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グローバリゼションと環境 : これまでの研究を振り返って

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グローバリゼションと環境 : これまでの研究を振

り返って

著者

佐竹 正夫

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1 最終講義 平成 24 年 3 月 8 日(木) グローバリゼーションと環境 -これまでの研究を振り返って- 佐竹正夫 講義の目的 これまでの研究の中で、「グローバリゼーションと環境」に関連する研究を紹介し、今後 の課題を述べる。 ・グローバリゼーション(グローバル化)とは、モノやサービスやお金だけでなく、人 や文化や情報の国際交流が進んで、世界が一体化すること。 ・環境とは、自然(環境)のこと。二つの側面がある。 ① 経済的資源としての自然; 化石燃料、森林、漁業資源、水資源、汚染されていな い大気、安全な水 ⇒ 経済や技術の問題 ② 非経済的資源としての自然;山河、海、雨や風や嵐、森や樹木、野の花、路傍の石・・・ * 益虫は保護し害虫は駆除するのが、①の考え方。②は益虫も害虫もいる世界 ※ 環境問題とは、両方の意味での環境が希少になっていること ⇒ 持続可能性 簡単な自己紹介 ・高校まで九州 ・大学(早稲田大学商学部)、大学院(一橋大学経済学研究科)は東京 ・大学院の間、一時豪州(豪州国立大学)に留学 ・就職のため 1979 年に北海道へ(小樽商科大学) ・15 年間北海道で過ごして、仙台へ ・国際文化研究科に9 年間在職して、その後 2003 年に環境科学研究科に異動 講義の順序 1.学問の目的と方法 2.垂直貿易と環境・資源問題 (1)垂直貿易の理論(小樽商科大学での研究) (2)垂直貿易と環境・資源問題(今後の課題) 3.日米貿易摩擦と基準や規制の国際的調和 (1)日米貿易摩擦(国際文化研究科での研究) (2)基準や規制の国際的調和化は望ましいことか(今後の課題) 4.貿易と環境(環境科学研究科での研究) (1)GATT20 条をめぐる貿易紛争 (2)循環資源の貿易とリサイクル制度 5.非経済的資源としての自然 結語 ― 「思う」ということ

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2 1.学問の目的と方法 (1)学問の目的 問題を解決すること (医学は医療問題を解決すること、経済学は経済問題を解決すること) (2)問題には ① 実証的な問題 事実に関すること ~である ~だ ② 規範的な問題 価値(道徳)に関すること よい(悪い)~すべきだ ~せよ ※ 事実から規範を導いてはならない。 (3) 事実を把握する方法 ① 帰納法と演繹法 帰納法;個別事例を積み重ねて一般命題を導く。 演繹法;仮説(一般命題)を立てて、検証又は反証する。 ② 演繹法における検証と反証 検証;仮説と合致する事例を見つけること 反証;仮説と合致しない事例を見つけること ※ 反証主義(カール・ポパー*) 仮説 ⇒ テスト ⇒ 反証 ⇒ (再)仮説 ⇒ テスト ⇒ 反証 ⇒・・・ 言明を反証することによって、想定していた理論の欠陥が明らかになる。或いは、言明 が成立しない条件が明らかになる。 それを踏まえて新しい仮説を立てる。 ⇒ 真理に到達はできないが、真理に近づくことはできる。 (4)規範(価値)の問題(我々はどう生きるべきか) 経済学:(社会の)効用(幸福)を最大化せよ (最大多数の最大幸福) ※ ポパー;苦痛(不幸)を最小化せよ。 *苦痛はマイナスの効用ではない。

(2) The recognition that all moral urgency has its basis in the urgency of suffering or pain. I suggest, for this reason, to replace the utilitarian formula ‘Aim at the greatest amount of happiness for the greatest number’ or briefly, ‘Maximize happiness’, by the formula ‘The least amount of avoidable suffering for all’ or briefly, ‘Minimize suffering’. … We should realize that from moral point of view suffering and happiness must not to be treated as symmetrical ; that is to say, the promotion of happiness is in any case much less urgent than the rendering of help to those who suffer, and the attempt to prevent suffering.

