ミツバチ科学16(4):167-174 HoneybeeScience(1995)
蜂 ろうの生産 と品質管理
- セ イ ヨ ウ ミツパ テ と トウ ヨ ウ ミツバ チ
の産生す る蜂 ろうの見分 け方を中心
に-吉田忠晴 ・佐々木正己
蜂 ろう (beeswax)は,化粧品,薬品,各種 工業製品の原料 として多方面 に利用 される高級 な天然 ワックスであるが (Hepburn, 1986), 産地や ロットにより品質が一定 していない.そ の原因 として, ミツバチの種,あるいは品質の 違 い,素材の状態か ら採取,精製,保管条件ま でを含めた諸要因の関与が考え られるが, これ らの各要因 と蜂 ろうの品質 との因果関係 は,よ くわか っていない.現在,蜂 ろうの市場では低 酸価の ものに対 して高酸価の ものが高 く評価 さ れているが,例えば中国か ら輸入 されて くるも のの中にはこれ らの区別が判然 としないものも 図 1 セイヨウミツバチのムダ巣 aニ巣板の下に造られたもの b:巣箱の空間に造られたもの あり,それ らの原Eqの一つに ミツバチの種類の 違いによる可能性が考え られる. そこで本研究では,高品質,特に高酸価の蜂 ろうを安定的に供給す るシステム作 りの基礎 と して東洋種,西洋種の2種の ミツバチを用 い, 分泌されたばか りの巣 に構築 される前のろうか ら,諸種の生物学的および人為的条件を与えた 蜂 ろうを生産 ・確保 し, その分析によって中国 などにおける蜂 ろうの生産 と品質の安定化に資 することを目的 とした. 材料および方法 1. 素材 レベルでの各種の蜂ろう (1) ミツパテの種類の違 いによる蜂 ろうとし て,セイヨウ ミツパテと トウヨウミツバチの蜂 群内より採取 したムダ巣 (図1,2)を用 いた. 原材料である腹部のろう分泌腺か らの鱗片ろう (図 3) との比較 について も検討 した. (2)日本産セイヨウミツバチの採蜜期 にでき るムダ巣か ら,蜜源植物,採蜜地の違 いについ て検討 した.蜜源 としては,ナシ ・リンゴ, レ 図2 ニホンミツバチ採蜜後の蜜入り巣(過剰に分泌されたろう片,実際はもっと薄い) ンゲ, ニセアカシア, トチノキ, カキの時期の 蜂 ろうを用いた. (3)巣箱内での機能 を異 にす る各種蜂 ろ うの 比較のために,多使用の黒色巣板,王台の巣蓋 (図 4),蜜蓋 (図5),雄巣房の巣蓋か らのろう を用 いた. 2.保存および採取条件 シミュレーシ ョン 保存および採取条件の影響 について
,U
V照 射,水中浸潰,加熱の各処理,昭醇の影響を調 べ るための蜜入 りムダ巣 に水添加 した蜂 ろうを 用いた. 3. 中国の蜂 ろう (1) 中国産 の蜜源植物 の違 いによる, ナタ ネ, ヒマワ リ, ニセアカ シア,雑花の時期の蜂 ろうについて検討 した. (2) 中国で生産, 流通 している蜂 ろう 13種 について検討 した. 4. 分析項 目 図5 蜜ぶた (1)酸価一遊離脂肪酸 の測定 規格 :高酸蜂 ろ う17-22, 低酸蜂 ろ う5
-9
(2)ケ ン化価- カルボキ シル基の測定 規格:80-100 (3) ヨウ素価一二重結合の測定 規格:5- 15 (4)過酸化物価一酸化 の程度 の測定 (5)融点 (oC)-熟融解す る温度 の測定 規格 :60-67 (6)ガスクロマ トグラフィーによる分析 (義 7参照) 結 果 1. ミツバチの種類の違 いによる蜂ろう セイ ヨウ ミツバチと トウヨウ ミツバチの-亜 種であるニホ ンミツバチの蜂群内か ら採取 した 未使用 ムダ巣,蜜入 りムダ巣の酸価,ケ ン化価, ヨウ素価,過酸化物価,融点, について検討 し た. その内,酸価の結果 を図6に示 した. その結果,セイヨウ ミツバチの酸価 は17.0-1
9
.
