Title
[原著]コルポスコピーによる子宮頸癌初期病変の診断
Author(s)
東, 政弘; 竹中, 静広; 有村, 徹; 永山, 孝; 仲地, 広順; 野原,
雄介
Citation
琉球大学保健学医学雑誌=Ryukyu University Journal of
Health Sciences and Medicine, 1(1): 59-66
Issue Date
1978
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/2262
琉大保医誌1(I):59-66, 1978.
コルポスコピーによる子宮頚痛初期病変の診断
琉球大学保健学部 産婦人科東 政弘 竹中静広 有村 徹 永山 孝 仲地広傾
琉球大学保健学部 中央検査科野原 雄介
緒言 近年.子宮癌検診の普及により,進行癌は次第に減 少し,かわって異形成,上皮内癌,初期浸潤癌などの 子宮頚痛初期病変あるいはその境界病変が,多数発見 されるようになった。細胞鯵で異常のある症例につい ては,multiplepunchbiopsy,コルポ診および狙 い生検診,頚管円錐切除などが行なわれているが,そ れぞれ長所,短所がある。とくに,これまでの盲目的 生検紗では,病変の浸潤度やその拡りを正確に診断す ることができないので,診断的円錐切除を行い,治療 前の正確な診断をうるべきだと主張する人が多い1)2) 。3 4i しかし,最近になり,頚管円錐切除には 7.5 -50Sに感染や出血がみられるだけでなく,その後の 妊畢能力の低下をきたすという合併症5) 6) 7)が指摘さ れるようになって,細胞診異常例の仝例に,本法を適 用することは,次第に反省されて,その適応が考慮さ れるようになった。 1925年, Hinselman によって考案,開発された コルポスコープは,子宮鹿部表面を拡大して詳細に観 察する方法であるが, Mestwerdt (1953).Cramer (1956).NavratiK 1964). Coppleson (1971), 安藤(1958),栗原(1962)らによって,子宮鹿部 表面の異常所見が,子宮頚痛ことに初期病変を発見す る補助診断法として,細胞診の弱点をおぎない,見え ない病変の占拠や拡りを知り,確定診断や治療法の決 定に重要な役割を果たす検査として,高く評価される にいたった。さらに最近では,コルポ所見の解析がす すみ,コルポ像による病変の質の判定,浸潤度の判定 まで行なおうとする傾向にあり,子宮病変の診断には, 不可欠な検査法となりつつある。また, Townsendヲ) Stafl,8' Benedet,"岸10)その他多数の研究者 により,コルポによる狙い生検紗の正確さは,悪性病 変の局在性を明らかにし,細胞診やコルポ診所見など を加えた総合判定によって,不必要な頚管円錐切除を 59 80-90%省くことができるとさえいわれるようにな sm そこで,著者は,子宮頚部の各病変のコルポ所見を 分類し,コルポ診による組織学的病変の推定診断が, どの程度可能であるのか, prospectiveに検討し, さらに,このコルポ診による浸潤性の判定と,狙い生 検珍,細胞診の診断結果とをあわせて総合的判定を行 うことより,より正確な術前診断かえられると考え, これらについても併せ検討した。 」XS5 象 1975年8月から1977年9月までに琉大附属病院 産婦人科にて治療し,頚管円錐切除または摘出子宮に より,最終鯵断のえられた軽度異形成6例,高度異形 成14例,上皮内癌67例,初期浸潤癌42例,肉眼的には 癌と認識しがたい深部浸潤癌16例,主に細胞珍の異常 により生検診のみをおこない現在もfollow up中の 軽度異形成12例,および頚管炎76例の合計233例を対 象としてコルポ診の解析をおこなった。 研 究 方 法 コルポスコープは, Leisegang 3-B型とトーイ ツCP-300型を使用し,子宮腔部を清拭後, 3%酢 酸溶液加工後の上皮所見を観察した。所見の拡りが頚 管内におよぶ症例は,頚管関大摂子を用いて,頚管内 部の観察につとめ,血管所見については,録色フィル ターを使用し,また,コJL,ポ異常所見の子宮腔部の占 拠率については,頚管環状の拡りとして,その何%を 占めるかを観察した。上皮所見はCramer12)や粟原 の分類にしたがって記載したが,白斑,基底,分野を その罪薄なものと厚く不透明なものとに分類した。