Open Societies and Its Enemies, VOL. I, chap.5, note 6, 1945. * カール・ライムント・ ポパー(Karl R. Popper) ウイーン生まれの哲学者(1902 年~1994 年)。ユダヤ人であったためにナチスの迫害を逃れるた めロンドンに行き、さらにニュージーランドに渡り、8 年間を過ごす。戦後ロンドンに戻り、ロンドン大 学の哲学の教授となる。『歴史主義の貧困』『開かれた社会とその敵』『推測と反駁』『批判と 知識の成長』『自我と脳』(ジョン・エクルズとの共著)など。

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3 2.垂直貿易と環境・資源問題 (1)垂直貿易の理論(小樽商科大学) 垂直貿易:天然資源(鉱山)から採取した第一次原料(鉄鉱石)を輸入し、それを加 工した製品(鉄鋼)を輸出するような貿易の型 = 加工貿易型 教科書などの貿易モデルは、水平型(最終財と最終財を貿易する)であるが、南北貿 易やわが国の貿易(当時)を考えるためには、このタイプのモデルが必要。このモデル を用いて、以下の点を明らかにした。 ① 貿易の方向(どの財を輸出し、輸入するか)を決める条件 ② 貿易利益の存在とその性質 ③ 貿易後の所得分配の変化(貿易によって誰が利益を得るか、損をするか) モデル 第一次原料の生産(鉱山Nから労働Lmを使って鉄鉱石Mを採掘) M=M ( Lm,N ) 図1のOA 製品の生産(鉄鉱石から労働Lxを用いて鉄鋼Xを生産) X=X(Lx,M ) 図1の I I’ 総労働Lは一定で、労働は完全雇用され、部門間を自由に移動すると仮定 L = Lm + Lx 図1で、OQ = OC + CQ 企業は利潤極大を行う; 賃金は労働の限界生産性に等しく、両部門で同じになる。  貿易前 ・OC の労働で原料を CE (QD)生産 ・CQ の労働と CE の原料で、製品を QE 生産 ・生産はすべて消費に回されるので消費量もQE になる = 国民の経済厚生水準  貿易後 ・製品の原料に対する相対価格が外国のそれよりも安い=製品に競争力がある ・製品を輸出、原料を輸入 ・原料の国内生産量はJB に減少、JC の労働が原料生産から製品生産に移動 ・原料をBF 輸入することで、QF の製品を生産できる ・FG は輸入を支払うための輸出、GQ が消費水準 ・消費水準で測ってGH だけ、厚生水準が増加 (貿易利益) 文献 「垂直貿易の理論」『世界経済評論』24 巻 4 号、1980 年 「鉱物資源と垂直貿易モデル」山澤逸平・池間誠編『資源貿易の経済学』第4 章、1981年 「垂直貿易と所得分配」『一橋論叢』92 巻 4 号、1984 年 「垂直貿易と資本移動」『商学討究』35 巻 2,3 号、1985 年

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4 図1 垂直貿易 (鉄鉱石を輸入し鉄鋼を輸出) (2)垂直貿易と環境・資源問題 図1のような通常の貿易モデルは、環境汚染や廃棄物の存在は考えていない。しかし、 鉱山開発や鉄鋼生産は有害物質やCO2を排出する。生産や消費からは廃棄物が生み出さ れる。他方で、廃棄物が再生資源として用いられれば、天然資源を節約し生産に寄与す る。 貿易の環境汚染への影響 ① 消費水準の増加 ⇒ 汚染(廃棄物)の増加 ② 産業構造の変化 ⇒ 輸出産業は拡大し、輸入競争産業は縮小するので、それぞ れの変化の大きさと汚染集約度に依存する。 O A 原料(鉄鉱石) B C D I F 労働 Q I’ G H J E 製品(鉄鋼)