9
を示 し,高酸 タイプの蜂 ろうであった.ニ ホ ンミツバチの蜂 ろうは,低酸 タイプの一般規 格値 である5-9
を下回 る4.
6
を示 した蜜入 り ムダ巣が 1サ ンプル見 られたが, その他 は5.3 -6.5の低酸 の蜂 ろうであ った. ケ ン化価, ヨ ウ素価,融点,過酸化物価 については,一般規 格値内の値を示 した.一方, ニホ ンミツバチで は蜜入 りムダ巣で酸価 と同様 にケ ン化価で値の 低 いもの も1サ ンプルあ った.そのためニホ ン ミツバチの蜂 ろうでは,蜜の入 っているムダ巣酸 価 0 5 10 15 20 25 4.10- 4.15 未 使用 ムダ娘 JI.)5- LL30 来 任 m ム ダiR 5.I- 5.L5 狩人 リム ダ典 5.15- 5.30 兼任Jflム ダ典 6.l∼ 6.30 未 使用 ム ダ典 7.l∼ 7.3Ⅰ 末 位用 ム ダ典 8.1- 8.31 未 使用 ム ダ典 9.1一- 9.30 兼 任 m ム ダ典 1988.7 呆 蚊用 ム ダJLt 1988.ll 兼 任 m ム ダ・LR 1989,5 未 使 用 ム ダ典 1989.6 深 入 りム ダ典 1989.8 兼 蚊F77ム ダ娘 1989.9 密 入 リム ダ瓜 図6 ミツバチの種頬の違いによる蜂ろう で酸価, ケ ン化価 に影響 が あ るよ うに思 われ た. また,採取時の季節的な影響 は,図6に示 した酸価や他の分析値か ら差 は認 め られなか っ た.
2.
蜜源植物,採空地の異なる蜂 ろう 長野県でのナ シ ・リンゴ,静岡県,鳥取県で の レンゲ,秋 田県,岩手県,栃木県でのニセア カ シア,長野県,岩手県での トチノキ,栃木県 でのカキの時期 のセイヨウ ミツバチの蜂 ろうに ついて検討 した (表1
)
.
栃木県のニセアカ シア の1サ ンプルには蜜が多 く混入 していたため, 酸価 が規格値 よ り低 い16.3を示 した ものがあ った. しか し図には示 さなか ったが,他の2サ ンプルは正常であ ったため,ニホ ンミツバチの 蓑 1 蜜源植物, 169 蜂 ろうのよ うに蜜の混入が影響 している よ うに思われた.長野県でのナ シ ・リン ゴでの蜂 ろうは,送付時に醗酵 して悪臭 を放 ってお り,そのため過酸化物価が高 くなったと考え られ る. 蜜源植物の時期 によって,蜂 ろうの色 相 は異 な り,蜜源の花粉 に由来 している ことが分か る. また採蛮地 の違 いによる 影響 は認 め られなか った.3.
巣箱内での機能を異 にする蜂ろう セイ ヨウ ミツパ テの多使 用 の黒色巣 板,王台の巣蓋,蜜蓋,雄巣房 の巣蓋か らの蜂 ろうについて検討 した (表2).王 台の巣蓋,蜜蓋,雄巣房 の巣蓋の酸価 は と もに低 く, また多使用 の黒色巣板 で は, ややケ ン化価が低 いため,5種の蜂 ろうは全て一般規格値内に入 らないこと が分か った. 4. 保存条件を処理 した蜂 ろう 今回の処理では,U