異 常血管像は. Kotstad and Stuflの分類13)にしたが い観察したが,これも明らかな異常血管と軽度異常と に分類した●60 東 政 弘 はか 見および血管所見を組み合せて,各病変の特徴を分類 し,一しかる後に,コルポ珍断と最終組織扮断との相開, 狙い生娘珍と最終組織紛断との相関,コルポ紗による評 価9) (コルポ鯵と狙い生検診の両者から病変を推定診 断する)と最終組織診断との相的,さらには,これ に細胞紗断を加えた術前総合判定と最終組織診断との 相関などを検討した。 細胞診は,線棒にて子宮腹部および頚管内擦過法に サ. より採取し, Papanicolaou染色をおこなって鏡検し た。最終組織珍断は,摘出子宮および頚管円錐切除標 本を子宮縦軸方向に16等分割切片を作製し, hemato-xylin-eosinと適宜鍍銀染色をおこなって鏡検した。 初期浸潤癌の診断は,浸潤の深さが上皮の表面から3 mm以内で脈管浸潤のないものとした。 研 究 成 績 1.コルポ所見の分類と各病変の特徴 コルポ所見を表1のように,(1)艮性所見のみ,(2)罪 薄な白斑(L),基底(G),分野(FIが単独または合併したも の,(3)非薄なL 'G・Fに軽度の異常血管(WK)が あるもの, (4)L・G・Fのtriasまたは異常変換帯 (AU)が単独にあるもの, (5)trias・AU・容疑赤色 面(R卜潰療(GW)などが二つ以上合併したもの, (6) これらの異常所見にWKがみられるもの, (7)triasに 異常隆起(AW)を併ったもの, (8川尚El転様隆起(HF) がみられるもの, (9)WKとAWの合併したものなどに 分類して,子宮頚部の各病変の分布を検討してみると, 表 1ー 各 病 変 の コ 全体として各病変に比較的特徴あるコルポ所見がみら mm 頚管炎76例のうち44例(57.9%)が良性所見のみ であり,罪薄なL・G・Fが17例(22.4%),これに 軽度のWKが加わった例が6例(7.9%),明らかなL G・F・AUが単独にみられたのが9例(ll.8S) であった。しかし,これらの異常所見の併存した例や, WK, AWなどの所見がみられた例はなかった。軽度 異形成18例では,良性所見のみが2例(ll.8! 薄 いL・G・Fは最も多く12例<66.7%)で,つぎの 薄いL・G-Fと軽度のWKが3例(16.7%), L・ G・F・AU単独は僅か1例(5.6: であった。そ れ以上の異常所見がみられなかったのは,頚管炎と同 様であった。高度異形成14例では,艮性所見のみは1 例もなく,薄いL・G・Fが1例(7.1%),これに 軽度のWKが加わったものが6例(.42.996)あり,L G・FとAU単独が4例(28.6*),この合併例が 2例(14.3%),またWKが加わったのが1例(7.1 %)であった。上皮内癌のコルポ所見は,最も変化に 富み,艮性所見のみがあったものから, WKとAW合 併例まで多くの所見が観察されたが, 67例のうち54 例(80.8%)は,明らかなL-G'Fのtriasを単 独または合併していた。初期浸潤癌42例の成績も, 上皮内癌と同様に,多彩な所見を示しているが,薄い L'G-Fは, 1例(2.4%)みられたにすぎず,W KにL・G・Fの合併したものが最も多く,15例(35. 7%)にみられた。 PFは,初期浸潤癌の3例にみら ル ポ 所 見 ():% 各 病 変 所 見 頚 管 炎 軽度異形成 高度異形成 上皮内がん 慧期浸mh 雷部浸hm 良 性 所 見 の み 4 4 (5 7.9 ) 2 (l l.1) 0 2 ( 3 .0 ) 0 薄 い L ・ G ・ F 1 7 ( 22 .4) 12 (6 6.7 ) 1 ( 7.1) 7 (10 .2 ) 1 ( 2.4 ) 0 薄 いL ・G と軽度 のW K 6 ( 7 .9 ) 3 (16 .7 ) 6 (4 2.9 ) 2 ( 3 一0 ) 0 A U 単 独 9 (l l.8 ) 1 ( 5 .6 ) 4 (28 .6 ) 1 5 (22 .4 ) 5 (l l.9 ) 1 ( 6.3 ) L ・G ・F ・A U ・R ・G W 合 併 2 (14 .3) 2 1 (3 1.4 ) 10 (23 .8 ) 1 ( 6.3 ) W K とL -G - F -A U -R 'G W 合併 1 ( 7.1 ) 1 6 (2 3 .9 ) 1 5 (35 .7 ) 4 (2 5.0 ) A W と L ・G ・F 合 併 2 ( 3 .0 ) 3 ( 7.1) 0 H F 3 ( 7 .1 ) 0 W K と A W 合 併 2 ( 3 .0 ) 5 (l l.9 ) 10 (6 2.5 ) 計 7 6 1 8 14 6 7 4 2 16
