氏 名 森 友 紀 恵 ヨ ミ ガ ナ モ リ ユ キ エ 学 位 の 種 類 博 士 ( 美 術 ) 学 位 記 番 号 博 美 第 631号 学 位 授 与 年 月 日 令 和 2年 3月 25日 学 位 論 文 等 題 目 〈 論 文 〉 包 ま れ る 空 間 認識 - 乱 視野 と 輪 郭 の共 生 - 〈 作 品 〉 「 狭 間 」「 沿 う」 〈 演 奏 〉 論 文 等 審 査 委 員 ( 主 査 ) 東 京 藝 術 大 学 教 授 ( 美 術 学 部 ) 手 塚 雄 二 ( 論 文 第 1 副 査) 東 京 藝 術 大 学 教 授 ( 美 術 学 部 ) 佐 藤 道 信 ( 作 品 第 1 副 査) 東 京 藝 術 大 学 教 授 ( 美 術 学 部 ) 吉 村 誠 司 ( 副 査 ) 東 京 藝 術 大 学 准 教 授 ( 美 術 学 部 ) 宮 北 千 織 ( 副 査 ) ( ) ( 副 査 ) ( ) ( 副 査 ) ( ) ( 副 査 ) ( ) ( 副 査 ) ( ) ( 副 査 ) ( ) ( 論 文 内 容 の 要旨 ) 本 論 文 で は 、 幼い 頃 か らメ ガ ネ を かけ て き た ため に 発生 し 、 自 身 の 作品 の 根 源で も あ る 「乱 視 視 界 」と 「 矯 正 視 界 」 の2 つ の 視界 に つ い て考 察 し 、 それ に よっ て 「 包 ま れ る空 間 」 を生 み 出 そ うと し て い る自 身 の 創 作 に つ い て 論述 し た 。 私 は 幼 い 頃 か ら、 乱 視 ・近 視 矯 正 のた め に メ ガネ を かけ て 生 活 し て いる 。 そ のた め 裸 眼 の状 態 と メ ガネ の 状 態 、 2 つ の 見え 方 が 常に 存 在 し てい た 。 裸 眼の 状 態で は 物 と 物 と の境 界 が 曖昧 に な り 、染 み 広 が って 行 く よ う に 見 え る 。私 に と って 裸 眼 の 空間 は 、 物 の輪 郭 がブ レ た 「 柔 ら かな 視 界 」で あ る 。 これ は 結 露 した 窓 ガ ラ ス 越 し に 見 る光 景 に 似て お り 、 幻の よ う な 雰囲 気 があ る 。 こ の 光 景を 私 は 昔か ら 美 し いと 感 じ て おり 、 同 時 に 柔 ら か な 見え 方 に 安心 感 も 感 じて い た 。 それ に 対し て メ ガ ネ に よっ て 矯 正さ れ た 視 界は 、 は っ きり と 物 を 捉 え る 「 輪 郭の 視 界 」で あ る 。 ブレ た 視 界 が日 常 的に 存 在 し て い るか ら こ そ 、「 輪 郭 の視 界 」 で は視 力 異 常 の な い 人 よ りも 、 よ り形 へ の 意 識が 高 ま っ てい る と私 は 考 え る 。 ここ か ら 「輪 郭 の 視 野」 で 行 う 素描 は 、 情 緒 性 を 求 め るよ り も 多く の 形 の 種類 を コ レ クト し 、貯 め 込 ん で い くも の と な っ た 。 そう し て 集 めら れ た 多 く の 形 と 、 乱視 の 視 野の 柔 ら か なブ レ の イ メー ジ が共 存 す る 場 を 、絵 画 に よっ て 表 象 、昇 華 さ せ るこ と が 自 身 の 作 品 制 作の 軸 と なっ た 。 幼 少 期 の お 気 に入 り の 遊び の 一 つ に、 風 呂 敷 遊び が あっ た 。 い く つ かの 風 呂 敷を 繋 い で 自身 を 包 み 、大 き な 繭 に な る の であ る 。 内部 に は 、 包ま れ る 安 堵感 と 外界 か ら 隔 て ら れた 孤 独 感と が 共 存 する 、 不 思 議な 空 間 が 形 成 さ れ た 。