V照射, 水中浸清での変 化 は認 め られなか った (表3).また,醗酵の影 響 を調 べるための蜜入 りムダ巣に水を添加 した 蜂 ろうについて も,対照区 とした蜜入 りムダ巣 との差 は認め られなか った. 5.加熱処理 した蜂 ろう 100,120,150,200oCで各 15,60分間の加 熱処理 を レンゲの時期のセイ ヨウ ミツバチのム ダ巣 に施 した.200℃・60分の処理 で対照区に 比 べ,やや酸価が低下 し, 150℃・15分で ヨウ 素価が上昇 したが,大 きな変化 は認 め られなか った (表4). しか し,色相 は熟の上昇 と共 に茶 採蜜地の異なる蜂ろう 蜜源植物 ・採蜜地 酸 価 ケン化価 ヨウ素価 過酸化物価 融点(℃) ナシ・リンゴ (長野県) レ ン ゲ (静岡県) レ ン ゲ (鳥取県) ニセアカシア (栃木県) ト チ ノ キ (長野県) ニセアカシア (秋田県) 二セアカシア (岩手県) カ キ (栃木県) 2 5 7 2 」 5 9 6 9 8 6 2 9 5 8 7 8 8 8 9 8 8 8 8I
7 1 5 3 3 0 . 1 5 7 8 7 6 8 8 8 9 1 1 1 1 1 1 1 1 4 3 8 3 4 4 6 . 1 7 8 0 7 9 2 9 9 . 1 . 1 8 0 0 3 0 5 9 3 3 L 5 4 L 2 1 I 5 2 3 1 9 3 6 5 4 4 4 4 3 4 6 6 6 6 6 6 6 6 規 格 80-I00 *は規格外を示す表2 巣箱内での機能を異にする蜂ろう 酸 価 ケン化価 ヨウ素価 過酸化物価 融点(℃) 多使用黒色巣板 王台の巣蓋A l) 王台の巣蓋B2) 蜜 蓋 雄蜂巣房の巣蓋 6 7 2 4 5 9 2 4 2 3 7 8 8 8 8 * * * * 4 1 . 1 6 2 9 6 6 6 6 1 1 1 1 1 6 6 7 8 5 9 2 2 3 4 1 1 1 1 5 0 5 5 5 5 3 3 3 3 8 8 7 3 2 4 4 4 4 4 6 6 6 6 6 1)5月採取,2)6月採取, *は規格外を示す 表3 保存条件を処理 した蜂ろう 酸 価 ケン化価 ヨウ素価 過酸化物価 融点(oC) 8 8 1 8 8 6 5 9 8 8 9 8 3 2 9 4 8 8 7 8 日 H H u = リ ‖ リ 4 4 2 3 0 2 7 7 1 1 2 0 8 9 2 2 2 1 0 6 3 0 5 5 4 5 6 6 6 6 蓑 4 加熱処理 した蜂ろう 価 ケン化価 ヨウ素価 過酸化物価 融点(oC) 舛 ン 分 分 分 分 分 分 分 分 レ 5 0 5 0 5 0 5 0 ( 1 6 1 6 1 6 1 6 ・ ∴ 仰 .=・ ・= ;芯 .=. .=. 3 8 2 7 3 9 8 6 3 7 6 9 9 8 2 7 6 6 8 8 8 8 8 8 8 8 8 * 7 2 0 . 1 7 3 7 4 4 7 8 8 8 7 8 7 7 6 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 4 7 4 6 6 2 0 6 2 2 2 2 2 5 2 2 2 5 0 8 1 0 0 3 2 2 2 2 1 1 2 3 9 3 2 6 6 3 8 4 6 8 7 0 5 5 5 4 5 5 4 5 4 6 6 6 6 6 6 6 6 6 褐色 に変化 した:
6.
中国産の蜜源植物の異なる蜂 ろう 中国よ り送付 されたナ タネ, ヒマ ワ リ, ニセ アカ シア,雑花の時期 の蜂 ろ うにつ いて検討 し た (表5).雄花のサ ンプルで は,酸価が 14.4と 高酸 タイプと して は低 い値 を示 して いる.他 の 3種 は規格 内の値 を示 して いるが, ヒマ ワ リの 色相 は悪 くナ タネ, ニセアカ シアとは差 が見 ら れた.高酸 タイプの品質 が保 たれている蜂 ろ う はナタネと ヒマワ リの2種 だ けであ った.7
.