コルポによる子宮頚癌初期病変の診断 れたが,他の病変ではみられなかったのが特徴的であ った。深部浸潤癌16例では, WKとAW合併例が10 例(62.5知)で最も多く,つぎに,WKとL-G・F などの合併が4例(25.0%)であり,L・G・F・AU 単独とこれらの合併例は,それぞれ1例(6.3%)ずゝ の僅か2例に過ぎなかった。 各病変を軽度異形成以下,高度異形成,上皮内癌, および浸潤癌の4群に分け,コルポ所見との的係をグ .tr ラフにしたのが図1であるo薄いL・G・Fのみでは, 軽度異形成以下の例が多く,薄いL・G・Fと軽度の WKが合併したものは,高度異形成が多く,明らかな L-G-F・AUの単独では,高度異形成が多いもの の,他の病変も20-25%近くもみられ,この場合は最 も鑑別しにくいコルポ所見といえる L・G・F・AU などの合併混在例は,上皮内癌に最も多くみられ,こ れにWKやAWが加わったものでは,浸潤癌が最も多 かった。 図 1. 各病変 の コ ル ポ所見 凄いL・G・F 薄いL-G-Fと 軽度W K L ・G・ F A U単独 L-G-F-AU-R-GW合併 WKとL-G-F AU-R-GW^ AW と °一°.°t
F説
wKとAW合併良
」..._
⊂コ軽度異形成以下'ii∴- ・
つぎにコルポ所見の頚管環状の拡りを, 1/4周以下, V4-2/4周,V4-V4周 V4周以上にわけ, 各病変ごとに,その占める割合を比較したのが図2で ある。軽度異形成以下の71.4!が1/4周以下, 28.6 %がVa-Va周であり v4周以上を占める例は なかった v4周以上を占める率は,高度異形成で は15.4*,上皮内癌では25.8%,初期浸潤癌では 61 70.7%であった。高度病変になるにつれて,異常所 見の拡りが大となるが,異常所見の拡りは僅かであっ ても,初期浸潤癌が9.8%に,上皮内癌が31.8#に 存在していたことは,注目すべきことであった。 図 2.各病変におけるコルポ異常所見の 頚管環状の拡りl 」軸y///A細
u vk-Vu V4-34 yt'周以上周以下 50 100% 軽度異形成以下 高度異形成 止皮 内 がん 初期浸潤がん 2.コルポ診と最終組織診断との関係 コルポ診と最終組織診断との相関を145例について 検討した結果を表2に示した。コルポ診で,軽度異形 成以下と診断された14例のうち2例が高度異形成, 5 例が上皮内癌, 1例が初期浸潤癌であった。また,コ ルポ診で高度異形成と診断された23例のうち, 13例が 上皮内癌, 1例が初期浸潤癌であった。同様に,上皮 内癌と診断された56例のうち, 10例が初期浸潤癌, 2 例が浸潤癌と診断され,初期浸潤癌と診断された34例 のうち1例が深部浸潤癌であった。 コルポ診の正診率は,軽度異形成以下と診断した14 例のうち6例の42.9%,高度異形成23例のうち9例の 表2.コルポ診と最終組織診断との関係 二忘 撃 禁 異 誓 高度 異相 上皮 内がん 棚 浸潤 津 鵬 瀧 が ん が ん 計 軽BE異 形成以下 食 K * It lit 上 皮 円 が ん 6 2 5 1 0 14 23 56 0 0 9 ユ3 1 0 3 41 io : 初 期 浸 潤 が ん 0 0 8 25 1 34 深 部 浸 潤 か ん 0 0 0 5 13 18 計 6 14 67 42 16 14562 束 政 弘 ほか 39.1S,上皮内癌56例のうち41例の73.2&,初期 浸潤癌34例のうち25例の73.5<・であった。 3.狙い生検珍と最終組織診断との関係 表3は,狙い生検診と最終組織珍蛎との相関を133 例について検討した態巣である。表2の総数に比し12 例少ないのは,他施設ですでに生検診がなされ,当院 では,コルポ珍と細胞診のみで,狙い生検をすること なく,頚管円錐切除を受けた職が除かれているためで ある。 1*1粗い門眉間wiitiX:iWi<,:irXii¥慰問 慈 撃 禁 誓 高度異形 成 J m がん 霊 舶 雷 雲部 浸 雲 計 軽度異形 成以下 高 層= 異 形 成 上 皮 内 が ん 6 3 3 0 0 1 2 2 7 5 7 0 0 l l 1 1 5 0 0 4 3 1 3 1 初 期 浸 胡 が ん 0 0 0 1 9 3 2 2 涙 部 浸 相 が ん 0 0 0 3 1 2 1 5 計 6 1 4 5 7 4 0 1 6 1 3 3 狙い生検診で軽度異形成以下と砂断された12例のう ち6例C505K),高度異形成27例のうち11例(40.7%) 上皮内癌57例のうち43例(75.4^),初期浸潤癌22例 のうち19例(86.48)が最終紗断と一致していた。 