私 は こ の包 ま れ る 感覚 を 、 無 意識 に 自身 の 作 品 に も 反映 さ せ てい た 。 こ の風 呂 敷 遊 びの 感 覚 が 、 2 つ の 視 野に よ る 捉え 方 と 根 底で 類 似 し てい た から で あ る 。 「 包 ま れ る 」 とい う 感 覚は 、 教 会 内部 の 光 の 演出 を 狙っ た 建 築 や 、 寺院 の 仏 教思 想 の 宇 宙観 を 体 現 した 構 造 に も 感 じ ら れる 。 私 の場 合 の 「 包ま れ る 空 間」 は 、ど ち ら か と い えば 教 会 の乾 燥 し た 光の 感 覚 よ り、 寺 院 の 仄 暗 い 感 覚 の方 が 近 い。 ま た 浄 土宗 の 華 や かな 理 想郷 よ り 、 禅 宗 の水 墨 画 のよ う な 大 自然 の 中 に ポツ ン と 人 が 佇 む 静 か な空 間 の 方が 、 よ り 自身 の 作 品 世界 に 近い と 言 え る 。「包 ま れ る 空間 」 は 、安 心 と と もに 孤 独 感 に も 繋 が り 、故 に そ れを 表 現 す るこ と で 自 身の 内 的部 分 を 外 部 に 伝え 、 共 感を 求 め て いる の か も しれ な
い 。 本 論 文 は 3 章で 構 成 し た。 第 1章 「 2 つ の視 界 」 で は、 自 身 の創 作 の 発 端と 言 える 2 つ の 見 え 方に つ い て考 察 し た 。第 1 節 で は裸 眼 の 視 界 と 矯 正 視力 の 視 界を 、 そ れ ぞれ 自 作 品 と自 身 の体 感 を 踏 ま え て述 べ 、 第2 節 で は 視力 異 常 が あっ た と さ れ る 他 の 作 家の 作 例 を示 し 、 正 常視 と は 異 なる 見 え方 に よ る 創 作 の可 能 性 を論 じ た 。 第3 節 で は 絵画 以 外 の ぼ や け た 表 現に つ い て、 映 画 や ドラ マ の 演 出法 と 写真 表 現 に つ い て述 べ た 。 第 2 章 「 包 ま れる 空 間 」で は 、 2 つの 視 界 に よっ て 生ま れ る 「 包 ま れる 空 間 」に つ い て 論じ た 。 第 1節 で は 、 キ リ ス ト 教の 教 会 内部 、 仏 教 にお け る 空 間演 出 の、 両 者 の 相 違 につ い て 述べ 、 ま た 水墨 画 や イ ンス タ レ ー シ ョ ン 作 品 の体 感 的 空間 感 覚 に つい て 考 察 した 。 第2 節 で は 、 第 1節 で 挙 げた 「 空 間 」と 、 幼 少 期の 自 身 の 体 験 や 自 作 品の 「 空 間認 識 」 と の類 似 点 と 相違 点 を考 察 し 、「 包 まれ る 空 間 」の 創 造 手法 に つ い て論 じ た 。 ま た 、 自 身を 作 品 内部 の 小 動 物に 投 影 し 、離 人 感に よ る 第 2 の 「包 ま れ る感 覚 」 を 喚起 さ せ よ うと し て い る こ と に つ いて 論 じ た。 第 3章 「 提 出 作品 」 で は 、第 1 章 と第 2 章 を踏 ま え、 提 出 作 品 に つい て 解 説し た 。 第 1節 で は 和 歌の 「 色 無 し 草 」 とい う 表 現、 視 覚 異 常が な く て も虹 彩 や経 験 の 違 い か ら生 じ る 視界 の 違 い につ い て 着 目し 、 色 相 よ り も 形 の 共感 性 が 高い こ と を 論じ た 。 第 2節 で は自 身 の モ チ ー フに つ い て述 べ 、 第 3節 で は 提 出作 品 に つ い て 制 作 工 程を 踏 ま えて 解 説 し た。 ( 論 文 審 査 結 果の 要 旨 ) 本 論 文 は 、 幼 少時 か ら 乱視 ・ 近 視 でぼ や け て 見え た 裸眼 の 「 柔 ら か い世 界 」( 乱視 視 界 )と 、 メ ガ ネを 通 し て ク リ ア に 見 える 世 界 (矯 正 視 界 )を 共 存 さ せ、「 包ま れ る 空 間 」 を作 り 出 そう と し て いる 筆 者 の 日本 画 創作 論 で あ る 。 二 つ の 視 界 をも っ て いた 筆 者 に とっ て 、 時 折メ ガ ネを は ず し て 「 柔ら か な 世界 」 を 覗 くこ と は 、 密か な 遊 び だ っ た ら し い。 そ の 「柔 ら か な 」空 間 が 、「包 ま れる 」 空 間 と な るの に は 、も う 一 つ 筆者 の 幼 少 時の 「 風呂 敷 遊 び 」 が 原 点に あ る とい う 。 そ して 柔 ら か に包 ま れる 安 堵 感 に 、 確か な 存 在感 を 同 時 に持 た せ る ため 、 筆 者 は 画 面 に 矯 正視 界 を 併用 し 、 両 者の 組 み 合 わせ と バラ ン ス に 腐 心 して い る 。 第 1 章 「 2 つの 視 界 」で は 、 乱 視・ 近 視 の 仕組 み を説 明 し た 上 で 、筆 者 が 考え る 乱 視 ・矯 正 視 界 が共 存 す る 理 想 的 な 作 品例 と し て、 速 水 御 舟の 「 萌 芽 」を あ げる 。 ま た 視 覚 異常 が 絵 画表 現 に 与 えた 影 響 を 、モ ネ の 白 内 障 や ド ガ の「 羞 しゅう 明 」( ま ぶ し が り症 ) に さ ぐり 、 モネ の 場 合 、 白 内障 の 時 には 全 体 が 黄味 が か っ て輪 郭 が ぼ や け て い たの が 、 手術 後 は 青 視症 で 青 が 強く な るこ と 。 ド ガ の 場合 は 、 普仏 戦 争 で 目を 痛 め 、 羞明 ( ま ぶ し が り 症 ) とな っ て 以後 、 室 内 主題 の パ ス テル 画 や、 強 く 太 い 輪 郭線 が 目 立つ よ う に なる こ と を 指摘 す る 。 自 身 で も 裸眼 と メ ガネ の そ れ ぞれ で 、 モ チー フ を見 て ス ケ ッ チ した 実 例 を示 し て 解 説し て お り 、興 味 深 い 。 19~ 20世 紀の 画 家 で視 覚 異 常 のあ っ た 人 物は 意 外に 多 い が 、 そ れを 自 身 を含 め て 具 体的 に 分 析 、解 説 し た 本 章 は 、 大 変興 味 深 く説 得 力 が ある 。 ま た 現代 の 映画 や 写 真 で は 、「 フ ォ ー カス ・ ト ラン ジ シ ョ ン 」「 プ ル ・ フ ォ ー カ ス」「 Bokeh( ボ ケ )」な ど 、 意 図的 に 様々 な ボ カ シ の 技法 が 用 いら れ て い るこ と を 指 摘す る 。 第 2 章 「 包 まれ る 空 間」 で は 、 筆者 が “ 包 まれ て いる ” と 感 じ る 場や 空 間 の実 例 と し て、 教 会 や 寺院 、 水 族 館 、 ス ス キ 野、 イ ン スタ レ ー シ ョン ( 吉 岡 徳仁 、 内藤 礼 )、 水 墨 画な ど を あ げる 。 ま た筆 者 の 原 体験 と し て 、 頭 か ら す っぽ り と 風呂 敷 を 被 り、 密 閉 で はな い 柔ら か い 布 と 光 に包 ま れ た「 風 呂 敷 遊び 」 を あ げて い る 。 そ し て 自 作品 で 「 包ま れ る 空 間」 を 表 す 工夫 と して 、 モ チ ー フ に近 接 し た密 集 表 現 、輪 郭 を 残 して 色 で 暈 す 矯 正 視 界 ・乱 視 視 界の 併 用 、 その 中 に 自 己投 影 とし て 小 動 物 を 潜ま せ て いる こ と を 説明 す る 。 