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5 廃棄物とリサイクル(今後の課題) 必ず財の生産や消費から廃棄物が排出されることを考慮すると、その処理のために資 源(労働)が用いられる。その効果は、生産のために用いられる資源(労働)の減少に なる。図2でいえば、OA 曲線が下方へシフトすることになる。 他方、廃棄物が再生資源としてリサイクル(再利用、再資源化)される場合の効果を 検討する。製品の消費後生み出される廃棄物が再生原料 R となって、製品の生産に利用 されるとすれば、 X = X(Lx,M,R ) R = αCx Cxは製品の消費量 図2において、QE の消費量から QG の再生資源が生まれ、それが原料の生産に利用さ れれば、原料の生産関数が外方にシフトする(OA→OH)。新しい製品の生産点はFにな り、製品生産量はKFだけ増加する。その結果(論証は省略)、賃金は上昇し、原料価格 は低下し、製品価格は上昇する。リサイクル率が増加すればするほど、この効果は増幅 するので、リサイクル率の高い先進国の再生原料価格は安くなり、先進国から途上国へ の再生原料の輸出を説明することができる。貿易が廃棄物とリサイクルに与える効果に ついては、今後の検討課題である。 図2 リサイクルの効果 文献 「東アジアのリサイクル貿易の現状と課題」馬田啓一・浦田秀次郎・木村福成編 『日本通商政策論』第13 章、2011 年(斉藤崇と共著) 「リサイクルと国際貿易 - 図形による解明 - 」2011 年、Mimeo 労働 Q I’ J J’ F K I 0 C G E A 原料 D H

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6 3.日米貿易摩擦と基準の国際的調和 (1) 日米貿易摩擦(国際文化研究科) 貿易摩擦の推移 ① 1950 年代から 1970 年代まで 日本の輸出をめぐる摩擦 繊維 → 鉄鋼 → テレビ → 工作機械 → 自動車 → VTR → 半導体 ② 1980 年代から 90 年代にかけて 日本の輸入をめぐる摩擦 農産物 → MOSS 協議 → 自動車・半導体・建設・金融 → 構造協議 → 包括協議 ③ 90 年代後半から沈静化に向う 米国のとった戦略 ① 管理貿易(Managed Trade)アプローチ 数値目標を立て、輸入拡大を求める。日米包括協議 日本側はこれを拒否 ② 調和化(Harmonization)アプローチ 規制緩和の要求や米国の基準に合わせるよう求める。MOSS (Market-Oriented, Sector-Specific) 協議(1985)、 日本側はこれを受け入れる ・規制・基準緩和(規格基準の項目削減、技術基準の緩和、認証制度の対象品目 の削減、自己認証制度の導入) ・透明性、認証手続きの簡素化・迅速化 ・国際基準への調和 ☆ なぜ、日本政府は、調和化アプローチを受け入れたか? 規制緩和(構造改革)の流れ 前川レポート(1986);米国と同じ認識 文献 「市場開放をめぐる日米貿易交渉:概観」『国際文化研究科論集』第2 号、1994 年 「自動車と自動車部品の日米貿易交渉」『国際文化研究科論集』第3 号、1995 年 「輸入自主拡大の検討」『駿河台経済論集』第5 巻第 2 号、1996 年 「日本の市場は閉鎖的か:半導体のケース」「国際文化研究科論集」第4 号、1996 年

“Trade Conflicts between Japan and the United States over Market Access; The Case of Automobiles and Automotive Parts,”Pacific Economic Papers, No.310 (2000)