4.コルポ診による評価と最終組織診断との関係 表4は,コルポ紗による評価と最終組放診断との相 関をみた成績である。軽度異形成以下と診断された7 例のうち6例(85.7%),高度異形成15例のうち10例 (66.75K),上皮内癌57例のうち45例(78.9S),初 期浸潤癌36例のうち26例(7?9% ) ¥ILi.Ci/OIが最終診断と一致 し,約70%以上の正診率をえた。 表4.コルポ珍による評価と最終組織診断との関係 表 禦 禁 異誓 高度異形成 上皮 内がん 禁 浸 雷 雲 郎 浸 雲 計 軽皮異形 成以下 高 度 異 形 成 上 皮 円 が ん 6 1 0 0 0 7 15 5 7 0 0 1 0 4 1 0 3 4 5 9 0 初 期浸 瀧 が ん 0 0 8 2 6 2 3 6 凍 部 浸 潤 が ん 0 0 0 4 1 4 1 8 計 6 1 4 5 7 4 0 I E 1 3 3 ※コJt,ボ珍による評価は,狙い生検診とコルポ珍とを合わせて判定した。 5.術前総合判定と最終組織診断との関係 表5は,コルポ診,細胞診,狙い生検診の珍断結果 香,術前に総合的に判定した珍断と最終組織参断との 相関について検討した結果である。総合判定で,軽度異 形成以下と診断した3例のうち3例(100%),高度 異形成12例のうち8例(66.7JK),上皮内癌56例のう ち41例(73.2S),初期浸潤癌44例のうち28例(63.6 形)が最終紗断と一致していた。 表5.術前総合判定と最終組織珍断との関係 最 終 組 術 前 珍 折 合 判 定 禁 具 誓 高 度 異 形 成 上 皮 内 が ん 禁 誓 慧 部 浸 空 計 軽 駐 異 形 成 以下 高 度 異 形 成 上 皮 内 が ん 3 0 0 0 0 3 1 2 5 6 0 2 8 3 1 0 6 4 7 0 初 期 浸 潤 が ん 1 0 13 2 8 2 4 4 深 部 浸 淘 が ん 0 . 0 0 4 14 1 8 ft 6 1 4 5 7 4 0 16 1 3 3 兼術前総合判定は狙い生検珍・コルポ鯵・細胞珍とを合わせて判定した。 最終診断が,深部浸潤癌であった16例のうち,コル 薪診で,深部浸潤癌(肉眼的には認識しがたい浸潤癌) と診断したのは13例,その正珍率は81.3%,狙い生検 診のそれは75.0^,コルポ鯵による評価および総合判 定では,ともに87.5%と高率であった。 同様な方法で,最終珍断が初期浸潤癌であった症例 についての各診断法による正診率は,コルポ診で59.5 %,狙い生検紗で47.5: コルポ診による評価で65.0 形,総合判定で70.0%であった。同じく上皮内癌で あった57例(表2では67例)についての正珍率はそれ ぞれ61.296, 75.4&, 79.0&, 71.9%であった。 # 」 子宮頚痛初期病変および高度異形成の診断基準は, ある程度確立されているが,各病変の境界の判定は, 必ずしも容易ではない。とくに,初期浸潤癌と上皮内 癌串るいは深部浸潤癌との境界病変の診断基準につい ては,研究者によりまちまちであり,一致した見解に 至ってない。したがって,その治療法も医療織閲によ り異なり,初期浸潤癌の治療法は,単純子宮全摘術か 広汎性子宮全摘術か,あるいは準広汎性手術かについ ては,末だ結論が出されておらず,いかなる手術を準 広汎と呼ぶのか,見解の一致をみていないのが現状で ある。初期浸潤癌の治療法は,準広汎手術が適切であ
コルポによる子宮頚痛初期病変の鯵断 り,予後および術後の合併症を考えて,他の方法で行 うべきではないとの結論が出されているならば,術前 に100Sの鯵断をつけることが必要となり,そのため には,診断的頚管円錐切除が必須なものとなろう。し かし,実際には上記のどとく,いまだ訟断基準や治療 法が確立されていない現状からして,初期浸潤癌の境 界病変のうち,`上皮内癌に近い例は,単純子宮全摘術 を,深部浸潤癌に近い例は,広汎性子宮全摘術を施行 して誤りはないと考えられる。このような観点から, 治療法の変更をきたさない程度の正確さでもって,術 前診断が可能であれば,欠点の多い頚管円錐切除をで きるだけ省こうとする傾向がみられるのは当然のこと といえよう。 