アジ研ワールド・トレンド No.60(2009. )―
学
二
〇
〇
〇
年
に
国
連
総
会
で
採
択
さ
れ
た
ミ
レ
ニ
ア
ム
開
発
宣
言
は
、
貧
困
の
撲
滅
、
教
育
の
普
及
な
ど
と
と
も
に
、
環
境
保
護
を
大
き
な
柱
と
し
て
い
ま
す
。
同
宣
言
の
内
容
を
よ
り
具
体
的
に
示
し
て
い
る
ミ
レ
ニ
ア
ム
開
発
目
標
に
お
い
て
は
、
地
球
温
暖
化
や
森
林
破
壊
、
安
全
な
水
の
供
給
な
ど
の
目
標
が
「
開
発
」
の
主
要
な
課
題
の
一
つ
と
し
て
掲
げ
ら
れ
て
い
ま
す
。
ミ
レ
ニ
ア
ム
開
発
目
標
に
代
表
さ
れ
る
よ
う
に
、
現
在
で
は
、「
開
発
」
と
「
環
境
」
を
両
立
さ
せ
る
こ
と
の
重
要
性
が
認
識
さ
れ
て
い
ま
す
が
、
一
九
七
二
年
に
ス
ト
ッ
ク
フ
ォ
ル
ム
で
開
催
さ
れ
た
国
連
人
間
環
境
会
議
で
は
、
開
発
途
上
国
か
ら
、
環
境
よ
り
開
発
が
重
要
で
あ
る
と
の
指
摘
が
相
次
ぎ
ま
し
た
。
本
稿
で
は
、
一
九
七
〇
年
前
後
か
ら
約
四
〇
年
で
途
上
国
の
「
開
発
と
環
境
」
を
め
ぐ
る
議
論
が
ど
の
よ
う
に
変
化
し
て
き
た
の
か
、
そ
し
て
現
在
の
課
題
は
何
か
を
考
え
て
み
た
い
と
思
い
ま
す
。
●
一
九
七
二
年
の
国
連
人
間
環
境
会
議
国
連
人
間
環
境
会
議
で
は
、世
界
環
境
の
日(
六
月
五
日
)
の
制
定
を
行
う
と
と
も
に
、
国
連
人
間
環
境
宣
言
が
採
択
さ
れ
ま
し
た
。
同
宣
言
は
、
人
間
環
境
の
保
全
と
向
上
に
関
す
る
共
通
の
見
解
と
原
則
を
示
し
て
い
ま
す
。
内
容
の
多
く
は
、
途
上
国
、
先
進
国
に
関
わ
り
な
く
該
当
し
ま
す
が
、
以
下
の
箇
所
は
、
途
上
国
を
対
象
に
し
て
い
ま
す
。
「
開
発
途
上
国
で
は
、
環
境
問
題
の
大
部
分
が
低
開
発
か
ら
生
じ
て
い
る
。
何
百
万
人
の
人
々
が
十
分
な
食
物
、
衣
服
、
住
居
、
教
育
、
健
康
衛
生
を
奪
わ
れ
た
状
態
で
、
人
間
ら
し
い
生
活
を
維
持
す
る
最
低
水
準
を
は
る
か
に
下
回
る
生
活
を
続
け
て
い
る
。
そ
れ
ゆ
え
、
開
発
途
上
国
は
、
自
国
の
優
先
順
位
及
び
環
境
の
保
護
と
改
善
の
必
要
性
を
念
頭
に
置
い
て
、
そ
の
努
力
を
開
発
に
向
け
な
け
れ
ば
な
ら
な
い
。」
こ
の
よ
う
な
見
解
が
宣
言
に
盛
り
込
ま
れ
た
の
は
、
多
く
の
途
上
国
が
会
議
で
開
発
の
重
要
性
を
指
摘
し
た
か
ら
で
す
。
会
議
の
概
要
を
ま
と
め
た
文
章
に
は
、
途
上
国
の
代
表
が
貧
困
、
低
識
字
率
な
ど
の
問
題
を
指
摘
し
、
途
上
国
の
優
先
順
位
は
開
発
に
あ
る
と
の
発
言
が
あ
っ
た
と
し
て
い
ま
す
。
当
時
は
、
環
境
保
護
が
開
発
の
課
題