「摩擦は沈静化したか-1990 代の日米貿易交渉-」『国際文化研究科論集』第 8 号、2000 年

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7 (2)基準や規制の国際的調和は望ましいことか(今後の課題) ① 規制や基準は国によって異なる。その理由は? Ex. 環境基準は一般には豊かな国(所得水準が高い)国が厳しく、貧しい国(所 得水準が低い)国では緩い。 ↓ (自然)環境は上級財であるので、(物質的に)豊かになるにつれて、人々は環 境を重視するようになる。厳しい環境基準を要求する。技術面でも先進国の方 が対応できる。 ② 規制や基準の国際的な調和化は望ましいか? 各国がそれぞれその国の事情で最適な規制や基準を選んでいるとしたら、調和化 はそこから外れることになるので、望ましくない。 ただし、 *国際的な取引に関する規制や基準であれば、共通の基準や規格の調和化は効率化 を進める。 *国内の基準でも、それが既得権益や業界の利益によって決められたものであれば、 調和化によって、(環境)基準の引き上げや逆に規制緩和が望ましい場合がある。 = 前川レポート(構造改革論者)の立場 (日本は規制緩和すべき) ③ 各国が別々の基準を持っていたとしても、ある国が自国の基準(他国より厳しい) に合致しない製品の輸入を制限する場合、相手国(の企業)はそれに合わせるため に、自国の基準を(或いは企業が自主的に)引き上げざるを得ない場合がある。そ の結果、基準の国際的な調和化が実現される。(EUの製品環境規制) → 貿易政策を利用して、自国の環境基準を世界的(グローバル)な基準にする。 *しかしこれは、偽装された保護主義として、自由貿易主義の立場からは批判される。

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8 4.貿易と環境(環境科学研究科) 貿易は環境に悪いとする多くの事例が示されてきた。例えば、輸出用のエビの養殖が マングローブ林を損なう。そこで、環境を保護するために保護貿易政策(日本が輸入を 制限する)が主張され、自由貿易主義と対立するようになった。特に、自由貿易を世界 に広めることを目的とするGATT(関税と貿易に関する一般協定、1948 年)や WTO(世 界貿易機関)が批判されてきた。 経済学の観点 ① 貿易そのものが環境に直接負荷を与えるのであれば、貿易を制限するのは正しい。 (有害廃棄物の輸出、希少な動植物の貿易) ② 貿易ではなく、輸出や輸入に伴う生産や消費が環境に負荷を与える場合、貿易は自 由にして、環境負荷を与える直接の原因に対して対策を加えるのが最善。 (自由貿易政策と環境政策の組み合わせ) ③ 直接的な環境政策が実現不可能である場合、貿易政策は次善の政策として正当化さ れる。 (1)GATT20 条をめぐる貿易紛争 ・GATT や WTO は自由貿易を推進することを目的とするが、20 条に一般的例外が設け られ、その中に環境に関連する例外項目がある。 (b)「人、動物又は植物の生命又は健康の保護のために必要な措置」 (g)「有限天然資源の保存に関する措置(ただし、この措置が国内の生産又は消費に 対する制限と関連して実施される場合に限る)」 ・表1は、20 条の(b)と(g)を理由に貿易制限を行い、それを貿易相手国が GATT の紛争処理委員会に訴えることから生じた貿易紛争を示している。 表1 GATT20 条の適用を争った事件 採択年 内容 号 結果 1982 米国のカナダ産マグロ及びマグロ製品の輸入禁止 g 適用不可 1987 カナダの未加工サケ・ニシンの輸出制限 g 適用不可 1990 タイのタバコの輸入制限・内国税 b 適用不可 1991 米国のキハダマグロの輸入制限(マグロ I) b,g 適用不可 1994 米国のキハダマグロの輸入制限(マグロ II) b,g 適用不可 1994 米国の自動車に対する課税制度 g 適用不可 1996 米国のガソリン基準 b,g 適用不可* 1998 米国のエビの輸入制限 b,g 適用不可 2001 EUのアスベスト及びその製品の輸入禁止 b 適用可

