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新刊紹介 -- 近田亮平編「躍動するブラジル -- 新しい変容と挑戦」

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Academic year: 2021

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く僅かだった。そこで日本のブラジル 研究をリードしてきたアジア経済研究 所として、二〇一二年度に﹃新しいブ ラジル﹄と題する研究会を組織し、社 会科学系のブラジル専門家に協力いた だき、近年のブラジルを総合的に理解 すべく研究や議論を重ねた。本書はそ の成果をまとめ、学生や一般読者向け の啓蒙書として出版したものである 。 また本書は、ジェトロ・アジア経済研 究所が二〇一三年一一月に世界銀行や 朝日新聞社と開催した国際シンポジウ ム﹃成長と公正を求めて︱ブラジルの 経験を中心に﹄のベースにもなった。 ただし同研究会が終了したのち、ブ ラジルで大きな状況の変化が突如発生 した。それは二〇一三年六月に勃発し た抗議デモであり、全国規模の運動と してはブラジルで約二〇年ぶりのもの であった。この予期していなかった情 勢の急変をできるかぎり取り入れるべ く 、本書ではタイトルの変更を含め 、 章によっては原稿の加筆修正を行っ た。しかし、今回の抗議デモが研究会 の終了後に発生したことを鑑み、その 詳細な分析などは今後の研究課題とし て取り組んでいきたいと考えている。 本書は編者によるまえがき 、序章 、 終章、および、六つの章︵執筆者敬 称略︶から構成されている。各章の順 序は 、政治の民主化 、経済の安定化 、 社会の格差是正、世界でのプレゼンス 増大、グローバル化への対応という連 た。 ブラジルがBRI Cs の 一 角 に 挙 げ られた二〇〇一年当 時 、﹁なぜブラジル が選ばれるのか ? ﹂ という声も多くあっ た 。一九八〇年代の ﹁失われた一〇年﹂やハイパー ・ イン フレといった負の記憶が根強く、一九 七〇年前後の ﹁ブラジル経済の奇跡﹂ を知らない世代も増え、地理的にも遠 い日本ではとくに、このような見方が 大半だった。しかし、一九四一年にツ ヴァイク ︵ Stefan Zweig ︶ に ﹃未来の国﹄ と著されたブラジルは、幾重もの紆余 曲折を経た後の二一世紀初め、その未 来がようやく到来したと評されるまで に変貌を遂げた。そして、新興国の雄 としてわれわれの前に台頭したブラジ ルを、さまざまな分野から総合的に分 析し、国家として変容を遂げた﹁新し いブラジル﹂としてとらえる研究が海 外で発表された。 しかし日本ではブラジル研究の層が 薄いこともあり、国内外で高まるブラ ジルへの関心に応えるような研究はご ブラジルのリオデ ジャネイロが南米初 と な る オ リ ン ピ ッ クの開催地に選ばれ た二〇〇九年 、 イギ リスの有力誌 ﹃ The Economist ﹄ は 、 リ オデジャネイロのキ リスト像がロケットのように飛び立つ 場面をイメージした表紙とともに、 ﹁離 陸するブラジル﹂と題する特集記事を 掲載した。この特集は、 BRIC s ︵ 二 〇一一年から南アフリカが加わりBR ICSとなっている︶のなかで、当初 強かった懐疑的な見方を覆し発展して いる﹁新しいブラジル﹂を過小評価す べきではないと論じた。他のBRIC s 諸国と比べブラジルには、中国にな い政治の民主主義があり、インドのよ うな宗教 ・ 民族の対立や隣国との紛争 がなく、ロシアと異なり輸出が石油や 武器ばかりでなく外国人投資家を尊重 すると評価した。そして、政府の役割 のあり方、教育やインフラの遅れ、治 安問題 、﹁自信過剰﹂ ︵ hubris ︶などの 懸念材料はあるが、ブラジルは自らの 進路へ向かい﹁離陸﹂したと結論づけ 続性を持った近年のブラジルの変化を 念頭に入れたものであり、第一章﹁民 主化と現在進行形の政治改革﹂ ︵堀坂 浩太郎︶ 、第二章 ﹁ブラジル経済の新 しい秩序と進歩﹂ ︵浜口伸明 ・河合沙 織︶ 、第三章 ﹁環境変化に応じた新た な関係を模索する企業の三脚構造﹂ ︵二 宮康史︶ 、第四章 ﹁社会保障における 普遍主義の整備と選別主義の試み﹂ ︵近 田亮平︶ 、第五章﹁外交におけるグロー バル ・ プレーヤーへの道﹂ ︵子安昭子︶ 、 第六章 ﹁開発と持続可能性﹂ ︵小池洋一︶ となっている。 本書の目的は、二一世紀の初頭、再 び世界での影響力を増したブラジルに ついて 、その発展の特徴と ﹁新しさ﹂ を総合的に理解することである。その 際 、﹁新しいブラジル﹂に関する先行 研究の主な論点を踏まえたうえで、本 書では制度の整備、変容プロセスの連 続性、グローバル化した世界へ向けた 方向性などに注目した。また、各対象 分野に関する変化の転換点や転換期を 提示することで、 ブラジルの﹁新しさ﹂ の解明や変容の解説を試みた。ブラジ ルは、本年のサッカーのワールドカッ プや二〇一六年の夏季オリンピックの 開催を控え、今後も注目度が国内外で 高まると考えられる。本書が、このよ うなブラジルに対する理解を深めるた めの一助となることを願っている。 ︵こんた   りょうへい/アジア経済研究 所  ラテンアメリカ研究グループ︶

近田亮平

近田亮平

躍動するブラジル

︱新しい変容と挑戦︱

アジ研選書№三四

44

アジ研ワールド・トレンド No.224(2014. 6)

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