の
一
部
と
見
な
さ
れ
て
は
い
な
か
っ
た
こ
と
が
わ
か
り
ま
す
。
●『
我
ら
共
有
の
未
来
』
「
開
発
」
と
「
環
境
」
を
一
体
的
に
捉
え
、
そ
の
見
方
を
国
際
的
に
共
有
さ
せ
る
き
っ
か
け
と
な
っ
た
の
が
、
国
連
が
設
置
し
た
「
環
境
と
開
発
に
関
す
る
世
界
委
員
会
」
の
活
動
で
す
。
同
委
員
会
で
は
、
二
一
人
の
有
識
者
が
世
界
各
地
で
ヒ
ア
リ
ン
グ
を
行
い
、『
我
ら
共
有
の
未
来
』(
O
ur
Co
m
m
on
F
utu
re )
と
い
う
報
告
書
を
一
九
八
七
年
に
ま
と
め
ま
し
た
。
こ
の
報
告
書
で
は
、「
開
発
危
機
」、「
環
境
危
機
」、「
エ
ネ
ル
ギ
ー
危
機
」
を
別
々
の
問
題
で
は
な
く
、
関
連
し
あ
っ
た
一
つ
の
問
題
と
し
て
捉
え
、
そ
の
解
決
の
道
筋
と
し
て
「
持
続
可
能
な
発
展
」
(
Sustainable
Development
)
と
い
う
考
え
方
が
示
さ
れ
ま
し
た
。
持
続
可
能
な
発
展
と
は
、
「
将
来
世
代
が
自
ら
の
欲
求
を
充
足
す
る
能
力
を
損
な
う
こ
と
な
く
、
今
日
の
世
代
の
欲
求
を
満
た
す
こ
と
」
と
定
義
さ
れ
て
い
ま
す
。
途
上
国
が
直
面
し
て
い
る
貧
困
の
解
決
と
と
も
に
、
将
来
世
代
の
た
め
に
環
境
を
保
全
し
、
資
源
を
持
続
的
に
利
用
す
る
必
要
性
を
指
摘
し
た
と
い
え
ま
す
。
国
連
総
会
で
採
択
さ
れ
た
こ
の
報
告
書
が
、
一
九
九
二
年
の
国
連
環
境
開
発
会
議
(
地
球
サ
ミ
ッ
ト
)
の
開
催
を
促
し
、
さ
ら
に
は
冒
頭
で
述
べ
た
よ
う
に
、
環
境
が
ミ
レ
ニ
ア
ム
開
発
目
標
の
柱
の
一
つ
と
し
て
示
さ
れ
る
こ
と
に
寄
与
し
ま
し
た
。
開発経済
も っ と や さ し い
連 載 第
14
回
環境
─
開発と
の
両立
を
め
ざ
し
て
小島道一
9 ―アジ研ワールド・トレンド No.60(2009. )
●
現
世
代
内
の
公
平
性
と
将
来
世
代
さ
て
、
開
発
の
文
脈
に
お
い
て
環
境
が
重
要
な
側
面
と
認
識
さ
れ
る
よ
う
に
は
な
っ
た
も
の
の
、
途
上
国
で
の
貧
困
問
題
と
、
将
来
世
代
の
た
め
の
環
境
保
護
を
両
立
さ
せ
る
こ
と
は
、
依
然
と
し
て
難
し
い
課
題
で
す
。
特
に
地
球
温
暖
化
や
オ
ゾ
ン
層
の
破
壊
な
ど
、
地
球
規
模
の
課
題
へ
の
対
応
に
つ
い
て
は
、
途
上
国
と
先
進
国
の
立
場
が
対
立
し
て
き
ま
し
た
。
先
進
国
に
は
、
途
上
国
も
責
任
を
も
っ
て
対
策
を
と
る
べ
き
と
の
声
が
あ
る
一
方
、
途
上
国
は
、
こ
れ
ま
で
の
環
境
破
壊
の
責
任
は
先
進
国
に
あ
る
と
し
、
途
上
国
が
先
進
国
と
同
様
の
対
策
を
義
務
付
け
ら
れ
る
こ
と
に
抵
抗
し
て
い
ま
す
。
こ
の
よ