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9 私の問題 これらの紛争の中から二つの事例を取り挙げて、紛争処理小委員会(パネル)が下し た判断を、上述の経済学の観点に照らし合わせて、評価すること。 I. タイが紙巻タバコの輸入を「タイ国民の健康上の理由」から制限し、輸入タバコに高 い関税を課していた問題。 (b)項に関連 II. カナダが未加工のサケ・ニシンの輸出を「有限天然資源の保全」を理由に制限してき た問題。(g)項に関連 パネルの論点と評価 パネルは、紙巻タバコが有害であることも、またサケ・ニシンが有限天然資源であるこ とを認めているが、有害から国民を保護する手段として、また有限な資源を保存する手 段として、タイ国やカナダ政府が採った手段が20 条に照らして適切なものであるかどう かを評価した。 I. 輸入関税が必要な措置であるかどうか。 必要な措置とは「合理的に利用可能な貿易制限的でない代替措置が存在していない」 場合に取られる措置であると解釈し、パネルはタイがこのような代替措置を講じていな いので、輸入制限はGATT 違反と裁定した。私は、タイの輸入関税が理論上は次善の政 策であることを確認した上で、パネルの判断は上述の「経済学の観点」②から見て妥当 であると評価した。ただし、代替的な措置(広告による規制など)がどの程度まで実効 的であるのか、という点、つまり観点③まではパネルは評価していない。 II. 輸出制限が有限資源保護に関する措置かどうか。 パネルによれば、関する措置とは、政策が有限資源保護の「主要な目的」になってい るかどうか、である。しかし、経済学からすると「主要な目的」であるかどうかは問題 ではなく、他の政策手段と比べて効率的(低費用)であるかどうかが問題であると指摘。 文献 「自由貿易と環境保護-GATT20 条をめぐる貿易紛争の経済分析-」 青木健・馬田啓一編『貿易・開発と環境問題』第 7 章 2008 年

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10 (2)循環資源の貿易とリサイクル制度 ①循環型社会 ・循環型社会形成推進基本法(2000 年) ・3R;発生抑制(リデュース)>再使用(リユース)>再資源化(リサイクル) ②「循環型社会」構想に対する批判 ・発生抑制に成功していない ・リサイクルの経済性(特に廃棄物の回収費用が大きい)と環境性 ・循環資源の輸出とリサイクル制度の危機(国内の再資源化業者に資源が行かない) ⇒ 2006 年に政府は市町村に廃ペットボトルを指定法人に渡すよう通達 国内資源循環主義と国際資源循環主義の対立 ⇔ 保護貿易主義と自由貿易主義 私の問題 貿易を考慮したPETボトルのリサイクル制度をモデル化することにより、容リ法施 行以降の資源の流れと価格の変動を説明し、政府の通達(指定法人への円滑な引渡し) の経済性を評価すること。 図3 PETボトルのリサイクルの仕組み

Used PET bottles Payment Commission Recycled products Consumers Local municipalities Non-designated recyclers Non-designated recycling route Domestic manufacturers Designated recyclers Designated corporation Specified businesses Designated recycling route Overseas manufacturers

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11 131 154 174 192 170 140 140 154 34 38 46 82 128 143 130 31 0 50 100 150 200 250 300 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

Designated route Non-designated route

図4 指定法人ルートと独自処理ルート *指定法人ルートの減少と独自処理ルートの増加 図5 指定法人入札価格、独自処理価格、輸出価格の変動 -100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100 120 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

Domestic price Export price

Designated route Non-designated route

*指定法人の入札価格が逆有償の時には、自治体は無料で指定法人にPET ボトルを引渡す が、有償の時は収入を得る。

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12 理論モデル 自治体と再資源化業者はそれぞれ自分の利益を最大するように行動すると仮定する。 ① 自治体の収支(B) B = PaXa + α(Xb)PbXb - Cg(X―) aは指定法人ルート、bは独自処理ルート、αは期待販売率(α’< 0)、Cgは回収費 用、XはPETボトル量、Pは価格 * 独自処理ルートは高く売れるが、国際価格の変動にさらされて、収入は確実ではない。 * 指定法人ルートは逆有償では無料で引渡すことになるが、確実に引き取ってもらえる。 ② 再資源化事業者(指定法人ルート)の利益

Πa = PyYa - Pa Xa - Ca(Ya)