細胞診および生検診で,異形成上皮あるいは上皮内 癌と診断された症例で,円錐切除後初期浸潤癌が発見 されることは多くの報告者によって記載されており, 盲目的生検診を行うかぎり,紗断的円錐切除は不可欠 といわざるをえない。しかし,コルポ診を応用すれば, コルポ診の特徴としての病巣の局在性(拡りと部位) を見ることができ,それにより適切な狙い生検診がで き,また,細胞鯵のfalse negativeをチェックでき るなどの利点を応用できる。さらに,これまでの頚癌 の早期診断法としてのみ利用されてきたコルポ診が, 最近では,組織学的変化と浸潤皮をある程度判定しう ることが指摘されるようになって,より論理的に治療 方針を計画することも可能となる。すなわち,コルポ 診により浸潤皮を判定しうることは,より正確に最終 病変部の狙い生検診を行うことができることを意味し, ひいては,その診断の正確性を高めることが可能とな るであろう。実際に多くの人により試みられていると ころである 5) 8) 9)10)14) 著者らの研究目的も,コルポ診を応用して,できる だけ正確な術前診断をえて,不要な円錐切除を省き, しかも,より適切な治療方針を決定することにある。 コルポ像をただ単に表1のどとく分類した結果をみて ち,各病変のコルポ像が比較的特徴をもった所見を示 していることは興味深い。頚管炎では, 60ォ近くの症 例に全く異常所見がなく,ただ非番な白斑,基底.分 野およびこれに軽度の異常血管の見られた例が30%で ある。軽度の異常血管は,罪薄な基底像とほぼ同じ所 見であろうから,これを一括して分類すべきかもしれ ない。ここに示した症例の大部分は,細胞診異常例で あるにもかかわらず,頚管炎の60%近くがコルポで異 常所見がなく,また高度異形成以上の病変で,コルポ 異常所見がなかった(false negative)のは, 139 63 例のうち2例の1.4!にすぎない。このことからも, コルポ疹陰性の場合の診断的価値は高いといえる。逆 にfalse positiveは40%あったことになる。非薄な 白斑をnegativeととれば, false positiveを低く することは可能であるが,細胞参で異常を指摘された 例を二次検査する場合にはfalse positiveを恐れず 生検珍を行うべきだと思う。 軽度異形成および高度異形成の例数は少ないので. 結論的なことは言えないが,前者では,非薄な白斑, 基底,分野が85%近くを占めており,後者では,非薄 なtrias所見と明らかなtrias所見とが約50%ずつみ られたのが特徴的である。 上皮内癌のコルポ診は,非常に変化に富んでいるこ とが特徴であり,ほとんど異常所見のない例から浸潤 癌を思わせるものまで,多くの所見が観察されている。 しかし,約80%はtrias所見があり,高度異形成にく らべ, triasの合併例や,これに異常血管像が加わっ た多彩な所見を呈しているといえる。 初期浸潤癌になると, 50%近くが異常血管を主とし た所見であり,約30%にtriasの混在がみられ,駒lo %が浸潤癌に特徴的な異常血管と異常隆起の合併を示 している。脳回転様隆起は3例にみられたが,初期浸 潤癌に特徴的に認められただけである。 実際に,コルポ紗で浸潤度を判定するにあたっては, ここに挙げた所見のはかに,岸の腺口分類や,色調, 透明度,異常病変の境界の明確さ,血管の規則性,血 管の間隙の広さや,その形状などを参考にすべきであ るし,著者らもそのように観察している。判定しにく い場合には,図2に示したどとく,コルポ異常所見の 頚管環状の拡りを参考にしうると思う。 これまで多くの研究者が,コルポ診と細胞診を比較 し,両診断法を用いた診断成績は,個々の診断成績よ 15) 16) 17) 18) 19) 20) り正確度が非常に高くなると報告しているが, かれらの成績でも,その正診率は 70-9 であり, 必ずしも100^でないところに問題がある。したがっ て,全症例に円錐切除を省くべきではなく,細胞診, コルポ診および狙い組織診の診断結果に不一致がある 場合は,再検討すべきであり,必要と判断すれば当然, 円錐切除も行うべきである。しかしながら,異常所見 の境界が可視範囲にあり,それをコルポ診にて確認で きる症例では,円錐切除を省いて治療方針を決定して も,臨床的に誤りはないと考えている。とくに妊娠や 挙児希望の若年者で,高度異形成周辺の病変が疑われ る症例では,三診断法の総合判定による診断が大いに 役立つ。著者らがあえてコルポ診そのものによる診断
