については,ま
かせて い るか または,生
活 とい う点で大 きな文化 の違 い と して表面化 して い なか ったので はな いか と考 え られ た。 また,調
査 対象 が在住す る浜松 の園で は,ポ
ル トガル語 のパ ンフ レッ トを作成 し在 日ブラジル人 の母親 の不安 解 消 や意志疎通 を図 るための努力 がな されて い る こと も関係 してい ると考え られた。本調査の対象 は ブラジル人経営 の託児所 に預 けて い る人が全体 の18%を
占めて い ることも関係 してい ると考 え ら れた。 0 0 母31 2119
-子供1人 子供2人以上 11 ー 20 20平成 13年 6月 (2001)〕
2.子
育 てでの辛 い こと,不
満,ス
トレス 予想通 り多 くの母親 が子育 てでの幸 い こと,不
満,ス
トレスを感 じて いた。異文化,言
葉へ の適 応,社
会生 活上 の困難,差
別 や孤独感 は,母
親 に とっての辛 い ことで あ る。特 に,不
満・ ス トレス につ いてみて い くと,子
供 との時間が とれな い と い うことが大 き くあげ られてお り,家
族や家庭教 育 の重要性 を認識 してい るブラジル人 に とって苦 痛 で あ り,不
満 と して表 れてい ると考 え られた。 ブラジル人 の母親 は長時間の仕事 とい う厳 しい労 働条件 の中で,疲
れ,イ
ライ ラ し,子
供 を しか っ て しま う状況 がみ られ,子
供 の 自己本位 な特 性 に 関 して は子供 のわ が まま,同
じこ との繰 り返 し, 頑 固,言うことを聞かないな どがあ げ られ ていた。 働 く母親 に とって万 国共通 の内容 と考 え られた 。。 帰 国後 の不安 や 日本文化へ の適応,学
校方針 に対 す る不満 は ブラジル人独 自の もので画 一的 に扱 わ れ ることへ の不満 で あ り,改
善へ の期 待 と考 え ら れ た。 今 回,育
児 に対 す る不 満 が全体 の25%と
少 な く,育
児 に対す るつ らさや ス トレス とは異 な った 傾 向が明 らか とな った。 つ らさや ス トレス と して は感 じて い るが,32%は
満足 してお り,治
安 の良 さや施設設 備 や教 科 内容 に対 して評価 してお り, 母親 の全体 の受 け止 め と して満足 とな った と考 え られ る。 日本社会 の適応 や言葉 の習得 につ いて はむ しろ 子供 自身 の適応 の早 さに比較 して,親
自身 の生活 内容 の閉鎖性 か ら,ま
た年齢 的な ものか ら適応 が 困難 とな り,そ
の2者間でのず れが大 き くな って い く新 たな問題 を提起 して いる°。今 回の調 査 で は子育ての対象 を乳幼児期 と してい る ことか ら数 と しては少 なか った。 こうした問題 は,子
供 の年 齢 が高 くな るに従 って生 じて くる ものだ と考 え ら れ た。在 日外 国人 の 日本語能力 は「 聞 く話す」 は 5割がで き るが,「読 む書 く」 は1/3程度 に減 って い る°。子育 て している母親 たちへ の「 読む書 く」 の能力向上 のための支援が望 まれるところである。 今 回の調査 対象 は核家族 が ほとん どで ある こと か らも考え られ るが,夫
や家族 にた いす るス トレ ス はみ られ なか った。 日本人の調査 によると子育 て におけ る人 間関係 のス トレスが高 か った こ とか 479 ら, 日本人 の母親 と在 日ブラ ジル人 の母親 の育児 ス トレスの違 い と考 え られたD。 在 日ブラ ジル人 の話 による と「 夫 は妻 にね ぎ らいの言葉 をか け, む しろ家庭 は職場 での ス トレスを解決す る場 と し て機能 している」とい う。「 ブラ ジル人 は 自分 を最 も大切 に して い るか ら, も し,夫
婦 が互 いにス ト レスにな るな らば,離
婚 して い るのが普通」 とい う言葉 か ら,家
族 関係 の ス トレスがない ことが理 解 で きる。3.育
児 ス トレスに対 す る対処 これ らス トレスに対す る母親 の文ヽす処 で は,圧
倒 的 に 日本語 の勉強 が多 く, さ らに人 の助 けや母親 自身 が努力 して変 わ る とい った ものが多 く,積
極 的姑処行動 と位置 づ ける ことが 出来 る。異文化 で 暮 らして い くため には,ま
ず その問題 を解決す る ための積極的行動 を起 こす ことで,適
応 して い こ うとす る在 日ブラジル人の母親達 の姿が伺われた。 その根底 には,母
国で は中流 と しての生 活が確保 されて いたに もかかわ らず, 日本 に出か け もっと 何 かを したい とい う動機 を持 った人 々で あ る こと も関係 して い るのではな いか と考 え られた。また, 在 日年数 が5年未 満 での育児 ス トレスを感 じてい た ものが多か った ことをおゝまえて 日本での暮 らし の初期 の段階での支援 が望 まれ る。4.お
わ りに 在 日ブラ ジル人 の母 親 は,
日本 の文化社会 へ の 適応,困
難 な仕事 との両立,子
供 との時 間が もて ない,帰
国後 の不安 を持 ってお り,そ
の対処 とし て, 日本語 の勉 強,人
の助 けを得 る, 日本人 との 交流等 の積極 的対 処行動 が見 られて いた。 今後, こうした結果 を基 に在 日外 国人 の子育 て を巡 るよ り詳 しい調査 を実施 していきたい と考 え る。特 に異文化社 会 にお け る母親 の子育ての問題 を 日本 人 の母親 との比較 な どを通 して検討 しさら に深 めていきたい。 (今回の調査 にご協力 をいただいた浜松市 内の保 育 園の園長 は じめ関係者 の皆様及 び在 日ブラ ジル 人の母親 に深 く感謝 す る) 文 献 1)渡辺正子編:出稼 ぎ日系 ブラジル人 上論文編,就
労 と生活 下資料編,体験 と意識, 109,明
石書店,東
京,19952)手塚和彰他:外国人労働者の就労実態総合的実態調 査報告集