Πは利潤、YはXを加工したリサイクル品、C は再資源化費用 ③ 再資源化事業者(独自処理ルール)の利益 Πb = Pe― Yb - Pb Xb - Cb(Yb) eは輸出を示す。 分析 これらの式から供給と需要関数を導出し、二つの市場(指定法人と独自処理)の均衡を 条件を描き、輸出価格(Pe)の変動と自治体が回収するPETボトル量(X)の変化の効果 を明らかにする。次に独自処理ルートがない場合(円滑な引渡しによる貿易制限)とそう でない場合(自由貿易)とで生じる経済全体の利益(経済厚生)を比較する。 結論 ① 輸出価格と国内価格の連動(図5)を説明 ② 国際市場が安定している場合は、「円滑な引渡し」政策は経済的に合理的とはいえない。 課題 ① 独自処理ルートから輸出されるPETボトルの処理が不十分だと環境汚染の危険があ るが、それは考慮されていない。(ただし、中国政府は輸出前検査を行っている。)PE Tボトルの環境汚染への影響はさほど大きくないと思うが、他の循環資源や中古品の場 合には環境汚染への影響が懸念されている。(環境汚染をどう組み込むかは今後の課題) ② リサイクル制度の最大の問題は、自治体の回収費用が国内価格に反映されていないこと。 そのため国内価格が安くなって、海外に輸出される。回収費用が価格に反映されるよう なシステムを作ることが、「円滑な引渡し」政策より重要。 文献

“ Export of Recyclable Materials and the Japanese Recycling System: The Case of Used Plastic Bottles”, The International Economy, No.14(2010). (with Yosiko Yamashige and Toru Kikuchi)

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13 5.非経済的資源としての自然 (1)自然の価値(環境経済学者の考え) 森林を例にとって 直接的利用価値(木材生産、食料生産) 利用価値 間接的利用価値(国土保全、レクリエーション) オプション価値(将来の個人のレクリエーション) 遺産価値(将来世代のために原生資源を残す) 非利用価値 存在価値(生物多様性の保護)* *「この価値は、人々の選好を反映するものとみなされるが、人間以外の生物の権利や幸 福への関心、憐憫、尊重も含んでいる。この価値は、なお人間中心のものだが、特定の 種や生態系全体がまさに存在することに対して認められる価値を含んでいるかもしれな い。」(ターナー・ピアス・ベイトマン『環境経済学入門』訳書(東洋経済)116 頁) このような自然の価値に対する西欧の見方は、表面的なものではないか。もっと深いと ころで我々は自然と結びついているのではないか。 (2)高校時代の思い出 高校時代 文芸部に所属して、文芸誌を作っていた。文芸誌に16 歳の時に書いた雑文が ある(今から 48 年前)。それは当時好きだった立原道造という詩人の詩(下記)を読んだ 時の感想を綴ったもの。 「・・・その詩によって久しく忘れていた郷愁・ ・というものを想い起こしたのである。更に、僕は、 自然をも忘却していたことに気がついた。内面的人間、精神的人間になろうと欲して、懸命に 模索していたのに、ニヒリズムに陥り、どうにもならなかった時、この詩は教えてくれた。人 間の心の奥深に潜む郷愁、そして、自然を。」(『北斗』37 号、昭和 39 年 6 月、51 頁) なぜ、心に自然が潜んでいるのか。そして、人は、なぜ自然に郷愁を感じるのか。立原 は先の詩で、西風に「おまえ」と呼びかけている。風を擬人化している。風という無生物 を友人のように扱っている。なぜ自然が郷愁を呼び起こし、心に潜んでいるのか。ここに 根源的な問題があるように思われる。この問題に一つの解決の糸口を与えてくれた人に三 木成夫という解剖学者がいる。最後に三木成夫の世界観を紹介し、自然の意味について述 べたい。 ※ 三木成夫(1925 年~1987 年)解剖学者(没後、思想家としても知られるようになる) 東北大学医学部でも研究(1962 年、63 年の夏)、東京芸術大学保健管理センター所長 『胎児の世界』(中公新書)『ヒトのからだ-生物史的考察』(うぶすな書院)他