64 東 政 弘 はか 成績を重視したのは,狙い組織診が必ずしも目的の部 位から正確に採取されないことがあり,また,採取片 が小さくて正確な判定ができない例があるためである。 Kolstad,Spang,岸らが指摘するように,コルポ 診の判定は十分訓練を受けた婦人科医によってなされ るべきであり,そうでない場合は,軽率に円錐切除を 省こうとする試みは慎しまねばならない。 す' (なお本論文の要旨は第77lel九州医師会医学会産婦人科学会 シンポジウムにおいて発表した。) 文 献
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コルポによる子宮頚癌初期病変の珍断
Diagnostic Colposcopy of the Earliest Cancers
of the Cervix Ut占ri
65
Masahiro HIGASHI, Shizuhiro TAKENAKA, Toru ARIMURA, Takashi NAGAYAMA, Hiromasa NAKACHI, Yusuke NOHARA*
Department of Obstetrics aind Gynecology * Department of Central Laboratory
College of Health Sciences, University of the Ryukyus
Diagnostic conization has been the routine method of investigation of abnormal cervical smears. Obvious drawbacks to the conization include hospitalization, morbidity, possible interference with future fertility, and less satisfactory sampling in the pregnant patient. For these reasons, this operation should be performed only when necessary in establishing a correct diagnosis. Making a correct diagnosis without conization is difficult, but can be done by evaluating the results of col-poscopic appearance and directed punch biopsy in combination with cytology. The purpose of this study is to prove the accuracy of colposcopy, directed biopsy and cytology, thus reducing the need for diagnostic conization.
A total of 233 patients, refered to our department because of suspicious or abnormal smears, were treated from August 1975 to September 1977. These patients were utilized for this prelim-inary study. A colposcopic diagnosis was made by reference to easily observable features of sur-face pattern, vascular pattern, color tone, opacity and gland openings. We classified these findings retrospectively and found colposcopic characteristics peculiar to each lesion of the cervix. Out of 233 patients, 88 patients were not conized because they were diagnosed by directed biopsy and colposcopy as having cervicitis or mild dysplasia. By performing conization or hysterectomy on the remaining 145 patients, 6 cases were diagnosed as mild dysplasia, 14 cases as severe dyspla-sia, 67 cases as carcinoma in situ (CIS), 42 cases as microinvasive carcinoma and 16 cases as frank invasive carcinoma.