う
な
立
場
の
違
い
か
ら
、
環
境
問
題
の
解
決
に
向
け
て
各
国
は
共
通
し
て
取
り
組
む
べ
き
で
あ
る
一
方
、
対
応
の
程
度
に
関
し
て
は
各
国
の
実
情
を
一
定
程
度
配
慮
す
る
「
共
通
だ
が
差
異
の
あ
る
責
任
の
原
則
」
と
い
う
考
え
方
が
確
立
さ
れ
て
い
ま
す
。
例
え
ば
一
九
九
二
年
の
地
球
サ
ミ
ッ
ト
で
採
択
さ
れ
た
「
環
境
と
開
発
に
関
す
る
リ
オ
宣
言
」
で
は
、
原
則
七
で
以
下
の
よ
う
に
述
べ
て
い
ま
す
。
「
各
国
は
、
地
球
の
生
態
系
の
健
全
性
及
び
完
全
性
を
、
保
全
、
保
護
及
び
修
復
す
る
グ
ロ
ー
バ
ル
・
パ
ー
ト
ナ
ー
シ
ッ
プ
の
精
神
に
則
り
、
協
力
し
な
け
れ
ば
な
ら
な
い
。
地
球
環
境
の
悪
化
へ
の
4
4
4
4
4
4
4
4
4
異
な
っ
た
寄
与
と
い
う
観
点
か
ら
、
各
国
は
共
通
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
の
し
か
し
差
異
の
あ
る
責
任
を
有
す
る
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
4
。
先
進
諸
国
は
、
彼
等
の
社
会
が
地
球
環
境
へ
か
け
て
い
る
圧
力
及
び
彼
等
の
支
配
し
て
い
る
技
術
及
び
財
源
の
観
点
か
ら
、
持
続
可
能
な
開
発
の
国
際
的
な
追
及
に
お
い
て
有
し
て
い
る
義
務
を
認
識
す
る
。」
(
傍
点
は
筆
者
に
よ
る
)
こ
の
原
則
の
趣
旨
は
、
リ
オ
宣
言
が
採
択
さ
れ
る
前
か
ら
、
い
く
つ
か
の
国
際
環
境
条
約
で
取
り
入
れ
ら
れ
て
お
り
、
そ
の
後
の
地
球
温
暖
化
問
題
を
め
ぐ
る
交
渉
に
も
大
き
な
影
響
を
与
え
て
い
ま
す
。
た
と
え
ば
、
フ
ロ
ン
な
ど
の
オ
ゾ
ン
層
破
壊
物
質
の
生
産
、
消
費
を
削
減
す
る
た
め
に
一
九
八
七
年
に
合
意
さ
れ
た
モ
ン
ト
リ
オ
ー
ル
議
定
書
で
は
、
途
上
国
が
規
制
措
置
の
実
施
を
一
〇
年
間
遅
ら
せ
る
こ
と
が
で
き
る
と
の
規
定
が
盛
り
込
ま
れ
ま
し
た
。
ま
た
一
九
九
七
年
の
京
都
議
定
書
で
は
、
温
室
効
果
ガ
ス
の
削
減
義
務
が
先
進
国
の
み
に
課
せ
ら
れ
る
こ
と
と
な
り
ま
し
た
。
さ
ら
に
京
都
議
定
書
で
は
、
先
進
国
の
温
室
効
果
ガ
ス
の
削
減
義
務
を
、
途
上
国
で
の
温
室
効
果
ガ
ス
削
減
プ
ロ
ジ
ェ
ク
ト
の
実
施
で
充
当
す
る
ク
リ
ー
ン
開
発
メ
カ
ニ
ズ
ム
が
採
用
さ
れ
、
こ
の
メ
カ
ニ
ズ
ム
に
基
づ
く
省
エ
ネ
ル
ギ
ー
、
メ
タ
ン
ガ
ス
回
収
に
よ
る
発
電
な
ど
の
プ
ロ
ジ
ェ
ク
ト
が
実
現
し
て
い
ま
す
。
●
途
上
国
で
の
環
境
問
題
へ
の
取
り
組
み
地
球
環
境
問
題
を
め
ぐ
っ
て
は
し