そ し て 第 3 章「 提 出 作品 」 で 、「狭 間 」「 沿 う」 の 提出 2 作 品 に つ いて 、 蓮 に包 ま れ た 前者 、 風 に そよ ぐ 柳 に 包 ま れ た 後 者の 制 作 過程 を 具 体 的に 解 説 し てい る 。 視 覚 異 常 が 表現 と し て転 化 、 昇 華さ れ た 事 例と し ての 意 義 も さ る こと な が ら、 そ れ を 客観 的 ・ 正 確に 言 語 化 し て 他 者 に 伝え る こ とは か な り 難し い は ず だ。 本 論文 は そ の 点 、 興味 深 い 分析 と 説 明 が各 所 に あ り、 審 査 員 か ら も 高 く 評価 さ れ た。 反 面 、 進行 の 遅 れ と論 述 不足 も 指 摘 さ れ たが 、 学 位論 文 と し て十 分 と 判 断さ れ 、 審 査 会 の 承 認 を得 た 。
( 作 品 審 査 結 果の 要 旨 ) 森 さ ん は 、 学 部の 頃 か ら淡 い 色 調 と堅 実 な 技 法に よ って 手 堅 い 作 品 を描 い て きた 。 論 文 には 、 淡 い 表現 の 源 に は 、 近 視 とい う 身 体的 な も の の見 え 方 が あっ た と書 か れ て い る 。か な り の下 塗 り を 行い 、 シ ャ ープ に 物 を 表 現 し た 後 、淡 い 表 現に な る よ うに 描 か れ た物 を 消し て い く 。 メ ガネ を か け鮮 明 に 見 える 世 界 を 、近 視 の 裸 眼 で 見 た 世 界に 変 え てい く 。 淡 いけ れ ど シ ャー プ な表 現 は そ の 為 であ る 。 モ チ ー フ に お いて も 、 よく あ る 今 まで に 描 か れて き た世 界 を 、 森 さ んの 切 り 口で 新 た な 世界 に 変 え て描 い て い る 。 派 手 さは な い が、 良 く 考 え抜 か れ た 構成 ・ 狙い ・ 品 の あ る 色調 等 、 今ま で に 有 りそ う で 少 し違 う 角 度 か ら み た 、 深い 表 現 を試 み て い る。 博 士 課 程 に 出 品し た 「 狭間 は 」 は 、そ ん な 彼 女の 表 現が わ か り や す い。 蓮 池 を描 く 時 、 一般 の 人 達 が好 む 視 点 で は な く 、 茎に 焦 点 を当 て た 作 品に し て い る。 上 部に 描 か れ た 葉 も、 葉 脈 を強 調 し た 異様 な 世 界 とし 、 全 体 的 に 不 思 議 な世 界 に 描か れ て い る。 技 法 的 に も 、 描い て は 洗っ て 消 し を繰 り 返 し て、 シ ャー プ で あ り な がら 柔 ら かく 深 み の ある 画 面 に なっ て い る 。 「 沿 う 」 は 柳 の葉 を 、 古典 の 絵 巻 物の 文 字 の よう に リズ ミ カ ル な 世 界に 変 え 、明 暗 の 強 弱に よ り 、 抽象 画 の よ う に あ ら わ そう と し てい る 。 修 士で の 伴 大 納言 絵 巻模 写 の 経 験 を 活か し 、 彼女 の 絵 画 観と 古 典 絵 画の 剥 落 等 に よ る 見 え 方が 、 合 わさ っ た 作 品で あ る 。 只、 最 終的 に は 、「 柳 の形 」 を 意 識し す ぎ てリ ズ ム 感 がや や 薄れ た 感 が あ る 。 他 の 作 品 に つ いて も 「 雨 音 」・ 紫 陽花 と 羽 を 休め る 雀 を描 く こ と によ り 、湿 度 や 雨 の 気 配を 表 現 して い る 。 「 ゆ ら め き 」・水 槽 の 中 を揺 ら ぎ の中 に い る 魚た ち と水 槽 の 外 に い る 人 た ち の時 の 流 れ の違 い の 感 覚を 表 した い と 思 っ て 描 いて い る 。 