特集●研究者のキャリアと処遇
研究開発プロセスの
リーダーシップ
─文献レビューと課題の提示
石川 淳
(立教大学教授)
研究開発プロセスを対象とした先行研究をレビューすることで,以下を明らかにした。リー
ダーシップ・スタイルについては,これまで,変革型リーダーシップとゲート・キーパー
(以下,GK)型リーダーシップを中心に研究が行われてきた。また,リーダーシップと研
究開発成果の間の個人レベルの媒介変数として,組織コミットメント,チームに対する自
尊感情,内発的モチベーション,心理的エンパワーメント,心理的資本,変化へのコミッ
トメントが取り上げられてきた。他方,チーム・レベルの媒介変数としては,チーム風土,
チーム効力感,創造的チーム効力感,コミュニケーションが取り上げられてきた。一方,
これらの先行研究のレビューを通じて,今後の研究の課題として 5 点が残されていること
を明らかにした。国際比較の必要性,モデレータ変数を探求する必要性,マルチ・レベル
研究の必要性,リーダーシップの逆機能を探求する必要性,そして,変革型リーダーシッ
プと GK 型リーダーシップ以外のリーダーシップの効果を明らかにする必要性である。こ
れに加えて本研究では,日本企業に特有な課題として,過剰な年齢意識,コミュニケーショ
ンの少なさ,そして,組織内同形化圧力を取り上げた。日本の研究開発プロセスにおいて
効果的なリーダーシップを発揮するために,これらが大きな阻害要因となっていることを
指摘した。さらに,今後のリーダーシップ研究として,シェアド・リーダーシップと多様
性が高いチームのリーダーシップについて焦点を当てる必要があることを指摘した。最後
に,本研究から導き出される実務的インプリケーションについて論じた。
目 次
Ⅰ はじめに
Ⅱ リーダーシップと研究開発成果
Ⅲ リーダーシップと研究開発成果の関係を媒介する要因
Ⅳ 残された研究課題
Ⅴ 日本企業の研究開発プロセスにおいてリーダーシッ
プの発揮を阻害する要因
Ⅵ 今後の展望─新しいリーダーシップ研究の必要性
Ⅶ まとめ
Ⅰ は じ め に
これまで,数多くのリーダーシップ研究が行わ
れてきたが,その中で,研究開発プロセスを対象
としたリーダーシップ研究は,それほど多いわけ
ではない。しかし,通常,研究開発プロセスはチー
ム単位で遂行されるため,リーダーシップは重要
な課題となる。なぜなら,リーダーシップは,フォ
ロワーの職務態度,行動,成果に重要な影響を及
ぼす
(Yukl2002)
だけでなく,チーム・プロセス
にも重要な影響を及ぼす要因の一つであるからで
あ る
(CohenandBailey1997;HackmanandWalton
1986;Kozlowskietal.,1996)
。
これに加えて,研究開発プロセスは,以下の特
徴を持つ。第 1 に,成果を上げるために創造力を
用いることが求められる。研究開発プロセスは,
新しい知識を生み出す作業であるため,成果を出
すために創造力が必要となる。このため,研究開