消化管の蠕動運動を励起する筋活動同定問題
251802132
齋藤 元滋
論文要旨 筋肉で構成された器官の外側形状は医用画像撮像装置によって計測することは可能であ るが,その内部で発生した筋肉の収縮運動を医用画像から直接求めることは困難である. しかし,密度型位相最適化問題の定式化を応用すれば,器官の外側形状の変動から内部で 発生した筋活動を求める問題が定式化されて,その数値解が得られることが本研究室の先 行研究において示されている.これまでの研究では骨格筋が対象とされた.本研究では, 平滑筋で構成された消化管の蠕動運動に注目し,その動きを励起する筋活動を同定する問 題に取り組んだ. 筋活動同定問題は次のように定式化された.蠕動運動を正弦波と仮定して,ある時刻の 消化管を表す 3 次元領域 Ω0 と蠕動運動を表す境界 ΓD0 ⊂ ∂Ω0 における蠕動運動の半周 期後のときの変位 uD : ΓD0 → Rd が与えられていると仮定する.また,消化管は超弾性 体で,筋活動は非弾性 Green-Lagrange ひずみ EM(θ) =−eM ∑ (i,j)∈{1,2,3}2 ςij(θij) IMij, ςij(θij) = tanh θij の湧き出しであると仮定する.ここで,Θ = (θij)ij ∈ X = H1(Ω0;R3×3) (Θ = Θ⊤) は EM の大きさを決める変数で,eM はその最大値を表す正の定数とする.θ は Θ の Voigt表現,IMij = (akl)kl, akl= 1 ((k, l) = (i, j)), 0 ((k, l) ̸= (i, j)) とする.本研究では,Θ を
設計変数とする密度型位相最適化問題の定式化を用いた.状態決定問題は,ΓD0 上での強 制変位 uD と EM(θ) の湧き出しが発生したときの超弾性体の有限変形問題として定義さ れる.評価関数は,強制変位に対する反力の 2 乗ノルム f (θ, u) = ∫ ΓD0 ( ΠT(θ, u)ν)·(ΠT(θ, u)ν) dγ を用いる.ここで,Π(θ, u) は第 1 Piola-Kirchhoff 応力,ν は単位法線を表す. 本研究では,θ 型 H1 勾配法に基づく反復法を用いて数値解析プログラムを開発した. それを用いて,消化管をモデル化した円筒型有限要素モデルを図 1 のように変形させた ときに,f が最小化する θ を求めた.そのときの θ による変形を図 2 に示す.図 3 は, 最大収縮率の方向と大きさ (EM(θ) の最大固有値に対する固有ベクトルの方向とその方 向の成分) を表示している.この結果から,解剖学で知られていた環状筋が螺旋状に収縮 する様子が観察された. 図 1: 与えられた uD によ る変形 図 2: 最適化された θ によ る変形 図 3: 最大収縮率の方向と 大きさ (色)