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14 (3)三木成夫の世界観 ① 世の中は次の三つから構成される。(アリストテレス以来の系譜がある) 無生物; 石、砂、風、山、海、風 生物; 植物 独立栄養(太陽の光を利用して水と二酸化炭素を利用して独立し て生きている) 動物 従属栄養(他の生物を食べて生きる) ② 人間の身体 植物性器官 ①栄養と取り入れる消化-呼吸系(吸収系) ②これを全身に配る血液-脈管系(循環系) ③産物を外に出す泌尿-生殖系(排出系) 食と性を営む。心臓(こころ)が中心。 動物性器官 ①対外の刺激に応ずる感覚系(受容系) ②刺激を導く神経系(伝達系) ③最後にこれをあらわす運動系(実施系) 動きを支配。 脳が中心 どちらが大事か 「背に腹は代えられぬ」 ③ ヒトの特色 動物性器官が異様に発達し、植物性器官を支配している。 管のまわりを筋肉が取り囲み、管は神経を介して目や耳などの感覚器官と連絡 するようになる。心情は植物性器官の働きに起因している(血がのぼる、胸が おどる、心が痛む)。しかし、動物性器官が植物性器官を侵食するようになる。 管の内容に応じて収縮と拡張を営んでいた植物性筋肉が外界の変化にも影響 を受けるようになる(特に心臓)。食と性だけでなく外界の出来事にも心を打 たれるようになる。 動物性器官の発達は脳の発達による。これが自我を生む。 ⇒ こころ(心情)とあたま(精神)の対立 「思う」の思は田(脳)と心(心臓) 「“あたま”が“こころ”の声に耳を傾けているところを象っ たもの」『海・呼吸・古代形象』(うぶすな書院)124 頁 人々は精神(自我)を使いすぎると、ついには「いかな る動物よりも動物臭くなる(ゲーテ)」。心情と精神の調和 が次第に崩れ去る。⇒ 自己とのたたかい

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15 結語 ― 「思う」ということ なぜ心に自然が潜んでいるのか、なぜ人は自然に郷愁を感じるのか。それは、心は植 物系の中心であり、植物は自然の一部であるからではないか。それゆえ。人間は自然の 一部である。(三木は、われわれは宇宙の一部だと述べている。)そうした認識は、自然 の価値を外部のものとして突き放して見る見方とは根本的に異なっている。自然が損な われるのは、我々の身体が損なわれることと同じではないか。それは心に深い傷を残す。 自然を経済的資源として利用するのは、「あたま」の働きによる。あたまは切れる。 しかし、それは利器にもなれば凶器にもなる。三木は、利器を凶器から分かつものは、 「思う」という態度ではないかという。アルフレッド・マーシャルというイギリスの経 済学者がケンブリッジ大学の教授の就任講義(1885 年)の中で、学生に対して「冷静 な頭脳と、しかい暖かい心情を持って(With Cool Heads but Warm Hearts)」と述べた のは有名である。が、我々はそれを日常的に「思う」で表現している。「思う」は控え めな態度である。それは、自然を経済的資源として利用しようとする「あたま」に対し て、その行き過ぎを自然の一部である「こころ」が諌めているとはいえないだろうか。 或る風に寄せて 立原道造 おまへのことでいつぱいだつた 西風よ たるんだ唄のうたひやまない 雨の昼に とざした窗まどのうすあかりに さびしい思ひを噛みながら おぼえてゐた おののきも 顫へも あれは見知らないものたちだ…… 夕ぐれごとに かがやいた方から吹いて来て あれはもう たたまれて 心にかかつてゐる おまへのうたつた とほい調べだ―― 誰がそれを引き出すのだらう 誰が それを忘れるのだらう……さうして 夕ぐれが夜に変るたび 雲は死に そそがれて来るうすやみのなかに おまへは 西風よ みんななくしてしまつた と

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