中国で生産,流通 している蜂 ろう 中国 よ り入手 した 13種 の蜂 ろ うにつ いて検 討 した (表 6).低酸 タイプの蜂 ろ うである N0.3
はケ ン化価 が低 く,N0.8
が表示 のよ うに低 酸 タイプの蜂 ろ うと して規格 に入 るものであ っ た. 高酸 タイプの蜂 ろ うと して規格 内 の もの *は規格外を示す は,No.4,9,10,11の 4種だけであ った.漢 白ろ うと表示 の ものは, これまでの結果のよ う に過酸化物価 が高 くな っているのが No.1,2, 12で見 られた. セイ ヨウ ミツバ チ と トウ ヨウ ミツバ チの蜂 ろ うを混合 して い る N0.2の酸 価 は両 タイプの中間の値 を示 して いる.同様 に No.1,5,6,7も中間の値 を示 して いることか ら高酸,低酸 の蜂 ろ うを混合 している可能性 が 考 え られ る.蜜入 りムダ巣 はこれまでの結果 で は,酸価 に影 響 を及 ぼす傾 向 が見 られ たが, No.13において も同傾 向を示 している.考
察
今回 の研究 で は,Tulloch (1980)が述 べて いるよ うに,高駿 タイプの蜂 ろ うはセイ ヨウ ミ ツバチ,低酸 タイプは トウヨウ ミツバチ と ミツ171 裏 5 中国産の蜜源植物の異なる蜂ろう サンプル 酸 価 ケン化価 ヨウ素価 過酸化物価 融点(℃) ナ タ ネ ヒ マ ワ リ ニセアカシア 雄 花 8 6 9 9 9 7 0 2 8 8 9 8 ■ 7 0 9 4 7 8 8 4 日H = = = 3 7 9 6 8 0 7 2 0 0 0 0 4 2 3 3 7 2 9 6 4 4 4 4 6 6 6 6 *は規格外を示す 蓑 6 中国で生産,流通 している蜂ろう サンプル 酸 価 ケン化価 ヨウ素価 過酸化物価 融点(oC) 1 漂白ろう (Am) 2混合漂白ろう(Am,A C 3加工ろう (Ac) 4 加工ろう (Am) 5航丈蜂坊 6航先蜂坊 7杭先蜂坊 8 鈍ろう (Ac) 9鈍ろう (Am) 10 純ろう (Am,杭州) 11ムダ巣 (杭州) 12 漂白ろう (Am,杭州) 13 蜜入りムダ巣 (杭州) 4 6 5 0 0 0 0 9 5 8 2 7 9 3 0 5 6 5 6 7 7 6 0 3 0 3 9 9 4 8 8 4 6 8 8 8 9 7 8 * * ・N・ ・* + 暮 0 . 1 0 2 2 4 3 9 1 6 0 5 9 5 5 6 8 5 5 5 6 7 7 0 7 5 1 1 1 1 1 1 1 1 2 1 1 9 0 8 6 0 2 7 2 . 1 6 6 6 6 8 9 1 9 1 1 0 4 0 0 6 9 9 1 1 1 1 1 1 1 8 2 2 0 2 5 5 2 0 2 5 9 2 0 1 9 0 2 I L 2 2 3 2 0 3 8 9 1 2 9 5 4 2 3 . 1 . 1 7 5 」 9 7 3 3 3 3 5 4 4 4 4 5 5 4 3 4 5 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 Am:セイヨウミツパテ Ac: トウヨウミツパテ バ チの種類 に由来 して い る ことが明確 とな っ た. そ こで ガスクロマ トグラフィーによる主要 構成成分 レベルでの2種 ミツバ チ間 の比較 を 検討 した. 各種 蜂 ろ うサ ンプルを ク ロロホル ムに溶 解 し,ろ過 した ものを表7の条件 でガスクロマ ト グラフィーにかけ,比較 を行 った. 得 られた結果 の うち,蜂 ろ うの主要成分 であ る炭化水素,遊離脂肪酸,遊離 アル コールおよ びェステルにつ いて, 2種 ミツバチ間の違 いを 平均値 で比較 した ものが図7であ る.図か らも わか るとお り,総炭化水素 (C23-C37:ピーク 面積 か ら算 出 したパ ーセ ンテー ジ) は トウヨウ ミツパ テで 14%はど多 く,遊離 アル コールで も トウ ヨウ ミツバ チの方 が高 い値 とな って い る. 一方,遊 離 脂肪酸 は セ イ ヨウ ミツバ チが 17.5%と高 く トウ ヨ ウ ミツバ チ は 9.7%と低 い. この ことは2種 の蜂 ろ うの朗著 な相違点 と された酸価 の違 いが この遊離脂肪酸 の含有率 の 違 いに起因 して いることを示 しているもの と考 え られ る. エステルには大 きな差 は認 め られな か ったがセイ ヨウ ミツバ チで若干高 い値 とな っ *は規格外を示す ている. 以上4つの主要構成要因内での各成分 (炭素 数別)の分布状況 について も図8に示 したよ う に2種 の蜂 ろ うで特 徴 的 なパ ター ンが見 られ た.後述す るよ うに, このパ ター ンを検討す る ことでか な り正確 に
2
種 の蜂 ろ うを識別 す る ことがで きると考 え られ る. さ らに簡易的 には, その中で も最 も特徴的 な 2成分,すなわ ち全炭化水素 中の C35の炭化水 素 の割合や, 同 じくC24の遊離脂肪酸 の割合, あ るいはその両者 に着 目 して判定す ることも可 能 と思 われ る. これ らの数値 につ いて, 日本産 のセイ ヨウ ミツバチろ う, 同中国産 の もの, 日 本産 の トウヨウ ミツパ テ (ニホ ン ミツパテ A.c
e
r
a
n
aj
a
po
ni
c
a)
の ろう (以上各4試料), に 蓑 7 ガスクロマ トグラフィーの分析条件 カ ラム充填 剤 カ ラムサ イズ 流 量 カ ラ ム 温 度 昇 温 条 件 試料注入口温度 Dexsi1300GC 3¢mmX2m 40mβ 150-300℃ 10℃/min 370℃中 国 産 の ト ウ ヨ ウ ミ ツ バ チ
(
A.