ば
し
ば
、
先
進
国
と
途
上
国
の
見
解
の
対
立
が
見
ら
れ
る
も
の
の
、
途
上
国
に
お
い
て
も
、
公
害
問
題
や
森
林
破
壊
な
ど
の
環
境
問
題
へ
の
対
応
が
、
一
九
七
〇
年
代
か
ら
徐
々
に
進
ん
で
い
ま
す
。
一
九
七
二
年
の
国
連
人
間
環
境
会
議
は
、
途
上
国
が
環
境
問
題
へ
の
認
識
を
深
め
、
取
り
組
み
を
始
め
る
き
っ
か
け
と
な
り
ま
し
た
。
会
議
へ
の
対
応
の
た
め
に
、
途
上
国
政
府
内
に
担
当
部
署
が
設
置
さ
れ
、
自
国
の
環
境
の
状
況
を
ま
と
め
た
報
告
書
が
作
成
さ
れ
ま
し
た
。
そ
の
後
、
環
境
担
当
部
署
が
発
展
し
、
環
境
省
な
ど
の
省
庁
へ
と
昇
格
し
た
り
、
さ
ま
ざ
ま
な
環
境
関
連
の
法
令
の
整
備
が
行
わ
れ
た
り
し
て
き
て
い
ま
す
。
ま
た
、
資
源
の
効
率
的
な
利
用
を
図
り
、
生
産
コ
ス
ト
の
削
減
を
図
る
と
と
も
に
、
環
境
負
荷
も
低
減
さ
せ
る
ク
リ
ー
ナ
ー
・
プ
ロ
ダ
ク
シ
ョ
ン
技
術
の
普
及
や
、
漁
業
権
の
設
定
に
よ
る
水
産
資
源
の
乱
獲
防
止
な
ど
、
環
境
を
保
護
し
な
が
ら
所
得
の
向
上
を
図
る
取
り
組
み
が
、
さ
ま
ざ
ま
な
形
で
進
め
ら
れ
て
い
ま
す
。
し
か
し
な
が
ら
、
限
ら
れ
た
予
算
や
人
材
、
必
ず
し
も
環
境
保
護
に
前
向
き
で
な
い
政
治
的
意
思
な
ど
の
問
題
か
ら
環
境
規
制
の
執
行
が
十
分
で
な
く
、
汚
染
に
よ
る
農
業
生
産
の
減
少
、
健
康
被
害
な
ど
が
顕
在
化
し
て
い
る
地
域
も
少
な
く
あ
り
ま
せ
ん
。
よ
り
一
層
、
環
境
対
策
を
強
化
す
る
と
と
も
に
、
貧
困
対
策
と
環
境
対
策
を
両
立
さ
せ
る
た
め
の
工
夫
が
必
要
で
す
。
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じ
ま
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九
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ミレニアム開発目標 ゴール7 環境の持続可能性確保
ターゲット 指 標
ターゲット9
持続可能な開発の原則を国会政策及びプログラムに反映させ、環境
資源の損失を減少させる
25.森林面積の割合
26.地表面積に対する、生物多様性の維持のための保護区域の面積の割合
27.GDP1,000ドル当たりのエネルギー消費量
28.一人当たりの二酸化炭素排出量及びオゾン層を減少させるフロンの消費量
29.固体燃料を使用する人口の割合
ターゲット10
2015年までに、安全な飲料水および衛生施設を継続的に利用でき
ない人々の割合を半減する
30.浄化された水源を継続して利用できる人口の割合(都市部および農村部)
31.適切な衛生施設を利用できる人口の割合
ターゲット11
2020年までに、少なくとも1億人のスラム居住者の生活を大幅に
改善する
32.土地および住居への安定したアクセスを有する世帯の割合