「 映 え る 」・ 池に 映 え る 蓮畑 の 光 景が 、 現 実 とは 異 なる 別 の 世 界 が 水面 に 広 がっ て い る よう に 感 じ 、そ の 感覚 を 描 い た 。 等 、 彼 女 の 作 品は 、 見 えた も の を あり の ま ま 描か ず に、 そ の 対 象 を 感じ さ せ よう と し て いる 。 そ の も の を 描 かず 、 現 実を 感 じ さ せる 作 風 は 彼女 自 身の 分 身 と し て 二通 り の 見え 方 に よ って 融 合 さ れた 作 品 で あ る 。 彼 女 独自 の 世 界を 生 み 出 し制 作 し て おり 、 博士 号 に 値 す る 。 こ れ か ら も 、更 に 深 めて 勉 強 し てほ し い 。 ( 総 合 審 査 結 果の 要 旨 ) 申 請 者 は 、 幼 い頃 か ら メガ ネ を か けて き た 事 によ っ て発 生 し た 「 乱 視視 界 」 と「 矯 正 視 界」 の 2 つ の視 界 に つ い て 考 察 し、 そ れ によ っ て 「 包ま れ る 空 間」 を 生み 出 そ う と し てい る 自 身の 創 作 に つい て 論 じ てい る 。 ま ず 、 申 請 者 は自 身 の 裸眼 の 視 界 と矯 正 し た 視界 を 行き 来 す る 事 で 、視 力 異 常が な い 人 より も 形 へ の意 識 が 高 ま っ た と して い る 。次 に モ ネ やド ガ の 視 覚異 常 を例 に 挙 げ 、 人 それ ぞ れ 物の 見 え 方 が違 う と 述 べる 事 で 、 見 え て い る世 界 が 第三 者 の 世 界と イ コ ー ルで は ない 事 が わ か る 。つ ま り 、決 ま っ た 見え 方 は な く、 真 理 は 1 つ で は な いと 言 え るだ ろ う 。 各々 が そ の よう に 見え て い る は ず だと い う 前提 の も と 芸術 が 成 り 立っ て い る 事 に 問 題 提 起し た 論 文に な っ て いる 。 申 請 者 は 乱 視 ・近 視 が ひど く 、 苦 しみ な が ら 絵を 描 いて い る 中 で 、 ある 種 の 快感 を 得 て いる と 記 述 して い る 。 そ れ を ハ ンデ ィ キ ャッ プ と し てと ら え る ので は なく 、 そ の よ う な苦 し み から 生 ま れ る世 界 が 芸 術で は な い だ ろ う か と 考え さ せ る。 申 請 者 の作 品 は 一 見す る と形 が な い よ う に見 え る が、 線 で く くら れ た 形 では な い 独 自 の 形 が あ り、 不 鮮 明な 形 の 境 界に 生 じ た 情感 を 大切 に し た 作 品 制作 を し てい る 。 そ こに は 人 そ れぞ れ 違 っ た 世 界 が 見 えて い る のだ か ら 、 決ま っ た 正 解な ど ない と い う 価 値 観を 感 じ させ 、“ 日 本画 ” に お ける 解 釈の
ひ と つ で あ る と言 え る 。作 品 か ら 漂う あ る 種 のア バ ウト さ は 作 者 と 鑑賞 者 と の間 に 感 性 と感 性 と の 交流 を 生 み 、 会 話 し て いる か の よう な 感 覚 に陥 る 。 絵 画と い うの は 、 言 い 切 るよ う に 提示 す る も ので は な く 、感 覚 的 な 共 有 で 良 い とい う 価 値観 を 見 出 して い る 。 以 上 の よ う に 、正 し い もの は 本 当 にあ る の か と問 題 提起 し 、 自 身 の 作品 に 反 映さ せ た 本 論文 は 学 位 論文 と し て 、 審 査 員 全員 の 協 議の 結 果 、 合格 と 判 定 した 。