cerana cerlana)ろ う 1試料 を加 えて平均値 で比較 した のが表8である. これで は っきりと両者 の違 い が分か る. いま2成分 の比 (C35/C24:MC index と称 して も可)を見 ると, セイ ヨウ ミツ 炭化水素 0 10 20 0 10 20 匡 ≦喜ヨ セ イヨ ウ ミツ′iチ Eヨ 二ホ ン ミツバ チ 0 20 40 60 図7 2種 ミツパテ問での蜂ろうの4種主要成分含量 の比較 48 パ テのろ うにつ いて は, 日本産, 中国産 を問わ ず0.08(min.-0.04-max.-0.14)とな ってお り, トウヨウ ミツバ チにつ いて は日本産 が7.6 (min.-7-max.-46),中国産 は 1試料 のみで あ るが1.2とな っている. 値 に巾はあ るが, こ れ もか な り安 定 した 1指 標 と して使 え るか も しれない. これまで比較 して きた試料 は,すべて ミツバ チが一度巣 に構築 した後 の ものを用 いて きた. 実際 に利用可能 な蜂 ろ うはこうした ものであ る が,ハチが ワックスと して体か ら分泌 したばか りの素材 と しての ワックス (鱗片 ろ う) と呼ば れ るろ う片 (図3参照) の分析 も試みた. その 結果 は図7に示 した もの と大差 はな く,セイ ヨ ウ ミツバチ, ニホ ン ミツバ チの値がそれぞれ炭 化水素で19.97,35.85,遊離脂肪酸 で 14.84, 6.69遊離 アル コールで 0.44,2.01,そ して エス テルで62.83, 54.27であ った. 図 7の巣 に構 築 された後 の値 と比較 して両種 ともにエステル の割合が高 いことか ら, だ液中の酵素 などによ 25 34 ㌻=-_-」Jt一一一」27 .′′一′′/ ㍗ 遊泳 脂肪 酸 32 46 エステル 図8 炭化水素,遊離脂肪酸,エステルの炭素数分布スペクトル 実線がセイヨウミツバチ,破線が トウヨウミツパテで,いずれも典型的4サンプルの平均値で示す.数値は%.173 蓑 8 2種 の蜂 ろ うに特異的な成分 に着 目 した比較 の例 セ イ ヨ ウ ミツバ チ トウ ヨ ウ ミ ツバ チ 日本産 (∩-4)中国産 (∩-4) 日本産 (n-4)中語産 (n-1) 炭化水素 C35 0.45±0.13 0.48±0.09 8.28±2.72 遊離脂肪酸 C24 5.66±1.24 5.91±1.77 1.09±0.97 MCindex(C35/C24) 0.08 0.08 7.6 39 50 . 2 6 0 . 1 精 製 ・利 用 図 9 蜂 ろうの品質 に影響 を及 ぼす可能性 のある諸要因 囲みを付 した要因 は影響 が大 きいことを示す.