The results of the colposcopic impression and the directed biopsy were combined to formulate a single diagnosis, called "colposcopic evaluation ". The diagnosis made jointly by colposcopy,
direct-ed biopsy and cytology was called "pre-treatment diagnosis". The final histoiogical diagnosis was compared with the results of colposcopic appearance, directed biopsy, colposcopic evaluation and then with the pre-treatment diagnosis.
The accuracy of colposcopy was 39.1% in severe dysplasia, 73.2% in CIS and 73.5% in micro-invasive carcinoma. The accuracy of directed biopsy was 40.7% in severe dysplasia, 75.4% in CIS and 86.4% in microinvasive carcinoma. The accuracy of colposcopic evaluation was 66.7% in severe dysplasia, 78.9% in CIS and 72.2% in microinvasive carcinoma. The accuracy of pre-treatment diagnosis was 66.7% in severe dysplasia, 73.2% in CIS and 63.6% in microinvasive carcinoma. The correlation between the pre-treatment diagnosis and the final histological
diag-66 東 政 弘 はか
nosis was clinically accurate in 94 cases (70.8% ); histology was less advanced than expected in 26 cases (19.5%) and more advanced than expected in 13 cases (9.8%). The recognized false-negative rate of directed biopsy in this study (more than 1 histologic degree in the surgical spe-cimen than the directed biopsy' was 9 cases (6.8%) among 133 patients. The false-negative rate of colposcopy alone, colposcopic evaluation and pretreatment diagnosis were 6.2%, 0.75% and 0.75% respectively.
From the results of this study we conclude that we could make a correct diagnosis without conization, by "colposcopic evaluation" (both colposcopic appearance and directed biopsy) and "pre-treatment diagnosis" (combining colposcopic evaluation with cytology).