り,造巣行動中にそれ らが一部遊離の脂肪酸 と アルコールに分解す る可能性が推察 される. し か し基本的には,我々が利用する蜂 ろうは,糖 質 (花蜜)を原料 に ミツパテ腹部のワックス腺 で生合成 されたままの組織であることが判明 し た. 以上を総括 して考察す るために,蜂 ろうの品 質を決定するのに関与す ると考え られる要因を 4つの相 に分 けてまとめてみたものが図9であ る. Ⅰの ミツパテの種類を特定することが全体を 通 じて最 も重要 とわか り,地域,季節,蜜源の 影響 は少 ないとされた. Ⅲのハチの群内での要因では,再利用 ワック スである蜜蓋や王台の巣蓋を極力避 け,ムダ巣 か らエイジングの進んでいない貯蜜巣板などが 品質 のよいワックスを提供す ることが分 か っ た.特に中国でローヤルゼ リー生産時に多量 に 採取できる王台の巣蓋か らのろうは,期待でき ない思われる.巣礎には蜂 ろう以外のワックス やパ ラフィンが入 っていて も,ある割合までは -チは受 け入れることが分か っており (吉田 ・ 吉田, 1991),実際の市販品 も何が入 っている かは分か らない. また巣礎 は少 し厚 目にできて お り巣房を構築す る際,ハチはこれをか じりと って巣房壁にまわす (吉 田 ・吉田, 1991).従 って巣礎を利用 した巣板か ら蜂ろうを採取する 場合 には巣礎 の扱 いには十分注意 が必要 であ る. また,分析値で炭化水素成分が多い場合に は, この巣礎の混入を疑 うべ きである. Ⅲの保存中に働 く要因の中では,紫外線や醗 酵による過酸化物価の上昇などがありうるとさ れた.-チノスッヅ リガの影響 については今回 は十分評価す ることはで きなか ったが,蜂 ろう に特異的に発生する大害虫であり,加害を避 け るよう留意 はした方がよいと思われる. Ⅳでは製 ろうや再融解時の加熱が問題 となる が,今回の実験では,直火で200℃, 1時間ま で加熱 して も混入成分の変成 に伴 う褐色現象 は 見 られた ものの,主成分組成には変化 はなか っ た. ここでは異種の蜂 ろうがブレン ドされない よ うに,管理 を徹底す ることが最 も重要 であ る. このセイヨウ ミツパテと トウヨウ ミツバチ のろうの混合があったか否かについては,酸価 か ら推察できるが
,GC
分析により, 両種に特 異的な成分 の構成比 を図8または表 8に照 ら してみれば, さらに正確 な判別が可能であると 考え られ る.実際 に今回中国か ら試験的に輸入 したサ ンプルの うち,セイヨウ ミツバチの蜂 ろ うとされていたものの 1点 は, トウヨウ ミツバ の蜂 ろうが混入 していると判定 された (図9, MC index-0.32). これ らのことより,中国などでの蜂 ろうの生 産あるいはそこか らの輸入 にあたっては,第一 に西洋種,東洋種の蜂 ろうが混合 しないような 生産,流通過程の確立が挙げ られる. 最後 に本研究 に ご協力 いただいた三菱商事 (樵),(秩)野田ワックス (現 セラリカ NODA) に感謝の意を表す る. (〒194 町田市玉川学園6-1-1玉川大学) 主 な 参 考 文 献Hepburn,H,R.1986, Honeybees and Wax. Springer-Verlag.Berlin.pp.205,
Tulloch,A.P.1980.BeeWorld61:47-62. 吉田祐三,吉田忠晴.1991.ミツバチ科学12(1):31
-33.
YosHIDA,T.and M.SASAKI. Identificationand quallty COntrOlofbeeswax from Orientaland European honeybees.HoneybeeScience(1995)
16(4):1671174. Honeybee Sci. Res. Ctr, Tamagawa Univ., Machida-shi, Tokyo, 194 Japan.
Quallty Ofbeeswax wasdiscussed with re -specttobeespecies(A.melliferavs.A.cerana), locality(Japanvs.China),sourceplant,originin thehive(new andoldcomb,queencell,lidof honey orbrood cells)and varioushandling / storagecondition. Evaluateditemsweremelト ing point,acidity,saponification and iodine values,amountofhiperoxideandhydrocarbon composition.Todiscriminatethesourceofbee species,an index comparing thepercentageof C35hydrocarbon and C24free fatty acid was
proposed asareliablemeasurein addition to known measure of acidity reflecting the amountoffreecarbonicacids.